ヴェノム(SPIDER-MAN)

登録日:2009/09/04 (金) 00:25:53
更新日:2023/12/26 Tue 11:10:34
所要時間:約 5 分で読めます






俺たちはヴェノムだ!



【概要】

ヴェノムとはMARVEL COMICSにおいて登場するキャラクター。
長年スパイダーマン関連のヴィランとして活躍しておりブラックコスチューム時代のスパイディと良く似たデザイン、不気味でなおかつ力強いスタイルをもって読者のハートを射止めた大人気のヴィランである。ドクター・オクトパスやグリーン・ゴブリンらと同じくスパイダーマンの宿敵たちの一人として長年活躍してきたが、段々とダークヒーローの側面が強調されていき、今では数多いヒーローたちの一員として悪と戦うようになっている。

また、ヴェノムという名はかつてスパイダーマンに取りついていたシンビオートが別の者と繋がって生まれた存在を指しており、今までにヴェノムと名乗ったことのある人物は複数いる。その中でもエディ、フラッシュ、ガーガンらは代表的なヴェノムとして扱われることが多い。シンビオートと宿主との関係性や容姿にもそれぞれの個性が強く出ているのが特徴で、本稿ではそれぞれのヴェノムを時系列順に追って解説する。


【歴代ヴェノム】

エディ・ブロック

WE ARE VENOM!

プロフィール

本名:エドワード・チャールズ・アラン・ブロック
身長:190cm
体重:104kg
初登場:Web of Spider-Man #18

人物像

敬虔なキリシタンの家に生まれた敏腕リポーター。ある時スパイダーマンによって自らのキャリアを台無しにされ、人生のどん底に落とされたことで彼を強く憎むようになる。

ヴェノムと化した後はシンビオートによる影響で凶暴性が増し、スパイダーマンを殺すことのみを目的に何度も宿敵として彼の前に立ちはだかる。ヴィランとは言ってもスパイダーマンを殺すこと以外に興味は無く、やがて持ち前の正義感が動機となって「弱者の庇護」を目的としたちょっと過激なヒーロー活動すら行うことになっていく。それでも根っこはヴィランなので自らの復讐を邪魔するものはたとえ無関係の人間や他のヒーローであっても容赦しない。

歴代ヴェノムの中でも飛び抜けてシンビオートへの精神的な依存が強く、共生体を自身の一部として"My Other"と呼び、異常なまでに執着している。スパイダーマンは悪で、自分たちこそが真の善人であると盲信しており、強い正義感を持つ、というよりも独善的な側面が大きい。そういった性格から、何から何までピーターを責めることで責任を避け、自身の問題と本当に向き合うことをせず、恋人のアンともすれ違いが続いていた。

そういった性格も、アンチヒーローとしての活躍、シンビオートとの分離、末期ガンによる絶望などを経験することで少しずつ変化していき、後年になって再びヴェノムに戻った頃には真っ当なヒーローとして活躍できるほどに更生している。特に自分の息子「ディラン・ブロック」の存在を知ってからは、スパイダーマンへの憎しみやシンビオートの依存を全て捨て去り、一人前の父親となれるように成長を続け、登場初期とはまるで別人に見紛うほどである。


活躍

裕福な家に生まれたが母親を早くに亡くし、父親からの愛情を受けられずに育つ。若い頃、飲酒運転で子供を轢き殺したにも関わらず、外聞をはばかった父親が金にモノを言わせて無罪を勝ち取ってしまい、「自分のような人間から人々を守らねば」と歪んだ正義感を持つに至った。

大人になってからは優秀な記者となり、順調にキャリアを積んでいた。ある日、先走ってガセネタを掴まされて書いた犯罪者シンイーターの正体に関する独占記事が大いに注目を浴びるが、スパイダーマンによって真犯人が暴かれてしまい、地位も信用も全て奪われてしまう。人生のどん底に叩き落とされたエディは絶望の中でスパイダーマンを酷く憎むようになっていった。

そんな彼の憎悪に目をつけたシンビオートはとある教会で彼と結合。怪人ヴェノムと化したことでシンビオートとエディの持つスパイダーマンへの憎悪が融合、増幅し、彼との戦いを始めることとなる。シンビオートがピーターの記憶を保持していたことでスパイダーマンの正体を知り、彼を苦しめるためにMJやメイおばさんといった周りの人々をも脅かすことさえ厭わない強敵として何度もピーターと戦いを交える。

初めは秩序を持たない化け物として見境なく暴れ回っていたが、次第にシンビオートの破壊衝動と折り合いがついたのか、徐々にアンチヒーローとしてサンフランシスコの犯罪と戦う活動も始めていく。
ある時、意図せず新たなシンビオートを産み、自分よりも更に凶悪な化け物「カーネイジ」を作り出してしまったことで責任を感じ、殺人鬼を止めるためにスパイダーマンと一時的に和解するほどには落ち着いていた時期もあった。

しかし次第に膨れ上がっていくシンビオートのエゴや凶暴性についていけなくなっていき、末期ガンが発覚したこともあって精神的に限界がきたようで、シンビオートをオークションに出して足を洗うことを決意。

常人に戻るが、ガンによってもはや余命いくばくもなく、過去の罪悪感やトラウマに圧し潰されることでいよいよ精神が壊れ始める。そんな折にマーティン・リーことMr.ネガティブと出会うことで、彼の力と身体が反応し、新たなパワーを持つアンチ・ヴェノムとして覚醒。再びヒーロー活動に戻ってシンビオートへの憎しみを募らせていき、アンチヴェノムとしての力を失っても、当時のヴェノムやその子孫たちをつけ狙い続ける。

新たにトキシン・シンビオートを得たりと紆余曲折を経て、FBIの対シンビオート部隊に在籍。その際、当時また新たなヴェノムが台頭し、NYで大暴れしている情報を掴む。何かしら心境の変化があったようで、組織を裏切ってヴェノム・シンビオートを奪取。数年振りにヴェノムに舞い戻り、ヒーローとして生まれ変わることに。

その後はマルチバースを股にかけた戦争や、永い眠りから目覚めた旧神との闘いに身を投じていき、やがて息子であるディランの存在を知る。一人前の父親になることを心に誓い、様々な脅威を退けていく中で遂にはピーターと完全に和解を交わし、アベンジャーズへの勧誘を受けるにまで成長。
未曾有の強敵であった邪神ヌルをもその手で打ち倒し、新たにシンビオートたちを統べる神王として「キングインブラック」の称号と力を受け継ぐ。

「ヴェノム」の名とシンビオートは呪いとしてでなく新たな祝福として息子に受け渡し、自身は宇宙の平穏と家族を守るため、新たに手に入れた強大な力を用いて、宇宙を股にかける神と家庭を支える父親の両立を続けていく。


マック・ガーガン

KIIILLLLL!!!!

プロフィール

本名:マクドナルド・ガーガン
身長:188cm
体重:100kg
初登場:ASM #19

人物像

かつては一介の探偵だったが、スパイダーマンを目の敵としているデイリー・ビューグルの鬼編集長JJJによって理不尽な理由で改造を施され、怪人スコーピオンへと変貌。人としての生活を諦め、スパイダーマンに執着するヴィランと化した男。

冷酷で残虐な性格だが、肝心の実力と頭脳は今一つといったところで、どこかパッとしない悪党として燻っており、ピーターからも若干甘く見られていた。しかしある日突如シンビオートに取りつかれてヴェノムと化したことで豹変。かつてとは比べ物にならないほど肥大化していたシンビオートの残虐性と、ガーガン自身の悪辣さが融合し、秩序を持たない化け物へと成り果てる。

シンビオートとの折り合いは非常に悪く、とある時点から制御が不可能になっていたようで、あのカーネイジにすら並ぶ程の破壊と殺戮を撒き散らす。溢れる食人衝動を抑える気もなく、人間であろうとエイリアンであろうとあらゆる相手を貪り食らっていたことが大きな特徴。

ヴェノムとしての容姿も特徴的で、ちょっとした怪獣ほどのサイズまでに身体が肥大化、牙や爪が強調され、よりモンスターらしい見た目となっている。薬を使ってシンビオートを制御している際はかつてのスパイダーマンを思わせる細身の体躯になり、実際にスパイダーマンを名乗っていた時期もある。

純粋なヴィランとしてかなりの長期間活動した唯一のヴェノムであり、読者からの評判はあまりよろしくない。

経歴

JJJによってピーターを監視するため、探偵として雇われた男。
しかし他ならぬJJJ本人によってスパイダーマンを倒すために身体改造を施され、サソリを模した怪人スコーピオンへと変貌。長らくスパイダーマンの宿敵たちの一人として活躍していた。

ある日オズボーンが仲間を集めてスパイダーマンに総攻撃を仕掛けようとしていた矢先、役立たずのエディとアンジェロを捨てて新たな宿主を求めていたシンビオートに目をつけられて結合。

新たなヴェノムとしてスパイダーマンの前に立ちはだかる。当時、暗躍を続けることで力を増していたオズボーンの配下につき、サンダーボルトに加入。
そのまま持ち越す形で悪名高いダークアベンジャーズにも参加し、スパイダーマンを名乗って表向きはヒーローとして人気を集め、裏では女を文字通りの意味で食い散らかしたりと、好き放題を続けていた。

結局はオズボーンの失脚と共にスパイダーマンに敗北。シンビオートは政府の管理下に置かれ、元のスコーピオンのアイデンティティに逆戻りすることとなった。そこから他にヴェノムを名乗る人物たちと因縁が生まれ、懲りずにシンビオート絡みの事件に首を突っ込み続けているが、殺されかけたり洗脳されて操られたりと、大抵ろくな目にあっていない。

…がスパイダーマンだけでなくヴェノムのヴィランとしての役回りを得ることに繋がったため、出番自体は結構増えている。
エディへの復讐を果たすため、「ウイルス(ヴァイルス)」と名乗り、新たな装備でヴェノムに襲い掛かったことも。



フラッシュ・トンプソン

YOU WANT HIM?
YOU'RE GONNA HAVE TO GO THROUGH ME.

プロフィール

本名:ユージーン・トンプソン
身長:188cm(足を失くした後は124cm)
体重:83kg
初登場:Amazing Fantasy #15

人物像

ピーター・パーカーの同級生。
かつては意地悪ないじめっ子で、ピーターとの関係も最悪だったが後に和解。現在は良い友人として接している。スパイダーマンの大ファンでもあり、彼に憧れて軍に入隊、戦場で両脚を失い退役するが、シンビオートを用いた超人兵士計画に選ばれ、エージェント・ヴェノムとして活躍することに。

歴代ヴェノムの中でも一番と言っていいほど善良な精神の持ち主で、スパイダーマンをお手本として軍の管轄下でヒーロー活動を続けていた。純粋なヒーローとして活躍を始めた初のヴェノム…ではあるのだがフラッシュ自信の感情に影響されてシンビオートが暴走してしまう事が多々あり、それが悩みの種でもある。そうした苦悩から一時期はアルコール依存症にも苦しんでいた。

エディとは違ってシンビオートを自らの「相棒」だと思っているようで、薬を使って抑制していたところも大きかったとはいえ、かなり良好な関係を築いていた。戦闘方法は他と比べてかなり独特で、銃器を多用するスピード感溢れる戦い方がメイン。シンビオートを用いたデコイの生成や車の改造など、かなりトリッキーな戦法も特徴的。

基本的には一匹狼として行動していたエディとは異なり、学生時代からバリバリの陽キャだったこともあってヒーローとしての交友関係はかなり広い。シークレット・アベンジャーズやGotGに加入していたことも。

ボディーアーマーを模した秀逸なデザインや、新たなヴェノム像の確立によって高い人気を誇っており、読者からはエディと併せて「ヴェノムといえばこの人」という扱いを受けている。

経歴

難しい家庭環境の中で育ち、少し歪んでしまったのかハイスクールではいじめっ子としてピーターらに嫌がらせを続けていた。やがてピーターとは和解するが、スパイダーマンに憧れて米軍に入隊。イラク戦争で両足を失ってしまう。

しばらくして軍から、シンビオートを用いてスーパーソルジャーを作る新たな超人兵士計画”プロジェクトリバース2.0"の被験者に選ばれ、国の管理下にあったシンビオートと結合することでエージェント・ヴェノムへと変身。再び歩けるようになったどころか憧れのスパイダーマンと同じ能力を手に入れることとなり、軍の指揮下でテロリストやヴィランたちと戦うヒーローとなる。そこで新たなクライムマスターやジャックオランタンと戦ったり、スパイダーアイランド事件の解決に一役買ったりと大活躍。

やがて宿敵であるジャック・オー・ランタンとの戦いがこじれ、キャプテン・アメリカから超人兵士計画の中止を命令されてしまったこともあって軍を離反。ラスベガスにたった一人で、制御の利かないシンビオートと共に取り残されてしまうが、
他のヒーローたちと協力することでなんとか苦難を乗り越えていき、クライムマスター率いるジャックや新たなトキシンと化したエディ・ブロックとの戦いを続けていく。
強敵カーネイジをも退け、活動の拠点をフィラデルフィアへと移し、体育教師として生計を立てていくことに。新たにシンビオートを手にして「マニア」と化した教え子のアンディー・ベントンに正しい道を示すことを使命とし、ヒーロー活動を続けていく。

サンダーボルツへの加入やスーペリア・スパイダーマンとの対峙を経験し、今度は宇宙へと活動の場を移すことでガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシーに加入。シンビオートの故郷である母星クリンターにてシンビオートという種の歴史を知り、精神の浄化を受けたことでもはや暴走することもなく、完全なヒーローとして活躍できるように。

宇宙を守る新たな組織、エージェンツ・オブ・ザ・コスモスに選ばれ、シンビオートとの信頼関係も深めていきながら宇宙での活躍を続けるが、第二のシビル・ウォーによって地球に呼び戻された後、何者かによる襲撃を受け、シンビオートと分離。ヒーローとしての活躍は一度終わりを迎える。

シンビオートは再びエディーの手に渡っていたが、フラッシュ自身は偶発的に新たなアンチ・ヴェノムへと変身。エディーとも和解してもう一度ヒーロー活動を始めるが、後にレッド・ゴブリンとしてカーネイジ・シンビオートを操るオズボーンに殺害される。

フラッシュの意識は死後も無数のシンビオートが構成する集合精神に囚われていたが、邪神ヌルによる地球への侵攻の際、ヌルの支配が弱まった隙をついて脱出。
シンビオート・ドラゴンを依代に現世へと再生し、自身の遺骸に取り付くことで一種のアンデッドとして蘇る。
その後は再びエージェント・アンチ・ヴェノムとしてヒーロー活動を続けている。


リー・プライス

NO, THE ONE IN CONTROL…
IS ME!

プロフィール

本名:リー・プライス
初登場:Venom Vol.3 #1

人物像

元軍人の男性。
幼少期の経験や兵士だった頃のトラウマから歪んだ人格を持っており、ガーガンをも越えるほど冷酷で暴力的なサディスト。結合してその頭の中を覗いたシンビオートからはっきりと「壊れている」と告げられたほど。

エディーやフラッシュと過ごした時間から学習し、成長したことでヒーローになることを強く望んでいたシンビオートの意思に反して悪の道に走り、逆らうシンビオートをその精神力で無理矢理自らの身体に閉じ込め、悪虐の限りを尽くす。

善と悪の間で揺れ動く点、軍隊での経験を有する点、残虐で利己的な点など、歴代ヴェノムたちの要素をすべて組み合わせたようなキャラクターであると言えるが、ガーガンと同じく悪役としてのヴェノムはやはり人気がイマイチ伸びなかったようだ。

白いラインが強調された荒々しいスタイルが特徴的なデザインはかなり好評で、フォートナイトとのコラボの際にも彼のヴェノムがスキンとして登場している。

経歴

幼少の頃から虐待されていたようで、時期は不明だが自らの手で両親を殺したらしい。
その後軍に入隊するが、指を2本失った上に大きなトラウマを抱えてしまったことで除隊。国に帰ってからは違法な仕事に手を染めるようになる。

ある時ブラックキャット率いるギャングが関わるブツの取引に出向き、そこで宿主を探していたシンビオートに遭遇。フラッシュのようにヒーローとして活躍することを期待して取りついたシンビオートを即座に服従させ、その場にいた者を皆殺しにする。

そのままシンビオートを抑え込み続けて犯罪者として少しずつ歩みを進めていくことになるが、派手に動きすぎたようで、最後はFBIやスパイダーマン、エディ・ブロックに目をつけられてしまい、徐々に追い詰められいき、最終的にはあえなくシンビオートを取り上げられてお縄についた。

しばらくの後、一度はアンディのマニア・シンビオートを奪い、怪人「マニアック」として暴れたこともあったが、多数のヒーローたちに食い止められて今度はラフトに送られる。そこでなんだか偉そうにふんぞり返っていたが、邪神を目覚めさせんと画策するカーネイジの魔の手にかかり、シンビオートを奪われて惨殺された。


ディラン・ブロック

He wanted something else for me.
Something different.

プロフィール

本名:ディラン・エドワード・ブロック
初登場:Venom(2018) #7

人物像

エディ・ブロックとその元妻アン・ウェイングの息子。
本当の両親を知らずに育ったごく普通の少年だったが、エディと出会ったことで彼と生活を共にするようになり、後にヴェノムの名を受け継ぐこととなった。

ヴェノムとしては純粋なヒーローを目指しているものの、味方のいない厳しい環境に置かれてしまったことで思春期特有の悩みが悪い方向に出ており、溢れんばかりの怒りを戦いの中でぶちまける危うい人物となっている。
タイムループに囚われたことで怪物と化してしまった父親と戦う羽目になり、そんな自分の運命を呪う悲劇的なヒーローでもあるのだが、鎖や日本刀を好んで使うところや、やたらと陰を感じさせる言動からしてちょっと厨二病が入っているかもしれない。

ノーマン・オズボーンの孫であるノーミーと友達であり、スリーパー・シンビオートとも幼い頃からの知り合いで兄弟のような関係にある。
スパイダーマンから受け継いだウェブではなく、鎖を模した触手を主に用いる点が大きな特徴。


経歴

エディーとアンがヴェノム・シンビオートと結合した際、無意識に両者の因子が組み合わさり、アンの胎内にそれが子供という形で顕現した結果産まれた男の子。

アンにとってはまったく身に覚えのない妊娠であり、悩んだ彼女はディランと名付けたその子をエディーの父であるカールに預け、他の誰にもそれを知らせることなく行方を晦ます。
アンはその後間もなく自殺し、ディランは暴力的な祖父の下で本当の両親の名前も知らされることなく育てられることに。

ある日、偶然エディーと出会ったことで、お互いを異母兄弟と勘違いしたまま親交を深めていく。カールに虐待されていた子を見捨てられなかったエディーはディランを連れ出すが、シンビオートによって隠されていた記憶を取り戻したことで、ディランが息子であることに気がついた彼は今度こそアンの遺した生命を守るため、父親としてディランを守ることを誓う。

その後、カーネイジにつけ狙われる中で、ディランは自身が意思の力だけでシンビオートを操る力を宿していることを知る。それが原因でシンビオートの神であるヌルにも標的にされるが、辛くも父親の手で救い出され、自身の中に眠るシンビオートの因子を封印することで普通の少年としての生活に戻っていく。

思春期に差し掛かる頃、新たにキング・イン・ブラックとして神性を得たエディが宇宙の秩序を守るのに忙しく、父親としての時間を取ろうとしないことに不満を募らせ、学校では喧嘩ばかり起こしていた。そんなある日、謎の敵に父親と自身の命を狙われることとなり、エディを眼の前で殺されたことにより暴走。

ヴェノムとして活動を始めるが、味方が少ない中で強大な敵に立ち向かうという厳しい状況が続いたことで荒んでおり、前途多難な様子。




ヴェノム・シンビオート

人物像

アメーバ状の黒いエイリアン。
単体では無力だが、他の生物に取り付き、細胞レベルで結合することで共生関係を作ることが可能。そうして融合した両者は大きく力を高め、新たなパワーを手にすることができる。

ピーターと出会った頃はまだ人間について理解できておらず、彼を見習ってヒーローとして共に戦おうとしていたが、仲違いを起こしてしまい分離。ピーターを逆恨みしたシンビオートは彼への復讐を目的とし、ヴェノムとしてエディーやガーガンといった宿主を利用して何度もスパイダーマンの前に立ちはだかる。
ヴェノムと化し、シンビオートと一心同体となった人間は一人称がWe(俺達)に変わることが大きな特徴。

初期はピーターを見習ってヒーローを目指しており、彼に対する愛情すら持っていたようだが、ヴェノムと化した後は憎悪に染まり、宿主の凶暴性を増大させ、怪物へと変貌してしまうようになる。

エディーと出会った後は少しずつ信頼関係を築いていき、ただの怪物ではなく、人々を守るリーサル・プロテクターとして活躍できるまでに落ち着いていた時期もあったが、徐々にハッキリとした自我を見せるようになり残虐性が膨れ上がっていくことで、復讐のために宿主を使い潰して乗り移り続ける怪物にまで堕ちぶれてしまう。

そうした性質もフラッシュと出会ったことを機に少しずつまた変化し、純粋なヒーローとして成長を続ける彼と行動を共にすることで、お互い信頼関係を築いていき、「制御の利かない化け物」でなく「お互いにとって必要なパートナー」と呼べるまでに進歩することになった。特にシンビオートの母星クリンターで精神の浄化を受けた後は高潔なヒーローとして活躍できるまでに至った。

後になってエディーと再会した際は、新たな子孫であるスリーパーを育てることや、エディーの息子ディランの面倒を見る責任感さえ覚えるほどに成長しており、エディー本人とも老齢の夫婦を思わせる信頼関係を見せている。

活躍

太古の時代、神々の生み出した「光」を仇とした邪神ヌルにより、彼の率いる闇の軍勢の一員として、影から創られたシンビオートの一個体「ヴェノム」が産まれる。

何人かその力を悪用しようとした者と結合してしまい、精神を汚されてしまったため、異端として同族から追放を受け、異星に幽閉されていたところを偶然スパイダーマンにより解放される。新たな黒いコスチュームとして彼と共生関係を築き、便利な装備だとピーターからも重宝されていた。

後に自身の黒いコスチュームが実はエイリアンで、意思を持った生物であり、挙句夜な夜な寝ている彼の身体を乗っ取って街にくり出していたことを知ったピーターは強い嫌悪感を覚え、音波を用いて無理矢理シンビオートを引き剥がす。
彼に捨てられたと思い、一方的な逆恨みを募らせたシンビオートは同じくピーターに恨みを持つエディに目をつけ、結合。怪人ヴェノムとして新たに活躍することとなる。


【パワー】

シンビオートは宿主と結合することで様々なパワーを得ることができ、ヴェノムの持つ力の殆どはそのシンビオートによるものである。

スパイダーマンを上回る超人的な腕力やスピード、耐久性を備えている上、スパイダーマンと結合していた際の記憶から彼のパワーをほぼ完璧に模倣しており、壁這いやウェブの射出まで可能としている。

その上危険を事前に察知する第六感、スパイダーセンスを掻い潜って攻撃する能力も持っているため、基本的なスペックではピーターをほぼ全ての分野で上回っている。

あまり披露されることはないが再生能力もずば抜けており、宿主の頭が両断され、胸に風穴が空いたとしても時間をかけさえすれば完治させることが可能。

加えて、シンビオートたちが構成する集合精神と接続することで真の力が解放され、翼による飛行などといったさらなる能力を発揮できるようになり、さらに力を増している。


【弱点】

ヴェノムはシンビオート全体に共通する弱点を有しており、その弱点を付かれると酷く弱体化する。

一つ目は炎などによる極端な高温。
大抵の生きとし生ける者は炎を嫌うものだが、特にシンビオートにとっての火はかなり致命的な弱点であるらしく、それを本能的に理解している彼らは少し火に近づくだけで過剰に嫌がり、炎にあてられると大きなダメージを負う。
オイルライター等の小さな火にさえ近づきたがらないことも。

もう一つの弱点は金属をぶつけ合わせた音、スピーカーのノイズ、専用の音波銃などから発せられる高周波。
それらに当てられた場合はシンビオートが苦しんで自身のコントロールを失い、バラバラに砕け散るために宿主と離れてしまう。
大音量でなければそこまで酷くやられることは無いが、それでも目に見えて弱体化するため、その弱点を付かれて敗北することは多い。

また、かつてのヴェノム・シンビオートはピーターを理想的な宿主と捉えており、彼と合体(アッー)したいという強い願望があるためにそれを利用されて罠に誘い込まれた事もある。
現在ではピーターへの執着は無くなったようで、むしろ現在はエディとフラッシュの間で迷うかのような描写が多い。


【その他のヴェノム】

+ 短期間ではあるものの、シンビオートと結合してヴェノムの力を得た者たち。
●アン・ウェイング
エディの元妻。
シン・イーターが原因の事件に巻き込まれたことで、意図せずシンビオートと結合。シーヴェノムとして短期間ながら何度か活動していたことがある。その経験が彼女の心に暗い影を落とし、それを苦にして後に自殺してしまう。
また、結合した際シンビオートによって無意識の内にエディの因子が身体に入り込んだようで、それによってディランという息子が産まれていたことが後に判明した。
別ユニバースではエージェント・ヴェノムチームの隊長として活躍している。

●アンジェロ・フォルトナート
エディが売りに出したシンビオートを買い取った金持ちのボンボン。
犯罪界の大物の息子として育ち、父親に認めてもらうためにヴェノムとしてスパイダーマンを襲撃。無関係の人々を何人も殺しながら彼を追い詰めるが結局は敗走し、その腰抜け具合に愛想を尽かしたシンビオートによって見捨てられ、落下死する。
数年後にカーネイジによって墓から遺体が掘り起こされ、脊髄を引き抜かれてゴミのように捨てられた。

●ウェイド・ウィルソン/デッドプール
狂気に染まった不死身の傭兵。
シンビオートがピーターと出会う前に一瞬だけ結合したことがあったり、エディがヴェノムになる直前、再びシンビオートを纏って好き放題していたことがあったりしたらしいのだが、正史に含まれているのかどうかは明らかにされていない。

●テル・カー
とあるクリー人の兵士。
ヴェノム・シンビオートと繋がった初めての宿主でもあり、シンビオートをスクラルとの戦争に利用していたらしい。何年も後になってエディの前に姿を現し、シンビオートを奪い取るが敗北。
脳と肉体をスリーパー・シンビオートによって乗っ取られ、半死半生の状態で乗り物として扱われることに。その後しばらくして再び地球に現れた際、その身体はスリーパーの中で完全に朽ち果てていた。

●キャロル・ダンバース/Ms.マーベル
絶大なエネルギーを操る女戦士。
シージにおいてスパイダーマンと共にヴェノムと戦うこととなり、その腕力に物を言わせてガーガンをシンビオートから無理矢理ひっぺがす、という荒業で勝利…したかと思いきやシンビオートによる不意打ちを受け、身体を乗っ取られてしまう。数ページの間だけ大暴れしたが、結局はスパイダーマンの手助けによって解放された。
アンとは異なり、ヴェノムとしての姿はなぜか男性的なスタイル。

●マレキス
雷神ソーの宿敵。
ダークエルフたちを伴って地球に侵攻した際、ヒーローとして立ちはだかったヴェノム・シンビオートを奪い取り、魔法を用いて自らに服従させた後に結合。原始のシンビオートである神殺しの剣”オールブラック”を模倣した禍々しい姿へと変化して雷神たちとの戦闘に挑むんだが敗れた。
今までのヴェノムが殆どしてこなかった「シンビオートの一部を他者に感染させて手駒にする」という戦法を多用した点が特徴的。

●ブルース・バナー/ハルク
怒りの化身をその身に宿す科学者。
エディでは新たなカーネイジを倒すのに力不足であると判断したシンビオートにより選ばれた一時期な宿主。かつてないほど強大な力を得たカーネイジと互角の戦いを繰り広げたが、単純な腕力勝負では勝てないと踏んだクレタスによって触手を用いた脳への精神攻撃を受け、さしものハルクも嫌がって引っ込んでしまったために敗北。


他にもシンビオートと繋がってヴェノムと名乗ったことのある人物は多数いる。



【余談】

「VENOM THE MADNESS」というスピンオフ作品ではサンフランシスコに引越しし、サンフランシスコの守護神となったエディ版ヴェノムがヒーロー活動をしている時に「リビング・ヴァイアラス」という未知の病原体(ウイルス)に感染し、ヴェノム・ザ・マッドネスという怪物になって暴れるというエピソードが展開された。



ヴェノムの体から『意志を持つヴェノムの顔』が沢山出て来たり、腕が増えたりとかなりグロテスクなデザインとなっている。
また、リビング・ヴァイアラスの影響でエディの性格が凶暴になっている。

最後はリビング・ヴァイアラスは自然消滅し、エディは再びサンフランシスコのヒーローに復帰する。
因みにそのヴェノム・ザ・マッドネスというのがこれ↓

どこぞの悪魔超人とかZ戦士とか言わないように
実際、この形態のヴェノムはあのジャガーノートにすら匹敵する腕力を発揮してみせた

映画『スパイダーマン3』で活躍したヴェノムのスピンオフ映画が始動。
……だったが途絶えてしまったためお流れに。
エージェント・ヴェノムが所属するガーディアン・オブ・ギャラクシーや(また)新たにスパイダーマンが始まるなど舞台(だけ)は整っていた模様。

アニメ作品や映画など正史ではない世界ではエディが悪いだけの人物だったり、シンビオート単体だったりと単純なヴィランとして登場することが多く、例としては
日本の「ディスク・ウォーズ:アベンジャーズ」では第35話「黒いスパイダーマン」・第36話「寄生体ヴェノムの弱点」にて登場。
ただし寄生体シンビオートがヴェノムを名乗っており、スパイディに寄生しNYで暴れさせるが、エディ本人は登場せず。
その代わり、ハルクに寄生してMVCシリーズでおなじみの体型で他のアベンジャーズと闘うというシチュエーションを見せてくれた。

アニメのアルティメット・スパイダーマンでも単純な生物兵器といったところだったがフラッシュと完全に適合しエージェント・ヴェノムが誕生。
こちらのエージェント・ヴェノムはフラッシュがまだ学生であり新人ヒーローであることや各アーマーや武装が最初に対峙したヴィランのビートルのものをコピーしたものになっているのが特徴である。

そして2018年11月3日、ついにヴェノムが映画化!!
監督に「ゾンビランド」のルーベン・フライシャー、エディ・ブロック/ヴェノム役に「マッドマックス 怒りのデスロード」のマックス役や「ダークナイト ライジング」のベイン役などのトム・ハーディを迎え、『凶悪』を喰らう残虐で『最悪』なダークヒーローものとして描かれている。
直接的なグロシーンはないとはいえ、人を捕食するシーンがあるためかPG-13(日本ではPG-12指定)レーティングが敷かれている。
アメコミ映画では『ワンダーウーマン』サム・ライミ版『スパイダーマン』(第1作)を抜いて8億2,250万ドルという興行収入を獲得している。
本作でのヴェノムは自らの意志を持つばかりか、原作とは違い流暢に宿主のエディと話しまくり、寄生虫呼ばわりされるとキレる等、非常に人間臭く設定されているのが特徴。
映画でのシンビオートには最初から人喰いの習性があるがエディに善人は食うなと言われて我慢する等、理性が働く上に宿主であるエディの恋路を応援する始末で、憎っくきスパイディの存在が無いとはいえ、最初から悪寄りとは言えないキャラクターをしていた。
また、映画版では犯罪者ではなく落ちこぼれであり、同じく落ちぶれたエディに共感した末に自己犠牲的な精神まで見せた。
尚、お互いにクズだとエディに語っているものの、エディとの相性が良すぎて本来の力よりも能力が増しているようで、自分達のリーダーであるライオットとも激闘を繰り広げられるまでになる等、「俺たち」にとって最良の共生関係を結んでいる模様。
しかし、クレタス・キャサディと面会したことで更なる「最悪」が引き起こされることに……。

日本の漫画『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』に登場する八ツ目無名異はヴェノムがモチーフとなっている。





「俺たちの為に追記、修正してくれるのか?」


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最終更新:2023年12月26日 11:10