89式装甲戦闘車

登録日:2011/11/18 (金) 17:37:45
更新日:2023/10/27 Fri 14:52:11
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89式装甲戦闘車(はちきゅうしきそうこうせんとうしゃ)

1989年より配備された日本初にして唯一の歩兵戦闘車(Infantry Fighting Vehicle=IFV)である。
陸上自衛隊では歩兵戦闘車ではなく装甲戦闘車と名称した理由は、歩兵のことを普通科と呼称するため(所謂、自衛隊用語)、
MBT(主力戦闘戦車)を除く装甲戦闘車両に有効な35mm機関砲と、対戦車自衛戦闘や揚陸艇迎撃を目的としたミサイルランチャーを搭載し、
さらに完全武装した普通科小銃班(他国の歩兵分隊相当)を収容し、90式戦車に随伴して戦場を駆け巡る。
その性能は諸外国の歩兵戦闘車と比べても遜色はなく、陸上自衛隊の唯一の機甲師団である第7師団の機械化戦力の一端を担っている。
と言うか、主にここでしか運用されてない。

派生型として、特科(砲兵)部隊用の99式自走155mmりゅう弾砲が存在する。


【スペック】
  • 全備重量:約26.5t
  • 寸法:6.8×3.2×2.5m
  • 最高速度:約70km/h
  • 武装:エリコンKDE35mm機関砲、79式対舟艇対戦車誘導弾(重MAT)、74式7.62mm車載機関銃
  • 乗員:10名(乗車要員3名、降車班員7名)


【生産】
そんな具合で中々にカッコいい89FVなのだが…悲しいかな、


たったの68両

しか生産されなかった…

原因はその高額なお値段だったとか。1両当たりの調達費は6~7億円と、MBTの第3世代に迫る価格である。
ドイツ連邦軍のプーマはそれよりも高価だが、あちらは陸軍国なので……

なお、主に89FVが運用されている第7師団第11普通科連隊では、重迫撃砲中隊以外の6個中隊を89FVで充足させる予定だった。
が上記の理由によりそれに至らず、配備は奇数中隊のみ(偶数中隊は装甲兵員輸送車の73式装甲車ないし96式装輪装甲車を運用)。
他の配備先は富士教導団の普通科教導連隊第1中隊と教育部隊に限られる。

また冷戦時代に開発されただけに、車体にはNBC環境下における乗車戦闘を考慮した銃眼(ガンポート)が設置されているのだが、
冷戦終結後は携行火器やIED(即席爆発装置)などが多用される非対称戦対策として銃眼を廃して防御力向上を図る趨勢になっており、
搭乗員の生存性が不安視されている。


【余談】
防衛省が一般公募した「ライトタイガー」という愛称があるが、ぶっちゃけ浸透してない。
運用部隊では単にFVと呼ばれている。
まあ他の一般公募愛称も似たようなものだが。
外国のIFV風に呼ぶなら、「T-89 ライトタイガー」だろうか?
うん、なんか微妙だね。

現在、後継となる近接戦闘車が計画されている模様。
MAV(Mitsubishi Armored Vehicle)の歩兵戦闘車型を推すミリオタもいるが、どちらも装輪式(キャタピラじゃなくタイヤ)。
これは現在の日本の道路事情を鑑みてのことだろうが、果たして装輪式で戦車に随伴出来るのか疑問である。

装軌式のメリットである不整地走破力が無くなるし、そして何より…



ロマン(と火力と装甲と安全性)が足りない!


この度、南方転地演習にて90式戦車と共に九州に初上陸した。
普通科用装甲車が不作続きの現状では、数少ない虎の子として今後も長く運用されることになるだろう。



追記・修正は後継が出来てからお願いします。

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最終更新:2023年10月27日 14:52