偉大なる戦士タイラー(遊戯王OCG)

登録日:2010/01/09(土) 21:16:42
更新日:2024/04/22 Mon 13:55:50
所要時間:約 5 分で読めます





価値?我々にも分からない。誰もこのカードには値段が付けられないだろう。
(「YAHOO!GAMES」の記事「The 10 priciest collectible cards(最も高価な10枚のトレーディングカード)」より)



偉大なる戦士タイラー(Tyler the Great Warrior)
星8/地属性/戦士族/攻撃力3000/守備力1500
このカードは特殊召喚できない。
このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊し墓地へ送った場合、
その攻撃力分のダメージを与える。



概要

《Tyler the Great Warrior》は、遊戯王TCG(海外版)において存在するモンスターカード。
日本語版は存在せず、日本語名の《偉大なる戦士タイラー》はDSのゲーム「遊戯王デュエルモンスターズGX Card ALMANAC」(カード図鑑ソフト)で、便宜的につけられたものでしかない。
後述の理由から世界一採用率の低いカードと言える。

上級モンスターの層が薄い戦士族にしては珍しい高打点の最上級モンスターで、《E・HERO フレイム・ウィングマン》と同じバーン効果を持つ。

攻撃力は最上級モンスターの中でも高い3000を誇るので、攻撃表示のモンスターを戦闘で破壊すれば相手に3000ダメージも与えることができる。
守備力は低めだが、《黒き森のウィッチ》でサーチ可能な最高守備力を持つため、一概に欠点とも言い切れない。

ただ、効果耐性がなくカード・アドバンテージに繋がる効果も持たないので魔法・罠を除去しそのターンで決着をつけるつもりで召喚したいところか。

攻撃力や効果から《地縛神 Ccapac Apu》を連想する人も多いかもしれないが、こちらは自壊効果が無い上にサポートの多い戦士族モンスター。
満足神はフィールド魔法依存という致命的な欠点を持つが、相手モンスターを墓地に送る必要が無く、更に《N・グラン・モール》や《A・O・J カタストル》に処理されない。加えて特殊召喚可能なので、相互互換と言ったところだろうか。

戦士族なのでリリース要員として《不死武士》を利用したり、《アサルト・アーマー》を利用して6000ダメージを与えることもできる。
十代のフェイバリットと共演させるのも面白いかもしれない。

総じて「切り札」の名にふさわしいカードである。










しかし、このカードを使用することは非常に困難

実はこのカード、遊戯王の漫画やアニメによくある
世界に一枚しかないカード
そのものなのだ。
世界一採用率が低いと書いたのもそのためである。


誕生秘話

このカードの所有者は、このカードのデザイナーでもあるアメリカの少年タイラー・グレスレ君。

当時(2001年)14歳だった彼は「小児未分化肉腫(癌の一種)」という治療の難しい病気に侵されており、普通の子供と同じような生活を送ることが不可能であった。
しかし、そのような子供達の夢を叶える「メイク・ア・ウィッシュ財団」が彼の「カードデザイナーになりたい」「自分だけのカードが欲しい」という願いを聞き入れ、アメリカや欧州で遊戯王カードの販売をしていたアッパーデック社に協力を依頼。タイラー君のイラストからこのカードを作り上げ、彼にこのカードを託した。
多分宇宙に打ち上げたりはしていない。
後に起こした事件で社会的にライフゼロに陥るアッパーデック社だが、このようにいいこともしているのである。

世界に一枚しか存在しないのは上記の理由から。
青眼の究極竜》や《真紅眼の黒竜》や世界大会優勝賞品など世界で一枚しか存在しないカードは他にもある*1が、それらはいずれも大会の景品であり、そのような経緯の無い世界に一枚だけのカードは非常に珍しい。


そのタイラー君の書いたカードイラストは、《伝説の黒帯》を装着した超サイヤ人の様な人物が畳の敷かれた闘技場で戦っているというもので、なぜか隅にスリケン手裏剣が散らばっているというシュールなもの。
彼は日本のMANGAやニンジャが好きだったのかもしれない。
実際、後のインタビューでタイラー君は『ドラゴンボールZ』の影響を受けたデザインであることを公言している。

難病の子供を励ますためのカードに何故「特殊召喚できない」(≒蘇生できない)などという縁起の悪い効果をつけたのかは不明。
上級モンスターは墓地に落として特殊召喚するのが普通だが、このカードだけは墓地に落としてはいけないということだろうか。
よく考えたら、このカードを生け贄にしたり埋葬したり生ける屍にしたり除外したりする方がよっぽど縁起が悪い。
だがこのカードは戦士族なので、《戦士の生還》で墓地から手札に戻すことはできる。偉大なる戦士は生還するのだ。


大会優勝賞品のような生産数の限られたカードは大概「デュエルに使用できない」と明記されているが、
このカードには書かれていないため大会でも問題なく使用できる。
元気になったタイラー君がデュエルで遊べるようにという配慮だろうか。

日本語版が存在しないため、残念ながら日本の大会での使用はできない。 
もちろんタッグフォースやWORLD CHAMPIONSHIPシリーズなどにも収録されていない。あくまで地球上でただ一人、タイラー君しか使うことを許されないのである。

ちなみにメイク・ア・ウィッシュは日本を始め世界各地に存在し、
日本で有名なのは「ボボボーボ・ボーボボ」の大ファンである盲目の少年の元をボーボボの作者の澤井氏が訪れ、ボーボボを読み聞かせた事である。





以下、重要なネタバレ































その後のタイラー君

2005年にこのカードを託された後のタイラー君の容体は不明であったが、
最近になって病気が完治したと伝えられ、全米が泣いた。

間違いなくこのカードに宿った精霊が漫画版GXの《ハネクリボー》のようにタイラー君に力を与えたと力説する人間は多い。


…が、2015年初頭に、タイラー君がインタビューでこのカードとのツーショットを公開し、
まだこのカードを所有している事と、
貰った時点でプラスティック製のケースに厳重に入れて保管していたために状態は完璧であることを明かしたが、
現在の彼はもう遊戯王では遊んでおらず、
難病を克服した彼は紆余曲折の末に失職してしまった事で生活に困窮しており、
Facebookにて高額で買い取るとの申し出があり、悩んでいることも一緒に明らかにした。

その後、2017年4月に公開された海外のインタビュー記事で、
まだ所有してはいるものの、売却も真剣に検討していると語っていた。
チャンス!と思ったそこのコレクター諸兄に参考までにお伝えしておくと、
今までで最も高額なオファーは$150,000(日本円にしておよそ1,600万円超)*2とのこと。

その後しばらく音沙汰なく、偽物が出回る事件が起こったりしていた中、2023年3月に公開された海外のYouTubeの番組にタイラー君が出演し、ついにカードをオークションに出すことが発表された
全世界の決闘者の注目を集める中、オークションは4月19日から30日にわたって行われ、最終的に$311,211(日本円にしておよそ4250万円)で落札された。

世界でたった1つのカードが売りに出されてしまったことに寂しさを感じる人も当然いたようだが、美談の後にも彼の人生は続くのである。現実は厳しい。だが──


かつて病気の少年を救ったカードが、今度は成長した青年の貧困を救ってくれたのだ


──こう考えてみると、少しはロマンを感じるのではなかろうか?





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最終更新:2024年04月22日 13:55

*1 ただし、テストショットなどが存在し流出していると言われている

*2 2017年4月時点の為替レートで計算。