タルモゴイフ/Tarmogoyf

登録日:2010/12/28 Tue 18:03:03
更新日:2024/01/10 Wed 09:02:24
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タルモゴイフ / Tarmogoyf (1)(緑)
クリーチャー ルアゴイフ(Lhurgoyf)
タルモゴイフのパワーは、すべての墓地にあるカードのカード・タイプの数に等しく、タフネスはその点数に1を加えた点数に等しい。
(アーティファクト、クリーチャー、エンチャント、インスタント、土地、プレインズウォーカー、ソーサリー、部族がカード・タイプ である。)
*/1+*


《タルモゴイフ/Tarmogoyf》とは時のらせんブロックの第3拡張パックである未来予知にて登場したクリーチャー。
レアリティはレア。

出た当初の評価は、所謂カスレア扱いであった 。その理由を幾つか列挙しよう。

1.「出た所でクマと同レベル」と思われていた
タルモゴイフのサイズは墓地のカードの種類に依存する。
ということはこのカードは2マナにも関わらず、2ターン目に出す段階では十分なサイズになっていないと思われたのである。
たしかに、相手のクリーチャーをインスタントかソーサリーで除去してようやく2/3という及第点のサイズである。
3/4とか4/5くらいのサイズがサラッと出せるようなカードだったら使い道があったのになぁ、とか当時のプレイヤーは思っていたとかいないとか(フラグ)

2.限界の存在するサイズ
一見すると他のルアゴイフとは違いカードタイプは上に書いてある8タイプしかないので、サイズに限界が生じてしまう事も敬遠されてしまう要因だった。
つまり、タルモゴイフは早く出してもサイズが大きくならないし、終盤に出しても大した制圧力もロマンもないカードのように思われてしまったのである。

3.ギャグカードの1つだと勘違いされていた
!?と思われる方もいらっしゃるかもしれないが、実は意外とバカにならないお話である。
未来予知というエキスパンションは時のらせんブロックの最後を飾るべく作られたパックであり、
「未来」を象徴とする、これからのMtGに導入されるギミックを多く試験的に取り入れたものとなっていたことは知ってのとおりだと思う。

そして未来予知時点では存在すらしてなかった「プレインズウォーカー」、そして全貌が明らかでなかった「部族」という謎のカードタイプを指定する。
不可思議なインパクトを持つタルモゴイフをプレイヤーたちは面白いなと思いつつも、実際に使おうという気を全く起こさなかったのである。
下手をすると、何に使うのか全くわからない《蒸気打ちの親分》のようなカードの親戚とすら思われていたフシすらある。

4.ハルクフラッシュの存在
タルモゴイフの登場とほぼ同時期、未来予知の発売に先駆け行われたエラッタの更新により、
かの《閃光》が本来のテキストに再修正され、かの伝説のゼロキル*1デッキ【ハルクフラッシュ】が産声を上げた。
(注意:閃光はウルザズ・デスティニー発売直後のエラッタにより、「マナを支払わないと直接墓地に置かれる」というルール文章に変更されいたため、CIPもPIGも誘発しないようになっていた。)

そのため、当時は誰もがレアといえば【ハルクフラッシュ】のために生まれたような2枚のカード《否定の契約》と《召喚士の契約》にご執心であり、
この当時のタルモがストレージで冬眠していた原因の1つとも言われている。


以上のような理由から、出た当初はクソみたいな値段で買い叩かれ、有効活用もあんまりできないだろうなーなどと囁かれていた。








ところが、このカードの「おかしさ」に気づいた人間たちがいた。


スタンダードプレイヤーA「あれ?これってもしかしてハンデスとすっげー相性良い《小悪疫》も入ったし、ちょっとデッキ作ってみるか。」
…こうして、【メガハンデス】が生まれた。

スタンダードプレイヤーB「あれ?印鑑を《ブリキ通りの悪党》で壊して+1/+1修整サイドからの石の雨でウルザランド壊して+2/+2修整《炎の印章》でクリーチャーを焼いても+2/+2修整!?!?!?」
…こうして、【グルール・ビート】は環境に一定の存在感を示した。

レガシープレイヤーA「へぇ、フェッチランド起動から《渦まく知識》撃つだけで2マナ2/3か。《思案》挟めば3/4じゃん。Will構えながら殴るのには持ってこいじゃね?」
…こうしてレガシーでは【カナディアン・スレッショルド】【Team America】等UGxクロックパーミッションが隆盛を極めた。

レガシープレイヤーB「へぇ、フェッチランド起動から除去撃って殴ってをしている間に2マナ3/4~4/5か。勝手にでかくなるし、怨恨》が墓地落ちてもちょっと嬉しいしコイツ…イケるな。」
…こうしてレガシーでは【Zoo】にタルモが入園し、余計に手が付けられなくなった。

ブロック構築プレイヤー「とりあえず墓地落とすギミックたくさんあるし、《地平線の梢》《トロウケアの敷石》もあるからちょっと緑白のビートダウンでも組んでみるか。」
…こうしてブロック構築でグランプリ07を【緑白ゴイフ】が制することになる。

あらゆるフォーマットで活躍の機会を得たタルモは、徐々に最初の評価を覆して行き気がつけばタルモは未来予知のトップレアとして君臨し、
気がつけば超高額カードの仲間入りを果たしていた。

どうしてこうなったのか?それは以下の様な理由があった。

1.構築と密接に関連するサイズ
タルモゴイフは他のルアゴイフのように、特定のカード・タイプのカードが何枚墓地にあるかを参照するわけではないため、
相手のデッキを問わず、また特に自分のデッキ構成を工夫しなくても、ある程度サイズを上げることができる。
つまり、裏を返せば「ちょっとデッキ構成・デッキの動きを工夫するだけで」フィニッシャーとして十分なサイズが約束されるのである。
これを最大限利用したのが、当時の【メガハンデス】や【白緑ゴイフ】、【グルールビート】のようなデッキである。

特に【メガハンデス】のようなコントロール色の強いデッキとタルモの相性はすこぶるよく、
こちらの積極的なコントロールによってタルモが育ち、これによって育ったタルモによって場が制圧できるのだ。
レガシー版【メガハンデス】とでも言うべき【Evergreen】というデッキがわざわざタルモをタッチしてまで仕込んでいたのはこれが理由である。

2.妙に色々なカードに耐性がある
実はこのタルモゴイフ、その能力の特異性故に色々なカードに対して耐性のようなものが備わっている。
特に有名なのは、墓地対策カードと火力の2枚についてだろう。

まず、墓地対策についてだがタルモはルアゴイフ一家の中で本家ルアゴイフ以外で唯一タフネスに「+1」の修整を持っているため、
たとえ墓地をすっからかんにされても0/1として場に残るのである。
しかも両方の墓地を参照するため、《大祖始の遺産》等の「自身が墓地に残らない上に、両方の墓地を全追放」するタイプの墓地対策でなければ0/1まで下がらない。
それだけでなく、本家ルアゴイフは墓地のクリーチャーの数が性能に比例していたため、そこから再び強化をするためには墓地にクリーチャーを貯めなくてはいけなかった。
しかし、タルモはカード・タイプを指定するため意外と立ち直りが早く、2/3や3/4程度にならすぐに復活する。
例えばソーサリーである《朝明け》で墓地をリセットした場合、解決後に《朝明け》が墓地に落ちて1/2のタルモが残る。返しのターンでセットランドフェッチ即起動で土地が落ちて2/3、さらに《巨大化》でも撃てばインスタントが墓地に落ちて3/4と即座にサイズが戻ってしまう。
こういった点から墓地対策カードについても若干の耐性があるのだ。まぁ、《ヨツンの兵卒》なんかは割と分が悪いけども。後ラヴニカへの回帰で登場した《安らかなる眠り》が天敵。

また、火力については多少分からん殺しな所もあるが、
例えば《稲妻》を2/3のタルモゴイフに打つ場合、もし墓地にインスタント・カードが存在していないのなら平然と生き残る。
これは状況起因処理のチェックは呪文を解決して《稲妻》が墓地に行った後に行われるため、チェックされる段階でタルモゴイフは3/4になっているからだ。
このように常に墓地の枚数をチェックしていないと思わぬ所で足元を掬われてしまうのもタルモの恐ろしさである。

3.色々なデッキにタッチしやすい
タルモはシングルシンボルのカードであるため、多色デッキを組みやすいエターナル環境に近づけば近づくほど容易にデッキに加える事ができる。
これは裏を返せばあらゆるフォーマットのあらゆるデッキに加える事が可能なカードである事を意味しており、
この組み込みやすさが原因となってあらゆるフォーマットのプレイヤーから需要が急増したためどんどん高騰していったと言われる。

しかし、これは逆にタルモを入れる必要のないデッキに対してまで「タルモ入れればいいじゃん」と宣うプレイヤーを増やす結果となったことも付け加えておく。
そしてタルモを入れておけば基本的に相手のタルモは無条件でブロックできる。
両方の墓地を参照するため、こちらのタルモも相手のタルモも常に同サイズ、かつタフネスがパワーより1大きいためである。
というわけでタルモの登場以降、このカードが使えるフォーマットでは「どうやってタルモでタルモを乗り越えるか、もしくはタルモとタルモを睨ませておいて飛行クリーチャーで無視するか」という状況だった。
例えばエクステンデッドではアラーラブロック参入後、同ブロックに登場した「賛美(クリーチャーを単独で攻撃させた際、コントロールしている賛美の数だけ+1/+1補正)」で一方的にサイズを上げるというテクニックが存在した。

このような理由からタルモは大人気を博し、色んなデッキに入れられるMtGきってのアイドル的存在となったのである。

このため余談だが、
TSP〜LRW期の高額レアと言われていたタルモ・カメレオンの巨像(獣群の呼び声の場合もある)・野生語りのガラクの頭文字をとりTCGと呼んでいた時期があった。
緑絡ませるならこれがないとTCG出来ないんでね。

その後は高額再録パック「Modern Masters」シリーズの目玉カードとしてほぼ毎回収録されているが、神話レアに昇格したこととパック自体が高額かつ定価の倍近くで取引されているため、値下がりには貢献していない。
Foil版にいたっては4万円前後での取引もザラ。
米国ではプロプレイヤーの某氏がラスベガスグランプリのシールド戦にて、チェック後人に回すパックからFoil版タルモを引き当ててしまい、下手な順位の賞金より高いために、そのままドロップしちゃったりだとか*2
モダンマスターズ2015で行われたトップ8ドラフトでFoilのこれがパックから出てしまい、自分のデッキには色違いで入らないのにピックするという暴挙に出たりとか話題に事欠かない*3


そんなタルモゴイフではあるが2017年も半ばに入ってようやく1万円を割ったり、状態や店の状況によっては6000円台になるところも出てくるようになった。
理由は複数あるが、度重なる再録を除くと

1.《致命的な一押し》の登場、及びそれに伴う《稲妻》の採用率の低下
Reid Dukeに「マジックを永遠に変えた出来事」とまでに言われた《致命的な一押し》の登場による影響は、このカードにも間違いなく及んでいた。
致命的な一押し/Fatal Push (黒)
インスタント
クリーチャー1体を対象とし、それの点数で見たマナ・コストが2以下であるなら、それを破壊する。
紛争 ― このターンにあなたがコントロールするパーマネントが戦場を離れていたなら、代わりに、そのクリーチャーの点数で見たマナ・コストが4以下であるなら、それを破壊する。
このカードの登場によりクリーチャーの基準は激変。除去耐性もCIPもない2マナ以下のクリーチャーは、一部を除き一気に採用率を落とすことになった。
またこのカードの特長の一つであった「火力で除去されにくい」という点も、そもそも《稲妻》の採用率が低下してしまったことにより薄れてしまうことに。
その後《稲妻》自体の採用率は元に戻っていくものの、相変わらず環境にはプッシュがいるわけで。

2.モダンにおける過剰なまでの墓地対策の蔓延
致命的な一押しの登場と前後して登場した《死の影》系デッキ。元々はかの【SuperCrazyZoo】から出発したこのデッキであったが、
《ギタクシア派の調査》を失い別の形にならざるを得なくなった。
その結果《ウルヴェンワルド横断》や《グルマグのアンコウ》、《瞬唱の魔道士》を採用した【ジャンド死の影】や【グリクシスシャドウ】へ発展していった。
これらはいずれも墓地に強く依存したデッキである。そうなると当然墓地対策もきつくなる。
サイドデッキには当たり前のように墓地対策が積まれ、メインデッキに《大祖始の遺産》を4枚積んだデッキが当然のように肯定され、しかもそれらがグランプリで優勝しているのだ。
上記に墓地対策に耐性があると書いたが限度がある。何度も何度も墓地が空になってしまえば対戦時間の殆どで1/2や2/3であったなんてこともありうる。

3.レガシーにおける天敵の登場
それではレガシーではどうかというと、こちらでは天敵が新たに登場していた。
《思考掃き》や《留意》から実質1マナで登場する《グルマグのアンコウ》と《黄金牙、タシグル》である。
こいつらの基本P/Tは5/5と4/5。序盤のタルモゴイフでは一方的にやられ、中盤でも勝てるかどうか怪しいサイズである。
おまけにこいつらや《死儀礼のシャーマン》は墓地を追放してくるのでタルモゴイフは更にサイズが縮んでしまう。

4.全般的な環境の変化
モダンでは怪物より強いと言われた人間デッキが環境トップに。その他にもホロウ・ワンやドレッジ・ヴァインのような超高速ビートダウン。アイアンワークスのようなコンボデッキが生まれた。また「神」こと《精神を刻む者、ジェイス》が解禁された青白コントロールや昔ながらの緑単トロンなどがいるが、タルモゴイフはそのいずれにも入らない。

レガシーではグリクシス・デルバーや4色レオヴォルドが圧倒的。こいつらにはあの1マナプレインズウォーカーこと《死儀礼のシャーマン》が当然のように4枚投入されていたため、タルモはほぼ全時間帯0/1扱いの雑魚であった。
その後2018年7月に《死儀礼のシャーマン》がレガシーで禁止カード入りしたことを受けての【カナディアン・スレッショルド】再浮上に伴いジリジリと価格が上がる時期があった。ただカナスレ内でもオリカこと《真の名の宿敵》と散らされることが多い模様。

しかし再浮上しただけであり、カナスレの立ち位置はグリクシス・コントロールやスニーク・ショー、エルドラージストンピィ、デス&タックスなどに次ぐTier2。Tier1デッキの中にはタルモゴイフの姿はいない。かつてのアンチ奇跡デッキであった【BUG(スゥルタイ)カスケード】*4も《師範の占い独楽》禁止による環境の変化*5によって下火に…。

これらの通り、タルモゴイフの採用されうるデッキがそもそも環境に残っていないという問題がある。
環境デッキに居場所がなければ需要は減り、需要が減ったカードの値段は当然下がっていく。
かつて覇権を握ったとはいえ、ここまで来てしまったタルモの未来はどうなる…。



追記せぬものは、死ぬ。
そして修正したものはタルモゴイフを育てる。

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最終更新:2024年01月10日 09:02

*1 誤字にあらず。本当に後手番スタートから、相手が土地を置く前に瞬殺可能。自分の1ターン目に入る前なのでゼロキルと呼ばれる。

*2 ドロップした場合は、そのまま人に回さずにお持ち帰り可能だったため

*3 ちなみにオークションにかけたら約14900ドル(当時の価値ならだいたい140万程度)になったとか

*4 続唱を利用してカードアドバンテージを稼ぐビートダウンデッキ。続唱のキーが3マナの《断片無き工作員/Shardless Agent》なので、《グルマグのアンコウ》や《黄金牙、タシグル》は続唱でキャスト出来ないために、2マナのタルモが採用される。

*5 打ち消されても続唱は誘発するため、相殺をすり抜けやすいのが利点だったが、独楽禁止によってこのメリットが薄くなった。