快傑蒸気探偵団

登録日:2012/04/23(月) 15:11:05
更新日:2023/09/26 Tue 00:34:20
所要時間:約 6 分で読めます




この町は常に白い煙に覆われていた

いたる所から蒸気が噴出し、町の全貌を深い煙の中に隠しているのだ

この土地からは、石炭以外に燃料として使用できるものが採掘されなかったのだ

それがこの世界に、異常とまで言えるほどの蒸気機関の発達を促したのである

その白い闇に紛れて数多くの怪人・怪盗が現れ、人々は夜の闇と共にその白い煙すら平和をおびやかす物として恐怖した

その煙に覆われた町を我々はこう呼ぶ


蒸気都市(スチーム・シティ)……


(語り:窪田等/アニメ版OPナレーションより)


■概要

月刊少年ジャンプ、ウルトラジャンプ、月刊電撃コミックガオ!で連載されていた麻宮騎亜の漫画、及びそれを原作としたアニメ作品。
燃料となる物質が石炭しか存在しないために蒸気機関が異常といえるほどに発達した街「蒸気都市(スチーム・シティ)」を舞台に、少年探偵の鳴滝、助手の鈴々、蒸気の力で動くロボットである強力が様々な事件を解決していく。
単行本は無印が8巻、続編の真・快傑蒸気探偵団が13巻まで出ており、第1部完として終了(真のシリーズ前半は無印の再録)。
その後、タイトルから真を外して新作エピソード追加で文庫化(全8巻)された。
ビジュアル面にサイボーグ009や鉄人28号、バットマン等の影響が散見される。
いわゆるスチーム・パンクの世界観だが、登場人物の名前は日本人風か、中国人風のものがほとんど。
非常にテンポが良く、ほとんどのエピソードは1〜2話、長くても3話で完結する。
終盤で数々の重要な伏線が新たに張られたが、未だ第2部は公開されておらず、テックランドやファンタムとも決着がついていない。

アニメ版は、テレビ東京系にて1998年10月~1999年3月まで全26話放送。
主題歌・挿入歌が作中BGMとして頻繁に用いられているのが本作の特徴であり、物語を盛り上げるのに一役買っている。

かなりマイナーだが、アニメ版以前にドラマCD化されている。全2巻。
ナイト・オブ・ファンタムとル・ブレッドの初エピソードのドラマ化で、原作の展開をベースに色々拡張されている。
付属のブックレットや設定資料集がかなり凝っている他、夫々専用の主題歌まで採用されるなどかなり豪華。
アニメ版とはキャストが完全に異なる。
後にアニメ版準拠のドラマCDも1巻発売され、2020年には原作・脚本・音響を原作者が務め再びキャストを一新してラジオドラマ『ニキシーチューブの憂鬱』がYouTubeでUPされている。



■登場人物

  • 鳴滝
CV:保志総一朗 折笠愛(ドラマCD) 辰まなみ(ラジオドラマ)
本作の主人公である少年探偵。右目が常に上だけ隠れている。
亡き父の後を継いで鳴滝探偵事務所を切り盛りし、高い推理力と大人顔負けの身体能力や各種武器で怪人・怪盗に立ち向かう。
そんな立場ゆえか子供とは思えないほど礼儀正しく、また事件を解決するときにも積極的に警察と協力するため周囲からの信頼も厚い。
幼いながら相当な場数を踏んでおり、有事の際にも余程の事でないかぎり取り乱さず冷静沈着に、だがアツく立ち回る。
大人顔負けのコーヒー通であり、かなり濃いブラックを嗜み豆に拘ってるのは勿論、挽き方淹れ方、水においてまで非常に強い拘りがある。
その一方で鉄道模型などを欲しがるなど年相応の一面も持っている。
彼の持っている銃はアタッチメント式であり、ワイヤーガンや鎖鉄球などに換装できる他、弾丸もトリモチ弾・チャフ弾・ドリル弾など様々。銃身が非常に短いが、鳴滝は常に正確な射撃を披露している。
着ているコートは特殊繊維製で、弾丸を受け付けない。
内側には銃用アタッチメントと弾丸がびっしりと収納されているほか、ボタンはリモコン式の爆弾にもなっている……こんなコートを纏っていたらむしろ銃撃戦のリスクが高くなるが気にしてはいけない。

  • (しゅう)鈴々(りんりん)
CV:田口宏子 水谷優子(ドラマCD) 鳥羽優好(ラジオドラマ)
看護婦として働きながら、鳴滝の助手もこなす16歳の少女。普段からナース服。暴力ヒロインの要素も持つ。
ナイト・オブ・ファンタムに騙され、亡き父周博士を蘇らせるべく鳴滝の知り合いの血液を奪っていたが、鳴滝との出会いや事件の顛末を経て鳴滝探偵事務所の一員となった。
よく無茶をする鳴滝のことを心配している。
基本的には優しいお姉さんなのだが、鳴滝が他の女性と仲良くしていると物凄くヤキモチを焼く。額にキスをするなど、鳴滝に対して気のあるそぶりを見せることもあるが、鳴滝がお子ちゃまなので発展しない。
父親を蘇らせたい一心で16歳にして看護婦試験に合格するなど、奥底に秘めたバイタリティは並々ならぬものがある。
なお紅茶派であり、コーヒー派の鳴滝とは好みが合わない。
また、車に少々詳しい模様。
ちなみに番組冒頭でテレビを見る時は部屋を明るくして離れて見て下さい。の警告をやっている。
事件の最前線で日々ドンパチやっている鳴滝の助手をやっているだけあり、最初こそ守られヒロインっぽいポジションだが次第に鳴滝に次ぐ推理力や身体能力を発揮するようになる。

  • 強力(ごうりき)
CV:鈴木琢磨 菅原淳(ドラマCD) 岡野浩介(ラジオドラマ)
巨大人形(メガマトン)と呼ばれる蒸気機関を動力にしたロボット。鈴々の父親、周博士が設計した。
唯一の自我を持つ巨大人形(メガマトン)で、自分自身の意思で考えて動くことができる。ただし「ガ」しか喋れない。
腕はマジックハンド式で、ドリルアームやチェーンソーアーム、ファン(扇風機)アームに切り替えることが可能。いずれも内臓式。
修理の度になんらかのバージョンアップをする。
パワーは凄まじい反面、細かい作業は苦手。買い物でシュークリームを掴もうとした際に何個も潰してしまっている。

  • 川久保
CV:長島雄一(現:チョー) 北村弘一(ドラマCD) 岡野浩介(ラジオドラマ)
鳴滝の執事。
物腰穏やかな老人で鳴滝の父の代から仕えている。鳴滝は絶対の信頼を持つ。
たまにお茶目。
鳴滝探偵事務所の装備品の一部は川久保が手掛けているらしく「川久保も際限ないなあ……」と鳴滝を感心させている。
スチーム・シティに関する重大な秘密を知るただ一人の人物。

  • 点心(てんしん)
大きなハムスター、ひょんなことから鈴々が拾い、鳴滝探偵事務所に居着く。
しばらく出番がなかったが、忘れられた頃に再登場し、更に巨大化していた。以降はちょくちょく顔を見せる。
戦闘力が高く、大人2人が相手でも圧倒できる。

  • 鬼瓦刑事
CV:飛田展男 堀内賢雄(ドラマCD)
帝都中央警察に所属する熱血刑事。
鈴々にゾッコンで鳴滝をライバル視している節があるが、本当は鳴滝のことを信頼している。鈴々には華麗にスルーされている。
推理力には難があるものの事件を解決しようとする情熱は確かなものがある。

  • 八神警部
CV:長嶝高士
帝都中央警察に所属する老警部。
「まあ、なんだなあ」が口癖であり、鬼瓦刑事とは打って変わって穏和で冷静。

  • アンナ・ハイエンド
帝都中央警察の鬼瓦班へ新たに配属された女刑事。
初登場時は後述のシャドウ=ボルト4号の件で鳴滝と強力に嫌疑がかかった際、建前上の監視役を務めた。
鳴滝の好みなのか、普段全くと言っていいほど女性に反応しない彼が顔を赤らめていた。そのため鈴々はアンナが絡むと、あからさまに機嫌が悪くなる。
一介の刑事とは思えない能力を度々見せる。

  • ジョセフ=マイヤード
CV:中博史
エネルギー工学の世界的権威。
優れた科学者ばかりが狙われるという事件が起きた時、警告しに来た鳴滝へ子供だからと侮辱まがいの発言をするが、後に助けられたことで協力するようになる。
お約束で仲間になってからは非常に温厚。

  • ル・ブレッド
CV:草尾毅 日髙のり子(ドラマCD)
鳴滝のライバルである少年怪盗。だが、後述のことからもうとっくに大人だと思う
不治の病に犯されており、自分自身の存在の証明をするために様々な事件を引き起こす。
怪盗といっても起こす事件が盗みだけとは限らず、スチームシティのあちこちに爆弾をしかけるという洒落にならないことをやらかしたことも。
鳴滝自身も知らない彼の秘密を終盤で知ってしまったらしい。死の病を抱える自分ですら軽く見えてくる内容のようだ。

  • (しゅう)蘭々(らんらん)
CV:長沢美樹 富沢美智恵(ドラマCD)
鈴々の実の姉でありル・ブレッドの助手。死んでいった患者を偲ぶために、黒いナース服を着ている。兼、恋人。原作ではベッドで一緒に裸になっていたりと肉体関係を表すシーンがある。
変装術などでル・ブレッドのサポートを行う。
鈴々とは探偵の助手と怪盗の助手という立場の違いだけではなく、看護婦としての在り様にも違う考え方を持つ。
重度のショタコンで、気に入った美少年は剥製にしてコレクションするというえげつない趣味を持つ。

  • スチーム・バット(飞皇(ひおう))
ル・ブレッドの駆る巨大人形(メガマトン)
周博士の遺産で、強力の弟機。蘭々が設計図を所持していた。
巨大人形(メガマトン)としては前代未聞の飛行能力を持つ。
飞皇が本来の名で、蘭々が世に出した際にスチーム・バットへと改名した。

  • 紅サソリ
CV:横山智佐
宝石などの美しいものを狙う女怪盗。ル・ブレッドとは違い一応盗みオンリー。
パスタとドリアという二人の子分を従えている。よく捕まるが、その度脱獄する。密かに人気者で、中には熱狂的なファンもいる模様。
人情味のある一面も持っており、鳴滝とは時に敵、時に味方。ちなみに作中で川久保とキスしたことがある

  • Dr. ギルティ
CV:西村知道
本名はゲルハルト=フォン=ハルト。生物工学の第一人者であり、世界的な科学者。
初めは温厚な人物を装っていたが、根は世界征服を目論む悪人で、本性を現した際にDr.ギルティを名乗りだした。
巨大人形(メガマトン)「シャドウ=ボルト」を操る。周博士に並々ならぬ敵対心を持ち、彼の遺産である強力を倒すため、何度も鳴滝たちの前に立ち塞がる。
確かに天才なのだが妙に詰めが甘い。

  • シャドウ=ボルトシリーズ
Dr. ギルティが開発した巨大人形(メガマトン)。1号から5号まで存在する。
アニメでは4号、5号は未登場。
2号以降の開発期間はそう長くないはずだが、装甲のインフレが凄まじい。


◆シャドウ=ボルト1号
巨大人形(メガマトン)用の電磁ネットを装備している。
遠隔操作しているためチャフなどで電波を攪乱されると動けなくなる弱点を持つ。
前腕部をワイヤー射出する「ロケットハンマー」が必殺技。
強力によって破壊された後はマイヤード博士に修理され、味方となる。

◆シャドウ=ボルト2号
高速回転することによって大竜巻を起こすことができ、もはや天変地異と呼べるほどの破壊力を誇る。
必殺技はそのまま体当たりする「シャドウ=ボルト回転アタック」で、強力をも大破させた。
装甲の厚さは1号の10倍もあったが、鳴滝に弱点を見破られ敗退。

◆シャドウ=ボルト3号
長い胴体と両手部のスパイク付き巨大鉄球が特徴で、潜水艇への変形機構を持つ。
装甲は2号の更に2倍。
必殺技は腕を縦に振り回し、遠心力で鉄球を飛ばす「ローリングシャドウ=ハンマー」
鈴々から強力の設計図を強奪することが目的。
やはり強力には勝ちそうになるが、鳴滝の作戦により破壊される。
しかし、設計図を持ち逃げすることには成功した。

◆シャドウ=ボルト4号
強力の設計図を元に、ギルティの独自解釈を加えたコピー品。黒いボディが特徴。
読者には正体バレバレだが、なぜか鳴滝たちは検討もつけていなかった。
今回は巨大人形(メガマトン)用の新素材「重合金R」を各所から盗み出していた。
鳴滝の作戦と蘭々の協力プレイで脆くなったところを、強力が放ったロケットハンマーで破壊される。ちなみにこの機能は、マイヤード博士が強力を修理する際、密かに搭載したもの。
一度は強力を倒し、重合金Rも一定量は盗まれたため、全体的に見れば今回はギルティの勝ちと言える。

◆シャドウ=ボルト5号
ギルティの最終作。ボディは重合金R製。
機械男爵の乱入により暴走したかに思われたが……?
弱点はゴム製の関節部。しかし、そこを狙えるだけの隙はない。

  • 機械男爵
CV:若本規夫
本作における愛すべき馬鹿ポジション。
顔面を金色の仮面で覆った重度の機械フェチであり、一目惚れした強力を自分のものにしようと策を練る。
その様は強力に結婚を申し込むのではないかと思えるほどである。
つまりDr.ギルティはある意味ライバルで、逆の方向性で強力に執着している。
ちなみに一度だけ番組冒頭のテレビを見る時は部屋を明るくして離れて見て下さいの警告をやったことがある。

  • 快盗ティンカー・ベル
突如、鳴滝探偵事務所を襲撃した謎の女性。
高い身体攻略と、ワイヤー射出できるグローブ、パラシュートなどの機能が付いたスーツを駆使する。
名前と顔、髪から正体が一目で分かる。

  • ナイト・オブ・ファンタム
CV:大塚明夫 小杉十郎太(ドラマCD)
本作のラスボス。
ケツアゴにガチムチのアメリカンヒーローテイスト満載の出で立ち。
どこか憎めないスチームシティの犯罪者の中では純然たる完全な悪人。
過去のある出来事から鳴滝を憎んでおり、彼本人のみならずその知り合い、果ては鳴滝を育んだスチームシティそのものにまで憎悪を向け、鳴滝を苦しめるためならば手段を選ばない。
終盤では悪魔の水と呼ばれる危険な物質と超巨大人形(ギガマトン)魔王號でスチームシティを破壊しようと企むが、まだ描かれていない。アニメでは描写された。

■用語

  • 電気公国(エレクトリカルシチズン)
膨大な地熱発電により急成長を遂げた大都会で、商業・文化産業が盛ん。いわゆる「眠らない街」で、ここと比べたら蒸気都市は田舎らしい。
飛行船が運行しており、蒸気都市から約6時間で到着する。
イルド病という難病のワクチンを入手するために鳴滝が出向いた。

  • 工業島(テックランド)ヴァルハラ
元は罪人の流刑地だったが、いつの間にかまとめ上げられて凶悪犯罪者の巣食う武装都市と化した島。
住民は獣人風だったりドラキュラ風だったりと、どこか普通ではない見た目をしている。
規格外の巨大な空中要塞「マホロバ」を所有している。

  • The Steam Press
コミックスに不定期で挿入される、新聞風のおまけコーナー。
事件を振り返ったり、道具などの設定や土地の背景を明かしたりする。
鈴々の下着姿を公開したこともあるトンデモ誌。

■余談

  • 蒸気都市とスチーム・シティは、書き字とルビがときどき逆転する。


追記・修正は、白く謎めく迷路に踏み込んでからお願いします。



この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • 漫画
  • 第1部完
  • アニメ
  • テレビ東京
  • XEBEC
  • 探偵
  • 蒸気
  • 麻宮騎亜
  • 君、微笑んだ夜
  • スチームパンク
  • 保志総一朗
  • 月刊少年ジャンプ
  • ウルトラジャンプ
  • 電撃コミックガオ!
  • 集英社
  • 98年秋アニメ
  • 90年代テレビアニメ
  • 蒸気探偵団

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2023年09月26日 00:34