水無瀬小夜子

登録日:2014/12/07 (日) 17:10:14
更新日:2024/03/20 Wed 18:58:06
所要時間:約 13 分で読めます





「三太君を 三太君を助けてください」



水無瀬小夜子とは、漫画『UQ HOLDER!』の登場人物。


【概要】

長い黒髪に花の髪飾りが可愛らしい、清楚可憐な印象の天之御柱学園都市(旧麻帆良学園)の女生徒。
雪姫の命で、学園都市内で断続的に怒り続けていた殺人事件の調査にあたっていた刀太達の様子を陰からうかがい、
九郎丸の前に現れ、上記のセリフと共に、謎の少年・三太を救う事を懇願する所が初登場。
三太の正体を知る人物のようだが……


【※以下、本編での活躍におけるネタバレを多分に含んでおりますのでご注意下さい】

























【本編での活躍】


上記のセリフの共に、三太が一連の殺人事件の犯人ではないかと疑う九郎丸の前に現れる。
ちなみに九郎丸に声をかける時は「お兄…お姉ちゃん」と九郎丸にとっては嬉しくない方向に言い直した。ナイスである

「あの子…自分では覚えていないけど もう…死んでいるんです」

飛行・透過・憑依・念動力……と、多彩で強力な能力を用いてUQホルダー不死身衆3人を圧倒した三太は、
実は8年も前にこの世から去っていたという事実を、彼の墓の前に案内した上で明かした。

イジメを苦にして自殺した彼に、何もしてあげられなかった事を悔み、
三太の友人になってくれるよう九郎丸に頼み込む等、心優しい一面を覗かせる。

……だが、それを聞いた九郎丸は何か違和感を感じていた。
その違和感を押し殺しつつ、三太の正体を知った事で、夏凜と突然連絡が取れなくなった事から三太を容疑者として扱い、
彼を拘束しようと一空と共に動くが、彼を庇う刀太が普段の彼らしからぬ推理を見せる。

三太が死んだのは8年前、12歳の時だと明らかになった。
だが、殺人事件が起こり始めたのは80年も前。
自分で認めた以上三太が何かしら関わっていた事には違いないが、
昔から別に殺人を犯し続けていた真犯人が居るはずだ……と。

それを聞いて九郎丸はふと振り返る。
8年前に死んだ三太の同級生もしくは友人であるはずの『彼女』は、それにしては幼すぎる姿ではないだろうか……

「不死…者?まさか…黒幕は…!」


一見普通の女生徒であった水無瀬小夜子、その正体は――――


別名『トイレの小夜子さん』
今事件の真犯人にして
稀代の死霊魔術師(ネクロマンサー)である


彼女もまた、三太同様既にこの世を去った人物であり、
UQホルダーが追っていた連続殺人事件の真犯人。
故人でありながら、後述する理由で現世に留まっており、
死んだ三太を幽鬼(レブナント)として生き返らせ、悪質な人間を殺す手伝いをさせていたのは他ならぬ彼女である。


【彼女の経緯】

元は魔法に素養のある普通の少女であったが、
2003年の秋、本編から83年前に、15歳の若さでこの世を去った*1
だが、彼女の魂は1つの選択をした。
同じように、悪しき他者に苛まれこの世を去った報われぬ者達の魂の受け皿となり、
そうして蓄えた力を以って、『悪しき他者達』への復讐を成し遂げてみせる事を……

こうして、彼女による永きに渡る復讐が始まる事となる。


【三太との馴れ初め】


80年前を最初に、断続的に『復讐』とした殺人を行っていった小夜子。
いつしか『トイレの小夜子さん』と呼ばれるようになり、
『姿を見て生きて帰った者はいない』と噂されるようになる。

だが、まだ人の心が多分に残り殺人に抵抗を感じる所があったのか、
ある日、男子トイレに篭って啜り泣いていた小夜子。
たまたまその個室に、所謂便所飯をしに来た少年・佐々木三太がやって来たのである。

自分が怖くないのかと問う小夜子だが、同級生からイジメを受けていてボロボロになっていた三太は、
もっと怖い奴らがいっぱいいる」と彼女を恐れなかった。
普段の居場所が無く、ここに居させてくれと頼む三太。
居場所の無い者同士、2人はすぐ打ち解ける。
2人の居場所であったトイレも、2人で掃除して劇的に綺麗にしたし、
三太の半生の話を聞いたり、一緒に昼ご飯を食べたりもした。

だが、そんな一時のささやかな幸せにも終わりが訪れる。
イジメを受けていた事を警察に相談した三太だったが、
イジメの主犯が学園理事のどら息子で、警察とも繋がりがあった為に、
逆に三太が犯罪者の濡れ衣を着せられるという憤懣遣る方無い事態となる。
「これ以上迷惑をかけられない」と、小夜子に別れを告げる三太だったが、
次に小夜子が彼と出会った時には、雨が降りしきる中、
イジメグループに殺害され横たわり、息絶えた姿であった。

悔しい」と今際の際の言葉を呟きながら死んだ三太の姿を見て、「このままでは終わらせない」と、
死霊魔術師としての力で、彼をレブナントとして生き返らせる事を選ぶ。

三太が目覚めたのは、小夜子が生きていた頃から飛んでいたという飛行船*2の上、小夜子のお気に入りの場所。
自分が幽霊である事、同じ存在となった事を三太に明かし、
飲み込みの早い三太は「これからもずっと一緒に居れる」と喜んだ。

しかし、「もう死んだんだからどうでも良い」と割り切っていた三太に反し、小夜子は割り切れないでいた。
悪人が権力を使い、弱者を蹂躙した挙句殺してもお咎め無し。
幾度と無く見てきた。年々酷くなる一方……
三太を殺した奴らを許せない彼女は、また『復讐』に打って出たのだった。

ある日、三太が呼び出されたどこかの室内。
小夜子の能力で天井と半融合しぶら下げられ、更に血まみれにされていたイジメグループ達の姿があった。
『三太へのプレゼント』と称しつつ、息も絶え絶えであろう彼らに電動ドリルで追い打ちをかける小夜子。
その凄惨な光景を見て、三太はその場から逃げ出した。

彼女からすれば、三太に復讐の機会を授け喜んでもらうつもりだったが、割り切っていた三太にとっては……

唯一の友達であった小夜子の行動に絶望して「もう俺を消してくれ」と頼む三太に対し、
三太との仲を終わらせたくない小夜子は、彼の記憶の一部を変える事を選ぶのであった……

【本格的な復讐】

自分では、三太の友人になれなかった。
その念からか、三太の記憶を改ざんし、自身を『三太に力を与えた人』程度の認識に変えた後は疎遠となったようで、
8年前、調査に来たUQホルダー・夏凜を止む無く撤退させるまでに追い込ませた所で姿を消す。

そして遂に、長年『報われぬ者達』の数知れない無念・悲痛・怨念をその身に受け入れ続けてきた事により、
それらに押し潰される形で、遂に『水無瀬小夜子』としての人格形成に限界が来てしまう

自分が自分で無くなってしまう前に、自分の代わりに三太の友人となれるよう、
再び殺人事件を犯し、UQホルダー達を呼び寄せ、
寮の管理人を操り、年代の近い近衛刀太・時坂九郎丸を『開かずの間』となっていた三太の部屋に同室させる事を選ぶ。

更に、生者への復讐の念に押し潰され、最早悪質な人間を厳選する事も出来なくなってしまう事を憂い、
敢えて夏凜の元に現れ自分を殺させようとするも、
この時にはもう、彼女の人格は半分以上崩壊。
逆に夏凜を殺そうとし、凄まじい魔法の一撃で行動不能に追い込んだ挙句、
透過能力による半融合で地面と半融合させ、地下1000メートルまで埋め込ませてしまう。

直後、三太を一連の事件の犯人として疑い、彼を消し去ろうとした九郎丸達の行為を見て失望。
刀太が庇った事により逃げ切った三太の元に現れ、
真相を話し別れを告げ、遂に、兼ねてより計画していた、
自身と三太を殺して無視した、世界の全てへの復讐を開始。

天之御柱学園都市内を始めとし、全世界の点々に屍食鬼(グール)化のウィルスをばら撒き人間を屍食鬼化。
その屍食鬼に噛まれた人間は同じく屍食鬼となり、ネズミ講式に人間を屍食鬼させていく世界規模のバイオテロを実行した。

混迷極まってくる事態の解決を目論むUQホルダー側にも、時を戻せる切り札・キリヱが現れるが、
烏のような翼を携え、遂に自身もUQホルダー達の前に黒幕として堂々と姿を現し、キリヱを噛み人質に取る。
九郎丸に魔のみを絶ち斬る奥義『斬魔剣・弐の太刀』を受け上下真っ二つにされるも、
周囲の瘴気を吸収し下半身を再生、まるで蜘蛛のような異形の姿と化す。
更に屍食鬼として目を覚ましたキリヱに九郎丸を噛ませ、彼も屍食鬼させてしまう。
彼と並んで戦う刀太に不意の同士討ちを喰らわせ、更にウィルスに侵食させ再生を大幅に遅延させ、
残る一空も一撃で義体を真っ二つにし、学園内に来ていたUQホルダーを1人で事実上全滅させる事に成功。
自身は、『お気に入りの場所』であったあの飛行船の上で作戦の行く末を見届ける事にした。

その彼女の居場所を見破った三太を、最早彼を認識も出来ず魔法で追い払おうとするも、
透過能力により攻撃を回避し彼女の元へと辿り着いた三太に説得され、自我を取り戻しかける。
が、自らを取り巻く荒御魂の影響もあってか、
荒御魂達を受け入れたのは復讐の為に自分が選んだ道である事、
自分との仲を切ろうとした事を三太に責めながら、
半身が無数の荒御魂と融合した、飛行船を覆わんばかりの巨大な異形の姿へと変貌。
操り支配下に置いた九郎丸に彼を襲わせるが、
復活し助太刀に来た刀太(ちなみに、飛べない刀太を連れてきたのは三太が殺そうとしたホームレス狩りの不良)の助太刀もあり、
再度彼女の元を三太が訪れる。

彼の渾身の一撃により、遂に無数の怨念から解放された小夜子。
しかし、その怨念は自身を形成していた一部でもあったが故に、
それらを失った小夜子は、気を失ったまま最期を迎え、三太の腕の中で無数の花びらとなって散った。

だが、それを憐れんだ刀太は、彼女の魂が残ったひとひらの花びらと共に、キリヱの能力で時間を戻す(=小夜子も復活する)事を提案。
彼女を復活させてしまう事を他のホルダーメンバーは危険視するも、
「何かあったら刀太に責任を取らす」と、キリヱは提案を受け入れ能力を発動。
バイオテロ発生前へと時は戻り、彼女も復活。
もちろん、自身に宿っていた数十万の無念の魂と共に

充分な時間・綿密な準備・即効性ある計画遂行力。
これらがあれば人類は容易く滅ぶ事を「脆い」と嘲り笑い、
刀太の選択に対し「甘い」と言い放ち、再戦の雰囲気を孕んできたが、
そんな『甘い』刀太の選択を前に、遂にUQホルダー達への敗北を認めた。

召喚した荒御魂の影を全て消滅させ、
共に行こうとする三太に、信頼のおける刀太と共に自分の代わりに生きていって欲しい事を伝え、
別れの言葉を交わし合い、刀太にも三太を託す言葉と、戒めとも警告とも取れる言葉を遺し、
再び無数の花びらとなって散り、この世を去っていった。



【その強さについて】

前述の通り、多数の『報われなかった者達』の魂達の受け皿となり力を蓄えた事で、想像を絶する力を手にしている。
広大な天之御柱学園都市エリア内だけでも、無念の内に自殺した人間は1年におよそ3000人*3
それを80年間受け入れてきたのだから、受け入れた無念の魂の数はおよそ24万にも及ぶ。
そんな数多の魂を受け入れてきた結果、最早『祟り神級の霊』と呼べるまでの力を持つまでになり、
彼女自身の元々の魔法の素養もあってか、グランドマスター級の魔法をも扱える。
魔法の始動キーは『アルエル・ファルエル・ベルベット』
ちなみに、前作から続投しているエヴァフェイトを除き、初めて固有の始動キーを披露した人物でもある、

グランドマスター級と聞いてピンと来ない方は多いだろうが、
具体的に言えば、小脇に人質のキリヱを抱えたまま、
ネギまでもお馴染みであったあの『魔法の射手(サギタ・マギカ)』を571矢放てるレベルである。

前作ネギまを振り返ってみると、闇の魔法【マギア・エレベア】修得直後のネギが同呪文を101矢放てるようになり、
そこから対ラカンへの猛烈な修行を経て、最終的に1001矢まで打てる(VSラカン戦、フェイト戦で使用)ようになったのであるが、
小夜子の場合、上述の通りキリヱを小脇に抱えたまま、小手調べのようなカンジで放っていた事を考慮すれば、
全力ならひょっとしてネギま終盤のネギに並んでしまえるのでは?とも取れる程の実力である。

他にも、三太同様透過能力による防御、それを応用した透過の中途半端な解除による半融合(常人なら壁や地面と半融合し即死)を使えるだけでなく、
キリヱや九郎丸ら不死人をも魂魄から操ってしまう屍食鬼化ウィルスを作成しその身に宿す等、強力かつ多彩な能力を携える。

この頃、主人公近衛刀太はまだ自身に眠る2つの力を半分も使いこなせておらず、
戦闘においても、その戦闘勘と肉体的な才能を活かし、重力剣を用いた接近戦が行える程度(重力剣自体はそこそこ強いのだが)。
共に潜入していた他ナンバーズ達も、正直彼と似たり寄ったりの強さであり、
そんな折に、ネギクラスの魔法をぶっ放すわ1人で世界を滅ぼしかけるわ……といった彼女が出て来るのは明らかにオーバースペックである。某マジンガ様どころじゃない。

作中でも「稀代の天才死霊使い」などと呼ばれ、彼女の存在を知るもの(ないしは、彼女の最高傑作である三太を見た者)からはことごとく高評価を得ている。

本作は前作ネギまに比べて「序盤から難敵がやたら多い」と言われる事もあるが、
そう言われる主な要因は間違いなく彼女の存在である。


【使用魔法一覧】

・闇竜の息吹

「来たれ風精 闇の精 闇を纏いて迸れ 心喰らう覇王の咆哮」

夏凜を一撃で行動不能に追い込んだ技。
夏凜のセリフを鑑みるに、ダメージだけでなく、精神・神経を麻痺させる効果がある模様。
また詠唱の法則性からすると、「雷の暴風」「闇の吹雪」などと同格の技か。

・『魔法の射手(サギタ・マギカ)』

上述の通り、ネギまでもお馴染みであったアレ。彼女の場合、闇火の連弾を放つ。
これも上述の通り、明らかに全力では無いカンジで571矢も放ってみせた。

・雷の黒斧(ディオス・テュコス・メラン)

無詠唱で放った呪文。闇と雷属性のエネルギー体を放つ。

・雷の投擲(ヤクラーティオー・フルゴーリス)

これまたネギも使っていた呪文。
ネギの場合、白く発光した1本の大きな槍を放っていたが、
彼女の場合は細長く黒い重厚な槍を数十本程放つ。
詠唱内容はネギと同じ。

  • 神の雷・黒き雷

どちらも詠唱無しで放った呪文。
前者は雷の、後者は闇のエネルギーが色濃く現れた電撃呪文。
三太は透過能力や回避によりダメージを受けなかった為、
本来の威力の程は不明。
おそらく「白き雷」「紅き焔」などと同格。


<余談>
本作において明かされた、前作からの黒幕・始まりの魔法使いの能力、『共鳴り』。
彼女もまた、世界のあらゆる感情、とりわけ敗北者の無念を自分の感情と同様にまで共感し、
その無念の想いを世界から無くす(=世界を終わらせる)為に動いている。
つまり言ってみれば、小夜子は制限版始まりの魔法使いと言っても過言ではない存在なのである。
尤も、始まりの魔法使いと一体化したネギの姿を見た三太は、彼の背後に蠢く亡者の数は『小夜子の数万倍』と見立てているため随分と格が違うが。


競争とはどんな社会に於いても必ず発生する事象であり、弱き者や敗北者が一定の不利益を背負う事になるのは変えようもない真理である。
ありとあらゆる競争を元に、社会は発展していくのである。
だが、そうして発展してきた社会は、人の記憶に残る事なく忘れ去られた、名も無き無念の敗北者達が礎となって出来ている事を忘れてはいけない。
弱者・敗北者も感情有る生き物。考えて、思いやりを以って接するべきは当然であり、力を以ってして弄ぶのは言語道断。

そんな当たり前の事を忘れてしまった者が余りにも増えていけば……いずれ、彼女のような存在に大きなしっぺ返しを受ける事もあるかもしれない。




「…は…ははは お前ってさ あっちの方が素だろ 俺の前じゃ散々カワイコぶりやがって」


「へへへ 幻滅したでしょ」


「いーや 嫌いじゃないぜ あの時素直にスゲーって思っちゃったもんな」


「うん…私も 大好きだったよ三太君」




近衛刀太…三太君を…
…いいえ 心しなさい

あなた達の日常は私達の屍の上に

いい気になってるといつでもひっくり返すわ 私がその証明





追記・修正は、弱者への労りを忘れない方がお願いします。


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最終更新:2024年03月20日 18:58

*1 原因は不明だが、『君と私を殺して無視したこの世界』という発言から鑑みるに、イジメの末の自殺か、後述するように悪質な他殺のどちらかである可能性が高い

*2 明言はされていないがその形状を見るに、ネギまにて登場し、超鈴音との決戦の舞台となったあの飛行船であると思われる

*3 学園都市エリアだけで3000人と聞くと多く感じるかもしれないが、現在の日本の年間自殺者数は約24000人程であり、本作の世界は50年ほど前から異常気象・貧富の格差の拡大により東京中心部以外は荒廃が進んでいる事、天之御柱学園都市が新東京のエリアの大半を占めている事を考慮すれば、案外妥当な数字と言える