オスヴァルト・フォン・ミュンツァー(銀河英雄伝説)

登録日:2015/11/18 (水曜日) 02:49:22
更新日:2023/07/30 Sun 15:45:01
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検察官は言われる。被告には帝国軍撤退の全責任がある、と。
しかし被告は総司令官にあらず、一介の参謀である。

検察官は言われる。被告は勝利のための作戦をたてなかった、と。
しかし被告は参謀長にあらず、一介の参謀である。

検察官は言われる。被告は補給物資を横流しして味方を害した、と。
しかし被告は主計官にあらず、一介の参謀である。

検察官は言われる。被告は味方の通信を妨害し、ために戦況は味方の不利になった、と。
しかし被告は通信監にあらず、一介の参謀である。


一介の参謀!

たかだか一介の参謀が、遠征軍の総指揮、作戦、補給、通信の各分野にわたって
最高度の権限を有するなどということがありえようか。

ありえるとすれば、それは一個人に権限を集中させた組織それ自体の罪である。
組織の罪でないとすれば、一個人の無法な跋扈を放任した各分野の責任者の罪である。
被告の罪を責めるなら、同時に、彼らの罪も問われなければならぬ。
被告の弁護人たる本職、帝国軍中将オスヴァルト・フォン・ミュンツァーは、
軍と法廷の真の威信を守るためにも、被告の無罪を主張する。

明らかに、被告は、彼自身の物にあらざる罪のために不当な裁きを受けていると確信する故にである…




オスヴァルト・フォン・ミュンツァーは、銀河英雄伝説の歴史上の人物。


■[弾劾者ミュンツァー]■

ゴールデンバウム王朝銀河帝国と自由惑星同盟との間に行われた初の軍事衝突である「ダゴン星域会戦」は、帝国軍の完全敗北に終わった。
総司令官であるヘルベルト大公は、時の皇帝フリードリヒ3世の三男であったため、敗戦の責任を問うことが出来ず、その不名誉を一身に背負わされたのは、彼の補佐役であったゴットフリート・フォン・インゴルシュタット中将だった。

その軍法会議においてインゴルシュタットの弁護人を任じられたのがオスヴァルト・フォン・ミュンツァーである。
軍部がミュンツァーを弁護人に任命した理由は唯一つ、インゴルシュタットと十年来の不仲であったから、であった。
だが、軍部の予想に反してミュンツァーは全力でインゴルシュタットを弁護した。
上記のセリフは軍法会議における彼の最終弁論である。

秘密裁判であったにもかかわらず、この最終弁論は外部のものにひそかに伝わり、彼は以後「弾劾者ミュンツァー」と呼ばれるようになった。
結局、このミュンツァーの奮闘は報いられることはなく、軍法会議はインゴルシュタットに対して死刑を判決する。
この判決を聴いたインゴルシュタットは、最後にミュンツァーに一礼した後、一切取り乱すことなく粛然と刑に服した。

■[司法尚書ミュンツァー]■

裁判後、ミュンツァーは帝都防衛司令部参事官から辺境の警備管区司令官に左遷され、さらに予備役に編入された。
だが、フリードリヒ3世(敗軍帝) の死後、二人の皇帝を経てマクシミリアン・ヨーゼフ2世(晴眼帝)が即位すると、その人物を見込まれ司法尚書に抜擢される。
ミュンツァーが持論とする「距離の暴虐」論を容れた皇帝は、自由惑星同盟への侵攻計画を破棄。
永年にわたって緩みきっていた綱紀を粛正し。劣悪遺伝子排除法という遺伝性の病気を持つ者を安楽死させる悪法を有名無実化するなど、内政に力を注ぎ。政治の腐敗とダゴン星域会戦の敗戦によって傾きかけていたゴールデンバウム朝銀河帝国を立て直した。

ゴールデンバウム王朝中興の祖となったマクシミリアン・ヨーゼフ2世の後を継いだコルネリアス1世の時代にも、ミュンツァーは引き続き司法尚書として用いられた。
が、内政面では先帝の方針を引き継いだコルネリアス1世だったが、外政においては先帝とは意見を異にしており、自由惑星同盟の征服を目論んだ彼は、同盟領に対してゴールデンバウム王朝史上唯一の親征を企てる。

それに反対したミュンツァーは、聞き入れられないと分かると自ら職を辞し下野した。
先帝からのこの名臣の引退に対して、コルネリアス1世は彼に元帥の称号を与えることで報いようとするが、ミュンツァーはこれを固辞。そのまま政界を引退した。

■[その後]■

コルネリアス1世の軍勢は、ダゴン星域会戦の勝利に驕る同盟軍を二度にわたって敗走させ、一時は首都ハイネセンに迫るも、帝都で発生した宮廷クーデターによって撤退を余儀なくされる。
以後、ゴールデンバウム朝銀河帝国と自由惑星同盟の宇宙の覇権を巡る戦いは、ラインハルト・フォン・ローエングラムの登場によってその幕が閉じられるまで、130年もの長きにわたり続いていくのであった。

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最終更新:2023年07月30日 15:45