ポリプテルス

登録日:2016/12/08 (木曜日) 0:26:00
更新日:2024/04/24 Wed 22:27:19
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ポリプテルスとはポリプテルス目ポリプテルス科に属する魚の総称である。
全てアフリカ大陸に生息しており、顔つきや大きさに差異はあるものの背中に一つ一つが独立したヒレを持つという所は全種に共通している。

概要


名前の由来はpoly(多くの)pterus(ひれ)に由来しており、名前の通り小離鰭(しょうりき)と呼ばれる一つ一つが独立したトゲのようなヒレを持っている。
胸鰭に筋肉が集中しており、まるで腕のようになっているのが特徴でその姿は魚というより爬虫類的。
その起源は極めて古く、原型となる種類は4億年前のデボン紀には既に登場していたとされ、
数々の近縁種が絶滅する中その形質を保ったまま生き延びた生きた化石である。
同じく古代魚として有名なアロワナやガーのような魚に共通してガノイン鱗と呼ばれる普通の魚類の鱗とは違った鱗に全身を覆われている為、
通常の魚類よりもケガや病気に強いという特徴がある。
先述した前足のような鰭を持つことから生きた化石、或いは古代魚と呼ばれ、一説にはシーラカンスの近縁という説や魚類と両生類を繋ぐミッシングリンクにあるという説がある。
幼魚の頃はアホロートルやイモリといった有尾類の幼生のように赤いフサフサの鰓を持つのだが成長とともに消失する。
トゲのような鰭とトカゲのような姿と普通の魚類からかけ離れた姿な上に丈夫である事から飼育しやすく、ペットとして人気であり様々な種類が流通している。
一般的にポリプテルスと言っても比較的小型の種類が多く丸い顔つきの上顎系と呼ばれるグループと
全てが大型種で顔が平たくシャープな顔つきの下顎系と呼ばれるの2つのグループに分かれているがこれはアクアリウムの業界用語で
正式には上顎系はパルマスタイプ、下顎系はビチャータイプと呼ばれる。

(パルマスタイプ)



  • ポリプテルス・セネガルス

パルマスタイプの筆頭格とも言える種類でもっともメジャーなポリプテルス。
名前の通りセネガルを中心に生息しており、これといった特徴はないのだが
繁殖技術が確立されている為もっとも流通量が多く、価格もリーズナブルで
アルビノやショートボディ、ロングフィンといったバリエーションも存在する。
ただ、大量流通の為に近親交配されている為病弱な個体が多く、
餌を食っていても大きくならなかったり酷いと急死したりすることも。
性格は多様だが新しく導入した魚に対して噛みつくいわば"噛み癖"のあるややキツイ子が多く、
混泳には注意が必要。
最大50㎝とされるが先述の近親交配の影響かあまり大きくならず、30cmになればいい方。

  • ポリプテルス・デルヘッジ

パルマスタイプの一種でセネガルスの次によく知られた種類と思われるポリプテルス。
コンゴに生息しており、バンドと呼ばれる縞模様が体にあるのが特徴。
バンドの種類が豊富でタイガーバンドやサンダーバンド、はてはバンドそのものが存在しないバンドレスというバリエーションが存在する。
セネガルスに比べてやや高価な上、バンド次第で変動する。
性格はセネガルスに比べて神経質で驚くと凄まじいスピードで泳ぎ回り、パニック状態になるのであまり初心者向けではない。
上手くいけば40㎝になるが成長はかなり遅く、20㎝を超えさせるのも一苦労である。

  • ポリプテルス・パルマス・ポーリー

パルマスタイプの一種でセネガルス、デルヘッジと並ぶメジャーな種類。
セネガルスと同じくこれといった特徴はなく、強いて言うなら緑色が強いこと位だが
環境に慣れるとその緑色の体色が美しく変色し、見応えある姿となる。
性格は上の2種に比べておっとりしており、ポリプテルスとしては珍しくぷかぷか浮いている事が多い。
大きさは30㎝程と結構大きくなるので90㎝水槽必須である。

  • ポリプテルス・パルマス・ビュティコファリー

上記のパルマス・ポーリーの亜種として知られるパルマスタイプのポリプテルス。
黄色や紫色の美しい模様が特徴で下のモケレンベンベ、レトロピンニスらと並ぶ極めて入荷の少ない希少種。
最大40㎝とかなり大型化する種類…
なのだが成長が極端に遅い事でも有名で大抵のポリプテルスが2年程経てば20㎝を超えるのに
本種は15㎝のまま一年ごとに数センチしか大きくならないという報告もあるという。

  • ポリプテルス・モケレンベンベ

パルマスタイプ最小種とも言われる種類で大きくても20㎝程の小型種。
だが後述する種のせいでかなりややこしい事になってる種類としても有名。
名前の由来はアフリカにいるとされる未確認生物モケーレ・ムベンベから。


  • ポリプテルス・レトロピンニス

日本に輸入されてくるパルマス種でもっともレアとされる種類であり同時にややこしい種類でもある。
というのもレトロピンニスの存在自体はかなり昔から知られているのだが何をどう間違えたのか日本では
上記のモケレンベンベレトロピンニスとして紹介してしまい、
その結果名前が入れ替わって売られてしまうという事態になってしまっている為。
輸入が少ないのと名前がごっちゃになってる事から謎が多く最大の大きさは諸説あるが
30㎝になるらしい。

  • ポリプテルス・ウィークシー

ザイールに生息するパルマスタイプのポリプテルス。
かつては幻の種類と言われたポリプテルスで他の種に比べてかなり頭でっかちなのが特徴。
最大50㎝とされるが成長はかなり遅い。

  • ポリプテルス・オルナティピンニス

ニシキヘビのような美しい模様が特徴のポリプテルス。
大きさは60㎝とあまり大きくならないとされるパルマスタイプでは例外的に巨大化する種類。
幼魚の頃は先述したニシキヘビのような特徴が顕著なのだが成長すると消えてしまい、地味になる事も。
巨大な種類で成長が早い上に性格も荒めなので飼育・混泳する時は注意が必要。

  • ポリプテルス・トゥジェルシー

2004年と比較的最近発見されたポリプテルス。
ポリプテルスにしては体が細長い体型。上記のモケレンベンベやレトロピンニスを
巨大化させたような外見と言えばわかりやすいだろうか。
発見されたのが比較的最近の為謎の部分もあり、
最大体長は諸説あるが少なくとも60㎝を超えるなど大型化するのは確かなようなので
mクラスの水槽が用意できなければ飼育はできないだろう。


(ビチャータイプ)


  • ポリプテルス・エンドリケリー・エンドリケリー

ビチャータイプの筆頭格であり最もメジャーな種類。
ニジェールやスーダンに生息しており、繁殖技術が確立している為、ビチャータイプの中でもっともリーズナブルな価格。
さながらビチャータイプ版セネガルスとも言える種類である。
大きさは60㎝ほどで後述するコンギクスという亜種がいる。

  • ポリプテルス・コンギクス

上述したエンドリケリー・エンドリケリーの亜種…と言われていたが近年独立した種となった。
ザイールに生息しており、エンドリケリーに比べて大型化しやすいとされる。


  • ポリプテルス・ビキール・ビキール

ケニアに生息しているビチャータイプのポリプテルス。
1802年に学術発表された最初のポリプテルスとして知られる。
ポリプテルスの中で最大と言われており、幼魚は細いのだが飼い込まれた個体は滅茶苦茶太くゴツくなり、
そのゴツさも相まってまさにゴジラのような貫禄のある姿になる。

  • ポリプテルス・ビキール・ラプラディ

上記のビキール・ビキールの亜種と言われる種類。
神経質な性格で物陰に隠れたりする事が多い上に餌のえり好みもあるので
大型化させるのが非常に難しい事で知られる。


近縁種


  • アミメウナギ

西アフリカに生息しているポリプテルス属に近縁の種類で一属一種の珍しい魚。
名前の通りウナギのように長い体が特徴でその姿はまるでポリプテルスを細長く伸ばしたような外見。
ポリプテルスが西洋のドラゴンに似た姿とするならアミメウナギは東洋の龍に似た姿といえば伝わりやすいだろう。
最大は37㎝ほどだが細長いのであまり迫力はない。

番外編


  • ハイブリッド
アクアリウム業界において近縁の異なる種同士を掛け合わせて
新たな種を作るということが時折行われるがポリプテルスも例外ではなく、
パルマスタイプ、ビチャータイプ問わずにハイブリッドが出回ることがある。
中でもラプラディとエンドリケリーを交配させた通称ラプエンと呼ばれる品種が有名で両種のいいとこどりである為人気は高い。
パルマスタイプでもセネガルスとパルマス、パルマスとデルヘッジのハイブリッドが存在するがビチャータイプ同士を交配させたラプエンに比べてマイナーなのかあまり出回らない。
多くは養殖だが稀にワイルドのハイブリッドが捕獲されて輸入されることもあるようで
その場合養殖のハイブリッドに比べても極めて高価である。


余談

さて、丈夫で病気に強く飼いやすいと書いたポリプテルスだが病気にならない訳ではなく、劣悪な環境で飼えば普通に病気になる。
とりわけ、ポリプテルス類のみに寄生する線虫のような寄生虫であるマクロギロダクティルス・ポリプティという寄生虫が存在する事で知られる
この寄生虫に寄生されたポリプは痒がって砂利や隠れ家などに体を擦り付けたり胸鰭で体を掻いたりするのだが
放っておくと免疫力が低下し、そのまま衰弱死したりそこから他の病気に感染したりして死亡する危険な寄生虫。
しかも恐ろしい事に野生採取個体にはほぼ100パーセント寄生している。
ポリプテルスだけでなく近縁であるアミメウナギにも寄生するが生息地が異なる為か免疫が無いようで寄生されると高確率で死亡してしまう
ポリプテルスと混泳しているアクアリストも多いがその一方でアミメウナギとの混泳はあまりオススメしないと言われる所以である。
どうしてもというのであれば自己責任でお願いします。
ただ、イカリムシやチョウと言った他の寄生虫のように体表に食い込んで動かなかったりくっついて動かなかったりではなく、
体の表面でウニョウニョ動いて目立ちやすいので寄生が確認されたら熱帯魚用の薬を薄めて入れて駆除する事。

呼吸には鰓呼吸だけでなく、空気呼吸も必要な為、呼吸するスペースがない位水を入れてしまうと魚類の癖に溺れて死んでしまう。誇張ではなくマジで。
実際初心者には魚だから鰓呼吸できると水槽いっぱいに水を入れてしまい、死なせてしまう人も少なからずいるようである。


追記・修正は古代のロマンを知った人にお願いします。

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最終更新:2024年04月24日 22:27