堕姫/妓夫太郎

登録日:2017/12/07 Thu 13:15:17
更新日:2024/04/25 Thu 21:05:43
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人にされて嫌だったこと苦しかったことを
人にやって返して取り立てる
自分が不幸だった分は幸せな奴から取立てねぇと取り返せねえ

それが俺たちの生き方だからなあ
言いがかりをつけてくる奴は皆殺してきたんだよなあ

お前らも同じように 喉笛掻き切ってやるからなああ


堕姫(だき)及び妓夫太郎(ぎゅうたろう)とは『鬼滅の刃』の登場人物の一人である。

目次


◆概要

鬼舞辻無惨が選別した十二鬼月“上弦の陸”を務めるの兄妹。
普段は堕姫が正体を隠し、遊郭の遊女として暗躍。
作中現在では「蕨姫(わらびひめ)」という名の花魁として活動しており、人食い鬼としての裏の顔と吉原屈指の美貌を持つ花魁の表の顔を使い分けて吉原を裏から実質的に支配し、兄の妓夫太郎は非常時以外では表に出ることはない。

鬼の気配を感じて潜入した音柱・宇髄天元炭治郎達と対決した。


堕姫(だき)


何?まだ何か言ってるの?もういいわよ不細工 

醜い人間に生きてる価値無いんだから

仲良くみんなで死に腐れろ


表向きの"上弦の陸"。上弦の紅一点。
表向きは江戸時代の頃から、吉原やその他の遊郭においてその美貌で花魁として名を馳せており、その人気は吉原不動のトップ
当然人間への擬態の精度は高く、花魁として活動している際の見た目は完全に着物姿の妖艶な美女。
気配も限りなく人間に近づけており、突出した聴覚を持つ善逸も直接相対するまでは鬼の存在に気づかなかったほど。
普段は店の中の日の当たらない部屋に座している。


約10年というスパンで、老いの無い美貌を疑われる頃には姿を変えて身を隠し、別の花魁として再び吉原で活動するといったことを繰り返して人々と鬼殺隊の目を欺き、時には返り討ちにしながら、吉原で100年以上に渡って人間を喰らってきた。
鬼殺隊側からの呼称は『帯鬼』。

外見

ランジェリーじみた服装に腰から複数の帯を生やし、三本歯の下駄を履いたただの痴女露出度の高い姿。
花魁らしく肉付きもよく、出るところは出て細い所は細い非常にグラマラスで妖艶なスタイルをしている。
また、最初期の黒髪の状態は力を細分化した弱体化状態であり、後述の分身を取り込むと完全体に変化。
その際は髪が本来の髪色である毛先が緑色に染まった白髪になり、全身にヒビの様な紋様が入る。

性格

一人称は「アタシ」
見た目こそ絶世の美女だが、性格は残忍で冷酷、傲慢な性悪女。
基本的に自分の美的センスにそぐわない他者を一律で醜いと見下しており、気に食わないことがあると首を傾けて下から睨めつけてくる癖がある。
他の鬼同様人間の存在は餌かゴミ屑程度にしか認識しておらず、人間として振舞っている時でさえ遊郭で働く少女にパワハラしたり、他の遊女を虐めて自殺に追い込むこともあった。
一方で、鬼舞辻には心底惚れており、鬼舞辻の前では初恋をした少女のような態度に一変する。
鬼舞辻の方も「お前は特別な美しい鬼だ」として堕姫を気に入っており、それゆえパワハラの被害にはあっていない。

不細工な人間を特に忌み嫌っており、 「(不細工は)生きてる価値がない」などの差別的発言を繰り返し、美しいと認識した人間の肉や部位しか喰いたがらない大の偏食家。 
吉原の地下深くの大空洞を食料庫としており、そこに自身が認めた「美しい人間」を帯に収納して攫い、餌として保管している。
吉原で彼女に喰われた遊女は皆、堕姫を恐れる人間たちの手で行方不明扱いにされ、全て足切りや逃亡扱いで処理されていた。 


高圧的で高飛車な態度とは裏腹に、実際はとんでもなく負けず嫌いな上に沸点が低く、気に入らないことが積み重なり限界を超えると癇癪を起こして泣き喚く子供のような一面の持ち主
プライドも異常に高く、自分が何度追い詰められても全くその現実を受け入れたがらない一面もある。
加えて重度のブラコンでもあり、醜い風貌を忌み嫌う彼女であるが兄だけは例外的に慕っている。
人間時代はかなり苦しい生活を送っておりそれ故にか堕姫の思考は「美しく強い鬼は何をしてもいい」の1点のみであり同情・対話・和解の余地は皆無。
鬼に変化した後は下の者に拷問じみた嫌がらせや折檻など人々を足蹴にし、無辜の人々を貪り食い数多の人間を不幸にしている。
そして自身の暴虐を阻み、自身を幾度も苦しめてくる鬼殺隊を「よってたかっていじめてくる」としか認識していない。

装備(妹側)

血鬼術で身体から生成した武器。触手のように操ることができ、劇中では13本もの帯を一度に操っている。
帯は鋼の如き強度と刃の切れ味、優れた柔軟性を合わせ持つ伸縮自在の武器であり、この帯を触手のように動かし打撃や斬撃による攻撃、防御に転用する。
伸縮の速度も驚異的で、帯の伸縮を活かして瞬時に敵との距離を詰めることも可能。
分身を取り込み完全体に戻った際に放った一撃は、一瞬で周囲の吉原の建物を複数バラバラに切断して倒壊させ、多数の死傷者を出す阿鼻叫喚の大惨事を引き起こした。
この際に放った帯の斬撃の速度は、鍛錬を積んだ炭治郎ですら初見では全く反応できていない。

また、帯内部をある種の亜空間化させ、内部に人間を捕らえることができる。
人間を攫っていたのはこの特性を利用してのことであり、帯が入る隙間さえあれば自由に人間を捕獲可能。
なお、斬られると断面から血が飛んでいることから見て、帯は全て自身の血肉から生成していると思われる。


分裂体


他所様の食糧庫に入り込みやがって 汚いね 汚い、臭い、糞虫が!!!

(何だこの蚯蚓キモッ!!)

CV:伊藤静

堕姫の肉体から分裂して生み出された、帯に人間の目と口が付いている奇怪な鬼。
見た目は伊之助曰く蚯蚓帯(みみずおび)
吉原の地下深くにある地下空洞を根城にして潜み食料貯蔵庫代わりにし、普段は
  • 餌となる人間の捕獲と保管
  • 吉原を支配するための諜報
  • 自分達の活動の邪魔になりうる人間の監視
を目的に複数体が生み出され、吉原地下に広がる小さな穴やトンネルを介して各地に散らばっている。
堕姫本体とは別に自我があるため自律行動が可能で、判断に困ったときは本体に指示を仰ぐこともある。

攻撃手段は堕姫同様、身体を構成する帯を伸ばしての斬撃。
戦闘力はあまり高くないため真っ向からの戦いには向かないが、あくまで分身であるためいくら切断されても堕姫本体に影響はない。
体の中に捕らえた人間を保管しており、また分裂体自身も鬼であるためいざとなれば人間を食って自身を強化することが可能。
身体がぐねぐね動く柔らかい帯でできているため、斬撃にもある程度耐性を備えている一方で、分身をばら撒いている間は力が分散するのか堕姫も弱体化するという欠点をもつ。


妓夫太郎(ぎゅうたろう)


俺たちは二人で一つだからなあ


堕姫の実兄にして真の“上弦の陸”
人間の頃と全く同じ名前を名乗り、堕姫によると普段は堕姫の背中にずっと融合して張り付き、彼女の体内で眠っているようで、目覚めると背中から分離。這い出るように現れる。

ちなみに、無惨と堕姫のやり取りの際に2回返事をしている様子が描かれており、この時からすでに彼の存在は臭わされていた。
…が、アニメではこの部分はカットされた。無音であるマンガと異なり、声によるネタバレ防止のためであろうか。
鬼殺隊側からの呼称は『鎌鬼』。

外見(兄側)

見目麗しい堕姫とは対象的に、長身で筋肉質な四肢に反して、まるで内臓がなく骨と皮だけにすら見える異様に細い胴が特徴のアンバランスな体格。
白黒ページでは分かりにくいが髪の色は黒と緑の2色。毛先が緑で髪の根本付近が黒くなっている。
ギザギザの歯に黄色く変色した血走った目、皮膚病に掛かったような黒い染みめいた痣が無数に肌に浮き出ている不気味な外見を持つ。
服装も上半身に幾つか帯を纏い、腰布で下半身全体を覆っている以外には一切の衣服を着ていない半裸であるため、余計に不気味なビジュアルが強調されている。

性格(兄側)

一人称は(おれ)
妹とは対照的に醜いものを好んで綺麗なものに嫉妬と憎悪を向けて他者を只管妬み僻む、嫉妬深い陰気な性格。
語彙も荒々しく、全体的な雰囲気はガラの悪いチンピラのそれ。
「◯◯だなぁ」と語尾を伸ばした口調が特徴で、「いいなぁあ」が口癖と言動はかなり陰湿かつ粘着質。
他者への妬みの感情が昂ぶると顔や身体を血が噴き出る程搔き毟る癖があり、自分よりも恵まれていると判断した相手へは強烈な嫉妬と殺意を向ける。
一応「他者の美点を見出すのが得意」というある種の長所と言えなくもないが。

人間時代かなり過酷な生活を送っていた反動かその妬みはすさまじく、「取り立て」と称して自分がやられて嫌だったこと苦しかったことを、自分より幸せそうな相手にやり返す八つ当たり行為を好み、
「自分が不幸だった分は幸せな奴からその分幸せを奪わないと取り返せない」という理不尽な持論を掲げる。
本人が語ったところによると他人からの説得などは全て言いがかりと決めつけ、説得してきた相手は皆殺しにしてきたらしい。

非常に歪ではあるが、妹である堕姫との兄妹仲は良好。
堕姫が重度のブラコンならばこっちは重度のシスコンであり、美しい風貌の堕姫を「頭が足りない」と言いながらも溺愛して堕姫の所業を全肯定した上で「いじめるような奴らは皆殺しだ」と公言する。
八つ当たり同然な歪んだ思想をそのまま自分たちの生き方としており、堕姫もそのことをさも当然のように考えているなど兄妹揃って価値観は醜悪。

喧嘩慣れしているとはいえ元が子供だったからか考えが甘いところがあり、「放っておけばその内死ぬ」という理由で、天元、伊之助、善逸にトドメを刺さず、これが大きな敗因になってしまった。
(天元、伊之助はいつ死んでもおかしくなかったが、善逸は致命傷を負っていない上に、毒に侵されてもいなかった。加えて、自力で抜け出しているので、死んでいた可能性はかなり低いと思われる)。

また、上記のように恋する乙女の如く無惨を崇敬する堕姫とは対照的に、彼自身は一言も無惨への忠誠や敬意の言葉を口にしていない。
自ら姿を現して炭治郎達を殺しにかかったのも、あくまで「妹を害された」からであってそれ以上でも以下でもない。
鬼となる事で命を救われたとはいえ、妹に「酷い名前」を付けられた事に対して内心反感を抱いている節があったのだろうか。

+ 妓夫太郎兄妹オリジン

(どんな時だって全てが俺達に対して容赦をしなかった)

(どうしてだ? 禍福は糾える縄の如し だろ)

(いいことも悪いこともかわるがわる来いよ)


人間だった頃の出身は吉原の最下層・羅城門河岸。
梅毒に罹った遊女の母親から産み落とされており父親は不明。
妹の名前も元々は(うめ)
なお、梅の名前の由来は死んだ母親が感染していた梅毒が由来。

貧困の極みとも言うべき羅城門河岸において子供は最大の邪魔者に過ぎず、
母親からは生まれる前に堕胎されかけ、生まれた後もネグレクトと虐待で殺されかけるなど全く愛情の類は与えられなかった。
挙句名前すら付けて貰えず、後に始めた「妓夫」の役職がそのまま彼自身の呼び名となる始末だった。これは現代で例えるなら「サラリーマン」「警察官」「ウェイター」などがそのままその人の本名になるようなものであり、そう考えればそんな名を付けた親の薄情さと異常性が分かるだろう。
そして美貌が全ての価値を決める吉原では、醜い容姿から侮蔑の対象として怪物のように扱われ、絶えず酷い迫害に遭い、食事は蜘蛛や蛾などの害虫を含めた虫や蜥蜴、鼠を食い、遊び道具は客の忘れ物である鎌だけという凄惨極まりない幼少期を過ごしていた。

そんな悲惨な生活の転機となったのが梅の誕生。
前述通り羅城門河岸において子供は邪魔者で、生まれてきた梅もまた母親から疎まれており、梅の髪や目の色*1を忌み嫌って梅を手にかけようとしたこともあった(妓夫太郎がすんでのところで梅を助けたため大事には至らなかったが)。
しかし、自分を慕い、あとをついて回って、離れようとすると泣き喚く梅のことが妓夫太郎はとにかく可愛くて仕方がなかった。
生まれながらに自分とは反対に、年端もいかない頃から大人もたじろぐほどの美貌を持っていた妹の存在こそが妓夫太郎にとって最大の誇りとなった。なお、後に母親は梅に暴力を振るった挙句、剃刀で髪を切り落としたことによって、激昂し暴れた妓夫太郎に怯えて距離を取るようになり、親子の立場も逆転したという。

道を歩けば声をかけられ、笑って見せれば物を貰えるほど美しい梅は「白梅ちゃん」と呼ばれるようになり、それを自覚してうまく立ち回れるようになったことでお腹が空くこともなくなっていった。
妓夫太郎は更に自身の腕っぷしの強さと不気味な容姿を有効活用できる妓夫の仕事に就職。
取り立て率120%という苛烈な取り立てで成果を出し、頭角を表し始めた妓夫太郎の人生は順風満帆を迎える……筈であった。


梅が13歳になった時、彼女が客としてやってきた侍の片目を簪で潰してしまった事で、妓夫太郎に一切知らされることなく、報復として梅は簀巻きにされて生きたまま焼かれ瀕死となり、自身も仕事の過程で客を大怪我させるほどの凶暴さから疎まれた末に、梅を斡旋した茶屋の女将に裏切られ、先述の侍に背中から切り捨てられる憂き目に遭う。
なお、梅が簪で侍の目玉を潰したのは、大好きな兄である妓夫太郎を侮辱されたことからだった。
大切な妹を失う絶望と慟哭、自身や妹を塵のように扱う人間の姿を見たことで遂に妓夫太郎のタガは外れてしまう。

わあああああ やめろやめろやめろ!! 俺から取り立てるな

何も与えなかったくせに取り立てやがるのか 許さねえ!!
許さねえ!!

元に戻せ俺の妹を!! でなけりゃ神も仏もみんな殺してやる

お前いい着物だなあ
清潔で肌艶もいい たらふく飯を食って綺麗な布団で寝てんだなあ

生まれた時からそうなんだろう 雨風凌げる家で暮らして

いいなあ いいいなああああ!!

そんな奴が目玉一個亡くしたくらいで ギャアギャアピーピーと

騒ぐんじゃねえ

重傷を負いながら妹が片目を奪い、そして火に焼かれた原因となった侍と自分を売った女郎を鎌で斬り殺して報復を果たすと、瀕死の梅を抱えて必死に雪の吉原を走り続けるが、いつものように誰も助けてくれない地獄の中で倒れてしまう。
そこへ…


どうしたどうした 可哀想に

俺は優しいから放っておけないぜ その娘 間もなく死ぬだろう

という言葉を投げかけながら2人の前に現れたのは、当時『上弦の陸』であった童磨
「お前らに血をやるよ 二人共だ」「命とは尊いものだ。大切にしなければ」遊郭の女を貪り喰いながら笑顔で救いの言葉を説くサイコパス『上弦の陸』に希望の光を見出し、妓夫太郎は「何度生まれ変わっても必ず鬼になる」と決意。
幸せな人間から幸せを奪うという歪んだ八つ当たりのポリシーを明確に掲げ、現在に至っている。
その一方で妹の本当の名前や人間だった頃の妹との記憶を忘却しており、鬼としての歪みは顕著。
それでも妹への愛情はハッキリ残っていることから、彼の妹への愛情の深さと強さを感じることが可能。
11巻の単行本では兄妹仲良く遊ぶ2人の姿や、妓夫太郎に縋って他者に敵意の視線を向ける梅の姿が描かれていた。

なお妓夫太郎の特徴と言える不気味な容姿は、全て先天性梅毒による現実に存在する症状によるもの。
ギザギザの歯は「ハッチンソン歯」と称されるものと思われ、現代ならば歯科で整復したりペニシリン投与である程度治療できるが、江戸時代にそんなものがあるわけもない。
血鬼術に含まれていた毒は梅毒に加え生前の虫を中心とした食生活由来のものと推察できる他、武器の血鎌も幼少期に遊んだ草刈り鎌がモデルとなっていることがうかがえる。
羅城門河岸と呼ばれる地域も当時の吉原に実在した地名である。

装備(兄側)

  • 血鎌(ちがま)
自身の血と骨で作られた草刈り鎌のような片手鎌。両手に一振りずつ装備している。
血鬼術の応用によって投擲した鎌の軌道をコントロールでき、あたかも生き物のように空中を旋回し軌道を変えて敵を襲う。
また血鎌本体と血鎌から飛ぶ斬撃には即効性の猛毒が含まれ、かすり傷がそのまま致命傷に繋がる。
過去に彼が屠ってきたたちもこの毒により、僅かな時間で倒れていったらしい。


◆戦闘能力

全体的に広範囲を一度に攻撃できる攻撃範囲の広い術をお互いに有している。
兄妹の阿吽の呼吸による連携も脅威だが、なによりも「兄妹の頚を同時に斬り落とさなければ死なない」という特性を持つのが"上弦の陸"最大の特色。
この特性故に柱であっても長期戦は必至となる。*2

先述の堕姫の奇怪な不死性は兄妹の持つこの特性が原因で、戦闘面以外でも焼け爛れた堕姫の顔に触れるだけで火傷を完治させる治癒能力がその片鱗に当たる。
よって妓夫太郎が堕姫から分離しない限り、例え鬼殺隊が死力を振り絞って堕姫を攻撃しようと何の痛痒にもならないとんでもない初見殺しが待ち受けている。

妹側

血鬼術により身体から無数の錦帯を生成して変幻自在に操り戦闘を行う。
さらに単に帯を操るだけでなく、頚を非常に柔軟な帯に変化させることで並の斬撃を無効化するといった応用も可能と、能力はかなり小器用。
これにより柱クラスでもない限り普通に日輪刀を振るうだけでは決して堕姫の頸は斬れない。

傲慢さ故の油断慢心も強く、何かと隙を見せやすいのが欠点。
劇中でも竈門兄妹に幾度も追い詰められており、柱である天元からは「(上弦にしては)弱すぎる」ときっぱり言い切られるなど上弦の鬼としては不安が残る。
ただしこれは柱視点での話であり、柱以外の者にとっては脅威以外の何者でもない戦闘能力は有している。
過去に柱を7人葬っており、少なくとも下弦の鬼とは歴然とした実力差があると言える。



兄側

「血鎌」と呼ばれる武器を両手に一振りずつ持ち、蟷螂の様な独特な動きで鎌を振るう鎌術が武器。
鎌の扱いは完全な我流ながらも、我流故に非常に攻撃は読み難い。
柱である天元の奇襲を簡単に回避しつつ逆に傷を与え、炭治郎に至っては極限まで集中した状態でありながら、接近を含めた攻撃動作そのものに全く反応できないなど戦闘力は妹を遥かに凌駕しており、過去に柱を15人喰らったと豪語するだけのことはある実力の持ち主である。

戦闘非戦闘問わず応用の幅が広い血鬼術を操っていた妹と比べて、清々しいまでに戦闘に特化した数々の術を持つ。
また、戦闘中の相手の行動や目的を即座に見抜くなど観察力が高く、妹とは対照的に不用意に攻撃を受けないようにしており、堕姫と比べると油断や慢心は少ない。
肉体の柔軟性にも富んでおり、自身の体の肉を柔らかくすることで敵の食い込んだ刃の切っ先を取り込んで抜けなくしたり、
頸を180度以上平然と捻じって後方からの斬撃を歯で防ぐことすらできる。

とはいえ、天元との近接戦では初撃以降彼に有効打を与えることはあまりできていないので、それだけを考えれば柱級なら十分対処はできる。
並の鬼とは一線を画する反則レベルの不死性も脅威だが、"上弦の陸"の最大の強みは妹を操作しながら戦え、尚且つ己と妹から得る2人分の莫大な情報を処理し的確な判断を下せる、妓夫太郎が生まれながらに持つ天性の優れた感覚と処理能力にある。
凶悪な血鬼術や不死性はあくまでおまけのようだ。



◆活躍

堕姫は京極屋の「蕨姫花魁」として活動していたが、天元が潜入させた3人の嫁の存在に勘付き、蚯蚓帯で捕獲するなど身動きを封じるが、これによって定期連絡が途絶えたため天元が動くことになる。
また、自身が人外の存在である事を察した京極屋の女将を自殺と見せかけて殺害するが、直後に鬼舞辻が訪れ、彼から労いと“ある任務”を受ける。
なお、この際の鬼舞辻はこれまでにない慈愛に満ちた表情を見せており必見である。同じ上弦なのにとの扱いの差よ……

炭治郎達が潜入してからは自身の店に潜入した善逸と接触、彼が鬼狩りであることを見抜き、柱を誘う餌として食料庫に保管する。*3
その後、見受けされることになった鯉夏花魁を喰らうためにときと屋に自ら出向いたところで炭治郎と遭遇、交戦を開始する。
ヒノカミ神楽を使用する事で自身に食らいつく炭治郎に興味を抱く素振りを見せるが、蚯蚓帯を通して本来の標的である柱の存在を認識すると、蚯蚓帯を吸収して完全体に変貌。
炭治郎を周囲の建物や人間ごと一蹴すると完全に興味を失くし、柱である天元に狙いを定める。
が、多くの命を奪いながらも気に留めないどころか、死んで当然といった堕姫の態度に、怒りが頂点に達し忘我状態に陥った炭治郎が自身の命を省みずにヒノカミ神楽を使ったことで戦況が逆転、一度ならず二度までも頸を斬られる寸前まで圧倒されてしまう。

ごちゃごちゃごちゃごちゃ五月蠅いわね 昔のことなんか覚えちゃいないわ アタシは今鬼なんだから関係ないわよ

鬼は老いない 食うためにお金も必要ない
病気にならない 死なない 何も失わない

そして美しく強い鬼は 何をしてもいいのよ…!

わかった もういい


覚醒した炭治郎との問答でも良心の呵責は皆無であり、鬼と人間との意識の差があまりにかけ離れていることで心底炭治郎を失望させ、怒りに火を点けてしまっている。
なお、圧倒される堕姫の脳裏には鬼舞辻の記憶を通して痣と耳飾りの剣士の姿が浮かんでおり、これは恐らくかつて鬼舞辻を追い詰めた過去の「日の呼吸」の使い手と思われる。

その後、ヒノカミ神楽の反動で動けなくなった炭治郎にトドメを刺そうとするが、今度は禰豆子に不意打ちで頭を吹き飛ばされる。
禰豆子が鬼舞辻の下した任務「呪いを外した鬼の始末」の対象である事に気付き、「嬲り殺しにしてやる」と息巻くが、枷を外して鬼としての再生能力と血鬼術を急成長させた禰豆子にまたもや劣勢となり、彼女の血鬼術によって全身を焼かれてしまう。

しかし、急激な鬼化によって禰豆子が暴走し、それを炭治郎が止めに入ったことで再び形勢が逆転、今度こそ忌々しい竈門兄妹を始末しようとするが……
音も無く現れた天元によって気付く間も無く頸を切断されてしまうのだった。
格下の筈の竈門兄妹に追い詰められ、さらに天元に「お前が上弦とか嘘だろ。弱すぎるし(意訳)」と半ば馬鹿にされた事で我慢の限界に達したのか、大粒の涙を流して泣き出してしまう。

突然子供の様に癇癪を起こした堕姫にギョッとしながらも、日輪刀で頚が身体から断たれても肉体崩壊を起こさず泣きじゃくる姿に天元は疑念を抱くが……



アタシ本当に強いのよ!今はまだ陸だけどこれからもっと強くなって…

説得力ねー

わーん!!

ほんとにアタシは上弦の陸だもん 本当だもん!数字だって貰ったんだから!アタシ強いんだから!

死ねっ!!死ねっ!!みんな死ねっ!! わぁああああああ!

頸斬られたぁ頸斬られちゃったああ




お兄ちゃああん!!


うぅううん



◆妓夫太郎登場

愛する妹の呼びかけに応じて、堕姫の背中から妓夫太郎が出現。
堕姫の傷を一瞬で癒し、天元の奇襲を避けつつ逆に彼に傷を負わせることで、堕姫の頸が落ちて半ば安心していた読者に上弦の鬼らしい驚きと恐怖を与えた。

お前いいなぁあ

その顔いいなぁあ 肌もいいなぁ シミも痣も傷もねえんだなあ

肉付きもいいなぁあ 俺は太れねぇんだよなぁ 上背もあるなぁあ 縦寸が六尺は優に超えてるなぁあ

女に嘸かし持て囃されるんだろうなぁあ

妬ましいなああ 妬ましいなああ 死んでくれねぇかなぁあ
そりゃあもう苦しい死に方でなぁあ 生きたまま生皮剥がれたり腹を掻っ捌かれたりそれからなぁ

その後、容姿に優れ、3人の嫁を持つ天元に嫉妬を爆発させると、堕姫も交えて一進一退の攻防を繰り広げる。
戦闘の中で妓夫太郎だけでなく、堕姫の頸も狙う天元に自分達の不死の秘密が勘付かれている事を察するも余裕の態度を見せ、合流した炭治郎、善逸伊之助も加えて戦闘を再開。
天元と炭治郎が妓夫太郎、善逸と伊之助が堕姫と対峙し、互いの剣技と血鬼術が入り乱れる混戦模様となった。

しかし、即席の連携では上弦の鬼に通じず、善逸と伊之助は妓夫太郎の左眼と動体視力を得た堕姫の帯と飛び血鎌に身動きが取れず、捌くのが精一杯。
天元も炭治郎の援護を受けて音の呼吸の型を繰り出しながらも妓夫太郎を押し切れずにいた。

そこに天元の嫁の一人・雛鶴が参戦、大量の苦無を乱射する。
当初は無視していた妓夫太郎だが、このタイミングで無意味な攻撃をする筈がないと考え直し、血鬼術で防御。
その隙をついて自身に苦無が刺さる事も気にせず踏み込んだ天元に両脚を切断され、さらに頸に一本の苦難が突き刺さる。
苦無には藤の花から抽出された毒が塗ってあり、それによって全身が痺れ再生が止まる妓夫太郎、それに迫る天元と炭治郎。この毒は下位の鬼なら丸一日動きを止められる強力なもの。
一見すると追い込まれた妓夫太郎だが、不敵な笑みを浮かべる。その余裕の笑み通り、いとも簡単に極短時間で毒を分解し無害化。
毒を与えた雛鶴を狙うも、この行動は炭治郎が新たな呼吸に覚醒したことで未遂に終わったが、
それでも天元の奇襲と炭治郎の斬撃という同時攻撃すら難なく対処し防ぎきるという格の違いを披露していく。

その後土壇場でチームを再編成し、堕姫討伐のため炭治郎、善逸、伊之助の3人が堕姫の元へ攻勢に躍り出て、逆に妓夫太郎の方を天元一人が受け持つという苦肉の作戦変更を余儀なくされる鬼殺隊。
死闘の末何とか堕姫の頸を刎ねることに成功し喜びに沸く炭治郎達だったが、
その瞬間背後から伊之助の胸を血鎌で一突きする妓夫太郎の奇襲が炸裂する。
同時に炭治郎の眼には下で腕を断たれて横たわる天元の姿が映り込んだ。
歓びから一転絶望の淵に叩き込まれる鬼殺隊だが、更に追い打ちをかけるように堕姫の帯による斬撃が奔り、戦場だった建物は崩落。
炭治郎は気を失ってしまう。


何だお前まだ生きてんのか

運のいい奴だなああ

まあ運がいい以外取り柄がねぇんだろうなあ


目を覚ました炭治郎の目に移ったのは、呆れた様子で炭治郎を覗き込む妓夫太郎の顔であった。
敵意を露にする炭治郎など知ったことかとばかりに、妓夫太郎は自分に歯向かった鬼殺隊の存在を「みっともない」と嘲笑する。
何故なら炭治郎以外の鬼殺隊の面々は皆瀕死か行動不能という悪夢のような状況下なのだから。

自分達兄妹を殺しに来た今回の鬼殺隊の中でも、特に炭治郎の存在を一番みっともないと嘲笑う妓夫太郎は、
炭治郎と禰豆子の関係を瞬時に見抜き「妹を全然守れてねえじゃねえか」と断じ、より盛大に呵呵大笑と嘲笑う。


兄貴だったら妹に守られるんじゃなく守ってやれよなあ

この手で ひひっ!!


と語っておきながらニヤニヤ嗤い、家族を守るために必要な肝心の炭治郎の指を笑顔でへし折り、更に見下しの余裕と嘲笑を深くする妓夫太郎。
格下で妹よりも弱い無様な他人の兄を馬鹿にするのが心底楽しいのか、彼の炭治郎への言葉の暴力はさらに加速していく。


なあオイ今どんな気持ちだ?

一人だけみっともなく生き残って 頼みの綱の妹は殆ど力を使い果たしてるぜ

なあ 虫けら ボンクラ のろまの腑抜け 役立たず 何で生まれてきたんだお前は

どうする?弱い弱いボロボロのみっともねぇ人間の体で

俺の頸を斬ってみろ さあさあさあ!!


言葉の暴力に耐えかね遊女の香り袋を爪で引き千切りながら脱力した炭治郎の姿を見て心が折れたと確信した妓夫太郎は、勝ち誇った笑みを浮かべて高らかに笑う。
そんなみっともなくてみじめな姿に逆に好感を持った妓夫太郎は更に「ある言葉」を投げかける。


お前の額のその汚い傷!!いいなあ愛着が湧くなああ


そうだお前も鬼になったらどうだ!!


妹のためにも!!


鬼を倒すことに全力を注いできた鬼殺隊への、そして人間でありながら妹を守るため必死に戦ってきた炭治郎にとって最大の侮辱とも言うべき「鬼への勧誘」を語る妓夫太郎。
堕姫の反対を押し切り、妓夫太郎は「鬼になれば仲間だし妹は助けてやる。ならなかったら妹を殺す(意訳)」と悪魔の誘惑を持ちかける。
その時ふとおもむろに顔を天へと向けた炭治郎の姿を見て、涙をこらえていると判断し侮蔑の笑みを浮かべる妓夫太郎だが……


人は嘆く時天を仰ぐんだぜ 涙が溢れねえようになああ

俺は…

俺は……

準備してたんだ


その瞬間放たれたのは、炭治郎の渾身の頭突きであった。
只の苦し紛れの頭突きと侮蔑混じりで嘲笑する妓夫太郎だが、なぜか体が痺れ動けなくなってしまう。
困惑の中で妓夫太郎は、頭突きの瞬間炭治郎が藤の毒を塗った苦無を自らの肉体に突き刺していたことを知る。
あの時炭治郎が折れた手で引き裂いた香り袋は、毒塗りの苦無の存在を隠すための偽装工作だったのである。
心が折れたのではない。敵が油断し隙をさらすその瞬間をずっと待っていたのだ。*4
炭治郎の不屈の精神と反骨心に、妓夫太郎の顔から今までの余裕の笑みは喪失。
一転して焦りと困惑と憤怒の形相に顔を顰めさせる。


(コイツ!!コイツ!!弱いくせに!!人間のくせに!!)

(これだけボロボロになっておいて!!これだけ力の差を見せたのに!!)

(独りきりでなぜ諦めない!!なぜ折れない!! 俺を倒そうとする意志が)

(なぜブレない!!)


孤立無援の絶望に満ちた状況の中、僅かな隙を狙い炭治郎の斬撃が妓夫太郎の頸に直撃する。
絶対強者である『上弦の鬼』への鬼殺隊の逆襲劇が遂に始まったのである。



◆最終決戦

死力を振り絞り妓夫太郎の頸に手を掛ける炭治郎の斬撃だが、堕姫の発破もあり妓夫太郎は血鬼術を展開して炭治郎を弾き飛ばし、毒の再分解を開始。
解毒後一気に攻撃を仕掛けるも、心臓を筋肉で無理矢理止めて毒の侵食を遅らせていた天元のインターセプトにより、再び戦況は2対1の戦いにもつれ込む。
更に、
  • 善逸と伊之助の復活
  • 天元独自の戦闘計算式「譜面」の完成
  • 劣勢の度に鬼殺隊側のメンバーが間を繋ぎ機会を作って"上弦の陸"兄妹の攻撃を凌ぎ続けたこと
  • 鬼殺隊側が長い長い戦いの中で"上弦の陸"兄妹の攻撃に慣れ始めたこと
これらの要因が働いたことで形勢は鬼殺隊側に一気に傾いていき、妓夫太郎は捨て身の天元に身動きを封じられてしまう。


(畜生こんなガキに…まずい!斬られるぞオオオオオ!)
(いや!!大丈夫だ!!俺の頚が斬られても妹の頚が繋がってりゃあ)

お兄ちゃん 何とかしてお兄ちゃん!

(早く円斬旋回を…!)

そして死闘の果てに血鎌に下顎を貫かれても尚怯まず、死力を振り絞った咆哮と共に放たれた炭治郎渾身の斬撃により妓夫太郎の頸が、
善逸の最後の切り札「霹靂一閃・神速」による超速度の斬撃と、毒に僅かながらの耐性を持ち、柔軟な身体ゆえに致命傷を回避していた伊之助の斬撃を同時に受けた事により堕姫の頚が、
2人同時に断たれ、遂に"上弦の陸"は敗北した。

死の間際で暴走する円斬旋回も血鎌の猛毒も禰豆子の爆血により焼却・解毒した鬼殺隊は全員生存。
そのまま上弦の血を採取しようと炭治郎が向かった先で見たのは、負けた責任を醜く押し付け合って言い争う妓夫太郎・堕姫兄妹の姿であった。
妹に「醜い奴がアタシの兄妹なわけないわ!!」「きっと血も繋がってない」と罵倒されたことに逆上してしまい…


出来損ないはお前だろうが、弱くてなんの取り柄も無い、お前みたいな奴を今まで庇ってきたことが真底悔やまれるぜ。
お前さえいなけりゃ俺の人生はもっと違ってた、お前さえいなけりゃなぁ!!
何で俺がお前の尻ぬぐいばっかりしなきゃならねぇんだ!


お前なんか生まれてこなけりゃ良かっ…


嘘だよ
本当はそんなこと思ってないよ。全部嘘だよ

同じく激情のまま妹を罵倒し存在を否定する妓夫太郎。そして兄から存在を拒絶され無言で涙を流し始める堕姫。
余りにも悲しい兄妹喧嘩の間際、両者の悲しい言い争いを諫めたのは、敵対者の炭治郎であった。


仲良くしよう、この世でたった二人の兄妹なんだから
君たちのした事はだれも許してくれない。殺してきた沢山の人に恨まれ憎まれて罵倒される。味方してくれる人なんていない

だからせめて二人だけは


お互いを罵り合ったらだめだ


同じく妹を持つ者としてそう語って哀しそうに2人を諫める炭治郎を前に、堕姫も泣きじゃくりながら本音をこぼし始める。


うわぁぁぁん!うるさいんだよォ!
アタシたちに説教すんじゃないわよ!糞ガキが向こう行けぇ、どっか行けぇ!!
悔しいよう、悔しいよう、何とかしてよォお兄ちゃあん!
死にたくないよォ

お兄っ……

バサ…

梅!!

(そうだ 俺の妹の名前は“梅”だった。“堕姫”じゃねぇ。酷い名前だ)
(いや…梅も酷かったなあ お前の名前は)
(死んだ母親の病名からつけられたんだからなあ)

兄に助けを求めながら朽ち果て消滅した妹の姿を見て、妓夫太郎は遂に妹の本当の名前を思い出す。*5
妹の名前を叫んだ直後口すら崩壊し、過酷な人間だったころの記憶を走馬燈のように振り返る妓夫太郎。*6
自分さえいなければ、過酷な生活環境でさえなければ真っ当な娘になり幸せを掴めたのではないかと自嘲気味に思い返し、
妹が幸せになれなかったことが唯一の心残りだと結論付けた矢先、気が付けば何もない闇の世界に立っていた妓夫太郎。
同時にその空間にいたのは、人間だった頃の梅の姿だった。
自分のいる場所があの世だと確信した妓夫太郎は、自分の居場所すら把握せず意固地になって兄を罵倒したことを謝りながら、素直に自分についていこうとする妹を一喝。
兄妹の縁を切り梅を天国のある方向に行くよう指示し、一人地獄へ堕ちようとする妓夫太郎だったが……


嫌だ いやだ
離れない!!絶対離れないから
ずっと一緒にいるんだから!!
何回生まれ変わってもアタシはお兄ちゃんの妹になる絶対に!!
アタシを嫌わないで!!叱らないで!!一人にしないで!! 置いてったら許さないわよ
わぁぁあん ずっと一緒にいるんだもん ひどいひどい 約束したの覚えてないの!?

忘れちゃったのォ!!

――俺たちは二人なら最強だ、寒いのも腹ペコなのも全然へっちゃら、約束する。ずっと一緒だ、絶対離れない。ほらもう何も怖くないだろ?――

わあああん!うわあああわああん!


一人で暗い方に向かう兄に追いすがりながら背中にしがみ付き号泣する梅の言葉を受け、
人間だった頃に涙を流す妹に語って聞かせて励ました時の言葉を思い出す妓夫太郎は、そのまま無言で妹を背中に背負って歩き出す。
そうして妓夫太郎・梅兄妹は、暗闇の中、燃え盛る業火に呑まれ姿を消した。


仲直りできたかな?


空から降り注ぐ雪の中、そう呟いた炭治郎の手の中で妓夫太郎の肉体は完全に塵となった。

炭治郎達にとって物語最初の上弦との本格的な戦闘となったであったが、結果は
  • 戦いの要となる天元が毒への強い耐性を持っていたこと
  • 藤の花の毒を事前に用意し、避難誘導まで務めて被害削減や援護に努めた天元の嫁達
  • 覚醒したことで堕姫をも圧倒し、血鎌の毒すら解毒できた禰豆子の存在
  • 毒への耐性に加えて柔軟すぎる堕姫の頸に対する特攻を持っていた伊之助
  • 冷静な考察と超速度による攻撃が可能だった善逸
  • ヒノカミ神楽による斬撃を使用でき、妓夫太郎を油断させることができた炭治郎
  • 炭治郎を殺さず舐めプして炭治郎を煽りまくった妓夫太郎とその様子を高みの見物してた堕姫
これらの要因が一つでも欠けていれば確実に敗北、あるいは鬼殺隊メンバーの死亡が確定的だったというあまりにも綱渡りの勝利となった。
100年以上代替わりが無かった上弦の鬼の称号は伊達ではなかったと言えるだろう。

一方で、上弦の陸兄妹の視点から敗因を考察してみると、その主要因は大きく三つに分けられる。

1.想定外の事態が立て続けに起きた事
まず、瓦礫に埋もれてはいたが生存はしていた善逸はともかく、毒で心臓が止まった筈の天元に心臓を貫いた筈の伊之助が、戦闘能力を残した状態で生存していたということは普通に考えれば有り得ざる事態である。
それに加えて、天元と炭治郎の土壇場での大幅パワーアップや、善逸の隠し球『霹靂一閃・神速』の存在に伊之助の毒耐性など、上弦の陸兄妹にとって不利な想定外があまりにも矢継ぎ早に発生した事で、体勢を立て直す隙を得ることができずにズルズルと押し込まれてしまった。

2.兄妹の連携が寸断されてしまった事
激戦の中で、上弦の陸兄妹の高度な連携力には鬼殺隊の面々も幾度となく苦しめられて来た。
しかし、炭治郎の毒クナイを用いた抵抗により妓夫太郎が拘束されたところに、復帰した善逸が間髪入れず霹靂の神速を堕姫めがけて撃ち込んだことで兄妹の連携がごく短時間ながら途切れることとなった。
それ以前に一時的に両者を分断した(それでも茶々入れはあったが)上でかまぼこ隊が堕姫の首を落とした際は、天元をダウンさせて手隙になった妓夫太郎が堕姫の首を救出する事で事なきを得ていた。
しかし、二度目では上述のような想定外の連続のため、互いが互いを救助しに行く余裕がないギリギリの状況に立たされており、結果的に片方がピンチに陥っても対応できないまま首を落とされるところまで持ち込まれてしまった。

3.敵が集団でしかも実力もあった事
そもそも、両方の首を斬った状態にしなければ屠れないという性質上、上弦の陸兄妹に単身で挑む事は無謀に等しい行為であるのだが、今回の敵は歴代トップクラスの柱達の一人であり、優れた現場指揮官としての能力を持った宇髄天元に、柱には遠く及ばないながらも下弦の鬼までならば対抗可能な実力と、様々な特殊体質を持つかまぼこ隊、そしてそれをサポートするくノ一の天元の嫁達という布陣である。このため、それぞれがチーム分けする形で兄妹の不死性を攻略する体勢が整ってしまっていた。
それでも中盤まで優位を保っていたのは流石というべきだが、戦闘が長引いたことで敵に自分達の戦闘パターンと特性を分析する時間を与えてしまい、それによって対抗戦術を編み出されたことで終盤は劣勢に立たされることとなった。

また、戦いの中で炭治郎はヒノカミ神楽の多大な負荷により堕姫の頸を落とす寸前で戦闘を中断してしまったが、仮に負荷を厭わず相討ち覚悟で頸を落としたとしても無駄死にに終わっていた。結果として堕姫を油断させ、そのまま禰豆子との不毛な戦いにもつれ込んだことで、天元達の到着が間に合うこととなった。



◆無惨様の総評

「妓夫太郎は負けると思っていた 案の定堕姫が足手纏いだった」
「初めから妓夫太郎が戦っていれば勝っていた そもそも毒を喰らわせた後まで戦い続けず…いや、もうどうでもいい」
「くだらぬ、人間の部分を多く残していた者から負けていく」

如何にお気に入りと言えど敗北者には厳しい無惨様であった。漫画的にアウトなガン逃げ戦法使えよとマジレスする辺り流石である
妓夫太郎は兄妹愛から兄妹2人揃って"上弦の陸"と自負していたが、無惨からすれば妓夫太郎こそ『上弦』であり堕姫はおまけ、もしくは足手纏いという辛辣な評価である。

ファンブックでは、そもそも妓夫太郎の方は「お気に入り 境遇と貪欲な性格を高く評価」としていたが、堕姫に関しては「頭の悪い子供」と酷評していたことが判明。
猫なで声で甘やかしていたように見えていたのも、評価通りの子ども扱いその方が命令する際に都合が良かったというだけであろう。

◆余談

上記の通り、兄妹揃って価値観が歪んでおり、下衆加減が半端ない。…ないのだが、
物語の終盤で明かされた「病と貧困の中に生まれ、年端もいかないうちに体を売らされ、抵抗したために報復と裏切りの攻撃を受けて2人とも生死の境を彷徨う」
という人間時のどうあがいても絶望な生い立ちには同情する読者もいた。
さらに苦しいのは時代設定や妓夫太郎の症状が実在の病のものである点から、実際にこのような生涯を送った人がいたかもしれないということだろう。

残虐な敵としての登場だった堕姫は竈門兄妹に散々にやられたうえに唐突なマジ泣きや兄とのやりとりで「かわいい」と評されたりするようにもなり、
また妓夫太郎も、天元が女房を3人も持っていると知った時に一呼吸おいてから嫉妬レベルが目に見えて跳ね上がる、といった何割かの男性ならちょっと共感してしまう嫉妬加減やそのやり取りの面白さなどから、無駄に読者からの好感度を上げている。

劇中で過去はある程度詳しく語られたが、公式ファンブック第2弾にてさらに詳細な生い立ちが紹介されたことで、彼らがおかれた環境の壮絶さに加え、実の親をはじめ兄妹を取り巻く人間にはことごとく碌な人物がいなかったことに対し思わず同情する読者が更に増えたとか。
また、史実上の遊女達が客を取ったのはどんなに早くても15歳ごろで、兄妹が鬼になった際の梅の13歳という年齢はいくら現代に比べて大人になる年齢が早かった当時の価値観からしてもアウトだそう。

因みに上弦の鬼の中では彼らと鳴女だけ身長などのプロフィールが明かされておらず、一部のファンたちが落胆したとか

「無限列車編」で魘夢が上弦との格の違いを痛感しながら消滅するシーンには、猗窩座と共に堕姫と思われるシルエットが登場する。
この時点で妓夫太郎の構想まであったのかは不明だが、少なくとも猗窩座に続く次のボスとして想定されていたのかもしれない。
一方劇場版ではこの2人以外の残り4人のシルエットも登場しているが、ここでも妓夫太郎の存在を匂わせるような要素はない。
単なる原作未読組へのネタバレ防止だけでなく、「所詮は下弦の魘夢に上弦の真の姿など分かる訳はない」という設定上の格の違いの描写もあるのかもしれない。

キメツ学園」では謝花(しゃばな)という名字を得て高等部の生徒として登場。
外見はほとんど変わらないが、堕姫の容姿が人間時代の姿をそのまま成長させたかのような風貌になり、名義も梅扱いなのが特徴。
兄はバイクを乗り回している姿が描かれている。
設定はキメツ学園随一の不良兄妹になっており炭治郎とよく衝突しているらしい。
ただし、学校にはきちんと通っていることから、退学沙汰になるようなことはやっていないと考えられる。
妹の梅は1日に20人の男から告白された伝説を打ち立て、ファンも多く貢物の絶えない学園三大美女の1人である。
ちなみに年齢は妓夫太郎が18歳で梅が16歳。

アニメ版の声優は、堕姫は沢城女史を推す声が多く上がっており、実際その通りの配役になった。一方で妓夫太郎は逢坂氏という殆どの視聴者が予想しなかったであろう配役となり*7、今までに担当した役柄とは全く異なる声質で演じたため、EDクレジットを見るまで逢坂氏だと気付けなかった視聴者も多かった。



アタシ一生懸命追記・修正してたのに 

凄く頑張ってたのよ一人で……! 

それなのにねえ、wiki篭りが邪魔してアタシをいじめたの!! 

よってたかって荒らしたのよォ!!


そうだなあそうだなあそりゃあ許せねぇなぁ

俺の妹が足りねえ頭で一生懸命追記・修正してるのを



いじめるような奴らは垢BANだ

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最終更新:2024年04月25日 21:05

*1 前述通り、梅の白髪は人間時代からの本来の髪色である。また、アニメ版の描写により、人間時代は青い瞳の持ち主で、妓夫太郎も妹と同じ青い瞳を持っていた。

*2 厳密に言えば同時に斬るのではなく、「兄妹の頸が2人共斬り落とされた状態にしないと死なない」と言った方が正しい。

*3 アニメ版ではこの経緯が詳しく描かれており、負傷した善逸を見舞いに来た少女達が去った後で彼を拉致した。

*4 この時、苦無が刺さっていた箇所は左足であり、妓夫太郎は堕姫に左目を貸していたので左側が死角と化していた。皮肉にも妹を思う兄の気持ちが文字通り『裏目』に出てしまった。

*5 劇中、妓夫太郎は堕姫の名前を一度も呼んでいない。記憶が無いなりに酷い名前を付けられたと思っていたのだろうか

*6 ここで読者は、彼が炭治郎に向けた暴言は全て、元々は彼自身が周囲から向けられてきた罵詈雑言だった事に気が付く。『人が他人に向ける暴言は自分が他人から向けられて嫌だった言葉』とはよく言ったものである。こうして見ると「涙が溢れないよう上を向く」もひょっとしたら実体験なのかもしれない。

*7 本編への初登場を以って出演情報が解禁される前は津田健次郎氏や吉野裕行氏が有力視されていた