シェイプ・オブ・ウォーター(映画)

登録日:2018/04/01 Sun 12:20:27
更新日:2023/11/08 Wed 18:23:45
所要時間:約 7 分で読めます






切なくも愛おしい愛の物語。



『シェイプ・オブ・ウォーター(原題:The Shape of Water)』とは、アメリカ合衆国のファンタジー・ロマンス映画。
配給は20世紀フォックス映画。アメリカ本国では2017年12月8日に公開され、日本では2018年3月1日に公開された。


【概要】

監督は『パンズ・ラビリンス』や『パシフィック・リム』、『ヘルボーイ』等でおなじみのギレルモ・デル・トロ
第74回ヴェネツィア国際映画祭にてコンペティション部門の最高賞にあたる金獅子賞を受賞し、第75回ゴールデングローブ賞では監督賞作曲賞を受賞。
そして第90回アカデミー賞にて最多13部門ノミネートされ、作品賞監督賞美術賞作曲賞の最多4部門受賞を果たす等、世界中の賞レースで絶賛の嵐を巻き起こした。

本作は冷戦期のアメリカを舞台に政府の秘密研究所に捕らえられた半魚人と、そこで働く1人の女性との純粋な恋物語であり、デル・トロ監督が6歳の時に観て夢中になった『大アマゾンの半魚人』から着想を得ていた。……もっとも、あちらは本作とは逆に半魚人が人間と恋に落ちている。
ぶっちゃけ男女逆転した『スプラッシュ』。

多くのおとぎ話では、醜い姿に変えられる魔法をかけられた者達は最後には美しい元の姿に戻り、同じく美しい相手と結ばれるのがお約束であるが、
本作は敢えてそんな既存のストーリーにはせず「そのままの存在を受け入れる」おとぎ話をつくるため、デル・トロ監督が本作の主人公を「平凡な中年女性」と「王子様に変身しないクリーチャー」に仕上げた。

性行為のシーンがあるため、前年の東京国際映画祭で上映された際にはR18+指定とされたが、日本での一般公開時にはそのシーンにぼかし処理を施してR15+指定として公開された。
なお、映像ソフトにおいてはレンタル版はR15+バージョン、セル版はBlu-ray / DVD / 4K ULTRA HD Blu-ray共に無修正のR18+バージョンが収録されている。


【あらすじ】

1962年の冷戦下のアメリカ。障害のために喋れないイライザは“航空宇宙研究センター”という政府の機密機関で清掃員として働いていた。
ある時イライザは施設で仕事中に、南米から連れて来られたという“不思議な生きもの”を目撃する。
興味を持った彼女はゆで卵をその生きものに渡したり、音楽を聞かせたりして、少しずつ心を通わせていった。
イライザは喋れない自分をありのまま受け入れる“彼”に惹かれるようになる。
そんな中、施設の警備を仕切っていた軍人のストリックランドが、“彼”を殺して解剖すると決めた事を知ってしまい……


【登場人物】

  • イライザ・エスポジート
演:サリー・ホーキンス

主人公。そしてエロ要員
政府の研究所で清掃員として働く中年女性で、映画館の2階にある部屋で1人暮らしをしている。
子供の頃のトラウマで声が出せないため、手話で意思疎通を行っており、手話を理解できるジャイルズやゼルダとは仲が良く、職場と家を往復するだけの今の生活では特に不便は感じなかった。ちなみにゆで卵が好物。
経緯は不明であるが、生まれてすぐに親に捨てられ、孤児院の職員に川辺で保護されて現在に至る*1。首筋には何故か三本の傷跡が左右に残っている。

独り身である上に変わり映えのしない単調な日々に長年孤独を感じていたが、仕事中に偶然“不思議な生きもの”に出会った事が切っ掛けで生活が一変。
“彼”の魅惑的な姿に心を奪われてからは周囲の目を盗んで会いに行くようになり、音楽とダンスに手話で心を通わせる等、言葉を必要としないコミュニケーションで心を通わせていくのだが、
それからほどなく“彼”が国家の威信をかけた実験の犠牲になると知り、“彼”を救うために友人達と協力して救出計画を立てる事に……

  • “不思議な生きもの”/“彼”
演:ダグ・ジョーンズ

アマゾンの奥地で捕えられた半魚人。
海底原人ラゴン仮面ライダーシンを1つにしたようなデザインが特徴で、
アマゾンの原住民からはとして崇められていたらしく、クリーチャーな外見に反して知能が高い上にイライザの手話を理解して音楽を楽しむ感性まで備えている。
劇中では差し入れのゆで卵を美味そうに食べていた
やがて“彼”はイライザと種族を超えた愛を育み始める事に……

演じたダグ・ジョーンズはデルトロ作品の常連で、『パンズ・ラビリンス』ではパンとペイルマンの二役を、『ヘルボーイ』2作品では(こっちも半魚人な)エイブ・サピエンと死の天使などを演じていた。

  • ジャイルズ
演:リチャード・ジェンキンス / 日本語吹替:安原義人

イライザの友人。
ミュージカル映画と猫が好きな売れない画家で、イライザと意思疎通ができる数少ない人物。
実はゲイである。

  • ゼルダ
演:オクタヴィア・スペンサー / 日本語吹替:田野めぐみ

イライザの同僚であるハイラルっぽい名前黒人女性。
アフリカ系の自分に向けられる差別意識を笑い飛ばしながら黙々と働いている。
既婚者であるが、以前から夫との関係が冷え切っており、その不満を日頃からイライザに愚痴っている。

  • リチャード・ストリックランド
演:マイケル・シャノン / 日本語吹替:咲野俊介

航空宇宙研究センターで警備を仕切っている軍人。階級は大佐。
妻子持ちで仕事を離れて家庭に戻れば良きマイホームパパであるが、その本質は非常にマッチョイズムかつ傲慢なタカ派であり、度々自らが「まとも」であるという事を強調し、イライザを始めとする格下の相手に対しては威圧的な態度を取っている。
特に“不思議な生きもの”の事は当初から差別的な感情を露わにしており、日頃から“彼”を虐待していたが、序盤で反撃されて指(左手の薬指と小指)を噛み千切られてしまう。ちなみに千切れた指は一応手術で縫合された*2
一方で上司に対しては頭が上がらず、そのような意味では良くも悪くも中間管理職と言える。
その後、半ば逆恨みに近い形で“不思議な生きもの”の生体解剖を上層部に提案するのだが……

本作における悪役ではあるが、60年代当時の価値観に翻弄された人生とその末路から、彼に感情移入した観客も少なからず存在する。

  • フランク・ホイト
演:ニック・サーシー / 日本語吹替:世古陽丸

ストリックランドの上司である将軍。
アメリカにおける将来的な宇宙開発の技術進歩や軍事目的のために“不思議な生きもの”を研究材料にしようと計画しており、ストリックランドが提案した生体解剖に合意していた。
朝鮮戦争で軍功を立てて冷戦下で軍の重要施設の責任者にまで出世したストリックランドに絶大な信頼を置いているが、それは「今まで一度も失敗しなかったエリート」を求めているに過ぎず、中盤で“彼”が施設から脱走して計画に狂いが生じた際には失脚をチラつかせて“彼”の奪還をストリックランドに命じていた。

  • フレミング
演:デヴィッド・ヒューレット / 日本語吹替:魚建

研究所の警備主任。
ストリックランドにコキ使われている。

  • エレイン・ストリックランド
演:ローレン・リー・スミス / 日本語吹替:実川貴美子

ストリックランドの妻。
若くて色気満々な金髪美女である。

  • ロバート・ホフステトラー博士
演:マイケル・スタールバーグ / 日本語吹替:上田燿司

航空宇宙研究センターの研究者。
“不思議な生きもの”を美しいものとして尊重しており、生体解剖を強行しようとするストリックランドに対しては「貴重な存在を殺すべきではない」と抗議していた。
実はソ連のスパイであり、熾烈な宇宙開発競争でしのぎを削ってアメリカより優位に立とうとする本国からは“彼”の捕獲もしくは抹殺を命じられていた。
アメリカもソ連も“彼”を殺す気満々で途方に暮れていたが、中盤で出会ったイライザと意気投合したのを機に彼女の計画に協力するようになる。


【余談】

本作公開に先駆けて発売された小説版では登場人物の設定が深く掘り下げられており、約600ページの同書では「どのように“不思議な生きもの”が捕らえられたのか」や「イライザの靴へのこだわり」等、本編では描き切れなかった各キャラクターの背景や心情の描写は必見である。

2018年2月9日には『ギレルモ・デル・トロのシェイプ・オブ・ウォーター 混沌の時代に贈るおとぎ話』という邦訳版アートブックが初回限定3000部で発売された。
既に入手困難な代物であるが、キャラクターや小道具のデザインから撮影に至るまでの過程がイラストとともに説明されている他、キャストのサリー・ホーキンス、オクタヴィア・スペンサーらのコメントが掲載されている。
また、劇中では明かされる事のなかったキャラクター設定の詳細も収められている等、ファンにはたまらない一冊に仕上がっている。





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最終更新:2023年11月08日 18:23

*1 苗字の「エスポジート」はラテン語で孤児という意味であり、イタリアのナポリ辺りがルーツ。その名の通り、大昔のイタリアで捨て子と養子、養女に出された子たちにつけられたとされている。

*2 当時の縫合技術が未発達だったのか、あるいは感染症が原因なのか、後に指の状態が悪化してしまった。