X-MEN CHILDREN OF THE ATOM(ゲーム)

登録日:2019/05/03 Fri 19:25:38
更新日:2024/04/13 Sat 15:27:26
所要時間:約 10 分で読めます




目次

■X-MEN CHILDREN OF THE ATOM

『エックスメン チルドレン・オブ・ジ・アトム』は1994年にCAPCOMが開発、稼働を開始したアーケード用対戦格闘ゲーム。
MARVELコミックスの人気コミックで、本作稼働開始の94年当時、テレビ東京系で米国アニメシリーズが日本語吹替で放送されていた他、
小学館から邦訳コミックスや竹書房からアニメシリーズのコミカライズが刊行される等、本格的に日本に輸入され始めていた『X-MEN』を題材としている。
なお副題の『原子の子等(Children of the Atom)』とは公式のX-MENの通称である。


【解説】

コンシューマーでは95年にSSで移植版が発売されている。
尚、X-MENの故郷である米国では日本以上に大ヒットを記録したためにPS版やPC版も発売された。
PS版は日本でも発売予定があったのだが実現しなかった。*1


システムは『ストⅡ』以来のCAPCOMお馴染みの8方向レバー+6ボタンだが、本作は先行する『STREET FIGHTER』シリーズ、『Vampire』シリーズに続く、第三のシリーズの礎となった。

開発者(西谷亮=NIN)によると『ストリートファイターⅢ(仮)』の開発を打診された後だったので、本作を『ストⅢ』のつもりで作ったとのことで、実際にこの時点でのCAPCOM格ゲーの集大成の様なシステムだった。

また、本作こそが、所謂『MVC』シリーズの元祖となった作品であり、スーパージャンプやコンボの入り方は本作の時点で登場し、次作以降にも引き継がれた要素である。
全ての技を空中ガード可能とする等、画面中ならば何処でも戦闘が行えるシステムであり、寧ろ空中戦の方が得意なキャラクターも居る。
シリーズお馴染みのエリアルレイヴに関しては、本作の時点では、あくまでも“ただの空中コンボ”であり、全キャラ共通で順番に攻撃が繋がるシステムは存在していない。
現在にも通じるエリアルレイヴが登場したのは、次作『MSH』からである。

尚、ヴァンパイア以上に細かなキャラクターのアニメパターンのイメージは次回作以降にも引き継がれ、3D化した『MVC3』でもドット時代と違和感の無いモデルやモーションを用意した程。*2

開発者曰く「超人同士の格闘なので派手にした」との事で、ボタンを押しただけで波動拳(飛び道具)が出たり、連続でボタンを押しただけでサマーソルトキックが出るキャラクター=サイクロップスを作ったとのことで、ぶっちゃけ地味(当時)な原作やアニメよりも派手である。
本作や以降のシリーズが米国で人気になったことで、ゲームに由来するイメージが原作に逆輸入されたりもしている。

一方、当時はMARVEL側が優秀過ぎるメディアミックスに慣れていなかった為か、次回作位まではキャラクターのイメージが損なわれることを恐れて多くの制約を掛けており、ゲーム内のモデル以外のイラストは原作の一コマから使用、2Pカラーも元のデザインからかけ離れたものにしないように、といった注意がされていた。
…しかし、本作の出来が余りにも良く、MARVEL側からの評判も上々でCAPCOMの手腕が評価されるようになってからは、デザインその物をCAPCOMに任せてくれるようになっていったという。*3


【ゲームの目的】

登場キャラクターはヒーロー側のX-MENと、大ボスのマグニートーに雇われたか、好き勝手に暴れているヴィラン側のミュータントに分かれており、磁界王マグニートーの野望を阻止するか、マグニートーに成り代わるか、が目的となる。
原作では寧ろマイナーだったキャラクターが本作で大いに知名度を上げたりといった現象も。
尚、難易度はかなり高く、システムがまだ煮詰まっていなかったにしてもシリーズ作品中でも攻略が難しい。
ただし、洗練されていないが故に本作のみとなっている魅力的な要素も少なくない為に、MVCとは別の唯一無二のゲームとして本作を強烈に圧すファンも存在している。
特に、ラスボスのマグニートーは後のプレイアブルキャラクターとなった時より遥かに性能が高く、反則的な技構成をしている鬼門であるとの評価が為されている。*4



【登場キャラクター】

※声優は本国版のアニメと同じ俳優である。

■X-MENメンバー


“究極のタフガイ”

ウルヴァリン(Wolverine)

一番人気の小さいオッサン。
以降のシリーズにも皆勤賞の人気者。
アダマンチウムのと骨格を持つ。
小柄で一発の攻撃力は低いが、素早い動きと連続技が魅力で、背が低いので飛び道具も潜りやすい。
Xパワーでスピードアップしたり、体力を回復することが可能。

“ファイティングドール”

サイロック(Psylocke)

女忍者として復活したテレパス。
ミステリアスでムチムチのアサシンだ。
二段ジャンプも可能とする、テレパシーと忍術を組み合わせた圧倒的な体術が武器だが、攻撃力や耐久力は低い。
Xパワーで分身が可能。

“コマンドリーダー”

サイクロップス(Cyclops)

生真面目で時々ムッツリな皆のリーダー。
飛び道具に対空必殺技とバランスのいい能力を持ち、隙こそ大きいがやっぱり強力なオプテイックブラストのバリエーションと、安定した連続攻撃や多彩な投げが魅力。
本作で格闘能力が高く設定されたことが、後に公式でもステゴロ強者になったキッカケである。

“大自然の女神”

ストーム(Storm)

気候を操る能力を持つ。
この頃はやや老け顔だがモテモテ設定のサブリーダー。
飛行能力を活かした自由自在の突進攻撃と、竜巻など多彩な遠距離攻撃が強力。
まともに当てた隠しハイパーXが超威力。

“HOTなクールガイ”

アイスマン(ICE MAN)

初代X-MENの一人で、落ち着きのないベテラン。
とはいえ、原作でも強力なアイスビームなど氷結能力由来の必殺技の数々はゲームでも強い強いと評判。
見た目がパンツ一丁と侮るなかれ。ビームをガードしても体力を削られない特性も。
Xパワーでは腕に巨大な氷塊をつける。

“鋼の肉体”

コロッサス(Colossus)

自らの肉体を生体金属で覆うことで無敵の鉄人と化す、ロシア出身の純朴青年。
強固な肉体を利用した体当たりとコマンド投げのジャイアントスイングが武器。
特殊能力のXパワーで格ゲー初のスーパーアーマーを纏うことも可能。


■ヴィラン側


“異次元の魔女”

スパイラル(Spiral)

視聴率こそが正義の、狂った異次元モジョー・ワールドの支配者モジョーに作られた人造人間で、モジョーの刺客にして突撃リポーター。
六本腕で不思議な踊りが武器と、本作のイロモノ枠。
ハイパーXは一見の価値あり。

“白銀の鎧武者”

シルバーサムライ(Silver Samurai)

本名:ケイチウ・ハラダ(Kenuichio Harada)。*5
ミュータントであるために、日本有数のヤクザ組織ヤシダ家の親分になれなかった悲劇の男だったが、本作ではヤシダ家の親分として登場している。名前通り銀色の鎧兜を着用。
マイナーヴィランだったが、本作の影響で日本で有名になり、原作でも出番が増えた。
Xパワーでに炎などの闘気を纏ったり、分身の術を使えたりする。

“紅の超人兵士”

オメガレッド(Omega red)

旧ソ連が開発した超人兵士で、エージェント時代のウルヴァリンと因縁がある。
近くにいる生命体をどんどん弱らせる致死因子(デスファクター)を撒き散らす危険な男。
癖があるが投げ技からの追撃等、極めると強い。
必殺技のデスファクターやエナジードレインで相手の体力やパワーゲージを吸い取ることが可能。

“ミュータントハンターロボット”

センチネル(Sentinel)

反ミュータント主義の天才科学者ボリヴァー・トラスク*6が生み出したことで、やがては自分達で自分達を量産するまでになったミュータント狩り、及び虐殺用ロボット。
原作よりもメカメカしく、ビームミサイルなどの巨体に内蔵された超兵器で敵を追い詰める。必殺技のセンチネルフォースでは小型のセンチネルを呼び出し攻撃させる。
Xパワーで飛行も可能。

■ボスキャラクター


“制止不能の人間重戦車”

ジャガーノート(Juggernaut)

邪神の力を秘めた宝石によって、ハルクに匹敵するパワーと無敵の肉体を得たX-MENの指導者プロフェッサーXの義兄。
義弟憎しでX-MENとも何度も対決している。
COM専用のボスキャラクターで、常時スーパーアーマーで少しも仰け反らない上に、通常技に削りまで付いていて更にステージに落ちている物を拾って投げつけることも可能。
SS版と海外PS版のみ対戦専用で使用可能。

“磁界王”

マグニートー(Magneto)

電磁力と重力を自在に操る最強と呼ばれるミュータントの一人で、X-MEN最大の宿敵。
プロフェッサーXとは逆ベクトルの負のミュータント指導者だ。
衛星軌道に浮かぶ居城アバロンから、地球人類を滅ぼそうとしているが、これも迫害に苦しむ同胞を救いたいが故の行動である。
本気モードなのか、誘導ビームにガード不能の重力球、此方の攻撃を全てを無効化するバリアに通常攻撃の削り効果と、MVCシリーズ通しても屈指の難敵。その上飛行能力も持つ。
海外PS版に限り対戦専用で使えるが、電磁ビームは何と通常技だった。


■隠しキャラ


“拳を極めし者”

豪鬼(Akuma)

『SUPER ストリートファイターⅡ X』で衝撃のデビューを飾ったばかりだった豪鬼が、いきなりミュータントの世界に殴り込み。
実は、スーパーコンボの滅殺豪波動や滅殺豪昇龍は本作の客演ハイパーXが初出である。
また、当て身(投げ)技の昇龍煉獄といった珍しい技も。
ミュータントの世界に合わせてか、真豪鬼に近い豪鬼である。
条件を満たすと乱入してくる他、カーソル移動コマンドで此方は自分でも使用可能。
尚、前述の様にMARVELがまだまだキャラクターイメージに厳しい時だったので、自社に関係ない隠しキャラを登場させたことには注意があったとのこと。


【余談】


  • アーケードでは一部のキャラのバランス(永パに近いお手軽な連続コンボ。異常な投げ判定)がおかしかったことから、細かくバージョンアップ版の基板がリリースされている。初期のものをVer1.00とし、直ぐに修正が加えられたVer2.00、そこからバランス調整を進めたVer2.10、2.20、3.00が存在する。海外人気が高かったことから、全バージョンが国外にも出回っている。
    • 移植はアーケード最終版であるVer3.00基準で行われ、SS版にはVer3.10のナンバリングが付けられている。Verが進む毎に全体的なバランス調整やバグが修復されたのに、結果的にマグニートーは強化されてしまっている。
    • ちなみにVer.1.00と2.00以降では豪鬼出現コマンドが違っており、さらに1P側と2P側でも違うというややこしさ。Ver2.00以降の1P側の出現コマンドはカーソル移動を経て最終的にシルバーサムライの上でボタン3つ同時押し(2P側はスパイラル)なのだが、そのタイミングが1フレームの誤差も許さないシビアなものであったことや、そもそもVer1.00ではコマンド自体が違う等の要因もあったため失敗が続出。ゲーメストでは「豪鬼を失敗しても」と銘打ってシルバーサムライの攻略記事が組まれるなどの余波を引き起こした。このため、『スーパーストリートファイターⅡX』の茶色リュウと並んで豪鬼出現失敗の象徴的存在として語り草になることも多い。

  • 公式ガイドブックに掲載された開発者の裏話によると、納期の締め切りが迫っていたことから、本来なら時間を掛けてキャラクター別に熟考すべき思考ルーチンを個別に設定するのを諦め、間に合わないキャラ全員にウルヴァリンの思考パターンを強引にぶち込んだとのこと(そして付けられた同コラムのタイトルが「ウルヴァリン増殖事件」)。…プレイヤーからすると「だからどうした」程度の話であるが。そのため、Ver1.00ではよくよく見るとおかしな動きをしているCPUがいたりするが、意外とバレないものである。もちろんVer2.00からは修正され、きちんとキャラクター別に設定された。

  • 前述のテレ東の日本語吹替版アニメでは、本編終わりに本作の対戦コーナーをプロフェッサーX(声:納谷六郎)と、ビースト(声:千葉繁)で解説していた。所謂声優無法地帯だったようで、本編の真面目ぶった内容とは大違いのカオスが繰り広げられていた。

  • 本作と同時期にCAPCOMからX-MENを題材としたSFCソフト『X-MEN Mutant Apocalypse』が発売されている。格ゲー向きでは無いビーストや、逸早くガンビットが居るのがポイント。





追求修正はヲタクとリア充の共存を成し遂げてからお願いします。

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最終更新:2024年04月13日 15:27

*1 2Dが苦手な初代PSでは満足なアニメパターンが再現出来なかった為とも言われる。

*2 ウルヴァリン、ストーム、マグニートーは本作の時点でゲームに登場している。

*3 具体的には第3弾『X-MEN VS STREET FIGHTER』からイラストもCAPCOMに任せるようになった。

*4 実際、何とか攻略出来るのは身も蓋も無い言い方をすればCPUが“バカ”だからであり、性能をフルに発揮した場合には格ゲー史上でも最高性能の壊れキャラであるとの評価までされている。

*5 日本向けにはケンイチロウ・ハラダ(原田剣一郎)に改められている。誕生当時、余り日本に詳しいスタッフがいなかったための誤りである。ヤシダも吉田と言いたかったのだが、現在は矢志田と当て字されて特別な家名感を獲得しているる。

*6 尚、本人は悪のミュータントしか知らなかったためにこんなもんを作ってしまったせっかちさんである。何故か悪名ばかりが広まっているが、本人は後にX-MENの存在を知り、正義の為に戦うX-MENに理解を示した末にセンチネルの暴走を止めるために死んだことはもっと知られていい。