松本幸四郎(九代目)

登録日:2019/08/24 Sat 06:20:00
更新日:2024/04/18 Thu 12:30:52
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松本幸四郎(まつもとこうしろう)(九代目)は日本の歌舞伎役者。屋号は高麗屋。

現在では息子に松本幸四郎の名を譲り、父の最晩年の名跡である二代目松本白鸚を襲名している。本名は藤間昭曉(ふじま てるあき)
1942年8月19日生まれ。東京都出身。

概要

本業の歌舞伎においては重厚で野太い声を持ち味としており、現役の歌舞伎役者の中で勧進帳(かんじんちょう)の最多上演記録(1000回越え)を持ち*1、主に忠義に篤い悪僧である武蔵坊弁慶を演じる。
他にも一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき)では情緒ある武人の熊谷次郎直実もこなすなど、父初代松本白鸚や母方の祖父である初代中村吉右衛門の芸風を継いでいる。

また、歌舞伎以外にも映画、テレビドラマ、ミュージカル、CM出演、吹き替え、ナレーションと各方面でも活躍しているとてつもないマルチタレント
九代琴松という別名義で舞台演出にも関わっている。
これらの活動は旧芸名の「市川染五郎」時代から実施しているため、「松本幸四郎」という名前だけではどの世代かわからないという人も居るかもしれない。

ミュージカルの分野においては「」ラ・マンチャの男」が最も有名。
1969年から50年以上という想像を絶する長期間に渡って主演のドン・キホーテ/ミゲル・デ・セルバンテスを務めた。
円熟した高い演技力と表現力で複数の賞を受賞しているほか、日本国外での上演経験もある。
本人もドン・キホーテにはかなりの思い入れがあり、現実と理想の狭間で苦しむ姿に歌舞伎役者と舞台俳優という2つの側面を重ねていると語ったことも。

現代劇では「アマデウス」における鬼気迫るサリエリの評価が非常に高い。
モーツァルトの才能と人格の乖離を認められず、狂気の嫉妬と苛みに走るサリエリを見事に演じ切る。
アマデウス(映画)と共に、後世の作品におけるサリエリ像に大きく影響を与えている。
実際にDVD等で鑑賞するとほぼそのまんまである

テレビ作品では「王様のレストラン」(フジテレビ)の主役、千石武役が有名。
ユーモアとプロフェッショナルを高レベルで両立させた演技はお茶の間の心を掴んだ。
レストランに出向いた際も歌舞伎役者の松本幸四郎ではなく、千石武役の松本幸四郎として認識されることが多いとか。

CMでは1984年から1989年までトヨタ自動車のハイソカー・マークⅡのCMにも出演。5~6代目と歴代屈指のセールスを記録したモデルに連続して出演したので、氏のCMと言えばこれを思い浮かべる人も少なくない。
他には2000年代前半のバンテリンのCMが有名。肩でも腰でも現場で効いてくれる…ありがたい…
またYoutubeで時折流れたソニー損保のCMにもよく出演しており、名前は知らずとも顔を見れば合致するアニオタも多いかもしれない。

音楽への関心も強く、自身で作詞・作曲・歌唱を担当した『野バラ咲く路』というレコードを出したこともある。この曲は娘で女優・歌手の松たか子もカバーしている。
他にも趣味としてギター演奏・絵画・競馬ととにかく手広い万能タイプの人物。
その反面私生活では妙なネタも目立ち、一家そろって甘党堅あげポテト*2を野菜として食べている白米を温野菜として扱うなどアメリカ人めいた食生活を送っている。

家族

息子は上述の様に十代目松本幸四郎、孫は八代目市川染五郎、娘は松たか子。
祖父に七代目松本幸四郎と初代中村吉右衛門、父は初代松本白鷗、実弟に二代目中村吉右衛門と歌舞伎界のサラブレットともいえる家系である。
このうち先代に当たる父と弟は重要無形文化財保持者、いわゆる人間国宝である。
こうした事から彼はサラブレッドでありながらタレント活動にかまけて歌舞伎を疎かにしている…というふうに誤解されることもある。
しかし彼は本来庶民の娯楽であった歌舞伎が、一部の人にしか分からない崇高な芸能と化してしまったことに危機感を覚えており、歌舞伎をより身近なものにするために宣伝するという目的もあってこうした活動をしている。
その活動が認められ、2022年には文化勲章を受章している。


主な当たり役

勧進帳(武蔵坊弁慶)
松王丸(菅原伝授手習鑑)
大星由良助(仮名手本忠臣蔵)
一谷嫩軍記(熊谷次郎直実)

歌舞伎以外の出演作品

テレビドラマ

NHK大河ドラマ(黄金の日日/納屋助左衛門、山河燃ゆ/天羽賢治、花の乱/酒呑童子、真田丸/呂宋助左衛門)
ナイフの行方(根本拓自)
王様のレストラン(千石武)
古畑任三郎 すべて閣下の仕業(黛竹千代)

ミュージカル

ラ・マンチャの男(ドン・キホーテ/ミゲル・デ・セルバンテス)

舞台

アマデウス(アントニオ・サリエリ)
カエサル -「ローマ人の物語」より-(ユリウス・カエサル)

映画

HERO(蒲生一臣)
天地明察(保科正之)

吹き替え

ジャングル・ブック(バギーラ)※2016年版

CM

トヨタ自動車「マークⅡ」
キリンビバレッジ「別格」
伊藤ハム「伝承」
興和「バンテリン」
ソニー損保「自動車保険」
他多数





追記・修正はマークⅡに乗ってバンテリンを肩に塗ってからお願いします。


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最終更新:2024年04月18日 12:30

*1 今までの歴代最多上演記録保持者は父方の祖父に当たる七代目松本幸四郎の1600回。

*2 この話が伝わったのか2023年からは長男の十代目松本幸四郎が製品のイメージキャラクターに起用されている。