ヘイムダル(北欧神話)

登録日:2020/03/20 Fri 13:24:52
更新日:2024/01/09 Tue 15:05:08
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『ヘイムダル(Heimdall,Heimdallr)』は北欧神話の神の一人。
ヘイムダッルとされている場合もある。

北欧神話を代表するマジックアイテムの一つとして有名な、角笛ギャラルホルンの持ち主として有名。


【概要】

“白いアース(神)”と讃えられるイケメンな光の神。
ただし、北欧神話には光の神が他にも居り、ヘイムダルは特に“波の間から見える暁光の神”であると解説されている。

“九人姉妹から生まれた子”とされており、パッと見エロゲみたいなシチュエーションながらゲームにならないような出自を持つが、これは押し合いへし合いする激しい波のうねりを女達が仲良く押し合いへし合いしているのに例えたと解釈されており、上記の様に早朝の荒波から立ち上った日の出の光という構図が神格化された神なのだろう。
……ヴァイキングの信仰っぽいね!

このことから、日の出=万物の始まりを告げると解釈されたのか生成の属性を持っていたとも想像されている。
また、母親たる九人姉妹とは、荒れ狂う北の海の人格化であろう霜の巨人エギルと、同じく海を行く者を投網で捉えてしまう=海難者の原因とされた女神ラン*1との間の九人の娘達のことでは無いか?とも解釈されている。

一方、アース神族としては最高神オーディンの家系に組み込まれており、出自からも養子として解釈されている場合が多いが、創作等では余り取り沙汰されていない。

ヘイムダルは眠りを必要とせず 昼でも夜でも100マイル(160.9km)とも100リーグ(380km~740km)とも呼ばれる先も見通せ、草の生える僅かな音も聞き逃さなかったとのことなので、適任とばかりにアースガルド(神の国)とミドガルド(人間の国)を繋ぐ虹の橋ビフレストの番人をすることになった。

かのラグナロクの際には巨人達は外側が燃えているにもかかわらずビフレストを渡ってくることになる為、最前線での監視役ということでもある。
巨人達がやって来たのを見た時には彼がギャラルホルンを吹き鳴らし、それが最後の戦の始まりを告げるのである。
そんな訳で、基本的に仕事ばかりしている真面目神である為、因縁のあるロキすらも他の神々の様にはヘイムダルをイジれなかったようで、上手くもない“3K(死語)仕事で御苦労だな”と云う皮肉を言う程度のことしか出来なかった。(『ロキの口論』)

更にヘイムダルは予言の力も持っているとされ、その力について古エッダの『スリュムの歌』では“ヴァン神族と同じ”とされていることから、同じく容姿の美しさを讃えられるフレイフレイヤと同じく、ヘイムダルもヴァン神族の出身であると解釈されている場合がある。

他の特徴としては歯が純金であるという。
また、異名として“曲がった杖”とも呼ばれるが、古代の北欧では杖と剣が曖昧な表現をされており、剣のことを“ヘイムダルの頭”と表現していた……ともされることから、こうした特徴を踏まえて年老いて歯が黄色くなった牡羊を象徴していると解釈される場合もある。


【ロキとの関係】

前述の様に北欧神話最大のトリックスターであるロキとは因縁浅からぬ関係となっている。
ロキは巨人族出身でありながら神の一員としても重要な地位を得た訳だが、それにも関わらず悪質な悪戯を繰り返し、それを監視役であるヘイムダルに見咎められていたようである。

特に有名なのがフレイヤの持ち物であるブリーシンガメンを蝿に化けたロキが盗み出した時のことで、この時には夜だったので他の者に知らせる暇も無いと思ったのか、ヘイムダル自らが雲や熊に変身しながら執拗にロキを追跡。

ロキも変身を駆使して抵抗したが、最終的にはヴァーガ岩礁のシンガ岩まで追い詰められ、互いにアザラシに変身していた両者の戦いはヘイムダルの勝利に終わり、ロキが捕らえられると共にブリーシンガメンもヘイムダルよりフレイヤの元に戻されたという。

ロキとは、他にも因縁があるらしく、両者は決闘を行ったこともあるらしいのだが失伝も多いのか良く解っていない。
何れにせよ、真面目くんvs不真面目くんという意味でも、両者はそもそもが水と油だったのだろう。
最終的に両者の因縁はラグナロクで相討ちとなって果てるという、凄惨な結末となった。

……この他、直接の因縁という訳ではないかもしれないが、巨人スリュムにミョルニルが盗まれ、交換条件としてフレイヤの身柄が要求された事件にて、フレイヤが激しく拒否ったこともあってトール自身を女装させてロキの手引きで乗り込ませるという斜め上の正面突破で解決したことがあるが、この時にトールを女装させるというおぞましいアイディアを出したのもトールに同行したロキとされているが、アイディアを出したのはヘイムダルとされていることもある。
ちなみにこの時ロキはノリノリで大賛成をしており、女装がバレそうになった時には全力でフォローをしている。後にも先にもロキとヘイムダルの意見が一致したのはこの時くらいだろう。


【リーグ神との関係】

古エッダにて言及される、人間(の階級の)始祖とされるリーグと同一視されている。

リーグは出来たばかりの人界を訪れた際に、年齢層の違う三組の夫婦の家を一晩ずつ泊り歩くと共に様々な助言を与え、結果的に三組の夫婦から其々に生まれた子供が貴族・自由農民・奴隷という三つの階級の始祖となった……という伝承を持つ神である。

何で、そのリーグがヘイムダルと同一視されているかというと、エッダの『巫女の予言』にて人間は“ヘイムダルの子等”と呼ばれているが、このケニングの元ネタが『リーグルの詩』と考えられるからである。


【持ち物】


  • ギャラルホルン
ヘイムダルが持つラグナロクの到来=世界の終わりを告げる角笛。
名前の由来はgalaから“叫ぶ”や“歌い出す”と考察されるが、色々と物議を醸す説を繰り広げたことでも有名な北欧神話研究家のシーグルズル・ノルダルはgallaが語源として“鳴り響く”や“響き渡る”が名前の由来としている。
そんな世界の命運を握る重要アイテムでありながら、普段はユグドラシルの根元の、しかもアスガルドの近場も近場で霜の巨人自体との関係も曖昧だが地理的には一応は敵陣である筈のヨトゥンヘイムにある“ミーミルの泉”に隠されているとされ、平時のギャラルホルンは番人であるミーミルが泉から“知恵の水”を汲む杯として使われているという。
ミーミルの泉の地理に関してはミドガルドの真下と表記されていることもある。
ミーミルは予言の力を持つ霜の巨人の一人とされるのが一般的だが、オーディンにとっては伯父であるといい、更にはヴァン神族との戦争終結後にアース神族より差し出された人(神)質の一人だったとも言われたりと、つまりは良く解っていない。
ミーミルの泉には、かつてオーディンが泉の水を飲むのを希望した際にミーミルの出した条件に従って担保として差し出した片眼が沈んでいるとされ、神々にとっても因縁浅からぬ場所である。
そんな場所がどうしてギャラルホルンの保管場所となっているのかについては諸説あり、基本的にはこれといった説明はされていないのだが、オーディンの眼と同じくミーミルに対する担保とする説もあり、眼は満月の、角笛は三日月を象徴しているとも考察される。
一方、鋭いながらもキマりすぎた意見を出しては物議を醸すノルダルは此処でも異論を述べており、先ずは世界の破滅の“謂わば緊急の際に吹くべきギャラルホルン”が普段はヘイムダルの手元に無いとするのはおかしいとまともにツッコミを入れつつ、実はオーディンが片眼を失ったのと同じく、神々がミーミルへの担保としたのはヘイムダルの優れた聴力であったと持論を展開し、それがラグナロクの到来の際の破滅の一因(ヘイムダルが素早く角笛を吹けなかった)となっていると解いている。
一方、ノルダルは此のことはアースガルドの囲いの工事にてフレイヤの身柄を欲した巨人を騙して相応の対価を与えることを神々が拒んだことが更なる発端であると例の如くの飛躍を見せている為、ノルダルの意見に反発する研究者も多かったとのこと。


  • ヒミンビョルグ
ビフレストの袂にあるとされるヘイムダルの屋敷で“天空の山”の意。名前は立派だが、屋敷が職場の近くて詰所みたいなもんですよね?
『ユングリング家のサガ』では、屋敷があったのはログ湖(スウェーデンのメーラレン湖)の畔であるといい、ヘイムダルはオーディンより当地を管理するゴジ(神官)を任されたのだ、と記されている。


  • グルトップ
ヘイムダルの馬と伝えられる。
名前の通り“黄金の前髪を持つ”馬。
殆どの他の神々の馬と同様に余り伝承は見られず、ロキの悪戯で死んだオーディンの実子バルドルの葬列にヘイムダルが参加した際に乗っていたとされているのみ。



【登場作品】

ヘイムダル(ヴァルキリープロファイル2 -シルメリア-)
ヘイムダル(魔探偵ロキ)
ヘイムダル(マイティ・ソー)
覚醒ヘイムダル(パズル&ドラゴンズ)
ヘイムダル(グランブルーファンタジー)
幻魔ヘイムダル(真・女神転生デビルサマナー~悪魔召喚士~以降のメガテン関連タイトル)
ヘイムダル(モンスターストライク)、ギャラルホルンも擬人化して登場
シタン・ウヅキが操るギア・アーサー「ヘイムダル」(ゼノギアス)
時の番人(クロノ・ナンバーズ)の一人バルドルが使う武器「ヘイムダル(ロケットブースター搭載の鎖付き鉄球)」(BLACK CAT)
帝都ヘイムダル(英雄伝説 閃の軌跡
ヘイルダム(終末のワルキューレ)



追記・修正は吹奏楽器を携え寝ずの番をしながらお願いします。

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最終更新:2024年01月09日 15:05

*1 夫婦の特徴を纏めて“波の乙女”と呼ばれ、船に噛み付いて沈める女神エーギルとされている場合もある。