トランスフォーマー(IDW)

登録日:2020/04/12 Sun 16:08:13
更新日:2023/02/16 Thu 20:55:28
所要時間:約 13 分で読めます




概要

米国のIDW社が出版していたトランスフォーマーのアメコミシリーズ。
実写版公開以前の2005年から2019年まで足掛け14年も続いた超大巨編であり、今まで積み上げてきたG1より始まる世界観を、玩具独自の製品や和製アニメの設定なども(マニアックに)拾い集め、「ハズブロ・ユニバース」として再構築している。巨大な世界観は様々なライターとアーティストによって紡がれるが、マーベル版も担当していたサイモン・ファーマンが全体を統括している。

ほのぼの戦争アニメだった初代2010などとは異なり、ザ・ムービーを超える容赦無い展開、実写版とは別ベクトルの TF vs 人類、赤くないのに真っ赤なオートボットたち、神話や文化、内政への言及、ディセプティコン台頭の背景、TF出生の秘密、戦前や戦後の描写……etc.とダークかつハード(ただしアメリカン・ジョークとシリアスな笑いもまた多め)な作風となっている。
しかし、巨編だけあって各キャラの描写・設定も細かく、主要キャラのオプティマスメガトロンだけでなく、オートボット 、ディセプティコン、その他多くのTFに見せ場があるなど、TFの主要テーマである「群像劇」の要素は遺憾無く発揮されている。

ほか、”トランスフォーム”に”変形”のみならず”変容”といった意味を持たせており、そのテーマは「on going」以降顕著になっていく。そして、今までの設定ではぼんやりしていた創造神プライマス、ベクターシグマ 、最初の13人やマトリクス、ユニクロンといった「神話の存在」についても、IDW版としての独自解釈を打ち立てた。

以下、IDW版の代表的描写・キャラ
  • 武士系TFドリフト
  • 芸者系TFウィンドブレード
  • メガトロン≠ガルバトロン
  • 冷徹ちゃぶ台返しプロール
  • サンストリーカーのトラウマ
  • メスゴリラと化したアーシー姐さん
  • DIEアトラスと狂信者
  • ホワールの擬人化
  • 公式カップリング
  • 大体ショックウェーブのせい
……などなど挙げればキリが無い。

日本では「All Hail Megatron」を小プロが邦訳したのを機に、ヴィレッジブックスがそれ以降の作品を次々邦訳している。
これとは別にマーベル版も順次出てるので、TFアメコミに入るなら今がオススメ。

ちなみに、2019年から同じくIDWによるトランスフォーマーのアメコミが始まったが、これは本シリーズ終了後、全く新しい世界観で動き始めた新シリーズである。

シリーズ一覧

ationシリーズ

IDWサーガの始まり。人間側のベリティやハンターが主人公としてサーガを引っ張っていくかと思ったらそんな事は無かったぜ! 
オプティマスの登場が1作目ラスト、人間側の敵組織マシネーションの存在、禁じられた技術ヘッドマスターやプリテンダーなど、この時点で従来とは異なる世界観を確立している。
が、当初は「人間の話多すぎ!TF見せろ!」との意見が多く、2作目の舞台は終始セイバートロン星だったりと色々あったらしい。
四つの作品で構成されるが、各キャラに焦点を当てたスポットライト等(短編)も追う必要があるなど、中々敷居が高い。
日本未邦訳ではあるが、後述の「on going」和訳版では巻末に各話(スポットライト含む)のかなり詳細なあらすじが付いており、理解の助けとなっている。
  • Infiltration
  • Stormbringer
  • Escalation
  • Devastation

Maximum Dinobots

「Devastation」とスポットライト「グリムロック」の続編。
米国の秘密組織スカイウォッチが解放したダイノボットとマシネーション、オートボット、ディセプティコンが複雑に絡み合うミニシリーズ。
ハンターとサンストリーカーの悲劇も一旦終了するが……?

Last stand of Wreckers

カルト的人気がヤバいミニシリーズ。
激ヤバディセップ・オーバーロードに占拠されたボッツの監獄ガーラス9。その救出に向かった特殊部隊・レッカーズの運命は?
スプリンガーとインパクターの因縁、壁の模様と化したフォートレス・マキシマス、ロボット生命体だから許される残虐描写、巻末の濃過ぎるモブキャラ設定集と小説など、ミニシリーズなのに密度が高過ぎる……。
ライターが共通のため、後述の「MTMTE」の前振りとしても楽しめる。

Megatron:Origin

破壊大帝メガトロンがディセプティコンとして蜂起した経緯やセイバートロン星の腐敗政治が語られるエピソード0なミニシリーズ。トンカは即そぉいな描写(邦訳版で修正された)やまさかのラットバット、敵として登場するオートボット警備隊など見どころが多い。特にヘルメットを脱いだメガトロンは必見。まだ設定が固まっていなかったのか、初代デザインのオライオンとエイリアルがモブで出てたりする。
一応、時系列上は開戦直前を描いているが、本筋の方で更に過去の話が回想として語られる事も多いので、メガトロンの一番古い物語というわけでは無い。

All Hail Megatron

詳細はリンク先参照。
地球侵略に本気を出したデストロンと、なす術もなく制圧される人類、敗北して内輪揉め状態のサイバトロン、米軍兵士のスパイクに親父など、初代アニメのほのぼの作風の一切を捨て置いてきた本気の地球侵略編。
日本で初めて和訳されたIDW版で、この邦訳版のみ、登場人物名が和製となっている。
いつもとは違う雰囲気の裏切り者、文化を学ぶサンクラ、2人に置いてかれモヤモヤのスカワから、リンチされるリジェ、真っ赤過ぎるアイアンハイド、情緒不安定のサンストリーカー、終盤まで意識の無いコンボイなど、ほのぼの初代・2010では見られなかった展開が繰り広げられる。シリーズ初期を支えたハンターにこのオチはあんまりだぜ……。
本編後に収録されている短編も濃い内容が多く、異様にアニメ調の現地美少女とクリフの交流などが読める。チャーのオヤジ? 身内殺しなんて無かった。いいね?

The Transformers/on goingシリーズ

全7作で構成される「無期限連載編」。
AHMの続編。ロスト・エイジばりにTFが地球人から迫害されているところからスタートし、人類とオートボット、ディセプティコンが入り乱れる陰謀劇が展開される。終盤ではある意味「オオゥ…ジャァズ」な場面も。
しかし、地球人とTFの交流がテーマかと思いきや、途中から異世界編が始まるわ、北の将軍が出るわ、ガルバトロンが戻ってくるわで、両軍とも母星に帰還し、最終エピソードに至っては読者置いてけぼりのG2超展開である。ロボットは信用できないから仕方ない。
邦訳版ではあまりにもメインストーリーから離れているためか「Heart of darkness」はカットされた。また、「Police Action」は「Chaos Theory」に収録されている。

  • For All Mankind
  • International Incident
  • Revenge of Decepticon
  • Heart of darkness
  • Chaos Theory
  • Police Action
  • Chaos

Drift

オリキャラにして実写化までされたサムライ・ドリフトの過去を描いたミニシリーズ。ディセプティコンのデッドロックが軍団を抜け出し、ダイアトラスから凄いアイテムを貰う話。
何気に現代日本が登場する。こちらも後述の「MTMTE」の前振りとして楽しめるため、邦訳版もある。

Death of Optimus Prime

オンゴの続き。1話の短編。
オプがマトリクスを解放したら敵が消えて星が蘇ったよ! 一応オートボットが勝ったけど、戦争中に星から逃げた奴らもで戻ってきたからさあ大変! 
ディセプティコンの奴らは衛星兵器の砲身に押し込んで、正義のオートボットがI/Dチップで管理してるんだ!
と色々あり過ぎて燃え尽き症候群と化したオプティマスは、二つに割れたマトリクスをビーとロディマスに渡し、オライオン・パックスとして母星を去ったのであった。
以降、ストーリーラインは「MTMTE」と「RID」に分かれる。

More than Meets The Eye

セイバートロン星の黄金時代を築いた「ナイツ・オブ・セイバートロン」を探しに、ロストライト号で宇宙大冒険へ繰り出すイカレ暴走族と200名の物語。
主に2010やリバース(へっぽん)由来のキャラが多く、ライター曰く意図的にマイナーキャラを集めたらしい。
ストーリー自体はダークファンタジー&ミステリ風味だが、ギャグも多く、女性ファンも多い。
オリキャラのDJDは大人気で、特にターンの正体は考察班をワクワクさせた。

Robots In Disguise

戦後のセイバートロン星で内政プレイに勤しむバンブルビーたち(特にプロールとスタスク)の物語。
しかし、敗北したディセプティコンや第三勢力ネイルの存在に苦慮するなど、なろう小説のようにはいかないのであった。こっちは初代成分多め。
他作品ではあまり無い「完全な戦後」を描いており、中々重いテーマを扱っているが、「MTMTE」に負けず劣らずの魅力的キャラクター描写が多く、良くも悪くも地球人との交流を経た彼らの意外な一面が見られるだろう。
和製キャラも出演しており、メタルホークがプロ市民になってたり、スカイバイト(ゲルシャーク)が詩人になっていたりする。
「ホイルジャック ホイルジャック ホイルジャック」

Autocracy/Monstrosity/Primacy

オプティマス・プライム誕生の物語。
ストーリーにはG1アニメのライターも関わっている。
時系列上はメガトロン・オリジンの後だが、その繋がりは割と緩やか。
ゼータ・プライムと闘うために手を結ぶオライオンとメガトロンは激アツ。
実は宣伝動画まである。

Dark Cybertron

「MTMTE」と「RID」の合流作。スポットライトから伏線を張り巡らせてきた「彼」の目的や陰謀は、ダークサイバトロンなる予言へと結実する……! 
というお祭り企画。リジェネシス計画の登場から本当長かったな……。
スワーブとブラーが共同でバーを開店する部分は読んでいて感慨深い。

その後の物語は……

「MTMTE2期」→「Lost Light」
「RID2期」→「the Transformers vol2 」→「Optimus Prime」
「Windbrade」→「Till All Are One」など多岐に分かれて広がっていく。


用語


トランスフォーマー/サイバートロニアン

お馴染みの超ロボット生命体。オートボット とディセプティコンの二大勢力に分かれて数百万年間グレートウォーを繰り広げている。
本シリーズでは明らかにテクノ蛮族と呼んで差し支えない言動、行動、歴史的経緯があり、銀河評議会からは「内戦を全宇宙に拡大した種族」として忌み嫌われている。

機能主義社会

ノミナス・プライムの時代に築かれた、オルトモードによって身分が決まる戦前の階級社会制度。
ついでに変形と関係無い超能力を持ってる者も迫害されていたほか、スパークの出生方法でも差別が蔓延していた模様。

プライム

セイバートロニアンの最高指導者。大体ロクでもない。

ノヴァ・プライム……ガルバトロンら愉快な仲間達と一緒に探検(他星系侵略)の旅へ。デッドユニバースに突っ込みネメシス・プライムと化す。

ノミナス・プライム……機能主義社会大好きおじさん。おかげでディセプティコンが結成される。

センチネル・プライム……オートボット警備隊のトップ。プロテウスとの謀略でマトリクスを受け継いだ暴君。でもアーマー装備はカッコいい。

ゼータ・プライム……超兵器のエネルギー源は市民だよ☆系プライム。

オプティマス・プライム……ようやく真っ当な人物にマトリクスが渡った……。

ロディマス ・プライム……マトリクスとの融合を経験して以降、ホット・ロッドは自身をロディマスと名乗ってイキってる。

導きの手

創造神プライマスと、彼から分裂した4体のTFの総称。色々すったもんだあった後、
ベクターシグマやコグ、マトリクス、スパーク、不死の概念になったらしい、という神話。

ナイツ・オブ・セイバートロン

古代のTFたち。サイバートロン星の黄金期を創り上げた後、宇宙を教化するために旅立ったという。本当かなあ?

評議会

上院とも。戦前に存在したサイバートロン星の統治機関。プライムが警察・軍事的な最高権限を持つなら、評議会は立法部門であると思われる。
超絶エリート出身者で構成されており、機能主義社会を敷いた大体の元凶。
プロテウスデシマスダイアトラスラットバットオライオンに何かと親切にしてくれる議員などの評議員が所属していたが、
ディセプティコンによって某上院議員並みの末路を迎える。

デッドユニバース

生と死が逆転した並行世界。バケモノしか居ないが来た奴らもバケモノだった。
初期から登場しており、結構長い間物語に関わってきた。

ヘッドマスター

サンストリーカーのトラウマ。
マシネーションとスコルポノックによる、人間とTFを合体させる技術。

プリテンダー

禁じられたTFの生体装甲技術。
この技術を用いたサンダーウィングは発狂し、サイバートロン星を壊滅させた。
本国の売り上げが芳しく無かったことを揶揄した設定と思われる。

コンバイナー

禁じられたTFの合体技術。ゲシュタルトとも。古代のTFジアクサスによるもので、デバスターの誕生はグレートウォーの趨勢を握った。
禁じられた技術のため、ビルドロン(コンストラクティコン)以外のG1合体兵士達もIDW版では一般のTFと変わらない。

ビーストフォーマー


惑星ユーカリスに暮らす動物の姿に変形するトランスフォーマー達の総称。最初の13人のプライムの一人であるオニキス・プライム率いる部族であったがその変形する姿から様々な差別を受け結果としてタイタン族のチュラに乗りサイバトロン星を捨てユーカリスに移住した。爬虫類系のスケイルウォーカー、哺乳類系のファーウォーカー、魚類系のウェーブウォーカー、鳥類系のクラウドウォーカーの4つの部族に別れている。


ミニコン


最初の13人の一人マイクロナス・プライムが惑星プリオンのホットスポットで産み出したトランスフォーマーの種族。サイバトロン星とは違い平和な生活を送っていたが銀河評議会の過激派により星の住民はDJDのニッケルだけを残し全滅する。


タイレスト合意

オートボットの名裁判長タイレストによる、サイバトロニアンの技術を他種族に伝える事を禁止する規定。
オートボットとディセプティコンの両軍に適用され、違反者はタイレスト合意専任執行官のウルトラマグナスが逮捕しにくる。

オートボット

正義の味方……正義ってなんだっけ?
リーダーのオプティマスが不在でも各自が役割を果たしていたG1アニメとは違い、AHM時点のボッツは明らかに烏合の衆と化していた。
副官のプロール? マイスター(ジャズ)が代理で取りまとめ役をやってたよ。
組織としての母体はサイバートロン星を支配していた評議会と、ロクデナシ揃いのプライムに直属するセキュリティ・ガードーーオートボット警備隊ーーである。

レッカーズ

オートボットの特殊部隊。
隊員に選ばれるのはかなり名誉な事らしいが、死亡率が高過ぎる。
登場の度にメンバーやリーダーが入れ替わってはいるが、一応、スプリンガーが部隊の顔となっている。

キミア

オートボットの衛星施設。
倫理的にヤバイ技術を研究しており、一部は実践している。D-ヴォイドとの決戦でサイバートロン星に墜落した。

ガーラス9

オートボットの収容所。看守長はフォートレス・マキシマス。
エクイタスなるオートボットの犯罪情報を記録した巨大コンピュータが置かれており、プロール君が色々と陰謀を張り巡らした。
オーバーロードによって地獄に作り替えられる。

ディセプティコン

メガトロンが創設した叛乱軍。
構成員の多くは評議員から冷遇された奴隷身分の者や、政治システムから零れ落ちた者たちであった。
「圧政による平和」もただのモットーでは無かったのだ。
当初は評議会に対する革命集団であったが、徐々に戦火を惑星全体に拡大し、最終的には全宇宙に戦乱を撒き散らした。

スウォーム

元ネタはマーベル時代のG2に登場した生命体。
ディセプティコンが創造したサイバートロン星を取り巻き、居住不可能な状態にしている化け物の総称。
誕生確率1/1000のインセクトロンを生み出すために生じた失敗作である。

DJD

ディセプティコン司法局。
「MTMTE」の対象年齢を上げるヤバイ奴ら。憲兵のような存在で、敵の捕虜になった者や裏切り者の粛清を嬉々として担っている。
リーダーのターンを筆頭に、メンバーはディセプティコンが陥落させた都市の名を冠している。

スカイウォッチ

アメリカ合衆国の秘密機関。以前からTFについて調査していたが、発掘したショックウェーブとダイノボットの遺跡をマシネーションに奪われる。
TFの本格侵攻後も活動している。

マシネーション

秘密結社。その黒幕はディセプティコンを裏切ったスコルポノック
ヘッドマスター技術を用いて地球侵略を企てた。




ジャックポット「賭けようぜ、予想は?」


クロームドーム「10分」


リワインド「5分だな」


ブレインストーム「8秒だ」


ジャックポット「8秒…? 強気だね」


ロディマス「今日集まったのは、追記・修正をお願いするためだ」

「もう出た、たった5秒だ!」


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最終更新:2023年02月16日 20:55