デラーズ紛争

登録日:2020/04/25 Sun 13:59:11
更新日:2024/03/30 Sat 22:31:03
所要時間:約 5 分で読めます




デラーズ紛争とは、OVA『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』において描かれた地球連邦軍ジオン残党軍「デラーズ・フリート」による争いである。


両陣営の経緯等

ガンダム開発計画

地球連邦軍上層部は今後の軍の再建にモビルスーツ(MS)が必要不可欠と考え、ジオンとの格差是正とMSの更なる高性能化を目指し、かの伝説のガンダムを模した試作機の設計開発をアナハイム・エレクトロニクス社に委託発注した。
そして開発された試作機の中には、南極条約に違反するとされる「核」を搭載した物もあった。


星の屑作戦

一年戦争終結後、投降を拒否した旧ジオン公国軍の残党が秘匿領域「カラマ・ポイント」にて今後の方針を協議した結果、小惑星アクシズを目指すグループと地球圏に残るグループに分かれた。
そして「地球圏に残るグループ」はエギーユ・デラーズ中将の下に団結し、デラーズ・フリートを名乗って地球連邦政府に対し、ゲリラ戦を開始。
やがて「連邦軍が核武装したMSを開発している」との情報を得ると、一大反抗作戦「星の屑作戦」を立案。
具体的にどのようなものであるかというと、

▼STAGE-1▼
「ガンダム開発計画」によって開発された戦術核兵器運用MSを強奪。
それを以って分遣艦隊はコンペイトウ鎮守府(旧ソロモン)で挙行される連邦軍観艦式を襲撃し核攻撃を実行、連邦の主力艦隊の大半を撃沈させ、行動不能にする。

▼STAGE-2▼
自軍の主力艦隊は別方面において移送中のコロニーを強奪、月へ向けて発進させる。
月軌道に入った段階でアナハイムの協力の元、コロニーのスラスターを点火させて地球への軌道修正を行い、月に向けて追撃を行う連邦追撃艦隊を出し抜く。
これまでの作戦行動により、地球軌道に残る連邦軍は少数になる。

▼STAGE-3▼
この段階で艦隊は再集結しコロニーを護衛、連邦残存艦隊を順次撃破しつつ、コロニーを北米穀倉地帯へと落下させる。
作戦終了後の残存艦隊は月からの敵艦隊の来援までの時間差をついて戦域よりの離脱を図る。

これら一連の計画は、北米の穀倉地帯にコロニーを落として食糧生産率を低下させ、宇宙への依存度を上げると共に連邦政府の目を宇宙に向けさせる事が目的であったとされる。


2号機強奪事件

宇宙世紀0083.10月13日
月面よりガンダム試作1号機ガンダム試作2号機を受領したペガサス級強襲揚陸艦アルビオンが、運用試験の為にオーストラリアのトリントン基地に到来。2機のガンダムは翌日の試験の為、最終調整に入っていた。
しかし、連邦士官に扮していたデラーズ・フリートのエースパイロットアナベル・ガトーに核搭載の2号機が乗っ取られ、逃走される事件が発生。
すぐさま同基地のサウス・バニング大尉とコウ・ウラキ少尉らによる討伐隊が編成されて追撃に当たるが、捕らえるには至らなかった。

10月14日
ガンダム開発計画の責任者たるジョン・コーウェン中将からアルビオンに対し、2号機の奪還命令が下る。
討伐隊に参加したバニングとコウらを補充人員に迎い入れ、アルビオンはアフリカ方面へと進路を取る。
一方、キンバライト基地に到着したガトーは2号機と共に宇宙へ打ち上がる準備を整えていた。

キンバライト基地戦

10月23日
アルビオン乗員の中にデラーズ・フリートのスパイが潜入している事が発覚するが、艦長のエイパー・シナプス大佐は敢えてスパイを脱出させて逃走経路から基地の場所を特定。
基地側の陽動作戦でMS隊が包囲を受けるものの、コウの駆る1号機の活躍により突破、基地のHLVを射程に収めるが、発射には間に合わなかった。
アルビオンはガトーを追うべく、宇宙へと上がる。

デラーズフリート宣戦布告

10月31日


地球連邦軍、並びにジオン公国の戦士に告ぐ。我々はデラーズ・フリート!

所謂一年戦争と呼ばれた、ジオン独立戦争の終戦協定が偽りのものであることは、誰の目にも明らかである!
何故ならば、協定は『ジオン共和国』の名を騙る売国奴によって結ばれたからだ。
我々は些かも戦いの目的を見失ってはいない。それは、間もなく実証されるであろう。

私は日々思い続けた。
スペースノイドの自治権確立を信じ、戦いの業火に焼かれていった者達の事を。
そして今また、敢えてその火中に飛び入らんとする若者の事を。


スペースノイドの心からの希求である自治権要求に対し、
連邦がその強大な軍事力を行使して、ささやかなるその芽を摘み取ろうとしている意図を、証明するに足る事実を私は存じておる。

見よ、これが我々の戦果だ。
このガンダムは、核攻撃を目的として開発されたものである。

南極条約違反のこの機体が、密かに開発された事実を以ってしても、呪わしき連邦の悪意を否定出来得る者がおろうか!

省みよう! 何故ジオン独立戦争が勃発したのかを! 何故我らがジオン・ズム・ダイクンと共にあるのかを!

我々は3年間待った。もはや、我が軍団に躊躇いの吐息を漏らす者はおらん。
今、真の若人の熱き血潮を我が血として、ここに私は改めて地球連邦政府に対し、宣戦を布告するものである。

仮初の平和への囁きに惑わされる事なく、繰り返し心に聞こえてくる祖国の名誉の為に、


ジーク・ジオン!!


密談~観艦式襲撃

11月8日
観艦式で観閲官を務めるグリーン・ワイアット大将とデラーズ・フリートのシーマ・ガラハウ中佐との間で裏取引を兼ねた密談が開かれようとしていたが、折り悪く付近を索敵中のアルビオンに発見されて中止となり、そのまま交戦に突入。
MS隊を率いるバニングは星の屑作戦の機密文書を首尾よく手に入れるが、帰還中に乗機が爆散し、帰らぬ人となる。
アルビオン隊が介入しなければ機密文書一式は滞りなく連邦の手に渡り星屑作戦の阻止ができた構図だが、連邦内の派閥争いで情報共有されなかったアルビオンにはそれを知る由もなかった。

11月10日
コンペイ島鎮守府にて連邦艦隊の3分の2を集めた観艦式が開催された。
集められた艦艇はマゼラン改級戦艦サラミス改級巡洋艦などのMS非搭載艦の姿が目立ったが、随所に自動砲台や護衛MS隊を配して防衛ネットワークを構築しており、開催までに37機の敵MSを撃破していた。
また、実際にはペガサス級強襲揚陸艦2隻も配備・運用されている。この1隻は「グレイファントム」というのが定説。
参加艦艇の名簿が明かされた事は無いため、他にもペガサス級が配備されていた可能性はある。


宇宙暦、0079。つまり、先の大戦は、人類にとって最悪の年である。
この困難を乗り越え、いままた、3年ぶりに宇宙(そら)の一大ページェント、観艦式を挙行できる事は、地球圏の安定と平和を具現化したものとして、喜びに耐えない。

そも、観艦式は地球暦1341年、英仏戦争の折、英国のエドワード3世が出撃の艦隊を自ら親閲した事に始まる。
その共有すべき大宇宙の恩恵を、一部の矮小なる者どもの蹂躙に任せる事は……


と、このような意気で式を順調に進めていたのだが、ガトーの駆る2号機が単騎で防衛網を突破してコンペイ島の真上に現れ、旗艦のバーミンガムに向けて核弾頭を発射。
バーミンガムとその周辺の艦艇は撃沈され、他の艦艇も大部分が大破に追い込まれた。

一方、この襲撃と同じ頃にシーマ艦隊によって移送中のコロニー2基が強奪。シーマは2基同士を衝突させて1基を月の落下軌道に投入した。
そして、逃亡中の2号機が1号機と交戦し、両機体は大破した。


コロニーの軌道変更

11月11日
シーマ艦隊はデラーズ・フリート本隊と合流し、ガトーはアクシズ先遣艦隊からモビルアーマー(MA)のノイエ・ジールを受領。
一方のアルビオンは、ガンダム試作3号機受領のためラビアンローズに接舷するも、ナカット・ナカハ少佐がこれを拒否。デラーズ・フリート追撃任務の解除通告を受ける。
そして落下中のコロニーはシーマとの密約を受けたアナハイム社幹部による月面からのレーザー照射により地球落下軌道へ進路変更。
追撃していたコンペイ島の残存艦隊は推進剤切れにより、追撃を断念。

これを重く受け止めたアルビオンのシナプス艦長は3号機を強奪も同然に接収し、艦をラビアンローズより発進させる。


コロニー攻防

11月12日
シーマ艦隊がデラーズ・フリートより離反。デラーズ・フリートの旗艦グワデンのブリッジを占拠し、デラーズを人質に取る。
デラーズはガトーに対して作戦続行を命令してシーマに射殺され、グワデンも撃沈。
連邦軍はコロニーの落下軌道にソーラシステムⅡを配し、太陽光の照射によってコロニーの破壊を試みるが、ノイエ・ジールによってコントロール艦が破壊されて失敗に終わる。
そしてこの直後、コウの駆る3号機によってシーマの艦艇とシーマが駆るガーベラ・テトラが撃沈される。


11月13日
ソーラ・システムⅡが、連邦軍と交戦中のデラーズ・フリートへ向けて再照射。
コロニーは北米大陸の穀倉地帯へ墜落。ガトーは連邦軍追撃艦隊と交戦の末、戦死した。
そしてこれを以てデラーズ紛争は終結。


戦後

終戦後に開かれた軍事法廷において、シナプス大佐は極刑、コウ・ウラキ少尉に対しては懲役1年の判決が下される。
しかし、ガンダム開発計画と観艦式襲撃に関する記録は抹消され、コロニー落としはコロニー公社による移送中の事故に偽装された*1
これに伴いコウの罪状は消滅したが、シナプスの処刑は記録抹消前に完了されていた。
そして、ジオン残党の掃討を名目に連邦軍内部において特殊部隊・ティターンズが創設されることとなる。


余談

この紛争の一連の流れに対し、ネット上では「デラーズ・フリートのした事も南極条約違反ではないか」「コウがシーマに最後に敵対したのは味方殺しになってしまうのでは」などと批判意見も散見されるが、
同時にそれらへの擁護や反論(「先に連邦軍が破ったんだからこっちも遠慮しませんって流れにもってくためだろ? コウにはシーマが味方って伝わってないようだぞ」など)も存在するので、一方的な判断は禁物。
どんな作品でも言える事だが、まずは自分の目で作品を見て、必要なら公式情報を調べてから判断するようにしよう。


省みろ! 今回の事件は地球圏の静謐を夢想した、一部の楽観論者が招いたのだ!

デラーズ・フリートの決起などはその具体的一例にすぎぬ。

また3日前、北米大陸の穀倉地帯に大打撃を与えた、スペースコロニーの落下事故を見るまでもなく、
我々の地球は絶えず様々な危機に晒されているのだ!

地球──この宇宙のシンボルを忽せにしないためにも、我々は誕生した。


地球、真の力を再びこの手に取り戻すため、

ティターンズは立つのだ!





デラーズ・フリートの目的であった「連邦政府の目を宇宙に向けさせる」事は「宇宙への統制の強化」という、方向性がまるで異なる形で現実となった。
だがそれは、連邦の事実上の分裂と内戦地球圏へ帰還したアクシズによる紛争とさらなる戦乱を呼び、連邦の体力を蝕んでいくのであった……




追記、修正お願いします

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • ガンダム
  • 宇宙世紀
  • 地球連邦軍
  • アクシズ
  • デラーズ紛争
  • 紛争
  • 架空の戦争
  • 観艦式
  • 勝利者などいない戦い
  • ガンダム開発計画
  • 星の屑作戦
  • コロニー落とし
  • 核使用
  • アルビオン
  • アナハイム・エレクトロニクス社
  • ガンダム試作1号機
  • ガンダム試作2号機
  • ガンダム試作3号機
  • ティターンズ
  • ソーラシステム
  • 隠蔽
  • コンペイ島
  • ジオン
  • テロ
  • 0083
  • ジオンの残光
  • ガンダム戦争項目
  • デラーズ・フリート
  • 機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY
  • 核攻撃

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2024年03月30日 22:31

*1 デラーズ・フリートの決起そのものは隠蔽されていない。