ロリアン・ノッド

登録日:2020/05/04 Mon 22:30:00
更新日:2024/03/26 Tue 20:47:34
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ドゥークーはかつてロリアン・ノッドに面と向かって言われたことがあった。「きみは友情というものを知らない」


ロリアン・ノッド(Lorian Nod)とは、スター・ウォーズ・シリーズの登場人物。
カノンとレジェンズに分化して以来、カノン作品には全く登場しておらず、レジェンズ作品のみの登場人物である。




【人物】

かつてジェダイの道を歩んだ男で、のちにジェダイとなりシスとなるドゥークー伯爵と同い年の友人だったが、
パダワンになる前に「ホロクロン窃盗事件」を引き起こして暴走・脱落、暗黒面に落ちていった、いわゆる「ダークジェダイ」。
ジェダイとしての最終階級は候補生どまり。
しかし意外にも長生きし、クローン大戦まで生きている。

少年期は、粗忽さと嫉妬心の強さから、小心者なのに大胆なふるまいに及んでしまい、すべて破滅して、
青年期は、嫉妬やプライドをこじらせて海賊団や悪徳企業をこしらえつつも、大それた悪事もできず中途半端に身を持ち崩し、
壮年期は、悪事になれて謀略に凄味が生じ、落ち着きと狡猾さを備え、
老年期は、人生を振り返って自らの行いを見つめ直し、贖罪のため行動する……

と、全体的に見て、善人とは言えないが悪人にも徹しきれず、人のいいところと性格の悪いところが同居し続け、若くして道を踏み外しつつも外道に突っ切ることも出来ず、最後は枯れて善良になるという、
ある意味で誰よりも人間らしいところがある。


一方、ジェダイとしての修行は候補生どまりだったため、大した能力は持っていない模様。
それでもフォースの技はわずかに使えたし、それで悪事もそれなりにできたのだが、
実戦でジェダイと渡りあったり、老齢を克服したりとはいかなかった模様。
いちおうはダークジェダイにも分類されるが、おそらく暗黒面の自主鍛錬もロクにしていないと思われる。

なおジェダイ候補生時代にはライトセーバーも作っていたようだが、追放とともに没収されたと思われ、以後はブラスターなどを使っている。
剣術に関しては、少年時代のドゥークーにそれなりに切り結べたが、あまり強くはなかったようだ。



【経歴】

◆前歴

産まれは辺境の惑星ジャンクションⅤ
フォース感応者の素質が認められて、他のジェダイと同じく幼少期からコルサントのジェダイ聖堂に入り、初期訓練を受けていた。
同い年の同僚にはドゥークーがおり、早いうちから意気投合。
幼年生の初期訓練を通じて親交を深め、子供らしいイタズラなどでも協力していた友達どうしであった。
ドゥークーは子供のころから落ち着いていたが、ロリアンのほうはやや無鉄砲で攻撃的と性格は違ったものの、かえって気質がかみ合っていたらしい。

しかし、当時のジェダイオーダーからも一目置かれる麒麟児であったドゥークーが類まれなる才能を遺憾なく発揮していくのに対し、ロリアンのほうはとても匹敵するほどの素質がなく、
並んでも引き立て役になりかねないと思い始めたロリアンは、ドゥークーに対する劣等感を徐々に抑えきれなくなっていく。


◆シス・ホロクロン窃盗事件

そして双方が13歳になったとき、ついに事件が起きる。
当時ドゥークーはジェダイ評議会議員も務める高名なマスター、サーム・セルリアンのパダワンに内定した。
しかしロリアンの方には、そうした話が待てど暮らせどやってこず、後れを取った事への焦りや、将来に対する不安に、上述した才能面での劣等感や、ドゥークーが裕福な貴族の出身である事にまで嫉妬心を燃やすようになった。
そして、ドゥークーはと言うと、ロリアンの内心に気付くよしもなく、彼の事を大切な友人だと変わらず考えていた。
後年のドゥークーは、人の感情の機微によく気付き争いを調停する立派なジェダイとなるが、当時十三歳の彼に、そんな複雑な嫉妬心を読み取って解決しろというほうが無理だったろう。


ところで、マスターのサーム・セルリアンは平均的なジェダイであったが、当節珍しいことにシスの滅亡を信じておらず、近いうちにシスが逆襲してくるのではと警戒していた。
彼は評議員も務めるマスターだったため、ジェダイ公文書館の禁書指定区域にも入ることができ、シスのホロクロンを借り出し、シスに対抗するための研究を密かに行っていたのである。
そしてドゥークーを正式にパダワンに取る直前、彼は急な任務で聖堂を離れており、マスターの元に借りたまま置かれていたホロクロンがドゥークーとロリアンの目に留まった。

そのホロクロンのもたらす知識を通じて、ジェダイに限らないフォースの系統があると知ったドゥークーとロリアンは深い感銘を受けた。
しかしながら、その知識をドゥークーはまだ冷静に分析できたものの、ジェダイとしての現状と先行きに不安のあったロリアンは、現状突破のためにある行動を思いつく。

なんと彼は、パダワンですらないにもかかわらず、公文書館に忍び込んでシスのホロクロンを盗み出し、独自に研究して能力を磨いて、マスターたちに才能を見せつけ弟子になろうと考えたのだ。
そして、その企みに協力するようドゥークーを説得。

驚いたのはドゥークーである。認められるどころか法に触れる犯罪だと強く諫めたが、焦燥に駆られるロリアンは、もはや彼の言う事など気に留めなかった。
順調に出世コースを歩み出し万事安泰なドゥークーには、自分の気持ちなどわからない、とでも思ったのかもしれない。


そして彼はドゥークーの忠告にも耳を貸さず、独力で公文書館に潜入し、どうやったのかシスにまつわる情報が収められたホロクロンを本当に盗み出してしまった


◆ドゥークーとの対立

ところが、ロリアンが盗んだのは、単なる情報や記録の羅列だけが保存されたホロクロンではなく、強大なダークサイドのフォースが染み込んだ、正真正銘、古代シスの遺産だったのである。
あるいは、過去のさるシスマスターの霊が封印されていたのでは、とまで言われている代物である。

出来事のつもりが、初めて出会った暗黒面のパワーとその強烈な浸食に恐れをなしたロリアンは、慌ててドゥークーのもとに駆け込むとホロクロンを突き付けて「返してきてくれ」と頼んだ
驚いたのはドゥークーである(二回目)。もう盗んだ後なのにどうしろというのだ。よりによって聖堂で悪事を働いた以上、誰かに知られるのは時間の問題だ。そもそも戻せば済むものでもあるまい。

しかもそこに、別のジェダイマスター、オポー・ランシシスが暗黒面のフォースを感じて駆け付けた。
尋常ではない雰囲気の少年二人と、暗黒面を剥き出しにするシスのホロクロンを見たランシシスはすぐさま状況を把握し、ホロクロンを没収して戻す一方、どちらの仕業かと二人を詰問。

するとロリアンは、いきなり「ドゥークーの指示で盗んだ」と責任を押し付けた

自分の意見を聞かなかったばかりか後始末を押し付けようとし、しかも責任までなすりつけたこの「友人」に、ドゥークーは声も出ないほどに絶望し、呆然とするしかなかった。

この出来事は2人の関係に多大な影響をもたらし、
特に、掛け替えのない友だと思っていた者から罪を擦り付けられたと言う事実は、これ以降のドゥークーの心情や価値観に人間不信と言う深い影を落とす事になる。


その後、事態はその場での口頭注意には収まらず、翌日にはジェダイのチームで模擬試合を行ったところ、別チームに分かれていたドゥークーとロリアンは案の定激しく
続く評議会の審問において、ロリアンに完全に愛想を尽かしたドゥークーは事の次第を正直に打ち明け、ロリアンこそがホロクロンを盗み出した犯人であり、自分は責任を擦り付けられた事、ロリアン自身の単独犯である事を激しく指弾した。

事態は明らかである。評議会はドゥークーの証言を受け入れて彼を無罪とする一方、
ロリアンに対してはホロクロンを盗んだ事以上に、嘘をついて友人を売り飛ばそうとした事の方がより罪が重いと判断。
ロリアンをジェダイ候補生から除名、ジェダイになれなかった者たちが就く集団農場に送られることになった。


かくして、ドゥークーとロリアンは決裂。
ロリアンは、ドゥークーのみならず、自分を追放に処したジェダイそのものにさえ悪意を抱くようになっていた。

そして13年後、26歳のロリアンは集団農場からも脱走し、暗黒街に潜って成功を求め行動を開始する
上述の通り、ドゥークーが故郷で裕福な貴族である事に猛烈な嫉妬心を抱いており、自分が富と権力を獲得することで見返してやろうと考えたのだ。


◆闇社会のジェダイ崩れ

なり損ないとはいえジェダイの修行を一通りは受けた男である。農場時代も、漏れ聞くフォースの知識は拾っていただろう。
フォースの能力を身につけた彼は、暗示などのフォースの技を駆使して融資を集め、キャラバン会社を運営。
それを隠れ蓑として、身代金目当ての誘拐などの宇宙海賊業に励み、暗黒街で富を求めてうごめくようになった。

最初は小心さが出て悪事を行いきれず、他の海賊を誘拐していたが、
利益が上がらない事に業を煮やし、いよいよ表社会の資産家などを狙うようになる。
ついにはある筋からの依頼を受けて、銀河共和国の元老院議員ブリックス・アノンまで誘拐するようになる。

ところが、このアノン議員の誘拐現場にドゥークーがいた
当時27歳になっていたドゥークーは、アノン議員の補佐官イリディアン・イーロと親交があり、現場にいたのである。
また、このときドゥークーはクワイ=ガン・ジンを弟子にしており、今回も帯同していた。当時クワイ=ガン16歳。

ロリアンには幸いなことに、イーロ補佐官はロリアンが買収していたため、罠に嵌めてアノン議員と一緒にドゥークー師弟をも捕えた。
しかし捕縛していたアノン議員が心臓発作で急死すると、殺人だけは避けてきたロリアンは「俺のせいなのか!?」と動揺し、そのすきにドゥークーが拘束を突破
やむなくロリアンはドゥークーと交戦するが、すでにジェダイでも指折りの強さになっていたドゥークーは、もはやロリアンの敵う相手ではなかった。
過去のトラウマを思い出し本気で怒ったドゥークーに殺されるところだったが、間一髪クワイ=ガンが諌言したことで命だけは助かり、長年に渡り投獄されることになる。


ちなみに、この誘拐事件はシスの暗黒卿、ダース・テネブラスがロリアンに依頼して行わせていたものである。
アノン議員はジェダイ騎士団の熱心な支持者であり、その活動がシスには目障りだった。そこでテネブラスはロリアンを雇ったのだ。もちろんロリアンは依頼主の正体を知らない。
このころすでにテネブラスの弟子だったダース・プレイガスは、ドゥークーについて「実力も去ることながら、無自覚のうちにシスの計画を何度も阻んできた、もっとも厄介なジェダイ」と評しており、他にもテネブラスの計画をつぶしてきた模様。


◆復活

ロリアンは二十四年もの刑期を満了して釈放された。
しかし彼は、もう五十歳前後になっていながらも依然として野心を燃やしていた。
しかも、かつては精神が落ち着かず悪党としても中途半端だったが、今度は年を取って精神が落ち着き、狡猾さを備えていた

壮年のロリアンは故郷の惑星ジャンクションⅤに姿を現し、母星の治安維持部隊「ガーディアン」の総司令官となっていた。

当時、ジャンクションⅤは衛星デラルナの政権と紛争状態にあった。
狡知を磨いていたロリアンは「敵対するデラルナ政府がアニヒレーターという超兵器を開発して我々を狙っている」という偽の情報(フェイクニュース)を流して、ジャンクションⅤの住人たちを恐怖させ、
それに対抗するためにはガーディアンを強化しなければならないと説き、以後八年間にわたって、星の権力を掌握していた。

しかしその八年目、EP1の12年前(というとマンダロリアン内戦が決着した年)、マスターに昇進していたクワイ=ガン・ジンと、彼の弟子になったばかりのオビ=ワン・ケノービ(13歳)がたまたま任務途中(時期的にザナトス追討任務か)で惑星ジャンクションを訪れ、「超兵器アニヒレーター」に驚いて調査したところ、それがフェイクであることを察知。
「ガーディアン」との抵抗勢力に合流し、ついにロリアンの政権を打倒。彼は再び収監されることになった。


◆分離主義時代

二度目の収監もまた長く、二十年近くにわたって投獄されていた。人生のうち四十年以上を、彼は監獄で過ごしたことになる。

しかし今度の二十年弱で、銀河共和国もジェダイも、大きなターニングポイントを経ていた。
かつてサーム・セルリアンが説いたシスの暗黒卿が復活し、銀河は分離主義運動が広まって分裂、銀河共和国もジェダイ騎士団も昏迷の度合いを深めている。
かつて自分が戦ったクワイ=ガン・ジンはザブラクのシス卿に殺され、かつて自分が敵視したドゥークーは、ジェダイからも離れて分離主義運動の指導者にまでなった。

時代は大きく変わっていた。そんな時代にあって、老境に入っていた彼は、静かに自分の人生を見つめなおしていた。


彼が刑期を終えて外に出た時、銀河は分離主義運動がはびこる戦争間近の時代となっていた。
ロリアンは再び故郷の惑星ジャンクションⅤへと戻ったが、七十歳を超え枯れ果てた彼はもう脂ぎった野心など持ってはおらず、故郷に平和を回復すべく、まっとうな方法で故郷の公務に尽くした。
選挙に出馬し、投票を得て政権に参与し、母星の治安維持や繁栄に尽力。
長年対立していた衛星デラルナと和解し、緊張する銀河に対応するべく協定を結んで、防衛用宇宙港「ステーション88」を設立するなど、本気で故郷のために力を尽くした


◆クローン大戦

分離主義運動は高まりを見せ、ついに惑星ジオノーシスの戦闘を契機として「クローン大戦」として結集。分離主義勢力は「独立星系連合」として完成し、全銀河を巻き込む大戦争となった。

このとき、ジャンクションⅤとステーション88は両軍にとっての重要な橋頭保となり、銀河共和国・独立星系連合ともにジャンクションのロリアン政権に接触してきた。
むろん、ドゥークーも、である。ドゥークーはかつてのライバルに独立星系連合につくよう説得した。
しかしロリアンは一度はこの説得を受けつつもひそかにジェダイ聖堂に連絡を取り、分離主義勢力の惑星ナルで開かれる会合にて、共和国への支持を表明し、ドゥークーと戦うと伝えた。
出来れば、助けも欲しい、と。

もちろん、ジェダイもいきなり鵜呑みにはできなかった。特にロリアンの過去の罪業を知るオビ=ワンは反対した。
しかし評議会は、真偽は別としても、ドゥークーを倒し戦争をごく短期間で終わらせる絶好の機会として、オビ=ワンやアナキン・スカイウォーカーのチームを極秘に派遣することにした。


そして運命の惑星ナルにて開かれた会合で、ロリアン・ノッドは幹部たちの総意として、ドゥークー伯爵には協力せず、共和国を支持すると断言した。
ジャンクションの勢力はドゥークーに攻撃を開始し、ドゥークー側の護衛ドロイドも反撃に転じる。
そしてロリアンの真意を悟ったオビ=ワンもアナキンとともに加勢し、ドロイドを撃破。

しかしロリアンは、いち早く脱出していたドゥークーをたった一人で追撃していた
「友」の追跡を悟ったドゥークーは途中で立ち止まると、赤い光刃へと変わった曲柄のライトセイバーを躊躇なく起動し、一瞬にしてロリアンを刺殺した


かくしてロリアン・ノッドは、80年以上におよぶ数奇な人生の幕を下ろしたのである。



【余談】

ロリアンが公文書館の禁書領域に踏み込み、ホロクロンを盗み出したことで、禁書領域の警護・管理が厳格化された。
後年、アナキンが「パドメの死の運命を克服する」ためにシスの研究を参照しようとしたところ、マスターの資格がないためアクセスできなかったのは、このロリアンの一事が原因だともいわれている。

何気に、暗黒面に落ちながら再起した人物。
あまり深く闇落ちしなかったというのと、老いて枯れたからというのもあるかもしれないが。
そのため資料によってはダークジェダイに含まれていないこともある。
ちなみに、暗黒面から立ち直った人物としては、有名なダース・ヴェイダーのほか、クインラン・ヴォス、アサージ・ヴェントレス、など少数ながらいる。




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最終更新:2024年03月26日 20:47