コマリ・ヴォサ

登録日:2019/10/21 Mon 20:30:00
更新日:2024/02/23 Fri 19:38:12
所要時間:約 20 分で読めます





「すぐに、お前はわたしの奴隷となる……」



コマリ・ヴォサ(Komari Vosa)とは、スター・ウォーズ・シリーズの登場人物の一人。
現在時点ではレジェンズ作品のみの登場である。
なお、PS2のゲーム「ジャンゴ・フェット」の担当声優は、原語版はタマラ・フィリップスという女性らしい。



【概要】

「おっと! 神経に障ったかい? ふフン……思ったよりも早く片付きそうだね」

旧共和国末期、ジェダイとなっていた女性。
エピソード1当時に三十歳。その十年前まで、ジェダイマスター・ドゥークーに師事していた。
最終階級はパダワン。
しかしジェダイにしてはあるまじき攻撃性を備えており、最終的にフォースの暗黒面に墜ちて暴走。
いわゆるダークジェダイと化し、麻薬密売に関わる犯罪組織「バンド・ゴラ」の女ボスとなって、銀河中に猛威を振るった。

その被害は、同時期に銀河共和国の乗っ取りを画策していたシスの暗黒卿ダース・シディアスすらが恐れを抱いたほどである。
また当時、シディアスはまだ初動時点だった「クローントルーパー計画」のクローンのオリジナルについても頭を悩ませていた。

そして、このころシディアスの弟子となっていたダース・ティラナス――ドゥークー伯爵――は、コマリに巨額の懸賞金をかけることによって、バンド・ゴラの打倒と、ジェダイを倒せるほどの優秀な戦士の確保を一挙両得で成し遂げることにした。
かくして、コマリ・ヴォサは銀河の凄腕の賞金稼ぎに狙われることとなった。


【風貌】

「おめでとう賞金稼ぎ……ついにあたしを見つけた!」

種族は人間
実際なかなかの美人であり、ジェダイ時代はぶかぶかしたローブに身を包んでいたから意識されなかったが、
暗黒街に落ちてからは競泳水着かボンデージのような黒革の衣装をベルトで締め、スレンダーな手足と肉感的なボディを思う存分見せつけるようになる

ジェダイ時代から険のある顔つきではあったが、暗黒街に落ちてからは殺意交じりの凄味と退廃的な色気まで加わり、毒気のある美女へと進化している。
髪は、ジェダイ時代は金色で後ろに回していたが、現在は白くなり乱暴に逆立てるようになった。
瞳の色は金色

あごのラインから首、そしておそらく胸元にかけて、ジェダイ時代にはなかった無数の傷があるが、おそらく拷問を受けた結果と思われる。

腰には二本一対のライトセイバーを持つ。


【性格】

「そうかい、えらく無口なんだねえ……まあいい、楽しみが増える」

ジェダイ時代から攻撃的、闘争心が非常に強い性格であったらしい。
師匠であるドゥークーもあれはあれで反骨心が強く、ジェダイのあり方について師であり長であるヨーダにも公然と反発するぐらいで、その気質もだいたい弟子たちに受け継がれているのだが、
コマリの場合、単に狂暴といったほうが近く、ドゥークーも彼女の攻撃性は矯正の必要があるとしていた。
もっとも、師父のことはかなり尊敬していたようで、当時を知る人物からは「ドゥークーに認めてほしいという思いが強すぎた女性」と評されている。
また、ジェダイ時代にはまだ敗北した仲間を助けようとする意志もあったらしい。

しかし後述するように、ドゥークーが「一人前のジェダイになるには早すぎる」と昇進に反対したことから、持ち前の敵愾心に火が点き、暴走。
紛争地帯に飛び出して生死不明・戦死扱いとなり、暗黒街に消えてしまう。


その後、暗黒街の連中に捕縛された彼女は、すさまじい苦痛と苦悶のなかでジェダイの倫理を破壊され、持ち前の攻撃性・激情を暴走させる
当然、フォースの光明面だけと調和するべしというジェダイの教えなどは根こそぎに吹っ飛び、フォースの暗黒面に開眼した

最終的に自らを捕えていた組織を単身で壊滅させ、みずから麻薬密売組織「バンド・ゴラ」の長となった彼女は、残虐でサディスティックな魔道の女戦士として完成する

他方、バンド・ゴラのボスとなってからも、しばしば瞑想をしたりフォースを磨いたりといった、元ジェダイらしいところを見せてもいる。
彼女はシスとは無縁で、暗黒面のフォースを我流で磨いているだけの単なる「暗黒面の使い手」でしかないが、ただ力に任せて暴れるのではなく磨こうとするあたりが、彼女の向学心を含めたひととなりを表わしてもいる。

また、完全に暗黒面に開眼したためにかえって落ち着いたのか、ゲーム「ジャンゴ・フェット」では、
相手をいたぶる嗜虐性や攻撃性はあるものの、妖艶さや冷静さと釣り合っている感じで、怒りの感情を爆発させるタイプではなかった。
アサージ・ヴェントレスは女性の道ではなくシスの道を求める戦士といった趣が強かったが、コマリ・ヴォサの場合は闇に沈む女としての趣が強い。


【能力】

「わたしにはそんなチャチな武器は通じないよ。ここで、お前の小賢しい狩りとやらも、終わるのだ」

暗黒面のフォースと、二刀流ライトセーバーを扱う。
精神面の修養は未熟ではあったが、戦闘能力はジェダイ全体としても極めて高い。

使用するライトセイバーは、師父ドゥークーと同型の、柄が曲がったカーブド=ヒルト・ライトセイバー。光刃は赤色。
柄の末端1/3あたりに、縦に黒いラインが入っているのが特徴。

一部設定では、このライトセイバーはのちにアサージ・ヴェントレスに手渡されたというものがあるが、
アサージのライトセイバーは柄全体横向きの縞模様になっているのに対し、コマリのライトセイバーは柄の後半だけが、縦向きの縞模様になっていて、形状が異なる。
ビーム放出口の構造もカーブの角度も大きく異なり、正直似ても似つかない。
おそらく、アサージのライトセイバーはドゥークーが作ったものと思われる。コマリのライトセイバーからクリスタルを流用したなどの可能性もなくはないが、そのままではない。

師父を初めとしたほかのカーブド=ヒルト・ライトセイバーの使い手の例に漏れず、柄の握りを巧みに変え、手首のスナップを利かせることで変則的かつ変幻自在の攻撃を可能とする。
しかもそれが二刀流であり、左右でまったくパターンの異なる斬撃を繰り出すため、殺傷能力は極めて高い。

なお、ジェダイ時代は一刀流で戦う場面があり(当然ライトセイバーの光刃は青色)、二刀流以外も修めている。

ライトセイバー戦のフォーム・スタイルは、師父譲りのマカシ
セイバーを起動する場面で下段に構えるフォームを取っており、そこはドゥークーやアサージと同じである。
また、しばしばアクロバティックな跳躍を見せているのでアタルを、ブラスターを長期間跳ね返せるのでソレスをも使えるようだ。
後年の弟弟子グリーヴァス将軍は「ジェダイの技はドゥークー伯爵からすべて教わっている」と発言しているので、
コマリもマカシを中心としつつ、必要に応じてどのフォームも使えると考えるべきだろう。


「お前の存在を感じるぞ……ふふふはははは、ウフフははははは……」

このライトセイバーの強さに加えて、暗黒面のフォースにも開眼している。
フォースライトニングのような、シスの流儀に属する技は知らないものの、ブラスターの跳ね返しや予知、探知、念力といった基礎能力は当然備えている。
作中では潜入してきたジャンゴ・フェットやザム・ウェセルといった練達の賞金稼ぎの居場所をあっさり探知したり、ザムの銃撃を跳ね返したりといった姿が見られる。
暗黒面のフォースに通じているだけあって、ジェダイでは感知できない暗黒面に隠れたドゥークーの気配を正確に感じている場面もあった。

そもそもジェダイ時代から、精神面ははなはだ不適格であったが、戦闘能力に関しては充分に一人前のナイト、もしくはマスターに匹敵すると言われていたほどである。
それを、暗黒面に落ちてからも彼女なりに磨き、実戦で鍛えてきたため、戦闘能力はさらに跳ね上がっている
それは最終的に隠れ見ていたドゥークーからも賞賛されていたほど。

追ってくるジャンゴに対して、自分がその場にいないのに遠方からテレパシーで声をかけてくる場面がある。
この技はジェダイのみならずシスもめったに使わない技で、他の事例は「クローン・ウォーズ」登場のポング・クレルぐらいのもの。
あえて言うなら死後のオビ=ワンなど「肉体を離れて(≒死んで)フォースと一体になった」ジェダイも近いことをするが、原理はおそらく異なる。


「捕まえに来たのか? 殺しに来たのか……?」

また、直接戦闘に関わるわけではないが、バンド・ゴラが流通させている麻薬「デススティック」を通じてひとびとを操る技を確立した。これはジェダイにもシスにもない、コマリ独自の技術である(フォース・マインドトリックと麻薬の併用などというおっかないアイディアを思いつく狂人が、そうそういるわけもない)。
彼女の「デススティック」は通常のものとは成分が違っており、中毒者の意識を完全に喪失させ、しかもフォースによるマインドトリックの作用を洗脳レベルにまで高める。
ジェダイが使うような一般的なマインドトリックはその場しのぎ、一瞬意識を反らすだけ*1だが、コマリのデススティックの服用者はたとえ彼女がその場にいなくても命令を実行するなど、明らかに長期的な支配下に沈み込む。
もちろん、デススティックは麻薬であるからしてその依存者・中毒者は自ら進んで彼女の前に現れ、さらなる服用と洗脳を望むわけだから、いくらでも補充は利く。

彼女はこれによって、が死んでいるために恐怖も抵抗も抱かずに意のままに操れる、しかし肉体的には健常なので並みのゾンビとは比較にならない動きや判断で攻撃を掛ける、強力な軍団を手にした。
なお、バンド・ゴラの兵は全身を黒い衣装とフードで全身を包み、上級兵は牛の頭蓋骨のような仮面をかぶる特徴がある。
彼女はこの兵を使って、恐喝やテロ、暗黒街の介入などの暗示を繰り広げ、銀河中で恐れられた。
彼女は暗黒面のフォースの使い手であり、そしてそれに留まらない、れっきとした暗黒街の大物である。


【劇中の活躍】

ゲーム「ジャンゴ・フェット」(原作「Bounty Hunter」)および、「ダース・プレイガス」などの一部小説、マンガ作品などに登場する。

◆前歴

「コマリ・ヴォサはかつて優秀な弟子であった。……ただ少し、不安定であった……」

故郷などについては不明。しかし年齢的に、生後まもなくフォースの才能があると探知され、ジェダイ聖堂に送られ、少女期にドゥークーのパダワンになった、一般的なコースと思われる。

しかしコマリ・ヴォサは、ジェダイの道を歩むものでありながら、過剰なまでの闘争心や攻撃性を備えており、同年代のパダワンや、時にはマスターであるドゥークーにも噛みついたらしい。
師匠に反抗するジェダイというのは、実は珍しくはない。古くはドゥークーがそうだったし、兄弟子のクワイ=ガン・ジンも、最高評議員のプロ・クーンやオポー・ランセシスも、若いころはさんざん反発心を発揮していた。そしてそういった反骨ジェダイには、反骨心を軸として立派な人物に育っていた。
だがコマリの場合、自分を支える軸となるような反骨心というよりも、周囲の人間をことごとく敵と見なして攻撃する、協調性の欠落した、敵愾心の強すぎるタイプであった。
後年ドゥークーは「情緒不安定だった」と評して嘆いている。

しかしそれだけにというか、ライトセイバーやフォースを使った戦闘能力はめきめきと上達した。師事したドゥークーがジェダイ聖堂でもトップ3に入る腕前だったこともあるだろう。
十代半ばにして、戦闘能力では一端のジェダイマスターにも引けをとらないものであった


◆ジェダイ時代

「マンダロアのブラストヘルメットとはねぇ……かつてわたしがジェダイだったころ、この手で二十人は殺してやったよ」

EP1の数十年前に起きた「マンダロア内戦」の終末にも、ドゥークーとともに参戦している。
マンダロア内戦というのは、惑星マンダロアを本拠とする戦闘民族マンダロリアンが三つの派閥に分裂し、発生した長期的な内乱である。
具体的には、先祖伝来の戦闘文明を維持しようと訴える伝統保守派「デスウォッチ」、
改革した戦士文明を提唱する伝統改革派「トゥルーマンダロリアン」、
戦闘文明そのものを否定し、まったく新しい平和主義を主張する革新派「ニューマンダロリアン」、
の三派に分裂し、それぞれが激しく争い始めたのだ。
内戦は数十年に及び、もともと戦闘民族なだけに戦闘規模が激しく、銀河の広範に大きな被害をもたらした。

EP1の十二年前、介入を求められたジェダイ騎士団は、ニューマンダロリアンを正当として支援し、ほかの二勢力を排除することを決定。
クワイ=ガン・ジンオビ=ワン・ケノービを含めた部隊がニューマンダロリアンの元に駆けつけ軍事支援を行ない(このときサティーン・クライズと昵懇になる)、ドゥークーとコマリを中心とする部隊は、トゥルーマンダロリアンの討伐に向かった。
(なお、このときの討伐隊にはのちの評議員メイス・ウィンドゥや公文書館長ジョカスタ・ヌーが参戦している)

トゥルーマンダロリアンは高い戦士倫理を主張した一派で、ジェダイの元に届けられた「トゥルー派が悪逆の限りを尽くしている」という訴えはデスウォッチが黒幕の讒訴であったのだが、ジェダイ評議会はそれを調べず、惑星ガリドラーンにてトゥルー派を攻撃。
ジェダイ側も十一人が戦死する激戦の果てに、トゥルーマンダロリアンが壊滅することで決着がついた。このときの生き残りがジャンゴ・フェットである。


この時期、コマリ・ヴォサはまだ十八歳であったが、マスター・ドゥークーとともに参戦。ライトセイバーを縦横に振るい、フル武装した腕利きのマンダロリアンを二十人以上も討ち取っている
ドゥークーは内乱の真実を悟って激しい後悔に浸ったものの、コマリの戦闘技術の向上が確認できたことはせめてもの慰めであった。

しかし戦闘能力に反して、精神面の狂暴性はドゥークーの目からしても危うく映った。
マンダロリアンとの奮戦も、公共のためとか自分の追及するジェダイの道のためとかではなく、ドゥークーに自分の腕前を見せつけたいという、功名心とドゥークーへの執念が混ざったものだったからだ。
もちろんジェダイ評議会も難色を示している。年齢はともかく実績を考えればジェダイナイトに昇進してもおかしくはなかったが、精神面では明らかに達していない、と。
ついにドゥークーは決断し、彼女の昇進試験を見送ることにした。

しかしこれが、コマリ・ヴォサの敵愾心と狂暴性に火を付けた。
彼女はドゥークーすらも敵と見なし、彼の元から飛び出してしまったのである。

ガリドラーンの戦いが終わった折からも、銀河共和国とジェダイは別の紛争に直面していた。
惑星バルティザーにて、麻薬密売を中心とした犯罪組織「バンド・ゴラ」が猛威を振るっていたのだ。
バルティザー選出の元老院議員が助けを求め、元老院の求めを受けたジェダイ評議会は、現地にジェダイを派遣することに同意した。
ただしそれは、マンダロア内戦のような平和維持軍としてではなく、バンド・ゴラとの調停・外交官としてである。
当時ドゥークーはこの決断に猛反対した。バンド・ゴラは話し合いでどうこうなる相手ではなく、最初から軍事行動に出なければならない、と。
しかしジェダイは、トゥルーマンダロアに対しては最初から軍事行動に出たのに、今回は外交交渉から始めるという、真逆な態度をとっていた。

そのバルティザー派遣チームのなかに、コマリ・ヴォサは紛れ込んでいた。
ドゥークーが「確実に戦闘になる。外交交渉のつもりなら確実に破綻する」と断言していた舞台に立ち、いざ戦闘となればバンド・ゴラを打ち負かして、ドゥークーの鼻を明かそうと考えていたのだろう。

しかし事態はドゥークーが予想した通り、いやそれ以上の最悪の結果になる。

バルティザーにおけるバンド・ゴラとの交渉は予想通りに失敗し、派遣されたジェダイはバンド・ゴラの攻撃を受けて殲滅された
ドゥークーはこの結果に嘆きつつも、ジェダイ評議会に掛け合い、本格的なジェダイ部隊の派遣を進言した。バンド・ゴラを倒すか、せめて生存者の救助、死者の確認だけでも行なうべきだ、と。

だがヨーダを初めとするジェダイ評議会は、そのどちらも却下した。バンド・ゴラの討伐も、生存者の捜索や救助も、いずれも危険が大き過ぎる、と。

この決断はドゥークーをかつてないほどに怒らせ、失望させた
生存者を見殺しにし、死者の確認もしない、予期される苦難に遭った弟子たちを「なかったこと」にしようとするジェダイ評議会に、ドゥークーはほとほと愛想が尽きたという。
しかもそこに、自分の愛弟子が巻き込まれたとあっては、だ。
のちに彼は、親友の惑星ナブー選出元老院議員パルパティーンにこの件を嘆いている。
パルパティーンは「コマリに関しては、きみの言葉を聞かず暴走した彼女の自業自得ではないだろうか」と発言したところ、ドゥークーは「確かにそうだ。しかし、彼女をあのような性格に育てたのは、わたしの責任だ」と、消沈するほどに嘆いていた。

「ライトセイバーの技はともかく、わたしはあまりよい教師ではなかったようだ。クワイ=ガン・ジンは評議会の指示に従おうとしない頑固な一匹オオカミとなり、今度はヴォサが……」

最初から失敗するとわかっていた選択をとり、案の定破滅し、巻き込まれた弟子たちを見殺しにする――そんなジェダイ聖堂にドゥークーは幻滅し、暴走するコマリを止められなかったことに自責し、せめて弟子たちの冥福を祈っていた。


しかし、悲嘆に落ち込むドゥークーにさらに悪い知らせが届いた。
あのバルティザーの事件から十年後、コマリ・ヴォサは生きていて、いまやバンド・ゴラの女ボスにのし上がっていたのである。
麻薬でひとびとの意識を奪い、暗黒面のフォースを流し込み、「脳の死んだ兵士」を作り上げて……


◆バンド・ゴラ

「わたしは一度しか試さないが、バンド・ゴラはあらゆる手でお前を痛めつけ吐かせようとするだろう……」

ことはEP1から十年前、バルティザーで派遣された外交特使が襲われたころに遡る。
バンド・ゴラの襲撃によって、ジェダイ含む外交官は大半が殺され、わずかな生き残りも全員が捕えられた。
そして、そこは暗黒街の犯罪組織である。生き残りたちはさまざまな拷問や虐待、麻薬注入などの暴虐を受け、娯楽品として「消費」された。
コマリ・ヴォサも生け捕りにされた。彼女ほどの使い手が捕えられたのは、仲間のジェダイ二人が捕縛されて人質になったためだという。
ライトセイバーを振るう強豪のジェダイで、しかも美しい女性である。暴虐には強姦・陵辱も加わった。

しかしコマリは、暴虐の嵐のなかでも生き抜いていた。あごの線から首にかけて癒えない傷を無数に刻まれ、ジェダイが想定しない屈辱を受けながら、彼女は生きていた。
ジェダイの唱える倫理道徳、フォースの光明面への献身、心の善良さ、そういったものを踏みにじられ、屈辱と苦痛から湧き出る怒りと敵意を支えとして、暗黒面のフォースを取り込みながら

そうしたある日、暗黒面のフォースを体得したコマリ・ヴォサは、バンド・ゴラの儀式の生け贄に引き出された瞬間、拘束を破った。
彼女はライトセイバーを抜き、圧倒的なパワーで仲間だった二人のジェダイとバンド・ゴラのボスを殺害。みずから後継の首領に納まった


その後、彼女はバンド・ゴラの本拠地を惑星ボグデンの衛星コルマに移し、主要業務を麻薬「デススティック」の新型開発と流通に切り替えた。
惑星タトゥイーンの大物ガーデュラ・ザ・ハット一味、惑星マラステアの暗黒街を牛耳るダグのセボルトといった暗黒街の組織に渡りをつけ、新型麻薬の中毒者を増やして、それら中毒者をバンド・ゴラに引き込む。
そして、コマリの開眼した暗黒面のフォースを麻薬中毒者の意識に流し込み、より効果的で大規模なマインドトリックを施行する。
それによって、彼女のバンド・ゴラは「脳の死んだ兵士」を大量に確保し、銀河系でテロ・暗殺・抗争介入など暴虐の限りを尽くし、ひとびとを恐怖させた。
EP1の数年前にはすでに人口に膾炙されており、ジャバ・ザ・ハットの縄張りを荒らす*2ミサイルを動員して投資家ヒーゴ・ダマスクの本拠を消し飛ばすなど、暗黒街でも猛威を振るっていた。

また、これと平行してコマリ自身、ライトセイバーを新調して赤い光刃に変えたり、しばしば正座と瞑想をしてフォースの腕に磨きをかけたりしている。

この時期、彼女の存在と組織は銀河共和国はおろか暗黒街ですら恐れられるようになっていた。
その「恐れている暗黒街」のなかには、独自の哲学を磨きつつ、共和国の乗っ取りを画策していた、シスの暗黒卿も含まれていた……


◆ジャンゴ・フェット

「最後のマンダロアか。一人になった気分はどうだ?」

遠く惑星ナブーで、通商連合が総督ヌート・ガンレイおよびシス卿ダース・モールを中心として陰謀を巡らし、それに失敗してから数ヶ月後。
「ティラナス」と名乗る老人が、コマリ・ヴォサに向けて巨額の懸賞金をかけた。身柄の拘束、生死は問わず、報奨金は五〇〇万クレジット。
ちなみに、ジャバ・ザ・ハットが懸賞金をかけたチューバッカの額が二万五千、捕えた賞金稼ぎが吹っかけた(本気ではない)額が五万である。
暗黒街のレートでも文字通りに桁違いの金額だが、相手が「バンド・ゴラのコマリ・ヴォサ」とあっては、ほとんどの人間が尻込みした。

それでも、銀河には恐れ知らずがいる。
かつてマンダロア内戦でコマリと戦った経験もある、トゥルーマンダロリアンの生き残り、ジャンゴ・フェットも名乗りを挙げた。

彼は仲間とともにバンド・ゴラのネットワークや、かつての同胞モントロスを破りつつ探り、ついにバンド・ゴラの本拠地が惑星ボグデンの衛星コルマにあることを突き止める。
一方コマリは、本拠地まで攻め込んだジャンゴをフォースで奇襲して捕縛。依頼主を拷問で聞き出そうとした。

しかし彼を追って、相棒の女賞金稼ぎザム・ウェセルが迫っていた。
コマリはフォースを通じてザムの接近に気づいており、赤い光刃のライトセイバーを抜いてたやすく彼女を打ち負かしたが、ザムは攻撃に見せかけてジャンゴの拘束具を破壊。
ジャンゴは素早く反撃に転じ、コマリは高笑いしつつ後退。
広い瞑想室で、ついにコマリ・ヴォサとジャンゴ・フェットは一騎討ちに挑む。

「戻るなら今だ、賞金稼ぎ。逃げるチャンスをやるぞ」


激しい戦闘の末、ついにジャンゴの攻撃がコマリ・ヴォサの光刃を掻い潜り、彼女を地に落とした。


◆最期

「奴が……来た……あ、あ、がアア、ァ……」

倒れ、動くこともできなくなったコマリ・ヴォサ。
ジャンゴはコマリについて、生死を問わず捕まえろとしか言われていない。しかも彼女はただの戦士ではなく、わずかでも回復すると自分を殺してしまいかねない強敵だ。
ジャンゴは、依頼主のティラナスには死体だけを引き渡そうと決めた。

いっぽうコマリは、二つの気配を感じていた。
一つはジャンゴの殺意である。
そしてもう一つは、長いあいだ感じていなかった、そしてずいぶんと変貌した――かつてのマスターの気配を。
次の瞬間、彼女の首に宇宙の力が凝縮された。

ジャンゴがいぶかしげに首を傾げる前で、コマリ・ヴォサはシスの技で縊り殺された。


「感銘すら覚えたよ。ジェダイの修行を受けたもの、ましてや私自身が鍛え上げたものを普通の人間が倒すとは」

その直後、依頼主「ティラナス」がジャンゴの後ろに出現。
コマリとの思い出を語りつつ、かつて自らが鍛えたジェダイを人間が打ち負かしたことを、しかもこれまで発揮した智恵や技術をも、すばらしいと絶賛する。
ジャンゴは賞賛ではなく、賞金を寄越せと求めるが、ティラナスはそれはもちろん渡すと答えつつ、もう一つ、新しい依頼を受けないかと誘った。
ティラナスは語る。いずれわたしはクローン兵士による軍隊を作りたいと考えていた。そのオリジナルのホストに、きみについてもらいたい、と。
ジェダイすら倒せるきみほどの男なら、宇宙最強の軍隊の始祖となるにふさわしい――と。

ジャンゴは、クローン兵そのものには興味を持たないが、より多くの賞金という言葉と、遺伝子操作を施さない完全なクローン、つまり息子を作ることを求めて、快諾した。

コマリ・ヴォサのとともに、クローン大戦への大きな布石がまた一つ置かれることになった。


◆真相

「いつか彼女は役に立つと思っておったのだ。しかし、彼女は障害へと変わった」

ドゥークー伯爵――ダース・ティラナスは、ほんの数ヶ月前、シスの暗黒卿ダース・シディアスの接触を受け、長い議論の末に、弟子となっていた。
そしてティラナスは長いジェダイの知識を活かしつつ、シディアスからシスの修業も受け、急速に腕を挙げていた。

そんなおり、共和国転覆計画を練るシディアスは、バンド・ゴラが共和国そのものを破壊しかねない危険な存在だと認識し、ティラナスにコマリの暗殺と組織の壊滅を命令していた。
しかしティラナスは、なぜかそれを日延べしてきた。「利用価値はあるはずだ」と。

その後、シディアスはドゥークーのかつての同士、ジェダイマスター・サイフォ=ディアスから「クローントルーパー計画」を聞き出し、それを利用することにした。
しかしクローン計画は、「オーダー66」を組み込むことまで含めて、骨子こそできたが、「オーダー66」を遂行してジェダイを倒せるほどの才能ある男はそうそういない。シディアスもそれは悩んでいた。

そこでティラナスは、両者を一度に解決する方法を進言したのである。
コマリ・ヴォサを倒せるほどの男ならば、クローントルーパーとして何百万も作れば、どんなジェダイでも倒せるはずだ、と。
つまりコマリ・ヴォサは、オーダー66を達成できる人物の基準として、シスの計画に加えられていたのだ。
こうした真実は、コマリもジャンゴも知らないことである。


【余談】

  • ドゥークーの想い
ダース・ティラナスは以前にもシディアスからコマリ討伐命令を受けていながら、一日伸ばしにしてきた。
結局クローン計画の基準に利用したのだが、彼はジェダイ時代、コマリの攻撃性に手を焼きつつも、離反に落ち込み涙ぐむほどにかわいがっていたので、あるいは単純に殺したくなかっただけかもしれない。
最期の場面でも、ティラナスはみずから殺しているが、あそこで手を下さなくてもジャンゴが殺していたはずなので、あれは他人に殺されるぐらいなら自分の手で、という感傷からの行動だったようだ。
暗殺後も、手ずから瞑目させてやったり、さりげなくフォローのような言葉を残したりと、彼なりの情を垣間見せている。
また、ヴォサにしても、いずれは暗黒面へと堕ちたドゥークーがやってくることも、彼には自分や洗脳した兵士達では到底敵わないことも承知していながら犯罪者として派手な活動を継続していた節がある。
既に堕ちるところまで堕ちた弟子として、師の手にかかることを心のどこかで望んでいたことが窺える。

  • コマリとアサージ
しばしばネット上で「アサージ・ヴェントレスの前任者」という紹介がされるが、彼女たちのあいだに関係はまったくない(「ドゥークーの弟子」という意味では前任といえるかも知れないが)。
ライトセイバーについても、コマリのものがアサージに受け継がれたと言われるが、上述の通りデザインがまったく違うため、やはり無関係である。

  • ジャンゴの強さ
ゲームなので、コマリはたくさんブラスターを打ち込まないと倒せないようになってはいるが、さすがに本編設定に準じれば、一発でも当たったらアウトだろう。そこはゲームの都合である。
ところでジャンゴはこのエピソードののちもドゥークーに雇われ続け、EP2ではジェダイマスター・コールマン・トレバーを一瞬で討ち取っている。
おそらくコマリ・ヴォサならもっと粘ったと思われる。彼女の実力は、戦闘力だけならマスター並みだったのだろう。

  • アソーカとの関係
CGアニメ「クローン・ウォーズ」に登場するアソーカ・タノとは、
  • パダワンだがジェダイマスター並みの腕前がある
  • ライトセイバーが二刀流
  • 性格がジェダイらしくない激情肌
  • シス卿のジェダイ時代の最後の弟子
  • 女性である
  • 最終的に評議会との軋轢でジェダイ騎士団から去る
  • 彼女の喪失が、師匠がシスに転向する大きな一手となる
と、妙に共通点が多い。
コマリをアレンジしたのがアソーカということはさすがにないだろうが、その符号っぷりは興味深い。
スタイルと色気は格差凄いけどな!!!

  • ゲームのおまけ
彼女が登場したゲーム「ジャンゴ・フェット」は、「NGシーン集」としてCGキャラの愉快なデモムービーが収録されている。
仕事がないばっかりに、マンダロアの戦闘服でダンサーのバイトをするジャンゴとか、
ジャンゴを押しのけてティラナスの依頼を受けたり、背後で ノシ してるバンド・ゴラの幹部とか。

我らがコマリもはっちゃけており、どう見てもSM女王サマな物腰から、
いきなりジャンゴを往復ビンタしたあげくに愛撫するというマジでそのテのものとしか思えないSMシーンを見せつけていらっしゃる。

「そうかい、えらく無口なんだねえ……」 ビシッ バシッ ビシッ 「あらヤだァ……痛かったぁ……?」




「問題ガ起キマシタ……あにをたノWiki籠リガ殺サレマシタ……」
「その程度なら案ずるな……追記・修正を行う萌豚の代わりはいくらでもいる」


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最終更新:2024年02月23日 19:38

*1 もちろん、尋問や交渉でに使う分にはそれで十分。

*2 ガーデュラの差し金と思われる。ジャバはそのためバンド・ゴラを毛嫌いしている。