SCP-131-JP

登録日:2020/06/28 San 03:09:00
更新日:2024/02/04 Sun 08:18:24
所要時間:約 7 分で読めます





人類が引き起こした問題は、人類自身の手で解決しなければならない



SCP-131-JPは、シェアード・ワールド「SCP Foundation」に登場する異常存在である。オブジェクトクラスEuclid

概要


すごく端的に外見を説明すると、田舎に住んでいるタイプの、典型的な日本人のおばあちゃんである。

身体には多数の手術痕があり、後述の異常性から恐らくサイボーグであることが窺える。

その超人ぶりを列挙すると、

  • 無呼吸で活動できる
  • 体が放射線を吸収する
  • 周囲の放射性物質・放射線量を観測できる*1
  • 高圧・高温の過酷な状況に耐えることができる
  • ダンプカー(10.5トン)程度なら持ち上げられる

とまあWASIMOもびっくりのとんでもおばあちゃんである。実際には測定値よりも大きいパワーを発揮できる可能性がある。更に、汗や涙などの水分を体外に出せなくなっている。

さらにこのおばあちゃん、なんと食べたものを全て鉄にして排泄できるという能力を持っている。財団はこのメカニズムを調べようと胃カメラを挿入したが、食道の途中でカメラが溶けてしまい断念された。

この変換プロセスは、通常の人間が食べ物を消化するのと同じくらいのスピードで行われ、こうしてできる鉄に異常性はない。さらに、金属のような普通の人間なら到底食べようとも思わないものも、摂取して鉄にできる。…近所のおばあちゃんがおやつ感覚で金属をバリバリ食べていたら驚くだろう。食べた量や物質によっては体重が大変なことになるが、どれだけ重量が増えても本人の生活に支障は無い。

通常の人間は食べ物を消化する際にエネルギーを吸収するが、彼女は恐らく鉄に変える際にエネルギーを摂取していると思われる。無酸素状態・人間の限界を超えた活動ができるのはこのためという予測が立てられている。

SCP-131-JP内部では核融合・核分裂が行われている可能性が高いが、その調査は危険すぎるためできていない。さらに、これが正しいとしたら内部の圧力は尋常じゃないレベルになっているはずだが、彼女は自分の体内の物質を噴出したことはない。

特別収容プロトコル


現状、彼女は放射能に関するオブジェクトを研究するサイト-8143の、防放射線・防音対策された部屋に収容されている。言い方を変えれば独房である

食事は2週間に一度、普通の人間が食べるものが支給される。まあ流石に金属をあげるわけにはいかないし、毎日食べさせたら処理する鉄の量が半端じゃないことになる。排泄された鉄は一応、放射能測定を始めとした検査が行われる。

彼女には、「あなたの身体から大量の放射線が検出されたので、問題を解決するために研究をします」というカバーストーリーが与えられている。それに合わせ、SCP-131-JPに接触する職員も放射線防護服を着る必要がある。収容違反が差し迫った際は、彼女に対する記憶処理が許可される。

提案します。SCP-131-JPを用いて福島第一原発の原子炉や核廃棄物の問題を解決する事はできないでしょうか? — ██研究員


提案は却下される。財団の使命は異常存在の脅威から人類を守る事である。この脅威には人知を越えた不可思議がこの世に存在するという事実も含まれる。財団は人々の生活を良くも悪くも一変させるオブジェクトを多数収容しているが、だからこそ財団がオブジェクトを用いて人類の諸問題に介入するような事があってはならない。人類が引き起こした問題は、人類自身の手で解決しなければならないのだから。 — O5-3










































財団は人々を守る為に存る。そうでしょう?

サイボーグ化の経緯


実はこのおばあちゃんがサイボーグになった理由には、2つの要注意団体が関与している。

1つは、「エントロピーを越えて」。韓国を中心に活動する過激派環境保護団体で、外部エントロピー*2オブジェクトを使用した環境保護活動を行うため、財団とはかなり敵対している組織。

1つは、日本生類創研。様々な生物を研究し、新たな生物を作り出し、そしてトラブルが発生するとほったらかしに(酷いときには後処理を財団に丸投げ)する、はた迷惑極まりないマッドサイエンティスト集団。

この関わっちゃいけない両者が手を組んだ理由は、とあるメールのやり取りにある。

詳細は本家記事の方に譲るが、どういうやり取りだったのかを簡潔に言うと、

エン越「君たちの住む国で未曽有の大災害が起きたらしいけど、俺たちも復旧を手伝おうと思うんだ。君たちの環境問題への取組みは素晴らしいから、解決のため是非とも協力してほしい」

ニッソ「うち等も被災地出身者が多いから、喜んで君たちに協力するよ」

といった具合である。珍しいことに、純粋な善意で互いが手を取り合ったケースだ。それで誕生したのが、改造人間SCP-131-JPである。

ニッソには前例があるので、誘拐によってベースを調達した可能性もなくはないが、後述する文書からすると、このおばあちゃんも恐らく喜んで承諾したと思われる。

つまるところ、彼女は福島第一原発事故の後始末をするためのツールとして、現場に派遣される予定だったことが分かる。彼女の身体が放射線を吸収し、核燃料・核廃棄物を食べて鉄に変えることで、汚染を除去する。未だに故郷に帰れない人々にとって、彼女はどれだけ救世主のように映るだろうか。

しかし、財団は残酷ではないが、冷酷である。先のO5評議会員の言葉の通り、異常存在である以上は、彼女を外界に触れさせるわけにはいかないのである。「確保、収容、保護。」その方針は絶対に揺るがない。

…さて、ここでもう一つ別の要注意団体がかかわってくる。

「05議会」。中国支部の要注意団体で、財団の報告書を改ざんする形で関与してくる。名前からわかる通り、O5評議会を模した書体が特徴で、財団のやり方に反感を抱き、注意・忠告、場合によってはより良い収容方法を伝えてくれることもある。

その一人、05-Cが報告書に残した文章がこれだ。


日本生類創研は、一人の老婆の協力を得て、エントロピーを超えてと共に人類を救う装置を作り上げた。

だがそれは当然、現在の科学からは逸脱した存在である。財団は理念に従うなら、これを匿う必要がある。

しかしその行動は、このオブジェクトによって救われるべき人々を見捨てることと同義になる。

SCP-131-JP - 全てが鉄になる

では、今後財団はどうするべきなのだろうか?

余談

財団含め合計4つの団体が出演している理由は、このオブジェクトが「クロスコンテスト」出展作品だということに起因する。

SCPの世界を、「クロステスト」「第四の壁の破壊」「人事ファイルとオブジェクトのコラボ」「要注意団体の競演」といった形で交差させるのがこのコンテストの趣旨である。

SCP-131-JPはコンテスト終了時点で2位を獲得している。

追記・修正は鉄を排出してからお願いします。

CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-131-JP - 全てが鉄になる
by KirisakiMarie
http://scp-jp.wikidot.com/scp-131-jp

要注意団体-JP
by SOYA_one
http://scp-jp.wikidot.com/groups-of-interest-jp



SCP-020-JP - 翼人
by mizuno
http://scp-jp.wikidot.com/scp-020-jp

SCP-030-JP - 石油喰らい
by tokage-otoko
http://scp-jp.wikidot.com/scp-030-jp


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最終更新:2024年02月04日 08:18

*1 放射線対策された容器では認識できないことから、恐らく直接触ることで識別していると思われる

*2 熱力学を無視するタイプのオブジェクト。