天生牙

登録日:2021/01/10 Sun 12:38:40
更新日:2023/06/27 Tue 10:13:29
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天生牙は癒やしの刀。
たとえ武器として振るう時も、命の重さを知り、慈悲の心を持って、敵を葬らねばならぬ。
それが百の命を救い、敵を冥道に送る天生牙を持つ者の資格。

天生牙とは、『犬夜叉』に及び『半妖の夜叉姫』に登場するの名前である。


【概要】

殺生丸が所持している妖刀。
元々は犬の大将の得物で、鉄砕牙と同じく彼の牙から刀々斎が打ち出した。また、その鞘も鉄砕牙と同じく樹木妖怪・朴仙翁の枝から削り出された物。
命名したのは大将らしく、そうでなければ刀々斎に「棺桶いらず」というあんまりな名前を付けられる予定だった。
通常時は錆刀の姿に変じる鉄砕牙と異なり、こちらは美しい日本刀の造りをしているが、殺生丸曰く「鈍ら」で相手を斬ることはできない。

極めれば「一振りで百の命を救う」と謂われる癒しの刀で、大将の死後は遺言により殺生丸に受け継がれるが、力のみを追い求めていた当時の殺生丸にとっては一応遺品としてとってはおくものの、それ以外の価値はなく*1、故に鉄砕牙に執着し犬夜叉と度々相対する事となった。
しかし、旅の中で大将が望んだ慈悲の心が徐々に芽生えていった事で、その使い方を極める事となる。

終盤明らかになる事だが、実は天生牙と鉄砕牙は元々一つの刀であった*2
大将がかつて戦った死神鬼曰く、大将が自身から冥道残月破を奪うも持て余して切り捨てた片割れであり、殺生丸は不要物を宛がわれた当て馬に過ぎないという。
ただし、これは殺生丸の動揺を誘う意図で死神鬼が語った邪推であり、全ての経緯を知る刀々斎の口ぶりからも、大将は二人の息子の成長の為に必要な課題を判断して、各々の適性に合わせた刀を託したことが窺える。
鉄砕牙の真の継承者を決める戦いの最中で折れてしまうが冥道残月破を鉄砕牙に譲り、冥道から脱出してきた時には元の刀に戻っていた。
その後、四魂の玉の邪念である曲霊が出現するが、この世のものでない霊体という性質上、思いがけない形で効果を発揮し、爆砕牙と共に最終決戦における切札となった。


映画『天下覇道の剣』では、冥道残月破や爆砕牙の設定がまだ登場していなかったからか、鉄砕牙・叢雲牙と並ぶ「天下覇道の三剣」のうち「天」を統べる刀という設定が与えられた。
尤も、鉄砕牙と天生牙に分かれた時期は不明であり、実際にこの二振りの刀の性質は全く別物と化しているため、設定として矛盾はしていない。


【能力】


人は斬れぬが、屍は斬れる!


この世の物は斬れないが、あの世の物は斬れるという性質を持つ。

一つ目の力が「死者蘇生」。
天生牙を持ち死者を前にするとあの世の使いが見えるようになり、それを斬り裂くことで死者を蘇らせる事が出来る。
生き返らせるだけでなく、傷を癒したり*3邪気を祓う事もできる。
ただし、この世の摂理に反するという性質故か同じ者に対して一回しか行使出来ない
二度目からは斬るべき対象であるあの世の使いが見えなくなってしまう。
また、すでに肉体が崩壊しかけていたり、理に反する力で命をつないでいる者にも効果はないなど、制約はかなり多く万能というわけではない。
刀々斎によれば、死んでから生き返らせるのが可能な時間は長くて一刻(約30分)。
何より、使用者にはその者を真に救いたいと思う慈悲の心があることが大前提となっている*4
内訳するとおよそ次のようになっている。

救われた者たち
殺生丸が初めて天生牙を使った蘇り第一号。
鋼牙達に襲われ命を落とすが、彼女に心動かされた殺生丸が天生牙の力を使った事で生き返った(癒しの力の影響か失っていた声も取り戻している)。

闘鬼神に操られた灰刃坊によって胴から真っ二つにされるが、無事復活。

  • 甘太の父親
白童子の首狩りに巻き込まれたカワウソ妖怪。
胴体だけで彷徨っていたところを村人達に攻撃され息絶えてしまうが、甘太に自分を重ねた七宝の必死の嘆願と天生牙が呼応した事で能力を行使され生き還る。

  • 十六夜
犬夜叉の生母。
家臣の刹那猛丸によって斬殺されてしまうが、駆け付けた犬の大将によって蘇る。

  • 是露
獣王・麒麟丸の姉。
夜叉姫一行との戦いの最中、せつなに斬られ命を落とすが、それは彼女と縁を結ばれているりんの死につながるため、生き返らされた。
だが、りんを道連れにと目論んでいた彼女は激昂し天生牙を折ってしまう。

  • せつな
麒麟丸との戦いの中で命を落としてしまうが、慟哭するとわの前に殺生丸が現れ先述の経緯で折れた転生牙を授ける。
とわ自身の妖力で一時的に刀身を復活させ*5生き返らせることに成功した。
刀自体は後日、刀々斎によって修復されている。

救えなかった(救えない)者たち
妖怪化された犬夜叉にバラバラに引き裂かれ殺されてしまったが、闘鬼神を打たせる際に一時的に牙に生気を与えた。(まあ完全に生き返らせる義理もないし。)

奈落の触手に貫かれ瀕死だったところを救おうとするも、身体の崩壊が進んでいたうえ大量の瘴気に蝕まれていたため叶わなかった。

  • りん(二度目)
冥界で命を落とした際再び力を使おうとするが、既に一度生き返っていたためあの世の使いが現れなかった。
天生牙の力を過信していた殺生丸を強く戒めた御母堂によりその後冥道石の力を使い息を吹き返す。

四魂の玉のかけらで命を繋いでいたため、天生牙では救えないと御母堂に告げられている。

  • 刹那猛丸
叢雲牙によって蘇るが犬夜叉に敗れ、成仏したのち元の屍に戻る。
流石に哀れに感じたか、屍にたかってきたあの世の使い達を祓った。

このほか、墓土と遺骨を基に蘇った死人である桔梗七人隊にも効果はないと思われる。


もう一つの能力がこの世の物ではない霊体などの存在に対しての効力
霊体の曲霊や叢雲牙の邪気で操られた屍などには強い効果を発揮する。
実際、この力を恐れた曲霊や叢雲牙に操られた猛丸は、人質をとるなどして天生牙を封じようとしている。

また、天生牙自身も意思を持っており、結界を張る事により殺生丸を度々危機から救っているほか、あの世への門を通過する資格の証明の役割も持っている。


【余談】

原作者の高橋留美子先生曰く、「天生牙は鉄砕牙と真逆の刀、殺生丸が最も望まない刀というのが出発点。」「天生牙も鉄砕牙同様、持ち主を成長させる刀。これは逆ではいけなかった。」というコンセプトがあり、
死者を生き返らせる際の「あの世の使いを斬る」といった描写はビジュアル的な部分を大切にしたと語っている。

また、殺生丸に対する父の想いとして「もうちょっと優しくなれよ。」「心を育てろよ。」と、あまり重い雰囲気にならないよう真意を込めたと語っている。




追記・修正は慈悲の心を持ってお願いします。

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最終更新:2023年06月27日 10:13

*1 『天下覇道の剣』でも大将に得物を譲るよう迫る際、露骨に省いている。

*2 鉄砕牙が主で天生牙が従。

*3 妖怪は人間よりも生命力が強いため、首を斬られたぐらいなら行使可能。

*4 御母堂に言わせれば、生き返る前提で使おうとすることがそもそも間違い。

*5 この際、一時的とはいえ妖力のほとんどを使い果たしたことで、朔の日同様黒髪の姿になっていた。