嘘つき姫と盲目王子

登録日:2021/03/06 Sat 21:07:56
更新日:2024/01/12 Fri 19:46:46
所要時間:約 9 分で読めます





本当のわたしでは、あなたに触れられない。



嘘つき姫と盲目王子』(The Liar Princess and the Blind Prince)とは、日本一ソフトウェア開発のゲームソフト。
対応機種はPlayStation4PlayStation VitaNintendo Switchの三機種。2018年5月31日発売。
またiOS/Android対応のアプリとして2020年5月29日から配信されている。

ホタルノニッキ』から続くフリーゲームみたいなノリの作品の一つ。ただし今までの作品に比べるとグロ、リョナ要素はほとんど無くCEROもB判定。でもやっぱり女の子が何かを失う。
狼/姫を操作して王子をゴールまで連れていくアクションパズルゲームだが、『ゲーム』というよりも『童話』としての趣が強く、絵本のようにページをめくる演出が組まれている。
難易度はそれほどではなく、4、5時間もあればクリアは容易い。他にもストーリーに分岐は無く、クリア後のやり込み要素がほとんど無いなどボリューム不足。
にもかかわらず例によって日本ではフルプライスで発売されたため、その点は本当によく批判されている。
しかし同時に、ストーリー、世界観、キャラデザ、BGM、朗読を担当した声優近藤玲奈の演技、志方あきこ作詞作曲のテーマソング『月夜の音楽会』等、どれをとっても高評価なので、中古でもそこそこの値段で扱われていたりする。それらの完成度の高さは芸術作品と言っても過言ではない。
ちなみにスマホアプリ版はいずれも1960円と価格が抑えられているので、今ならそちらを選択するというのも手。


【あらすじ】

闇深い森に囲まれた、とある王国がありました。森は朝でも薄暗く、魔女が支配し、人食いの化け物が住む危険な場所です。
しかし、この国の王子は、毎晩必ず森に入って行ってしまいます。なぜなら、夜毎に素晴らしい歌声が聞こえてくるからです。
森の中にある崖の上で歌を歌っていたのは、の化け物でした。狼は最初、王子を命知らずだと思い食べてしまおうと考えていたのですが、王子が狼の歌に対して拍手をしたので気分を良くし、そのまま歌を聞かせ続けました。

ある夜、王子は歌い手に会いたいと決心し、崖を昇ります。狼は驚いて「化け物だと知られたら、王子に嫌われてしまう」と、咄嗟に腕を振るい、意図していなかったとは言え、その爪で王子の目を引き裂いてしまいました。
駆け付けた兵士によって助けられた王子でしたが、傷物であることを理由に幽閉されてしまいます。狼は王子を助けるべく、森の魔女を頼ることにしたのでした。


【登場キャラクター】
  • 狼/姫
主人公兼ヒロイン。二足歩行する巨体に、四つの目と四つの耳を持つ狼の化け物。好物はもちろん肉(性的な意味はない)で、火が怖い。
魔女曰く「ずる賢くてプライドが高い」。劇中の様子を見る限りあまり賢くは見えないのだが……。相手を油断させて捕食したりするスキルに優れていたのかもしれない。
美しい声と女の子らしい喋り方は演技ではなく素。

化け物のままだと王子を魔女の所まで連れていけないため、まず魔女の力で「歌声」を代償に*1姫の姿になれるようにしてもらった。ただ姫の姿では力を発揮できない。むしろ護衛対象の王子よりも非力。

物語の最初に「小さな恋のお話」とナレーションされるくらいで劇中で恋愛感情について明言されることは無いのだが、王子の手を握れる喜びに「歌声と引き換えにしてでも姫の姿を手に入れてよかった」と思うなど彼女なりに強い好意を抱いていることが分かる。

「弱った者から食べられる」弱肉強食の化け物の森で生きてきたためか、弱みを認めることになる「本当のことを話して素直に謝る」という発想がなく、嘘をつき通して王子の目を治せば傷つけてしまったのも無かったことになるという認識が根底にある。そんな「嘘つき姫」がどう変わっていくかも見どころの一つ。
旅の途中、問題が起こるたびに「王子に嫌われたくない」という一心で嘘を重ね続けるが……。

姫のキャラデザは「萌え系にはしない」という方針により四つの耳は髪のハネた部分になったが、ギョロっとしたつり目とギザギザの歯がかわいいと評判。
ついでに言えばゲームをクリアするころには化け物姿の狼に萌えられるようになっているかもしれない

  • 王子
ヒロイン兼主人公。狼によって付けられた傷によって盲目になっており、常に目に包帯を巻いている。どちらかと言うと、今回つらい目にあっているのは彼の方。

おとなしく控えめな性格だが、実際は芯が強く、行動力が高い。
そもそも子供が一人で化け物の徘徊する森を、夜な夜な狼のいる岩場まで通っていたのだからその行動力は折り紙付きである。
流石に盲目では旅の途中で出会った困っている人(実際は化け物)を助けることもできず、姫にお願いするしかないのだが、それでも任せきりにはせず同行*2したりする。

姫に形のあるお礼をすることもできない身だが、本で読んだ知識を動員して姫を楽しませようとするなどできる限り気遣い、感謝している模様。その一方で姫にお願いをしなければならないときは躊躇わずにお願いする。姫も断れず、無茶振りでも引き受けてしまうなど意外と罪作りな王子様。

自分の目を傷つけた化け物の姿を見たわけではないが、そのおぞましい毛の感触が今でもこびりついているという。当然ながらそれが深刻なトラウマになっており、狼が狼のままでは王子と触れ合えない原因でもある。
狼は姫の姿を手に入れることでこれをカバーするが、その一方で王子の「狼=自分を捕食しようとして目を潰した化け物」という誤解は残ることになり……

どんな願いも叶えるほどの力を持つとされる魔女。その代わり、願いの代償として相手の一番大事なものを要求しコレクションしている。
ただし、命だけは絶対に代償として求めない。これには自業自得ながらも悲しい理由が…。
悪趣味で意地悪だが話が通じない相手ではない。善人ではないが悪人と呼ぶにも程遠いお方。
お察しの通り彼女がラスボスだが、求める代償の悪どさはともかく狼と王子に直接的な危害は加えておらず、ラストバトルに至る経緯を見ればむしろ被害者である。

  • 山羊
森に住む山羊の姿をした化け物。キノコが生えていることと間延びした口調が特徴。というか間延びしすぎて獲物を捕まえるのが下手だったり。山羊だが化け物なので肉食。
三体登場するが資料によると両親と子供らしい。
以前にも人間と化け物が歩み寄ろうとしたことがあったが、いずれも失敗に終わっているという前例を知っていたため、狼に「化け物と人間が仲良くなれるわけないよー」とつらい現実を突きつけた。
ただし狼が上手くいくように応援してはいるらしく、それが社交辞令でないことは後に分かる……かもしれない。

  • 土竜
森の洞窟に住む化け物。名前こそ土竜だがシルエットは鳥類っぽい。けど口は凶悪。
好物はいい匂いのする花。比較的無害かと思いきや、同族同士でそれを巡って争った結果死ぬ個体もいるらしい。

  • その他の化け物
狸、亀、蛙、猪など。
狼と王子を襲う敵だったり、そうでないステージギミックだったり。

【システム】
  • 変身
変身/変身解除は回数制限やクールタイムなしで行え、基本的にいつでも狼と姫の姿を行き来できる。ただしジャンプ中や後述の状況では切り替え不可。

狼モードは本来の身体能力を発揮できる形態。
敵や障害物を攻撃して排除できる他、ジャンプ力が高く高所に移動できる。
更にゲームに登場する全ての敵の攻撃に対して無敵であり、底なし穴に落ちるか地形に挟まれない限り死なない。
基本的に道中の偵察や安全確保はこちらで行えばいいだろう。
ただし巨体であるため天井の低い場所には入れず、そのような場所では姫から狼に戻ることもできない。

姫モードでは王子と手をつなぎ、一緒に行動できる。
仕掛けのスイッチを操作するなど姫でしかできないことも多く、こちらの姿でいることが多いだろう。
その一方で王子ともども身体的には非常に弱く、敵の攻撃を受ければ即死*3
更に高低差にも弱く、ある程度の高所から落ちるとそれだけで死んでしまう。
姫モードの我が身と王子を守りつつ、慎重に先を目指そう。

  • 手つなぎ
「王子と共に魔女の館を目指す」というこのゲームの趣旨を体現する要素。当然ながらチェックポイントの更新やステージのゴール判定は王子と一緒でなければ行われない。
細かいことは抜きにしても、通常状態では真顔の2人が手をつなぐと笑顔になる演出は地味ながら微笑ましい。

ちなみに手をつないだ姫と王子は固定された1キャラクターになるわけではなく、王子は独自の移動判定を維持したまま姫の手を頼りについてくる。
基本的には姫が走ろうが跳ぼうが問題なく追従してくれるのだが、問題なのがキノコを踏んでの大ジャンプ。2人の息が合わないとジャンプの軌道がずれ、手つなぎが強制的に解除されて別々に跳んでしまうのだ。これで王子を見当違いの方向にすっ飛ばし、墜落死させてしまうのは初心者がよくやるミス。むしろトロコン勢でもたまにやる。
コツとしては、短くてもいいので2人でしっかり助走をつけてから跳ぶと失敗しにくい。

  • お願い
王子に特定の行動を指示できる。
できるのは単独で一定距離を移動してもらう「歩いて」と、仕掛けを解くのに使う石やランタンを運んでもらう「持って/置いて」の2つ。
2人同時には進めない場所を突破したり、姫には運べない*4石等を運ぶために使用する。

最初は王子と手をつないでいる状態でしかお願いできないが、中盤からは少し離れた位置からでもお願いができるようになる。これに伴って「歩いて」を中断する「止まって」が使えるようになる*5ほか、狼モードでも王子にお願いができるようになる。
ちなみにお願いの機能はゲームを進めるにつれて少しずつ解放されていくのだが、このうち「持って/置いて」はイベント*6と連動して解放される。これを念頭に置くと、お願い機能の拡張は「姫と王子の信頼関係が深まっていく様子」がゲームシステムに反映されているとも言える。

  • 収集要素
ステージに配置されている「花びら」と「花」が該当。
いずれもステージセレクト画面で取得/未取得の状況を確認できる。

花びらは1ステージに5枚配置されており(花びらがないステージもある)、基本的にステージをクリアするだけなら行く必要のない場所に浮かんでいる。触れるだけで即座にステージの取得状況に反映されるため、場所さえ分かれば集めるのは難しくない。
一定枚数集めるごとに設定資料を閲覧できるようになる他、100枚すべて集めるとトロフィーを取得できる。

花も特定のステージに配置されている他、イベントで2つ取得できる。全10本。
こちらは姫で花を摘み、それを王子に渡すことで取得扱いになる。花を摘んでから王子に渡すまでは狼モードになれないので注意。詰んでしまったらリトライでチェックポイントからやり直そう。
花にはそれぞれ名前があり、取得するごとに「ある魔女の物語」というテキスト(全10パート)を閲覧できる。
こちらも全て集めるとトロフィーを獲得できる他、エンディング……の前に流れるスタッフロールが変化する。
スタッフロールで映し出される、化け物の森にひっそりと咲く花の風景。花を全て取得していると、この風景に王子の姿が現れ……?



これは、小さな追記・修正の物語。

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最終更新:2024年01月12日 19:46

*1 歌おうとする酷い音痴になる。また取られたのはあくまで「歌声」だけなので、会話は可能。

*2 ゲーム的な都合ではあるが、物語的には2人でより多くの収穫を持ち帰るためとも考えられる。

*3 このゲームは体力制ではないので、ダメージを受ける=死亡である

*4 一応狼で殴り飛ばして移動させることはできるが、それだけではどうにもならない場合が殆どである。

*5 それまででも「歩いて」は中断できるが、お願いするために手をつなぐと自動的に「歩いて」が中断されるため「止まって」というお願いは存在しない。

*6 火が怖くて扱えない姫に代わり、王子が(盲目をおして)火の扱いに挑戦する。