AMX-13(戦車)

登録日:2021/04/22 Thu 22:29:06
更新日:2024/01/30 Tue 10:35:19
所要時間:約 25 分で読めます




AMX-13 アビシニアンとは機動戦士ガンダムΖΖなどの作品に登場するアクシズ製の小型可変MS






……というのは無論デタラメで、第二次大戦後に作られたおフランス軽戦車である。つまりアクシズではなくアライアンス
型式番号似てるよねでも!


【どんな戦車?】


一言で言えば「小型化と火力に特化した軽戦車」で、第二次大戦後最も成功した軽戦車でもある。
開発されたのは戦後間もない1951年で、フランスが第二次大戦後もっとも早く実用化した兵器の一つでもあった。


日本では一般人の知名度は無論なく、心なしかミリオタからも微妙に軽視されているような気がするフランス製戦車だが、実は戦車……に限らずおフランス兵器というのは、意外なことに世界的に幅広いシェアを持っている。
というか実はアメリカ・ロシアに次いで武器輸出額で世界3位だったりする。

冷戦時代には世界中で見られたミラージュ戦闘機、フォークランド紛争で一世を風靡したエクゾセミサイルブルバップ小銃の成功例の一つであるアレックスのビームライフルFA-MASなどはかなり有名どころだが、実はこのAMX-13もそれらと同じく、世界的な成功を収めたフランスの傑作兵器の一つなのである。

が、そんなことより何より特徴的なのは
※出典:Military-todayより。2021年4月22日確認。http://www.military-today.com/tanks/amx_13.htm


この見るからに異様な外見だろう。ナニコレ。


【性能】


「走」

AMX-13の「13」は本来「重量が13トンの戦車」であることを示していたのだが、戦車開発にはありがちなことに完成した段階では全備14.8tに増していた。AMX-14.8に改名しろ
とはいえ、全体的に重装化傾向にあったこの時代の軽戦車にしては非常に軽い方(アメリカのM41なんか23tもある)ではある。

ただしパワーソースも自重の軽さに見合った、あるいはそれ以上にコンパクトな小型エンジンを使っており、身軽さが信条の軽戦車としては出力重量比(戦車の重量に対するエンジンパワー)はちょっと低め。
具体的に言うとSOFAM製 V型8気筒ガソリンエンジン「8 Gxb」で、小型軽量&良燃費なのがウリだが出力は250馬力しか出ない。
この8 Gxb、もともとマティスという会社によって作られたエンジンで、その後マティス社は倒産したのだがパテントだけが何度か別の会社に引き継がれていった末に、ついにSOFAMで日の目を見ることになったというなかなかの苦労人エンジン。
引き継いできた会社をなぜかことごとく倒産させてきたサゲ〇ンエンジンでもある。
このAMX-13に採用されたことをきっかけに、この後もフランスの軽装甲車両に幅広く使われるベストセラーエンジンとなった。

足回りはとてつもなく一般的なトーションバーサスペンションで、一般的過ぎていうことがないぐらい。
履帯幅は小型化を優先したためちょっと狭くなっていて、接地圧はそこまで小さくないが、そもそも車重自体が軽いのである程度の不整地なら走破性もなかなか。
変わっているのは小型化のため車体前部にエンジンと駆動系があるFF(フロントエンジン・フロントドライブ)構造をとっていることで、乗用車では一般的だが戦車としてはかなりレア。砲塔が普通の戦車に比べてだいぶ後ろにあるのはこの構造のためである。

最高速度は整地で65km/h程度と軽戦車としては一般的な数値と言える。FF構造故にキャタピラが外れにくいのは強みか。

総じていえば、戦車単体での運動性は「軽戦車としてはまあ普通」と言ったレベルにとどまる。

しかしその小型軽量さ故に、普通の戦車と違って橋や舗装道路など一般車向けの交通インフラをそのまま利用することが問題なく可能
加えて燃費の良いエンジンと大型の燃料タンクによって400km超にも及ぶ凄まじい行動半径を誇るため、戦車単体のそれよりもちょっと上の階層、つまり「戦略機動性」のレベルでは非常に高い性能を発揮する。渋いぜ。

ちなみにあまりに小型化を追求したため搭乗員には物理的な身長制限があり、172cm以下でなければ乗ることができかったりする(フランス国民の平均身長が低かった昔はもっと小さかったらしい)。

「攻」


一般に軽戦車と言えば「身の軽さ」が最優先となるため火力は二の次なことがおおいが、AMX-13の火力はそんな連中とは一線を画す強烈なもの。

主砲として新開発されたのは61.5口径75mmライフル砲「Cn 75 Mle50」
大戦中の傑作戦車として超有名なパンターの主砲「7.5cm KwK42」を改良した砲……と言われていたが、確かに砲尾の構造などはそっくりなものの、各部や薬莢の寸法、弾道特性などいろいろと相違点も多いため、現在では「KwK42の構造を一部参考にした、程度が正確じゃね?」と言われている。
まあそれはともかく、この砲で専用のPCOT-51P徹甲弾を使用した時の貫通力はなんと距離1000mで約170mm(※傾斜0度)。
軽装甲車両どころか(開発当時の)中戦車クラスにすら通用するレベルとなっている。
同軸機銃としてはレイベイ機関銃こと「MAC 1931」7.5mm機関銃を搭載するほか、キューポラ横に機関銃ラッチがあり追加で1挺搭載可能。

そしてAMX-13の攻撃面での最大の特徴が、同時に外見上の最大の特徴でもあるその特異なエイリアンヘッド、即ち「FL-10型揺動砲塔」の採用である。

これは普通の戦車の砲塔を上下に2分割したような特殊な砲塔で、揺動というのはあまり聞き慣れない言葉かもしれないが、まあ「シーソー型砲塔」とでも言い換えるとわかりやすいかもしれない。
イメージ的には車体の上に中華料理屋とかで使うターンテーブルが乗り、その上に主砲を乗せたシーソーを設置したような感じ。
なので主砲を横へ向けたいときはターンテーブルで回し、上下に向けたい場合場合はシーソーを傾けて上げ下げすることになる。

なんでこんな珍妙なことすんの?と思われるかもしれないが、それは無論相応の利点があるため。具体的には
・「小型化」と「大きい俯角」を両立させやすい。
・「小型化」と「強力な主砲の搭載」を両立させやすい
・自動装填装置との相性がよい
などなど。
要するに「小型化したいけど、攻撃力も高くしたい」という本来矛盾する要求を実現するための機構、とでもいうべきか。


そしてさらっと言ったが実はこのAMX-13、量産型としては世界で初めて自動装填装置を搭載した戦車でもある。
一口に自動装填装置と言っても色々とタイプがあるのだが、AMX-13に採用されているのは所謂「ドラムマガジン型」の自動装填装置で、戦車用としては最も古くs……歴史のある形式の一つ。

その原理はまんまリボルバー型拳銃のソレに近く、レンコン状に6つの弾が装填された円筒状のマガジンから、1発うつごとに回転しながら砲弾が取り出されていく仕組み。
そして中央のトレーに転がり出た砲弾が、後ろから棒で押されてチャンバーに装填されることで発射可能となる。
AMX-13はこれを砲塔後ろのエイリアン頭の部分に左右1つづつ、合計2発を搭載しており、一度の装填で12発の連射を可能としている


この自動装填装置はどちらかというと搭乗員(装填手)を節約するのが目的なので連射速度はそれほど早くないが、それでも人力をやや上回る程度の5秒に1発のペースで発射が可能。


構造が単純なのでこの手の装置としては信頼性も悪くないのだが、唯一にして最大の問題となるのがリロードの方法
というのも自動装填装置は前述したとおり前後に大きな砲塔の、それも最後部にあるため、狭い車内からは構造上ほとんど手がとどかないのだ(絶対に届かないわけではなく、車長が頑張ればトレーに1発乗せるぐらいなら可能)。

ではマガジン内の12発を撃ち尽くしたらどうすればいいのか?

そう、車内から手が届かないということはつまり、車外から装填する必要があるということである。

具体的に言うと、3人の乗員の内1人が車内の弾薬庫から弾を取り出し、車外に出た1人がそれを受け取って持っていき、車体の上にのった1人がそれを砲塔後部の天井から1発づつ装填することになる。


30歳過ぎてまだ生きてる騎兵はカスや!な国だけある男気あふれた装填方法だが、現実的には敵と撃ち合ってる最中にこれをやると流石に命がいくつあっても足りないので、普通はちょっと下がって装填作業を行うことになる。
つまり12発撃ち尽くしてしまったら、そこで一度安全なところでお休みタイムをいただく必要がある。シエスタはお隣の国の習慣では?


「守」


「おめェ…怖い?」
「全然 でも先頭はちょっとだけ嫌かな」

って感じに男性原理時代のフランス兵士の気持ちを心行くまで味わえる男伊達な紙装甲
装甲厚は最も厚い部分でも40mmしかなく、正面ですら大半の部分が20mm。傾斜を考慮しても戦前の37mm対戦車砲ぐらいならギリ弾かなくもないかな・・・?程度のうすうす装甲である。
当然側面はさらに薄く、下手すると12.7mmクラスの重機関銃が貫通しかねないレベル。

とはいえ軽戦車の装甲なんて最初から「対人用の火器や迫撃砲の破片程度が防げりゃそれでいい」って想定ではあるので、そういう意味では不足ないともいえる。

ただ装甲厚以上に問題なのが、揺動砲塔という特殊な構造に起因する気密性のなさ
普通の砲塔なら主砲とその周辺の穴をふさいでしまえばそれで砲塔の気密は保たれるが、可動範囲が広すぎる揺動砲塔の場合はそうもいかない。
一応は布のカバーが取り付けられてこそいるが、被弾したりすれば速攻で意味を失ってしまうので、気密に関しては実質ガッバガバに近い
NBC兵器などが近くで炸裂するような状況で動き回ると、戦車がそのままシームレスに棺桶に移行待ったなしである。
「戦術核や生物化学兵器がボンガボンガ飛び交う、この世の地獄みたいな戦場」での使用を想定せざるを得なかった冷戦当時、これは結構見逃せない欠点だった。

また炎上しやすいガソリンエンジンが車体前面に置かれているのもちょっと防御上怖いところだが、エンジンは装甲を貫通した敵弾に対して「二枚目の装甲」としても機能するため、その後ろに座っている車長と砲手のセーフティにはなっている。エンジンの隣に座っている操縦手さんはご冥福ご冥福


【開発経緯】


遡ること第二次世界大戦初期、ナチスドイツの電撃戦によってフランス軍は未来永劫戦史に残るほどの鮮やかな完敗を喫した。

これがトラウマになったのか、その後のフランス政府(ヴィシー→臨時政府→第四共和政)は陸軍を再建するに当たり戦車戦略を根本から一新する。

つまり戦前の「遅い!重い!硬い!」を地で行ったフランス戦車とは180度変わって「機動力!火力!機動力!火力!」が叫ばれ、当然ながらその方針は新戦車の開発にも反映されることになった。

そして1946年9月、フランス陸軍の兵器開発を担当するDEFA(兵器開発・研究部門)は、国産戦車開発計画の一部として
・重量は大型航空機による輸送が可能な12t以内!
・しかして中戦車クラスを撃破可能な火力!
・航続距離長く!めっちゃ長く!
・機動性も高く!
・あと車体は別の車両に使いまわせるように!
などといった要目で「12t級軽戦車」の開発を各メーカーへと依頼。
これに対して4つほどのメーカーが設計プランを提出し、最終的には車体がAMX*1の、砲塔はファイブリール社の案が採用されることになった。

実は第二次大戦中、戦車を航空機で運ぶ、あるいはさらに空挺降下をさせるといった研究は世界各国でされてきたが、実現させて量産までもっていった戦車というのは意外と珍しい。

なぜなら当時の軍用輸送機の積載量は3~5t程度で、これに乗せようとすると豆戦車のようなものにしかならず、それなら豆戦車をそのまま乗せたらよかったからである。
しかし戦間期~大戦中にかけて航空機は大きく進歩し、民間機では既に10t近い積載量を持つ機体も表れ始めていた。
そこでこれから運用可能になる(はずの)軍用輸送機の積載量を考慮しつつ、それに収まる範囲で可能な限りの性能を追求して導かれたのが「重量12t以内」という数字だったのである。

……のであるが、結局当時のフランスのお財布では大型輸送機の大量調達やその運用体制を整えるような出費には耐えられないことが直後に判明したため、コンペ中の49年末には既に空輸可能の条件が要目から消えていた。なんだこの茶番。

さらにフランス財政の苦難はこの後も尾を引き、試作機が翌年の10月に完成した時にも生産体制を確立する金すらないという残念なことになってしまった。計画性という言葉はフランス的ではない。
しかしそこは臨機応変に定評のあるフランスのこと、フランが無ければドルを使えばいいじゃないということでアメリカに共同開発を持ちかけ、なんとか資金の調達に成功する。
これによってその後アメリカにエイリアン砲塔の試作戦車が無数に湧いてくる結果になったのだがまあそれはそれとして、1951年、ついに試作戦車はAMX-13 Mle51(1951年モデルの意)として制式採用。翌52年から量産が開始されたのである。

ちなみに廃止された空輸案件に関してだが、フランス陸軍としては完全に諦めたわけではなく「空輸能力はなくてもいけどでもちょっとはあった方が……」のスタンスであれこれ未練がましくテストを繰り返していた。
しかし結局は諦め……というか「無理やり運ぼうと思えば運べそうだけど、でもそこまでする意味ある?」という結論に至り、そっちはそっちで空挺に特化した新型軽戦車(いわゆるELCシリーズ)を新開発する方針に切り替えている。


【活躍】


AMX-13自身もそうだが、当時フランス軍は空挺部隊や陸上戦力の航空輸送にメチャクチャ熱心だった。
これは1つには機動力を重視したドクトリン(戦法)のためだが、もう1つの重大な理由として「海外の植民地に迅速に兵力を展開するため」という理由があった。

先の大戦での敗北による威信の失墜、また戦中の行政能力低下によって、植民地におけるフランス本国政府の支配力は大いに低下していた。
実際北アフリカやインドシナなどでは既に独立運動が活発化しつつあり、いざという時には(主に船で行くはずの)主力部隊にさきがけ、一刻も早く本格的な先行部隊を送り込む必要があったのだ。

そしてAMX-13が最初に投入されたのもこれらの戦場、具体的に言うと1950年代に起きた「アルジェリア戦争」であり、まさしく「こんなこともあろうかと!」とドヤ顔できそうな状況でのデビューとなった。
まあ結局まだ空輸の実用化は出来てなかったんだけども

しかしの戦争におけるAMX-13 Mle51の評価は、結論から言うと「うーん…いや悪くはない、悪くはないんだけど……」という、なんというか微妙なものとなってしまった。

その理由としては
・砲身が長すぎて取り回しが悪い
・敵にろくに戦車がいないのでせっかくの対戦車火力が無用の長物
・自動装填装置の榴弾の使い勝手が悪すぎる
・市街地戦で損害吸収役をやらせるには紙装甲すぎる
・広けた地形で偵察役をやらせるには機動性がいまひとつ
と言った感じだったが、後半部分に関してはAMX-13自体の欠点というより「軽戦車というカテゴリそのもの」の限界でもあった。

つまり「歩兵の盾にするんならちゃんとした戦車じゃないとダメだし、機動力がいるんなら装輪戦車*2や装甲車でいいんじゃ?」という根本的な問題であり、そして結局はこの戦訓がその後の世界的なスタンダードになっていくことになる。


だがしかし、この認識には一つだけ重要な前提条件があった。
それは「※ただし先進国に限る」という条件である。

「殴り合い用の重量級戦車と機動を担う装輪戦車を共に充分な数配備」し、「その支援車両などをきちんと揃え」て、また「その運用体制や教育システムを遺漏なく整える」といったことができるのは、どうしてもある程度お金持ちな国家に限られてしまう。

というか貧乏な国だとそんな贅沢などころか、3-40tを超えるような本格的な戦車ではそもそもインフラが耐えられないということも普通にある。

しかしそんな国であっても、国防ということを考えるとそれなりの戦車は持っておきたいわけで……

……さてここでひるがえってAMX-13の性能を見てみると
・満載した大型トラックの半分ぐらいしかない車重 → 貧弱なインフラにも優しい
・装輪戦車と違ってちゃんとキャタピラ持ち → 未舗装の悪路でもダイジョーブ
・軽いので足回りの負担も軽く、かつディーゼルエンジンにせまる良燃費 → 運用コストが安い
・おまけに航続距離も長いので鉄道や戦車トランスポーターを必要としない → 運用体制を整えるコストも安い
・歩兵の小銃程度なら問題なく弾ける装甲 → 装備レベルが低い敵なら戦車として振舞える
・それでいて火力は中戦車水準 → いざという時敵の戦車に対して対抗可能
……といった具合で、まさしくそういった国の需要にジャストフィットする特徴を持っているではありませんか!

とまあそんなかんじで、AMX-13はフランス自身よりもむしろ、そういった中小の途上国から人気な戦車になっていたのである。
無論フランスもこの需要を敏感に察知して、それらの国への積極的な売り込みを図り、またそうした用途へ向けた改修も施していくことになる。

そしてその結果、最終的にベルギー(555両)、イスラエル(400両)、インドネシア(275両)、スイス(200両)などを筆頭として実に30か国近くで約3500両を売り上げる一大ベストセラー商品となった。

またAMX-13の「小型軽量で一般的なインフラを使用可能」「良燃費で航続距離が長く走破性も良好」「最低限の装甲を持つ」といった特性によって、戦場で使われる各種車両の「改造元」としても引っ張りだことなっている。

現在でも近代化改修などを重ねつつ10か国以上、派生型も含めればその倍ぐらいの国で現役配備されており、皆様に愛され続けて60年のまさしく傑作戦車と呼ぶに相応しいご愛顧っぷりである。


【バージョン】


「AMX-13 Mle58」
1960年ごろに開発された105mm砲搭載型バージョン。
当時の主力中戦車だったM47パットンの退役が始まったのに後継機であるAMX-30が完成していなかったこと、またイスラエルから「おたくのAMX-13じゃソ連のT-54を貫通できないやん!どうしてくれんのこれ(憤怒)」というクレームを受けたことで開発された。
使用されている砲は57口径105mm砲「Cn 105 57」で、本来はAMX-30用に開発されたものだが、弾速を遅く=反動を小さくすることで強引に搭載した。
弾速が遅いということは徹甲弾の貫通力も低いということだが、そこは弾速に関係なく貫通力を発揮できる化学エネルギー弾、いわゆるHEAT弾(説明が長くなるので詳しく知りたい人は戦車の項目の砲弾あたりを参照しよう!)を使うことで解決している。
このHEATはおフランスが独自に開発した珍兵器、通称Obus G(G弾)と呼ばれるもので、「ライフル砲から発射されるとHEATの貫通力が低下しちゃう問題」を特殊な機構によって(ある程度)解決しているのが特徴。
その貫通力は実に350mm(※傾斜0度)にまで達し、T-54だろうが最新重戦車のT-10だろうが問題なくぶちぬくことができた。
インドネシアやエクアドルなどで現在もバリバリ現役を張っているAMX-13はだいたいこれの改良型。


「AMX-13C90」
主砲を52口径90mm砲「Cn 90 F3」に換装したバージョン。
海外ユーザーの声に応えて作ったMle58だったが、ソ連戦車が最大の仮想敵なのはフランスにとっても同じであり、フランス軍自身でも採用!……といきたかったのだが、配備中の全車両を置き換えるには例によってお金が足りなかった
このため「もっとお安く、でも同じぐらいの性能にできない?」という発想の元に開発されたのが このCn 90 F3である。
これは砲塔ごと新造する必要がある105mmと違って、本来の75mm砲を小改修する*4だけで改造でき、コスト的にもお安く、それでいて105mmと同じObus Gが発射可能だった。
こちらは弾頭が小さい分貫通力はやや劣るが、それでも320mm(※傾斜0度)という充分なレベルを保っている。
フランス陸軍は大喜びでこちらを制式採用し、配備中の全てのAMX-13をこのバージョンに置き換えていった(つまり105mm型は輸出専門になった)。



【派生型】


※ あまりにも多すぎる(多分細かいところまで含めたら50とか100とかじゃきかない)ので、ここに挙げた例はあくまでほんの一部。

「AMX-13 FL-11」
砲塔を同じくフランス製の「EBR装輪戦車」FL-11砲塔に換装したキメラモデル。
前述のとおりFL-10砲塔は榴弾の使い勝手が悪かったため、普通の戦車と同じように手動装填式のFL-11を使うことで改善を図った。
同じような目的をもった派生型として、アメリカの軽戦車「M24 チャーフィー」の砲塔を使ったタイプもある。こちらは砲弾にアメリカ規格の75mm砲のやつ(めっちゃ余ってた)を流用できたので経済的でもあった。

「AMX-13 SS-11」
対戦車ミサイル「SS-11」をメタルマックスめいて砲塔正面に取り付けた戦車駆逐モデル。いやもうなんつーか、メタルマックスという以外の形容ができないほどにメタルマックスな外見
フランスは当時対戦車ミサイル開発において最先端を突っ走っていた国であり、この戦車も対戦車ミサイルの運用車両としては最古参の部類に入る。
開発当初は「90mm……いや、105mm榴弾砲つもうよ!」「同軸機関銃も強力なのにしてさ……」「あ、ミサイルはリロードできるようにしたい!」などといった対戦車よくばりセットとして計画されていたのだが、次第に財政おじさんにわからされていき、最終的には75mm砲搭載モデルにミサイルをポン付けしただけの簡素な形に落ち着いた。

「Cn 155 F3AM」
自走砲モデル。AMX-13の車体は自走砲のベースとしてあまりにも優秀なためいっぱいバリエーションがあるが、これはそのうちもっともヒットした(命中という意味でなく)もの。
主砲の155mm榴弾砲「 MleF3 」は戦後になってフランス自身が開発した新型砲で、当時の榴弾砲としては充分に一線級の性能を持つ。
当時の榴弾砲は、流行の方向性として「車外には装甲バッチリ!車内には弾薬搭載!乗員席搭載!装填機搭載!照準システム!弾道計算システム!」といった感じで大砲一門+人員を全て一車に収める形、要するに多機能化の方向に進んでいきつつあったのだが、これはその真逆をいく古典的な自走砲(砲運搬車)である。
つまり車体の上には榴弾砲がむき出しで取り付けられているだけで、自走機能以外は全て車外に依存する(つまり砲兵トラックや砲弾トラックと同時行動する)という潔いスタイル。
しかしその甲斐あって「中小国家にも優しい小型軽量でそこそこ安価な自走砲」として市場にまたしてもピンズドし、中小国家や山がちな国家などにバカ売れした。

「AMX-VCI」
装甲兵員輸送車モデル。ここからさらに歩兵戦闘車やら工兵車両やら救急車やらミサイル車やらいろんなモデルに派生している。
AMX-13の車体はエンジン・変速機・ドライバーといった「動くのに必要なモジュール」が全て前方に集中しているため、後部は簡単な大規模改装が可能で、必然的にこんな大規模改造モデルもいっぱい存在することになった。
性能は……まあ時代相応のごく普通の兵員輸送車といった感じ。実は本来の戦車仕様モデル(Mle51とか58とか)よりも重かったりする。2人+10人も乗るからね!仕方ないね!

「AMX-13 DCA 30」
対空戦車(自走対空砲)モデル。
専用のレーダーシステムを1から作ったため開発が遅れ、フランス自身向けのAMX-13系の中ではわりと後発組(1968年から生産開始)。
機関砲の老舗であるスペインはイスパノ・スイザ製30mm機関砲「HSS831A」を連装で装備し、捜索用のレーダー及びその運用システム、高性能な光学照準器とその弾道計算システムを内蔵している。
同時期のライバルとしてはソ連のZSU-23-4などがいて、これとはまあ概ね一長一短あっていい勝負といったところだが、この数年後に超傑作対空戦車である西ドイツのゲパルトが完成してしまったためやや影が薄い。


【フィクションでの活躍】


ゲーム


☆「メタルマックス2SFC

ゴキブリー!

ゴキブリー!

あなたの かわいい

のうミソでかんがえた ひどく

みっともない戦車が

もうすぐ できてしまうよ!

「戦車と犬のRPG」では、2作目のでプレイヤーが装備として乗れる戦車(クルマ)の一両「アビシニアン」として初登場。
ゲーム終盤のイベントで、世界の果ての砂漠に一人(+助手ロボット)住む「あわれで さびしい ろうじん」こと罵倒バトー博士に作ってもらうことで入手可能。
これは所謂「自分だけの〇〇を作ろう!」系の戦車作成イベントで、
重 「レオパルト(元ネタ:レオパルトII)」
↑ 「ティーガー(元ネタ:ヤークトパンターII?)」
↓ 「ストラディバリ(元ネタ:シュトゥルムティーガー)」
軽 「アビシニアン」
の中から素体として一種を選び、装備や武器スロット構成を自由にカスタマイズして完成させる、というもの。
アビシニアンはこの中で最も軽く、武装搭載や装甲タイル(最大HP)に余裕ができる一方で、守備力が最低なので被弾時のリスクが……という設定に本来なっていたはずなのだが、バグ技を使うことでなんと「レオパルトの最大守備力を持ったアビシニアン」が作成可能に。
これがまたメチャクチャ簡単なバグ技であったたため、実質的にアビシニアンは「攻撃・防御・自由度全てにおいて最強」というチート戦車になってしまった。


☆「メタルマックス2 リローデッド(NDS)
DSでよみがえったリメイク版でもばっちり登場。
引き続きゲーム終盤でバトー博士に作ってもらうことで入手可能だが、流石に他3種の存在価値を無にする原作のバグは修正されており、本来の設定通り「最も軽いが最もやわらかい」戦車に。
これによってごく普通の軽戦車になったが、ゲームバランス的には「守備力<<<軽さ」な上、高性能な固定迎撃装備が搭載できることもあって、やはり4種の中で最も人気が高い
ただし「1台のクルマに対する複数人乗り」が可能となっている今作では、4人まで乗れるちゃんとした戦車と違って2人までしか乗れないという制限が結構効いてくる。
またティーガーがちゃんとしたティーガー(VI号戦車の方)になってビジュアル人気が上がったこともあって、リメイク前ほどの絶対的な地位はなくなったかも。


☆「World of Tanks
世界最大手の戦車TPSには、フランス軽戦車(LT)ルートを中心に多数の系列戦車が参戦中。
通常ツリーの軽戦車ルートだけでも基本のMle51がtier7に、90mm型がtier9、105mm型がtier10(抜けてるtier8は競合試作車だったバティニョールシャティヨン製の戦車が入る)として登場する他、自走砲ルートやプレミアム車両(課金戦車)などにもいくつか登場。
ゲーム的には実車同様の「自動装填装置」、所謂オートローダーを搭載しているのが特徴で、これは1発撃つ→装填→発射を繰り返す普通の砲と異なり、長時間かけて複数の砲弾をマガジンにつめ、速射砲のようにマガジンが切れるまで連射できるというもの。
これによってLTにあるまじき激烈な瞬間火力を実現しており、高い隠蔽とそこそこの機動性を活かすことでまさしく「ニンジャーーー!」なアサシン的LTとして戦況を大きく動かすことも不可能ではない。
ただし持ち味を活かすには高い乗員スキルや使い手の技量が必須になるため、その本領を発揮できるのは基本的に中級車以上。だからAMX-13 57を初心者狩り車両っていうのはやめろォ!


やっぱり やめるんだね?

ひとりでは ついき・しゅうせいできないんだ?

ママに そうだんしてから

するといいよ ゴキブリ!

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最終更新:2024年01月30日 10:35

*1 フランス陸軍の工廠の1つAteliers de construction d'Issy-les-Moulineauxの略。直訳すると「イシー・レ・ムリノー(地名)建築工房」のような意味。

*2 無限軌道(キャタピラ)ではなく普通の車と同様のタイヤで動く戦車。軽戦車よりもさらに機動性に特化している

*3 厳密には戦車を含め、トーチカとか装甲車とか、まあようするに硬い目標

*4 砲身の穴をより太く開けなおし、サーマルジャケットを砲身に取り付けるだけ