ゾーリン・ソール

登録日:2021/07/01 (木) 18:51:09
更新日:2023/08/27 Sun 01:14:29
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ゾーリン・ソール、発進する!



ゾーリン・ソールとは、小説『ガイア・ギア』で登場したMS及びマン・マシーン(MM)。パイロットは、アフランシ・シャアを初めとした反連邦組織メタトロンのメンバー。

《諸元》

名称:ゾーリン・ソール
型式番号:RX-110
所属:メタトロン
建造:アナハイム・エレクトロニクス社
生産形態:試作機
頭頂高:19.2m
本体重量:26.8t
全備重量:60.2t
ジェネレーター出力:5,200kW
スラスター推進力:68,000kg
センサー有効半径:18,000m
装甲材質:ガンダリウム・コンポジット

※カタログスペックは改修前の性能と見られる。

《機体解説》

ズィー・ジオン・オーガニゼーションが保有していた謎のモビルスーツ。
ズィー・ジオンの上層部が「シャア・アズナブルの再来のために用意した遺産」の機体とされる。
ホンコンの廃ビル内にずっと保管されていたこのMSの開発の経緯は一切不明だが、単独飛行が可能な機体構造から察するに少なくともシャアの反乱よりも後の時代に製造されたと推測される。
機体の操作系統は宇宙世紀0080年代後半から0090年代前半に普及が試みられたアームレイカー方式が採用されている。
ジオン軍の技術が使われている節が見られるが、部分的には連邦軍のMSを参考にしたと考えられる部分が多い。ただし、連邦軍のMSの影響の方が色濃いという説もある。

一説には、宇宙世紀0110年の時期にペーネロペーΞガンダムの発展型としてロールアウトしたMSであり、地球連邦軍の依頼を受けてアナハイム・エレクトロニクス社が製造したと言われる。
当時の最新鋭技術が徹底的に詰め込まれた超高級機であり、量産性は一切考慮されていない。
ミノフスキークラフトを採用しながらも、ペーネロペーやΞでは30m規模に大型化していた機体サイズを20m規模への縮小に成功したことが読み取れる。

ゾーリン・ソールが開発された時代はフォーミュラ計画が進行しており、機体の低コスト化を求める意見が連邦軍内でも主流となっていた。
結局はゾーリン・ソールを最後に超高級路線のMS開発は長期間に渡って停滞することになり、ゾーリン・ソール自体も試作に留まって連邦軍に正式採用されることはなかった。
しかもマフティー動乱以降は反地球連邦政府運動も表面的には鎮静化していたために、小型化路線への移行と言う事情を抜いて考えてもこのような高級機を連邦が本気で要求することは考えにくい。
つまり、ズィー・ジオンがアナハイムや連邦の双方に対して何かしらの方法で開発を働きかけて譲渡前提で製造されたという可能性が高く、ズィー・ジオンが企む「シャア存続計画」の一環としての製造依頼だったと見られる。

ゾーリン・ソールの技術自体はMSA-0120の技術素体として利用されたとも言われている。
ところがゾーリン・ソールの機体資料は既に失われており、「最高機密指定」として扱われていた状況から、機体自体が予算取りのダミーとまで疑われていた。
最高機密指定として扱われている理由は明確にされていないが、上述した「シャア存続計画」を前提としたズィー・ジオン、連邦、アナハイムを巻き込んだ計画という説から考えれば、公にはできない極秘プロジェクト故に存在自体が隠蔽されたと考えられる。

全体的にジオン系のフォルムの機種だが、頭部は歪んだような形のガンダムタイプであることが特徴的。
横から見ればササビー、前から見ればガンダム」という二つの伝説の合体とも呼べるその姿は、ある意味シャアの再来が搭乗することを前提にしている意図がよく分かる。
ただし、ゾーリン・ソールは複数回の改修を受け続けた結果、メタトロンのMMのデザイン色が強いガンダムタイプの機体に変化していった。

形式番号のRX-110はかつてのガブスレイと重複しているが、これは連邦軍の型式番号のナンバリングがグリプス戦役前後のみ独特なルール*1だった事によるもので、
ガブスレイとの技術的・コンセプト的関連性は恐らく無いと思われる。
加えてガブスレイ自体が反連邦政府組織と認定されたティターンズの試作機であることから考慮されなかったのかもしれない。
『機動戦士ガンダムF90 FastestFormula』(F90FF)ではガブスレイと重複したことについて、ゾーリン・ソールの形式番号は偽造コードと語られている。

複数のファンネル兵器や優秀なサイコミュを搭載し、ミノフスキー・バリアーなどの導入によって防御性能も高いという第五世代MSの集大成的性能となっている。
細かい動きに関しては高速戦闘を前提として設計されたMMよりも正確で、様々な環境での使用が配慮された丁寧な作りをしている。
その反面、メタトロンの量産型MMであるドハディと比較すると汎用性能に欠けており、旧式のMS故に多少機体の反応も鈍い。

ゾーリン・ソールはロールアウト時点では技術的な面において革新的な機体だったが、宇宙世紀200年代においては急激な発達を続ける技術革新の波には勝てなくなっていた。
それでも生産に膨大なコストを要するMMを簡単には更新できないため、ゾーリン・ソールのような骨董品でも改修して使うことに意味があった。
そして、超高級機としての豊富な武装とメタトロンによる改修によって、宇宙世紀0200年代の起動兵器と戦える性能を発揮したのである。
この事実はゾーリンソールの古めかしいながらも堅実な基本設計の優秀さを示したが、見方を変えれば一世紀に渡って地球圏の科学技術には抜本的な革新が起こらずに中世的な停滞の様相を呈していたことも表していた。

しかし、上述したようにメタトロンの正式機種ではないという事情に加えてワンオフ機であったので、宇宙世紀0200年代の世界においてメタトロンでは完璧な整備が不可能だった。
常に不完全なメンテナンスで運用する事態になっており、腕が破壊されるなどの欠損を起こすと修理手段がないという問題を抱えていた。
100年以上前の機体を使えばこういう事態になるのは当たり前の話の話ではあるが…。

《バリエーション》

改修型ゾーリン・ソール

メタトロンによる改修を受け、MSからMMへと発展したゾーリン・ソールの強化型。
機体のカラーリングはスカーレットとホワイトの鮮やかなカラーへと変更され、赤いガンダムとも呼べる外観になった。
機体の装甲の強化やサイコミュの調整が施され、携行用のビームライフルも新たに新造されている。

ゾーリン・ソール・ドライヴ・ユニット装備仕様

地上戦を前提として更なる改修を行ったゾーリン・ソール。機体自体に改修は施していないが、背部に長距離用の専用ドライブユニットを追加した。
「兵器の性能はそこそこに抑え、任務に応じてユニット式に性能を強化する」という設計思想で開発された。
ドライヴ・ユニットによって瞬間的な運動性と巡航性能の向上に成功しているが、使用後のユニットの外部投棄が困難という欠点を抱えている。

ラジオドラマ版ゾーリン・ソール

設定やストーリー展開が小説版と異なるラジオドラマ版では設定が変更されており、上述したようなMSとしての経歴や仕様はなくなった。
メタトロンが開発と製造を行った量産型MMだが、本編時点では兵器としては旧型になっている。
機体性能はガイア・ギアαに比べると劣るが、操縦性は同じらしい。
堅実な基本設計だったことから幾度もの機体アビオニクスの改修を受けており、旧式と言っても新型機種に比べて遜色のない性能を持っているとされている。

《武装》

60mmバルカン砲

MSによく搭載される基本的な実弾兵器。ゾーリン・ソールには2門搭載されている。

ゾーリン・ファンネル

νガンダムに装備されていたフィン・ファンネルと同型だが、技術的に発展しているファンネル。
フィン・ファンネルよりも構造的に進歩しており、機体もνガンダムのファンネルと比較してさらに小型化されている。
ゾーリンソール・シールドの裏面に2基収納されており、再充電をここで行える。

νガンダムと同じようなIフィールドバリアーを展開させることも可能だが、ミノフスキーバリアーが搭載されているゾーリンソールでは使われる状況は限られると思われる。

ロング・フィン・ファンネル

背中や腰に装着されているフィン・ファンネル。高機動の小型ビーム砲。
ちなみに、メタ的に見ると実はフィン・ファンネルという単語及び概念は『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』(CCA)よりもこちらの方が早く登場している。
『CCA』よりも『ガイア・ギア』の方が作品の発表時系列的には古く、連載初期の時期にニュータイプ誌においてフィン・ファンネルが新兵器として紹介されていた。

ファンネルミサイル

ペーネロペーやΞガンダムも使用していた兵器。腰部分に装着されており、サイコミュ操作によって発射して対象物を破壊する。

Pak43A エレクトロ・ケミカルガン

装甲貫徹力の高いMS-HEAT(多段成型弾)を超高初速で発射するエレクトロ・ケミカル砲の一種。
液体炸薬に電圧を加えプラズマ化を行い、その膨張圧と炸薬自体の爆発を使って高速弾を実現する。
本体には上下に開く部分が見えるが、これは砲身の強制冷却と余剰電力の放電用の役割を持つ。

ゾーリンソール・シールド

ミノフスキーバリアーを内蔵する専用シールド。
上述したようにファンネルを収納するための部品でもあり、充電用の補助ジェネレータを内蔵している。
そのために防御用シールドというよりは攻撃用の兵器と表現した方が正しく、防御機能に関してはあくまでも補助的な存在。
高価な装備であるため、一般的なMS用のシールドのような使い捨ての消耗品としては考えられていない。

《劇中での活躍》

小説版

バァム・ゼーゲンの管理するホンコンの廃ビル内に保管されており、香港に訪れたアフランシに「遺産」として託される。
アフランシはゾーリン・ソールを用いてスペースシャトルをハイジャックし、宇宙へと上ることに成功した。

サイド2のヘラスに入港した後に現れたマハのウル・ウリアンを危険視したアフランシは機体の解体か隠蔽を望むが、コロニーの外に出す形で扱いが妥協された。
アフランシがガイア・ギアαを専用機に持つとメタトロンのMMとして利用されることになり、クリシュナ奪還作戦ではジョー・スレンが搭乗した。
やがて、メッサー・メットの機体として使われることになった。

様々な作戦で多くのパイロットに利用されたが、ホンコン・マハとの戦闘でギッズ・ギースによって左腕を破壊される。
メタトロンの機種ではなく予備部品がなかったことから修理不可能と判断されて放置されるという悲しい事態になる。
ところが、捕虜となったウルからクリシュナとの関係を聞いたジョーが、放置されていたゾーリン・ゾールに衝動的に搭乗してクリシュナの救出へと出撃。
腕部分の消失に加えてメンテナンスが不十分な環境で酷使され続けた影響もあり、この時にはゾーリン・ソールは機体全体が限界寸前な状態であることを匂わせている。

クリシュナやエヴァリーを回収したゾーリン・ソールは密かに帰ろうとしていたが、ウルのギッズ・ギースに目撃されてしまった事で戦闘能力がない状態での交戦を強いられる。
ホンコンにおけるゾーリン・ソールの戦闘の結果を受けて、ホンコン・マハはギッズ・ギースの製造時にゾーリン・ソールのデータをコンピューターにインプットしていた。
それでも必死の戦闘を見せるが、最後はコクピットを焼かれる形でジョーは死亡し、機体も完全に沈黙してしまう。

ハンデを背負いながら動き続けた旧式兵器であるゾーリン・ソールの戦いは、ついに終わりを迎えたのだった。

ラジオドラマ版

メタトロンの本拠地であるサイド2のヘラスで製造されていたが、マハによって殆どの機体が没収されてしまう。
しかし、逮捕されたアフランシの奪還作戦の際にケランが隠匿されていた機体を持ち出して出撃。
コロニー外部でマハのガウッサ第4中隊と交戦状態に陥るが、回収されたアフランシが操縦を交代してパイロットになると、シャアの記憶とニュータイプとしての才能を覚醒させて無双を行い全滅させる。
あまりにも早い敵の撃墜ペースはメタトロンの味方ですらも唖然とさせ、機体のカラーも重なって赤い彗星と表現された。

マハ追撃作戦でもケランがパイロットを務め、ゾーリン・ソールの第二小隊が展開されるが、アフランシのミスによって原因で3機が撃墜された。
残されたケランのゾーリン・ソールも、ヌーボ・パリでの迎撃戦にてジョーのドハディをかばってブロン・テクスターのファンネルによって撃墜される結果に終わる。

《設定に関する事情》

ゾーリン・ソールという機体は設定は、『ガイア・ギア』という作品のメタ的な事情や長期連載による他ガンダムシリーズの影響を色濃く受けている。

連載初期にはMSとしての描写や各種設定が披露されており、旧式のMSが後にマン・マシーンに改修されるという流れにされているが、これはメタ的な事情が強く絡んでいる。
ガイア・ギアは版権問題でMSという単語が作中で使えなくなったことで「マン・マシーン」という設定を生み出したという経歴があり、ゾーリン・ソールもマン・マシーン表記に固定しなければならなかった結果と考えられる。
実際に文庫版では連載版から変わって最初からマン・マシーンだったという扱いをされている。

現在一般的に認識されている「ペーネロペーやΞの系譜に位置する第五世代MS」という正体の設定も、小説本編ではなくホビージャパンにおいて定められた雑誌設定。
こちらの設定では『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』の出来事に言及しており、『機動戦士ガンダムF91』の要素であるフォーミュラ計画の存在が示唆されている。
「時代設定的には過去だが、作品の発表時期的には後発」と言う2作の状況を利用して、後付けで3作品の世界観のミッシングリンクを試みたことが読み取れる*2

『F91』及びそれと繋がる宇宙世紀作品と『ガイア・ギア』の関係性は曖昧にされていたが、ホビージャパンとしては小説版ガイア・ギアの世界観でも『F91』の前日談における軍縮の流れが起きたという解釈をしていたことが読み取れる。
ちなみに、『F91』に連なる世界観の作品で『機動戦士Vガンダム』よりも先の時代を描いた作品である『機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST』は、地球圏に一時的な技術衰退が発生したという設定になっており、ホビージャパン設定における「中世のような地球圏の技術停滞」と似通った部分が見られるが、関連性は不明。あちらは停滞どころか衰退だが…。

小説版終了後に展開されたラジオドラマ版では上述したようにMS関連の設定が全てなかったことにされており、単純なMMという経歴へと整理された。
このラジオドラマ版でも、当時の一部雑誌において「マハ側の高性能マンマシーンだったが、メタトロンに盗まれて改修された」という記述が見られる。

このように作品展開時から設定が二転三転としていたため、作品の展開が完全に終了した後も何かしらの形でゾーリン・ソールがガンダムシリーズに登場するような展開があった場合は、また設定が変わっているかもしれない可能性があると言われていた。

アニメ版『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』の制作スタッフ大反省会において、「第五世代モビルスーツの1機としてゾーリン・ソールが存在する」と制作スタッフから明言された。
正史の宇宙世紀の世界においてもゾーリン・ソールという機体がいずれ現れる可能性が考えられる発言であり、現在のサンライズにおけるゾーリン・ソールの設定はホビージャパン設定が採用されていることを示唆したと言える。

『機動戦士ガンダムF90 FastestFormula』では初期はMSだったというホビージャパン設定が利用されており、F90とコンペティションを争ったMSA-0120の技術素体にRX-110ゾーリン・ソールが使われていることにされるなど、『機動戦士ガンダムF90』とのミッシングリンクが行われている。
そのため、この作品でもゾーリン・ソールの出自はホビージャパン設定で固定されていると思われる。

《余談》

  • 名前の由来は「草履」と「靴底(ソール)」を足したとされている。つまり「草履の靴底」ということに…。
  • 『F90FF』での登場によってついに本編以外のガンダムシリーズ作品への出演が果たされたが、初登場から25年目にしての初の外部出演となっている。
    なお、ガイア・ギアαに関しては『GUNDAM FIX』に登場しているため、外部出演は既に果たしている。



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最終更新:2023年08月27日 01:14

*1 他の時代は基本的に開発年なのに対し、当時は「開発拠点の番号+その拠点の何番目の機体か」という独特なもので、ガブスレイの場合はルナツー(拠点番号11)が10番目(下一桁が0)に開発した機体なので110となっている。

*2 ただし、『ガイア・ギア』は連載が長期化した影響で結果的には『閃光のハサウェイ』や『F91』が発表されて以降に完結を迎えている。また、『閃光のハサウェイ』に関しては執筆時期が重なっており、世界観やMSの設定に関しては『ガイア・ギア』から逆算して考えられたとも言われている。つまり、設定の連携については単純な後付けとは言いにくい部分もある。