渾沌(中国神話)

登録日:2021/11/24 (水曜日) 12:14:26
更新日:2024/02/24 Sat 22:10:26
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渾沌(こんとん)とは、中国道教神話に登場する存在。混沌、もしくは渾敦とも表記される。
その名の通りよくわからないカオスな存在で、伝承によって怪物だったり帝だったりだったりする。
ややこしいことに神話においては天地開闢以前の様子を表す言葉でもある。こちらは『封神演義』に登場する鴻鈞道人(こうきんどうじん)として擬人化された。
更に、糊塗骨董、そしてワンタンの語源とする説もある。
容姿はのっぺらぼう、もしくは犬に似ていることが多い。

伝承

  • 怪物としての渾沌
『春秋左氏伝』では「饕餮(とうてつ)」「窮奇(きゅうき)」「檮杌(とうこつ)」と並ぶ四凶(しきょう)の1体として数えられており、当の渾沌はもともとは帝鴻氏……なんと黄帝の子だったという。
義を覆い賊を隠し、凶徳を好んで行い、友とすべきでない反道徳的な「醜類悪物」と親しんだとされる。
他の四凶ともども舜帝によって世界の果てに流罪となり、悪魔が侵入してくることを防ぐ役目を与えられた。

『神異径』でも渾沌は善人を妨げ、悪人に懐くとされている。
外見は熊、もしくはに似た長毛の怪物で、爪が無く、盲目で耳が聞こえず言語能力も無い。どうやって善悪を判断してるんだ?
普段は自分の尻尾を咥えてぐるぐる回っており、時々空を仰いで笑うという奇行に及んでいる。
崑崙の西に生息しているらしい。

  • 帝としての渾沌
『荘子』での渾沌は中央の帝として登場する。この渾沌はいわゆるのっぺらぼうで、目、鼻、口、耳の7つの穴がどれもなかったという。
南海の帝『(しゅう)』と北海の帝『(こつ)』に会い、渾沌は2人を手厚くもてなした。すると儵と忽はお礼として善意で渾沌の顔にそれらに該当する穴を開けたのだが、その結果渾沌は死んでしまう。当たり前です。

これは一般的に「人間の浅知恵が自然を殺す事を示して人為を否定した寓話」と解釈され、「渾沌七竅(しちきょう)に死す」と言う成句にもなっている。
「"自然そのもの"は人間の理屈で理解できるものではない。だから余計なことをすべきでない」と言う意味で、後に「強引に道理を通してはいけません」という意味のことわざになった。

余談だが、「儵」と「忽」は共に「極めて短い時間」を意味する。


  • 帝江との関係
『山海経』に登場する神鳥、帝江(ていこう)は渾沌と同一視されることがある。理由は「その顔は混沌としていた」と描写されているから。ひでぇ…。
ちなみに上記の『荘子』での渾沌がのっぺらぼうであることの元ネタとされる。
豊富な鉱脈を持ち玉石を産する天山に棲み、歌を歌うことと舞を舞うことを良く知っていたとされる。姿を現す時はのような紅いを放つ。

しかしてその外見は、黄色い袋のような身体に六本脚と四枚翼を持つというシュールなものであり、そのインパクトから渾沌は上記の犬みたいな容姿よりもこちらの姿の方が有名になってしまった。
おかげで創作における四凶集合絵が「禍々しくもかっこいい怪物×3とゆるふわマスコット」という構図になることも…。

現在では元々は「黄帝=帝江=渾沌(中央の帝)」だったものが、神話上の存在の歴史化に伴い、そこから怪物としての渾沌が派生した、と考えられている。


創作での渾沌

無双OROCHI2』にて袁紹をヨイショして利用していたモブの妖魔武将……だったのだが、『無双OROCHI2Ultimate』で「魍魎」に改名された。
理由は同作に別の渾沌が登場しているからであり、こちらはアンリミテッドモードで初登場する。
アンリミテッドモードの舞台となる遠呂智が作り出した異世界とは別の異世界を生み出した妖魔であり、人語を操る獣の頭と2対の大きな翼、2対の腕を持つ。
いかにも悪役のような見た目で実際アンリミテッドモードのラスボスなのだが、実はかなり気さくな性格の持ち主。その名の通り混沌を好む。
無双OROCHI3』でも隠しキャラとして登場。ストーリークリア後に難易度「渾沌」で条件を満たすことで仲間にすることができる。

モンスターハンター4G』にて追加されたゴア・マガラの特殊個体、「渾沌に呻くゴア・マガラ」として名前に採用された。
脱皮に失敗してシャガルマガラになりそこなった個体であり、ゴア・マガラとシャガルマガラが半々という不完全変態を遂げたその姿は正に「混沌」。
後にその生態にまつわるあまりにもエグい設定が明らかとなり、寿命が通常より短いわ、「この世に存在してはいけない何か」と言われるわで、かわいそうという意見が絶えない。

麒麟丸が配下として四凶を従えており、渾沌は三番手に登場。
他3体に比べると元ネタの要素がまるで無く、名前を借りただけのオリジナル妖怪と化している。
特に、質問にしっかり答える、倒した相手の遺族を覚えている、相手の弱点を味方に教えるといった律儀かつマメな性格は「混沌」とは程遠い。
気に入らないことがあると何でも無粋扱いする。
第一シーズンにおけるライバル枠であり、他3体が「本編開始前に倒される」「含みを見せるもあっさり倒される」「説明回のついでで倒される」という扱いを受ける中、彼は術や配下を用いて策を練り、たちを苦しめた。
彼自身その最期はあっけないものであった*1が、基本あらゆるメディアにおいて「饕餮とその他」という扱いであることが多い四凶では珍しい「饕餮より活躍した四凶」である。

アーサー王伝説がモチーフの西洋風ファンタジーだが、東洋の伝承の渾沌と類似点が多い混沌が登場する。
星々の間に誕生した力の意志とされ、その形状は巨大で不定形な光り輝く何か。「魔神族ですら畏れる闇」と「女神族ですら崇める光」を併せ持ち、世界を創造した存在であるとされている。

  • 相州戦神館學園万仙陣
本作のラスボス・黄錦龍が召喚する神格「四凶渾沌・鴻鈞道人」として登場。
設定のベースとなっているのは渾沌だが、他にもクトゥルフ神話のアザトースをはじめとした複数のモチーフを織り交ぜてアレンジする形で描かれている。
見た目は原典通り七竅を持たず、数億もの触手と獣毛で編み上げられた異形の怪物。
「良い夢を見たい」と願う人間を、各々が思い浮かべる理想を実現した夢(=妄想)の世界に取り込むという恐るべき能力を持つ。
人間なら誰もが嵌りうる圧倒的な普遍性を持つこの能力で全世界を呑み込もうとしたが、召喚者である錦龍自身が痛みを自覚して夢から離反したことで制御を失って取り込まれ、
まさに「渾沌に目口を開ける」の故事をなぞるような末路を迎えた。


捜神記をベースにしたファンタジー漫画。
さまよう死者を冥府に導く使者として登場し、作中では「使者ちゃん」「渾ちゃん」と呼ばれている。
普段は人間の姿をしているが、本来の姿はこの項で挙げた「帝江」……というか、どうみてもである。羽と足のついた尻である。
人の姿のときも、ふとした拍子に顔だけ元の姿に戻る。…つまり顔だけになる。
何言ってるかわからねえと思うが、本当にそうとしか言いようがないので仕方ない。

使者としての能力は優秀かつ性格も生真面目。その分色々悩みを抱える苦労人。
外見のモチーフは帝江だが、「帝としての渾沌」の伝承と同じ特徴も持っており、元々は感覚器も何もなかった。
ある人物の善意から「七つの竅」を開けられ「渾沌」としては一度死んでから人の姿を得た。





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最終更新:2024年02月24日 22:10

*1 自分が呼び出した式神に事故で頭部を食いちぎられてしまった。おまけに夜叉姫たちが麒麟丸と初対面する前座という扱い。