ボッシュ・ウェラー

登録日:2022/02/03 Thu 19:59:43
更新日:2024/04/27 Sat 00:25:32
所要時間:約 7 分で読めます





ボッシュ・ウェラーとは、漫画『機動戦士ガンダムF90』に登場するキャラクターである。
CV:中田譲治


概要

地球連邦軍に所属する老兵で、主人公デフ・スタリオンやその相棒シド・アンバーの上官として登場。階級は大尉。
ガンダムF90の実験部隊の指揮を取っている。
しかしその実験中に、シドがF90を強奪されてしまう。
以降、その強奪の犯人であるジオン軍残党、通称「オールズモビル」討伐の命が下り、それに同行する事となる。

シャアの反乱時から30年以上に亘って闘い続けているベテランで、GMⅢを駆りギラ・ドーガと戦ったり、ジェガン搭乗時はアクシズを押すなどの活躍していた。27年経過した今ではそれらの出来事が自慢となっている。
しかしベテラン然とした厳格な人間性ではない。部下のデフらがやらかした際は「オメーら!よう、また派手にやったようだな!」と違反を咎めず荒っぽくもフランクに声をかけ、前述の「自慢」を部下たちに何度も聞かせるなど好々爺の印象を覗かせる。
他方でF90のサイズの小ささには何処か違和感を抱いており、その事を開発の責任者であるジョブ・ジョンの前では隠し通せずに弱気な態度になってしまうなど、良くも悪くも親しみやすい性格にこの頃は見えていた。

案外お調子者な一面もあり、デフ達が命令違反を犯した際のこと、恐らく叱りに来たのだが、シドが発した「ギラ・ドーガは良い機体ですね!」という旨の発言で「ふっ!」とスイッチが入って笑顔で語りだし説教を忘れるほど。
この行動は「ギラ・ドーガはシャアの反乱時に戦い、苦戦した相手だから」という思いから。
ギラ・ドーガには当然未搭乗である、ましてや不倶戴天の敵モビルスーツを褒められ嬉しさを滲ませるあたり、余程あの戦争を誇りに思っているのだろう。

なお、伝説のパイロットであるアムロ・レイを「アムロさん」と気安く呼ぶ事から、それなりに親しい間柄だと推測される。

部下に対しては気さくに接するが、それ以外の人間には態度を変える。敵であるオールズモビルを過小評価した連邦士官に対し複雑な表情を浮かべ、不穏な空気を醸し出していたが…。



正体




私は欲しかったのだよ
“ガンダム”の力が!

ネオ・ジオン第二の反乱の時、ジェガンのコックピットから俺は見た…
νガンダムから放たれた光を!
そして思った、いつかこのガンダムの力を手にしてやろうと

これがガンダム……悪魔の力よ!!



その正体はF90強奪の真の黒幕

連邦軍に所属しながら、ジオン残党軍であるオールズモビルこと火星独立ジオン軍と内通していたのだ。

彼らの目的は火山の力を利用した質量兵器「オリンポスキャノン」による地球への直接攻撃。
曰く「数十年前から組まれていた地球進行計画の一環」との事だが、彼が個人として抱いていた目標は「ガンダムを手に入れること」だった。
ジオン軍の面々に強奪させたガンダムF90を火星独立ジオン軍仕様に改造し搭乗。
かつて仲間だったジェガン隊、シドのギラ・ドーガも容赦なく破壊、…曰く「ガンダム…悪魔の力」を振るう。

彼はアクシズ・ショックの際にνガンダムから放たれた光を目の当たりにし、「ガンダム」が持つ力に魅了されてしまう。
「いつか自分もガンダムを手に入れて操縦してみたい」
そんな幼稚で浅はかな夢の為に、仲間を裏切り多数の人間を犠牲にした事を、彼は露ほども気にかけていないだろう。

彼が寝返ったマーズジオン軍の秘密兵器オリンポスキャノンは発射と共に崩壊し、与えた損害はアドミラル・ティアンムを含めた一個艦隊のみ。40年間温め続けた計画としてはかなり御粗末な結果に終わってしまった。
にもかかわらず、彼はその事に一言も触れていない。あくまで火星のジオン軍は「ガンダムを手に入れるための手駒」に過ぎなかったのだろう。

それでもデフに対しては「そんな戦い方は教えてないがな」「身の安全は保証しよう」などの発言をするなど最後まで気にかけている。実際の戦闘でもコクピット以外の武器と頭部を執拗に狙った。
撃墜したシドの機体も頭や腕は損傷しているがコクピット周りはほぼ無傷だった事*1、捉えたナヴィは拘束するも乱暴な扱いはしていない事から、かつての教え子達に対する情を捨てきれていない節がある。
ただし同時に過小評価もしており、それまでのデフの活躍は、ガンダムF90に搭載されたコンピューター「A.R」 …アムロさんのデータが組み込まれたシステムに依る部分が大きいと考えていた模様。
しかし「悪魔の力」を手に入れたボッシュはその情すら捨て去り、最後にはデフに向かって「落ちろ!!ガンダム!!」と叫びながら上空から攻撃を仕掛けた。
この叫びは、自身を慕っていた「デフ」ではなく、相手を「ガンダム」そのものと錯覚してしまったためと言える。

対するデフは「(A.Rの力ではなく)これは俺の力だ!」と頭上に向けビームライフルを放つ。
その光景は皮肉にも、かつてアムロ・レイが行った「ラストシューティング」であった。*2


本編ではその後、大破したF90でデフが帰還するシーンで締めくくられたが、ボッシュの撃墜シーンは明確に描かれていない。つまり本編では生死不明なのだが、各種ゲーム作品や続編では死亡扱いとなっている。

Gジェネレーションは最期のシーンが明確に描写され、特にFでは「謎のキラキラ音を放つラストシューティング」によってコクピットが撃ち抜かれている。
その断末魔は「バカな…ガンダムが、俺が敗れるだと…」という、もはや自分もガンダムと認識しているような台詞となっている。
ちなみにマーズジオンには「自分の息子をジオンに参加させて『父さん』と呼ばれて『今は作戦行動中だ』と怒る駄目親」が登場するのだが、GジェネレーションFではそれはボッシュの役目となっている。
その為かボッシュに息子がいるという認識を持つファンも少なからずいる。年齢的にいても不自然ではないが…。

なお、奪われたF90も連邦軍に回収されており、更なる改修を受け「F90II」として復活した。


余談

2023年現在アニメ化されていないため、CVがあるのはゲーム作品のみ。
ボッシュの声を担当したのは中田譲治氏。特にGジェネレーションスピリッツの悪役演技は見事だった。中田氏は、乗機であるガンダムF90火星独立ジオン軍仕様がプレバン限定のマスターグレードとして初キット化の発表に反応していた。

笑えない事に、「古谷徹が演じたキャラの乗るガンダムが放った光に魅了され、ガンダムを追い求めるようになる」という部分は00』の刹那と一致してしまう

彼のセリフ(悪魔の力等)は度々ネタにされてきたが、『機動戦士ガンダムNT』にてイアゴ・ハーカナがアクシズ・ショックの際にその場に居合わせていたという設定が加えられ、劇中でもアムロとνガンダムが起こした奇跡に正の感情を向けたことを明かしていたため、対比されることも少なくなかった。






追記・修正は、ガンダムに乗りたいがために敵に内通したり味方を貶めてからお願いします。

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真の概要

彼は「ガンダムに乗りたいがために暴れまわった小物」「台詞だけが有名なおじさん」「ジオンと内通していたスパイ」とネタになる事はあれど、結局は『マイナーな作品に登場する敵ガンダムのパイロット』以外の何者でもなかった。

だが、約30年の時を経た2022年1月に状況は一変する。
ガンダムエース連載の漫画『機動戦士ガンダムF90 FastestFormula』にまさかの登場。
ちなみに「ウェラー」という名字もここで定められた。由来は雑誌『SDクラブ』に連載していた、未単行本化のため幻となっている『F90』の漫画に登場する同ポジションのキャラ「ウェラー大佐」からと思われる。
なおF90の主要登場人物のうちナヴィだけは未だに名字が設定されてない。ヒロインなのに…
しかもファンサービス的な脇役ではなく、アクシズを押し返そうとするνガンダム…アムロに最後まで付き従おうとした重要な仲間として描かれた。年齢は当時33歳でアムロより4つも年上ということが判明(つまりブライトさんと同い年。逆算すると『F90』時点で60歳となる)。
ちなみに「ウェラー大佐」の方も拾われており、F90FFではカナタに「大佐」と呼ばれるシーンがある。
ジオン軍残党の3世である彼女が「大佐」と呼ぶ意味は果たして…。

戦いは激化し、ロンド・ベルの「がんばりすぎ」で割れたアクシズが落ちる際、アムロはそれをガンダムで押すという無謀な行為を試みる。
そこに1機のジェガンが登場。そのパイロットはこう叫んだ。

「アムロさん…お供をさせてください…!そうでなければ、カラバからあなたについてきた甲斐という物がありません!!」

それはアムロに長年付き添ってきたボッシュのジェガンだった。
そう叫ぶボッシュに対し、アムロは頭を抱えながら返す。

ボッシュ…! そういう事はしなくていい…!

非常に冷淡な発言に思えるが、アムロはボッシュを嫌っているわけではなく、この時点ですでにアクシズを押す任務は独力で遂行する覚悟だった。つまり他者を巻き込みたくないがゆえの、拒絶の言葉となってしまったのだ。
「逆シャア」作中でも周りのジェガン・ジムⅢ、果ては武器を捨ててまで敵である筈のアムロの無茶に付き合うギラ・ドーガに対し「こんな事に付き合わなくても良い」と言い放っている。アクシズを止めるのは自分だけの役目と言わんがばかりに。

こうして長年アムロの部下だった事が唐突に判明し、解像度が大幅に上がったボッシュ。
ここで重要なのは彼がアムロについてきたのは「カラバから」ということ。

ボッシュが初めて出会った「カラバ時代のアムロ・レイ」は、一年戦争でガンダムを駆り暴れまくった「英雄」ではなく、宇宙に恐怖し、ナイーブな心情を見せる「人間」の姿であった。
つまり一年戦争当時のアムロを詳しく知らない状態*3で出会ったがゆえに、ボッシュはアムロを「自分たちと同じ人間」として認識し、尊敬していたのである。
例えるなら国民的大スターと話してみたら意外と俗っぽく、シンパシーを感じるようなものだろうか。
また、F90では別のシーンで「ジムⅢ」に乗ったと発言し、同じく別のシーンでは「ジェガン」に乗ったと語っている。カラバ時代からアムロについてきたのならこれは何の矛盾もなくなる。
カラバではジムⅢが主力機だったため、「ハマーン率いるネオ・ジオンの時はジムⅢ、シャアの反乱はジェガン」と考えれば違和感はない。
後にこの発言のからくりも判明することとなる。

至って普通の人間であり …ちょっと意味不明な操縦技術を持ってはいるものの精神的には自分たちとなんら変わりのない「アムロさん」。
そのアムロさんがアクシズを押し始めた。それを見たボッシュは、明らかに無謀なこの行いに付き合うと決めた。それこそアムロと共に死ぬ覚悟だったはず。
だがそんな死出の旅への同行は拒否されてしまう。お前にはまだやるべきことがあると言わんがばかりに……。
それでもボッシュは「アムロ大尉!」と追いすがる。ここでいつもの「さん」付けでなく階級で呼んでしまった理由は不明である。

そして奇跡は起こり、地球は守られた。
彼はνガンダムの光を見て「あれが…ガンダム」と涙を流しながら見つめていた。

だが尊敬するアムロは帰らなかった。

このため一連の出来事を「”英雄”アムロが先頭に立ち皆の心の力で成した奇跡」ではなく、「ガンダムという悪魔がアムロさんの命と引き換えに力を振るった」と認識したのだろう。
暖かな光を放つガンダムは、ボッシュの目には普通の人間に奇跡を起こさせた(・・・・・)「悪魔の力」としか映らなかった。
なおアムロがいなくなった後でも彼の事は「大尉」と呼んでおり、決して戦死による二階級特進後の「中佐」とは呼んでいない


さらにカラバからアムロと付き合いがあり、アムロがMIAになった後も地球連邦軍に所属していたということから、
などなど、彼の知りうる「ガンダムに関わった者たち」がことごとく不幸な結末を迎えてしまったこと、ガンダムが起こした悲劇、地球連邦政府の腐敗を目の当たりにしてきたがゆえに歪んでしまったのではと考察する読者もいる。

さらに言えば
など、ガンダムが原因でパイロットやその関係者の人生が狂ってしまったり、悪魔のようなガンダムは彼の(恐らく)知らない限りで散見される。
宇宙世紀だけでコレである。ボッシュが関わらない違う時空なので列挙はしないがアナザーガンダムを含めれば更に増える。

また、上記と比較した場合の影響は低いが
  • カラバに合流したケラウノスからエゥーゴに転属した少年に、力を振るった代償として脳に障害を残したガンダム
も存在し、程度の差はあれどガンダムが引き起こした悲劇や代償の積み重ねも彼を歪ませたという可能性もある。
蒼い死神に乗り続けながらも無事生還し、アムロたちと共にアクシズを押し返そうとしたパイロットがいる事を知っていたのだろうか。

そして最後に、
  • 次世代のジオンを担う少女がガンダムを駆ってもう一機のガンダムとともに奇跡を起こし、あの日のアムロ・レイと同じように目の前で消息を絶ったこと
は、彼のガンダムに対する絶望を更に深めたことは疑いない。
ましてや、その事件が連邦の手によってF90の部隊ごとなかったことにされたのであれば……連邦を完全に見限り、ガンダムへの妄執に完全に身を任せるのも仕方のないことだろう。

カラバ以前の経歴が現時点で不明であること、カラバが反連邦組織だったことから、オールズモビルと関係性を持ったのはカラバ時代にジオン残党勢力と何かしらの繋がりがあったのではないか*4という推測もある。
実際にF90FFではジオン関係の組織にいたとも取れる描写となっている。
そう考えるとシドがギラ・ドーガを褒めると喜ぶという特徴もまた見え方が違ってくる。あのドイツ頭は…とか言ってたが、それもまた彼の愛だろうか。

機動戦士ガンダム」から続く「アムロとシャアの戦い」は逆襲のシャアで終わったが、ボッシュの戦いは、ここからはじまるのである。
ボッシュショックの翌年2023年に始まった、ボッシュとは別の意味でガンダムを悪魔と評した男の物語の言葉を借りれば、ボッシュが悪魔から解放されるまで、残り27年


そう、F90のぽっと出ボスの小物おっさんに過ぎなかったボッシュの真の姿は、「アムロさん」という心から敬愛している人間に置いて逝かれてしまい、それを追い求めている悲しき男だったのだ…。


そんな彼に引導を渡したのが、アムロ・レイのパーソナルマークにしてニュータイプの象徴ともいえる可能性の獣「ユニコーン」ではなく、実在する現実の馬を意味する「スタリオン」の苗字を持つオールドタイプの若者だったのは、ある意味で幸いだったのかもしれない。
それはニュータイプ神話の終焉、そして新たなる物語の始まりを意味していたのだから。


ボッシュ専用ジムⅢ

2023年7月、突如彼専用機が生えてきた設定された。
福岡にある「GUNDAM SIDE-F」限定の企画「ACE PILOT LOG Memory of SIDE-F」のエース第一号に抜擢され、そこ専売のプラモデルとして登場した。
更に短いながらもムービーが作られたが、なんと暗礁空域に隠れているギラ・ドーガ相手に性能の劣るジムⅢで無双するというもの。
ガンダムF90にも装備されていた「腰ミサイル」をうまく使い、シールドを捨てて二刀流で敵を斬り伏せるその姿は正しくエースのそれである。
なおプラモデルとしては「地球連邦軍カラー」として発売されており、シールにボッシュのエンブレムがついているという形なので特にボッシュに興味がなくても購入の価値がある物となっている。

「月刊モビルマシーン」での活躍

上記ボッシュ専用ジムⅢに関連してかガンダムエース9月号にて彼の第一次ネオ・ジオン戦争時からの行動がある程度顕になった。
まず第一次ネオ・ジオン戦争にて既にこのジムⅢに乗っており、そこでガルスJを撃破している。
第二次ネオ・ジオン戦争でも乗っておりこの頃にはかなりガタが来ていたが、ボッシュの個人的コネクションによりパーツを手配し中身はある程度近代化改修されていたらしい。
ロンド・ベル自体がエースパイロットの集まりということもありこういった個人的な改造はある程度容認されていたとか。
しかし流石に旧式ということもあり、フィフス・ルナにおいてはギラ・ドーガを一機撃墜したが、ギュネイ・ガスの駆るヤクト・ドーガには敵わず撃破されてしまったようだ。
だが無事に脱出し、その後失った乗機に代わりジェガンを受領、そして運命のあの戦場へと続くこととなる。
ほぼ型落ちしていたジムⅢでジャイアントキリングを繰り返しているだけでなく、ニュータイプ専用機相手に負けはしたものの生き延びているなど、既にエースとしての活躍をしていた事となる。
また、フィフス・ルナ戦ではギュネイはほぼ戦場を動いておらず、そのギュネイと戦う=アムロに追従していた証拠でもあり、改めてボッシュの彼に対する思いが見え隠れしている。
と同時に機体の性能差はあれどそのようなパイロット相手に勝ち越すギュネイや、ボッシュを差し置いてリ・ガズィを貰えるケーラの株も上がった。

なお「月刊モビルマシーン」は宇宙世紀0140年頃に発行された雑誌という設定であるが、それによるとボッシュの半生を記事にした号もあるらしい。
それが公開されるかどうかは未だわからない。


余談

ボッシュはその後もF90FFには準レギュラーとして登場している。
だが彼が英雄を「アムロさん」と気さくに呼び、一方で悪魔の力とまで呼ぶ「ガンダム」にこだわる理由はほんの数コマ。その数コマだけで様々な宇宙世紀の出来事が大幅に補完された。
さらに(視聴者を含む)多くの人が「アムロ・レイが奇跡を起こした」と称賛しつつ目をそらしがちだった(アムロ)本人は帰らぬ人となった」という事実を正面から叩きつけたのである*5
ライバルであるシャアは、彼を慕っていたナナイが「魂が吸われていく」のを感じた事をはじめ、シャアの再来を求め傀儡を作り出すなど「もうシャアはいない」とどこか認識されていた。
にもかかわらず、アクシズ・ショックの際に同時にいなくなったアムロの事は今まで描写されず、語ることすらなかった
アムロの死亡を匂わせる描写は、かつての戦友であるブライトの部屋に写真が飾られていること、ラプラス戦争の最終局面で「彼らしき何か」が落とし物を拾いに来た「かつての赤い彗星」と「ある女性」と共に現れた程度であり、それこそF90でのA.R登場まで、彼の「死」には触れられていなかったのである。

また、言葉は悪いが「1stガンダムオマージュ」もしくは「1stファンへのサービス」が多かった「漫画版F90」の話にも深みが生まれる結果となった。
ボッシュがなぜあれほど腕利きであり、ガンダムに固執したかがはっきりとしたからだ。
特に漫画の主人公「デフ」には、「目がアムロ・レイに似ている」という設定がある。これがボッシュの過去と重なり合い「一旦は投降を促す」という最終決戦時の言動に重みが増した。
決戦の状況自体も「背中を追い続けた尊敬する人と同じ目を持つ人間が、尊敬する人を模したコンピューター(A.R)を載せた悪魔(ガンダム)を駆り敵となって勝負を挑んでくる」というボッシュにとって地獄のような景色へと様変わりした。
それはある種「アムロ・レイは完全に死んだ」事実を見せつけられているようにも見える。
彼は「ガンダムの力」ではなく「人の力」が放ったラストシューティング*6に貫かれる間際、一体何を思ったのだろうか…?
そしてデフは生存。ガンダムという悪魔に殺されることなく「奇跡」を起こしたのである。
この一件以降、UCにおいてガンダムパイロット達の戦死やMIAが減ったのは果たして偶然なのだろうか…。


漫画本編ではアクシズ・ショックを「悪魔(ガンダム)が起こした力」と認識していたが「アムロが起こした」とは一言も発していない
偶然か、それともその時点で設定されていたのかは不明だが、それが約30年経過した際に功を奏したのは事実である。

なお、この設定が付与されたことで奪われた火星独立ジオンのガンダムにも意味が増すことになった。
今までこそは「独特なデザイン」「ジオンらしさが出ている」という評価が多かったのだがよく見てみると

  • 黄色のカメラアイ→RXー78
  • アンテナの廃止されたガンダムフェイス→リ・ガズィ
  • 右肩にのみ配置されたビームサーベル→νガンダム
  • 左右非対称のショルダーアーマー→ディジェ
  • 赤と白のカラーリング→Zプラス、リック・ディジェ

と驚く程なまでにアムロがかつて乗った機体の特徴と一致している。
明言はされていないので真相は不明だが、これほど偶然が一致することもあるのだろうか…?

『F90FF』には、ボッシュと同じく「アムロ・レイ」を追い求めるジョブ・ジョンが登場している。
しかし彼は一年戦争からアムロを知っており、当時のアムロを再現すべく動いている傾向がある。
ジョブとボッシュ、アムロの事が大好きな二人であるが、その目指す先は別の所にあるだろう。
ちなみに『F90』ではボッシュとジョブは初対面と思われる様子だったが、『F90FF』では互いに繋がりを持っているという齟齬が発生しているが…?

ボッシュの死から16年後を描いた『機動戦士クロスボーン・ガンダム スカルハート』においてアムロの戦闘データを再現したバイオ脳を搭載する無人MS「アマクサ」が登場した。
これは言い換えれば、「ガンダムではなく、アムロ・レイこそが悪魔の力」あるいは「アムロ・レイこそがガンダムを悪魔たらしめる最大の要因」と捉えたと考えられる行動である。
アムロを純粋な力と見なし、彼への敬意などは何一つ持っていないという、ボッシュの心を踏み躙るような状況になっている。*7
ちなみにアマクサに搭載されたバイオ脳は、機能停止直前にアムロが未搭乗時のガンダムが起こした奇跡も再現したため、その意味でもボッシュを否定してしまった。


これまで初代〜逆シャアとF91以降の間には、同じ宇宙世紀にもかかわらず深い「溝」のようなものが見受けられた。各種外伝でも「シャアの反乱に参加した人物」「ジオンという名前」「ジェガン」「旧世代モビルスーツ*8及びそれらの残骸」は登場するが、名称や設定、姿だけであり明確な繋がりはなかった。
しかし『機動戦士ガンダムUC』の展開を皮切りに、F91以降のストーリーとも繋がる描写が数多く見受けられる。そしてここに「カラバのボッシュ」のみならず、『フォーミュラー戦記0122』『シルエットフォーミュラ』『クライマックスUC』というF91関連作品の人物をはめ込んだおかげで「溝」が埋まり、「アムロとシャアの退場」で一旦ピリオドとなった宇宙世紀が依然終わらない事態となってしまった。


上記で触れた刹那との共通点、同じくガンダムの光に魅了され追い求めた者でありながら、なぜボッシュは道を誤った末に火星で散り、刹那は正しくガンダムを超えることが出来たのか。ガンダムの光に絶望し悪魔を見出したボッシュと、ガンダムの光に救いを得て神を見出した刹那では、ガンダムを追い求めた始まりから何もかもが正反対だったためと言えるだろう。


ボッシュの「アムロにカラバからついてきた」というたった数行のセリフは「ガンダムというコンテンツ」でありながら「隔離された世界」であるCCA界隈とF91界隈のピースを違和感なく見事にはめこんだ。この事実は大反響を呼び、「ボッシュショック」と呼ばれ称賛されることとなる。
あまりにも衝撃的過ぎたのでカラバやロンド・ベルの人員が集まってたりMSの乱戦するシーンで「この辺にボッシュ」と画面外を矢印で示すジョークがまかり通っている。…というか、作中で原作のこの辺にボッシュがいましたを本当にやっている。
(例えば機動戦士Zガンダムにてアムロとシャアが会話するシーンを廊下の死角から見ていたことになってたり…。)
そうでなくても「試作機などではなく、連邦軍系の量産機にずっと乗って戦い抜いたベテランパイロット」というのは非常に貴重*9である。
更に言うなら「ロンド・ベル」「モビルスーツ隊隊長アムロ・レイの部下」としてのネームドキャラも彼くらいであり、「隊長アムロ・レイ」としての描写はまだ多くないために、そういう意味での活躍も期待されている。
ちなみにこのボッシュ、下手をすればブライトの次くらいにずっとアムロと一緒にいる時期が長い可能性がある*10

なお現在のところボッシュが各種ゲーム作品に登場したのはボッシュショック前のみ。その為に「憧れのアムロさん」と戦わせても特殊台詞などは何もない。
ということは今後機動戦士ガンダム Extreme vs.といった他作品のガンダムキャラによる掛け合いがあるゲーム作品でも彼の活躍の余地があるだろう。
もし参戦すれば、アムロ本人や、ライバルであるシャア、νと同じサイコフレームの光を放つガンダム達や、ヒイロ・ユイキオ・アスノといった様々な事情でガンダムに乗る事を宿命付けられたキャラクター達などに、彼はどう反応するのか気になるところだろう。それとコイツ

ちなみに「F90FF」第6巻のとらのあな特典ペーパーでは、今ノ夜きよし先生によるF90時代のボッシュ(とGMⅢ)が描かれている。コミックスの最後にはおまけとしてボッシュに関する対談が掲載されている。ボッシュファンならぜひとらのあなで購入しよう!





wiki籠りさん…追記のお供をさせてください…
そうでなければ、アニヲタの集いからあなたの項目を編集してきた甲斐という物がありません!!


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最終更新:2024年04月27日 00:25

*1 シドも大した怪我は見受けられない。

*2 ちなみに、このラストシューティングも完全再現というわけでもない。アムロのラストシューティングはガンダムを自動操縦にしての囮であり決着は生身での白兵戦である。対してF90のラストシューティングはデフの言う通り、コンピューターの力を借りずパイロットの手で実行している。

*3 戦場で敵として対峙したり、そうでなくとも噂としては聞いていた可能性は高いが「アムロという人間の内面」を知る由は無かっただろう

*4 あるいはカラバ自体、エゥーゴ同様に連邦軍内部の反ティターンズ派だけでなく、ジオン残党や反ティターンズのアースノイドや武装組織の大所帯という設定から、ボッシュ自体がクワトロ同様「偽名を使い連邦に潜り込み、戦後はそのまま連邦に在籍した元ジオン兵」だった可能性及び関係はグリプス戦役前からというのも一応あり得なくはない。

*5 さらには上述の通り、ガンダムが原因で起こった悲劇の数々を改めてファンや読者に再認知させてる。

*6 なお、オリジナルのラストシューティングはコンピューターの自動操縦による「ガンダムの手で」行われた物であるため、完全に「人の手で」行われたラストシューティングはゲーム作品の演出による物を除けばこれが最初である。

*7 A.Rは疑似人格こそアムロに似せているが、無から構築されたに等しく、アムロとの繋がりはむしろ希薄であり、まずパイロットありきで操縦補助に留まる。一方のバイオ脳は、アムロ本人の遺したデータを直接使用しそれ自体が思考し戦闘を行う。まさにアムロの存在を人工的に代替しようとした代物と言える

*8 特に宇宙戦国時代ではそれらが作劇の都合もあってか頻繁に登場する。

*9 他には「星月の欠片」のドゥーエ・イスナーン等がいる。

*10 アムロと同じ部隊で一年戦争から戦っている仲間達は、死別や部隊分け、除隊などの影響で離れており、結果的にブライトが一番長い付き合いである…が、彼はZ、ZZ時にはアムロと離れていた。その間カラバにいたアムロにボッシュがついていたとなれば一緒に過ごした「時間」はボッシュのほうが長くなる。