あかね噺

登録日:2022/06/12 Sun 18:49:00
更新日:2024/03/11 Mon 20:35:32
所要時間:約 8 分で読めます




あの日 落語家阿良川志ん太は死んだ



でも 終わりじゃない

むしろ あの日から始まったんだ

朱音(あたし)(ものがたり)



『あかね(ばなし)とは、週刊少年ジャンプで2022年11号から連載されている漫画作品である。
原作は末永裕樹、作画馬上鷹将。

【概要】

題材は落語。連載開始当時は700作品を軽く超えるジャンプ本誌の連載漫画で落語をメイン題材として取り扱ったのは地味に初である。
原作の末永と作画の馬上は漫才漫画『タタラシドー』の読み切りを経てからこの作品を連載させた。
ちなみに末永は初連載となるが、馬上にとってはサッカー漫画『オレゴラッソ』(2016年52号- 2017年13号)以来の2度目の連載となる。

落語部分の監修は林家けい木。その縁で彼のSNSでは時折本作の宣伝がされている。
連載開始から話を重ねるにつれ、笑福亭鉄瓶、三遊亭王楽、ウマおじさん月亭八光等様々な落語家達が反応しており、それぞれYouTubeチャンネルやSNSで感想を語り合うなど落語界隈でも好意的に触れており、本業の落語家が本作の魅力を語るというイベントまで開催されるほど。
なお、落語好きとしても知られているONE PIECE作者尾田栄一郎からも単行本1巻の帯にて「ハイ好き!」とコメントを寄せている。

1巻の発売に合わせ、ジャンプYouTubeチャンネルにて1話のボイスコミックが公開されたが、主人公親子を担当したのが山口勝平&山口茜というリアル親子で、主人公の朱音役を茜が演じるということが話題を呼んだ。
ちなみに2人とも落語を嗜んでおり、特にボイスコミック内では山口勝平の演じる『芝浜』を聴くことができる。
なお、アフタートークによれば尾田栄一郎が山口親子にあかね噺を読むよう薦めたそうである。

【あらすじ】

主人公、桜咲朱音は二ツ目の落語家である父・徹の影響で幼い頃から落語に親しんできた。
徹はなかなか芽が出ない今の状況から脱却しようと真打の昇進試験を受けるが、審査委員長・阿良川 一生から他の参加者もろとも破門を宣告され、落語家の道を閉ざされてしまう。

しかし朱音は父を破門させた一生や、周囲を見返すために落語家となり阿良川一門の真打を目指すのであった。

【登場人物】

桜咲家

  • 阿良川 あかね/桜咲 朱音(あらかわ あかね/おうさき あかね)
階級:見習い→前座
17歳の現役女子高生。父親の影響で落語に親しんできたと同時に巧みな話術を身につける。自身にクレームをつけてきたモンスターペアレントを言い負かしたことも。
落語家としての父親が好きだったが、破門後に営業マンに転職した際、周囲の人から「よかったね」と褒められたことを屈辱的に感じ、父親の無念を晴らし一生や周囲を見返す為、落語家を目指すようになった。
志ぐまの下で6年もの間密かに稽古を付けてもらっており、落語の技量を高めていった。
強い信念を持っており、担任の教師から大学進学を勧められても高校卒業後に進学せず弟子入りすると貫き通した。
一生に恨みを抱いており、可楽杯の審査委員長が一生だと知った瞬間、破門させた理由を突き止めるために可楽杯参加を決める。

  • 阿良川 志ん太/桜咲 徹(あらかわ しんた/おうさき とおる)
階級:二ツ目→破門(1話)
朱音の父親。阿良川 志ぐまの一番弟子として13年もの間活動し続けてきたが、パッとせず家計面ではむしろ真幸に助けて貰っているなどいつもギリギリの生活を続けてきた。
一家の暮らしを安定させるため、妻や「父親がヒモ」だとクラスメイトに馬鹿にされた朱音にこれ以上迷惑を掛けたくないために一念発起し真打昇進試験に参加。「芝浜」を披露するが、最後の講評で一生に破門を通告されたことにより阿良川一門より破門されてしまう。
その際に他の一門に入りなおして落語家を続けることもできたのだが*1落語家を廃業。
その後コンクリートを売る会社の営業マンに転職し、皮肉にも落語家時代よりも安定した生活を送るようになってしまった。
2話以降、長らく回想シーンにしか登場していなかった。

  • 桜咲 真幸(おうさき まさき)
朱音の母親で美容師。
全く芽が出ず不安定な生活をしている夫に対しては一切辞めさせようとはせず、むしろ密かに応援していた。
朱音が落語家になると言い出した時は、先述の破門が頭に過り反対しようと考えかけていたが、例え何度反対しようとも決して落語家になることを諦めないだろうと朱音の芯の強さを認めた為、彼女の入門を認める。

阿良川一門

作中の落語界の中で最も幅を利かせている集団。破門騒動後、話題を集め破竹の勢いで勢力を拡大させていった。
理由は明らかではないが、一生一門内では志ぐま一門(または、志ぐま本人)の話はタブーとされている。

志ぐま一門

  • 阿良川 志ぐま(あらかわ しぐま)
階級:真打
阿良川一門のナンバー2で一生の弟弟子に当たる。徹、朱音の師匠。
人情噺が得意で、泣きの志ぐまの異名を持つ。
破門騒動後、徹を守れなかったことを深く後悔しており、弟子を取る資格はないと考えたためそれ以降弟子を取らなかったが、朱音の直談判により彼女の想いを知り密かに稽古を6年も付け、その後入門を認める。

  • 阿良川 ぐりこ(あらかわ ぐりこ)
階級:二ツ目
朱音が入門を認められるまでは志ぐまの最後の弟子であった。
志ぐまが若い女の子と付きっきりになっているという噂を突き止めるために探った結果、朱音の存在を初めて知る。
朱音の兄弟子に当たるはずなのだが、何故か対等な関係になってしまってる。
兄弟子のまいけるからは「ぐりりん」、落語喫茶の女主人吉乃からは「ぐりちゃん」と呼ばれている。

  • 阿良川 亨二(あらかわ きょうじ)
階級:二ツ目
坊主頭が特徴。
生真面目で礼儀作法や基本を重んじる堅物な性格。落語に熱中するあまり学業を疎かにしている朱音を叱りつけた。
故にぐりこからは「志ぐま一門のお奉行様」と呼ばれており、志ぐまの弟子の中では実質トップのような存在である。
師匠の助言から真面目さを貫くスタイルを持っており、その真面目さが結果的に観客達を笑わせることとなっている。
朱音に居酒屋の短期アルバイトを命じ、彼女に気配りを身につけさせた。

  • 阿良川 こぐま(あらかわ こぐま)
階級:二ツ目
メガネをかけており、大人しい性格の青年。
しかし落語をする時はメガネを外し、髪型も整え、普段のスタイルとは大きなギャップを見せる。
亨二の兄弟子で、年齢も芸歴も上だが、普段の見た目と性格のせいで全く見えないと朱音に驚かれた。
なんと元東大生であり、偏差値70超の明晰な頭脳の持ち主。
様々な噺に対し時代背景、風俗、舞台になった場所など関連する文献を事細かく研究していき、それを落語に活かして説得力を持たせる理論派であり、故にぐりこからは「志ぐま一門の寺子屋」と呼ばれている。
これからプロに弟子入りが決まっている身でありながら、アマチュア落語の大会である可楽杯に出ようとする朱音に対し辛辣な言葉を浴びせたが審査委員長が一生だと知ると、彼もまた徹(慕っていた兄弟子)を破門にさせられた恨みからか朱音に協力するようになり、彼女に知識を身につけさせた。

  • 阿良川 まいける(あらかわ まいける)
階級:二ツ目
ロン毛が特徴的で、朱音の面倒を見ると自分に惚れてしまうからという理由で面倒を見るのを断るなどとにかくチャラい性格をしている。

一生一門

  • 阿良川 一生(あらかわ いっしょう)
階級:真打
阿良川 一門のトップ。
徹を含む真打昇進試験に参加した5名の落語家を破門させた全ての元凶。
当然のことながら世間から批判が飛び交ったものの、彼の落語の動画を見たその批判者の多くが掌を返して彼を支持することになった事で、皮肉にも一門の勢力を拡大させることとなっていった。
しかしながら朱音、こぐまなどから破門騒動の件で恨みを持たれている。
冷徹な一面ばかりが目立つが、様々な娯楽が溢れかえる世の中で落語が衰退していくということに危機感を持っており、その火を絶やさないためにも若い世代への落語の訴求に特に力を入れており、そのために可楽杯の参加枠を拡げるなど改革を行う柔軟性も持ち合わせている。
そのキャラクターから立川談志がモデルとされている。

  • 阿良川 魁生(あらかわ かいせい)
階級:二ツ目
一生の弟子の中では、先述の真打昇進試験以降一生が二ツ目に上げた唯一の人物。
顔の整った美男子といったビジュアルで、色気を持ち味としており、三枚目の役であろうと女形であろうと見事に演じ切ってみせる。
交通渋滞に巻き込まれた経緯により、自分の代役として「まんじゅうこわい」を披露した朱音の落語を偶然見て興味を抱き、阿良川 一生の弟子にならないかと提案したが、拒否された。
その後可楽杯の審査員を務めることになる。


用語解説

階級(前座・二つ目・真打)

本項では実際の状況についても適宜解説する。
江戸落語における階級制度は全部で3種類あり、前座→二ツ目→真打の順で位が高くなっていく。
芸歴や技能に応じて昇進していくシステムとなっている。
前座は落語家になるための修行期間として、日々雑務や稽古に追われながらも落語家としての基礎を作る。
二ツ目は基本的に入門3年~5年目で師匠などの判断から昇進することができる。落語家として認められた者が自身の芸を鍛える期間で、羽織や袴の着用を許され、自分で仕事を取ってきてよいのもここから。人によってはここからテレビ出演などメディアで顔を売る人も現れる。
真打は落語界の最高位であり、多くの落語家がそこを目指している。基本的に入門10年ほどで師匠などの判断から昇進することができる。敬称として"師匠"と呼ばれることが許され、また全ての階級の中で唯一弟子を取ることが出来る。

ちなみに朱音の見習いというのは、まだ入門していないため便宜上そう設定されている。
なお作中では志ぐまが

真打-ヒット作家
二ツ目-連載作家
前座-新人作家
見習い-デビュー前
と、落語の階級を漫画家に例えるとどうなるか分かりやすく解説している。
第1話の描写を見た限りでは、真打にならないと落語だけで生活していくのは相当厳しいようだ。

現実の落語家における真打制度は大きく2種類あり、年功序列で真打に昇格するタイプと、弟子を追い抜いて昇進する「抜擢真打」と呼ばれるタイプがある。
後者については春風亭小朝や柳家喬太郎、林家たい平桂宮治などが存在し、一度は名前を聞いたこともある人も多いだろう。実力があるからこそ抜擢真打となり売れっ子になるのである。
本作で登場した「真打昇進試験」は落語立川流に実在する昇進制度だが、家元である談志の没後以降昇進についてはそれぞれの師匠に任されているとされ、試験を行わない場合があるとか。
なお、真打昇進試験についてはかつて落語協会にも存在したのだが、制度の運営が上手く行かず1987年に消滅した。なぜ落語協会で昇進試験を導入したかなど、一連の経緯については1978年に起きた「落語協会分裂騒動」に端を発するもので、詳細はそちらを検索していただきたい。
ちなみに現実の落語家には昇進して何年たっても売れっ子にならない真打というのもごまんといる厳しい世界。いわゆる寄席*2に呼ばれず、仕事は地方ホールの営業ばかり…という人も少なくない。


可楽杯

20年もの歴史を持つ、アマチュア落語家達が競い合う大会。
元は18歳以上の大学短大専門学生限定だったが、一生が審査委員長を務めることになった20周年では彼の意向により高校生以上と枠が広がることになり、結果的に朱音も参加できるようになった。
なお落語を嗜む学生だけでなく、一生のお墨付きで参加することとなった役者・声優陣も少数ながら存在している。

あかねはすでにプロに入門した身であるため、このような大会に出ることは不義理とされる。
そのため、志ぐまからは「寿限無」のみで勝ち進むように条件を付けられている*3


追記・修正は落語家の道を目指す方にお願いします。

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最終更新:2024年03月11日 20:35

*1 実力が極端に低いわけではないので他の一門の師匠から多くの声がかかった

*2 浅草演芸ホール・新宿末廣亭・池袋演芸場・鈴本演芸場を指す。

*3 通常の寄席での演目であれば特に問題はないが、可楽杯は客が全て落語にある程度知識があるので寿限無は当然知っており、ウケを取ることが難しい。