女神官(ゴブリンスレイヤー)

登録日:2022/07/15 (金) 17:39:27
更新日:2024/02/17 Sat 22:37:44
所要時間:約 10 分で読めます






一緒に行きます。放っておけませんから、あなた。



CV:小倉唯
AA版配役:女僧侶(ドラゴンクエストⅢ)ホイミスライムではない
1巻登場時点で15歳。
別称や役職で言われるこの作品の例に漏れず、作中表記は「女神官」。


●目次


◆概要


GA文庫の小説『ゴブリンスレイヤー』のヒロインの一人。
彼女視点で語られる話も時折あるため、事実上の副主人公でもある。

神官らしく武器は錫杖で、神官衣の下にはゴブリンスレイヤーが褒めてくれた工夫である鎖帷子を着込んでいる。*1

優しく慈しみ深い少女で、容姿は金長髪で青い目の小動物みたいな可愛らしさの15歳。
華奢で小柄な体格をしており、金床よりは遥かにマシだが背も胸もそこまで大きい方ではなく、
また、劇中では17歳まで成長しているが、身体的にはほとんど変わっていない。
牛飼娘等には『可愛らしい』と称されているが、本人は自身の容姿にコンプレックスを抱いており、
グラマラスな牛飼娘や、肉体的にも精神的にも大人の女性である受付嬢や魔女を見ては、こんな風になりたいと羨望を抱いている。

ゴブリンスレイヤーにとっては初めての固定パーティメンバーであり、
冒険者としては弟子のような立ち位置の少女だが、社交性や傷病者の手当・保護という点では彼よりも優れており、
彼女が冒険者として成長していくと共に、互いに足りない部分を補い合える良き相棒になっていく。
なお、付き合いが長くなるにつれて性格なども把握され、時には笑顔でバッサリと反論を切り捨てられ、押し切られる場面も。

聖職者らしく、普段は慎み深く丁寧な言動で振る舞っており、生活態度も自律的。
また、困ったり苦しむ人を見れば一も二もなく助けに向かう献身的な人物で、
自分の服等が血や汚液等で汚れることも厭わず駆け寄り、出来る限り命を助けようとするだけでなく、
既に事切れてしまっていても、遺体の瞼を閉じさせてやり、冥福を祈るなど、他者に寄り添い、接する人格者。
ゴブリン退治に向かえば、ゴブリン共に虜囚とされて凌辱・拷問を受け、同じ女性として直視に耐えないような有様の被害者を目にすることも多いが、
ショックを受けつつも手当を行い、亡くなっていれば故人がせめて安らかに眠れるよう祈る等、気丈に振る舞っている。
その性格から、ゴブリンスレイヤーのパーティでは最も人当たりが良く、交渉事を行う際にその人柄が役立つこともある他、
同期・先輩・後輩問わず同業者からの受けもよく、こと社交性の面では師匠(?)のゴブリンスレイヤーを軽く凌駕している。

なお、神殿で生まれ育った孤児であり、血が繋がった親族は彼女にはいないが、
保護者代わりだった神官長や姉のように慕う先輩シスターなどもいるため、肉親がいないことを気に病む描写はあまりない。
その育ちから、清貧を旨とする聖職者としての生き方が根付いており、冒険がない日でも規則正しい生活を送っている。

ゴブリンスレイヤーのパーティでは唯一銀等級ではなく、巻が進むにつれて駆け出しと同義の白磁等級から昇格していく姿も描かれるが、
等級が上がると共に彼女も着実に成長しているものの、ベテラン冒険者に囲まれていることもあり、自己評価は低め。
彼女がいなければ詰んでいたという状況も少なくなく、ゴブリンスレイヤーたちからは(人格も含めて)高く評価されているのだが、
当人は「冒険者として、神官として、自分はちゃんとできているのだろうか」と思い悩む姿が時折描かれている。
あることで荒れた時があり、その時は碌に話せない状態まで泥酔した。(あんな噂を流されれば荒れて当然ではあるが)

駆け出しの頃に助けてもらい、パーティを組んでからも先輩として指導してくれるゴブリンスレイヤーを冒険者として強く慕っており、
他の同業者からは賛否両論ある彼を含むところなく尊敬しているため、銀等級の話題で「ゴブリンスレイヤーも槍使いや重戦士に見劣りしない」と笑顔で話し、
普段の「何か変なの」しか知らない話し相手を内心困惑させたこともある。
一方、ゴブリンスレイヤーの人としてデリカシーのない言動やあまりの朴念仁っぷりに呆れ、「仕方がない人」と嘆息していることも多いが、
「放っておけない」という思いは最初に組んだ時から変わらず、彼女なりに彼の支えになろうとしている。

異性としても彼を意識しているような様子が見られる*2が、明確に好意を自覚まではしていないらしく、
年上の友人であり、ゴブリンスレイヤーに明確な好意を寄せている牛飼娘や受付嬢の存在に嫉妬したりする様子は見られないが、
当の彼女たちからは明確に恋のライバルと見なされており、一緒に冒険にいけるという点を密かに羨ましがられたりしている。
ただ、ある村で出会った気立ての良い薬師の娘について、鉱人道士から「ああいう娘を嫁に貰ったらどうだ」とゴブリンスレイヤーがからかわれた際、
自分でも分からない衝動に駆られて思わず制止の声を挙げ、当のゴブリンスレイヤーを含めた仲間たちを面食らわせたり、
自分の憧れの人でもある剣の乙女がゴブリンスレイヤーに思慕していることに気付いた上で、そのことに関してどこか複雑な様子を見せている描写が存在する。

ちなみに、その剣の乙女の『蘇生』*3の奇跡行使に必要な「処女同衾」のためにゴブスレさんと同衾させられたことから分かる通り処女である*4
そのため、恋愛事はともかく、性行為やそれを連想させる単語については顔を真っ赤にしたり、しどろもどろになってしまうこともしばしば。
なお、彼女の憧れの人であり、ゴブリンスレイヤーに想いを寄せる剣の乙女からは、女神官が『処女』…つまり清らかな身体であることと、
純情で初心な言動と、それに違和感がないあどけなさが残る容姿について劣等感を持たれている節もある。


◆冒険者として


冒険者になったばかりの白磁等級の神官が『小癒』と『聖光』という2つの奇跡を持つのは非凡であり、実力・才能は(潜在能力も含めて)かなり高い。

冒険者として登録したての頃から、一日に使える奇跡は三回(行動不能になるリスクなどを度外視すれば、無理して四回)で、
ゴブリンスレイヤーもそれを聞いた際「想像していたよりずっとマシだ」とその能力を評している*5
さらに、使える奇跡の種類も豊富で、当初は2つ、途中から更に増えて4つ、現在では6種類もの奇跡を使えるに至った。
鋼鉄等級に昇格した後は三回目直後に休憩を取れば使用回数が回復し、一日に最大六回も行使できるまで成長。

銀等級冒険者の魔女ですら、白磁で4種類も使えれば才能があると断言しており、彼女が扱う奇跡の効力も申し分ない。
特に彼女が最初から扱う聖壁(プロテクション)は白磁の時点で、(二重掛けをした上、一度で割れてしまったが)オーガのファイアボールを防ぐほどの力を発揮した。

翻って神官という役職だからか、身体能力は乏しい。
元々華奢な少女であったこともあって直接戦闘に持ち込まれるとゴブリン相手でも厳しいレベルだったが、
ゴブリンスレイヤーの「使えるものは何でも使う」「日々の研鑽は怠らない」「知識は貪欲に吸収し、戦闘に応用する」やり方を実践し、
奉納の舞いの経験を活かしてゴブリンの接近を阻むくらいの杖捌きを習得し、師匠(?)直伝のスリングを用いた投擲術も習得して遠距離攻撃手段を得るなど、
彼女なりに身体能力の低さを補おうとしていることが見て取れる。
彼女の性格を思えばある程度自衛できるようになりたいと考えるのは当然の帰結かもしれないが、神官がここまで鍛えられたのは見事と言えるだろう。

また、上述のゴブリンスレイヤーのやり方で冒険者としての強かさや咄嗟の判断力も養われており、
冒険者としても、神官としても着実に実力を付けていっている。

尤も、前衛に比べると身体能力で劣っていることは変わらない。
すぐさま脱出しないといけない場面では、ゴブリンスレイヤーが文字通り抱えて走り出すことがしばしば。
まさしく『荷物』になっていることもあって当初は頬を染めて抗議していたが、ゴブリンスレイヤーなりの厚意に基づく行動であるためか、
徐々に慣れてしまったからか、抱えられても「いえ…もう…何も言いませんけども…」と大人しく運ばれるようになった。


神殿で育ったからか自頭も良く、ゴブリンスレイヤーに言われたことはもちろん、
槍使いから伝授された砂漠の知識をメモも取らずに完璧に暗記するなど知識の飲み込みも良い。
これに対して共にアドバイスを送っていた魔女が「メモを取らなくても良いの?」と当然の疑問を呈したが、
彼女は当たり前のように「はい、誰かにメモを奪われたら大変ですから」と返した*6
知能については記憶力だけでなく、戦略においてもそれが活かされる場面が度々あり、
例えば雪男との一騎打ち*7で自らが提案したルールに設けた抜け道*8を利用して勝利を収め、
見習い聖女に「アレってルール違反じゃないの?」と聞かれても「相手の身体には触れてませんよ?(ルールは遵守してますよ?)」と平然と返している*9
戦略もそうだが、やり方を咎められても平然と「ルールは破っていない」と返せるメンタルもまさに二代目ゴブリンスレイヤーといえる

しかし、女神官を妹のように可愛がっている妖精弓手には、師匠譲りのそういったところを見る度に「ゴブリンスレイヤーに似てきた」と辟易され、
槍使いにも「こんな子がアレ(ゴブスレ)の影響を受けるとは…」と嘆かれている。


昇格速度も早いようで、冒険者になった数ヶ月でオーガを倒した功績から黒曜等級、1年で鋼鉄等級(後述するがここで少し挫折があった)、
3年目には中堅である青玉等級に至り、現在は翠玉への昇級の話も出ている。
才気溢れる若手で優秀な棍棒剣士と至高神の聖女も彼女の経験と成長、昇進の速さには舌を巻き、
追いつけないまでも、せめて距離を離されないようにしようと必死に成る程である。

また等級が上がってからは、ゴブリンスレイヤーがいない四人のパーティや、同期である棍棒剣士と至高神の聖女、魔女、女騎士、妖精弓手の女だけのパーティ等、
様々な構成で冒険に臨んでいるが、彼女は白磁の時から今に至るまで他者の足を引っ張ったことは少ない。
ゴブリンチャンピオンにゴブリンスレイヤーが痛打を喰らったときは経験の乏しさから呆然自失し、戦局を悪化させてしまったが、
大きなものはそのくらいであり、それ以上に最終的には彼女の奇跡を切り札にして、戦局を切り抜けることが数多くある。
特にゴブリンスレイヤーがいない時は、銀等級の3人が率先して意見を聞いたり、彼女もゴブリンスレイヤーから学んだ策を披露しているので、司令塔や参謀としての資質も高い様子。


総じて天才、傑物の部類に入る才女である。

◆奇跡(魔法)


習得する奇跡は任意で選べる訳では無いらしく、信仰する女神から扱う資格があると認められた奇跡が与えられるようである。
その為か、「扱う資格が無い」と看做されれば使用できなくなるらしい。

ゴブリンスレイヤーはゴブリン退治のために女神官に奇跡の使用を指示することも多く、
本来人を助けるために扱うべき奇跡をこのような用い方をすれば「扱う資格なし」と断じられてもおかしくないが、
彼がゴブリンを退治することで、ゴブリン共に狙われた村・町の人間たちはもちろん、
虜囚とされて責め苦を受けていた女性も救われることになる…つまりは「間接的に人を助けている」ためか、
女神官の奇跡の嘆願に地母神が応えなかったことはなく、後述の『浄化』で使用用途について警告を受けたきりである。

女神官が扱える奇跡の種類も、彼女が敬虔な信徒故か、それとも高い才覚を持つが故か、はたまたその両方か、
基本的には話が進むにつれて順調に新たな奇跡を習得していっており、冒険者としても着実に実力を付けている。


小癒(ヒール)
「いと慈悲深き地母神よ、どうかこの者の傷に、御手をお触れください」
彼女が最初から使える奇跡で、まさに女神官を象徴する魔法……なのだが、使用頻度はそんなに多くない。
というのも、基本的にゴブリン退治では絶え間なくゴブリンが襲ってくるので、悠長にこの奇跡を嘆願する時間がないのがまず一点。
そして、ゴブリンスレイヤーは基本的に回復用・解毒用・気付け用のポーションを人数分(+予備)、毎回持ち込んでいるため、
単に回復するためならば、貴重な奇跡の使用回数を費やすよりもポーションを使った方がコスパがいいというのが二点目。
トドメに、女神官は聖壁や聖光など、アイテムでは代用できない有用な奇跡を嘆願(行使)出来るため、
アイテムで代用できる小癒をわざわざそれらの奇跡の使用回数を減らしてまで使わせる意味がないのが三点目である。
ただ、小癒の回復効果自体はポーションよりも高いため、冒険が終わった後、余力があれば他のパーティメンバーを治療するために使ったり、
ゴブリンに散々弄び、痛めつけられてポーションでは間に合わないほど重体に陥った虜囚を治癒する目的で使うこともある。

+ 彼女が神の奇跡に目覚めた契機
彼女がこの奇跡を初めて使用したのは、本編開始から5年前。
街の入り口で衰弱していた見窄らしい鎧姿の冒険者が、地母神の神殿に担ぎ込まれたのが切っ掛け。
それを見た彼女は神殿の人間に掛け合うが、動ける人員は今まさに岩喰怪虫(ロックイーター)退治から帰還した大勢の冒険者たちの治療で手が回らず、とても彼なんかに構っている余裕などなかった。
それでも彼女は彼のために何かしてあげたいと強く願うと、小さな信徒の切なる願いに応えた神の御手は、人知れずその冒険者の傷を癒したのであった。

少女に救われた冒険者───後にゴブリンスレイヤーと呼ばれることになる少年とは5年後、今度は同じ冒険者として再び出会うこととなる。

聖光(ホーリーライト)
「いと慈悲深き地母神よ、闇に迷えるわたしどもに、聖なる光をお恵みください」
文字通り杖の先に光を灯す術。
ゴブリンは明かりが付いている方向に冒険者がいるという共通認識を持つので、これを利用して暗闇の中でゴブリンを誘き出し、
そこで罠に掛けて一網打尽にするという用途で用いられることもある他、
この奇跡で発生する光の光量は、直視すれば目が眩むほどのものなので、ゴブリン共の注意を十分に引き付けた上で、
パーティメンバーは直視しないようにした上で聖光を使い、目くらましに使うこともある。
また、この光自体に浄化等の効果は無いと思われたが、低級のアンデッドを塵に還したり、並の呪文なら解呪効果も出来る事が中盤で発覚した。
(最初から出来たのか、女神官が成長したから出来るようになったのかは不明)

聖壁(プロテクション)
「いと慈悲深き地母神よ、か弱き我らを、どうか大地の御力でお守りください」
彼女が1巻中盤で授かった奇跡。彼女の代名詞とも言える奇跡だが、当人はこの奇跡が一番使用回数が多いことに複雑な様子。
冒険者の欄に記した通り、防御性能は凄まじく高い。これが無かったら、何度パーティが全滅していたか分からない程である。
また、この防壁はあくまで術者たる女神官への攻撃・接近を防ぐだけなので、
当然彼女への敵意などないパーティメンバーの攻撃には干渉せず、素通りさせる。
そのため、敵の攻撃を聖壁で遮断しつつ、ゴブリンスレイヤー側は(主に遠距離攻撃で)一方的に攻撃が可能であり、
反撃の恐れもなく、一射で的確に急所を狙い打てる妖精弓手の矢や、威力の高い鉱人道士の術等を以てゴブリン共を制圧することもままある。

ちなみに記念すべき最初の使用は、火災を引き起こされた拠点から脱出しようとするゴブリンを逃がさないように出口に張ることで、
ゴブリン共を一匹残らず閉じ込め、焼死させるために用いた。
本来自分や近くの仲間・要救護者等を護るための奇跡を以て、火災から逃げようとするゴブリンを閉じ込めるという用法に、
ゴブリンスレイヤーの指示とはいえ、女神官は忸怩たるものを抱えているような節もあったが、
後のゴブリンロード戦では、聖壁を二枚張って前後から挟み込むことでダメージを与え、尚且つ逃がさないようにするという使い方をした。
まさに奇跡(物理)、防御は最大の攻撃と言わんばかりのアクロバティックな使用法である。
応用が利き、直接張っても超強いという最高の奇跡だが、女神官が複雑な心情になるのも無理はないだろう…

沈黙(サイレンス)
「いと慈悲深き地母神よ、我らに遍くを受け入れられる、静謐をお与えください」
聖壁と共に授かった奇跡。使用中は範囲内の声や音を完全に消す術。
効果範囲が広いため、音もなく敵に忍び寄り、一息に殺すというゴブスレさんのアサシンめいた奇襲の補助をすることもあれば、
ゴブリンどもがいる場所で用いて一気に彼らの発する声や音を奪うことで、仲間を呼ぶ、あるいは注意を促すための大声などを掻き消し、
増援を呼ばせないようにするなど、こちらもかなり有用と言える。
また、鉱人道士の酩酊(ドランク)と合わせ、眠ったゴブリンを一匹一匹着実に殺しつつ、
殺される前に目覚め、周囲の仲間を起こそうとする、あるいは増援を呼ぼうとするゴブリンの声を予め消しておくことで、
増援を呼ばれたり、他のゴブリンを起こされたりすることなく一網打尽にするという策を用いたことも。

浄化(ピュアリファイ)
「慈悲深き地母神よ、どうかその御手で、我らの穢れをお清めください」
鋼鉄等級に昇格した後に授かった5番目の奇跡。
『不浄』を浄化できる術で、衣服や身体に付いた汚れを瞬く間に取り除いたり、
汚れた水や瘴気を(ある程度)浄化する、水面に浮かぶ障害物を取り除く*10等、取り除ける『不浄』の定義が広く、かなり応用が利く。
これの一番印象に残る使用は、やはりゴブリンシャーマン戦だろう。
相手の魔法でパーティが絶体絶命に陥ったことを受けて、女神官はゴブリンシャーマンの体内の血を「不浄」と見なし、
「不浄なものを浄化する」この奇跡を用いて一時的に真水に変えたのだ。
ゴブリンロード戦等で本来防御に用いる聖壁を事実上攻撃に用いたりと、攻撃のために奇跡を用いることはあったが、
ゴブリン退治は広義では人を助けるためになっていたし、女神官も殺意を以て使うことはなかったため、地母神にも見逃されていた。
しかし、今回の場合は「生き物の体内の血を『不浄』と断じて『浄化』する」という、拡大解釈もいいところの使用法だった上、
女神官は敵を倒そうと考えて、言い換えれば明確な攻撃の意思(殺意)を以て、『攻撃手段』として奇跡を用いた。
結局一時的に真水になっただけのため、ゴブリンシャーマンは昏倒こそすれ死に至らしめられはしなかった*11が、
これには流石の地母神も怒り、奇跡こそ起こしたがその後に神託のような形で「二度とそのような使い方をしてはならない」と警告し、
我に返った女神官も、信仰する神に直接警告されたという事実に猛省し、しばらくは意気消沈していた。
ちなみにこの使い方、かの有名TRPGソード・ワールドでは明確に禁止事項に指定されてたりする

聖域(サンクチュアリ)
「いと慈悲深き地母神よ、その御手にて、どうぞこの地をお清めください」
一定範囲内の不浄な者の侵入を防ぐ結界を張る呪文。
迷宮探検競技の後に地母神から授かった6番目の奇跡。
敵対者の進入を防ぐだけでなく、結界内の敵対者の力を弱めたりできる。
さらにこの結界は真冬の山の寒波といった、術者を害する現象に対しても効果を発揮する模様。
結界内で休息を取るなどの使い道がある奇跡なのだが、(当然)ゴブリンスレイヤーは、そんな真っ当かつ消極的な扱いを指示しない。
燃え盛る船に対してこの奇跡を使用するよう指示し、神気をまとった質量にして敵にぶつけるという荒っぽい使い方をして見せた。


◆本編での活躍


当初は青年剣士、女武闘家、赤毛の女魔法使いと一緒にパーティを組んでおり、ゴブリン討伐の依頼を受け洞窟に潜ったのだが、迎えた結末は凄惨だった…
まずゴブリンの奇襲に遭い、リーダーの青年剣士が殺される。魔法使いの少女もゴブリンに毒を喰らわされて、長くは持たない状態だった。
残る女武闘家は女神官たちを逃がすために単身ゴブリンどもに立ち向かうが、現れたホブゴブリンに行動不能にされた上、
ゴブリンどもに袋叩きに遭ったばかりか、装備や服を破られ、悍ましい凌辱・輪姦を受けることになってしまった。
女武闘家の自己犠牲により、魔法使いの少女と共にその場から逃れられた彼女にもゴブリンの魔の手が迫っており、万事休すと思われたが、
そこに同じ依頼を受けたゴブリンスレイヤーが現れ、女神官たちを襲っていたゴブリンどもは瞬く間に掃討された。

ゴブリンスレイヤーに渡されたポーションと荒っぽい手当により、女神官は戦線復帰が可能なまでに回復したが、
魔法使いの少女は既に毒が体中に回っており、手遅れの状態であったため、彼女自身の希望でゴブリンスレイヤーによって介錯された。
仲間を二人も喪った女神官は、それでも自らを助けてくれた女武闘家を救うべく、ゴブリンスレイヤーに同行を申し出る。
道中のゴブリンを倒しつつ洞窟の奥に辿り着いた彼らは、そこに潜んでいた群れのボス諸共残りのゴブリンを殲滅し、依頼は達成されたものの、
そこには、ゴブリンどもに散々嬲られ、犯された女武闘家と虜囚の女性たちが打ち捨てられるように転がっていた。

ゴブリンどもの拷問・凌辱に晒された彼女たちは、命までは奪われなくとも、既に精神は破壊されていた。
あまりの惨状に嘔吐する自分に構わず、ゴブリンスレイヤーはゴブリンの生き残りがいないかを確認し、
隠されていたゴブリンの仔を発見すると、女神官に「お前はまだ運が良かった」と告げた。
それは、一歩間違えて自分も行動不能とされ、虜囚とされていたら、他の女性同様に「孕み袋」とされていたという残酷な現実。
ゴブリン退治に明け暮れるゴブリンスレイヤーが平然としているように、この世界ではこのような末路を辿る女性は少なくなく、
見方を変えれば、命まで奪われた他の仲間たちや虜囚と違い、命は残っている女武闘家はまだ幸運だったといえよう。彼女にとってどうかは定かではないが。
この世界の残酷な現実を目の当たりにしたことと、出立前の光景が嘘のように殺され、介錯され、精神を破壊された仲間たちの傷ましい姿は、
なんとか立ち直った後も、彼女の心に拭い去れぬトラウマとして焼き付くこととなった。

この一件で世の無常さ、自身の無力さを知り、果ては地母神への信仰も揺らぎそうになるが、それでも彼女は立ち上げり、
ゴブリンスレイヤーと一緒にパーティを組み、彼の初めての仲間になった。
この時に彼女の冒険者を続けるという心に地母神が応えてか、数日の試練の果てに神殿で「聖壁」と「沈黙」の術を授かっている。

ゴブリンスレイヤーと何度か冒険に行った後、彼を訪ねて妖精弓手、鉱人道士、蜥蜴僧侶という3人の銀等級が現れる。
彼らと一緒にゴブリン退治を行い、この一件で3人もパーティに参加。
今後はゴブリンスレイヤーを筆頭に5人のパーティを組むことになる。
特に同じ女性同士である妖精弓手とは非常に仲が良くなり、冒険者の先輩後輩というよりも女の子同士としての友情が強い。

しばらく冒険をした後、ゴブリンスレイヤーが住んでいる牧場にロードが率いる軍勢が押し寄せてくる。
ギルド中の冒険者が戦闘に参加し、彼女も当然参戦。
ゴブリンスレイヤーと一緒に二人だけで単騎行動をし、ゴブリンの住処と頭目であるロードを討ち取った。
この頃には、当初あった甘さが鳴りを潜め、ロードの命乞いにも毅然とした態度で拒絶し、一冒険者として成長した姿を見せた。
戦いが終わり、疲れたのか眠っていたが、暫くして目が覚め、ゴブリンスレイヤーと共に勝利に酔う冒険者の宴を見届けた。
この時、ゴブリンスレイヤーの素顔が見たいと懇願し、見せてもらい凄く喜んでいた。

様々な困難を乗り越え、彼女も成長。オーガを倒したのを契機に黒曜等級に昇格。
(アニメでは時系列が異なり、オーガ戦と昇格は牧場戦の前である)
冒険者になって1年が過ぎる頃には、鋼鉄等級の昇格にも手を掛けていた。
しかし上記にも記したが、冒険者歴が順風満帆だった彼女が初めて挫折する事が起こる。
昇級試験に落ちたのである。これにはいつも明るい彼女も涙目になり、肩を落とした。
貢献度、金額、人格が完備で推薦状まであったのに何故落ちたのか。
その理由は彼女が所属するパーティで、彼女以外は揃って銀等級であり、今まで熟した依頼も彼らにほとんど任せたのではないかと疑われたのである。
勿論、実際の冒険の内容を見ればそんなことはなく、むしろ彼女がいなければ全滅していたこともある程なのだが、
やはり書類上や口答だけでは、詳細の内容は分からないのであろう。

これに対してパーティメンバーは他の冒険者と臨時パーティを組み、実績を上げてみてはどうかと提案。
彼女も思案するが、同時期に血気盛んな赤毛の少年魔術師が「ゴブリンをぶっ殺すんだ!」とギルドで騒ぎを起こしていた。
この少年が「おどおどしてる奴に昇級なんて出来ない」と女神官を煽り、これにはさすがに彼女も怒ったが、
この諍いを見ていた(麗しの)女騎士が、他者のパーティの問題にも関わらず意気揚々と仲介。
(その態度に頭を抱える重戦士を置いて)彼女は宣言する。
女神官と少年魔術師でパーティを組み、ゴブリン退治を行えと。当然頭目は女神官。
ここにリーダー女神官と少年魔術師(といつものゴブスレパーティ)の変則パーティが誕生。

無事にゴブリン退治を終えるが、少年魔術師の方は想像も出来なかった過酷な環境に何一つ対応出来ず、
女神官も途中でパニックになり、指揮をゴブリンスレイヤーに任せてしまい、最後まで頭目を全う出来なかった失敗を反省する。
しかし彼女の落ち込みが吹っ飛ぶ程の発言が少年魔術師から飛び出す。
「自分の姉がゴブリンに毒の短剣で刺されて殺された」と。
つまり女神官が最初に組んだパーティにいた赤毛の女魔法使いの弟が彼だったのである。
実は初対面の時から面影があり、女神官は薄々気付いていたのだが、その予想が確定した時は、あまりの衝撃に呆然とした。
この一件は女神官はおろか、ゴブリンスレイヤーにも拭えないトラウマを呼び覚まし、昇格よりも少年魔術師に向き合うことを優先するようになった。

暫くは新しく出来た訓練所で少年魔術師と共に訓練に励んでいたが、ある日の夕暮れに訓練所にゴブリンが押し寄せてくる。
ベテラン勢はゴブリンの撃退に出ており、訓練所にいた新人に手が回らなかった。
しかし、少年魔術師の機転と援護に駆け付けた女神官や新米戦士と見習聖女のおかげで、何人かの犠牲は出たものの、なんとか逃げ延びることが出来た。
中でも指揮した女神官と冷静に状況を見て魔法を使い、ゴブリンを足止めした少年魔術師の判断は素晴らしいものがあった。
この功績を持って彼女は鋼鉄等級に昇格、そして赤毛の少年魔術師も自身の力を見詰め直す旅をする決意をしたのである。

それからも様々な苦難と冒険、ゴブリン退治を重ね、冒険者になって3年目に至る頃には、立派な中堅冒険者になり、青玉等級に成る。
この頃にはゴブリンスレイヤーやいつものパーティと組むだけでなく、それなりに臨時パーティを組んで冒険することも多くなっていた。
(ゴブリンスレイヤーが槍使いや重戦士と組んで、ゴブリン退治以外の冒険をするようになったのも大きな要因の一つ)

ちなみにゴブリンスレイヤーと組んだからなのか、銀等級ばかりのパーティに入るからか、
とにかく彼女は新人や中堅が通るような平凡な冒険をしない。
ゴブリンはまあ当たり前としても、まず白磁の頃にオーガと戦い、この功績で鋼鉄に昇格する。
(オーガは真正面から討伐すれば、金等級並の成果である)
まともな迷宮探索の初めてが、最難関と言われる「死の迷宮(ダンジョン・オブ・ザ・デッド)」
挙句に青玉に至る冒険では、砂漠に行くことになるのだが、なんと最後はドラゴンと戦うことになる。
(言うまでもなく、最強の種族の一角。コイツを倒すと金等級どころか歴史に名が記される大偉業である)
新人から中堅に至るまでで、ドラゴンと戦う羽目になったのは、この娘くらいではなかろうか……


このようにゴブリンスレイヤーの話は、ゴブリンスレイヤーがゴブリンを退治する話だけではなく、
彼のパートナーである彼女が冒険者として成長していく道程を描く物語でもある。


◆余談


本編中ではリバースしたり、限定版カバーでは服がぼろぼろの中破状態になったり、カラー口絵では聖水まで描かれている。
漫画版に至っては吐瀉物まで描かれるわ、吐いている時の泣き顔および泣きながら口をふく描写等、その手の人たちが喜びそうな第二話にされた
2巻カラー口絵でひん剥かれ、限定メタルカバーに掲載されるなど色々悲惨。
本編でも二度失禁している。読者やアニメ視聴者からは、失禁等級と呼ばれることも。

ちなみに、もし青年剣士達が生還できていた場合、両方のパーティに参加し続けて倍速で昇格するらしい*12

声優はTVアニメ制作前の限定版付属ドラマCDから一貫して小倉唯氏が演じている。
小倉氏に限らず、ゴブリンスレイヤーや受付嬢、牛飼娘といった主要登場人物はドラマCDから一貫して同じ声優が演じている*13が、
小倉氏はゴブリンスレイヤーの最初期の作品紹介PVでもナレーションを担当しており、ある意味同作品と最も付き合いが長い声優であったりする。
ただし、ご存知の通りゴブリンスレイヤーのキャラには名前が設定されていないため、アニメ1話放送の際には女神官の失禁シーンで興奮したゴブリン…もとい紳士達の感想の影響で、
Twitterなどで「小倉唯、失禁」「小倉唯、お漏らし」とサジェストに出てくる酷い風評被害が起きていた。


追記、修正をお願いしますね。ゴブリンスレイヤーさん

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最終更新:2024年02月17日 22:37

*1 この鎖帷子は買い替えた方が早いと言われても、必ず修繕を頼む程に入れ込んでおり、後に彼女の装備一式が盗まれた時にすら神官服や錫杖よりも鎖帷子を第一に考えて途方に暮れる程だった

*2 ゴブリンスレイヤーの素顔が見たいと希望し、見せてもらった時に頬を赤らめて「その方が、格好良いと思いますよ?」と好印象であることを伝えている

*3 死者を生き返らせるのではなく、瀕死の重傷すらも回復させられる治癒の奇跡

*4 剣の乙女はとある事情で望まぬ破瓜をされている。

*5 魔法・奇跡は赤毛の魔法使いの少女も「魔法を二回『も』使える」ことに自信を持っていたように、新人ならば一日に二回も使えれば才能がある方で、同期の見習い聖女(至高神の聖女)は一日一回。

*6 槍使いも言葉も出ずに天を仰いだが、これはゴブリンスレイヤーの「(ゴブリン対策の)メモなど取って、もし落としてゴブリンに拾われたら元も子もない」という方針の影響を受けていると思われる。

*7 遠くにある特定の木の葉を先に落とした方が勝ち。

*8 「相手の身体に触れたり、直接妨害はしてはいけない」「特定の木の葉を先に落とした方が勝ち」というルールだが、勝利条件は「特定の木の葉を落とす」であって、「相手より先に特定の木のところに辿り着く」ではない。だから遠くからその木の幹に石をぶつけてその葉を落としても勝利条件達成となる。いいね?

*9 ついでに言えば、おそらく同じような意識で抗議しようとした雪男の額に問答無用でスリングによる石礫を叩きつけて昏倒させている。体格・筋力共に女神官を遥かに上回る雪男に襲われればひとたまりもないので、「やられる前にやる」という女神官の対応・姿勢は当然と言えるが、描写からして女神官は相手が振り向く前に既にスリングに石礫をセットしていた=最初から話は通じないと看做していたと思われる。

*10 本来浮かんでいない障害物を『不浄』とし、それを取り除いて元の何も浮かんでいない水面に浄化するという理屈の模様。

*11 ゴブリンスレイヤーの策で高圧水流で天高く打ち上げられ、そのまま落下して転落死した。

*12 単純に功績が増えるのもさることながら、本編で昇格が遅れたのは格上の冒険者達に寄生している疑惑が生じていたという事情もあるため、もし同等の仲間と行動を共にしていたらもっと早い段階で正当に評価されていたとの事。

*13 逆に令嬢剣士役の上坂すみれ氏等、映像作品の方で先に声が付いた場合も、ドラマCDでも同じ声優が同じ役柄を演じている。