地割れ/地砕き(遊戯王OCG)

登録日:2022/11/23 Wed 20:27:53
更新日:2023/11/22 Wed 15:14:50
所要時間:約 10 分で読めます




地割れ
通常魔法
(1):相手フィールドの攻撃力が一番低いモンスター1体を破壊する。

地砕き
通常魔法
(1):相手フィールドの守備力が一番高いモンスター1体を破壊する。

「地割れ」「地砕き」共に遊戯王OCGに登場するカードの1つ。詳細は後述するが、古き良き時代の単体除去魔法として高い知名度を誇る。
前者は初出がvol.1であり、遊戯王OCGで最初にカード化された魔法カードの1枚でもある。
後者の初出は「暗黒の侵略者」で、上記のvol.1からおよそ4年後の登場となる。


概要

どちらもモンスター1体を破壊する効果で、それぞれのカードで

地割れ:攻撃力が最も低い相手モンスター
地砕き:守備力が最も高い相手モンスター

となっており、破壊対象が対になっている。
一般論として強いモンスターは守備力も高い事が多く、地砕きの方が評価が高めである。

いわゆる1:1交換の除去カードで、登場当時はまだ「選ぶ」というコンマイ語がなかったこともありランダム性があるものの「対象を取らない」除去カードの中では狙ったモンスターを破壊しやすく、なおかつ相手モンスター指定なので自分のモンスターが巻き込まれる危険がないという強みを持っている。

登場当初はサンダー・ボルトブラック・ホール心変わりといった強力な除去魔法とくらべ相対的にカードパワーが低かったこともあり、環境レベルでは地砕きがピン差しされる程度で、そこまで目立つカードではなかった。
しかし、サンダー・ボルトらが禁止カード送りとなった事で評価は一変、4期~5期前半においての地砕きは当時利用可能な通常魔法の中では最高峰の除去性能を持つカードとなる。
加えて、後続の確保に長けたモンスター群「ガジェット」を主力に大量の除去魔法・罠を撃ちまくるデッキ【除去ガジェット】が流行し、地砕き・地割れは一気に環境の主役へと躍り出た。
この時期のモンスターの命はとても軽く、どんなエースモンスターを出しても地砕きであっけなく除去されるのが常であり、大型モンスターは召喚と同時に除去を撃てるなどを除きほぼ無価値となってしまった。
Vジャンプ記事でもアニメのエースモンスターを「はいはい地砕き地砕き」と言いつつ除去する光景がしばしば描かれ、「はいはい地砕き地砕き」がネットスラングとして流行したほどである。

基本的に地砕きが優先、地割れは4枚目以降の地砕きとして採用される程度だったが、除去カードを大量に積む【除去ガジェット】ではどちらも3積みが横行。
結局2枚とも2007年9月1日より制限カードに指定された。
後に【除去ガジェット】の流行終了に伴い、「地割れ」は2009年9月1日、「地砕き」は2010年3月1日に無制限に復帰している。


対象を取るor取らないとは?

ここまでで「対象を取らない事がなぜ重要なのか?」と感じる人もいると思われるが、そこには「対象を取る・取らない」の性質の違いが関わってくる。


実は「対象を取るor取らない」は、より厳密には「カード(効果)の発動時に効果の適用対象を選択するor選択しない」と言う意味で、実際に効果処理をする場合、

対象を取る効果:
①…カード(効果)を発動し、同時に対象を選択。
②…チェーンの組上げと逆順処理。
③…対象に向けて効果を適用。

対象を取らない効果:
①…カード(効果)を発動。
②…チェーンの組上げと逆順処理。
③…対象を選択してそのまま効果を適用。(※)

(※):効果対象を選択する必要がある場合。選択が不要な場合は適用条件を満たす相手に対して効果がそのまま適用される。

となる。
(補足しておくと「フィールド」「墓地」「除外ゾーン」と言ったお互いがカードを確認できる領域以外からも効果の適用対象を選択できる効果は問答無用で「対象を取らない効果」に分類される。)

この項目で言う「地割れ」「地砕き」の場合は上記の流れを以下の通りに実行する。

①…「地割れ(地砕き)」を発動。
②…チェーンの組上げと逆順処理。
③…攻撃力の最も低い (守備力の最も高い) 相手モンスターを破壊。(※)

(※):条件を満たすモンスターが複数体いる場合はそこから1体選択する。


ここで両者の性質について見ていくと、「対象を取る」効果の場合、対象になるのが効果発動時なので、チェーンが組み終わるまでは別のカードをカウンターすることが出来る。

この時に対象を場からどかしたり耐性付与をすることで、チェーン終了後の効果処理時に対象が場からいなくなったり効果を受けなくなる事で効果が不発になって腐ってしまう危険をはらんでいる。

一方「対象を取らない」効果の場合、対象を選択するのは効果解決時、つまりチェーンが既に組まれた後なので、相手は(「カードの発動自体を無効にする」場合などを除いて)「効果の適用対象を予測して事前処理する」と言う行為を迫られる。

「相手の予測」が自分が効果を適用したい「本命」のカードと異なっていれば、「本命への効果適用+事前処理カードを空振りさせる」と言う一石二鳥、もし相手の予測と本命がかぶってしまっても他に対象になるカードがあればそちらに的を定められるため、最低限の仕事が可能となる。
(ただしこれは見方を変えると「『適用すると都合の悪いカード』に対して嫌々効果を使わなければならなくなる」パターンがありえるという事でもあるため、いつでも優位に働くとは限らない。)

また遊戯王のカードの中にも「このカードを対象とする他の○○カードの効果を受けない」と言う効果を持つカードが数多く存在する。
これは「『対象を取る』効果に対して耐性を持っている」と言い換えることができ、「対象を取らない効果」に対しては丸裸の状態になる。
(ちなみに「対象を取らない」効果への耐性として「このカードを対象としない他の○○カードの効果を受けない」もあるにはあるのだが、その耐性を持つカードは閉ザサレシ世界ノ冥神など、ごくわずかである。)

詰まる所、「対象を取らない」効果は「効果の遂行性能が高く腐りにくい」と言うのが何よりの強みとなり、「対象を取る」と「対象を取らない」では一般的には後者の方が強いとされる。


これが「地割れ」「地砕き」が強力とされるゆえんである。


現在の「地割れ」「地砕き」事情

ではかつて制限カードに指定された事のある2枚の現在について語ると、微妙な立ち位置のカードになっている。

対象を取らない効果なので腐りにくいのは事実だが、この2枚は破壊対象を任意に選べないため、ステータス面での条件を満たすカードが破壊耐性や破壊時効果を持っていれば、不発、場合によっては裏目に出る事すらあり得る。
また、機会は少ないだろうが、発動にチェーンしてステータスを変化させるカードを相手が使用した場合、効果の適用先がスライドしてしまう事もあり得る。

そして「地割れ」「地砕き」それぞれの問題点をあげると、
「地割れ」は攻撃力の低いモンスターは除去したい本命になりにくく、大型モンスターの破壊にはあまり向かず、展開補助の過程で余った小型モンスターなどの破壊役になってしまうことがある。

「地砕き」は守備力の高さを参照するので、「地割れ」よりも大型モンスターを狙いやすいのだが、守備力を持たないリンクモンスターには完全に無力であるため、リンクモンスター主体のデッキで役に立ちにくいという難点を抱える。
何?守備力を持たないのなら守備力0ではないのか!?
(そのためなのかマスターデュエルでは「地割れ」がRに対し、「地砕き」はNである。)

そしてなんといっても「対象を取らないモンスター破壊」のできる魔法カードには複数除去のできる「サンダー・ボルト」「ブラック・ホール」がともに緩和されている

1枚で1体を破壊するよりも、複数体のモンスターを一挙に取り除けるほうが便利なのは言うまでもなく、サンダーボルトより優先する理由はない。
ブラックホールは自分フィールドも巻き込んでしまうが、後攻側の捲りとして使う前提なら問題にならず、逆に自分のカードを破壊に巻き込むコンボも可能。

これらの理由で、実用性の観点ではこの2枚に大きく水をあけられている。
無理矢理にでも勝る状況を考えるなら、「スタロや大革命返しにカウンターされない」「相手側の破壊時に効果が発動するモンスターを巻き込まない」といったところだが、結局は「それなら最初から破壊以外の除去を用意しろ」になる。



余談

  • Vol.1から登場しているだけあって、「地割れ」は現在に至るまでに何度もエラッタが施されている。

《地割れ》(第1期)
通常魔法
相手フィールド上モンスターの、攻撃力が一番低いモンスター1体を破壊する。

一見今のテキストと変わらないように見えるが、破壊先に表側表示・裏側表示の指定が無い為、「裏側表示のモンスターを一旦表にしてステータスを参照して破壊先を決定」と言う芸当が可能であるとも解釈可能だったため、エラッタが実施された。


《地割れ》(第1期/再販)
通常魔法
相手フィールド上モンスターの、表向きになっている中で攻撃力が一番低いモンスター1体を破壊する。

破壊先が明記されて一件落着。と思いきや……。


《地割れ》(第2期)
通常魔法
表向きになっている中で攻撃力が一番低い敵モンスター1体を破壊する。

効果自体には変化はないものの、テキスト内に「敵モンスター」という謎の表現が追加。
表現のバラつきについて公式にも思う所があったのか、次のエラッタでは……。


《地割れ》(第3期)
通常魔法
相手フィールド上の攻撃力が一番低い表側表示モンスター1体を破壊する。

表現が他カードと合わせられ、現在のテキストに近い形に改められた。
そして現在使用されている「地割れ」のカードは……。


《地割れ》(第8期)
通常魔法
相手フィールド上の攻撃力が一番低いモンスター1体を破壊する。

《地割れ》(第10期)
通常魔法
(1):相手フィールドの攻撃力が一番低いモンスター1体を破壊する。

「裏側表示のカードは攻撃力や守備力などのステータスを参照できない」と言うルールが浸透した為か、「表側表示」の記載が消え、一周回って原典に近いテキストになった。
最初からルールや裁定をプレイヤーに浸透する方に注力すればよかったのでは?


  • 「地砕き」に描かれているムキムキな腕だが……
暗黒のマンティコア
効果モンスター
星6/炎属性/獣戦士族/攻2300/守1000
このカードが墓地へ送られたターンのエンドフェイズ時、
自分の手札・フィールド上から獣族・獣戦士族・鳥獣族モンスター1体を
墓地へ送って発動できる。
このカードを墓地から特殊召喚する。

実はこのモンスターが地面を殴っている。

エンドフェイズに場か手札の獣族・獣戦士族・鳥獣族モンスター1体をコストに自己蘇生する効果を持っており、効果面で特にシナジーがあるわけではないが、収録パックが「暗黒の侵略者」、つまり「地砕き」と同タイミングでの登場だったため、公式のちょっとした遊び心として設定されたものだと思われる。



追記・修正はひび割れた地表で振り下ろされてくる拳をよけながらお願いいたします。



















時は2022年10月25日。



「CNo.62 超銀河眼の光子龍皇」をメインパッケージに据えた「PHOTON HYPERNOVA」が発売。
その中でとあるカードが収録された……………。








震天のマンティコア
効果モンスター
星6/炎属性/獣戦士族/攻2300/守1000
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分メインフェイズに発動できる。デッキから「地割れ」または「地砕き」1枚を手札に加える。
(2):このカードが墓地に存在する場合、自分の手札・墓地から「地割れ」または「地砕き」1枚を除外して発動できる。このカードを特殊召喚する。



そう。「地割れ」「地砕き」の専用サポートとなる、「暗黒のマンティコア」のリメイクカードが突如として登場したのだ。


(1)の効果で「地割れ」「地砕き」の内、好きな方を1枚サーチすることができる。
「地砕き」の方が大型モンスター破壊に使用しやすいのは上述した通りだが、リンクモンスター主体のデッキでは「地割れ」の方が扱いやすいので、相手の使用するデッキによってフレキシブルな破壊先選択ができる。

また(2)の効果は墓地にあるこのカードを手札・墓地から「地割れ」か「地砕き」1枚を除外して蘇生させられる効果で、(1)の効果でサーチして使用したカードをそのまま蘇生コストに使える。
手札からもコストにできる為、もし相手のフィールドに破壊できるモンスターがいない場合でも(1)でサーチした「地割れ」「地砕き」を腐らせることなくコストに使える。
(ただし墓地からの特殊召喚に利用するため、あらかじめもう1体墓地に落としておくかサーチ後にリンク召喚等の素材にするなどの仕込みが必要になる。)

(1)(2)の効果は相互に相性がよく、上で述べた「(1)で『地割れ』『地砕き』サーチ→(2)で自己蘇生」だけでなく「(2)で自己蘇生→(1)で『地割れ』『地砕き』サーチ」でも運用が可能なので、結果的に蘇生とサーチのループで「地割れ」「地砕き」の対象を取らない除去を長期的に運用することが可能になった。

これまで上記2枚を名指ししてサポートしたカードは無く、「地砕き」は登場から19年、「地割れ」に至っては23年にして初めてサポートによる他カードとの差別化が可能になった。

両者のサポートカードとしてなぜ「マンティコア」カードが作られたのかについては、やはり「地砕き」と「暗黒のマンティコア」カードが設定上繋がっていたからだと思われるが、「地割れ」の方は「暗黒のマンティコア」とは接点は全くなく、「地砕き」の類似カードと言う棚ぼたに近い形での強化となっている



追記・修正は割れ目から落ちないように地面を左手でしっかり掴みながらお願いいたします。

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最終更新:2023年11月22日 15:14