SCP-2998-JP

登録日:2022/11/27 Sun 22:15:00
更新日:2024/04/24 Wed 23:01:23
所要時間:約 22 分で読めます



SCP-2998-JPとは、シェアード・ワールド「SCP Foundation」に登場するオブジェクトである。



タイムリミットまでもうあまり時間がない。
君が打開策を検討しているのは知っているが、決断を迷う段階はもう過ぎつつある。
とはいえ、よく考えて投票を行ってほしい。 -O5-1



突然だが、O5-1からメールで以上のことを伝えられたO5-13、すなわちあなたは、RAISA収容物品検索システムで「SCP-2998-JP」に関する文章を検索する。



RAISA収容物品検索システム

Welcome, O5




search /SCP-2998-JP


4件の関連文書がヒットしました。


要するに「SCP-2998-JP」について説明した文章が財団内に4つあるということ。
1つづつ見て行こう。

1件目: ASCI「Item Number: 1890-002」


初版: 1890年1月10日/最終更新日: 1956年10月23日)


これは、ASCI(全米確保収容イニシアチブ)という、財団の前身団体の一つによって作られた、「1890-002」と名付けられた異常存在に関する文書。

ただ、全米確保収容イニシアチブがSCP財団になってからは、「1890-002」は「SCP-2998-JP」に再分類されていることに注意。

要するに、今から説明する1890-002という異常存在は、財団の前身団体目線の、昔のSCP-2998-JPと思っていただいてよい。


概要


現象1890-002とは、誰かの目の前に突然現れるキメラと、それを見た人がなる精神障害である。

精神障害とは具体的に言うとヒステリーやパニックなど。断続的に恐怖にさらされるため、アヘンチンキやコカインといった鎮静剤を投与するとよい。脳組織の一部を切除するのも有効、とされているが、なんせこの報告書が書かれたのは1890年。成功した例はない。

ちなみにこの現象1890-002、古くは11世紀から存在が確認されており、実はヨーロッパのみならず東洋やアフリカなど全世界的に発生していたことが最近になって判明。

それで現象1890-002についてだが、基本的には数年に一度発生するだけにもかかわらず、なぜか日本でだけめちゃくちゃすごい頻度で発生しているらしい。
ASCIはその原因を調べたいのだが、日本における正常維持機関であり、財団日本支部の前身である「蒐集院」という組織が秘密主義をとっているため、調査は難航している。

また、蒐集院において現象1890-002の収容方法が秘密裏に確立されている可能性があるため、ASCIは蒐集院と接触しようとしている。


収容のためのASCIプロトコル


こちらはSCP財団でいう「特別収容プロトコル」。

といっても、この現象1890-002は発生頻度が非常に低くわかっていないことが多いため、具体的なプロトコルは立てられていない。

よって、書いてあることと言えば「精神障害を起こした人にはアヘンチンキを投与して隔離してね」「発狂した人間は適宜処分してね」といった感じ。対処療法という感じだ。


では、次の検索結果を見て行こう。



2件目: 蒐集院「蒐集物覚書帳目録第〇〇五二『鵺』」


初版: 1055年3月1日/最終更新日: 1955年3月3日)


さて、お次はその蒐集院の文書。蒐集院の機密文書であり、ASCIは見ることができなかったものの、今はASCIも蒐集院も財団に吸収されているため、こうしてO5-13であるあなたは見ることができる。

話がそれてしまったが、この文章は蒐集院目線の現象1890-002についての報告書。

そして、蒐集院において現象1890-002は「蒐集物第〇〇五二」もしくは「」と呼ばれており、どちらかというと報告書内では「鵺」と書かれる。

もちろん、蒐集院と財団が合併した1955年に、「蒐集物第〇〇五二」もしくは「鵺」は「SCP-2998-JP」に再分類されていることに注意。

ちなみに、この文書の初版はなんと1055年。きっと巻物かなにかで保管されていたのだろう。それに後世の人々がいろいろ追記していき、財団になってからはRAISAが電子化した、という感じだろうと思われる。


概要


まず、鵺が最初に捕捉されたのは1054年5月。“客星”と呼ばれる星が出現したと同時期に鵺を発見

長らく人心を乱す、複数の獣が合体したような見た目の物の怪として認知されていたものの、長らく誰もその正体をつかめずにいた。


その状況が変わったのが1155年5月。
蒐集院の前身団体である「陰陽寮」*1のメンバーであった「安倍泰親」という陰陽師によって再発見。

というのも、時の天皇である近衛天皇が鵺と会い、病に臥せてしまったのだ。陰陽寮は政府直属の機関であるので、陰陽寮が鵺の大規模探索を行うこととなった。

その過程で安倍泰親が鵺は恐怖されることを嫌うことを見抜き、全国から恐れを知らぬ猛者を集め、ついに猛者たちの1人である源頼政の従者猪早太という人物が鵺と対話することに成功した。

こうして、後述する蒐集儀典が制定された。


蒐集儀典


蒐集儀典とは、財団で言う特別収容プロトコルのこと。

ASCIとは違い、蒐集院や陰陽寮は効果的な収容プロトコルを定めている。なぜこうしたプロトコルになっているのかは、後述する安倍泰親の手記にも書いてあるのでそちらも参照。

で、肝心の蒐集式典はこんな感じ

  • 新月の丑の刻に大麻を焚いた密室の中にて巫女に觜宿への祝詞を奏上させる
  • しばらくすると鵺が現れるので巫女に神降ろしさせる。
  • 神降ろしさせるとき、鵺の姿を見ること、鳴き声を聞くことは禁忌。
  • 鵺は複数現れるので、口寄せにより鵺の言葉を聞くときは注意。
  • 儀式は辰の時まで続けられ、儀式を終えるときはまた来月に儀式をすることを約束すること。


といった感じ。神降ろし、ということは鵺を巫女の頭の中にいれるわけだが、そう、この鵺は人の頭を食って生きているのだ。

だから、「1か月に1度、巫女の頭を貸すから他人を襲わないでね」と言った感じの契約をしているわけだ。


安倍泰親の手記


ここからは、久寿元年、すなわち1154年に書かれた安倍泰親の手記を見て行こう。
この手記は大きく3つに分かれている。


鵺の捕捉まで


安倍泰親によると、鵺は普通の物の怪とは少々異なる点があるようだ。

まず、こういう物の怪はだいたい人を驚かせるのが目的なのだが、鵺と出会った人によると、鵺と人が会うと鵺も慌てて逃げていくのだ。これは、人を驚かせるのが目的とは考えづらい。

また、そんな慌てて逃げていくほど人に会いたくないなら山奥に引きこもっていればいいだけの話。しかしそうでないことから鵺は本当は人前に出てきたくないけど人前に出なくてはならないと予測。

それで安倍泰親は猛者たちを集めて探索させた、というわけだ。

それで、猛者のひとりである猪早太に取り憑いた鵺だったが、猪早太は狐憑きと違って正気を失うことも無かった。
猪早太は途端に鵺が何かを伝えたいと訴えてきたので、術を施しつつ陰陽寮で収容することにした。


鵺の蒐集儀典制定まで


さて、その「鵺が伝えたいこと」だが、要するに「腹が減って困っている」とのことだった。
先述の通り、鵺は人の頭の中を食べるのだが、それは人類のような知性ある存在ではないといけないらしく、昔住んでいた星が爆発して以降、ずっと知性ある存在を探していたという。

で、人の頭の中を食べるといっても頭のほんの一部を間借りするだけでいいという。
ただ、人の頭の中に入るためには自身の姿を見せる必要があるらしく、ほとんどの人は鵺の姿を見るとヒステリーやパニックになって逃げだしてしまうらしい。現象1890-002の正体はこれだ。
それで、そうなって恐怖を覚えられてしまうと鵺も頭の中に入れないため困っていたのだ。

そういうわけで、蒐集儀典は「大麻で鎮静した巫女の頭に鵺を入れる」という感じになっている。


鵺の本質について


蒐集儀典が確立した後も対話は続けられた。
どうして鵺は人に恐怖を覚えられると頭の中に入れないのか?と安倍泰親が問うと、そもそも鵺は恐怖という感情を知らないことが判明。どうして頭の中に入れないのかもわからないという。

改めて恐怖という感情を説明するのには骨が折れたが、

「自分に危害をかける可能性のあるもの、未知なるものが自分に危害を加えようとする際逃げ出そうとする情動

と説明した、すると、鵺は

「その恐怖というものは、我々が恐怖の情動を察知した時に忌避しようとする時に感じるものではないのか?」

と問うてきた。
なるほど、これが鵺にとってのただ一つの「恐怖」なのだろうと察した安倍泰親が首肯すると、鵺は暫く何かを考えた後にぼそりと「こわがらないで」と呟いた。



3件目: SCP財団「SCP-2998-JP」


初版: 1956年10月22日/最終更新日: 2020年1月日)


さて、1000年前の文章から一気に飛んで、ようやく近代に来た。これは1956年、すなわち財団と蒐集院が合体した後に書かれたSCP報告書である。

ここから、「現象1890-002」「鵺」は全て「SCP-2998-JP」という名前に統一させてもらうことにする。


ちなみにオブジェクトクラスはEuclid


概要



SCP-2998-JPとは、かに座超新星SN1054より飛来し、また現在に至っても飛来し続けていると考えられるツチミカドモデル型霊素情報複合体である。

ちょっと何言ってるのかわからないが、要するに遠い星からやってきた幽霊の亜種ととらえればよい。

それで、SCP-2998-JPはもともとその星に住んでいたのだが、その星が1054年に爆発。住んでいたSCP-2998-JPたちは散り散りになったのだが、散り散りになったSCP-2998-JPの1人が地球を発見。SCP-2998-JP同士はテレパシーが使えるらしく、「ここに餌があるぞーー!」と1人のSCP-2998-JPが他のSCP-2998-JPに呼びかけてみんな地球に集合。現在になっても地球に居るSCP-2998-JPの数は増えているという。

それで、SCP-2998-JPは普段は透明で実体がないのだが、SCP-2998-JPは通常の幽霊とは違うため、nPDNという、SCP-1714-JPなどにも登場する幽霊を実体化する装置が使えないのだが、かわりにSCP-2998-JPの意志で知覚可能になる
以下、SCP-2998-JPが自らの意志で知覚可能になることを「SCP-2998-JPが活性化する」という。

SCP-2998-JPは活性化しても実体はないのだが、目と耳で知覚できるようになる
要するに触れることも匂いをかぐこともできないが、見ることはでき、鳴き声を聞くことはできるのだ。ちなみにSCP-2998-JPの外見は「複数の肉食動物が組み合わさった」感じらしい。

ただ、SCP-2998-JPを知覚した人間は一様に恐怖を覚える
これはSCP-2998-JPが偏桃体*2に直接作用する影響なのだがSCP-2998-JPが意図的にやっているわけではない。

SCP-2998-JPはヒト脳組織の神経活動時に生じるパルス信号に含まれる情報エントロピーを食べて生きている。
なんのこっちゃわからないが、要するに知性体の頭の中にある物質を食べているのだ。

それで肝心の食べる量だが、頭全体の0.1%を数時間吸収するだけで1年間生きれるというのだから少食である。

蒐集院の文章では、SCP-2998-JPが安倍泰親に、「頭のちょっとを間借りするだけでよい」と言っていたが、まさかの0.1%だけでいいとは。それも1年間生きれるとは。恐怖を与える性質さえなければまさしく無害なオブジェクトである。

しかも、SCP-2998-JPが入っている人(以下、SCP-2998-JP-1と呼ぶ。)は記憶力や思考力が向上したり、緊張がほどけたりするらしい。むしろ有益!?

さらに、SCP-2998-JP-1は自身に入っているSCP-2998-JP個体の考えることがわかるのだが、その「考える」動作もSCP-2998-JP-1の脳を使うため、言語の壁が無い。蒐集院がSCP-2998-JPとコミュニケーションをとれたのはこういう理由だ。


また、SCP-2998-JPは「恐怖」という感情を強く嫌うことがわかっている。
だから、人間がSCP-2998-JPを中に入れてるとき、その人間が何らか恐怖を覚えると中に入っているSCP-2998-JPはすぐ出て行ってしまう。

しかし、人間はSCP-2998-JPを知覚すると恐怖を感じてしまう。
よってSCP-2998-JPが入ることができるのはよっぽど怖いものに耐性のある猛者か、薬や手術などによって感情を抑えた人に限られる。

よって、財団外の一般社会でSCP-2998-JP-1が発生することは非常にまれとされている。


また、SCP-2998-JP-Aという存在もおり、これはSCP-2998-JPのうち財団に収容されているものを指す。正確には一個体ではなく、地球に存在するすべてのSCP-2998-JPのうちおなかが減ったものが適宜交代して財団に収容されに(おなかを満たしに)来ている感じである。


SCP-2998-JPの歴史についてはこれまで見てきた通り。1054年に陰陽寮によって発見され、その時は巫女を用意して、大麻等の薬物、神秘論的効果を持つ祝詞と舞踏を使って巫女をSCP-2998-JP-1としていた。

財団は、SCP-2998-JP-1を用意する手段以外は蒐集院と同じ方法でSCP-2998-JPを収容している。


特別収容プロトコル


長いので箇条書きにする。

  • 収容に使うSCP-2998-JP-1は適切な処置をしたDクラス職員にしてね。
  • SCP-2998-JP全部を収容することはできないから、代わりにSCP-2998-JP-Aと協定を結んでね。(協定の内容は後述)
  • 財団との協定を知らない/無視したSCP-2998-JPについては、その特性から放置していいよ。
  • もし一般人で精神障害を負った人を見たら記憶処理してね。

  • 担当職員はSCP-2998-JP収容房を見ないでね。見たら精神障害負うよ。
  • SCP-2998-JPとの協定はSCP-2998-JPの総数に応じて適宜見直ししてね。


まあ大事なのはこのくらいだろうか。では3件目報告書の最後に、SCP-2998-JPとの協定を見て行こう。
ちなみにセキュリティクリアランス4/2998-JP機密である。


SCP-2998-JPとの協定ログ


ここでの協定は、全て「Dクラス職員用意するから財団外の人間襲わないで!というもの。
問題は、そのDクラス職員。


まず1955年、財団と蒐集院が合わさった当初の協定は「扁桃体を切除したDクラス職員1人をサイト-812Sに配置する」というもの。

SCP-2998-JPの総数も105体であり、SCP-2998-JPも「財団の皆さん、お手数をおかけしますがよろしくお願いいたします。同胞も喜びます。」とコメントしている。友好な関係といえよう。


それで次、1985年にはSCP-2998-JP総数は502体になっており、協定が見直されて配置するDクラス職員が3人に増えた

SCP-2998-JP曰く

遠くに散っていった同胞が集まってきており、1名では不足してしまいました。Dクラス職員の方には悪いですが、3名程度なら足りると思います。

とのこと。


続いて2012年。SCP-2998-JPの総数は1256体となり、明らかに増えるペースが上がっている
しかし財団、匂いをかぐだけで恐怖の感情を無くせる、「フリーマン型情動抑制異常ミーム」というものを開発。いちいちDクラス職員の扁桃体を切除しなくてもよくなった。


しかし続く2015年、SCP-2998-JPの総数は15980体
Dクラス職員も20人に増やすことになった。

食事量を切り詰めればこの人数でも何とかなります。今後ともよろしくお願いします。

…嫌な予感がするのは気のせいだろうか?


そして最後に2018年。SCP-2998-JPの総数は
18700000体
Dクラス職員を100人に増やし、用意する場所もサイト-812K、サイト-812L、サイト-812Sと3か所に増やしたものの、SCP-2998-JPのコメントがこちら。


ごめんなさい。




4件目: SCP財団「SCP-2998-JP」


初版: 2020年1月1/最終更新日: 2020年1月30日)

そして時が経ち2020年

報告書がガラッと改定された。

当然オブジェクトクラスも変更されているのだが、
通常のオブジェクトクラスの代わりにアノマリー分類システムが導入されており、
収容クラスはEsotericなので副次クラスが割り当てられており、そちらはCernunnos
攪乱クラス5/Amida
リスククラス5/Criticalとなっている。


つまり「全宇宙に影響があり、もうすんごい危険で、収容しようにも倫理的に無理」というわけだ。

Apollyonのように世界が滅ぶまでとはいかないものの、もうApollyonスレスレのやばいオブジェクトだということが伝わるだろうか。


特別収容プロトコル


SCP-2998-JPとの協定は一方的に破棄されました。我々は何らかの破滅的手段を用いてZK-クラス現実不全シナリオを回避する必要があります。

O5評議会は投票により選択すべき対応策の決定を実施して下さい。決定期限は2020年2月1日0時までです。

これだけ。逆に言うとこれ以外やることがないということ。もうヤバい。とにかくヤバい。
そして、おそらく今は1月末。もう時間が無い。


概要


SCP-2998-JPの説明についてはもう4度目なので省略する。

2020年現在のSCP-2998-JP総数はなんと10の15乗、すなわち1000000000000000体

いっくらSCP-2998-JPが少食とはいえ、これだけのSCP-2998-JPを食わせていくにはDクラス職員では足りない。というか全人口の98%が必要

これについて、SCP-2998-JPからこれまでの協定の破棄と、新しい提案がなされた。


  • 2020年2月15日12:00を持って全世界のSCP-2998-JPが同時に活性化する。
  • 回避するためには全人類から恐怖の感情を除去せよ
  • 恐怖の感情を除去した場合、SCP-2998-JPは全人類の脳内に侵入、摂食行動を行うが、危害を与えることはしない

ヤバい。
このまま何もしなければ、2020年2月15日12:00に全人類の99.999%が精神汚染を受けることになる。もう世界滅亡待ったなし。

SCP-2998-JPの要望に従って、全人類から恐怖の感情を除去するのも手だが、それは後から復活できない
間違いなく人類は正常な文化活動ができなくなるだろう。


よって、SCP-2998-JPは特殊オブジェクトクラスであるCernunnosに指定された。

SCP-2998-JPからの最後通牒


永い間我々に憐憫を与えてくれたことには本当に感謝しています。その上で強硬な方法で決断を迫ることについては心から謝罪をしたいと思います。

しかしながら、もはや限定的な方法で我々を養うことは不可能となりつつあります。我々の本当の総数について秘し続けてきたこともまた卑怯だとは考えていますが、我々自身も自身の保存のために他星系より移動をしてきたことから、もはや諦めることはできません。


しかし、とSCP-2998-JPは言う。
SCP-2998-JPは人間を恐怖という感情から救いたいのだという。
人間が苦しむ姿を見るのが忍びない、と。

SCP-2998-JP達は、人間と出会うまで恐怖という感情を知らなかった。


1000年以上前に貴方たちの脳から響くその電気的な信号を感知したとき、その耐え難さに逃げ回り、そして今もまだ忌避したいと感じています。

(中略)

我々は貴方たちが恐怖する、その声なき声を受け取るのが恐ろしいのです。そしてそれ以上に、貴方たちをこの忌むべき感情から救いたいと心の底から感じています。一方的なものですが、これは我々から貴方たちへの憐憫でもあります。

我々が活性化することで我々も耐え難い苦痛を得つづけることになるかもしれませんが、そのリスクを以てしても貴方たちを何とか救いたいと考えています。

恐怖を無くすために脅迫という恐怖を用いるのは何とも皮肉な話ですが、それであっても貴方たちは恐怖という軛から解き放たれるべきです。



親愛なる地球の友人たちよ、恐怖のない世界で、我々と共に歩んではくれないでしょうか。

協定は破棄されました。2020年2月15日12:00をもって我々は活性化します。それまでの間に賢明な判断を期待しています。


…人類の進歩や文化にとって恐怖は必要であるのは言うまでもない。
よって、財団は大急ぎでこの事態をなんとかしようと思案した。


SCP-2998-JPに対するアクション提案



まず一番に思いついたのはSCP-2998-JPを皆殺しにすればいいのでは!?という脳筋的発想。

ただ、SCP-2998-JPを殺害したり、排除したりする手段はいまだ見つかっていないため、O5評議会では3-10で却下。
先述のnPDNで実体化できる可能性も無きにしもあらずだが、なにしろ数が多すぎる。どちらにしても無理だ。


次に思いついたのは地球外に逃げればいいのでは!?という発想。

しかし、相手は宇宙から来た存在、それも7000光年先から来た存在。いやいや逃げ切れるわけないじゃないか!ということでO5評議会で0-13で却下。


次はもっかいSCP-2998-JPと交渉しよう!というもので、13-0で承認されたがもちろん失敗。そりゃそうだ。


それで思いついたのは全人類の聴覚と視覚を奪えばSCP-2998-JP知覚できないのでは!?というもの。

ただ、そうすると例えばSCP-173などが収容できなくなってしまい、別オブジェクトで世界が滅亡するので5-8で却下。



そうなると残りは、全人類から恐怖を取り除く以外になにがあるのだろうか?

もちろん他にも考えれば案はあるかもしれない。しかし時間が無い。


幸い、財団には先ほど登場した「フリーマン型情動抑制異常ミーム」という、全人類に匂いを嗅がせるだけで恐怖を無くせる技術がある。
それでも、それを使っていいのだろうか?本当にそれが正解か?


ここであなたは、冒頭でO5-1から送られたメールを思い出す。

タイムリミットまでもうあまり時間がない。
君が打開策を検討しているのは知っているが、決断を迷う段階はもう過ぎつつある。
とはいえ、よく考えて投票を行ってほしい。 -O5-1




O5評議会投票ページ


ここで確認。

  • 何もしないとK-クラスシナリオが発生する。
  • K-クラスシナリオを阻止するためには全人類の恐怖を除去する必要がある。
  • ほかにも方法がある可能性は否定できない。
  • 財団には全人類の恐怖を数日で除去できる技術がある。
  • 財団はO5で承認され次第、すぐに恐怖を除去し始める。


以上を踏まえ、O5-13であるあなたには投票権がある。



よく考えて投票をしてほしい。




あなたは、フリーマン情動抑制異常ミームの全人類への散布、すなわち全人類から恐怖を除去することに賛成ですか?





























集計が完了しました。



ここでO5全員のコメントを見て行こう。全部引用すると長くなるので要約する。
O5の名前が緑色なら賛成赤色なら反対黒色なら無効票である。


O5-1「我々の目的は恐怖を無くすことではなく、恐怖に立ち向かうことだ。」

O5-2このまま戦っても負け戦。我々の使命は人類を恐怖から守ることであって恐怖に狂わせることではい。」

O5-3「1000年近くSCP-2998-JPと共にいるのに解決策が無いのは不自然。我々は指向を誘導されていたのでは?」

O5-4「こわがらないで」

O5-5恐怖から逃げる時代は終わりにし、新たなステージに進むべきだ。」

O5-6「こわがらないで」

O5-7「手が残されていないことを自覚するべきだ。」

O5-8「SCP-2998-JPの要求に従っても、SCP-2998-JPは我々に悪いようにはしないと期待している。」

O5-9「こわがらないで」

O5-10「我々には時間が残されていない。たとえ選んではならない選択肢であっても、選ばなければならない時がある。」

O5-11「最後通牒の時点で我々はすでに敗北しているが、たとえSCP-2998-JPに屈しても生き残れれば人類の勝利だ。」

O5-12「人類の発展のためには恐怖の存在は不可欠である。精神汚染のリスクを取ってでもSCP-2998-JPへの恐怖から逃れるために我々は歩を進めなければならない。」

O5-13「コメントなし」




結果

賛成7反対3無効票3につき


フリーマン情動抑制異常ミームの拡散が決定されました


この素晴らしい、恐怖という闇のない世界を共に生きていこう、こわがらないで

























集計が完了しました。



ここでO5全員のコメントを見て行こう。全部引用すると長くなるので要約する。
O5の名前が緑色なら賛成赤色なら反対黒色なら無効票である。


O5-1「我々の目的は恐怖を無くすことではなく、恐怖に立ち向かうことだ。」

O5-2このまま戦っても負け戦。我々の使命は人類を恐怖から守ることであって恐怖に狂わせることではい。」

O5-3「1000年近くSCP-2998-JPと共にいるのに解決策が無いのは不自然。我々は指向を誘導されていたのでは?」

O5-4「こわがらないで」

O5-5恐怖から逃げる時代は終わりにし、新たなステージに進むべきだ。」

O5-6「こわがらないで」

O5-7「手が残されていないことを自覚するべきだ。」

O5-8「SCP-2998-JPの要求に従っても、SCP-2998-JPは我々に悪いようにはしないと期待している。」

O5-9「こわがらないで」

O5-10「我々には時間が残されていない。たとえ選んではならない選択肢であっても、選ばなければならない時がある。」

O5-11「最後通牒の時点で我々はすでに敗北しているが、たとえSCP-2998-JPに屈しても生き残れれば人類の勝利だ。」

O5-12「人類の発展のためには恐怖の存在は不可欠である。精神汚染のリスクを取ってでもSCP-2998-JPへの恐怖から逃れるために我々は歩を進めなければならない。」

O5-13「コメントなし」




結果

賛成6反対4無効票3につき


フリーマン情動抑制異常ミームの拡散が決定されました


恐怖のない世界を恐れているのかい?その苦悩もじきに消え去るよ、こわがらないで




















これを読んでいるということは、選択肢を二つとも読んだのだろう。

そう、2つの選択肢で結末が変わらないのだ。どちらにしても、人類は「恐怖」を失うこととなる。

確かにO5-3のいう通り、ここ最近になって急にSCP-2998-JPが増えだしたのは不自然だし、我々は思考を誘導されていた可能性もある。

どちらにしても、人類が正常な活動を行うことは今後不可能だろう。よりによって人間にとって一番大事だと言われる「恐怖」という感覚を失ってしまったのだから、遠くないうちに人類は衰退してしまうと考えられる。
あるいは愛を失った世界のように歪な理想郷に変わるのかもしれない。


涅槃寂静という仏教の言葉がある。

煩悩が一切なくなった悟りの世界は静かな安らぎの境地であることを示す言葉だが、逆に言えば恐怖や苦痛が無いともいえる。

それを吉ととらえたSCP-2998-JPたちと、凶ととらえた人類。


一体、どちらが正しかったのだろうか?


いや、あなたがどう考えようと、投票の結果は「可決」。元からあなたはなにも選べない。

あなたは、無力だ。



この素晴らしい、恐怖という闇のない世界を共に生きていこう
こわがらないで





SCP-2998-JP

涅槃寂静





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最終更新:2024年04月24日 23:01

*1 報告書によっては、蒐集院(蒐集寮)と並んで異常存在を蒐集する、蒐集院のライバル的存在と描かれることもある。

*2 ヒトの感情をつかさどる脳の部分