ユニウス条約(ガンダムSEED DESTINY)

登録日:2023/03/10 Fri 00:14:49
更新日:2024/04/08 Mon 15:17:16
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ユニウス条約とは、『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』の世界に存在する架空の条約。



【概要】


第1次連合・プラント大戦の最終決戦、「第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦」終結から約半年後のC.E.72年3月10日、
地球連合とプラントの間で締結された停戦条約。これを以て大戦は正式に終結した。
戦争の結果として地球・プラント両方共致命的な打撃を受け、勝者が決まらないまま終戦へ向かっていたため、条約内容は後述するごく一部を除いて対等なものとなっている。

その名の通り、調印はユニウスセブン跡地にて行われた。

話題になるのが主に「NJC禁止」「ミラージュコロイド禁止」「兵器保有数制限」の三点であるため、
これらのみを定めた条約の様に思われがちだが、実際には他にも様々な条項が存在する。


【1.リンデマンプランの遵守】


スカンジナビア王国外相リンデマンが提唱した兵器保有数制限に関する項目。
各国は人口、GNP、失業率、つまりは国力に応じた分だけの軍事力を配備する事ができると定められた。

数十億人規模の地球連合に対して人口数千万人のプラントに不利な内容であり、
これを受けて両軍共に、特に不利なザフトは以降の新兵器にマルチロール性を強く意識する様になる。
またインパルスガンダムが三機の航空機に分割できる構造なのも、「MSとして存在する時間が戦闘中のみ」とする事で、
「普段は航空機である」という理屈でMSの保有数制限を潜り抜けるためである。
……とされる事が多いが、これは少なくとも放送当時は公式設定ではない*1
実際には他のセカンドシリーズの機能を持った上半身・下半身パーツも開発し、
インパルス一機でカオス・アビス・ガイアを切り替えられる様にする」事が本来の目標であり、
やはり「保有数制限に対応し一機のMSに幅広い機能を持たせる」ことを意図していた様である。


【2.賠償金放棄】


両軍共に痛み分けに近い形で戦争が終結した事から、地球連合とプラントの双方共に賠償金は無しとされた。
本編は勿論番外編でも設定上でも特に触れられる事が無いため少々影が薄い部分。


【3.戦争犯罪者は各国それぞれで裁くものとし、国際裁判は開かない】


1年半に渡る戦闘で両軍共に不当な虐殺行為が多発した大戦であったにもかかわらず、国際裁判で戦犯は裁かれなかった。
推測であるが、おそらくそれ故にあまりに被疑者が多く、キリが無さ過ぎてやってられないためではないだろうか。
というか第1次連合・プラント大戦で双方の行ったぶっ飛んだ戦争犯罪は既存の価値観で裁定できる範囲をとうに逸脱しているため、
軍部の実行者・その上官・指揮官、加えて議会及び政府機関、支援基盤だった財閥、大量破壊兵器の研究機関その他諸々、
真面目に全部処罰していたら連合・ザフト共に人が居なくなる可能性もある。
そもそも勝者がいないので裁こうにもまず戦犯の基準が決められないし、双方の被害がデカすぎて国際法廷すら開く余裕もなく
また連合にはアズラエルやサザーランド・ザフトにはザラ議長やクルーゼといった、既に死んでいる、かつ最も代表的な戦犯が存在する上、
よしんば他国の裁定に納得がいかなくとも互いに追及できる体力すら残っていないため、
もはや他の細かい調整は各国に任せて有耶無耶する以外に取り得る手段がなかったのだろう。

実際の各国の裁判例では、メインキャラではクルーゼは実際に「既に死んでいる戦犯」として処断されている事が語られている。
またイザーク・ジュールディアッカ・エルスマンが両名共に極刑に処されかけたが、*2
ギルバート・デュランダル議長が議会を説得した事により免れた事が語られている。
デュランダルの言う通りプラントでは成人とはいえまだ10代の若者である事を考慮した判決を出せるとも、
事情や本人に罪の自覚があるとはいえ特赦を出せる一例とも言え、「良くも悪くも」といった所。


【4.旧プラント理事国への関税優遇】


元々プラント建設に出資した理事国、大西洋連邦・ユーラシア連邦・東アジア共和国に対する優遇措置。
元々金を出した側である以上、理事国側からすれば然るべき条項であろうが、
元々それが嫌で独立戦争を起こした面のあるプラントとしてはあまり嬉しい文章ではないだろう。
とはいえ戦前程に露骨なプラント不利なものではなかったともされる。


【5.リンデマンプランに関する査察の無条件・無期限受け入れ】


第一項と重なるため割愛


【6.ニュートロンジャマーキャンセラーの軍事利用禁止】


核弾頭や、原子力空母・原潜・核エンジン搭載MSといった、兵器に対するNJCの使用禁止。
連合・ザフト共に、戦後は核エンジンを搭載したMSを主力量産機とするつもりでいたが、これにより両軍とも方針転換を余儀なくされたとされている。
要は作るな使うなだが、実の所ほとんど守られていない
特に地球軍は相変わらず核ミサイルやら核エンジン搭載機やらを開発・配備・使用している。
そしてやられたらやり返すが如くザフトも終盤になると核動力機を申し訳程度に型番偽装して投入する始末。

バッテリー機だと画面を派手に飛び回ってドカドカ攻撃が撒けない&電池切れを起こして絵面が地味になるからという制作の都合も見え隠れしている

【7.ミラージュコロイドステルスの使用禁止】


ガンダムシリーズでも殊更強力なステルス技術、ミラージュコロイドステルスの使用禁止。
NJCとは異なり「軍事」という文言が無いため、一般利用も含めて禁止された模様。
まぁステルス技術がどう平和利用できるという話でもあるのだが。

「ミラージュコロイド軍事利用禁止」とは言うものの、C.E.世界では一般ビームサーベルもミラージュコロイドの関連技術であり、
これを額面通りに受け止めるとビームサーベルまで使用不可能となってしまうため、
あまりに厳密に守り過ぎるのは却ってどちらの為にもならないと見做され、関連技術については有耶無耶にされる事となった。


【8.プラントのジブラルタル・カーペンタリア基地・在地球公館の設置】


プラントは地上の拠点として、最後まで守り通したカーペンタリア基地と、
一度は放棄したジブラルタル基地を保有し、そこにザフト側の地球監視団基地、プラントの地球の在外公館を設置する事が認められた。

その代わりにそれ以外の地上拠点は全て無条件放棄する事が定められた。
……のだが、『DESTINY』で再度開戦した頃にはペルシャ湾近くのマハムール基地や地中海のディオキア基地など、新たな基地が追加で建設されている。


【9.地球軍監視団基地・在プラント公館の設置】


同じく、地球側もプラントの監視団基地としてザフトの軍基地を一つ提供する事となった。


【10.月の中立地帯化・両軍に同数の月面基地設置許可】


大戦序盤は何度か戦場となり、それ以降は連合の勢力圏となり、終盤には大規模基地が壊滅した月面であるが、
これ以降は月は中立地帯とし、また両軍共に同数の月面基地を建設する事が認められた。

地球連合は壊滅したプトレマイオス基地に代わる拠点として新たにアルザッヘル基地とダイダロス基地を建設したが、
プラントは特に月面基地を追加建設する事は無かった。


【11.国境線の復旧】


国境線はC.E.70年2月10日の時点に復旧するとした。
開戦直後に南アメリカ合衆国が大西洋連邦に吸収され、大戦終盤にはオーブも大西洋連邦に管理される事となったが、
これにより両国は独立国としての権利を取り戻した。
南アメリカ合衆国は後に大西洋連邦に独立戦争を仕掛けており、結果的に南アメリカ合衆国にとっては大きな価値があったと見られる。


【地球連合・プラント以外の国々について】


ユニウス条約というのはあくまでも「地球連合とザフトとの間に結ばれた条約」である
その為、オーブやスカンジナビア王国といったどちらでもない国に対する拘束力を持つものではない
その影響で、後の設定追加でオーブは極秘裏にとは言えユニウス条約発効直後にミラージュコロイド搭載MSを開発していた事となった。

他にもキラらがNJCを装備したフリーダムを保有している事について「ユニウス条約違反ではないのか」という疑問が持たれる事もあるが、
連合でもプラントでもないオーブ所属のキラはユニウス条約に縛られるものではない。
つまり、「ユニウス条約違反ではないのか」といえば「条約違反ではない」。

「元々フリーダムはラクスがザフトから強奪した機体なんだから、いつまでも借りパクしてないで、とっととザフトに返還するべきではないのか。」
「個人が持つ兵器としては強大過ぎなのではないか。」

という意見もあるが、それは条約とは全く無関係の話である。

勿論、これらはあくまで「条約違反ではない」というだけの事である。
現実に例えればロシアの民間人が米軍から強奪したクラスター爆弾を積んだB-1爆撃機を動態保存しているようなものであり、
そしてロシアはオスロ条約に批准していないのでクラスター爆弾は条約違反ではないという意味での「問題無さ」である。
使用を制限する条約が存在するような、それも盗品の兵器を稼働状態で個人が保有している事の是非は別問題である事は間違いない。
(そしてその別問題が問題になる法律が作中に存在するかは明らかにされていない)
なお劇中ではオーブが(実質的に)フリーダムを保有している事についての指摘は特に描かれていない。
(もっとも、国家元首(カガリ)を誘拐されている時点ではフリーダムがオーブの物として扱われているかは怪しく、カガリが帰還した頃には既に戦争中な上フリーダムも大破しているので、指摘するタイミングはなかっただろう)

なお、「ジャンク屋」は連合でもプラントでもないが、言ってしまえば双方と取引とある会社なので(ユニウス条約を含む)両方の法律を守る必要があると思われる。
作中ではミーティアの使用を条約委違反だと止められるシーンがある(管理を任されている兵器を使うというのは、ユニウス条約以外の問題もあるだろうが)。

【実態】


以上のように、結論から言えばユニウス条約は、極めて遺憾ながらロクに機能しなかった
ルールの隙を突いたりお互い落としどころを見つけて有耶無耶にしてしまったり、甚だしくは堂々と無視したりと、
連合もプラントも前大戦の反省を受けてなお厳密に守っていた条約とは言い難いものであった。

ユニウス条約はあくまで「地球連合とプラントの間で」結ばれた条約であったため、
地球連合、とりわけファントムペインは「地球軍の正規部隊ではなくロゴスの私兵である」という、
文字通り申し訳程度の理由付けでミラージュコロイドを装備した艦を運用し、
挙句の果てには「条約違反のミラージュコロイドを隠すために条約違反の核エンジンとNJCを備えたNダガーN」などという、
条約違反の数え役満と言うべき代物まで開発・運用されている。

プラントも地球軍が条約を素直に守ってくれるとは思っていなかった様で、
核兵器を自爆させる防御兵器「ニュートロンスタンピーダー」を開発している。

『DESTINY』劇中に於いては第1話でいきなりファントムペイン所属のミラージュコロイド搭載艦が登場、
ブレイク・ザ・ワールド事件後に連合がプラントに宣戦布告した後はまたしても大規模核攻撃部隊を投入してさえいる。
ザフトも開戦後は核動力機であるサードステージを開発したり、その内の一機にはミラージュコロイドも装備されていたり、
ジェネシスの小型版であるネオ・ジェネシスを投入するなど、大戦中盤以降は条約はほぼ有名無実化していた。

開戦前からロクに守られてはいなかったが。
総じて再度の連合・プラントの開戦後は事実上ユニウス条約は破棄される事となった


【余談】


『SEED』自体が1stガンダムのオマージュ的な側面があり、
ユニウス条約も一年戦争の終戦条約、グラナダ条約と似た部分が見られる。
「戦争犯罪者は(生後間もないミネバ以外全員死亡し、ジオン公国の支配階層としては滅亡していた)ザビ家」としてそれ以外を問わず、
また賠償金の請求も無し、ジオン共和国の独立認可といった点が類似している。

一方、大量破壊兵器の取り扱いについては真逆であり、
NJCとミラージュコロイドの使用が禁止されたユニウス条約に対し、
一年戦争の終結に伴って核兵器の使用を禁止する南極条約が失効した事で、核の使用に明確な制限が無くなった。*3







追記修正はルールの抜け穴を突きながらお願いします。


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最終更新:2024年04月08日 15:17

*1 元々はファン間の考察であったが、今日ではこれを追認する形で半ば公式化しつつあり、公式ムックや外伝で「普段は航空機」説に対する言及がある。

*2 劇中では明確にされていないが、イザークは民間人の乗ったシャトルを撃墜した件が原因である事が示唆されている他、ディアッカは小説版では事実上ザフトを脱走し独断で三隻同盟に加担しあちら側の戦力として戦ったためとされている他、イザーク共々クルーゼの配下であった事も影響している可能性が匂わされている。

*3 なおグラナダ条約を認めず「ジオン独立戦争は終わっていないためGP02Aは南極条約違反」とデラーズは演説で主張した。最もそのデラーズによる星の屑作戦は「(強奪したGP02Aによる)核攻撃」「コロニー落とし」と南極条約違反ありきの作戦であり、デラーズもまた南極条約を守る気は更々なく、「連邦が破ったのでこちらも守る必要はない」と作戦の正当化に使われた見るべきか。