水星

登録日:2023/04/02 Tue 17:01:57
更新日:2023/11/18 Sat 22:47:49
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水星とは、太陽系の第一惑星。

●基礎データ

英名 Mercury
太陽からの距離 5791万km
近日点 4600万km
遠日点 6981.8万km
直径 4880km(地球の約5分の2/太陽の約285分の1)
質量 3垓3010t(地球の約18分の1)
重力 0.38(地球を1とする)
公転周期 約88日
自転周期 約58.65日(58日と約15時間)
太陽日 175.84日
表面温度(昼) 約430℃
"(遠日点時の昼) 約230℃
"(夜・日陰) 約-160〜-180℃
分類 岩石惑星
衛星の数 なし
地球に近づく周期 115日
年齢 約46億歳

●概要

太陽系で最も内側を廻っている惑星。
2006年8月に冥王星が準惑星に降格して以降は太陽系の惑星の中では大きさ・質量ともに最小で、
直径だけなら木星の衛星ガニメデや土星の衛星タイタンよりも小さい。
しかし内部には巨大な金属やケイ酸塩で構成された核を持っているため、質量は両衛星の合計*1以上ある。
衛星や環はない。
地球よりも内側を廻っているため、地球上からは日の出直前と日没直後のわずかな時間しか観測できず、
数ヶ月で位置が大きく変わるため実際に見るのはたとえ望遠鏡を使ってもかなり難しい。
見かけの明るさは-0.4等から5.5等まで変化し、暗く見える時期はより一層観測が難しくなる。
とはいえ条件が揃えば見ることは肉眼でも可能なので、紀元前14世紀のアッシリア人によるものと思われる星図表で既に存在を認知されていたようだ。
2020年5月22日には同じく地球の内側を廻る金星との接近が観測された。

1974年にNASAの探査機であるマリナー10号が初めて水星へ接近し、翌年3月16日には再接近した。
観測の結果多数のクレーターがあり、地球のとそっくりな環境であることが分かった。
太陽に最も近い故に太陽の強烈な重力の影響を受けやすく、また高温な為に探査機を到達させるのも至難の業で謎な部分もまだまだ多いが、
地球からの観測技術の発展により謎は解かれつつある。

英名のMercury(マーキュリー)はローマ神話の俊足の神メルクリウス(ギリシャ神話におけるヘルメスに相当)の名が語源。
後述する動きの速さにちなんで名付けられた。
また、水星の惑星記号☿(雌雄同体を表す記号でもある)はメルクリウスの杖『カドゥケウス』☤(あるいは羽根つき兜)を模している。
錬金術では金属を惑星に当てはめる考えから、水星は水銀と結びつけられた。mercuryはそのまま水銀を指す言葉にもなっている。
メルクリウスは死者を導く神でもある為、死の神という共通点のあるオーディン(ウォーダン)が水曜日(Wednesday)の語源となった。

古代中国では「辰星」と呼ばれ、五行思想ではその動きの速さを流れる水になぞらえ水行に当てられた。
この五行思想に由来する「水星」の呼称は、現代でも漢字文化圏で広く用いられている。


●公転と自転

太陽に最も近いので、公転周期は太陽系最速の88日、時速約17万640kmで公転する。
太陽を直径1mの球と仮定すると、水星は約41.6(近日点約33m〜遠日点50m)m離れたところを公転している直径約3.5mmの球になる。
軌道は楕円型で、地球の公転面に対して7度の傾きがあり、近日点と遠日点の差は約1.5倍と太陽系の惑星の中ではどちらも最大である。
そのため、水星の太陽面通過は黄道に水星があるタイミングでしか起こらず、平均7年に1度しか観測されない。

自転周期は約58.65日。
1965年にレーダー観測が行われる前には月などの衛星のように公転と自転が同期しているのではないかと思われていたが、実際には2:3 の共鳴関係にあった。
公転軌道の離心率が高いためこの共鳴関係は安定して持続しており、この共鳴関係により水星の1日は約176日となり、1年よりも1日の方が2倍も長い
これは金星の115日を大きく離して太陽日は惑星の中では最長である。


●環境・地形

表面積は約7479.7万㎢で、地球のユーラシア大陸の約1.5倍、インド洋とほぼ同じ広さである。
太陽に近いため受ける放射量は地球の約6.6倍にもなり、強い熱を浴びせられるため昼には430℃にもなる。
遠日点では受ける熱量が減るため230℃程度まで下がる。
一方で大気がほとんどなく地表に熱を保つのが難しいため夜には-180℃まで低下する灼熱地獄と極寒地獄を繰り返す苛烈な環境にある。
同様に日陰も夜と同じ温度になる。

従って「水星」なんて名称なのに、地表に海や川などの液体として存在する水は全く無い
しかし、このような高温に常に晒されながら、極地方には永久影になる場所があり、その部分に氷が存在することが1992年の観測によって発見された。

水星の地形の最大の特徴として、カロリス盆地が挙げられる。
直径は約1550mと水星の直径の約31%にも及び、約36億年前に直径100km程度の小惑星の衝突によって作られたと考えられている。
盆地内には標高3000〜4000m級のカロリス山脈が存在する。
なおこの時に衝突した小惑星が少しでも大きかったら水星が粉々になっていた可能性もあると言う。

上述した通り地表にはクレーターが多く月とよく似ているが、カリウムや硫黄、ナトリウムなどの揮発性が高い成分が
月面と比べて桁違いに多いことが明らかとなっていて、形成過程は似て非なるものとなっている。


●創作作品における水星


小説

  • 『堂々巡り』(1950)

  • 『いちばん寒い場所』(1964)
ノウンスペース・シリーズの短編。水星の公転と自転は同期しているという前提で描かれたが、その翌年に同期していないことが判明したという曰く付きの作品。

  • 『宇宙のランデヴー』(1973)
2130年を舞台に、太陽系に進入した異星の宇宙船ラーマとのファースト・コンタクトを描いた作品。

  • 『サンダイバー』(1980年)- 知性化シリーズの長編。

  • 野尻抱介『太陽の簒奪者』(2002年)

  • ベン・ボーヴァ 『Mercury』 (2005年)

漫画

連載初回におけるコブラの過去話で、荒れ狂う水星の嵐の中で銀河パトロールと銃撃戦を繰り広げた事が回想されている。


エンペラ空軍参謀のブラック指令が洗脳した闘士ウルトラセブン21と共に上陸し、太陽をウルトラキーで破壊しようとした
本作はブラック指令を倒した所で連載が終了したため、事実上水星近海が最終決戦の場となっている。

アニメ

タイトルに水星を冠しているだけあり、主人公のスレッタ・マーキュリーは物心付く前に水星軌道基地「ペビ・コロンボ23」に移住しそこで育っている。
そして本編開始時のアド・ステラ122年に水星を離れ、フロント73区・アスティカシア高等専門学園のパイロット科2年に編入学してきた。なのでストーリーの舞台というわけではない。
ガンダムシリーズで水星が人類の活動圏とされるのはこれが初めてだが、これまで語ってきた通りの非常に過酷極まりない環境にある。
これらに耐えながら行われるパーメットなどの資源採掘を主要産業としていたが、月でも採掘が可能になると急速に衰退し、子供はスレッタ1人だったようでいわゆる限界集落で学校もない状態にある。

いずれも終盤の戦いで金星共々破壊されてしまう。『ガンバルガー』では魔王を倒したら元に戻ったが、『バルディオス』では……

本作での水星はあらゆる兵器製造業のギルドが集まる太陽系の兵器庫で、どの勢力にも属さない中立地帯となっている。
本作でも最終的に爆破されてしまうが、黒幕の壮大な野望から人類を救う為に味方陣営によって爆破されるという珍しい立ち位置。
ちなみに水星以外にも土星の衛星タイタン、海王星のトリトン、木星のイオ、エウロパ、ガニメデ、カリストが一緒に爆破されている。

メディアミックス

水星から飛来した最強の生物ORT(オルト)が登場する。
未発表の小説『鋼の大地』のキャラクターとして公表され、以後複数の媒体で「とにかく強い生物」として名前や存在が仄めかされるも一行にその全貌が明らかにならず、スマホゲームFate/Grand Orderの第二部第七章で登場するまで実に20年以上も「未登場だけど設定上世界最強らしい生物」というフワフワした存在であり続けた。



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最終更新:2023年11月18日 22:47

*1 ガニメデ約1垓4820京t、タイタン約1垓3452京t