大阪市高速電気軌道中央線/近鉄けいはんな線

登録日:2023/05/09 Tue 00:10:29
更新日:2024/03/25 Mon 19:29:12
所要時間:約8分で読めます




大阪市高速電気軌道中央線とは、大阪市交通局→大阪市高速電気軌道(Osaka Metro)が保有する、コスモスクエア駅と長田駅を結ぶ地下鉄路線。
近鉄けいはんな線とは、長田駅と学研奈良登美ヶ丘駅を結ぶ近畿日本鉄道の路線である。
両者は相互直通運転をしており、事実上一体の路線となっているため、本項では両方とも扱う。

路線カラーはスペクトリウムグリーン、路線記号はC

両線区通して「ゆめはんな」の愛称が設定されている。


概要

Osaka Metro中央線

御堂筋線と直角に交わり、大阪の東西の交通を担っている。
東西の通勤需要のほか、沿線に海遊館、上沼恵美子邸こと大阪城といった観光地も存在するため経常収支約53億円の黒字、営業収支約57億円の黒字、そして営業係数は66.0と御堂筋線に次ぐ値を出しており、全体乗客数も4位になっている。

路線名の由来は中央大通という道路の真下に建設されたことから。
大阪港~阿波座間は地盤沈下および浸水被害防止の観点から高架となっており、撮影スポットとしてもおなじみ。ちなみに当初の開業区間はここから。

コスモスクエア~大阪港間は大阪港トランスポートシステム(OTS)という別事業者の路線として開業し、2005年に同線へ編入した歴史がある。

森ノ宮に車両工場があることから、谷町線・四つ橋線・千日前線とは連絡線を介して直接繋がっている。特に車両面では谷町線との関係が深く、同じ6両固定編成ということもあってか車両のトレードが頻繁に実施されている。また千日前線は線内に車庫が無いため、阿波座を経由して森ノ宮に入出庫する光景が毎日見られる。


近鉄けいはんな線

近鉄奈良線の混雑緩和を図るバイパス線として計画され、1977年に子会社の「東大阪生駒電鉄」名義で建設を開始。
その後同社は近鉄に吸収合併され、1986年10月に「近鉄東大阪線」として長田~生駒間が開業した。
その後、関西文化学術研究都市(学研都市)と大阪を結ぶアクセス路線として2006年に生駒~学研奈良登美ヶ丘間が延長開業。この時路線名が現在のけいはんな線に改称された。

中央線の延長区間として建設されたため、大手私鉄では史上初となる第三軌条による集電方式を採用した*1
最高速度95km/hは第三軌条方式の路線では日本最速である(中央線は70km/h)。ついでに運賃も場合によって日本最高になることも。
計画当初は急行列車の運行も検討されていたが、費用対効果の面から現時点では見送られている。

なお、検査は大阪線沿線の五位堂検修車庫で行われているため、南大阪線の車両と同様に専用の電動貨車によって五位堂まで回送される。

ワンマン運転を行っており、ホームに転落検知用の赤外線センサーがついているのも特徴。降りてはいけません。こわいでんきがながれています。


運行形態

東西を横断しているにもかかわらず折り返し設備が少ないため、ほぼ全ての列車がコスモスクエアを起終点として、そのほとんどが近鉄けいはんな線への相互直通運転を行う。
区間列車は朝夕ラッシュ時の森ノ宮止まり、夜の長田までの線内折り返し、学研奈良登美ヶ丘発終電の生駒止めぐらいしかない。
朝ラッシュ時には最短3分15秒間隔で、昼間時間帯は7分30秒間隔で走っているが半数が生駒駅で折り返す形となっているので、日中に学研奈良登美ヶ丘まで運転するのは毎時4本となっている。


車両

開始当初は単行だったが乗客増に伴い増結が進み、現在は全ての車両が6両固定編成となっている。

現在の車両

Osaka Metro

  • 30000A系
2022年に導入。
御堂筋線や谷町線に導入されている同型車の中央線版…なのだが、大阪・関西万博による輸送力増強として登場したため将来的には谷町線への転属が予定されている。
そのため車両番号の千の位は谷町線と同じ「2」となっており、下二桁は50番台に区別されている。
外観デザインは車体全般に水玉をちりばめ、従来の同形式と大きく異なる。

  • 400系
20系・24系の置き換えを目的に登場したOsaka Metro発足後初の新形式。
前面のインパクトがかなり強烈で、「宇宙船」「G-SHOCK」「バトルドーム」はたまた「オニゴーリ」など様々なあだ名をつけられている。
デザインはE7系やE261系などを手掛けた奥山清行氏。
車内にもUSBポートが設置されているほか、4号車はAGT車両のような固定クロスシートが配置されている。
将来の自動運転も見越した設計がなされている。

当初は2023年4月末の営業開始を予定していたが、機器類の調整が難航し同年6月25日に延期された。

近鉄

電算記号は両形式ともHLが付番されている。
  • 7000系
東大阪線開業と同時に導入された。
パールホワイトにソーラーオレンジ、アクアブルーの帯という従来の近鉄一般車とは大きく異なるカラーリングが特徴で、この意匠は東大阪線の各駅にも意匠として反映された。
前面形状は左右非対称で、近鉄の一般車では初めて前照灯が運転台の下に装備された。
裾が大きく絞られた独特なスタイルをしているが、これは前述の五位堂へ回送する際にホームと接触しないようにするためのものである。そのため普段はステップを取り付けて隙間を埋めている。
スーパー・エレクトロニック・コミューターなる愛称があるらしい

けいはんな線開業時に7020系に準じたリニューアルが行われ、その後ホームドア設置を見越してATOの設置やマスコンのワンハンドル化が進められた。
ほぼ同期の20系が廃車となる中、いったいいつまで使うつもりなのだろうか…。まあ近鉄だし。
1987年鉄道友の会ローレル賞受賞。

  • 7020系
けいはんな線開業に備えて製造された編成で、4編成在籍。
内装や機器類は当時増備されていた「シリーズ21」の設計がフィードバックされている。
側面窓は7000系の一段下降から上下分割式となり、7000系もリニューアルに際してこの形に変更された。
なお外観はほぼ7000系そっくりなのでよく見ないと分かりづらい。

過去の車両

  • 50系
御堂筋線の延長開業用に導入された大阪市営地下鉄初のユニット車両で、30系の導入に伴い同線へ転属した。
後年アッシュグリーンにラインカラーを配した標準塗装に変更されたが、同線向けは視認性向上も兼ねて前面の下半分がグリーンとなり、かなり武骨な見た目となった。
20系の導入に伴い、1989年に撤退。

  • 30系
ご存じ、大阪市営地下鉄第三軌条のスタンダード。
アルミとステンレスの両タイプが在籍した。
地上区間を走ることから、御堂筋線向けの車両とともに前面のライト周りにもラインカラーが入っていた。
24系の導入に伴い、1995年に撤退。

  • OTS系(初代24系50番台)
OTS線開業時に2編成登場。
正式な形式番号は存在しないが、編成番号は650Fと表示されていた。
基本設計は24系と共通だが、独自の青系の塗装やシートモケットなどでオリジナリティを主張していた。
OTS線の編入後は24系50番台を名乗りしばらくはそのままで運用されたが、谷町線に転属し22系に変わりモケットも変更された。
それでもロゴを貼りなおした跡や車内の化粧板の色が微妙に違うことで判別可能。

  • 20系
中央線の輸送力増強および30系・50系の置き換えとして1984年に登場した。
車体構造は御堂筋線の10系に似ているが、高速電気鉄道では日本初となるVVVFインバータ制御を採用した。
1989年には谷町線にも導入され、こちらは30番台に区分されている。

けいはんな線開業に合わせて速度向上、車内にLED案内表示器設置などの改造を実施し、制御装置は全車IGBTに更新された。
これに合わせて前述の30番台車も全車同線に集結し、代替として24系と元OTS系が谷町線に転属している。
30000A系・400系の導入に伴い廃車が進行し、2024年3月20日のさよなら運転で引退。定期運用は後述の理由から同年2月で終了していた(勿論パニック対策でもあるが)。

  • 24系
VVVFインバータ制御を取り入れた第三軌条各線のステンレス車体の主力車両・新20系シリーズの中央線版。
数は多い…と思いきや2023年5月には2編成までに減らされた。

どうしてこうなったのかというと、前述の谷町線との大規模トレードを実施したため。ボロをつかまされたとか言わない。

そのため、けいはんな線開業時には4編成だけになってしまっていた。その後、20系試作車の廃車と同時に四つ橋線から1編成が2代目24系50番台として転属し5編成体制で稼働していたが、20系と同じ理由で谷町線に転属ないし四つ橋線に戻されたりしたため。

400系の導入に伴い、谷町線へ転出する形で撤退。


駅一覧

駅番号 駅名 乗り換え
C10 コスモスクエア 南港ポートタウン線(ニュートラム)
C11 大阪港
C12 朝潮橋
C13 弁天町 JR大阪環状線
C14 九条 阪神なんば線
C15 阿波座 地下鉄千日前線
C16 本町 地下鉄御堂筋線・四つ橋線
C17 堺筋本町 地下鉄堺筋線
C18 谷町四丁目 地下鉄谷町線
C19 森ノ宮 地下鉄長堀鶴見緑地線、JR大阪環状線
C20 緑橋 地下鉄今里筋線
C21 深江橋
C22 高井田 JRおおさか東線(高井田中央駅)
C23 長田 中央線とけいはんな線の境界駅
C24 荒本
C25 吉田
C26 新石切
C27 生駒 近鉄奈良線・生駒線・生駒ケーブル
C28 白庭台
C29 学研北生駒
C30 学研奈良登美ヶ丘

駅解説

  • C10 コスモスクエア
南港ポートタウン線(ニュートラム)乗り換え。
ちなみに中国語表記は「宇宙広場」となんかカッコいい。
駅手前が急カーブのため引き上げ線方式となっており、2番線側は降車専用ホームとなっている。
バブル感あふれる派手な内装や書体の違う駅名標など、OTS時代の名残りが今なお残る。
当駅出発後、咲洲トンネルを通りながら高度を上げていき、次の大阪港駅手前で地上に出て高架区間を走る。
ちなみに引き上げ線は夢洲方に延伸する構造となっており、ここから夢洲に繋がる予定である。

なお、大阪メトロの始発駅は将来の延長などを考慮して11番でスタートするが、前述の通り駅番号導入時はコスモスクエア〜大阪港間がOTS線だったことから、10番から付番されている*2

  • C11 大阪港(天保山)
天保山および同エリアにある天保山マーケットプレイス、海遊館の最寄駅。
そのため観光客で賑わっている。

  • C12 朝潮橋
森ノ宮検車区開業前はここに検車区を設置していた。
ここから新石切まで阪神高速16号大阪港線および同13号東大阪線と並走する。

  • C13 弁天町
JR大阪環状線乗り換え。両線の交差部分にある共有橋脚が特徴。
ちなみに「地表からの高度が日本一高い」地下鉄駅で、環状線の上にホームがある。

  • C14 九条
阪神なんば線乗り換え。
阪神なんば線ができたことにより、「地下鉄の中央線が高架を走り、逆に普通の鉄道の阪神が地下を走る」という妙な逆転現象が発生している。
更に両線とも近鉄に乗り入れていることに加え、その近鉄も奈良に九条駅を有し、果ては乗り入れる京都市営地下鉄烏丸線にも九条駅が存在することから、「全ての九条駅に近鉄の電車が乗り入れている」と鉄道ファンからネタにされている。
ちなみにWikipediaの九条駅にも曖昧さ回避ページとしては珍しく、その辺りの解説が記載されている。

ここから次の阿波座の間で再び地下へ潜る。

  • C15 阿波座
千日前線乗り換え。
前述の通り、千日前線との連絡線が当駅構内に存在する。

  • C16 本町
御堂筋線・四つ橋線乗り換え。
当駅と堺筋本町の間に「船場センタービル」があり、立地の関係上この区間のみ上下線が広くなる。その関係で当駅構内が学研奈良登美ヶ丘駅方に向かってハの字状に広がる構造となっている。
また前述の通り、コスモスクエア方に四つ橋線との連絡(ry。

  • C17 堺筋本町
堺筋線乗り換え。
1面2線構造だが、上下線が広いままのため、実質2面2線のような構造となっている。
学研奈良登美ヶ丘駅方で上下線の間隔は元に戻る。

  • C18 谷町四丁目
谷町線乗り換え。
前述の通り、谷町線(ry

  • C19 森ノ宮
長堀鶴見緑地線、JR大阪環状線乗り換え。
Osaka Metroで数少ない2面3線構造の駅。1番線が森ノ宮車両基地と繋がっており、ここから入出庫が行われている。

  • C20 緑橋
今里筋線乗り換え。

  • C21 深江橋
1985年までは終着駅だった。

  • C22 高井田
JRおおさか東線乗り換え。
なお、JRの乗換駅は大和路線の同名駅との区別のため、中央大通に因んで「高井田中央駅」と名付けられている。

  • C23 長田
中央線とけいはんな線との境界駅。
けいはんな線方はワンマン運転となるため、1番線側のみにセンサーが取り付けられている。

  • C24 荒本(東大阪市役所前)
けいはんな線改称時に「東大阪」の名称が無くなることから「東大阪駅に改称しろ」と一部の東大阪市議がゴネたより意見が出たとか。
そのためなのかは不明だが、東大阪市役所前という副駅名がある。
地下区間はここまで。隣の吉田駅との間で再び地上に出る。当駅もかなり浅い位置にあり、ホーム前後には明かり区間がある。

  • C25 吉田
「よしだ」ではなく「よした」と読む。
ここから高架区間。
改札口が分離されており、上下線ホームでの行き来はできない。上を阪神高速が通っており、ホームの一部では屋根代わりになっている。

  • C26 新石切
前述の急行運転構想から、待避可能な中線を持つ島式の2面3線構造となっている。
2番線は滅多に使われず第三軌条のため、1番線側(学研奈良登美ヶ丘方ホーム)は柵で仕切られている。高架上にあり、高速道路や高い建物、架線などの遮る物がないため見晴らしが良い。

なお、当駅〜生駒間は「生駒トンネル」を走り、生駒山脈を横断する。
ちなみに何故近鉄奈良線の「新生駒トンネル」より後に出来たのにもかかわらず、旧生駒トンネルと同じ名乗っているのかというと、実際に旧生駒トンネルの奈良方坑口の一部区間を流用しているため。

  • C27 生駒
近鉄奈良線・生駒線・生駒ケーブル(鳥居前駅)乗り換え。
旧東大阪線区間の終点。
奈良線・生駒線との間には中間改札が設置されている。トンネルが近く駅構内が非常に狭いため、奈良線のスペースを削って開業している。

  • C28 白庭台
ホームの学研奈良登美ヶ丘方はトンネル内にある。学研北生駒駅はトンネル越しに見えるほど近い。

  • C29 学研北生駒
当初は北大和と仮称されていたが、生駒市長の要望や学研都市高山地区に近いことから現在の駅名になった経緯がある。駅周辺はまだまだのどかな風景が残る。

  • C30 学研奈良登美ヶ丘
終点。留置線が併設されている。駅前にイオンがある。
高の原まで延伸する計画があり、それを見越した構造となっている。


今後の予定

2023年の森ノ宮駅を皮切りにホームドア設置を開始しており、2025年3月までに全駅への設置を完了する予定。これに先立ち2024年3月からはTASCの使用を開始し、同装置の無い20系は定期運用を離脱した。

中央線は現在2025年の大阪・関西万博および統合型リゾート開業に合わせ、コスモスクエア~夢洲間の延伸工事が実施されており、2024年度に開業予定となっている。また、森ノ宮車両基地の回送線を旅客化し大阪公立大学前新キャンパスへのアクセス路線として整備する構想を明らかにしており、こちらは2028年春の開業を目指している。

近鉄特急を当線経由で夢洲まで直通させる構想があり、日本初となる第三軌条・架線集電の両装置を搭載した車両の開発計画もある。*3



追記・修正は「ゆめはんな」の呼称を定着させてからお願いします。




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最終更新:2024年03月25日 19:29

*1 同線以外では2006年から大手私鉄になった東京メトロ銀座線および丸ノ内線も該当するが、両線とも特殊法人である営団地下鉄時代に開業している。

*2 接続するニュートラムも同じ理由で「P09」からスタートしている。

*3 大阪市営地下鉄開業当時から周辺私鉄との直通は構想されており、その準備として電圧が1500Vの半分である750Vにしたり、トンネル断面を若干広めにして開業した経緯がある。