Doraemon -Gadget Cat from the Future-

登録日:2023/05/14 Sun 11:46:00
更新日:2024/04/18 Thu 00:06:22
所要時間:約 18 分で読めます





Hey,there! My name is Doraemon!


Doraemon -Gadget Cat from the Future-』(ドラえもん ガジェット・キャット・フロム・ザ・フューチャー)とは、アメリカ・ディズニーXDで放送されているアニメシリーズ。

日本ではみんなお馴染み、『ドラえもん』のアメリカ版である。


●目次




【概要】

2005年4月よりスタートした水田わさびら声優陣によるテレビアニメ『ドラえもん』の北米ローカライズ版

完全オリジナル作品というわけではなく、藤子プロ・テレビ朝日シンエイ動画による日本国内で放送された本家『ドラえもん』の一部内容をアメリカのテレビ放送向けに修正・アレンジを加え、英語吹き替えを行った作品である。制作はアメリカの総合制作会社・バングズーム! エンタテイメント。
全52話。第2シリーズまで制作された。


オリジナル版と同様、製作にはテレビ朝日とADK(いずれもシーズン1のみ)、シンエイ動画が携わっている。また、テレ朝はシーズン2の配給も行っている。

2014年7月7日よりアメリカ版ディズニーXDで放送を開始。日本ではこれを記念して同年7〜8月にかけて六本木ヒルズ内で開催されたイベント『テレビ朝日・六本木ヒルズ夏祭り SUMMER STATION』にて、日本語字幕を付けたものが上映された。

その後、2016年2月1日より日本国内のディズニー・チャンネルで「Doraemon」の放送をスタート。一部エピソードでは英語版の内容に合わせる形で、日本語吹き替えとして水田らおなじみの声優陣が再度新規録り下ろしを行っている。
なお、オリジナル版を放送しているテレ朝系列・BS朝日・CSテレ朝チャンネルでは未放送。


●徹底したローカライズ

特筆すべき点は何と言っても、細部に至るローカライズによってアメリカンチックに改変された内容。「ドラえもん」のアメリカ上陸がニュースで報じられるやいなや、多くのドラえもんファンの間では「全米進出」を喜ぶ声が挙がると共に、その変更内容についても大きな話題を呼んでいた。
特に「ピザを食べているドラえもん」のカットはそのインパクトから大胆なローカライズを象徴する一コマとして当時のワイドショーや情報番組でも盛んに取り上げられていた(※詳細は後述)。

作中の日本語表記が英語に書き換えられている他、日本円の紙幣がドル紙幣に差し替えられるなど、アメリカ現地の文化や風習、放送ガイドラインに合わせてストーリーや演出面でも様々な改変が行われている。また、物語の舞台やドラえもんやドラミを除く主要キャラクターの名称も英語圏テイストのものとなっている。

日本では馴染み深い主題歌についても使用されておらず、BGMや効果音などを含めて変更されており、オリジナルのほのぼのとした雰囲気より近未来SF風かつアップテンポなBGMが多く使われている。
オープニングでは主題歌が流れない代わりにドラえもん自ら簡潔な挨拶と自己紹介を行う。エンディングでは『夢をかなえてドラえもん』の一部映像に乗せてキャスト・スタッフクレジットが表示された後、テレビ朝日・シンエイ動画・バングズーム! エンタテイメントの各クレジットが表示される。

本家日本語版との違いを比較しながら観てみるのもまた一興かもしれない。

ギャグ色の強いエピソードからの選出が多く、感動・シリアス系のエピソードは少ない。

記念すべき第1話は『未来の国からはるばると』を原作とした『ALL THE WAY FROM THE FUTURE WORLD』。本家では2006年4月21日のスペシャルで放送されたもので原作に相当するストーリーはのび太の回想という扱いだった。今回は回想以外のシーンをカット・再編集し現在進行形という形にすることで「ドラえもんとのび太の出会い」を描いた事実上の第1話としている。




【登場キャラクター】

※名称・声優表記は「アメリカ版/日本語版」の順。

Doraemon(ドラえもん)
声 - モナ・マーシャル/水田わさび

「ハロー!ぼくドラえもん!」

おなじみ22世紀から来たネコ型ロボット。アメリカ版では「Gadget Cat」と表現されている。

のび太たち主要キャラクターの名称が英語圏に合わせたものに変更されている中で、ドラえもんとドラミだけはそのままとなっている。

大好物はYummy bun(ヤミー・バン)(おいしいバンズ)」…要するにドラ焼き。正確な英訳は「Bean-jam pancake(ビーンジャム・パンケーク=あんこのパンケーキ)」となるのだが、主人公の好物ということで響きの親しみやすさを重視したのだろう。
ドラ焼きが好きという特徴は日本版と変わらないが、「子供番組における健康志向の食生活推進」という放送ガイドラインが存在する事情から、原作では大量のドラやきを頬張るシーンだったものがアメリカ版では量を控えめなものにするなど変更がなされている。

なお、アメリカ版の放送が決定した当時の一部ニュースでは「ドラえもんの好物がピザに変更された」などと大々的に報じられていたが、これは『NOBY'S TURN AT BAT(変身!ドラキュラセット)』のエピソードで「救急箱を持って鼻に絆創膏を貼っていたドラえもん」が「ピザを食べているドラえもん」に差し替えられた一場面*9「アメリカ版ドラ=ピザが好き」と大きく誤解されたことによって生じたデマである。そのせいで巷では「ピザえもん」などと呼ばれていたとかいないとか。ドラえもんがピザを食べるのは後にも先にもこの回だけなので要注意。

本家ではしばしば周囲から「タヌキ」と間違われるネタが有名だが、こちらでは「アザラシ」に間違われている。これは海外におけるタヌキ(ラクーンドッグ)に対するイメージが日本と大きく異なる事情やアメリカ人にとってタヌキが馴染みのない動物である背景などを考慮した変更であると思われる。

ディズニーが絡んでるからと言って「ネズミ嫌い」まで抹消されてはいないのでご安心を。


Noby Nobi(ノビー・ノビ)/野比のび太
声 - ジョニー・ヨング・ボッシュ/大原めぐみ
名前が「ノビー」となった理由は、英語圏では「ノビタ」という名前の響きが女性的に聞こえてしまうためとの事。

前述の通りアメリカでは好ましくないとされる性格であることによる対処か、号泣するシーンで涙の描写が消されるなど泣き虫な性格を誇張表現した演出が極力抑えられている。

のび太の落第っぷりを象徴するテストの「0(点)」は、アメリカ国内の採点方式に準じて「F」*10という表記に変わっている*11


Sue(スー)/源静香
声 - カサンドラ・モリス/かかずゆみ
「シズカ」という名の発音が難しいことによる名称変更だが、厳密には「Sue」はニックネームであり、本名は従来通り「Shizuka」という設定である。

舞台が放送規制の厳しいアメリカということで、彼女を語る上で外せない入浴シーンに対する扱いが放送前から不安視されていた。結果、スクール水着を着てお風呂に入るという表現に修正されることに。
この他、控えめでお淑やかな言動はより活発でボーイッシュな印象を与え、タイムカプセルに入れるものが「女の子の人形」から「日記帳」に差し替えられるなど、本家よりも「積極的で元気な女の子」というキャラクター性が押し出されている。

これは、ローカライズ制作前にアメリカ現地の子供たちへ本家ドラえもんのアニメを視聴させた際、「彼女のおとなしすぎる性格を変えるべき」などステレオタイプな女性的かつヒロイン然とした性格設定に対する意見が数多く挙がったことによるものである*12静香改めスーの設定は、良くも悪くも現代のアメリカ文化を色濃く反映させた『Doraemon』の象徴と言うべきか。



What’s mine is mine. What’s yours is mine!

そのまま「Gian」かと思いきや、体のデカさをダイレクトに表した新たなニックネームに。「G」と聞いてアレの方を想像してはいけない。
そもそも「ジャイアン」の語源にあたる「Giant」が「大柄だがのろくてボンヤリしている」というニュアンスを含むため、彼のキャラに相応しくないと判断が下されたのだと考えられる。原作初期の頃は確かにボンヤリしたキャラだったが。
ただ、前述の通り過度な暴力やいじめの描写は抑えられており、性格そのものはやや落ち着いたものになっている。

なお本名はそのまま「Takeshi Goda」である。

彼を象徴する格言「おまえのものはおれのもの、おれのものもおれのもの」は上記のように忠実に訳されている。
あの恐怖の創作料理「ジャイアンシチュー」も第6話Bパート『BIG G:MASTER CHEF』で登場。

ちなみに妹のジャイ子Little G(リトル・ジー)』、飼い犬のムクはPork Chop(ポークチョップ)』という名前になっている。

自宅の「剛田商店」はGoda's Goods(ゴーダズ・グッズ)』と訳されている。


Sneech(スニーチ)/骨川スネ夫
声 - ブライアン・ビーコック/関智一
「スネオ」の発音が「Snail(カタツムリ)」に似ているため、「あざ笑う」を意味する「Sneer」にちなんだ「Sneech」という名前に変更された。彼のイヤミな性格を表すだけでなく「スネ夫」の語感にも近いネーミングである。






Dorami(ドラミ)
声 - ウェンディー・リー/千秋
ドラえもんと同様、名称変更はなし。
第12Bパート『GO TO THE DOCTOR,DORAEMON!(ドラえもんが重病に?)』ではなぜか彼女の出番が全てカットされ一切登場しないなど謎の冷遇を受けている。
実質的な初登場回は第17話Aパート『DORAEMON, SQUARED(四角いドラえもん)』とかなり遅い(アメリカでの放送順)。


Ace Goody(エース・グッディ)/出木杉英才
声 - スパイク・スペンサー/萩野志保子


Mr. S(ミスター・エス)/先生
声 - キース・シルバースタイン/高木渉


Mr. Rumbleton(ミスター・ランブルトン)/神成さん
声 - 不明/宝亀克寿
Rumble」は「(カミナリが)ゴロゴロ鳴る」の意。


Soby Nobi(ソビー・ノビ)/セワシ
声 - マックス・ミッテルマン/松本さち
有名な第1話の「東京・大阪理論」に関する台詞はカットされている。




【主なひみつ道具の対訳】

日本語名 英語名
タケコプター Hopter(ホプター)
どこでもドア Anywhere Door(エニーウェア・ドア)
アンキパン Memory Bread(メモリー・ブレッド)
ほんやくコンニャク Translation Gummy(トランスレーション・ガミー)
通りぬけフープ Pass Loop(パス・ループ)
タイムふろしき Time Kwechief(タイム・カーチーフ)
もしもボックス What-If Phone Booth(ホワット-イフ・フォン・ブース)
スモールライト Shrink Ray(シュリンク・レイ)
まあまあ棒 Chill Out Stick(チル・アウト・スティック)
ウマタケ Sky Horse(スカイ・ホース)
ソノウソホント Truthbeaker(トゥルースビーカー)
ナゲーなげなわ Infinity Lasso(インフィニティ・ラッソ)
フリダシニモドル Reset Roller(リセット・ローラー)
きんとフード Cloud Chow(クラウド・チャウ)


【その他日本語版との主な相違点】

前述の通り、物語の舞台はアメリカのとある町に変更されており、作中の日本語表記が英語表記に書き換えられているだけではなくアメリカの文化・風習にそぐわない描写、その他放送コードに抵触するおそれのある表現についても多くの変更点が存在する。
  • のび太たちの住む町は、日本の「東京都練馬区月見台すすきが原」から、アメリカ合衆国内の架空の町に変更。第25話Bパート『WHAT DAY IS TODAY?(真夏に冬がやってきた)』では、ママが星条旗を片手に「7月のお祝い事なんて独立記念日ぐらいしかない」と発言している。
  • 先述したようにドラえもんの食べるドラ焼き(ヤミー・バン)の量が控えめに描写されている。また、のび太のおやつがフルーツなどに差し替えられるなど健康的な食生活を視聴者へ推進するような配慮がなされている。ピザはいいのか…。
  • 通貨は円からドルへ変更。登場する日本円の硬貨・紙幣もきちんとドルに描き替えられている。それに伴い日本語吹替でも金額単位が含まれた台詞が新規に収録されている。
  • のび太が号泣するシーンの一部で涙(噴水のように噴き出す演出)の削除(『THE SKYHORSE!(走れ!ウマタケ)』など)。
  • のび太がおねしょをするシーンや全裸になるシーン、ペットの石がおしっこをするシーンなど、下品と見なされるネタがカットまたは葉っぱや煙で大部分を隠している。
  • 顔や体にできたかすり傷・腫れなどの描写が消去されている。
  • 「のび太が顔を墨で塗りたくられるシーン」で、墨の色が黒から緑に変更(『ALL THE WAY FROM THE FUTURE WORLD(未来の国からはるばると)』)。おそらく黒人差別に抵触する描写の規制と考えられる。ただし吹替版では「墨」と呼んだままなので少し違和感が生じている。
  • ムクがジャイアンの料理を味見させられるシーンなど、動物虐待と見なされる描写がカット。
  • 箸はフォークに、オムライスや焼き芋など欧米圏であまり馴染みのない料理は別の食べ物に差し替えられている*13




【余談】

  • 副題の『Gadget Cat from the Future』は、アメリカ版アニメ制作にあたり考案されたものではなく、2002年に小学館から発売された「ドラえもん」の英訳版コミック『Doraemon ― Gadget cat from the future』の頃から存在する。また、本家オープニング主題歌「夢をかなえてドラえもん」の初代アニメーション冒頭にも副題として表示されている。
  • 2019年に小学館から発売された『ドラえもん』の新たな英訳版コミック『DORAEMON』(全15巻)では、当該アメリカ版アニメに準拠したキャラクター名やひみつ道具などの英語名を使用した翻訳がなされている(上記の2002年版シリーズでは道具名をそのままローマ字で表記していた)。


追記・修正は、Yummy banとGarlic Pizzaで腹拵えをしてからお願いします。



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最終更新:2024年04月18日 00:06

*1 1991年から。

*2 1982年2月から。

*3 2001年から。

*4 1982年9月から。

*5 1992年から。

*6 1991年から。

*7 1991年から。

*8 大山版の放送が開始された1979年が起点。

*9 この描写に差し替えられた理由の真相は不明だが、主に「十字形に貼られた絆創膏が特定宗教(キリスト教)を連想させる表現の規制に引っかかるため」と推察されている。

*10 「Failure」の略。

*11 ただし『BLACKHOLE,WHITEHOLE (のび太の町にブラックホール)』などでは演出上「0」表記のままになっている。

*12 確かに静香はやさしく親切な女の子だが、時にはお転婆で怒らせると恐いヒステリックな一面も持っているため、「ドラえもん」をよく知らない現地の子供達はともかく作品にある程度精通した人であればこのような印象を抱くことはまずないと思われる。

*13 例:オムライス→パンケーキ、焼き芋→焼きとうもろこしorポップコーン。後者は石焼き芋の屋台ごと焼きとうもろこしまたはポップコーンの販売車に描き換えられるなど徹底的なローカライズがなされている。