キギロ(ダイの大冒険)

登録日:2023/10/04 Wed 22:42:32
更新日:2024/04/23 Tue 20:38:24
所要時間:約 12 分で読めます





力量の低い奴をいたぶっただけでぼろ儲けだ
きっと妬まれることだろうなぁ
また出世してしまうから

キギロは『ダイの大冒険』のスピンオフ漫画『勇者アバンと獄炎の魔王』の登場人物。

目次

【概要】

魔王ハドラーが率いる(旧)魔王軍の幹部の一人。
種族は数百年に一度、突然変異で生まれるじんめんじゅの亜種「亜人面樹」

樹木の幹に顔が貼りついたような通常の人面樹と違い、頭はハドラーに支配されていた頃のブラス同様に凶悪な顔つきの人面樹だが、その下には胴体や手足があり肩章付の軍服を身に着けた人間のような出で立ちをしている。
この体に見える部位の正体は異常発達した木の根であり、この根こそが亜人面樹の特徴でもある。
通常の人面樹と同等に備わる本来の小さな二本腕は服の中に隠している。

【人物】

普段は「僕には覇気も野心もない」「僕のライフスタイルはしぶとくコソコソ生き残る」と謙遜し、「ハドラーに手傷を負わせるようなアバンには会いたくない」と尻込みする。
常にワイングラスを携えていることと言い、服のセンスと言い、臆病なインテリめいた装いや振る舞いを好む。
だが内心では武勲をあげそうなブラスを気にする様子を見せたり、アバンの接近を知ってこっちから挑みたくないと謙遜しつつ、「また出世してしまう」と呟くなど、自信家にして強い上昇思考・名誉欲を隠しきれていない。

半ばおどけた様子や秘めた自信から察せられる通り、彼の振る舞いは半分本音で半分嘘。
その本性は慇懃無礼なサディスト
ワインを嗜むことと並んで「弱い者虐め」が趣味であり、相手が自分の力量で確実に仕留められるかを見極めて着実に狩るタイプである。
こうした言動を堂々とハドラーの前で吐いてもハドラーは笑って受け流し、キギロがいざ出撃した折には「アイツらしい」と評していた辺りからしても、キギロはそうやって“結果”は出してきた様子。
一方で同列の幹部として扱われている門番のバルトスや参謀のガンガディアと異なり替えが効かない固有の役職は持っておらず、
戦場での武功以外に誇れるプライドがないというコンプレックスを抱えており、大きな戦いに出陣できないと取り乱す場面があった。
同時に幹部に対してはちゃんと頼みごとやお礼を言い合える性質であり、前述のコンプレックスに関してもバルトスに素直に吐露するなど日頃の言動とは裏腹に強者である仲間へのリスペクトは持ちあわせている

概ね陰謀や邪魔は敵である人間に対して用いられ、内ゲバのような利敵行為を起こす性質でもなかったりと協調性自体はむしろ高い部類。
そのあたりは口を開く度に不興を買うザボエラとの大きな違いと言える。
己のふがいなさに苛立つ面も見られ、嗜虐的な一面に対して根は真面目な様子がうかがえる。
キギロの性根を軽蔑していたアバンですら、ハドラーが負けた幹部達を侮辱した際、キギロも含めて「自らの誇りを掛けて全身全霊で戦う者だった」と反論していた。

【戦闘能力】

戦闘では近中距離戦を主とする。
身体の密度を硬軟自在に変化させて、当人曰く鋼鉄並にまで硬度を引き上げた二本の隠し腕や、軟化して伸縮を可能にした巨大な根を鞭として殴打する。
加えて体内に流れる高温の樹液も特徴の一つ。その樹液は魔力を込めればより超高温に加熱され、ワイングラスを瞬時に融解させるほどの超高熱を体から発することが可能。
この樹液のお陰で火系呪文に対して高い耐性を有しており、超高温化した樹液を硬質化させたうえで発射する「魔力樹液弾」によって遠距離も対応できる。
ただし、一度に硬化出来る範囲は隠し腕等の全身の一部が限度で、それ以外の部位は通常の樹木程度に留まる。
後述の巨大マンイーターを合体して大量の魔力供給を受ければ全身硬化も可能になる。
この状態だと本体は身動きが取れなくなるのが欠点だが、魔力樹液弾の同時使用でカバーするのが序盤におけるキギロ最大の切り札。

しかし最大の特徴は、「ライフスタイルはしぶとくコソコソ生き残る」という当人の言の通り、種子を残すことで再生出来る生存能力の高さにある。
まず、幹に相当する顔面を断ち割られる重傷を負っても周囲の植物を吸収すれば再生出来る。
それだけでなく、種子さえ残っていればそこからまた発育によって復活することも可能。
十分な栄養のある土地に運んで貰い定期的な水の供給を受ける、植物として育成して貰う他力本願な前提条件付ではあるが、条件さえ整えば強化再生さえ望める特性を持つ。
ただし、フレイムやゴースト系等の不定形な生命体の例に漏れず、コアを損傷すると形を保てなくなり一気に崩壊が始まる。
空裂斬は天敵に等しい技である。


◆強化形態=一段階

牡鹿のように雄々しく巨大になった角が目立つが、何より根に強力な魔力が宿っている。
手足に見立てた根がよりマッシブになった見た目通りに格闘能力が向上しただけでなく、柔軟さにも磨きがかかった。限界まで肉体を柔らかくして衝撃を逃がし、かつて自身を一刀両断した大地斬を受け流す繊細な制御も自由自在。
だが、それもおまけに過ぎない。
この形態のキギロは根を大地に広げて大陸全土の植物を支配下に置き、悪魔の目玉による索敵や監視と同様の芸当が可能になった。

それに加えて、小型分身体を無数に生成出来る。
これらはキギロの極々一部を分与に過ぎないので人間の幼児程度の矮躯で戦闘力も脆弱なものの、倒されてもキギロ本体にダメージが逆流することはない。その癖、キギロとリアルタイムで意識共有しているので、細かい工作活動に対応する上に情報収集に長けている。
かつて頼っていた巨大マンイーターの能力を自身に集約した上でより進化させつつ、戦闘能力も底上げした。純粋な上位互換形態となった。

◆強化形態=二段階・邪気ver

上記の強化形態によって、修験者が集う秘境ギュータの中でも最も危険な地、魔界に通じると謳われる洞窟「逢魔窟」で修行中だったアバンを強襲した。
過酷な修行でアバンが消耗していたこともあって進化した力で圧倒していたが、海破斬には対応しきれず手傷を負わされたため、駄目押しとしてこの形態になった。

これは「逢魔窟」に満ちる暗黒闘気を根から徹底的に吸収したもので、下半身は甲殻を纏った蜘蛛のように変貌し、二本の触手のような暗黒闘気を纏う禍々しい姿をしている。
海波斬すら回避出来るまでにスピードが増しただけでなく、この形態は攻防一体。
周囲を漂う暗黒闘気を操って鋼の剣をへし折る物理攻撃も繰り出し、呪文も生半可なものは弾いてしまう。
洞窟が崩落すれば生き埋めになるので、極大呪文や重圧呪文(ベタン)のような有効であろう呪文は使えず。
地の利は完全にキギロにあり、アバンとロカ、マトリフの三人をも圧倒してのけた。

とは言え、この形態も完全無欠ではない。
キギロ当人が自ら修練で体得したものでなくあくまで外付けの力であり、闘気に関する知識や技の練度に乏しいためか、光の闘気に極端に弱い。
アバンが放った空裂斬によって纏っていた暗黒闘気が一瞬にしてかき消されてしまい、そこへマトリフらの攻撃を受けて、這々の体でどうにか逃げ出した。
しかし、先のアバンの一撃は彼の生命のコアをも掠めていたために体がどんどんと崩れていき、再生もできなくなり、結局これが致命傷になって退場することとなった。


しかし…



…やはり……生きていたのか………!

「やはり」だって? ……言い方ァ!


◆強化形態=最終段階

空裂斬がコアに掠って致命傷を負いながらも、アバン達への憎悪と怨念によって命を繋ぎとめた姿である。

最早自慢の根や樹液は見る影もなく消え失せて、ドラクエシリーズの「おばけかれき」を更にみすぼらしくしたような姿に成り果てており、強化一段階の小型分身体と同程度のサイズしかない。
朽ち腐ったようにしか見えない全身には亀裂が走り、枯れ枝のような腕は何もせずともぼろぼろ落ちる。当然、剣で斬り付ければあっさり両断されて本体も倒れる始末。
だが、死に損なったまま、なかなか死なない。内側から溢れ出る邪悪なオーラが落ちた腕を繋ぎ直し、倒れてもほどなくして立ち上がる。
この状態に至ったキギロの命は風前の灯ではある。しかし、その邪悪な魔力はガンガディアら幹部達を凌ぎ、魔王ハドラーにすら比肩し得る程となった。

見た目に反して、膂力は強化形態に勝るとも劣らず。魔王ハドラーのように素手で鉄製の鎧兜を砕ける。
腕を振るうと破片がボロボロと体から離れるが、これが尽きることないどころか、散弾のように敵めがけて飛んでいく。その手数と威力はかつての魔力樹液弾を超えており、矢のように一般的な鎧を穿ち皮膚に喰いこむ。
そして何より脅威なのが、暗黒闘気の一種であろう周囲一帯を侵す呪詛めいた瘴気である。
旧アニメ映画に登場した「暗黒闘気・瘴気結界魔術」に近い効果で、上記の破片が体に喰い込んだ相手は、邪気が体を侵されてどんどん力を失い弱体化していく。
逢魔窟の時のようなスピードはないが、相手を弱体化させる効果によって、キギロと相対する敵はまるでキギロが加速度的にスピードを上げているかのような錯覚に陥る。
加えてキギロから溢れる邪気はフィールドを侵食し続けて、半径数十メートルの範囲がキギロの領域と化してしまう。
この領域内では地底魔城の魔物ですら瘴気にあてられて昏倒してしまい、身に喰い込んだ破片の呪詛効果も増幅させる。
これらの重複効果によって破片を喰らった者はみるみるうちに衰弱してしまい、更に勝機を失っていく。
この段階のキギロに対抗するには、破片の散弾やキギロの打撃をものともしない防御力か、この暗黒闘気による結界めいた力に対抗出来る強力な闘気の力が必要になる。

【作中の活躍】

ロモス王国及びラインリバー大陸の攻略を担当しており魔物の棲家となる「魔の森」を拠点に支配領域を徐々に広げている。*1
ロモスにおいては、大地斬を開眼したアバンによって敗れたものの、上記の特性によってキギロは辛うじて生還した。
しかし、懲罰と反骨心をバネにした更なる成長の両方を狙ったハドラーによって、敢えて不毛な地底魔城入り口傍にキギロは植えられてしまった。その所為で思うような成長を遂げられず、地底魔城で広がるアバン躍進の噂を耳にする度に焦りばかりが募っていた。
なお水がないと生きていけないらしく、かといって顔に水をかけられるのも不快なため、水やり担当のおばけキノコに怒鳴り散らしていた(が、おばけキノコには改善するほどの知能もなかった)ところ、ガンガディアの采配で地底魔城にいて暇をしており知能がそれなりにある者が水やり担当になった模様。
そんな折、デルムリン島が芳醇な地であることを思い出したキギロは、大急ぎでキメラに乗って海を渡りブラスに頼った。キギロの閃きは見事的中し、短期間で劇的な強化再生を果たした。

◆最終決戦

最終形態となったキギロはアバン一行への復讐の為だけに地底魔城に帰還。魔王の間を目指す一行の前に立ち塞がり、ロカがキギロの足止めを申し出て飛びかかった。
魔王の封印から1年間に修業を重ねたロカの実力はキギロも素直に称賛する水準に至っていたが、それでも怨念によって強化されたキギロは手に余る相手だった。
キギロは斬りつけられようと事もなげに立ち上がり、破片の散弾と瘴気のコンボでロカの体力をじわじわ削ぎ落としつつロカを圧倒。自然に千切れ落ちそうな見た目からは想像出来ない剛腕で嬲り倒して、頑丈が取り柄のロカも耐え切れずに倒れた。

キギロがアバンに追い付いてハドラーやその護衛と共に挟み撃ちにすれば、必殺剣を修めたアバンと言えど確実に狩れる。
キギロの復讐成就は目前かと思われたその時、息も絶え絶えのロカが立ち上がり、キギロの前に立ちはだかって最期の奥の手を敢行した。
武鋒円。
自分を中心として手にした武器が届く狭い範囲にのみ全身全霊の闘気を張り巡らせる。そうすることで、武器に強力な闘気を纏わせられる状態を維持したまま敵の攻撃を待ち構えてカウンターのみを狙う。カール騎士団剣術の背水の陣を体現した最終奥義である。
この奥義を発動したロカの剣速はそれまでの比ではなく、破片の散弾は全て剣で叩き落し、暗黒闘気の触手でで無理やり魔物を嗾けても、尽く切り払ってしまう。
真正面から捻じ伏せるのは容易ではない相手となった。

尤も、武鋒円の攻略自体は別段難しくない。猛烈な勢いで生命力を全て注ぎ込む技であることは見抜いていたので、そのまま放置して眺めているだけでロカは勝手に死ぬ。かつてのキギロならそうしていただろう。
しかし、執念めいた願いの為に命を賭ける心境を理解して今の姿に到達したキギロは、今のロカの決死の姿に共感を覚えていた。故に、姑息に勝利を拾う選択肢は有り得なかった。
キギロは広間に広げていた瘴気を全て己が身にかき集めて暗黒闘気を収束。ロカに渾身の一撃を叩き込んで正面突破する選択をした。
そして迎えた最終局面、キギロは全身全霊の一撃を叩き込むべくロカに突撃。その際、ロカの周囲から闘気が完全に消失していることに違和感を覚えはしたものの、敵の闘気が消えたならむしろ好機と勢い任せの攻撃を繰り出した。
だが、これが致命的な判断ミスだった。武鋒円の本質は、最後の最後の決定的局面で、周囲に張り巡らせた闘気を剣に一転集中して爆発的に剣の速度と威力を上げることにあった。
それを見極めきれなかったキギロは、ロカの強烈無比な最期のカウンターを成す術なく浴びてしまった。
邪悪なオーラが体を繋ぎ直せない程に粉微塵にされたキギロは流石に修復出来ず、敗北が確定。

だが、キギロ同様に生命力の全てを絞り尽した上に、キギロの強力な呪いを受けてしまったロカもまた共倒れに。
キギロが死んだ後もその呪いは残り、ロカの余命は幾場も無い状態となったことで少なからず溜飲が下がった……
と思われたがロカ自身はこの結末に絶望することはなく、アバンを無事に先に送り出せた事、マァムという新しい命を未来に託せた事に満足していた。
他人のためにここまで命を投げ出せるという人間の本質を理解した時…キギロは初めから自分に勝ち目がなかったことを悟りながら消滅していくのであった…。



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最終更新:2024年04月23日 20:38

*1 「魔の森」は後に百獣魔団の拠点にもなっている。