リリス(小説)

登録日:2024/01/27 (土曜日) 23:10:17
更新日:2024/01/31 Wed 11:24:32
所要時間:約 ? 分で読めます





『リリス』は『北風のうしろの国』や『お姫さまとゴブリンの物語』・『カーディとお姫さまの物語』で知られるジョージ・マクドナルドによる1895年の小説。
ユダヤ教伝説に材を採り、キリスト教的な愛と救済の寓話として紡ぎ出した。
トールキンやC.S.ルイスにも影響を与えたと言われ、現代ファンタジーの始祖と呼ばれることもある。

日本語訳版は1986年のちくま文庫版(訳:荒俣宏 初出は1976年のペン社「妖精文庫」)と、Amazon Kindle限定の今井文夫訳版が存在する。


◆もくじ


ストーリー

読書家ヴェインは謎の男レーヴン氏に導かれて鏡の向こうの異世界へと旅立った。
レーヴン氏の家に招かれレーヴン夫妻から親切なもてなしを受けるが、
真の自分への目覚めのために死者と共に眠るように指示され、一度は恐れを成して逃げ帰ったヴェインだが、
後日父の草稿を読んでレーヴン氏が信用のおける人物だと悟って図書館に現れたレーヴン氏に無礼を謝罪する。
レーヴン氏はヴェインが未だ目覚めの時ではないと指摘し、同類たちと会うよう指摘する。
生命を維持する川と月の光によって怪物から守られたヴェインは旅の果てに友好的な小人たちから母と慕われるローナという少女と出会う。
悪い巨人に迫害される小人達を救うため、小人たちが成長しない理由を求めて図書館の都市ブリカを目指す旅の中
死者の森の中で出会う骸骨達はまともに意思の疎通ができず、人恋しさのあまりヴェインは動かない美女のミイラを命の水の川に浸してブドウを与え介抱する。
ヴェインに吸いつく白い蛭を警告するために彼女は起き上がるが、忌み嫌う川に浸されていたことを知った彼女は氷のようなものでヴェインを打ち据え白豹と化して去る。
彼女を追ったヴェインはその正体がブリカを支配する女王リリス
それぞれ純白と黒白まだらの雌豹2頭や「影」を従え赤ん坊の生き血を吸っていることを知る。
ブリカは恐怖によって支配され、ヴェインが豹から助けた赤ん坊を連れた母親もヴェインを信じられず逃げてしまう。
リリスと面会したヴェインは蘇生の件を謝罪されるがブリカの有様を知ったヴェインは彼女を信用しない。
水の中に落とされレーヴン氏に救出されたヴェインは逞しく成長した小人たちやローナと再会し、小人たちがブリカから逃げてきた母子に巨人と戦う方法を教えられて成長したことを教えられる。
本来自分のなすべきだったことを悟ったヴェインは小人たちと共にリリスと戦うことを決意し、その中でローナがリリスの娘であることがわかる。
だがリリスは自身の娘をも手にかける。それに伴い老婆へと衰えたリリスをヴェインは死者の家へと連行する。
恋人を天国に送り届け、リリスに真の平安を与えるために……。

登場人物


ヴェイン

主人公。先祖代々本収集を続けた家で若くして親を亡くし、屋敷の一階の大部分を占領した図書室を相続した青年。
科学や哲学に関心があり、先祖の歴史はあまり知らなかったが、図書室に現れた人影を追いかけて不思議な旅に出る。
度々思い違いをしてして窮地に陥り、知識や成長を罪と思っていることをアダムから指摘される。
切断されたリリスの手をローナの心臓ごと砂漠の中の地下から水音のする場所に埋葬し、
ローナと子供達を死者の家から天国へ送り届け、その先の扉を開けて図書館へ帰還する。
夢オチだったのか図書館が夢の世界の一部だったのか、それは問題ではなく
現実世界ではローナ()はまだ見つけていないがマーラ(知恵)は溢れていることを悟る。

レーヴン氏

ヴェインの図書室に飾られた先祖らしき人物の肖像画と同じ顔の黒ずくめの痩せた老紳士。当初は図書館の幽霊だと思われていた。
嘗て禁書を読んでいたヴェインの祖父アップワード卿が姿を消したときにも出現したが、老執事からは悪魔だと思われ家の記録からは消されていた。
ある時は老紳士、あるときは大鴉に姿を変え、妻とともに死者の眠る家の番をして死者を埋葬し生者を掘り出す仕事をしていると名乗る。
その正体は人祖アダム。
リリスとはが同じであるという。
ヴェインが小人に知識を与えることを避けて成長を阻害する原因を探しに行った事を挙げ、知識や成長は悪ではなく使い方次第であると説く。
リリスは子供を産むことで救われる日が来ると言い、悔い改めたリリスからローナの心臓を握りしめた手を切り離す。

レーヴン氏の妻

白い服を着た白い顔の目を輝かせた女性。ヴェインへ食事を振舞い、泊っていくように言うが、彼が何かを成し遂げる前に眠ることはできないとも言う。
その正体は人祖アダムの二番目の妻イヴ。
神から与えられた役目を果たすことで真の不死と美を得ており、人を喰って得たリリスのそれは偽りであると言う。
リリスによって殺されたローナが実際には以前から死んでいたと語る。

小人

森に住んでいる純真無垢な存在。
ヴェインのことを良い巨人と呼び慕う。
小さな子供の様だが年齢や成長の概念が存在せず、悪い巨人となることを恐れている。
後にブリカから逃げてきた母子に戦い方や鳥のように飛んで木の上に住んだり
動物たちと協力することを教えられてからは15歳程度に成長し、ヴェインの呼び名も王にクラスチェンジする。

ローナ

純白の雌豹が森に置いていく赤ん坊を拾いブドウを与えて育て小人仲間から母と呼ばれている一番勇敢で背が高い娘。ヴェインの恋人。
実はリリスの娘で、リリスの血を引く者たちの母親であり、彼らに愛と保護を与えている。
ヴェインと友情を結び小人たちを助けるという彼の安全を祈って旅立ちを見送る。
小人たちの成長に伴い呼び名が女王にクラスチェンジする。
リリスの宮殿で母に抱きつくが突き落とされ命を落とすが、死者の館で先に目覚めた時、隣に眠るリリスを許す。

悪い巨人

巨人のリンゴを食べてしまった小人。
残忍な性格となり小人やヴェインを捕まえて不味い食べ物を食べさせたり木の皮を剥かせたり石を割らせるなどの労働を強制する。

マーラ

あるときはレーヴン夫妻の飼い猫、あるときは小人達から猫女と呼ばれ恐れられている包帯の女性、あるときは純白の雌豹。
小人や真のヴェイン自身について記されたブリカの宮殿の図書館の存在を教えたり、黒斑の白豹から守ったり、無数の猫で追い立てたりとヴェインを導く。
赤ん坊を黒斑の白豹から取り返す純白の豹を見たヴェインからはリリスの良心の表れではないかと考えられていたが、その正体はアダムとイヴの娘。

骸骨

死者の森に住む死者たち。
生前の業によって独善的な主張で戦い合い、ダンスパーティーでは偽りの果てに顔を失った骸骨たちが踊り、
生前互いに嘘をついていた夫婦の骸骨が罵り合い、ヴェインのことを認識しない。

リリス

漆黒の長い髪と輝く黒い瞳、象牙のような肌を持つ美しき女王。潰れた左手を手袋で覆い、華やかな銀の鎧に身を包む。
死者の森で蛇に変化したり、骸骨たちの戦いを煽ったり、ミイラになって眠ったりしていた。様々な姿で現れるが共通して左胸に傷跡がある。
古代、ヴェインの元の世界からやってきてこの世界の地下水以外の水を奪った。
かつては平和な水の国と呼ばれた都市ブリカは彼女の支配によって女王を崇拝し、ダイヤモンドやオパールを掘って売り、自国が最高で他国を軽蔑するようになり、
赤ん坊の生き血を吸う白豹の恐怖で支配され、住人は豹を恐れながらも襲われる隣人を助けはしない。
ブリカでは白豹は彼女のペットとされていたが、実際には彼女自身の変身であり、黒斑は罪を表している。
その正体は人祖アダムの最初の妻で、何千年も生きている。
かつて娘を自分の被造物と考え、創造神としての崇拝をアダムに迫ったが、人としての愛と敬意しか得られないと失望し、
地獄の影の軍勢の崇拝を得て悪の影の王と化してアダムとイヴの子孫である人間の血と魂を吸う。
自らの美しさと不死に固執し、娘であるローナを自分の不死性と美が流れ出ている傷口と考え、ローナに対して恐怖と憎しみを抱く。
リリスはローナとその子供たちを滅ぼそうとするが、その過程で自分の体を失い、主人公のヴェインの助けを借りて別の世界に入り込む。
手に握っているローナの心臓を手放すようアダム一家から促されるが手を離すことが出来ず、剣によってローナを「産む」こととなる。

人に似た姿を持つ平面の闇。
リリスの息子であることが示唆される。
人に憑依することもある。

母子

ブリカで豹に襲われていた赤ん坊とその母親。
ヴェインに助けられ、「ある子供が女王のとなる」という予言があるため女王の命によって豹が放たれていると説明するが
同行して守るという彼を信用できずに逃げた後、小人たちと出会って戦い方を教え成長させる。


真に眠ったら追記・修正お願いします。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • リリス
  • 小説
  • 異世界
  • ファンタジー
  • キリスト教
  • ジョージ・マクドナルド

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2024年01月31日 11:24