由井正雪(Fate)

登録日:2024/02/06 Tue 00:55:51
更新日:2024/04/21 Sun 18:34:08
所要時間:約 19 分で読めます





私は由井正雪。烈士たらんと志す者である


由井正雪(ゆいしょうせつ)とは、『Fate/Samurai Remnant』の登場人物。

身長:160cm
体重:45kg
性別:女性
魔術回路:質 A/量 D/編成 異常
CV:田村睦心


◆概要

盈月の儀におけるライダーのマスター。史実では男性であるが、この世界の由井正雪は総髪の女性。年齢は三十を超えるはずだが、見た目は十代にも見えるほど若々しい。
烈士たらんと志し、令呪の兆しを見せた宮本伊織を手勢と共に襲撃。一度は刃を向けるものの*1、セイバーを召喚した伊織が巻き込まれただけで儀の詳細について何も知らないと知ると「マスターたる自覚なき者を斬るのは我が信条に悖る」と語り見逃した。


◆史実:由井正雪

江戸時代初期の軍学者。「由比正雪」とも。
江戸は神田に「張孔堂」という軍学塾を開き、多くの浪人を門弟としていたという。また、伝説では天草四郎の腹心であった森宗意軒から妖術や軍略を学んだとも言われる。

最も有名なエピソードは「慶安の変」、あるいは「由井正雪の乱」と呼ばれる幕府転覆計画……有り体に言えばクーデターを起こしたことだろう。

当時の日本といえば江戸幕府が開かれてしばらくが経った頃。
島原の乱以降目立った戦もなく、民は平和を享受していたものの、その裏では武家の改易*2による御家取り潰しの多発はまだ続いていた。
まだ幕府の権力基盤が完全ではないことから、こうした取り潰しの連発は、幕府を権威づけ、武家諸法度を厳格なルールとして広めて大名達に反乱を起こさせないと言うためにはそれなりに理のある対応ではあった。
だが、取り潰しにあった家に仕官していた武士は当然職を失い、そうした浪人(牢人)たちは再就職などのために江戸に集結し、結果として治安が悪化するという社会問題のみならず、
島原の乱においても、辺境の浪人達が反乱に加担して規模を膨れあげていたなど、様々に悪影響を起こしていたのだが、
ともかくその徳川に捨てられた浪人たちの支持を集め、一定の勢力の中心となっていたのが由井正雪である。

正雪は浪人たちの不満が高まりきった慶安4年の7月、三代将軍・徳川家光の死をきっかけとして、幕府政策への批判と浪人たちの救済を掲げ、浪人たちによる幕府転覆を計画。
しかし、決起の寸前にて、密告で計画は漏洩。老中・松平信綱らの指揮の元鎮圧が行われ、正雪は宿泊していた宿を幕府の兵に包囲されて自害した。

結果としては失敗に終わった由井正雪の乱だが、幕府はこの件などを重く捉え、大名の改易についての方針を転換。
武家諸法度違反などに対する改易を減らし、禁止していた末期養子*3をある程度解禁して、これ以上浪人が増えないよう手を打った。
決行前に未然に防がれたにもかかわらず、ここまで歴史に影響を与えたクーデターの例は、日本史上でも少ないのではないだろうか。

◆人物像・動向

性格は純粋無垢かつ潔癖すぎると言っていいほどの真面目な人物。
ライダーは上記のような行動に対して「甘い」と苦言を呈してはいるが、正雪を忠義を尽くすに足る人物と認め、その願いに魂を捧げると誓っている。

天草四郎の腹心と言われた森宗意軒と何かしらの関わりがあるらしく、島原の乱の生き残りである地右衛門とはその縁で同盟を結んでいる。
ただし、お互いに性格的な相性は最悪な為、あくまで利用し合う関係に過ぎない。
ただ、正雪の方は森宗意軒が守ろうとした民である地右衛門をできる事なら殺さずに済ませたいとは思っている。

他に逸れのアサシンが正雪の在り方に思うところがあるらしく、彼女に力を貸している。

神田に「張孔堂」を開き、浪人たちから慕われている事は変わらないが、幕府転覆を目論んだ汎人類史の正雪と異なり、こちらの正雪は盈月の儀に際して主催の土御門と共闘し、それに伴って幕府へと仕官している。
事情を知らない浪人たちは正雪が仕官した事を嘆きながらも、なにかお考えがあるに違いないと考えている様子。

儀が中盤に差し掛かった頃、土御門が盈月に仕掛けていた術によってライダーを奪われ、その刃によって傷を負ったが、伊織とセイバーに助けられる。
そして治療を受けた恩として、彼らに儀の裏側で土御門が暗躍している事を伝えた。

が、実はライダーが土御門に操られたということだけは正雪とライダーが画策した嘘であり、神性を持ち、操られることのなかったライダーは土壇場で土御門を裏切り、出し抜く手筈であった。
結果として、土御門はランサーに殺されることになり、ライダーは正雪の元へと戻り、土御門が隠し持っていた盈月の器を手に入れることに成功する。
ただ、盈月は元々土御門が一族の再興に使うためだけに用意したものであり、万能の願望機を謳うには力不足な代物であった。
それでも莫大な力には違いないと正雪はそれを使って願いを叶えようとし、盈月を邪法と考える伊織達と敵対する。

そうまでして叶えたい正雪の願いとは……


以下ネタバレ





肉の機構(からくり)に宿りし、仮初の命
贋造された生命

生の意味など理解しようもない筈の存在
だが、それ故に問わずにはいられない

なぜ、と───

乱世は、血煙の時代は終わった
人々は口を揃えてそう云うが───

貧しき者は、今日も飢えている
富める者は、今日も嗤っていると云うのに

生きる術を持たぬ者は、世に溢れ返り
(デウス)を信ずる者は、生きることすら許されぬ

……教えてください、宗意軒先生
なぜ、人の世は斯くも歪なのですか?


その正体は、森宗意軒が作り出したホムンクルス。
アインツベルンの技術をムジーク家経由で盗み出すことで作成されたが、森宗意軒の錬金術は不完全であった為、武家の女性を母体として生み出された。
なので正確に言えばホムンクルス亜種、あるいは擬似的なホムンクルスと分類される。
見た目こそ若々しいが、実は既に活動限界が近く、食事もほぼ摂る事ができない状態になっている。

森宗意軒は未だFateシリーズには直接の登場はしていない人物だが、「大義を建前にした鬼畜ド外道」と評されたことがある。
作中で拾える手記によれば、どうやら正雪を生み出したのも理想を果たすための自動機械を作るのが目的だった様子。
しかし、生まれた正雪の無垢さ、誠実さを目の当たりにした結果、"理想のために手段を選ばない森宗意軒は死んだ"との旨が手記には記されている。

正雪の「人の身では有り得ない」と称されるほどの清廉さは、精神性が人間とは異なるが故のものであり、彼女は人の世の歪み、あやまちを認める事ができない。
それ故に、正雪が盈月に懸ける願いは「真に平らかなる世」、この世のあやまち全てを正した平穏なる世界そのものである。

ライダーは召喚の際に正雪の強い願いに共鳴し、召喚に応じた、のだが……


実は、ライダーはその真名と本性をスキルによって正雪に隠蔽しており、正雪はライダーがその内に秘めた狂気に気付けていなかった。
そしてライダーは正雪の願いのためと語りながら暴走を始め、世のすべてを「ただす(こわす)」べく、手始めに江戸を破壊しようとする。
正雪は令呪によってライダーを止めようとするが、本心から正雪に従い、ただその手段だけが致命的に正雪と異なるライダーは、何を命じても「貴女の願いを叶えるまでは止まりません」と止まらなかった。

江戸の破壊を食い止めるべく、正雪は伊織達と協力してライダーを討つ事となり、サーヴァントを失った事で儀からは退場となった。
敗れた正雪は神秘の秘匿を理由にコイエット家の魔術師に身柄を拘束される事となったが、別れ際、伊織は正雪の願いの正しさを認め、「その願いはとても美しく見える」「人としての正しき想いが報われぬ筈がない」と伝えた。
その言葉を受け、正雪は正しき世を作る光を伊織に見た。しかし……


※注意※

この先には『Fate/Samurai Remnant』終章及び2周目のネタバレが含まれています。


+ ...
  • 一条の光
盈月の器を手にしようとした伊織を奇襲しようとした地右衛門。
正雪はその攻撃から伊織を庇い、奇襲に失敗した地右衛門は伊織に斬り殺された。

深手を負った正雪だったが、伊織以外の手に盈月が渡る事を良しとせず、鄭とキャスターに奪われた盈月の器を取り戻すため伊織に同行。
命を賭して戦いに臨み、伊織が盈月を壊すのを見届けたのち、安らかに瞼を閉じた。


ああ───

光、だ……


  • 可惜夜に希う
伊織は剣鬼たる己の願いのため、盈月の器を残すことを決める。
それを見てしまった正雪は、自分が伊織に見た光は誤りであったことに気付く。


その在りよう、まさに───

闇に溶け去ぬ、望月そのもの


彼の放つ光は、温かな暁光のそれではなく、冷たき月の光であった。
それを悟ってしまった正雪は伊織とセイバーの戦いの決着を見届けることなく、失意のまま独り闇の中へと消えていった。


ちなみに上記の結末は2つとも蛇神討滅ルートを通った場合の結末。
首魁誅殺ルートの場合は先にドロテアの遺言を受けた手勢に保護されているため、伊織の真実を見ることもなくなる。



Fate/Grand Order


私は由井正雪。烈士たらんと志す者である

……キャスター、と今は言うべきかな

お見知りおきを


『Samurai Remnant』コラボイベント、「盈月剣風帖」にて星4サーヴァントとして実装。
クラスはキャスター


身長:160cm(ヒール込み165cm)
体重:45kg
出典:史実、『慶安太平記』など、Fate/Samurai Remnant
地域:日本
属性:混沌・善
副属性:人
性別:女性

◆ステータス
筋力 耐久 敏捷 魔力 幸運 宝具
E E C A B+ C+

◆スキル
○クラス別スキル
陣地作成:C+

道具作成:C

〇保有スキル
贋造生命(亜種):C
天然自然には生まれ得ぬ存在、無垢の人造生命体ホムンクルス───
その亜種であることを示すスキル。
製造者である森宗意軒の習得した錬金術は不完全であり、母体として人間の女性を用いる必要があった。
その誕生経緯がため、正雪はホムンクルスの亜種、或いは擬似的なホムンクルスとして分類される。

烈士の軍学:B
正雪の修めた戦術知識、及び、理想を尊ぶ峻烈な精神性を示す。
本来は複合スキルであり、軍略スキルの効果を含む。

魔術(元素):B+
元素変換魔術の行使を得意とする。
異常編成ながらも上質の魔術回路を有する由井正雪は、主に攻撃手段として魔術を用いる。
魔術師としての「正統」な目的と精神を持たない正雪にとって、魔術はあくまで己が技術の一種に過ぎない。
純正な魔術師は、正雪を魔術師ではなく魔術使いと呼ぶだろう。

宝具

烈士徇名・不惜身命(れっしじゅんめい・ふしゃくしんみょう)
ランク:C 種別:対軍宝具 レンジ:1~20 最大補足:50人


六つの花、瞼の彼方、神田連雀───

刻印、励起……我が想い、我が血潮、貴殿へ届けよう

我が祖、我が源たる御方々よ。どうか力を……

烈士徇名・不惜身命(れっしじゅんめい・ふしゃくしんみょう)


正雪の在り方が昇華されたもの。
自身及び周囲に対して、一時的ながら爆発的な強化をもたらす。

理想と名誉がため、己が心身のすべてを捧ぐと誓った正雪の峻烈なる精神性、
そして師にして父にも等しき森宗意軒から賜った錬金術のわざが、互いに交じりあい、宝具の域へと達するまでに至った。

FGO内での効果は全体回復に加えて解除不能以外のBAQのバフを持つ味方に3ターン追加バフを付与する。Bなら宝具威力、Aならクリティカル威力、Qなら攻撃力がそれぞれアップする。
正雪自身が味方に付与できるのはAバフのみなので、うまく編成を考えなければHP・ATKステータスも同値であるメディアリリィの下位互換宝具になってしまいかねない点には要注意。
自前で三色バフを持つ宮本伊織との相性はバッチリである。
また3色自己バフスキルしかなく使いどころに困っていたマスターの多いジェロニモも、同クラス&バフの恩恵を全て受けられるため強化されたと一部で話題になった。

『Samurai Remnant』での記憶は全て持った状態で召喚されている。
ヤマトタケルと丑御前も盈月の儀での記憶を持っているので、「盈月剣風帖」で実装されたサーヴァントの中では、伊織のみが記憶を持っていない例外となっている。

霊基第二は『Samurai Remnant』と同じ着物姿で、発表時もその姿だったのだが、初期状態での霊基第一ではハイレグのぴっちりスーツを着て現れ、召喚したマスター達を驚かせた。そしてどことは言わないが意外とある事が判明した。
このハイレグスーツ、『Samurai Remnant』未プレイのマスターはもちろんだが、既プレイのマスターも全く知らされていなかった新事実で、突然お出しされたハイレグに大いに困惑する声が見られた。
ちなみによく見ると着物姿の首元からこのハイレグの襟が覗いている。つまりあの着物の中に下着代わりとしてあのハイレグを着用している事になる。
霊基第三は和風のドレスを着ており、こちらも原作未登場の新規衣装となっている。

戦闘モーションでは刀と地水火風の元素魔術を組み合わせた戦いを行う。
風の刃をまとった突進や火球の連射に、烈士らしく素早く切り込む剣術を交えながら敵を翻弄する。

汎人類史に召喚された事で史実の由井正雪の行いを知ることになり、男性な上に幕府転覆を企てた謀反人であるという事にショックを受けている。

カルデアではやはり『Samurai Remnant』関係者へのボイスが多く、ランサーことジャンヌ・ダルクなんかいっぱいいる事に困惑している。
それ以外では、自身の起源であるアインツベルンや、ホムンクルスといった面々に興味があるようだ。

森宗意軒が仕えた天草四郎に対しては、自身も徇ずるが当然と平伏し、天草を困らせている。

好きなものは「正しき事、美しき事、優しき事」といった人間としての美徳。
嫌いなものは「悪しき事、悲しき事」。生前から憂いていたこの世の歪みすべて。

聖杯にかける願いは変わらないが、サーヴァントの身であるため自重している。

◆ストーリーでの活躍

『盈月剣風帖』にて登場。
盈月の儀を再現した特異点にて、再びライダーと共に儀を勝ち抜かんとしているが、どれだけサーヴァントを倒しても新たにサーヴァントが召喚されて儀は終わらず、マスターも姿を現さない状況に苛立ちを覚えている。
そんな中、伊織と主人公が特異点に現れたことで、ようやく盈月の儀を始められると考え、彼らと敵対する。
カルデアでの召喚と同じく、盈月の儀の記憶を持っており、伊織の生前も知っているが、それ故に内心複雑な感情を彼に抱いている。

しかし、生前その危険性を思い知ったはずの丑御前を再び従えたままでいるなど、都合の悪い記憶を忘れさせられている節が見受けられる。
そして今回は自身もサーヴァントの身ではあるがそのことを全く知らず、アヴェンジャークラスで現界した丑御前を未だライダーと認識しているばかりか、自身を頑なにマスターと思い込み何も刻まれていない手の甲に令呪が刻まれているように見えるなど、認識の阻害もかかっていることが徐々に明かされていき、
おまけに、物語終盤で出現した空想樹の種子は正雪の姿に変化して増殖するなど、極めて異常な状態にあったことが判明する。

そして正雪をそんな状態へと導いた黒幕は、異星の使徒『伯爵』。
リンボの手口を模倣した伯爵は死後に人理に刻まれた正雪を特異点───否、贋作異聞帯の礎とし、丑御前と手を組んでカルデアに罠を仕掛けた。
その結果、「永遠に“盈月の儀”が繰り返され続ける江戸」が作り出され、そこで幾度となく儀を繰り返す事で霊脈は歪み、穢れは積み重なり、その結果、遂に贋作空想樹・盈月を出現させる。

アヴェンジャー・丑御前は伯爵の企みを全て知ったうえでその思惑に乗っており、それも全ては主たる正雪の願いを叶える為と嘯く。
此度のすべては、正雪の身に刻まれたもう一つの宝具が関係していた…


これなるは血塗られた伴天連妖術の頂天(いただき)
妖術師、森宗意軒が夢見し狂気の弥終(いやはて)

英霊(サーヴァント)、由井正雪の宝具──

『五蘊盛苦・夢幻泡影』!


五蘊盛苦・夢幻泡影(ごうんじょうく・むげんほうよう)
ランク:B+ 種別:増殖宝具 レンジ:- 最大補足:1人


私は誰だ、誰なのだ

教えてくれ……!

『五蘊盛苦・夢幻泡影』

―――誰カ、私ヲ、殺シテクレ


英霊として座に刻まれるに際して正雪の霊基が得た、自覚なき宝具。
魔力の続く限り己が存在を無限増殖させ、世界を理想(自分自身)で埋め尽くさんとする。

かつて、世の安寧を夢見た森宗意軒は、神の国に住まうべき新人類たる無垢の命を作り上げた。
それこそが由井正雪。「現行人類に成り代わるべき新人類の発生・増幅装置」。
森宗意軒は無垢なる命を増殖させ、それによって歪なる現行人類を駆逐させる為に正雪を造り出したのである。
それは言ってしまえば、ある特異点にて跋扈した泥の海より生まれし『新人類』と同じような存在。決してこの世に解き放ってはいけないモノであった。(恐らくSR世界が剪定事象なった原因とされる)

ただ、森宗意軒は自身の理想たる無垢なる命そのものである正雪を目の当たりにして親心が芽生えてしまい、結局はその機能を使わぬままだった。
しかし正雪の身に刻まれたその機能は、図らずも英霊となった事で宝具として結実してしまったのである。

厄介なことにこの宝具は真名の解放を必要とせず、そして正雪が望むと望まざるとに関わらず、条件(霊脈、或いは聖杯のような魔力源との接続)を満たすことで自動的・強制的に発動する。
つまり、伯爵によって贋作異聞帯の礎たる空想樹そのものとなった瞬間に正雪は爆発的な規模で増殖を始め、遂には無数の正雪の遺骸によって贋作空想樹の形を成すに至ったのである。
丑御前がそれに協力していたのは、偏に正雪の身に刻まれた機能を叶える事が、正雪の願いを叶える事だと本気で信じている為である。

そのため、今回の空想樹は遠目に見る分には今までのそれと変わらぬ形であるが、
ある程度接近すればそれが彼女が変じたものである=溶け合い絡み合った幾千・幾万もの『由井正雪』たちの死体で形作られたおぞましいモノだと見えるようになっている。
なお、核の奥底で由井正雪は自我をギリギリの状態で残しているようで、最終ボス戦でのゲージ技発動時にはボイス付きで死を懇願する悲痛な叫びを上げるという悪趣味にも程がある仕掛けすらも。


丑御前と増殖し続ける正雪によって追い込まれる主人公たちだったが、地右衛門とランサーによる地獄の業火によって傷を付けられた丑御前は討たれ、あとは空想樹を伐採するのみとなるが、それは本来なら空想樹に囚われた正雪の本体をそのまま消滅させることを意味していた。
しかし、セイバーは正雪を救うことを望んだ。
その答えに力を貸す事を決めた此度の逸れのルーラー・アショカ王の宝具によって増殖は食い止められ、
そして神の力を持つ『界剣・天叢雲剣』がセイバーの望みに応えて空想樹のみを両斬し、伊織とセイバーによって正雪は救い出された。

その二人の姿に再び光を見た正雪は想う。


……そうだな。そうであった

たとえそれが、熱を宿さぬ月光であっても

夜に独り、凍えることになろうとも

闇を照らした光であることに違いはない───


そして救われた正雪は一行に礼を告げ、それを聞いた伊織は正雪に言葉をかける。


───由井正雪

儀の記憶を持たぬ俺が告げても、ただ虚しいばかりの言の葉だろうが───

真に平らかな世を望む貴殿の想い。とても、美しく見える


それは───俺には、終ぞ思い描けぬものだ


その、以前と似ていながら違う言葉を聞いた正雪は、伊織へと聖杯を託し、消滅した。

その後、縁を結んだことでカルデアに現界。
かつて“盈月の儀”で戦ったヤマトタケルや伊織と肩を並べ、うたかたの日々を過ごすことになる。
甘言に踊らされ、カルデアに迷惑をかけてしまったことには恐縮しきりで、主人公や伊織は気に病まないようにと気を遣っている。


◆余談

『Samurai Remnant』ゲーム内の雑記帳では性別が?とされていること、幕府に仕官していることから、プレイヤー目線ではとてもそうは見えないが表向き男性として振舞っているともとれる描写になっていた。
一方で作中で女性であることを驚かれる様子はなく、『Grand Order』では汎人類史の由井正雪が男であることに驚いていることから、かの剪定事象では女性の仕官もあり得たともとれるようになっており、実情は不明となっている。

+ 盈月剣風帖での扱いあれこれ
突如お出しされた何ともえっち烈士なハイレグで笑いを誘った由井正雪だが、その後明らかになった真実と照らし合わせるとあのボディスーツは「量産される人造人間」としての服装ではないかと考察がなされるようになった。
加えて、「今回の彼女の暴走には異星の使徒が絡んでいる」という事も考えると、どことなくボディスーツのデザインがU-オルガマリーに似ているのも何やら関係を匂わせる気がする。

原作でも報われぬか、どこか儚い最期を迎える彼女であった為、お祭り作品であるFGOではそういう悲劇とは無縁だろうと考える人も多かった。
だが、蓋を開ければコラボシナリオ後半にて怒涛の展開を経た後に「由井正雪という存在をどこまで冒涜し、凌辱し、愚弄し、破壊するか」を追求した、おぞましい光景が繰り広げられる事となった。
マスターとして戦ってきた個体は「自分がたくさん作り出された存在の一つ」という事すら知らず、全てを知った上で彼女を騙し続けていた丑御前に振り回された末に、あまりにも残酷な真実を知らされて絶望の中で消滅。そして次々と疑似空想樹の種より現れる無数の『由井正雪』たち。
量産された『由井正雪』は「自分が丑御前を操っていると思い込みながら、ただのそこらへんにいる武者型の妖怪に存在しない令呪をかざして命令する*4」といった者や「茫然自失としたままで自身の夢を語り続け、そのまま朽ちていく」という者等、プレイヤーの精神を一気に削るような挙動を見せている。
そんな目を覆いたくなるような地獄絵図に対して、アシュヴァッターマンは本気で『伯爵』に激昂し、怒りの爆炎を立ち昇らせた
彼の見立てでは『伯爵』は「彼女をこうなるように適当に仕向けて、そのまま放置しているだけ」。なんの感慨もなく適当に(・・・・・・・・・・・)彼女の尊厳を破壊しているという事実が、彼の逆鱗に触れたようだ。

李書文もマスターとして活動していた個体の彼女と出会った際に「ここに令呪がある」と手の甲を見せられているが、その際に「ドン引きするような驚愕の表情」を浮かべ、その後は哀れみから彼女に少しだけ手を貸すことを選んでいる。
それもそうだろう。何せその令呪は認識をいじられた彼女にしか見えていないもので、彼女の手には何もなかったのだから。

更に言うと、『伯爵』自身は彼女を無限増殖する怪物に改造したわけではない。
増え続け、溶け合い、地を満たしていく力は彼女が最初から持っていた(・・・・・・・・・)もの。『伯爵』と丑御前はそのお膳立てをしただけ。
「由井正雪の尊厳を破壊した」のではなく「由井正雪は最初からそうなる為に造られたモノだった」というあまりにも救いようの無い真実に、「ここまで寒気がしたのは妖精國以来」「乾いた笑いしか出なかった」「愉悦すらできない」等の阿鼻叫喚が各FGO関連コミュニティから響いた。

そして何よりも恐ろしいのは、彼女のマテリアル曰くこの爆弾じみた特性は原作の時点で秘められていたという事である。もっとも、生前の段階では十分な魔力リソースを得た上で1年に1人が増殖の限界だったそうだが―――ここにもSR世界が剪定事象に至る要因が見いだせようというもの。*5
事実、ドロテアは彼女を見て「すぐに回収しなければならない」と大いに危険視している。原作だけ見れば魔術師としての神秘を秘匿する使命感からのセリフとしか思えないが、FGOのコラボシナリオと合わせることでさらなる危機感が見えてくるようになる。

そして当人にはさらに申し訳ないことに、ネタ的な話だと「都合の悪い記憶を消されていた事がある」「悪夢に囚われていた事がある」「黒幕によって増やされた事がある」「そして増えたコピーと本体が混ぜ合わされた結果、巨大な怪物になる」「某wikiのコメント欄が謎の一体感を見せる」という要素がよりにもよって諦める事を知らない例のアイツと大いに被ってしまっていたりする



私はwiki籠り。追記修正を志す者である

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最終更新:2024年04月21日 18:34

*1 サーヴァント召喚前のマスターを殺害しても意味はないはずなのだが、この時の意図は不明

*2 武士の職や領地、財産を没収すること。江戸幕府における武家への刑罰のひとつ。

*3 大名が急逝、あるいはそれに近しい緊急事態に陥った際、家の断絶を防ぐために養子縁組を組むこと。あるいは縁組された養子そのものを指す。大名当人の意思確認が困難であるため、すげ替えによる大名家の乗っ取りの危険があることから禁じられていた。

*4 ご丁寧にもエネミー名は「ただの怪異」

*5 オリジナル以外の個体も倍々ゲームで増えると仮定した場合30年で10億人を突破する計算となる。