浜音ヒロ(カードファイト!!ヴァンガード)

登録日:2012/05/17(木) 07:32:44
更新日:2021/08/23 Mon 01:21:02
所要時間:約 7 分で読めます




「この世のほとんどのことは、論理的に考えることができるんだよ。論理と照らし合わせれば、真理が見えてくる……つまり『(ことわり)』が」

浜音ヒロとは、ブシロードのトレーディングカードゲームおよび伊藤彰の漫画『カードファイト!!ヴァンガード』を原作とする、番棚葵の同名の小説に登場するキャラクター。


父親の仕事の都合で先導アイチが通う後江(ひつえ)中学校に転校してきた、縁無しの眼鏡をかけた少年。アイチとは同じクラスである。
どこか暗い雰囲気を漂わせており、学校では難解そうな本を読んでばかりいる。加えてクラスメートを寄せ付けない無愛想な態度を取り続けているため、クラスでは孤立している。
実際はかなりの理論家で、物事と論理を照らし合わせて見えてくる真理、すなわち『(ことわり)』を重んじる性格。

新たな街に慣れるために散策をしていたところ、カードキャピタルから聞こえた楽し気な声に惹かれて来店。
早々に店を後にしたが、その時のブースターパックを眺める目と物憂げな表情が、臨時で店員をしていた*1アイチの印象に強烈に残った。
その後も連日店の前に来てはいたが、所在なげに佇んだ末に去ってしまうか、入店してもすぐに帰ってしまっていた。

形は違えど孤立していた過去の自分と今の浜音を重ねたアイチは、ひょっとしてヴァンガードがやりたいのかもしれないと思い、店長に相談する。
「何かを経験するということは、世界が広がるということ」という店長の返答で吹っ切れたアイチだったが、
その話を聞いていた櫂トシキが指導役にアイチを指名し、店長もそれに賛同した事により、アイチがヴァンガードを教えることになる。

最初は自分を熱心にヴァンガードに誘うアイチを冷たくあしらおうとしたが、熱意に押され「気に入らなかったらすぐにやめる」という条件で承諾した。
その後はアイチの不慣れなりに熱心な講義を気に入ったのか、以後もキャピタルに足を運び指導を受け、
いつの間にか「アイチくん」「ヒロくん」と名前で呼び合う仲になっている。

かなり筋は良いようで、手解きを受けた初日の時点でアイチが本気になってどうにか勝てたほどの腕前を見せた。
指導を受け始めて以来、本来の理論家な一面も見せるようになり、グレード3至上主義者である森川に、その構築が問題を抱えていることをよどみなく説明したことも。
しかしアイチ以外と勝負できる自信がないとして、彼以外とはファイトをしたがらない。

なぜか櫂を恐れているらしく、彼と対面した際は目を合わせることなく、理由をつけて慌ててキャピタルから出ていった。
どうやら過去に櫂と会ったことがあるようだが……?

以下ネタバレ注意



















櫂との接触以来、暗い表情を浮かべるヒロ。心配するアイチを、ヒロは「話があるんだ」と言って、街で最初に気に入った場所である高台の公園に連れていった。
しばらく言葉に詰まっていたヒロだったが、いざ決意を固めたところで、全てを思い出した櫂が割って入る。

実はヒロはヴァンガードは初心者ではなく、それどころか櫂が「俺を極限まで追い詰めた相手」と評するたった一人の人物。

過去に2人が対戦した店では通り名でのファイトが流行しており、彼は「英雄(=ヒーロー)」のもじりである「AU」を名乗っていた。
そのためお互いに本名は知らずにいたが、ヒロは櫂のことを覚えており、彼と対面してからはキャピタルに訪れるのを避けていた。
一方で櫂は、年月の経過に伴う外見の変化もあって、ヒロが「理」という言葉を使っていると知るまでは、どこでどのように会ったのか思い出せずにいた。

櫂自身はその時の勝負に執着してはいなかったが、自分を追い詰めたほどの実力者が、なぜヴァンガードを始めて1年も経っていないアイチの指導を受けているのかを疑問に思い、問いただした。
ヒロの正体に気付いてキャピタルを飛び出した櫂についてきていたカムイたちからも、悪意をもってアイチを騙していたのかと疑いの目を向けられる。
実際は悪意などなく、別の理由があって実力を隠していたヒロだったが、その時藁にも縋る思いで目を向けたアイチの表情から自分への不信感を感じ取ってしまう*2

ヒロは覚悟を決めた。だったら、こちらもその崩壊に乗るまでだ。
気がつけば彼は、薄い笑みを浮かべていた。

「そうだよ、って言ったんだ。ぼくは君を、嘲笑っていた。素人同然の君が、必死にヴァンガードを教えてくれる、愉快な姿をね」

その結果、ヒロは悪意ある卑劣漢を演じ、実力の差を教えるとしてアイチに勝負を挑み、勝利した。

そのプレイスタイルは『理』を重んじる性格が強く反映された論理的なもので、作中で使用したデッキも、山札操作や手札の増強を持ち味とする「オラクルシンクタンク」。
あらゆるケースを想定、吟味し、相手の行動を推測して的確に流れを支配していく。更にはトリガーを引く確率も算出して、それをあえて口に出すことで相手にプレッシャーを与える盤外戦術にも秀でている。
カードの声を聞き、カードによる導きを得るPSYクオリアとは真逆といえる。

以下更なるネタバレ注意



















ヒロの母は出産から間もなく死亡し、頼れる親戚もいなかった彼は父子家庭で育った。
だが父親はいわゆる「転勤族」であり、中学3年生である作中の時点で転校を20回は経験している。そのため、誰かと友人になったとしてもすぐに離れ離れになってしまう。
最初こそ電話やチャットがあると気にしてはいなかったが、たった半年の間に友人たちとは大きな壁ができてしまっていた。
チャットで繰り広げられたのは、自分の知らないカードショップや、自分の知らない大会の話題。それで盛り上がる友人たちを見て強い疎外感を覚えたヒロは、そこを自分の居場所とは思えなくなった。
友達ができても、経験や環境の違いから、じきにそこは「違う」場所となる。友達がいないとできないヴァンガードをする理由もなくなってしまった。
友達を望んでも仕方がないと思ったからこそ、他人を拒絶するような振る舞いを続け、また転校が決定すると、今度は心を許して友人となってしまったアイチを遠ざけるべく卑劣な人間を装った。

しかし、キャピタルでヴァンガードをやっていたときにヒロが見せた優しい笑顔を覚えていたアイチは、手元にある彼の情報を集め、彼がなぜそんな行動に至ったのかをイメージしてみせた。
ヒロはアイチのイメージを否定せず、友達を作ることを避け始めた理由など、これまでのことを語った。そしてお互いのため、もう話しかけないでほしいとアイチに頼む。

彼をどうにか孤独から救いたかったアイチは、「ヴァンガードは絆を作る」という櫂の言葉を受け、仲間たちと特訓を重ねる。
そして絆について教えるための最後の授業として、ヒロがキャピタルに来るよう仕向け、ファイトを挑む。
ファイトの最中、アイチはヒロが逃げていると指摘する。本当に友達でいたいなら、経験も環境も、聞いて共有すればよかった。ヴァンガードで作られた絆は、ヴァンガードで呼び戻せばよかったとアイチは語る。
それに論理的な反論こそできないものの、ヒロはアイチを的確な攻撃で追い詰める。しかしアイチはずっと保険として手放さずにいた「閃光の盾 イゾルデ」によってヒロの総攻撃を防ぎ切り、
その直後に引き当てた切り札「ソウルセイバー・ドラゴン」の効果で形勢は完全に逆転。通常以上に強力な総攻撃を食らい、敗北した。

その敗因を「単なる偶然」と言いつつも、アイチの「君は逃げている」という言葉で、自分の臆病さと、「こいつらは他人を見捨てるような愚かな人間だ」と友人たちを見下していた一面を自覚する。
周りを信じ、恐れずに何度もぶつかり、友情を育むべきだと教えられたヒロは、アイチが語る「絆」を信じることに決め、彼と和解した。

そして引っ越しの日、最後の挨拶のため、父親が運転するトラックに乗ってキャピタルを訪れる。ヒロだけでなく、最後の授業以降何度もヒロと戦ったキャピタルの面々も、同様に寂しさを覚えていた。
最後にアイチと短い挨拶を交わし、いつかまた「同じ」場所で会うことを約束し、街を去っていった。

その後、引っ越した先の街で、かつての自分と同じようなことを言う少年と出会う。
明らかに顔のこわばった少年を見て、鞄からデッキを取り出し、かつて自分がそうされたようにヴァンガードに誘った。

「ぼくが、君の先導者(ヴァンガード)になってあげる。さぁ、一緒に絆を作ろう」

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最終更新:2021年08月23日 01:21

*1 財布を落としたうえ、カードの購入に充てるはずだった金銭を抜き取られてしまい落ち込んでいたところ、店長の新田から「学校の試験が近いミサキの代理を探していた」として提案された。報酬は現金ではなくブースターパックである。

*2 アイチにとって櫂は憧れや尊敬の対象であるため、信頼に差があったのは仕方のないことである。