アンドレス・イニエスタ

登録日:2011/11/25(金) 00:33:44
更新日:2023/06/06 Tue 09:44:31
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アンドレス・イニエスタ(Andrés Iniesta Luján)はスペイン代表並びにバルセロナのサッカー選手である。


チームの大黒柱プジョルやシャビと同じくバルサの下部組織(カンテラ)出身。


幼少期からそのセンスは高く評価され、バルセロナレアル・マドリードが彼の獲得を争った程だった。
結果的にはバルセロナへ入団し、着々とその才能を磨いてきた。


彼のプレースタイルはグアルディオラのパスとラウドルップのドリブルを持ち合わせるとまで評される程のテクニックを中心とする。
(現代風に言えばシャビのパスとメッシのドリブルを持ち合わせた感じ)

バルサカンテラ出身の選手の中でも飛び抜けて足下の技術が高く、両脚インサイドとアウトサイド、踵、つま先に足の裏、と全ての脚の部分で正確にボールを扱う。
ドリブルに関しても独特のリズムとボールコントロール、緩急で相手の守備網を崩していく。

彼のバイタルエリアやスペースの無い場所でのダブルタッチはもはや変態レベルと言っても過言ではない。
しかし、そんな彼もバルセロナのレギュラーの座をすぐに掴めたわけではない。

当時のライカールト監督の起用は左右のWGやトップ下にセンターハーフと所謂何でも屋という部分が目立っていた。

さらには

・絶対的司令塔シャビ
・全盛期のポルトガル代表デコ

と、世界のトップクラスの選手が彼と同じポジションに立ち塞がっていた。

それでも、次第にレギュラーとして起用される機会が増え、デコの不調もあり最終的にはバルサのトップ下の座を不動のものにした。

後にバルセロナのレジェンドであるグアルディオラがトップチームの監督となり、凸やロナウジーニョが去った後、
グアルディオラがカンテラ出身の選手を重視したバルセロナ伝統のスタイルを掲げてからは、
同じくカンテラ出身のメッシやシャビ、プジョルとチームに再び黄金期をもたらし、
そのシーズンにスペインのクラブチーム初の三冠(リーグ、国王杯、チャンピオンズリーグ)を達成した。
特にチャンピオンズリーグ準決勝イングランドの強豪チェルシーとのアウェイでの2ndlegではチェルシーに先制され、
残り時間ロスタイム1分という絶体絶命の場面で、メッシのパスをダイレクトの右アウトサイドで決めたゴールは、バルサを救った奇跡のゴールとして有名。


しかし、南アフリカW杯が控える09-10シーズンは3冠を達成した前シーズンとは変わって不運な幕開けとなる。
開幕前、親友であったエスパニョールのキャプテンだったダニエル・ハルケが急死。
彼自身怪我がちでほとんどの試合の先発から外れ、彼のメンタルはボロボロだったとも言われている。
後年、彼はこの時期にうつ病に罹っていたことを明かしている。
錠剤を飲んで眠る時だけが唯一の楽しみだったと語るほど、つらい時期だったという。
奇しくも同時期に、ドイツ代表GKロベルト・エンケもバルサ時代に発症していたうつ病を再発させ、09年11月に列車に飛び込み、帰らぬ人となっている。
イニエスタのその後を考えると、あまりにも対照的である……

負傷の影響でW杯に間に合うかと心配されたが無事メンバーに選出され、W杯前の親善試合で怪我を負うも本戦には間に合い、
グループリーグ、決勝トーナメントと苦しみながらもスペインは決勝までたどり着く。

このオランダとの決勝でイニエスタはスペインの英雄とまで賞されることとなる。



試合は両者無得点のまま延長に突入。
その延長後半、セスク・ファブレガスのパスをフリーで受けたイニエスタが右足でシュート。
ボールはオランダ代表GKステケレンブルクの手を弾きそのままゴール角へ吸い込まれていった。




この瞬間、イニエスタは感情を爆発しユニフォームを脱ぐ。

その下に着ていたアンダーウェアにはメッセージが







『ダニ・ハルケ、いつも僕らと共に』







当然この後に警告を受けるのだが、警告以上に最愛の友に対するメッセージは世界中を感動させた。
ちなみにこのアンダーウェアは現在、ハルケが所属していたエスパニョールに寄贈されている。





イニエスタのゴールで初のW杯制覇を成し遂げたスペイン。
当然、イニエスタは国民的ヒーローとして迎えられ、アウェイの敵地でさえイニエスタには相手のサポーターから拍手が送られた。
同じカタルーニャという地域にチームを構えるバルセロナとエスパニョール。
ライバル関係にあるエスパニョールのサポーターもイニエスタにはW杯の英雄、ハルケへの温かいメッセージに拍手と賞賛の言葉を送った。

W杯を終えた10-11シーズンは目立った怪我もなくほとんどのゲームに出場しチームの連勝記録に貢献した。
特に長年課題と言われてきた得点力も改善され、リーグ戦ではキャリア最多の8ゴールをあげている。





前述のようにチームにとって大事な場面でのゴールが多い。



その優雅さからスペインのジダンとも呼ばれ、イングランド代表FWウェイン・ルーニーからも世界最高の選手と評されており、
チームメイトのメッシもイニエスタを賞賛してやまない。
また、カンテラの最高傑作とも呼ばれ、当時のイニエスタのプレーを共に観戦していたグアルディオラとシャビは彼のプレーに驚愕し、

グアルディオラ曰く
『お前(シャビ)はそのうち私を引退に追い込むだろうが、油断していると今度はあの坊や(イニエスタ)がお前を引退に追い込むぞ』

とシャビに語ったという。
その他にもグアルディオラは
『私よりフットボールを理解しているプレーヤーは初めて見た』
と語り、ある大会の優勝したイニエスタに優勝トロフィーを渡す役割を担っていたグアルディオラがイニエスタにサインを求められた時のメッセージには、
『私がこれまで見た中で最高の選手へ』と、添えられていた。

グアルディオラがバルサのトップチームの指揮官となりイニエスタを指導する立場になっても、
『彼はたった20分の出場時間でも全く文句を言わない。若手の選手たちにはイニエスタを見習えと言いたいね』と変わらぬ賛辞を送っている。




ファンの間でも
「カンテラ出身の選手で歴代で一番上手い選手は?」

との質問ではイニエスタとセスク・ファブレガスの名前が大半を占めたそうだ。


2018年5月。
イニエスタに、ついに12歳から在籍していたバルサとの別れの時がやってきた。
退団の理由として、

『フィジカルのレベル、メンタルのレベルでこのチームに値するものを与えるのが難しくなってきた。すべての面でね。すごく心が痛むけど、このクラブが要求することを理解しているつもりだ。クラブにとって、僕にとって、最も誠実な決断だ』

『僕はこのクラブで、居心地の悪い状況に置かれたくない。時間は僕の敵になる。このクラブの要求するものを与えられなくなった。永遠に続けばいいと思っていたよ。でも、クラブに対しても、自分に対しても、嘘はつきたくないんだ』とコメントしている。

生ける伝説として長らくバルサの中盤に君臨してきた彼だが、近年は怪我の影響もありスタメンを外れることも多くなっており、満足のいくプレーが出来なくなっていた末、彼はバルサを去る決断をしたのだ。

2018年5月、レアル・ソシエダとのリーグ戦がバルサでのラストゲームとなり、カンプノウは「INFINIT INIESTA」というコレオでイニエスタを迎えた。この試合でも好プレーを披露し、バルセロナの勝利(1-0)に貢献した。試合後にはイニエスタへの感謝を示す大規模なセレモニーが行われ、選手やファンが彼との別れを惜しんだ。
そして、観客やチームメイトらが去った後、再び静寂のカンプノウに素足で戻りピッチに腰を下ろし、22年間過ごしたクラブとの別れを人知れず惜しんだ。
バルサでの最後のシーズンとなった2017-2018シーズン、チャンピオンズリーグの優勝は果たせなかったものの、リーグと国王杯の二冠を獲得し、有終の美を飾った。
スペイン代表からも2018年のロシアW杯を最後に退くことを表明している。

バルサを離れた彼に当然、かつての恩師ベップが率いるマンチェスター・シティをはじめ、多くの欧州のクラブが関心を示したものの、彼は
「敵としてバルサとは戦いたくない」と、CL・ELの出場可能性を持つ欧州クラブへの移籍を拒否。
新たなフィールドとして彼が選んだ、そのクラブとは…






Jリーグ
ヴィッセル神戸






楽天がバルサのスポンサーかつヴィッセルの親会社である、というのが縁を結ぶ大きな要因となった。
前シーズンではルーカス・ポドルスキを獲得するなど楽天マネーを炸裂させていたヴィッセルによる超ビッグディールは極めて大きな話題を呼ぶこととなる。
なにせ年俸は約33億円1億円プレーヤーすら多くないJリーグにおいては文字通り桁違いの金額であり、
イニエスタ1人の給与で他の1チーム分の給与くらいは余裕で賄えてしまう計算である。
あまりにも無茶な買い物……には見えるが、彼ほどの選手であればもたらす経済効果も並ではない。必ずしも額面通りのコストではないのである。

バルサとスペイン代表という勝利を義務付けられた絶対的強者の側で戦い続けてきたイニエスタにとって、
日本の、その中ですらせいぜい中堅であるヴィッセルでの戦いはまさしく新たな挑戦でもあった。

フル稼働とはいかないまでもレギュラークラスとして稼働できるだけのコンディションを保つことができており、
衰えたと言えどワールドクラスの技は未だ錆びつかず、Jリーグの常識を超えるプレーで日本を沸かせた。
2019シーズンでは1シーズン限りながら元バルサかつスペイン代表の同胞ダビド・ビジャとの共演も実現することとなった。
そして同年には天皇杯で優勝。ヴィッセル神戸に悲願のJリーグ初タイトルをもたらし、同年限りで現役を引退した盟友ビジャに花を持たせた。
周囲との連携も着実に向上し、クラブの結果……にはあまり結びついていない(リーグ戦は終始中位クラス)のが悲しいところではあるが、
多くのサッカーファンの期待と希望を裏切らないポジティブな移籍となったと言っていいだろう。
日本とスペインの風土は比較的合いにくいと言われるがイニエスタも日本での生活を気に入り、「ここで引退して、以降も関わり続けたい」といったコメントもするほどであった。
以降もペースを大きく落とさずに存在感を放ち、2021年に楽天とバルサのスポンサー契約が途切れてもその関係は途切れることはなかった。

が、2023シーズンでは全くと言っていいほど出番がなくなった。
これはイニエスタのパフォーマンス・コンディション面の問題ではない。
イニエスタと共に「バルサ化」を標語としてコンセプトを重んじてきたヴィッセルだったが、結果が出ない日々に耐えきれなかったか、このシーズンは個の能力を活かすタフな戦い方に舵を切ったところ大成功。
シーズン半ばまで首位争いを維持するという結果を出していたが、その中に、技術は超一流でもこの年39歳を迎えるイニエスタの居場所はなかったのである。
一方のイニエスタはまだ現役を続けられるし続けたいと考えており、そのため、上半期限りでの退団の意向を固めることとなった。
会見でもあくまで、リスペクトは変わらずあったうえでの選択という点を強調したイニエスタ。
シーズンを終えたばかりのバルサとヴィッセルの親善試合が行われることがその前に発表されており、どこまで計算されたかは謎だが、これがイニエスタの壮行試合の役目を持つこととなった。




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最終更新:2023年06月06日 09:44