ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko3183 隻眼のまりさ 第九話
最終更新:
ankoss
-
view
『隻眼のまりさ 第九話』 17KB
戦闘 群れ 独自設定 全速前進DA!
戦闘 群れ 独自設定 全速前進DA!
初めましての方は初めまして
他の作品を見てくださった方はありがとうございます。
投稿者の九郎です。
タイトルどおり前作の続編です。
他の作品を見てくださった方はありがとうございます。
投稿者の九郎です。
タイトルどおり前作の続編です。
―――――――――――――――――――――――――――――
~第九話~
それぞれの孤独な戦い!そして時は動き出す…
それぞれの孤独な戦い!そして時は動き出す…
――――同日、同時刻――――
「ぱちゅりーの作戦は生き残るためのものよ!
死にたくなかったら早く下がりなさい!」
死にたくなかったら早く下がりなさい!」
これが、ぱちゅりーの考えた最高の回答だった。
誰だって死にたくはないはずだ。
細かい理屈や理論が通じない場面故に
最も根源的な『生きる』という欲求に訴えかける。
誰だって死にたくはないはずだ。
細かい理屈や理論が通じない場面故に
最も根源的な『生きる』という欲求に訴えかける。
「…そう、分かったよ」
「…?」
「…?」
今の答えで納得したのだろうか。
ドスの意図は分からないがとりあえずドスは
洞窟の中に引っ込んでいく。
ドスの意図は分からないがとりあえずドスは
洞窟の中に引っ込んでいく。
ぱちゅりーは頭を切り替えた。
いずれにしても自分の指示に従ってくれるのなら
全く問題はない。
いずれにしても自分の指示に従ってくれるのなら
全く問題はない。
「まりさ達もゆっくり下がるよ!」
「ドス!まりさ達がしっかり守るからね!」
「…うん」
「ドス!まりさ達がしっかり守るからね!」
「…うん」
ドスは感情のこもらない声で答えた。
ぱちゅりーの位置からドスの表情が窺えなかったのは
幸いだったかもしれない。
ドスは幽鬼のような表情をしていたから。
こんな顔を見てしまったら指示など出せるはずがなかったから。
ぱちゅりーの位置からドスの表情が窺えなかったのは
幸いだったかもしれない。
ドスは幽鬼のような表情をしていたから。
こんな顔を見てしまったら指示など出せるはずがなかったから。
――――同日、同時刻――――
隻眼のまりさはいつも走っていた。
それがいつからなのかはもう分からない。
物理的にではなく、観念的にだ。
それがいつからなのかはもう分からない。
物理的にではなく、観念的にだ。
きめぇ丸と会ってから?
違う。あれは自分がそれを自覚するためのきっかけだった。
リーダーがドスになってから?
違う。それは自分が目標を見失った瞬間だ。
違う。あれは自分がそれを自覚するためのきっかけだった。
リーダーがドスになってから?
違う。それは自分が目標を見失った瞬間だ。
じゃあいつからだ?
二年前からか?それ以上前か?或いは
二年前からか?それ以上前か?或いは
――――生まれる前から、か?
「うー、まりさがいたんだどー!
つかまえるんだどー!」
「ふらんもたべたいー!」
「おかーちゃんふりゃんもー!」
つかまえるんだどー!」
「ふらんもたべたいー!」
「おかーちゃんふりゃんもー!」
今のまりさの頭は完全に混乱していた。ただしそれは半分。
もう半分は妙に冷静だった。
れみりゃの攻撃を左右のステップでかわし
カウンターで木の枝の斬撃を叩き込む。
もう半分は妙に冷静だった。
れみりゃの攻撃を左右のステップでかわし
カウンターで木の枝の斬撃を叩き込む。
「いじゃいいいいいいいいいいいいい!!!」
れみりゃの叫びもまるで遠くの出来事だ。
頭の冷静な部分は最低限のことだけを考えていた。
頭の冷静な部分は最低限のことだけを考えていた。
「よぐもおおおおおおおおおお!!!」
だが混乱した部分では戦闘とは全く関係ないことを考えていた。
隻眼のまりさの見えない左目。
その真っ暗な部分には何かの光景がフラッシュバックする。
隻眼のまりさの見えない左目。
その真っ暗な部分には何かの光景がフラッシュバックする。
そのフラッシュバックは意味のある物ではなく
この状況とは全く無関係の世界の一場面だった。
だが、隻眼のまりさはそれこそが
自分の求めていたものだと言わんばかりに
戦闘よりもむしろそちらに意識を集中していたかもしれない。
この状況とは全く無関係の世界の一場面だった。
だが、隻眼のまりさはそれこそが
自分の求めていたものだと言わんばかりに
戦闘よりもむしろそちらに意識を集中していたかもしれない。
「っ!!!!」
「うー!?」
「うー!?」
短く息を吐いて地面を蹴る。
カウンターだ。
この行動は既に反射の域に達している。
一瞬の状況判断。
相手の行動を読むのではなく
自身の反射神経だけに頼って
目の前にある状況にただ対応していく。
後先考えない、ただの特攻。
カウンターだ。
この行動は既に反射の域に達している。
一瞬の状況判断。
相手の行動を読むのではなく
自身の反射神経だけに頼って
目の前にある状況にただ対応していく。
後先考えない、ただの特攻。
そうだ。この感じ。覚えがある。
一瞬の差を見極めての緊張感。
一瞬の差を見極めての緊張感。
攻撃の命中するか否かの見極めの冷静さと
その瞬間に自分の最高の一撃を叩き込む豪胆さ。
自分の中に相反する二つのものがある。
まさに今見ている情景そのものだ。
まさに左目の見えない自分だからこそ気付いた境地だ。
その瞬間に自分の最高の一撃を叩き込む豪胆さ。
自分の中に相反する二つのものがある。
まさに今見ている情景そのものだ。
まさに左目の見えない自分だからこそ気付いた境地だ。
「もうゆるざないいいいいいいい!!!
みんなでごのまりざをごろずううううううううううう!!!」
「ゆっぐりじねえええええええええええ!!!!」
「っ!!とっ!!」
みんなでごのまりざをごろずううううううううううう!!!」
「ゆっぐりじねえええええええええええ!!!!」
「っ!!とっ!!」
まりさは攻撃をかわす。
右へ。左へ。前へ。後ろへ。
右へ。左へ。前へ。後ろへ。
ただそこにあるものをかわす動き。
違う。似ているが違う。
違う。似ているが違う。
『どのような加速度を持とうと、究極的には直線になるんだよ』
意味のある言葉のフラッシュバック。
それが頭に響く。
それが頭に響く。
まだわからない。
でも何かが見えてきそうだ。
でも何かが見えてきそうだ。
赤い霧が。
歪な形の月が。
歪な形の月が。
そしてれみりゃとふらんに似た何かが。
まりさは、何かと戦っていたのだ。
だけどそこに緊張感はあっても危機感はない。
だけどそこに緊張感はあっても危機感はない。
「うー!!!」
右から来るれみりゃを左に跳んで避ける。
ジャンプした先にはさらにれみりゃがいた。
突き出してくる手にカウンターをあわせる。
狙うは左側頭部。
真っ直ぐに。
ジャンプした先にはさらにれみりゃがいた。
突き出してくる手にカウンターをあわせる。
狙うは左側頭部。
真っ直ぐに。
「ぶべ!!」
れみりゃの頭部を捉えたその攻撃は
たやすく相手の頭部を粉砕した。
たやすく相手の頭部を粉砕した。
でも違う。
これじゃない。
この攻撃は確かに強力だが何かが違う。
自分が思い描いているそれとは違う。
見えている右半分の思考でそう考える。
これじゃない。
この攻撃は確かに強力だが何かが違う。
自分が思い描いているそれとは違う。
見えている右半分の思考でそう考える。
自分は生まれてからこんな光景を見た覚えはない。
しかし、その『記憶』は確かに自分の中にあったものだ。
暗い中、寒い中、暑い中。
空中で、室内で、地底で。
そのロケーションは見たことがないのに見覚えがある。
見えていない左半分の思考でそう考える。
しかし、その『記憶』は確かに自分の中にあったものだ。
暗い中、寒い中、暑い中。
空中で、室内で、地底で。
そのロケーションは見たことがないのに見覚えがある。
見えていない左半分の思考でそう考える。
「じねえ!!!!」
左から来るふらんを避ける。
思い出せ。形となれ。
『記憶』がないわけじゃない。
忘れているわけでもない。
思い出せないだけだ。
『記憶』がないわけじゃない。
忘れているわけでもない。
思い出せないだけだ。
「にげるんじゃないんだどー!!」
真正面。胴付きれみりゃが迫ってくる。
月を背にした敵。
赤い館で戦った記憶。
赤い館で戦った記憶。
右目には捕食種の胴付きれみりゃが見える。
左目にはもっと大きなれみりゃに似た何かが見える。
左目にはもっと大きなれみりゃに似た何かが見える。
手を振りかぶってこちらを潰しに来た。
れみりゃの手が届くまであと1秒。
霞がかった左目のフラッシュバックが像を結び始める。
霞がかった左目のフラッシュバックが像を結び始める。
れみりゃの手が届くまであと0.7秒。
隻眼のまりさの体は光り始めている。
隻眼のまりさの体は光り始めている。
れみりゃの手が届くまであと0.5秒。
イメージに時間は必要ない。
イメージに時間は必要ない。
れみりゃの手が届くまであと0.3秒。
イメージする必要はない。
イメージする必要はない。
れみりゃの手が届くまであと0.1秒。
なぜなら自分はそれを知っているのだから。
なぜなら自分はそれを知っているのだから。
れみりゃの手の指先が隻眼のまりさに触れた。
そう、これだ。この瞬間だ。
忘れていたものは。
鍛えていたものは。
全てはこの瞬間のために。
忘れていたものは。
鍛えていたものは。
全てはこの瞬間のために。
「ファイナルスパーク」
隻眼でない、両目を開いたまりさがそうつぶやいた。
――――翌日、朝方――――
どんな夜にでも朝は来る。
それがどんな悪夢にうなされる夜でも例外はない。
勿論今も。
それがどんな悪夢にうなされる夜でも例外はない。
勿論今も。
れみりゃ襲撃から8時間ほど経過していた。
日が昇ってすぐ。湿った風が集落を吹き抜ける。
おそらく今日明日にでも雨が降るだろう。
水分を嫌うゆっくりは湿気も好かない。
それでもこういう日は次の日のために食料を
積極的に確保するのが賢い選択だ。
日が昇ってすぐ。湿った風が集落を吹き抜ける。
おそらく今日明日にでも雨が降るだろう。
水分を嫌うゆっくりは湿気も好かない。
それでもこういう日は次の日のために食料を
積極的に確保するのが賢い選択だ。
「ひどいものね」
ぱちゅりーは珍しく単独で集落にいた。
ずりずりとゆっくり移動しながらあたりの様子を見る。
ずりずりとゆっくり移動しながらあたりの様子を見る。
あちこちに甘い臭いが立ち込めていた。
ゆっくりの餡子の臭いだ。
あまあまにしか目に入らない状態になっているゲスはともかく
今のぱちゅりーにとってはそれが死臭にしか感じなかった。
ゆっくりの餡子の臭いだ。
あまあまにしか目に入らない状態になっているゲスはともかく
今のぱちゅりーにとってはそれが死臭にしか感じなかった。
「…」
いやでも目に入る同族の死体と目が合ってしまった。
口を大きく開け、絶命している。
おそらく最後の最後まで死にたくないと叫んだのだろう。
片方しかない目は大きく見開かれており正面を見ていた。
見えていても、認識できていたかどうかは定かではないが。
口を大きく開け、絶命している。
おそらく最後の最後まで死にたくないと叫んだのだろう。
片方しかない目は大きく見開かれており正面を見ていた。
見えていても、認識できていたかどうかは定かではないが。
「むきゅ…」
自分はなんて無力なのだろうと情けなくなった。
結局昨晩、洞窟内に現れたれみりゃは数えるほどだったのだが
外はこのような有様。
朝一番に出てきた自分だが
まだ生存者とは一匹も会っていない。
結局昨晩、洞窟内に現れたれみりゃは数えるほどだったのだが
外はこのような有様。
朝一番に出てきた自分だが
まだ生存者とは一匹も会っていない。
「だれか、いるー?」
壁に近い斜面に掘られた巣穴を覗き込む。
この家庭は、独り立ちしたみょんが
友達と一緒に住んでいたかなり広い家だ。
中に誰か残っていないかと入ってみる。
この家庭は、独り立ちしたみょんが
友達と一緒に住んでいたかなり広い家だ。
中に誰か残っていないかと入ってみる。
例によって餡子まみれだった。
中に胴無しれみりゃでも入り込んだのだろうか。
みょん、ちぇん、まりさなどの活動的な種類が軒並み食われている。
けれどもこれは最後の意地か、れみりゃの死骸も一つあった。
みょんの『はくろうけん』に貫かれ翼は食いちぎられている。
口には餡子がついているため文字通りの死闘を演じたのが分かる。
中に胴無しれみりゃでも入り込んだのだろうか。
みょん、ちぇん、まりさなどの活動的な種類が軒並み食われている。
けれどもこれは最後の意地か、れみりゃの死骸も一つあった。
みょんの『はくろうけん』に貫かれ翼は食いちぎられている。
口には餡子がついているため文字通りの死闘を演じたのが分かる。
「むきゅぅ…」
ぱちゅりーの判断には何の間違いもなかった。
これほどの被害だ。
ドスが外に出て行ったとしてもそれは無駄死にという
結果をもたらしただけだろう。
自分は最善の判断が出来た『もりのけんじゃ』として。
これほどの被害だ。
ドスが外に出て行ったとしてもそれは無駄死にという
結果をもたらしただけだろう。
自分は最善の判断が出来た『もりのけんじゃ』として。
でもそれは小さくまとまっただけの
おろかな行為だったのではないだろうか。
そんなことも考えてしまう。
おろかな行為だったのではないだろうか。
そんなことも考えてしまう。
それでも、自分にはそうするしかなかった。
自分には戦う力がない。
もし戦う力があるのなら
自分も仲間を守るために戦おうと思っただろうか。
そして戦う力があればそんな無茶な考えを持つことが出来るだろうか。
自分には戦う力がない。
もし戦う力があるのなら
自分も仲間を守るために戦おうと思っただろうか。
そして戦う力があればそんな無茶な考えを持つことが出来るだろうか。
結局あのあと隻眼のまりさは戻らなかった。
どうなったか少なくとも今のところは分からない。
ぱちゅりーに言わせれば死骸が見当たらないのと
死亡してしまったのはイコールで繋がる。
いずれにしてもいないのだから
自分の対応は死んでいる場合と変わらない。
どうなったか少なくとも今のところは分からない。
ぱちゅりーに言わせれば死骸が見当たらないのと
死亡してしまったのはイコールで繋がる。
いずれにしてもいないのだから
自分の対応は死んでいる場合と変わらない。
「まりさ…あなたはなにがしたかったのかしら」
今のぱちゅりーにはもう分からない。
いくら力を持っていてもそれを活かす術がなければ意味がない。
それがいかに強大でも単独で戦い続けることは出来ない。
ぱちゅりーは自分の弱さを知っているからこそ
強さを活かす方法が分かる。
それを知らなかった、というより弱さを捨て去ろうとした
隻眼のまりさにはそれが分からなかったのかもしれない。
いくら力を持っていてもそれを活かす術がなければ意味がない。
それがいかに強大でも単独で戦い続けることは出来ない。
ぱちゅりーは自分の弱さを知っているからこそ
強さを活かす方法が分かる。
それを知らなかった、というより弱さを捨て去ろうとした
隻眼のまりさにはそれが分からなかったのかもしれない。
「そうね。まりさは生きていたとしてももう戻れないかもしれないわ…」
自分達はこうも食い違ってしまった。
最後のチャンスはもう潰されてしまっている。
流石にそれは偶然だろうが結果が全てだ。
最後のチャンスはもう潰されてしまっている。
流石にそれは偶然だろうが結果が全てだ。
ぱちゅりーは帰路に着く。
いつもの道のはずなのに全く違う道。
いつもの道のはずなのに全く違う道。
「ぱちゅりー!?ぱちゅりー大丈夫だったの!?」
「むきゅ!?れいむ、無事だったのね!」
「むきゅ!?れいむ、無事だったのね!」
唯一動くれいむが寄ってきた。
ようやく生存者を見つけたぱちゅりーはれいむを連れて
洞窟へ向かった。
ようやく生存者を見つけたぱちゅりーはれいむを連れて
洞窟へ向かった。
――――同日、昼前――――
「ドスー!!まりさの『ハニー』がー!!」
「ゆえーんゆえーん!!おかーじゃーん!!」
「ゆえーんゆえーん!!おかーじゃーん!!」
ドスの洞窟には生存者が集められていた。
精鋭のまりさも二匹しか帰って来ていない。
結局姿を見せなかった一匹は現れなかったのだ。
精鋭のまりさも二匹しか帰って来ていない。
結局姿を見せなかった一匹は現れなかったのだ。
「ゆっくり静かにしてね!」
「どぼじでごんなごどにいいいいいいいい!!!」
「おにゃかしゅいたよおおおおおおおおお!!!」
「どぼじでごんなごどにいいいいいいいい!!!」
「おにゃかしゅいたよおおおおおおおおお!!!」
生存者はぱちゅりー、ドス、精鋭のまりさ二匹。
あとは集落の普通のゆっくりが七匹だ。
親の口の中にいたがために生き残った赤ゆっくりもいた。
あとは集落の普通のゆっくりが七匹だ。
親の口の中にいたがために生き残った赤ゆっくりもいた。
朝方皆で捜索したが結局この合計11匹しか残っていない。
ドスは結局ここで生き延びた。集落の皆を犠牲にして。
正直に言って自分は少々味方であるぱちゅりーも
敵であるれみりゃたちも甘く見ていたのだ。
自分はただのゆっくりと理解していたはずなのに
他のものには、いや、何者にも成し得ない事をしようとしていたのだ。
正直に言って自分は少々味方であるぱちゅりーも
敵であるれみりゃたちも甘く見ていたのだ。
自分はただのゆっくりと理解していたはずなのに
他のものには、いや、何者にも成し得ない事をしようとしていたのだ。
ぱちゅりーの言うことが全面的に正しいとは今でも思っていない。
ただぱちゅりーは出来ることは何か、出来ないことが何か
それを的確に理解していたのだ。
ただぱちゅりーは出来ることは何か、出来ないことが何か
それを的確に理解していたのだ。
「ゆぅ…ごはんさんあるよ、ゆっくり食べてね」
「むーしゃむーしゃ…」
「ゆぅぅぅぅ……」
「むーしゃむーしゃ…」
「ゆぅぅぅぅ……」
貯蔵していた食料を皆に配る。
一応冬篭りに備えていた食料があるので
当面の食事には困らない。
それでもここで食べてしまえば
また探しに行かねばならないわけだが。
一応冬篭りに備えていた食料があるので
当面の食事には困らない。
それでもここで食べてしまえば
また探しに行かねばならないわけだが。
「むきゅ!戻ったわよ!」
「ゆわーん!みんなー!!」
「れいむ!れいむが戻ってきたよ!」
「大丈夫だったれいむ!?」
「ゆわーん!みんなー!!」
「れいむ!れいむが戻ってきたよ!」
「大丈夫だったれいむ!?」
ぱちゅりーが生き残りのれいむを連れて帰ってきた。
これで12匹になった。
これで12匹になった。
「ぱちゅりー、大丈夫?」
「むきゅぅ…さすがに疲れたわ…
ちょっと休ませて貰うわ」
「ぱちゅりー…」
「むきゅぅ…さすがに疲れたわ…
ちょっと休ませて貰うわ」
「ぱちゅりー…」
ぱちゅりーは消耗しているようだった。
当然だ。昨日から全く寝ていなかったのだ。
ドスも一応捜索に出たのだが疲れたという理由で仮眠を取っていた。
ぱちゅりーは戦闘中はずっとれみりゃを警戒して起きていたというのに。
当然だ。昨日から全く寝ていなかったのだ。
ドスも一応捜索に出たのだが疲れたという理由で仮眠を取っていた。
ぱちゅりーは戦闘中はずっとれみりゃを警戒して起きていたというのに。
頭が上がらないとはこのことだ。
戦闘中も、今も、そして二年前でさえ
ぱちゅりーは集落のため、皆のため、自分のために
完璧な思考をめぐらせていたのだ。
戦闘中も、今も、そして二年前でさえ
ぱちゅりーは集落のため、皆のため、自分のために
完璧な思考をめぐらせていたのだ。
それに比べて自分は何だ。
二年前の戦闘ではぱちゅりーの指示がなければ死んでいた。
そして今回の戦闘でも自分はドススパークを撃っただけ。
ましてや標的になると集落の仲間達を
ほとんど囮にするような形で生き延びた。
二年前の戦闘ではぱちゅりーの指示がなければ死んでいた。
そして今回の戦闘でも自分はドススパークを撃っただけ。
ましてや標的になると集落の仲間達を
ほとんど囮にするような形で生き延びた。
自分には何も出来なかった。
場合によっては最初から最後まで洞窟にいても
今と状況は変わらなかったかもしれない。
ぱちゅりーと違い、自分は明確な実績など
何一つ残せてはいない。
場合によっては最初から最後まで洞窟にいても
今と状況は変わらなかったかもしれない。
ぱちゅりーと違い、自分は明確な実績など
何一つ残せてはいない。
「ドス、これからどうするの?」
「皆いなくなっちゃったよ?」
「ゆぅぅ……ドスにもわからないよ…」
「どうしてぇ…?」
「皆いなくなっちゃったよ?」
「ゆぅぅ……ドスにもわからないよ…」
「どうしてぇ…?」
皆不安がっている。
自分には何も出来ない。
一番頼りにしていた隻眼のまりさも戻ってこない。
或いは、自分はドスになるべきではなかったのだろうか。
思い返せば運命に左右されてばかりの一生だった。
ドス自身は何も望んではいなかったのだ。
かつてリーダーをやっていたのも自分から望んだわけではない。
村長になったのも偶然ドスになったからだ。
自分自身がなそうとしてなしてきたものが一つでもあっただろうか。
もう、それも分からない。
自分には何も出来ない。
一番頼りにしていた隻眼のまりさも戻ってこない。
或いは、自分はドスになるべきではなかったのだろうか。
思い返せば運命に左右されてばかりの一生だった。
ドス自身は何も望んではいなかったのだ。
かつてリーダーをやっていたのも自分から望んだわけではない。
村長になったのも偶然ドスになったからだ。
自分自身がなそうとしてなしてきたものが一つでもあっただろうか。
もう、それも分からない。
が、ドスには不安はあってももう迷いはないのだ。
自分はドスとして在ることを決意しているのだ。
集落もまた立て直していくことになる。
そこに本当に自らの意思が介在するかどうかなどは知らない。
ぱちゅりーの指示を優先的に採用する以上
初めからないかも知れない。
それでもいいのだ。
そんなことは、考える余裕のあるときにすればいいのだから。
自分はドスとして在ることを決意しているのだ。
集落もまた立て直していくことになる。
そこに本当に自らの意思が介在するかどうかなどは知らない。
ぱちゅりーの指示を優先的に採用する以上
初めからないかも知れない。
それでもいいのだ。
そんなことは、考える余裕のあるときにすればいいのだから。
――――同日、夕刻――――
「ドス、いる?」
「ぱちゅりー、起きたの?」
「ええ、皆はどうしたの?」
「とりあえず皆のおうちに戻ったよ。
冬さんが来るしドスの洞窟は広くて寒いから」
「そう…」
「ぱちゅりー、起きたの?」
「ええ、皆はどうしたの?」
「とりあえず皆のおうちに戻ったよ。
冬さんが来るしドスの洞窟は広くて寒いから」
「そう…」
夕刻になった集落は、多くの帰宅していくゆっくり達の話し声と
夕食を食べている家族の「むーしゃむーしゃ、しあわせー!」が
聞えてくるというのがいつもの光景だった。
夕食を食べている家族の「むーしゃむーしゃ、しあわせー!」が
聞えてくるというのがいつもの光景だった。
「ぱちゅりー、ぱちゅりーはこれからどうするの?」
「どうするって?勿論冬さんに備えてごはんさんの……あ…」
「どうするって?勿論冬さんに備えてごはんさんの……あ…」
ぱちゅりーは口ごもってしまう。
そうだ、自分には満足に狩りをするだけの体力などない。
そんな様子を知ってか知らずか、ドスが口を開く。
そうだ、自分には満足に狩りをするだけの体力などない。
そんな様子を知ってか知らずか、ドスが口を開く。
「ぱちゅりー、ドスはね、あの時まりさを追うつもりだったんだよ」
「………………」
「でもね。ぱちゅりーが生き残るためって言ったから
ドスはものすごく頭にきたけど、それでも、生きるために我慢したよ」
「………そう」
「………………」
「でもね。ぱちゅりーが生き残るためって言ったから
ドスはものすごく頭にきたけど、それでも、生きるために我慢したよ」
「………そう」
ぱちゅりーは自分の部屋の入り口からドスを見上げる。
「でもね。まりさは戻らなかったんだよ…?」
ドスは泣いていた。
「ドス…………」
「ぱちゅりー、ぱちゅりーはまりさが死んでもよかったの?」
「そうじゃないけど…でも…」
「ドスは…ドスはどうすればよかったの?
生き残ればよかったの?逃げればよかったの?」
「………………」
「ドスは戦いたかったよ。れみりゃ達が憎かったよ。
ドススパークがなくなったならジャンプで戦いたかったし
ジャンプが出来なくなったら噛み付きでも舌でも
戦える限り戦いたかったよ…」
「ドス、そんなことでは何も得られないわ」
「ううん、ドスは、逃げたから失ったんだよ…?」
「そんなこと言わないで。戦っていても失われていたわ」
「ドスは…ドスは、皆で走るのが好きだったんだ。
ドスは…ううん、まりさは、さびしがりやだったんだ。
いつもおかーさんにすーりすーりしてたよ。
でも、独り立ちするときが来て、皆と一緒に走って
まりさはずっと皆と一緒にいたかったよ。
まりさはあの時のまりさ達と一緒に戦いたかったよ。
まりさは…自分だけ生き残るのは嫌だよ…」
「ぱちゅりー、ぱちゅりーはまりさが死んでもよかったの?」
「そうじゃないけど…でも…」
「ドスは…ドスはどうすればよかったの?
生き残ればよかったの?逃げればよかったの?」
「………………」
「ドスは戦いたかったよ。れみりゃ達が憎かったよ。
ドススパークがなくなったならジャンプで戦いたかったし
ジャンプが出来なくなったら噛み付きでも舌でも
戦える限り戦いたかったよ…」
「ドス、そんなことでは何も得られないわ」
「ううん、ドスは、逃げたから失ったんだよ…?」
「そんなこと言わないで。戦っていても失われていたわ」
「ドスは…ドスは、皆で走るのが好きだったんだ。
ドスは…ううん、まりさは、さびしがりやだったんだ。
いつもおかーさんにすーりすーりしてたよ。
でも、独り立ちするときが来て、皆と一緒に走って
まりさはずっと皆と一緒にいたかったよ。
まりさはあの時のまりさ達と一緒に戦いたかったよ。
まりさは…自分だけ生き残るのは嫌だよ…」
ぽろぽろと落涙する。
ずっと我慢しようとしている涙。
失ったら、失っただけ涙を流していたのだ。
ドスの心根は、どこまでもただのまりさだった。
ずっと我慢しようとしている涙。
失ったら、失っただけ涙を流していたのだ。
ドスの心根は、どこまでもただのまりさだった。
――――某日、某時刻――――
そこは、とある山道だった。
別に実際に舗装された道路があるわけではない。
山道だ、というのは獣道も道だと考えるならばという話だ。
別に実際に舗装された道路があるわけではない。
山道だ、というのは獣道も道だと考えるならばという話だ。
そこを、一匹のゆっくりが走っていた。
「はっはっはっはっ!」
…いや、もうそれはゆっくりではないのかもしれない。
身体は饅頭。中身は餡子。
人間の幼児レベルの知能を持ち
場合によっては群れを形成し生きることもある準生命体。
身体は饅頭。中身は餡子。
人間の幼児レベルの知能を持ち
場合によっては群れを形成し生きることもある準生命体。
ゆっくりの定義など、実際は曖昧だ。
そこに何があるかなど、ましてや自分が何者であるかなど
明確に説明できるものなどいない。
そこに何があるかなど、ましてや自分が何者であるかなど
明確に説明できるものなどいない。
「ふぅ…ふぅ…」
『それ』が立ち止まる。
ここはまだ山の中。
この山の中にいる限りは何処へ行っても森の中だ。
既に涼しくなってきている山の中は肌寒い。
しかも木々に遮られて日の光の届かぬ地面は冷たかった。
山頂付近に行けばさらに寒くなっていることだろう。
ゆっくりならとっくの昔に冬篭りをして穴倉の中かもしれない。
ここはまだ山の中。
この山の中にいる限りは何処へ行っても森の中だ。
既に涼しくなってきている山の中は肌寒い。
しかも木々に遮られて日の光の届かぬ地面は冷たかった。
山頂付近に行けばさらに寒くなっていることだろう。
ゆっくりならとっくの昔に冬篭りをして穴倉の中かもしれない。
『それ』は考える。
どうしてこうなったのか。
知識もある。経験もある。分別もある。
ここまで来た道のりもきちんと覚えている。
だが、スタート地点が思い出せない。
自分は一体最初は何処にいたのだろうか。
どのような物語にも始まりはある。
その始まりの地点が分からない。
分からない、というのは不正確かもしれない。
知っている気がするのだがひどく曖昧なのだ。
自分の知っている記憶が本当に始まりなのだろうか。
どうしてこうなったのか。
知識もある。経験もある。分別もある。
ここまで来た道のりもきちんと覚えている。
だが、スタート地点が思い出せない。
自分は一体最初は何処にいたのだろうか。
どのような物語にも始まりはある。
その始まりの地点が分からない。
分からない、というのは不正確かもしれない。
知っている気がするのだがひどく曖昧なのだ。
自分の知っている記憶が本当に始まりなのだろうか。
『それ』は悩む。
これからどうすればいいのか。
何の因果があったのかは分からないが自分は気付いてしまった。
自分の存在の根底にあるものを。
だが、気付いたところでどうしようもないのだ。
変わってしまったのは中身だけだ。
能力も外見も存在も何一つ変わっていない。
要するに自分に出来ることも変わる前と
対して変わっていないのだ。
これからどうすればいいのか。
何の因果があったのかは分からないが自分は気付いてしまった。
自分の存在の根底にあるものを。
だが、気付いたところでどうしようもないのだ。
変わってしまったのは中身だけだ。
能力も外見も存在も何一つ変わっていない。
要するに自分に出来ることも変わる前と
対して変わっていないのだ。
『それ』は想像する。
これからどうなるのか。
このままいけばただ一つのちっぽけな存在として消える運命だろう。
だが、気付いてしまったのだ。
気付かなければよかったことに。
気付いていたのはいつからだったか。
違和感を覚えたときだろうか。
変わってしまったときだろうか。
それとも、これから戻れない道を行った先だろうか。
これからどうなるのか。
このままいけばただ一つのちっぽけな存在として消える運命だろう。
だが、気付いてしまったのだ。
気付かなければよかったことに。
気付いていたのはいつからだったか。
違和感を覚えたときだろうか。
変わってしまったときだろうか。
それとも、これから戻れない道を行った先だろうか。
『それ』は探す。
これからなにが出来るのだろうか。
気付いてしまったことに振り回されるのは世の常だ。
知らなければそのままでいられたものを
気付いてしまったが故に一生それを背負っていくことになる。
そしてこの変化は『知ること』『気付くこと』が
鍵となっているのではないかとも考える。
だが、それが故に気付くことが重要なのではなく
気付いた後に何がなせるかが重要なのだ。
ひょっとしたら自分以外にも気付いたものがいるかもしれない。
場合によっては自分が想像しているよりもずっと多くのものが気付き
何も出来ずに散っていったのかもしれない。
これからなにが出来るのだろうか。
気付いてしまったことに振り回されるのは世の常だ。
知らなければそのままでいられたものを
気付いてしまったが故に一生それを背負っていくことになる。
そしてこの変化は『知ること』『気付くこと』が
鍵となっているのではないかとも考える。
だが、それが故に気付くことが重要なのではなく
気付いた後に何がなせるかが重要なのだ。
ひょっとしたら自分以外にも気付いたものがいるかもしれない。
場合によっては自分が想像しているよりもずっと多くのものが気付き
何も出来ずに散っていったのかもしれない。
『それ』は走り出す。
これから何かをなすために。
自分は変化を求めた。
だが、その変化は決して特別な何かではなかった。
自分と同じ存在ならいつそうなってもおかしくない変化だった。
もしかしたらこれから自分が出来ること、やろうとしていることも
決して特別ではないのではないか。
そして、何かをなそうとして何も出来ないことも
予定調和として決められているのではないだろうか。
これから何かをなすために。
自分は変化を求めた。
だが、その変化は決して特別な何かではなかった。
自分と同じ存在ならいつそうなってもおかしくない変化だった。
もしかしたらこれから自分が出来ること、やろうとしていることも
決して特別ではないのではないか。
そして、何かをなそうとして何も出来ないことも
予定調和として決められているのではないだろうか。
それでも『それ』は走り始めてしまった。
思い返せば、これは決して戻れぬ道ではないのかもしれない。
気付いてしまった違和感を一生隠し通して
ただひとつの存在として埋没してしまってもいいのかもしれない。
思い返せば、これは決して戻れぬ道ではないのかもしれない。
気付いてしまった違和感を一生隠し通して
ただひとつの存在として埋没してしまってもいいのかもしれない。
それでも『それ』は走ることをやめなかった。
それが何を意味するのか。
それが何をもたらすのか。
それすらも分からずに。
自分には何も出来ないかもしれない。
それでも何かをせずにはいられない。
それが何を意味するのか。
それが何をもたらすのか。
それすらも分からずに。
自分には何も出来ないかもしれない。
それでも何かをせずにはいられない。
『魔理沙』には何も分からない。
続く
次回予告
気付いたことは本当なのか。
知らなければ良かったことなのか。
それに気付いてしまった自分は
どうあるべきなのだろうか。
分からないと逃げ、知らないと言い訳し
聞こえぬと耳を塞げばいいのかもしれない。
それでも『隻眼のまりさ』は走り続ける。
意味のある、何かを求めて…。
知らなければ良かったことなのか。
それに気付いてしまった自分は
どうあるべきなのだろうか。
分からないと逃げ、知らないと言い訳し
聞こえぬと耳を塞げばいいのかもしれない。
それでも『隻眼のまりさ』は走り続ける。
意味のある、何かを求めて…。
次回 隻眼のまりさ ~第十話~
まりさの歩み!冬の山をただひた走る…
まりさの歩み!冬の山をただひた走る…
乞うご期待!
あとがき
またちょっと好き勝手にやりすぎたと言い訳しそうになる展開です。
それでも、プロローグに載せた『靄のかかっている部分』は
大体終了いたしましたので最終回に向けて
隻眼のまりさと共に突っ走りたいと思います。
また本作品は、私が読んだ様々なノベル作品の
影響を多大に受けています。ご了承ください。
それでも、プロローグに載せた『靄のかかっている部分』は
大体終了いたしましたので最終回に向けて
隻眼のまりさと共に突っ走りたいと思います。
また本作品は、私が読んだ様々なノベル作品の
影響を多大に受けています。ご了承ください。
最後に、この作品を読んでくださった全ての方に無上の感謝を。
私がここに投稿させて頂いた作品一覧
anko3052 ゆっくり駆除業者のお仕事風景 以降そのシリーズ
anko3061 隻眼のまりさ プロローグ 以降そのシリーズ
anko3127 ゆっくり加工業者のお仕事風景
anko3061 隻眼のまりさ プロローグ 以降そのシリーズ
anko3127 ゆっくり加工業者のお仕事風景