ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko3658 ほんとうのゆっくり(前編)
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ankoss
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『ほんとうのゆっくり(前編)』 29KB
虐待 自業自得 現代 お久しぶり
虐待 自業自得 現代 お久しぶり
とある一室に、子ゆっくりから正に成体サイズになったところというぐらいの大きさの
ゆっくりが二十匹ほどいた。
「ゆぅ、れいむたち、これからどうなっちゃうのかな」
「だいじょうぶなんだぜ、まりさたち、かいゆっくりになるためのくんれんを受けてきた
のぜ、きっとこれからかいゆっくりとしてゆっくりできるんだぜ」
不安そうに言ったれいむに一匹のまりさが自信満々の表情で答える。
「むきゅ、そうよ、今までがんばってこれたんだから、大丈夫!」
それに呼応したのはぱちゅりーだ。
その声に励まされてか、れいむをはじめとする他のゆっくりたちも、互いに大丈夫大丈
夫と言い合って落ち着きを取り戻した。
「はいはい、ゆっくりしていってね!」
一人の青年がやってきた。
「「「ゆっくりしていってね!」」」
元気な返事に頷くと、青年は持っていた段ボール箱を置いた。
そして、それを開いて中にあったものを次々に取り出して並べる。
興味深そうにそれを眺めるゆっくりたち。
「さて、あと十日したら金バッヂ試験を受けてもらう」
青年が言うと、ゆっくりたちがざわめく。金バッヂこそ、飼いゆっくりという栄光の門
への鍵と皆教え込まれている。
必ずしも人間に飼われるには金バッヂである必要はない。割り切って銀を飼ったり、む
しろアホな方が可愛いと銅を飼う人間もいるからだ。
しかし、やはりより飼い主に見初められやすいのは金バッヂである。
このゆっくりたち、既におわかりかもしれぬが飼いゆっくりとして売り出すゆっくりを
育てる施設で産まれ育ったペットゆっくり候補たちであった。
既にここに来るまでに、数多くの姉妹や仲間が飼いゆっくり不適格と見做されて殺処分
されていた。
ゆっくり育成の手法についてはむろんこれが正解というものは無い。だが、このような
純粋に商売目的で大量のゆっくりを躾けるような施設では、失敗に対しては容赦なく死を
もって対処するようなところが少なくない。
結局、ゆっくりの性格を矯正するには恐怖がもっとも効率がよい、という結論を人間た
ちは導き出してしまっている。
この施設もその例からもれるものではなく。ゆっくりたちは、言葉遣いが悪い、排泄を
ちゃんとトイレでしない、口答えをした、などのゆっくりにとっては些細な、と言ってよ
い理由でともに育った仲間たちが散々にいたぶり殺されるのを見せ付けられていた。目を
そらせば不服従だといって叩かれた。
段ボール箱から取り出したものの中に、小さめのホワイトボードがあった。
青年はそれを壁にかけた。そこには縦線が同じぐらいの間隔を置いて十本書かれていた。
「この棒を、一日ごとに一本消していく。これが全部無くなれば、その次の日が金バッヂ
試験の日だ」
一般的なゆっくりは、三以上の数を認識できない。しかし、それなりに鍛えられたこの
ゆっくりたちならば、こうやって視覚的にわかりやすいようにすれば理解できる。
「ゆぅ、まだまだいっぱいだね」
「そうだね、ゆゆぅ、たくさんがたくさんだねー、わかるよー」
「ゆっくりできるね!」
「むきゅ、でもゆだんしちゃ駄目よ。すぐに金バッヂ試験の日が来るわよ」
弛緩するゆっくりたちに、ぱちゅりーが注意を促して引き締める。彼女は、このゆっく
りたちの中でも自然にリーダー格のようになっていた。大体一番最初に人間の出す課題な
どを理解し、わからぬものに教えたりしていたためである。
「むきゅ、おにいさん、それであと十日、どんなくんれんを受けるの?」
「あー、それは……」
「「「ゆゆゆ」」」
それが何より気になっていたのだろう。
青年が答えようとすると、ゆっくりたちは一斉にその口元を凝視した。
「基本、自由にしていいよ」
どのような地獄の訓練が……と思っていたゆっくりたちが拍子抜けするしかない台詞で
あった。
「むきゅ……じゆう、って……好きなことをしてもいいってこと?」
これまで、失敗すれば苦しんで死ぬようなゆん生を強制されそれを生き抜いてきたのだ。
さすがにそのようなことを言われてもにわかに信じられるものではない。
「ああ」
「ゆ! そ、そ、それじゃあ! ゆっくりしてもいいの!」
「ああ、そうしたければね」
「「「ゆわああああああ!」」」
「むきゅぅ……」
歓声が上がる中、ぱちゅりーは難しい顔をしている。
「ただし」
と、青年が言った時、ぱちゅりーはやっぱりという顔になった。いくらなんでも、無条
件でそのようなことが許されるわけがない。
「十日後の金バッヂ試験に落ちた子は、殺処分だ。永遠にゆっくりしてもらう」
永遠にゆっくりする、という言葉に反射的に強張ったものの、それだけが条件ならばそ
れほど悪いものとも思えなかった。
なにしろ今までが今までだけに、試験に落ちれば殺されるぐらいのことは無意識のうち
に覚悟していたところがある。
「条件はこれだけだよ。ごはんは、今までと同じものを好きなだけ上げるよ」
青年はそう言うと早速ゆっくりフードを持ってきてそれを皿にあけた。
「ゆわわわわ!」
「むーしゃむーしゃするよ!」
「ゆっくり! ゆっくり!」
「しあわせぇぇぇぇ!」
ゆっくりたちは腹が減っていたこともあり、皿に群がる。しかし、さすがにここまで来
た連中だけあって食べ方自体は丁寧で皿からこぼさないように注意している。
「それとこれ」
と、青年は大きな箱と小さな箱を取り出した。その二つは一本のコードで繋がっている。
壁に、薄型のモニターが張り付いている。青年は大きな箱から小さな箱へと繋がったコ
ードとは別のコードをたぐってその先端をモニターの裏側の辺りに差し込んだ。
「試験に備えて、こいつで復習するといい。ほら、ここのボタンを押すと……」
と、青年は小さな箱についた大きなボタンを押した。
「「「ゆゆっ! あれは!」」」
ボタンを押した直後にモニターに映じたものに、ゆっくりたちは一様に心当たりがある
ようであった。
それもそのはず、その映像はこれまで散々見せられた金バッヂを取得するための教育ビ
デオだった。
「ゆぅ……それをいちにちどのぐらい見ればいいんだぜ?」
一匹のまりさが、上目遣いで探るように青年を見ながら言った。
「好きにすればいいよ。さっき言ったように基本的に自由にしていい。これも、別に復習
しなくてもいいや、って思うなら見ないでもいいよ」
「ゆゆっ!」
思ってもいなかった言葉だったのだろう。まりさは驚いたようだ。
「ああ、それと自由って言っても、他の子に暴力を振るったりしたら駄目だよ。そういう
ことする子は、あのまりさみたいにぶるぶるの刑で死んでもらうからね」
その言葉に、ゆっくりたちは一匹残らず震え出した。
以前一匹のまりさがゆっくりできない境遇に耐えかねて青年を殺そうとした。
と、言っても、笑っちまうぐらい実力不足であり、すぐに押さえ込まれた。ころしてや
ると喚いていたまりさの殺意が本物であると思った青年は「ぶるぶるの刑」に処した。
これは、ゆっくりを固定した状態で、細い細い針を中枢餡を貫いて刺し、その針を小刻
みに振動させるというものだった。
傷自体は小さいために対象が中枢餡といってもそう簡単には死にはしない。しかし、中
枢餡に絶えず刺激を受け続けるのだから間断なく激痛に苛まれる。
針とそれを振動させる機械も固定してしまえばほったらかしておけばいいだけなので人
間さまの手間もかからぬというわけだ。
結局まりさは苦しんで苦しんで、殺してくれと懇願しても放置されて三日経ってようや
く死ぬことができた。
あくまで見せしめのためなのでその程度で済ませたが、虐待目的で行う場合は、一日ご
とにオレンジジュース等をぶっかけて治療してやって延々と地獄の責め苦を味あわせるこ
ともある。
「さて、それじゃ僕がこの部屋を出た瞬間から、さっき言ったように自由にしていいよ。
時々様子を見に来るけど、本当に十日後の試験まで勉強したくなかったらしなくてもいい
んだよ」
「「「ゆっくりりかいしたよ! ゆっくりするよ!」」」
「うんうん、それじゃあね」
青年が部屋から出て行った。
「ゆわぁぁぁぁぁい、ゆっくりするよぉぉぉぉぉ!」
「ゆっくり! ゆっくり!」
「ゆっくりしていってね!」
「むきゅぅ、でも十日後には試験よ、ちゃんと復習もしましょうね」
「ぱちゅりー、それは明日からにして、今日一日だけはゆっくりしようよ!」
「そうだよ!」
「むきゅぅぅぅ、そうねえ」
ゆっくりたちの中では危機感があるぱちゅりーとてゆっくりである。一日だけ完全な休
みをとるのもよいだろうと思った。
皆、思い思いにゆっくりし始めた。
「うん」
その様子は、設置されたカメラを通して別室のモニターに映し出され、それを先ほどの
青年が眺めている。
「まあ、今まで思う存分ゆっくりしたことないんだから、そう思うのも当然かな。問題は、
明日からどうなるか……あのよく出来たぱちゅりーと数匹、ってとこかな?」
ゆっくりが二十匹ほどいた。
「ゆぅ、れいむたち、これからどうなっちゃうのかな」
「だいじょうぶなんだぜ、まりさたち、かいゆっくりになるためのくんれんを受けてきた
のぜ、きっとこれからかいゆっくりとしてゆっくりできるんだぜ」
不安そうに言ったれいむに一匹のまりさが自信満々の表情で答える。
「むきゅ、そうよ、今までがんばってこれたんだから、大丈夫!」
それに呼応したのはぱちゅりーだ。
その声に励まされてか、れいむをはじめとする他のゆっくりたちも、互いに大丈夫大丈
夫と言い合って落ち着きを取り戻した。
「はいはい、ゆっくりしていってね!」
一人の青年がやってきた。
「「「ゆっくりしていってね!」」」
元気な返事に頷くと、青年は持っていた段ボール箱を置いた。
そして、それを開いて中にあったものを次々に取り出して並べる。
興味深そうにそれを眺めるゆっくりたち。
「さて、あと十日したら金バッヂ試験を受けてもらう」
青年が言うと、ゆっくりたちがざわめく。金バッヂこそ、飼いゆっくりという栄光の門
への鍵と皆教え込まれている。
必ずしも人間に飼われるには金バッヂである必要はない。割り切って銀を飼ったり、む
しろアホな方が可愛いと銅を飼う人間もいるからだ。
しかし、やはりより飼い主に見初められやすいのは金バッヂである。
このゆっくりたち、既におわかりかもしれぬが飼いゆっくりとして売り出すゆっくりを
育てる施設で産まれ育ったペットゆっくり候補たちであった。
既にここに来るまでに、数多くの姉妹や仲間が飼いゆっくり不適格と見做されて殺処分
されていた。
ゆっくり育成の手法についてはむろんこれが正解というものは無い。だが、このような
純粋に商売目的で大量のゆっくりを躾けるような施設では、失敗に対しては容赦なく死を
もって対処するようなところが少なくない。
結局、ゆっくりの性格を矯正するには恐怖がもっとも効率がよい、という結論を人間た
ちは導き出してしまっている。
この施設もその例からもれるものではなく。ゆっくりたちは、言葉遣いが悪い、排泄を
ちゃんとトイレでしない、口答えをした、などのゆっくりにとっては些細な、と言ってよ
い理由でともに育った仲間たちが散々にいたぶり殺されるのを見せ付けられていた。目を
そらせば不服従だといって叩かれた。
段ボール箱から取り出したものの中に、小さめのホワイトボードがあった。
青年はそれを壁にかけた。そこには縦線が同じぐらいの間隔を置いて十本書かれていた。
「この棒を、一日ごとに一本消していく。これが全部無くなれば、その次の日が金バッヂ
試験の日だ」
一般的なゆっくりは、三以上の数を認識できない。しかし、それなりに鍛えられたこの
ゆっくりたちならば、こうやって視覚的にわかりやすいようにすれば理解できる。
「ゆぅ、まだまだいっぱいだね」
「そうだね、ゆゆぅ、たくさんがたくさんだねー、わかるよー」
「ゆっくりできるね!」
「むきゅ、でもゆだんしちゃ駄目よ。すぐに金バッヂ試験の日が来るわよ」
弛緩するゆっくりたちに、ぱちゅりーが注意を促して引き締める。彼女は、このゆっく
りたちの中でも自然にリーダー格のようになっていた。大体一番最初に人間の出す課題な
どを理解し、わからぬものに教えたりしていたためである。
「むきゅ、おにいさん、それであと十日、どんなくんれんを受けるの?」
「あー、それは……」
「「「ゆゆゆ」」」
それが何より気になっていたのだろう。
青年が答えようとすると、ゆっくりたちは一斉にその口元を凝視した。
「基本、自由にしていいよ」
どのような地獄の訓練が……と思っていたゆっくりたちが拍子抜けするしかない台詞で
あった。
「むきゅ……じゆう、って……好きなことをしてもいいってこと?」
これまで、失敗すれば苦しんで死ぬようなゆん生を強制されそれを生き抜いてきたのだ。
さすがにそのようなことを言われてもにわかに信じられるものではない。
「ああ」
「ゆ! そ、そ、それじゃあ! ゆっくりしてもいいの!」
「ああ、そうしたければね」
「「「ゆわああああああ!」」」
「むきゅぅ……」
歓声が上がる中、ぱちゅりーは難しい顔をしている。
「ただし」
と、青年が言った時、ぱちゅりーはやっぱりという顔になった。いくらなんでも、無条
件でそのようなことが許されるわけがない。
「十日後の金バッヂ試験に落ちた子は、殺処分だ。永遠にゆっくりしてもらう」
永遠にゆっくりする、という言葉に反射的に強張ったものの、それだけが条件ならばそ
れほど悪いものとも思えなかった。
なにしろ今までが今までだけに、試験に落ちれば殺されるぐらいのことは無意識のうち
に覚悟していたところがある。
「条件はこれだけだよ。ごはんは、今までと同じものを好きなだけ上げるよ」
青年はそう言うと早速ゆっくりフードを持ってきてそれを皿にあけた。
「ゆわわわわ!」
「むーしゃむーしゃするよ!」
「ゆっくり! ゆっくり!」
「しあわせぇぇぇぇ!」
ゆっくりたちは腹が減っていたこともあり、皿に群がる。しかし、さすがにここまで来
た連中だけあって食べ方自体は丁寧で皿からこぼさないように注意している。
「それとこれ」
と、青年は大きな箱と小さな箱を取り出した。その二つは一本のコードで繋がっている。
壁に、薄型のモニターが張り付いている。青年は大きな箱から小さな箱へと繋がったコ
ードとは別のコードをたぐってその先端をモニターの裏側の辺りに差し込んだ。
「試験に備えて、こいつで復習するといい。ほら、ここのボタンを押すと……」
と、青年は小さな箱についた大きなボタンを押した。
「「「ゆゆっ! あれは!」」」
ボタンを押した直後にモニターに映じたものに、ゆっくりたちは一様に心当たりがある
ようであった。
それもそのはず、その映像はこれまで散々見せられた金バッヂを取得するための教育ビ
デオだった。
「ゆぅ……それをいちにちどのぐらい見ればいいんだぜ?」
一匹のまりさが、上目遣いで探るように青年を見ながら言った。
「好きにすればいいよ。さっき言ったように基本的に自由にしていい。これも、別に復習
しなくてもいいや、って思うなら見ないでもいいよ」
「ゆゆっ!」
思ってもいなかった言葉だったのだろう。まりさは驚いたようだ。
「ああ、それと自由って言っても、他の子に暴力を振るったりしたら駄目だよ。そういう
ことする子は、あのまりさみたいにぶるぶるの刑で死んでもらうからね」
その言葉に、ゆっくりたちは一匹残らず震え出した。
以前一匹のまりさがゆっくりできない境遇に耐えかねて青年を殺そうとした。
と、言っても、笑っちまうぐらい実力不足であり、すぐに押さえ込まれた。ころしてや
ると喚いていたまりさの殺意が本物であると思った青年は「ぶるぶるの刑」に処した。
これは、ゆっくりを固定した状態で、細い細い針を中枢餡を貫いて刺し、その針を小刻
みに振動させるというものだった。
傷自体は小さいために対象が中枢餡といってもそう簡単には死にはしない。しかし、中
枢餡に絶えず刺激を受け続けるのだから間断なく激痛に苛まれる。
針とそれを振動させる機械も固定してしまえばほったらかしておけばいいだけなので人
間さまの手間もかからぬというわけだ。
結局まりさは苦しんで苦しんで、殺してくれと懇願しても放置されて三日経ってようや
く死ぬことができた。
あくまで見せしめのためなのでその程度で済ませたが、虐待目的で行う場合は、一日ご
とにオレンジジュース等をぶっかけて治療してやって延々と地獄の責め苦を味あわせるこ
ともある。
「さて、それじゃ僕がこの部屋を出た瞬間から、さっき言ったように自由にしていいよ。
時々様子を見に来るけど、本当に十日後の試験まで勉強したくなかったらしなくてもいい
んだよ」
「「「ゆっくりりかいしたよ! ゆっくりするよ!」」」
「うんうん、それじゃあね」
青年が部屋から出て行った。
「ゆわぁぁぁぁぁい、ゆっくりするよぉぉぉぉぉ!」
「ゆっくり! ゆっくり!」
「ゆっくりしていってね!」
「むきゅぅ、でも十日後には試験よ、ちゃんと復習もしましょうね」
「ぱちゅりー、それは明日からにして、今日一日だけはゆっくりしようよ!」
「そうだよ!」
「むきゅぅぅぅ、そうねえ」
ゆっくりたちの中では危機感があるぱちゅりーとてゆっくりである。一日だけ完全な休
みをとるのもよいだろうと思った。
皆、思い思いにゆっくりし始めた。
「うん」
その様子は、設置されたカメラを通して別室のモニターに映し出され、それを先ほどの
青年が眺めている。
「まあ、今まで思う存分ゆっくりしたことないんだから、そう思うのも当然かな。問題は、
明日からどうなるか……あのよく出来たぱちゅりーと数匹、ってとこかな?」
翌日、青年がモニターを見ながら呟いた独り言の通りになった。
「むきゅ! それじゃ今日からゆっくりするだけじゃなくて復習もしましょう!」
「ゆん!」
「ゆっくりしてるだけじゃ試験に落ちちゃうからねー、わかるよー」
「頑張ろうね!」
今日からは勉強も頑張ろうと呼びかけるぱちゅりーに十匹ほどのゆっくりが同調した。
「ゆぅ……れいむはもう一日だけゆっくりするよ」
「まりさも……そうしようかな。まだ時間はたくさんたくさんあるし」
「もう一日だけゆっくりしても大丈夫だよ」
残りの二十匹ほどは、昨日味わったゆっくりを今少し楽しみたいという欲求が勝ったよ
うであった。
それもそのはずで、むしろぱちゅりーとそれに同調したものたちがゆっくりとしては相
当に自制心が強い方なのだ。
「むきゅぅ、でも、そうやってずるずると勉強しなくなったら、試験の日までにせっかく
覚えたことを忘れてしまうわ」
ぱちゅりーはもっともなことを言うのだが、それを認めつつも、だってまだたくさん時
間はあると言ってやはり二十匹ほどのゆっくりたちは勉強を拒んだ。
「むきゅぅ……」
「やあやあ、おはようさん。ごはんの補充と様子見に来たよ」
そこへ、はかったように青年が現れた。
「ゆゆゆ! ごはん!」
「ゆっくりごはんをちょうだいね!」
「ゆはっ、はらぺこなのぜー」
「ほいほい」
青年は手際よく大皿にゆっくりフードを盛っていく。
「ところで、僕が入ってきた時、なんか話してたみたいだけど、何を話していたのかな?」
「むきゅ」
ぱちゅりーは、先ほどあったことを青年に言った。
今まで、青年はきちんと言うことを聞くものへは優しかったが、その逆のものへはぶる
ぶるの刑を筆頭に恐ろしい罰を執行していた。
その教育に厳しい青年ならば、きっと勉強をしないものたちを嗜めてくれるものと思っ
ていた。
「ああ、それは昨日言ったように自由にすればいいよ」
しかし、青年は意外にも勉強をしないものを庇った。
いや、正確には別にどちらかに組したわけではない。ただ単純に、昨日散々言って聞か
せたことをもう一度言っただけだ。
ここで、ぱちゅりーはようやく青年の言っていたことを理解した。というか、青年が言
っていたことが本当にそのまんまの意味であることを理解した。
「そうだよ! じゆうだよ! れいむたちじゆうなんだよ!」
「ゆっ! それじゃまりさのすきにするのぜ!」
「勉強はまた明日からにするよー、わかってねー」
力を得たゆっくりたちは、ここぞとばかりに言った。ぱちゅりーも、もうそれへあれこ
れと言おうとはしなかった。
「ぱちゅりー、今日はまりさたちだけで勉強するんだぜ」
「そうだねー、きっとみんなも明日から勉強するよー」
「むきゅ、そうね」
思い思いにゆっくりする二十匹ほどから離れて、ぱちゅりーたちは壁のモニターの映像
を見て復習を始めた。
「むきゅ」
ぱちゅりーの顔に影がさした。
賢いぱちゅりーは気付いているのだ。一度ゆっくりに浸りきりゆっくりしようと決めた
ものたちが容易に勉強というゆっくりできない行為に戻れないであろうことを。
「むきゅ! それじゃ今日からゆっくりするだけじゃなくて復習もしましょう!」
「ゆん!」
「ゆっくりしてるだけじゃ試験に落ちちゃうからねー、わかるよー」
「頑張ろうね!」
今日からは勉強も頑張ろうと呼びかけるぱちゅりーに十匹ほどのゆっくりが同調した。
「ゆぅ……れいむはもう一日だけゆっくりするよ」
「まりさも……そうしようかな。まだ時間はたくさんたくさんあるし」
「もう一日だけゆっくりしても大丈夫だよ」
残りの二十匹ほどは、昨日味わったゆっくりを今少し楽しみたいという欲求が勝ったよ
うであった。
それもそのはずで、むしろぱちゅりーとそれに同調したものたちがゆっくりとしては相
当に自制心が強い方なのだ。
「むきゅぅ、でも、そうやってずるずると勉強しなくなったら、試験の日までにせっかく
覚えたことを忘れてしまうわ」
ぱちゅりーはもっともなことを言うのだが、それを認めつつも、だってまだたくさん時
間はあると言ってやはり二十匹ほどのゆっくりたちは勉強を拒んだ。
「むきゅぅ……」
「やあやあ、おはようさん。ごはんの補充と様子見に来たよ」
そこへ、はかったように青年が現れた。
「ゆゆゆ! ごはん!」
「ゆっくりごはんをちょうだいね!」
「ゆはっ、はらぺこなのぜー」
「ほいほい」
青年は手際よく大皿にゆっくりフードを盛っていく。
「ところで、僕が入ってきた時、なんか話してたみたいだけど、何を話していたのかな?」
「むきゅ」
ぱちゅりーは、先ほどあったことを青年に言った。
今まで、青年はきちんと言うことを聞くものへは優しかったが、その逆のものへはぶる
ぶるの刑を筆頭に恐ろしい罰を執行していた。
その教育に厳しい青年ならば、きっと勉強をしないものたちを嗜めてくれるものと思っ
ていた。
「ああ、それは昨日言ったように自由にすればいいよ」
しかし、青年は意外にも勉強をしないものを庇った。
いや、正確には別にどちらかに組したわけではない。ただ単純に、昨日散々言って聞か
せたことをもう一度言っただけだ。
ここで、ぱちゅりーはようやく青年の言っていたことを理解した。というか、青年が言
っていたことが本当にそのまんまの意味であることを理解した。
「そうだよ! じゆうだよ! れいむたちじゆうなんだよ!」
「ゆっ! それじゃまりさのすきにするのぜ!」
「勉強はまた明日からにするよー、わかってねー」
力を得たゆっくりたちは、ここぞとばかりに言った。ぱちゅりーも、もうそれへあれこ
れと言おうとはしなかった。
「ぱちゅりー、今日はまりさたちだけで勉強するんだぜ」
「そうだねー、きっとみんなも明日から勉強するよー」
「むきゅ、そうね」
思い思いにゆっくりする二十匹ほどから離れて、ぱちゅりーたちは壁のモニターの映像
を見て復習を始めた。
「むきゅ」
ぱちゅりーの顔に影がさした。
賢いぱちゅりーは気付いているのだ。一度ゆっくりに浸りきりゆっくりしようと決めた
ものたちが容易に勉強というゆっくりできない行為に戻れないであろうことを。
「ゆわああああ、かわいいよー、まりさたちのおちびちゃん、まるでつばさのないえんじ
ぇるっ、だよっ!」
翌朝、ボンクラ饅頭が何か喚いていた。
「ゆふふふ、ゆっくりしたおちびちゃん、ゆっくりうまれてね」
そのまりさの前には、頭から茎を生やしたれいむがいる。実っているのは子れいむ一匹、
子まりさ二匹であった。
「ゆわあああ、かわいいぃぃぃぃぃ!」
「おちびちゃんはゆっくりできるよ!」
「ゆはぁぁぁ、癒されるのぜー」
他のものたちは、ゆぅゆぅと誕生を待つおちびちゃんたちの眩いばかりの可愛さにめろ
めろになっている。
「むきゅぅ」
「ゆぅ、ぱちゅりー、あれって……」
昨日からぱちゅりーと勉強をはじめていたものたちは、複雑な表情である。
「おちびちゃんなんか作って、いいのかな」
「わ、わからないよー、いいって言うまでおちびちゃんを作ったらいけない、ってお兄さ
ん言ってたよね」
「むきゅ……いいはずよ」
「ゆゆ?」
「他の子に暴力を振るわなければ、あとは自由にしていいのだから……あれも、大丈夫な
はず」
「ゆ、そ、そうなの!?」
「そ、そうなのかぜ?」
と、言われても相当きつく叩き込まれているので簡単には理解できない。なにしろ言い
つけを破って子供を作ったものたちが、子供ももろともに家族ごとミキサーにかけられた
のを見ているのだ。
「ういー、おはよー」
青年がやってきた。
「ん?」
ゆっくりフードを皿に盛ると、それに気付いた。
「おー、子供作ったの?」
「ゆん、かわいいでしょ、れいむとまりさのあいのけっしょうだよ!」
「ゆっくりできるよ」
「条件は理解してるよね? 十日……てもう今からだと八日後か……試験を受けてそれに
落ちたら永遠にゆっくりさせる、っていうの」
「「ゆっくりりかいしてるよ!」」
「うん、理解してるならいいや。そいじゃ」
青年は特に何もせずに部屋から出て行った。
「ゆゆゆゆ!?」
「ゆぅ……お兄さん、ぜんぜん怒ってなかった、ね?」
「お、おちびちゃん作ってもいいってこと?」
「そ、そうだよ! だって暴力をしなければ、あとはじゆうにしていいって言われたんだ
もん! おちびちゃんを作るのだってじゆうなんだよ!」
一斉に色めき立つゆっくりたち。
ここは、天国だった。
好きなだけゆっくりすることができる。
狩りをしなくてもごはんが手に入り、捕食種などの脅威が無い点で野生や野良を遥かに
上回る境遇なのはもちろん、まったくの放任のため下手な飼いゆっくりなどよりもよほど
ゆっくりできる。
それでも、やはりこれまでの徹底的な教育により、ごくごく自然におちびちゃんだけは
駄目なのだろうと思い込んでいた。
しかし、それまでもが自由だというのだから食料に不自由せず、外敵に脅かされぬゆっ
くりたちがそれへ走るのは当たり前のことであった。
ぇるっ、だよっ!」
翌朝、ボンクラ饅頭が何か喚いていた。
「ゆふふふ、ゆっくりしたおちびちゃん、ゆっくりうまれてね」
そのまりさの前には、頭から茎を生やしたれいむがいる。実っているのは子れいむ一匹、
子まりさ二匹であった。
「ゆわあああ、かわいいぃぃぃぃぃ!」
「おちびちゃんはゆっくりできるよ!」
「ゆはぁぁぁ、癒されるのぜー」
他のものたちは、ゆぅゆぅと誕生を待つおちびちゃんたちの眩いばかりの可愛さにめろ
めろになっている。
「むきゅぅ」
「ゆぅ、ぱちゅりー、あれって……」
昨日からぱちゅりーと勉強をはじめていたものたちは、複雑な表情である。
「おちびちゃんなんか作って、いいのかな」
「わ、わからないよー、いいって言うまでおちびちゃんを作ったらいけない、ってお兄さ
ん言ってたよね」
「むきゅ……いいはずよ」
「ゆゆ?」
「他の子に暴力を振るわなければ、あとは自由にしていいのだから……あれも、大丈夫な
はず」
「ゆ、そ、そうなの!?」
「そ、そうなのかぜ?」
と、言われても相当きつく叩き込まれているので簡単には理解できない。なにしろ言い
つけを破って子供を作ったものたちが、子供ももろともに家族ごとミキサーにかけられた
のを見ているのだ。
「ういー、おはよー」
青年がやってきた。
「ん?」
ゆっくりフードを皿に盛ると、それに気付いた。
「おー、子供作ったの?」
「ゆん、かわいいでしょ、れいむとまりさのあいのけっしょうだよ!」
「ゆっくりできるよ」
「条件は理解してるよね? 十日……てもう今からだと八日後か……試験を受けてそれに
落ちたら永遠にゆっくりさせる、っていうの」
「「ゆっくりりかいしてるよ!」」
「うん、理解してるならいいや。そいじゃ」
青年は特に何もせずに部屋から出て行った。
「ゆゆゆゆ!?」
「ゆぅ……お兄さん、ぜんぜん怒ってなかった、ね?」
「お、おちびちゃん作ってもいいってこと?」
「そ、そうだよ! だって暴力をしなければ、あとはじゆうにしていいって言われたんだ
もん! おちびちゃんを作るのだってじゆうなんだよ!」
一斉に色めき立つゆっくりたち。
ここは、天国だった。
好きなだけゆっくりすることができる。
狩りをしなくてもごはんが手に入り、捕食種などの脅威が無い点で野生や野良を遥かに
上回る境遇なのはもちろん、まったくの放任のため下手な飼いゆっくりなどよりもよほど
ゆっくりできる。
それでも、やはりこれまでの徹底的な教育により、ごくごく自然におちびちゃんだけは
駄目なのだろうと思い込んでいた。
しかし、それまでもが自由だというのだから食料に不自由せず、外敵に脅かされぬゆっ
くりたちがそれへ走るのは当たり前のことであった。
「「「ゆゆぅ~ん、かわいいよおちびちゃん!」」」
で、翌日には先のまりされいむに加えて新たに九つのカップルが誕生していた。要する
に勉強をしていない連中はこれで全て番になって子を作ったということだ。
で、もうそうなると舞い上がってしまって、勉強などしようという気もふっ飛んだらし
い。
「ゆ? ぱちゅりーたちはおちびちゃん作らないの?」
我が子の誕生をひとしきり喜んだ後、不思議そうに尋ねた。ぱちゅりーをはじめとする
十匹は全く子作りをしていないのだ。
「むきゅ、ぱちゅたちは勉強に集中したいからおちびちゃんは試験の後にするわ」
「ゆゆ、おちびちゃんゆっくりできるよ!」
「そうだよ。おちびちゃんがいても勉強はできるよ」
一応善意で子作りをすすめてくるものたちに、ぱちゅりーはあれこれと言って受け流し
た。
実は昨晩、ぱちゅりーグループというべきものたちの中にも、おちびちゃんを作ろうか
というものはいたのである。
だが、ぱちゅりーが、
「むきゅ、ぱちゅはやらないわ。今のところそういう相手がいないっていうのもあるけど
……産まれたばかりのおちびちゃんの世話をしながら勉強なんてできないもの」
と言うと、かなり未練ありげなものもいたが、皆子作りをしないことに決めた。
おちびちゃんの世話がいかに大変かは、飼い主さんの許しなくおちびちゃんを産んでは
いけないという躾の理由の一つとして叩き込まれている。
躾のために少々誇張しているところはあったが、おちびちゃんの世話が大変なのは事実
である。とは言っても、ここでは食料は与えられ、天敵や自然の驚異も無いのだから子育
てにかかる手間というのは相当軽減されてはいるが。
「おーおーおーおー、これまた」
青年がやってきて、たわわに実ったクソ饅頭もといつばさのないえんじぇるたちに声を
上げる。
「お兄さん見て見て、れいむたちもおちびちゃんを作ったよ!」
「おちびちゃんにもえいよーがいるからちょっとごはんを増やしてほしいよ!」
「ゆっくりごはんをふやしてね!」
「ほいほい、ごはんは好きなだけ上げるっていう約束だからな、ちょっと待ってろ」
青年は一度部屋から出ると、これまでゆっくりフードを乗せていた大皿と同じ大きさの
ものを持ってきた。
「今までの二倍やるよ。それなら足りるだろ」
「ゆゆん、それだけあれば大丈夫だよ!」
「ゆっくりありがとう! おにいさん!」
「ゆふふ、それじゃあたーくさんむーしゃむーしゃしようね! おちびちゃんにえいよー
をあげないとね!」
「むーしゃむーしゃするよ!」
しあわせぇぇぇぇぇ、の大合唱を聞きつつ、青年はぱちゅりーグループに目をやった。
「「ゆぅ……」」
中に、ちらちらと子作りをした連中を見ているまりさとれいむがいた。
「……」
青年はすぐに出て行ったが、最後まで視線はそのまりさとれいむに注がれていた。
で、翌日には先のまりされいむに加えて新たに九つのカップルが誕生していた。要する
に勉強をしていない連中はこれで全て番になって子を作ったということだ。
で、もうそうなると舞い上がってしまって、勉強などしようという気もふっ飛んだらし
い。
「ゆ? ぱちゅりーたちはおちびちゃん作らないの?」
我が子の誕生をひとしきり喜んだ後、不思議そうに尋ねた。ぱちゅりーをはじめとする
十匹は全く子作りをしていないのだ。
「むきゅ、ぱちゅたちは勉強に集中したいからおちびちゃんは試験の後にするわ」
「ゆゆ、おちびちゃんゆっくりできるよ!」
「そうだよ。おちびちゃんがいても勉強はできるよ」
一応善意で子作りをすすめてくるものたちに、ぱちゅりーはあれこれと言って受け流し
た。
実は昨晩、ぱちゅりーグループというべきものたちの中にも、おちびちゃんを作ろうか
というものはいたのである。
だが、ぱちゅりーが、
「むきゅ、ぱちゅはやらないわ。今のところそういう相手がいないっていうのもあるけど
……産まれたばかりのおちびちゃんの世話をしながら勉強なんてできないもの」
と言うと、かなり未練ありげなものもいたが、皆子作りをしないことに決めた。
おちびちゃんの世話がいかに大変かは、飼い主さんの許しなくおちびちゃんを産んでは
いけないという躾の理由の一つとして叩き込まれている。
躾のために少々誇張しているところはあったが、おちびちゃんの世話が大変なのは事実
である。とは言っても、ここでは食料は与えられ、天敵や自然の驚異も無いのだから子育
てにかかる手間というのは相当軽減されてはいるが。
「おーおーおーおー、これまた」
青年がやってきて、たわわに実ったクソ饅頭もといつばさのないえんじぇるたちに声を
上げる。
「お兄さん見て見て、れいむたちもおちびちゃんを作ったよ!」
「おちびちゃんにもえいよーがいるからちょっとごはんを増やしてほしいよ!」
「ゆっくりごはんをふやしてね!」
「ほいほい、ごはんは好きなだけ上げるっていう約束だからな、ちょっと待ってろ」
青年は一度部屋から出ると、これまでゆっくりフードを乗せていた大皿と同じ大きさの
ものを持ってきた。
「今までの二倍やるよ。それなら足りるだろ」
「ゆゆん、それだけあれば大丈夫だよ!」
「ゆっくりありがとう! おにいさん!」
「ゆふふ、それじゃあたーくさんむーしゃむーしゃしようね! おちびちゃんにえいよー
をあげないとね!」
「むーしゃむーしゃするよ!」
しあわせぇぇぇぇぇ、の大合唱を聞きつつ、青年はぱちゅりーグループに目をやった。
「「ゆぅ……」」
中に、ちらちらと子作りをした連中を見ているまりさとれいむがいた。
「……」
青年はすぐに出て行ったが、最後まで視線はそのまりさとれいむに注がれていた。
ホワイトボードの縦線が六本になった。
まだまだゆっくりにとってそれは「たくさん」にしか見えない。厳しい教育を受けたも
のたちなので、さすがに最初に比べたらだいぶ減っているということは理解できるが、下
手に理解できるせいで「まだまだ半分もいってないよ!」という感じに思って勉強しない
でゆっくりする理由にしてしまっていた。
「……ふむ」
別室で雑務をこなしつつモニターで部屋の様子をうかがっていた青年が言った。
勉強しているぱちゅりーグループの中の、例のまりさとれいむが明らかに勉強に身が入
らないといった感じで、我が子が生まれ落ちる瞬間を心待ちにしている幸せいっぱいのゆ
っくりたちをちら見しているのだ。
ぱちゅりーたちは、それを時々注意するのだが、注意された時こそ気を取り直すものの、
やがてまた視線は教育ビデオから逸れてしまう。
「こいつらは……危ないな。せっかくここまでよくやってたのに」
青年は呟いたが、その危惧は早速その晩に現実のものとなった。
「さてと……」
青年は仕事を片付けて、最後にモニターを見て皆寝静まっていると見るや帰ろうとした。
「ゆゆっ! ゆゆっ!」
「れ、れいむぅぅぅぅ」
「ま、まりさ、いいよ、きぼぢいいぃぃぃぃ」
「れ、れいむのまむまむぎちぎちだよぉぉぉぉ!」
「ああ?」
思わず血管浮き立たせるような不快な声が聞こえてきた。
「まただれかすっきりしてんのか……あ」
青年は帰ろうとして立ち上がり、何かに気付いてモニターに再び目を向けた。
カメラを遠隔操作する装置をいじると、部屋の全景を映していたモニターの風景が変わ
る。
あのぱちゅりーグループのもの以外は既に子作りをしている。まさかまだ子供が実って
いる状態ですっきりはしないだろう。
父親役同士が不倫をしている、というおぞましい可能性も無いでは無いが、さすがにそ
れは考えにくい。
そうなると……この声は……
どんなに隠れようとも、監視カメラの前に死角は無い。部屋の隅で盛っているまりさと
れいむを、カメラは発見した。
「やっぱり」
そして、それは青年が思っていた通り、ちらちらと子作りしたものたちを見ていたぱち
ゅりーグループのまりさとれいむであった。
このところ、子作りした連中はしきりにぱちゅりーグループに可愛いおちびちゃんを自
慢した後、ぱちゅりーたちもおちびちゃん作ればいいのに、と言っていた。
それが重なり、元々子作りに強い誘惑を感じていたあの二匹が陥落したのだろう。
「……まあ、自由だ」
まだまだゆっくりにとってそれは「たくさん」にしか見えない。厳しい教育を受けたも
のたちなので、さすがに最初に比べたらだいぶ減っているということは理解できるが、下
手に理解できるせいで「まだまだ半分もいってないよ!」という感じに思って勉強しない
でゆっくりする理由にしてしまっていた。
「……ふむ」
別室で雑務をこなしつつモニターで部屋の様子をうかがっていた青年が言った。
勉強しているぱちゅりーグループの中の、例のまりさとれいむが明らかに勉強に身が入
らないといった感じで、我が子が生まれ落ちる瞬間を心待ちにしている幸せいっぱいのゆ
っくりたちをちら見しているのだ。
ぱちゅりーたちは、それを時々注意するのだが、注意された時こそ気を取り直すものの、
やがてまた視線は教育ビデオから逸れてしまう。
「こいつらは……危ないな。せっかくここまでよくやってたのに」
青年は呟いたが、その危惧は早速その晩に現実のものとなった。
「さてと……」
青年は仕事を片付けて、最後にモニターを見て皆寝静まっていると見るや帰ろうとした。
「ゆゆっ! ゆゆっ!」
「れ、れいむぅぅぅぅ」
「ま、まりさ、いいよ、きぼぢいいぃぃぃぃ」
「れ、れいむのまむまむぎちぎちだよぉぉぉぉ!」
「ああ?」
思わず血管浮き立たせるような不快な声が聞こえてきた。
「まただれかすっきりしてんのか……あ」
青年は帰ろうとして立ち上がり、何かに気付いてモニターに再び目を向けた。
カメラを遠隔操作する装置をいじると、部屋の全景を映していたモニターの風景が変わ
る。
あのぱちゅりーグループのもの以外は既に子作りをしている。まさかまだ子供が実って
いる状態ですっきりはしないだろう。
父親役同士が不倫をしている、というおぞましい可能性も無いでは無いが、さすがにそ
れは考えにくい。
そうなると……この声は……
どんなに隠れようとも、監視カメラの前に死角は無い。部屋の隅で盛っているまりさと
れいむを、カメラは発見した。
「やっぱり」
そして、それは青年が思っていた通り、ちらちらと子作りしたものたちを見ていたぱち
ゅりーグループのまりさとれいむであった。
このところ、子作りした連中はしきりにぱちゅりーグループに可愛いおちびちゃんを自
慢した後、ぱちゅりーたちもおちびちゃん作ればいいのに、と言っていた。
それが重なり、元々子作りに強い誘惑を感じていたあの二匹が陥落したのだろう。
「……まあ、自由だ」
「むきゅぅ」
「ゆぅぅぅ、れいむ、まりさぁ」
「わからないよー、わからないよー」
「「ゆゆぅ……」
翌日、れいむ種とまりさ種をそれぞれ二匹、計四匹の子供を実らせたれいむと、まりさ
を前にぱちゅりーたちは、あるものは残念そうな顔で唸り、あるものはなじるように名前
を呼び、わからないと連呼していた。
まりさとれいむも、ぱちゅりーの言っていたことを理解していなかったわけではない。
自制心を上回る誘惑に耐え切れなかっただけである。
それなので、大きな喜びの中に、一抹の不安も覚えていて、それが冴えぬ表情に現われ
ていた。
「ゆゆっ、まりさとれいむ、おちびちゃん作ったんだね!」
「ゆわーい、おちびちゃんかわいいねえええええ!」
「こっちに来ていっしょにおうたをうたおうよ!」
「ゆん、たいっきょうは大切なのぜ、今からゆっくりできるおうたを聴かせればゆっくり
したおちびちゃんになるのぜ」
子作りをしていたゆっくりたちは、それを見つけると大喜びで近づいてきた。
「ゆぅ、それじゃぱちゅりー、れいむたちは……」
「ゆん……」
二匹は、そう言ってぱちゅりーたちから離れていった。
別に子供を作ったからといって一緒に勉強してはいけないということもないはずだが、
そこは子作りをしないで勉強を頑張ろう、と団結しているぱちゅりーたちの中にいること
への居心地の悪さもあった。
同じく子供を宿したものたちと、おちびちゃんゆっくりうまれてね、と言っている方が
居心地は遥かにいいだろう。
「ゆぅぅぅ、れいむ、まりさぁ」
「わからないよー、わからないよー」
「「ゆゆぅ……」
翌日、れいむ種とまりさ種をそれぞれ二匹、計四匹の子供を実らせたれいむと、まりさ
を前にぱちゅりーたちは、あるものは残念そうな顔で唸り、あるものはなじるように名前
を呼び、わからないと連呼していた。
まりさとれいむも、ぱちゅりーの言っていたことを理解していなかったわけではない。
自制心を上回る誘惑に耐え切れなかっただけである。
それなので、大きな喜びの中に、一抹の不安も覚えていて、それが冴えぬ表情に現われ
ていた。
「ゆゆっ、まりさとれいむ、おちびちゃん作ったんだね!」
「ゆわーい、おちびちゃんかわいいねえええええ!」
「こっちに来ていっしょにおうたをうたおうよ!」
「ゆん、たいっきょうは大切なのぜ、今からゆっくりできるおうたを聴かせればゆっくり
したおちびちゃんになるのぜ」
子作りをしていたゆっくりたちは、それを見つけると大喜びで近づいてきた。
「ゆぅ、それじゃぱちゅりー、れいむたちは……」
「ゆん……」
二匹は、そう言ってぱちゅりーたちから離れていった。
別に子供を作ったからといって一緒に勉強してはいけないということもないはずだが、
そこは子作りをしないで勉強を頑張ろう、と団結しているぱちゅりーたちの中にいること
への居心地の悪さもあった。
同じく子供を宿したものたちと、おちびちゃんゆっくりうまれてね、と言っている方が
居心地は遥かにいいだろう。
ホワイトボードの縦線が五本になったその日、最初に子作りをした二匹の子供が産まれ
た。
「「「ゆっきゅちちていっちぇね!」」」
「ゆわわわわ!」
「かわいいよぉぉぉぉぉぉぉ!」
「えんじぇるっ! えんじぇるだよぉぉぉぉ!」
「おかあしゃん、すーりすーりしてにぇ」
「まりしゃもまりしゃも!」
「おとうしゃん、だーいちゅき!」
「「ゆゆぅぅぅん、おちびちゃんはゆっくりできるよぉぉぉ!」」
早速ゆっくりぶりを披露する一家に、他のものたちも色めき立った。
「ゆゆゆゆ! れいむのおちびちゃんもはやくうまれてね! いっしょにゆっくりしよう
ね!」
「ゆふふふ、ありすもおちびちゃんとすーりすーりするのたのしみだわぁ」
「ゆっくり! ゆっくり! ゆっくりうまれてね~♪」
そして、縦線が四本になった日、遅れて子作りした九組の子供たちも産まれ、部屋は一
気に賑やかになった。
「うお! 第二陣も産まれたか」
部屋に来た青年が、うぞうぞと蠢くクソえんじぇるどもに驚いて声を上げた程である。
「お兄さん」
「ん? どした?」
青年が部屋を出ようとすると、ぱちゅりーが声をかけてきた。
「あれだけおちびちゃんがいると、ちょっとうるさいのよ。といっても、おちびちゃんが
少し騒がしいのは当然だし、それにそれも自由だし」
「ん、そうだな」
「でも、さすがにちょっと勉強の邪魔なのよ。なんとかならないかしら?」
「んー……おお、ちょっと待ってろ」
青年は何か思い当たったのか、一度部屋から出て行った。
ぱちゅりーたちは青年が置いて行ったごはんを食べて待つことにした。
「ゆゆ……」
「ぱ、ぱちゅりー……」
「なんだか、みんなの目が……」
「むきゅぅ……」
ぱちゅりーグループのものたちがなんとなく気分がよくないといった感じで言った。
それというのも、子作りをしたものたちが自分たちを見る目がなんだかゆっくりできな
いのだ。
何か言ってくるわけではないし、こちらと目が合えば慌てて逸らすのだが、見下ろして
いるようにしか見えなかった。
これはゆっくりしているものが偉い、というゆっくりの性質上仕方がないことと言えた。
別に禁じられているわけでもないおちびちゃんを作るという、とてもゆっくりできる行
為を頑なに拒むぱちゅりーたちは、凄く愚かな連中だと思われているのだ。
「ごはんを好きなだけむーしゃむーしゃして、おちびちゃんとゆっくりして……これがほ
んっとうのゆっくりなんだね!」
一匹のれいむが感極まったように叫んだ。
それに同意する声がそこかしこから上がる。
この素晴らしい時に比べれば、自分たちが産まれてからの一時期はまったくゆっくりで
きない時間だった。あんなものはゆん生とは言えない。
これこそが、これこそがほんとうのゆっくりなのだ! とおちびちゃんに囲まれたゆっ
くりたちは歓喜の声を上げた。
別にぱちゅりーたちに聞かせているわけではないのだが、なんでこのほんとうのゆっく
りを拒むのか、と皮肉を言われているようにも見える。
「うーし、おまたせー」
青年が台車を押してやってきた。
「もうちょい待てな」
青年は台車に乗った箱を開き、透明の板のようなものを取り出した。
それを組み立てると、大きな透明の箱が出来上がった。
「ほら、ここが入り口。鍵はここをこうやって閉める」
「むきゅ、わかったわ」
ぱちゅりーが中に入って扉を閉める。
何か口をパクパクさせてから出てきた。
「なに言ってたか聞こえた?」
「ゆ? ぱちゅりー、何か言ってたの?」
「ぜんぜん聞こえなかったよー」
「むきゅ、これなら大丈夫ね! お兄さんありがとう!」
「おう、どういたしまして」
他のゆっくりたちも興味深そうに見ていたが、中で勉強するためのものだ、と言うと興
味を失ったようだった。
それよりも、産まれたばかりのおちびちゃんたちと楽しくゆっくりする方が遥かに重要
だからだ。
た。
「「「ゆっきゅちちていっちぇね!」」」
「ゆわわわわ!」
「かわいいよぉぉぉぉぉぉぉ!」
「えんじぇるっ! えんじぇるだよぉぉぉぉ!」
「おかあしゃん、すーりすーりしてにぇ」
「まりしゃもまりしゃも!」
「おとうしゃん、だーいちゅき!」
「「ゆゆぅぅぅん、おちびちゃんはゆっくりできるよぉぉぉ!」」
早速ゆっくりぶりを披露する一家に、他のものたちも色めき立った。
「ゆゆゆゆ! れいむのおちびちゃんもはやくうまれてね! いっしょにゆっくりしよう
ね!」
「ゆふふふ、ありすもおちびちゃんとすーりすーりするのたのしみだわぁ」
「ゆっくり! ゆっくり! ゆっくりうまれてね~♪」
そして、縦線が四本になった日、遅れて子作りした九組の子供たちも産まれ、部屋は一
気に賑やかになった。
「うお! 第二陣も産まれたか」
部屋に来た青年が、うぞうぞと蠢くクソえんじぇるどもに驚いて声を上げた程である。
「お兄さん」
「ん? どした?」
青年が部屋を出ようとすると、ぱちゅりーが声をかけてきた。
「あれだけおちびちゃんがいると、ちょっとうるさいのよ。といっても、おちびちゃんが
少し騒がしいのは当然だし、それにそれも自由だし」
「ん、そうだな」
「でも、さすがにちょっと勉強の邪魔なのよ。なんとかならないかしら?」
「んー……おお、ちょっと待ってろ」
青年は何か思い当たったのか、一度部屋から出て行った。
ぱちゅりーたちは青年が置いて行ったごはんを食べて待つことにした。
「ゆゆ……」
「ぱ、ぱちゅりー……」
「なんだか、みんなの目が……」
「むきゅぅ……」
ぱちゅりーグループのものたちがなんとなく気分がよくないといった感じで言った。
それというのも、子作りをしたものたちが自分たちを見る目がなんだかゆっくりできな
いのだ。
何か言ってくるわけではないし、こちらと目が合えば慌てて逸らすのだが、見下ろして
いるようにしか見えなかった。
これはゆっくりしているものが偉い、というゆっくりの性質上仕方がないことと言えた。
別に禁じられているわけでもないおちびちゃんを作るという、とてもゆっくりできる行
為を頑なに拒むぱちゅりーたちは、凄く愚かな連中だと思われているのだ。
「ごはんを好きなだけむーしゃむーしゃして、おちびちゃんとゆっくりして……これがほ
んっとうのゆっくりなんだね!」
一匹のれいむが感極まったように叫んだ。
それに同意する声がそこかしこから上がる。
この素晴らしい時に比べれば、自分たちが産まれてからの一時期はまったくゆっくりで
きない時間だった。あんなものはゆん生とは言えない。
これこそが、これこそがほんとうのゆっくりなのだ! とおちびちゃんに囲まれたゆっ
くりたちは歓喜の声を上げた。
別にぱちゅりーたちに聞かせているわけではないのだが、なんでこのほんとうのゆっく
りを拒むのか、と皮肉を言われているようにも見える。
「うーし、おまたせー」
青年が台車を押してやってきた。
「もうちょい待てな」
青年は台車に乗った箱を開き、透明の板のようなものを取り出した。
それを組み立てると、大きな透明の箱が出来上がった。
「ほら、ここが入り口。鍵はここをこうやって閉める」
「むきゅ、わかったわ」
ぱちゅりーが中に入って扉を閉める。
何か口をパクパクさせてから出てきた。
「なに言ってたか聞こえた?」
「ゆ? ぱちゅりー、何か言ってたの?」
「ぜんぜん聞こえなかったよー」
「むきゅ、これなら大丈夫ね! お兄さんありがとう!」
「おう、どういたしまして」
他のゆっくりたちも興味深そうに見ていたが、中で勉強するためのものだ、と言うと興
味を失ったようだった。
それよりも、産まれたばかりのおちびちゃんたちと楽しくゆっくりする方が遥かに重要
だからだ。
翌日、例の元ぱりゅりーグループのまりさとれいむの子供たちも誕生の時を迎えた。
「ゆわわわわ、かわいいよぉぉぉぉぉ!」
「ゆっくりしていってね!」
「「「ゆっくちちていっちぇね!」」」
その愛らしさに全てがふっ飛んだ。
ゆっくりにとっておちびちゃんというのは、それほどの威力がある。
飼いゆっくりが子供を産んだ途端に飼い主を無視して子供にかかりきりになり、それを
許していたら仕舞いには飼い主を自分たちの世話をする召使のように扱うようになったと
いうトラブルも頻出しているぐらいだ。
だからこそ、飼いゆっくりになるには勝手に子供を作るべきではないと認識しているこ
とが必須条件にされているのである。
「ゆゆーん、おかあさんとすーりすーりしようね!」
「おとうさんのおぼうしに乗せてあげるよ!」
「ゆわーい、ゆっくち!」
「ゆっくちたのちいにぇ!」
幸せ一杯の家族たち。
それを尻目にするかのように、透明の箱の中ではぱちゅりーたちが勉強に励んでいる。
「ゆわわわわ、かわいいよぉぉぉぉぉ!」
「ゆっくりしていってね!」
「「「ゆっくちちていっちぇね!」」」
その愛らしさに全てがふっ飛んだ。
ゆっくりにとっておちびちゃんというのは、それほどの威力がある。
飼いゆっくりが子供を産んだ途端に飼い主を無視して子供にかかりきりになり、それを
許していたら仕舞いには飼い主を自分たちの世話をする召使のように扱うようになったと
いうトラブルも頻出しているぐらいだ。
だからこそ、飼いゆっくりになるには勝手に子供を作るべきではないと認識しているこ
とが必須条件にされているのである。
「ゆゆーん、おかあさんとすーりすーりしようね!」
「おとうさんのおぼうしに乗せてあげるよ!」
「ゆわーい、ゆっくち!」
「ゆっくちたのちいにぇ!」
幸せ一杯の家族たち。
それを尻目にするかのように、透明の箱の中ではぱちゅりーたちが勉強に励んでいる。
「うん、そろそろ試験の日が近づいてきたなー」
「「「ゆ!?」」」
お兄さんが、ホワイトボードの縦線を消した瞬間、部屋にいたゆっくりたちに一種異様
な空気が流れた。
残る縦線は三本。
これは試験前の時間が三日であることを示している。
そして、三というのはゆっくりが無理なく認識できる数字である。
既述のごとく、ここのゆっくりたちはある程度は教育を受けているので、それ以上の数
も視覚的には理解できる。
しかし、危機感などはおちびちゃんとの幸せなゆっくりによって抱きようがなかった。
それでも、残り三日、というのはリアルに「いよいよ試験も近い」と思わせる数字であ
った。
「ゆ、ゆゆん、そ、そろそろ勉強しようか」
「そ、そうだね」
「ま、まあ、まりさたちなら三日勉強すれば大丈夫なのぜ」
「ん、なんだみんな勉強すんのか?」
青年はそう言うと、大きな箱と小さな箱とモニターを二組ほど持ってきた。
「最初からあるのはぱちゅりーたちが使ってるから、さすがにみんなで一斉にやったら見
にくい奴も出るだろうからな」
手際よくそれらを設置して、青年は部屋を出て行った。
「「「ゆ!?」」」
お兄さんが、ホワイトボードの縦線を消した瞬間、部屋にいたゆっくりたちに一種異様
な空気が流れた。
残る縦線は三本。
これは試験前の時間が三日であることを示している。
そして、三というのはゆっくりが無理なく認識できる数字である。
既述のごとく、ここのゆっくりたちはある程度は教育を受けているので、それ以上の数
も視覚的には理解できる。
しかし、危機感などはおちびちゃんとの幸せなゆっくりによって抱きようがなかった。
それでも、残り三日、というのはリアルに「いよいよ試験も近い」と思わせる数字であ
った。
「ゆ、ゆゆん、そ、そろそろ勉強しようか」
「そ、そうだね」
「ま、まあ、まりさたちなら三日勉強すれば大丈夫なのぜ」
「ん、なんだみんな勉強すんのか?」
青年はそう言うと、大きな箱と小さな箱とモニターを二組ほど持ってきた。
「最初からあるのはぱちゅりーたちが使ってるから、さすがにみんなで一斉にやったら見
にくい奴も出るだろうからな」
手際よくそれらを設置して、青年は部屋を出て行った。
「ゆがあああああああああ! やってられるかあああああああ!」
一匹のれいむ……好きなだけごはんを食べられるのですっかり太ってでいぶと化してい
た……が叫んだ。
「こ、こんなの! こんなゆっくりできないごと! ふざけるなあああああ!」
教育ビデオとは、つまるところ「ゆっくりできないこと」を我慢しましょう、という内
容である。
これに「ほんとうのゆっくり」に浸りきっていたものが耐えられるはずは無いのだ。
他のものたちも、でいぶに同感の声を上げる。せっかくほんとうのゆっくりを手に入れ
たのに、なんでこんなことをしなければいけないのか。
それでも、バッヂ試験に合格するためだ、と言う意見もあったが、そんなものは「ほん
とうのゆっくり」の前には無力であった。
一匹減り、二匹減り、遂には元ぱちゅりーグループだったまりさとれいむだけになった。
だが、その二匹にも、絶えず誘惑が降りかかる。
勉強する間、子供たちは親と遊べなくて不満であったが、それを我慢するように言い聞
かせていた、
しかし、他のゆっくりたちがこれ見よがしに親子団欒を見せ付けるものだから、我慢し
ようとした子供たちも、やがて癇癪を起こしてしまった。
宥めても聞かない子供たちにほとほと困り果てたところに、あの真っ先に叫び散らした
でいぶがやってきた。
「二人とも、そんなゆっくりできないことを、おちびちゃんたちをゆっくりさせないでま
ですることはないよ」
「ゆ、でも……」
「試験が……」
「試験ってなに? にんげんさんが勝手に作ったにんげんさんの勝手な基準でゆっくりを
分けることでしょ」
「「ゆぅ……」」
でいぶの言葉は一面の真実をついていた。
「そんなものに受かるのがなんなの? そのためにゆっくりできないことをして、おちび
ちゃんたちもゆっくりできなくするの? そんなの間違ってるよ」
「「……」」
「……あのほんとうのゆっくりを知ってしまった以上、れいむたちはもうあんなゆっくり
できないことはできないよ」
でいぶは、迷い無く言い切った。
その迷いの無さは、ある種の力強さを感じさせる。
「だから、そんなこと止めてゆっくりしよう。ほんとうのゆっくりを」
「「ゆゆゆ……」」
「ゆっくちちようよ!」
「ゆっくち! おかあしゃん、おとうしゃん!」
「いっちょにゆっくちちたいよ!」
揺れ動いた心へ、子供たちが駄目押しをした。
「ゆん……わかったよ」
「おちびちゃんたち……いっしょにゆっくりしようね!」
「「「ゆっくちちようにぇ!」」」
「さあ、みんな、ほんとうのゆっくりを!」
「「「ほんとうのゆっくりを!」」」」
幸せそのものな歓声が上がる。
そして、それに敢然と背を向けるように、今日も透明の箱ではぱちゅりーたちの勉強が
続いていた。
一匹のれいむ……好きなだけごはんを食べられるのですっかり太ってでいぶと化してい
た……が叫んだ。
「こ、こんなの! こんなゆっくりできないごと! ふざけるなあああああ!」
教育ビデオとは、つまるところ「ゆっくりできないこと」を我慢しましょう、という内
容である。
これに「ほんとうのゆっくり」に浸りきっていたものが耐えられるはずは無いのだ。
他のものたちも、でいぶに同感の声を上げる。せっかくほんとうのゆっくりを手に入れ
たのに、なんでこんなことをしなければいけないのか。
それでも、バッヂ試験に合格するためだ、と言う意見もあったが、そんなものは「ほん
とうのゆっくり」の前には無力であった。
一匹減り、二匹減り、遂には元ぱちゅりーグループだったまりさとれいむだけになった。
だが、その二匹にも、絶えず誘惑が降りかかる。
勉強する間、子供たちは親と遊べなくて不満であったが、それを我慢するように言い聞
かせていた、
しかし、他のゆっくりたちがこれ見よがしに親子団欒を見せ付けるものだから、我慢し
ようとした子供たちも、やがて癇癪を起こしてしまった。
宥めても聞かない子供たちにほとほと困り果てたところに、あの真っ先に叫び散らした
でいぶがやってきた。
「二人とも、そんなゆっくりできないことを、おちびちゃんたちをゆっくりさせないでま
ですることはないよ」
「ゆ、でも……」
「試験が……」
「試験ってなに? にんげんさんが勝手に作ったにんげんさんの勝手な基準でゆっくりを
分けることでしょ」
「「ゆぅ……」」
でいぶの言葉は一面の真実をついていた。
「そんなものに受かるのがなんなの? そのためにゆっくりできないことをして、おちび
ちゃんたちもゆっくりできなくするの? そんなの間違ってるよ」
「「……」」
「……あのほんとうのゆっくりを知ってしまった以上、れいむたちはもうあんなゆっくり
できないことはできないよ」
でいぶは、迷い無く言い切った。
その迷いの無さは、ある種の力強さを感じさせる。
「だから、そんなこと止めてゆっくりしよう。ほんとうのゆっくりを」
「「ゆゆゆ……」」
「ゆっくちちようよ!」
「ゆっくち! おかあしゃん、おとうしゃん!」
「いっちょにゆっくちちたいよ!」
揺れ動いた心へ、子供たちが駄目押しをした。
「ゆん……わかったよ」
「おちびちゃんたち……いっしょにゆっくりしようね!」
「「「ゆっくちちようにぇ!」」」
「さあ、みんな、ほんとうのゆっくりを!」
「「「ほんとうのゆっくりを!」」」」
幸せそのものな歓声が上がる。
そして、それに敢然と背を向けるように、今日も透明の箱ではぱちゅりーたちの勉強が
続いていた。
「ほい、ごはんだ、たっぷり食えよ」
大皿にごはんが盛り付けられると、ゆっくりたちは目を輝かせた。
「うん、あと二日か」
しかし、青年がホワイトボードの縦線を消し、残りが二本になってしまうとゆっくりた
ちはなんともゆっくりできない表情をした。
これは、ぱちゅりーたちも例外ではないが、こちらは緊張によるものである。
「さあ、みんな、勉強するわよ!」
「ゆっ、がんばるのぜ」
「もう少しで試験だねー、なんかいけそうな気がするよー」
「これもぱちゅりーのおかげだよ」
緊張はしつつも、意気揚々と箱の中へ入っていくぱちゅりーたち。
「ゆぅ……」
「勉強……する?」
「ゆ、でも……」
一方それ以外のものたち。少しは焦ったか、勉強しようかというものもいたが、子供た
ちがそんなことしないで一緒に遊んで欲しい、と言うとその連中も折れてしまった。
勉強をゆっくりできないことと認識している彼らは、子供への躾もそれに類するものと
思ってしまっており、またごはんはいくらでも青年がくれるために、全く躾をしていなか
った。
当然、子供たちは近くある試験というのがどれほど重要なものかは理解していない。
それならば、そんなどうでもいいものへの準備である勉強などするよりも、自分たちと
遊んでゆっくりして欲しいというのが当たり前だろう。
「勉強なんかすることないよ! ほんとうのゆっくりにそんなものはいらないよ!」
でいぶが言うと、皆それに賛同する。
少し狂的な感じすらする熱狂的な賛同だった。
心の底では、わかっているのだ。このほんとうのゆっくりの先に何があるのか。
だからこそ、皆でほんとうのゆっくりというお題目を唱えてゆっくりすることで、それ
を忘れようとしているのだ。
……しかし、それには邪魔な存在があった。
言うまでもない、透明な箱によって素晴らしいほんとうのゆっくりの歓喜の声を遮って
勉強に励むぱちゅりーたちだ。
「ぱちゅりー! ぱちゅりー!」
その声は聞こえなかったが、どんどんと壁を叩く振動でそれに気付いた。
後ろにゆっくりたちを従えたでいぶだ。
「どうしたの? れいむ」
「ぱちゅりー、それに他のみんなも、そんなゆっくりできないことは止めなよ」
「むきゅ?」
「そうだよ! そんなことやめなよ!」
「いっしょにゆっくりしようよ!」
「ほんとうのゆっくりを!」
「「「ほんとうのゆっくりを!」」」
「むきゅ、なんなのよ……」
「ぱちゅりー、れいむたちとてもゆっくりしてるよ。ごはんを好きなだけむーしゃむーし
ゃして、おちびちゃんに囲まれて……これがほんとうのゆっくりだよ! 産まれてからこ
こに来るまでの生活は……あんなのはゆっくりじゃないよ! 生きているとは言えないよ!
」
「それはよかったわね。でも、ぱちゅたちは試験に受かってからゆっくりするから」
「それも、ほんとうのゆっくりじゃないよ!」
「むきゅ?」
「試験に受かってバッヂをもらって、それでにんげんさんに飼われたとしても……そのに
んげんさんがごはんを好きなだけくれないかもしれないよ? おちびちゃんも、作ったら
駄目だって言うかもしれないよ?」
「むきゅ……まあ、それはそうね」
「そうでしょ! そうでしょぉぉぉぉぉ! だから、そんなことしないで、今! 今をゆ
っくりするべきなんだよぉぉぉぉ!」
ぱちゅりーが自分の言うことを肯定したと見るや、でいぶは勢い込んで言った。
「でも、ぱちゅは勉強するわ。金バッヂ試験に受かるかどうか、自分を試してみたい気持
ちもあるし……みんなは?」
「ゆ!? ゆぅ……まりさは、最後まで頑張ってみるのぜ」
「ここまで頑張ったからには最後までやってみたいよねー」
「そうだよね」
「な、なにを言ってるのぉ! ほんとうのゆっくりを! ほんとうのゆっくりを味わいた
くないのぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
「むきゅ、別にいいわ」
「ゆ……ゆ……ゆがああああああああああ! この! この馬鹿どもぉぉぉぉ! なんで
っ! なんででいぶだぢがこんなに、こんなに親切で言っでやっでるのに言うどおりにじ
ないんだぁぁぁぁぁ!」
「む、むきゅ!」
でいぶが激昂したのに驚いてぱちゅりーは慌てて扉を閉じて鍵をかける。
「あげろぉぉぉぉぉぉ!」
「出てこぉぉぉぉい!」
「ゆっぐり! ゆっぐりじろぉぉぉぉ!」
「ほんどうのゆっぐりが、なんでっ! なんでわがらないぃぃぃぃぃ!」
でいぶにあてられたのか、他のものたちもいきり立って叫びながら壁に体当たりする。
「おらおら、何やってんだてめえら」
そこへ青年がやってきた。
「うるざぁぁぁい、邪魔ずるなあああああああ! ゆべ!」
叫んだでいぶに、青年が容赦なく爪先を叩き込む。
「誰に口きいてんだボケ! 何やってんだって聞いてんだ! まさかこいつらに暴力振る
ったんじゃないだろーな!」
「ゆ、そ、それは……」
「暴力振るったらぶるぶるの刑……それはわかってるよな?」
「「「ゆひぃぃぃ、ち、違いまずぅぅぅぅぅ!」」」
ぶるぶるの刑と聞いた途端に、ゆっくりたちは震え上がってしまう。
「おい、ぱちゅりー、本当か?」
「むきゅ、そ、それは本当よ。でも、みんなが勉強なんて止めろ、って言うのよ。箱に体
当たりも」
「あ? ぱちゅりーたちは好きで勉強してんだろうが、つまりはそれがぱちゅりーたちの
自由だ。お前ら、それを邪魔しようとしたわけ? 暴力振るってないって言ってもさ、そ
ういうことなら箱への体当たりを暴力と見做してぶるぶるの刑にしてやってもいいんだぞ、
ん?」
「「「ゆぴぃぃぃ、ぶ、ぶるぶるはゆっぐりでぎないぃぃぃぃ!」」」
「だったらさっさと散れ! 他の奴の自由を邪魔すんな!」
青年がそう言って蹴る真似をすると、ゆっくりたちは一目散に離れていった。
大皿にごはんが盛り付けられると、ゆっくりたちは目を輝かせた。
「うん、あと二日か」
しかし、青年がホワイトボードの縦線を消し、残りが二本になってしまうとゆっくりた
ちはなんともゆっくりできない表情をした。
これは、ぱちゅりーたちも例外ではないが、こちらは緊張によるものである。
「さあ、みんな、勉強するわよ!」
「ゆっ、がんばるのぜ」
「もう少しで試験だねー、なんかいけそうな気がするよー」
「これもぱちゅりーのおかげだよ」
緊張はしつつも、意気揚々と箱の中へ入っていくぱちゅりーたち。
「ゆぅ……」
「勉強……する?」
「ゆ、でも……」
一方それ以外のものたち。少しは焦ったか、勉強しようかというものもいたが、子供た
ちがそんなことしないで一緒に遊んで欲しい、と言うとその連中も折れてしまった。
勉強をゆっくりできないことと認識している彼らは、子供への躾もそれに類するものと
思ってしまっており、またごはんはいくらでも青年がくれるために、全く躾をしていなか
った。
当然、子供たちは近くある試験というのがどれほど重要なものかは理解していない。
それならば、そんなどうでもいいものへの準備である勉強などするよりも、自分たちと
遊んでゆっくりして欲しいというのが当たり前だろう。
「勉強なんかすることないよ! ほんとうのゆっくりにそんなものはいらないよ!」
でいぶが言うと、皆それに賛同する。
少し狂的な感じすらする熱狂的な賛同だった。
心の底では、わかっているのだ。このほんとうのゆっくりの先に何があるのか。
だからこそ、皆でほんとうのゆっくりというお題目を唱えてゆっくりすることで、それ
を忘れようとしているのだ。
……しかし、それには邪魔な存在があった。
言うまでもない、透明な箱によって素晴らしいほんとうのゆっくりの歓喜の声を遮って
勉強に励むぱちゅりーたちだ。
「ぱちゅりー! ぱちゅりー!」
その声は聞こえなかったが、どんどんと壁を叩く振動でそれに気付いた。
後ろにゆっくりたちを従えたでいぶだ。
「どうしたの? れいむ」
「ぱちゅりー、それに他のみんなも、そんなゆっくりできないことは止めなよ」
「むきゅ?」
「そうだよ! そんなことやめなよ!」
「いっしょにゆっくりしようよ!」
「ほんとうのゆっくりを!」
「「「ほんとうのゆっくりを!」」」
「むきゅ、なんなのよ……」
「ぱちゅりー、れいむたちとてもゆっくりしてるよ。ごはんを好きなだけむーしゃむーし
ゃして、おちびちゃんに囲まれて……これがほんとうのゆっくりだよ! 産まれてからこ
こに来るまでの生活は……あんなのはゆっくりじゃないよ! 生きているとは言えないよ!
」
「それはよかったわね。でも、ぱちゅたちは試験に受かってからゆっくりするから」
「それも、ほんとうのゆっくりじゃないよ!」
「むきゅ?」
「試験に受かってバッヂをもらって、それでにんげんさんに飼われたとしても……そのに
んげんさんがごはんを好きなだけくれないかもしれないよ? おちびちゃんも、作ったら
駄目だって言うかもしれないよ?」
「むきゅ……まあ、それはそうね」
「そうでしょ! そうでしょぉぉぉぉぉ! だから、そんなことしないで、今! 今をゆ
っくりするべきなんだよぉぉぉぉ!」
ぱちゅりーが自分の言うことを肯定したと見るや、でいぶは勢い込んで言った。
「でも、ぱちゅは勉強するわ。金バッヂ試験に受かるかどうか、自分を試してみたい気持
ちもあるし……みんなは?」
「ゆ!? ゆぅ……まりさは、最後まで頑張ってみるのぜ」
「ここまで頑張ったからには最後までやってみたいよねー」
「そうだよね」
「な、なにを言ってるのぉ! ほんとうのゆっくりを! ほんとうのゆっくりを味わいた
くないのぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
「むきゅ、別にいいわ」
「ゆ……ゆ……ゆがああああああああああ! この! この馬鹿どもぉぉぉぉ! なんで
っ! なんででいぶだぢがこんなに、こんなに親切で言っでやっでるのに言うどおりにじ
ないんだぁぁぁぁぁ!」
「む、むきゅ!」
でいぶが激昂したのに驚いてぱちゅりーは慌てて扉を閉じて鍵をかける。
「あげろぉぉぉぉぉぉ!」
「出てこぉぉぉぉい!」
「ゆっぐり! ゆっぐりじろぉぉぉぉ!」
「ほんどうのゆっぐりが、なんでっ! なんでわがらないぃぃぃぃぃ!」
でいぶにあてられたのか、他のものたちもいきり立って叫びながら壁に体当たりする。
「おらおら、何やってんだてめえら」
そこへ青年がやってきた。
「うるざぁぁぁい、邪魔ずるなあああああああ! ゆべ!」
叫んだでいぶに、青年が容赦なく爪先を叩き込む。
「誰に口きいてんだボケ! 何やってんだって聞いてんだ! まさかこいつらに暴力振る
ったんじゃないだろーな!」
「ゆ、そ、それは……」
「暴力振るったらぶるぶるの刑……それはわかってるよな?」
「「「ゆひぃぃぃ、ち、違いまずぅぅぅぅぅ!」」」
ぶるぶるの刑と聞いた途端に、ゆっくりたちは震え上がってしまう。
「おい、ぱちゅりー、本当か?」
「むきゅ、そ、それは本当よ。でも、みんなが勉強なんて止めろ、って言うのよ。箱に体
当たりも」
「あ? ぱちゅりーたちは好きで勉強してんだろうが、つまりはそれがぱちゅりーたちの
自由だ。お前ら、それを邪魔しようとしたわけ? 暴力振るってないって言ってもさ、そ
ういうことなら箱への体当たりを暴力と見做してぶるぶるの刑にしてやってもいいんだぞ、
ん?」
「「「ゆぴぃぃぃ、ぶ、ぶるぶるはゆっぐりでぎないぃぃぃぃ!」」」
「だったらさっさと散れ! 他の奴の自由を邪魔すんな!」
青年がそう言って蹴る真似をすると、ゆっくりたちは一目散に離れていった。
続く