地形概論 地形篇

地形について


地形は戦闘を補佐し同時に阻害する重要な要素である。
ここでは孫子兵法を後世の人間が拡充し、それを更に魏の曹操が整理した『魏武注孫子』の和訳から
地形篇より引用抜粋して、注意と対処を記述したい。

なお、要点のみかいつまむ場合は地形概論 まとめを参照のこと。


地形篇

特徴のある6つの地形について記されている

孫子曰、地形、有通者、有挂者、有支者、有隘者、有險者、有遠者
(孫子曰く、地形には、通なる者あり、挂なる者あり、支なる者あり、隘なる者あり、険なる者あり、遠なる者あり)

以下の通りとなる。
  1. 通(つう 通路)
  2. 挂(かい 挂路)
  3. 支(し 支路)
  4. 隘(あい 隘路)
  5. 険(けん 険路)
  6. 遠(えん 遠路)

通路


我可以往、彼可以來、曰通、通形者、先居高陽、利糧道以戰則利
(我れ以て往くべく疲れ以て来たるべきは曰[すなわ]ち通ずるなり。
通ずる形には、先ず高陽に居り、糧道を利して以て戦えば、則ち利あり。)
敵と味方の双方が行き来しやすい地形を「通じ開けた地形(通路)」と言う。
例えれば幹線道路やメインストリートなど。
このような場所では糧道(補給線・連絡線)を維持し、
高陽(明るい場所。転じて視界の良好な場所)を敵より先に制圧・布陣すると有利になる。

挂路


可以往、難以返、曰挂、挂形者、敵無備、出而勝之、敵若有備、出而不勝、難以返不利
(以て往くべきも以て返り難きは曰ち挂ぐるなり。
挂ぐる形には、敵に備え無ければ出でてこれに勝ち、敵若し備え有れば出でて勝たず、以て返り難くして不利なり。)
無理矢理進むことが出来ても、いざ後退するときに難のあるおよそ漏斗状・凸状の地形を、
「挂(ひっか)かりのある地形(挂路)」と言う。
例えれば関門やトンネルの出口など
進路状に敵の備え(防御陣地や伏兵)がなければ問題ないが、それがあるならば進軍した際防衛されて
撤退しようにも撤退が難しく大きな被害を出してしまう。
対処は索敵である。侵攻前に敵の有無を調査しておけば、闇雲に進んで被害を出さずに済む。

支路


我出而不利、彼出而不利、曰支、支形者、敵雖利我、我無出也、引而去之、令敵半出而撃之利
(我れ出でて不利、彼れも出でて不利なるは、曰ち支るるなり。
支るる形には、敵 我れを利すと雖も、我れ出ずること無かれ。
引きてこれを去り、敵をして半ば出でしめてこれを撃つは利なり。)
道が途中で枝分かれしたり、多数の脇道がある場合など「細く分岐した地形(支路)」と呼ぶ。
無論地形論なので道とは限らない。例を挙げればビルの密集した市街地や下水道なども範疇に入る。
敵も味方も索敵が難しいため先に進入し分岐へ入り組んだ方を後に進入した方に
各個撃破される可能性が高い。
もちろん本隊を分けずに一団となって進むのも可能だが、縦隊は挟撃などの
前後以外からの攻撃に弱いので、頭上を取られたときなどは特に脆い。
よって、敵が先行してこちらの迎撃を誘っても決して乗ってはいけない
むしろ支路から一歩引いたところで待機し、敵が道の過半を進んで十分{分断されて
集団として機能しなくなってから叩くのが上策}である。

蛇足だが「支」はささえる、分割する、枝分かれすると言った意味がある。
分岐の「岐」や「枝」といった漢字のつくり側に使われることからもうかがえる。

隘路


隘形者、我先居之、必盈之以待敵、若敵先居之、盈而勿從、不盈而從之
(隘き形は、我れ先ずこれに居れば、必らずこれを盈たして以て敵を待つ。
若し敵先ずこれに居り、盈つれば而ち従うこと勿かれ、盈たざれば而ちこれに従え。)
進路の両側に障害物があり、投入できる兵力が制限される場所を「隘(せま)い地形」と言う。
形状的には挂路とほぼ共通で、狭い方から広い方へ出るなら「挂路」、逆に入るなら「隘路」と言える。
例えるならトンネルの入り口が隘路、出口が挂路となる。
このような地形は進入箇所が特定できるので罠や狙撃目標になる可能性が高い
また、出口があればそこは挂路になるのでこういった場所は極力避けて迂回するべきである。
無論防衛側は大いに活用すべきでもある。
隘路の出口は先述通り挂路となるので遠近問わず待ち伏せが有効である。
もし、敵が先に侵入して制圧していてもそれは好機に変わりない。
ただし、敵が密集していて相互支援や大きな戦力格差が予想されるならば仕掛けるべきではない。

険路


險形者、我先居之、必居高陽以待敵、若敵先居之、引而去之勿從也
(険なる形は、我れ先ずこれに居れば、必ず高陽に居りて以て敵を待つ。
若し敵先ずこれに居れば、引きてこれを去りて従うこと勿かれ)
字の如く、進軍の難しい「高く険しい地形(険路)」を言う。
山岳地帯もそうだが、現代戦でも活用機会は多い。
ビルの密集地帯がそうで、ビルの下は「支路」、上が「険路」と言える。
基本的には通路と同じ扱いで、自軍が先着・制圧できたなら高所に布陣して待ち伏せるべきであり
敵軍に布陣されていたらそこは避けて通るべきである。

遠路


遠形者、勢均難以挑戰、戰而不利
(遠き形には、勢い均しければ以て戦いを挑み難く、戦えば而ち不利なり)
平坦で敵との距離が離れていることを確認できる地形が「遠い地形(遠路)」と言える。
双方の状況を(ある程度)互いに観察できるため、同じ戦力ならば敵に対応する時間がある
防衛側が基本的には有利である。よってこのような場合は速攻攻撃を仕掛けず、
敵の出方を待つか、困難ならば徐々に距離を詰めるべきである。

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最終更新:2011年07月05日 11:36
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