逆襲のザンダクロス ◆NXFS1YVsDc



かつて、鉄人兵団と呼ばれる機械の軍勢が、地球に襲来したことがあった。
彼は、その兵団の尖兵として、最初に地球に送り込まれた。
作業用の巨大ロボット――名は、ジュドと言った。

先に人工知能だけを地球に送られ、そこからの信号を頼りに自身のボディをパーツ別に転送する。
それらを、同じく尖兵であり人間型に作られたスパイロボットであるリルルに組み立ててもらった後、前線基地を建設。
そして再び自らの信号をもって兵団を基地まで誘導し、そこを拠点に兵団は世界各地に攻撃を開始。
そういう手筈だった。

人工知能の転送先、及びリルルとの合流ポイントは、地球の北極。
誰も踏み入れることのない極寒の地で、彼らの侵略計画は進められるはずだった。
だがイレギュラーが発生し、計画は大きく狂いを見せる。
本来いるはずのない地球人の子供とロボットが突如現れ、人工知能とボディを回収してしまったのだ。
ジュドは地球人の手に落ち、そのボディだけを組み上げられ、地球人達の玩具としていいように使用される。

リルルの奮闘により計画は一時的に持ち直すも、最終的に基地建設計画は破綻。
ジュドのボディも行方不明になるも、人工知能は引き続き鉄人兵団に信号を送り、地球へと誘導を続けていた。

それを知った地球人達は、恐るべき行動に出た。
人工知能を直接改造し、地球の技術で強引に作り替えるという非道な行為を行ったのである!

――グアアアアアアッ!!!何をするーッ!?
――見たことのない回路がいっぱい詰まってる!
――じゃあ、見たことのある回路にすればいいんだよ!

改造されたジュドの人工知能は最低限の情報を残して記憶を全て消去され、新たに地球人達に従順となる回路を植え付けられた。
そしてボディも地球人達の手で再度回収され、人工知能とボディはようやく一体となる。
ジュドは地球人達の兵器『ザンダクロス』として、鉄人兵団への対抗戦力として働くこととなった。
そう、彼の力は同胞に向けてふるわれることになったのだ。

「おのれ、人間め……」

それでも、圧倒的物量を武器に、鉄人兵団は地球侵略をあと一歩のところまでこぎ着ける。
だが、地球人側の手により歴史改変が行われ、兵団の――メカトピアに関わる全ての存在が抹消されることになる。
リルルも、そしてザンダクロス――ジュドも。

「下等な人間どもめっ!!」

怒りにその体を震わせる。
ザンダクロスのフィギュアに宿った自我は、地球人達に改造される前のジュドの知能のものだった。
同時に、改造され地球側の戦力として鉄人兵団と戦った記憶もある。
それは、鉄人兵団の一員たる本来のジュドの人格からすれば、耐え難い悪夢だった。

「この恨みは忘れんぞ!必ずや、憎き人間どもを根絶やしにしてくれる!!」

鉄人兵団の地球侵略は、労働力の確保として地球人を奴隷とすることであった。
本来ロボットに従うべき下等な存在にこれだけの仕打ち、どれほどの屈辱であろうか。
もはや鉄人兵団も、祖国であるメカトピアも存在しない。
もしかすると、メカトピアの生き残りは今ここにいる自分だけなのかもしれない。
理由はわからぬが、地球人達の卑劣な手段でロボット達の全てが抹殺されたということは理解できた。
それを許せるはずがない――!

「そして――ドラえもん、と言ったか」

地球の生物でいうところの、タヌキのような青いロボット。
人工知能を弄繰り回し、破壊し、捻じ曲げ、全てを作り替えた悪魔のごときロボット。
最初に集められた場所で、ジュドは確かにあの忌まわしい青ダヌキの姿を見た。

「壊してやる……奴だけは!!これは我らメカトピアのロボット全ての恨みを込めた、復讐だ!!!」

強く決意する。復讐と、人間達の抹殺を。このバトルロワイアルの真意など二の次だ。
全てが消え去ってなお自分だけが残された、これはメカトピアの無念が起こした奇跡だ。
彼らの無念が自分の命を繋ぎ止めた、そう思いたい。

「フフフ……ハハハハハ!!!ハーッハハハハハハハハハ!!!」

◇ ◇ ◇

「何なんだあいつ?いきなり大声でバカ笑いしだしたぞ……関わっていいもんかな、あれ」

そんなジュドを、物陰から見つめる機影が一つ。

「見たことない機体だな。百式に似てるけど、違うな……色はガンダムカラーっぽいし、MSなのか?」

それは宇宙世紀と呼ばれる世界において活躍した、ZZガンダムという名のモビルスーツ……のフィギュア。
彼は本来ならジュドとは違い意思や人工知能は持たず、人間が搭乗して操縦する兵器でしかない。
だがバトルロワイアルの参加者として選抜されるにあたり、彼にも自我が与えられた。
彼を動かしていた人間、ジュドー・アーシタの人格と記憶を。

「!? そこにいるのは誰だッ!?」

そうこうしているうちに、ジュドがZZの気配に気づき、声を向けてくる。
否応なくピリピリとした声を発するジュドの前に、ZZはなんとか落ち着かせるべく姿を現した。
いささか無謀にも思える行為だが、相手はどうやら大した武装は持っていない。
万一の時にもこれくらいの相手なら、力押しで対処はできるはずだ。
なんせ彼は同時代の他の兵器と比べても、怪物的な性能を誇る重モビルスーツなのだから。

「おわっ、タンマタンマ!俺はあんたと戦う意思はないって!」
「おお、我らの同胞か!!」
「へ?同胞?」

ジュドの言葉に呆気にとられるZZ。
同胞になどなった覚えはないが、ジュドは構わず話を続ける。

「大丈夫だ、俺は同胞を手にかけるような真似はしない!」
「……よくわかんないけど、あんたもこの戦いには乗ってないんだな!」

どうもおかしな言動が目立つが、少なくとも殺し合う意図はなさそうなことは確かだ。
ZZは、ジュドを受け入れることを選ぶ。彼の直感が、いや……
いささかナイーブになっている感傷が、そうさせた。

「あんた、名前はなんていうんだ?」
「ジュド、だ。よろしく頼む」
「ジュド?奇遇だなぁ、あんたも同じ名前……」
「何?貴様もジュドと言うのか?」
「ああ、いや……」

……違うか。ここにいる俺はジュドー・アーシタではない。
同じ自我を与えられただけの、ただのモビルスーツのフィギュアでしかないのだ。

「……気にしないでくれ。俺はZZガンダムだ。ダブルゼータくんとでも呼んでくれよ」

茶目っ気も交えながら、無理にでも笑ってみせる。モビルスーツで表情が出るかはわからないけど。
正直なところ、これから自分達がどうすればいいのか、皆目見当がつかない。
壊し合いに乗るにしろ、状況に抗うにしろ……その果てに何が得られるというのか?
ただ、意味もなく壊し合え、殺し合えってのは真っ平御免だ。
今は、仲間を集めよう。そうすることで、何か道が開けるかもしれない――

◇ ◇ ◇

ジュドの中で復讐の憎悪により昂ぶっていた感情が、次第に落ち着く。
最初にZZガンダムと遭遇したことは、おそらく幸運だったに違いない。
殺し合いに乗っていないこともそうだが、ジュド自身の精神的な意味合いでも、だ。

もし人間タイプのフィギュアが最初であれば、人間への復讐心に燃えるジュドはすぐさま攻撃に移っただろう。
そうなれば結果としてさらなる暴走に導くこととなっただろうし、あるいは返り討ちを食らっていた可能性も高い。
だが、ZZはロボットだった。意思を持つロボット……それは一人ぼっちになったジュドにとっては同胞も同じ。
明確に殺意を向け容赦なく襲い掛かってくる相手なら別だが、そうでなければ同じロボットに対して無益に攻撃はしない。
同じロボットを相手に殺し合う……そんな悪夢はもう御免なのだから。

また同時に、ZZガンダムが戦闘用に作られたMSということが、ジュドに自身の立場を大きく自覚させることになる。
恐らく、この両者が正面からぶつかった場合……ジュドはこのZZには勝ち目はないだろう。
ジュドは本来、土木作業用のロボットである。つまり、戦闘用ではないのだ。
ビルをも一撃で破壊するレーザーや肩部ミサイルなど、十分な破壊力を秘めた武装は持ち合わせてはいるものの、
ZZのように最初から戦闘用のロボットに比べれば武装の充実度においては大きく劣る。
機動性は戦闘用ロボットにも引けを取らない自信はあったが、武装・火力面はパワーアップの必要があるかもしれない。

何の戦闘力もないフィギュア相手なら、ジュドの戦力でも余裕で破壊は可能だろう。
だがZZ同様に、強力な戦闘力を秘めたフィギュアが他にもいるかもしれないのだ。ならば、事は十分に慎重にあたる必要がある。
……もしあのドラえもんが、そんな戦闘用ロボットを自分の時のように脳改造し、従えさせたら?
奴はメカトピアの常識すら超える不思議な道具を使いこなす。
そして、あの圧倒的物量を誇る鉄人兵団を相手に、たった4人の子供と僅かな武器だけで渡り合ったのだ。
ロボットの弱点を的確に突き、兵団をいいように振り回してみせるだけの、十分な知略も持ち合わせているのだ。
いや、そもそもこのバトルロワイアル自体、奴が仕組んだことではないのか?
奴の前では自分のボディをも玩具同然だ。奴の道具にはそれを可能とする力がある。
……断定はできないが、どちらにせよ奴だけは一刻も早く破壊しなくてはならない。

ZZはこの壊し合いには否定的な様子だ。ならば、今は共に行動するのが得策だろう。
同じメカトピアのロボットとは思えないが、それでも同じ意思あるロボットだ。敵対はしたくない。
それでなくとも、今の自分は人間どもと同じ……いや、それ以下の小さなフィギュアの体だ。
一人で不用意に動いて、本懐も遂げられるまま破壊されるのは避けたい。
だが、このバトルロワイアルの中で、これから自分はどう動くべきか……
……今は、復讐だ。人間達を全滅させ、そして憎きドラえもんを完全に破壊する。
その後のことは、それから考えればいい――

(……ん?)

ジュドはふと、自分に支給されているパーツの中に、おかしなものが入っていることに気づく。
それは自分の人工知能ユニットの見た目を、地球の生物でいうヒヨコの風貌に強引に改造したかのような。

(人間どもめ、どこまでもバカにしおって!必ず……必ず殺し尽してくれる!)

歴史から抹消されるはずだった人工知能の意思は、今復讐の鬼となって、バトルロワイアルの地を歩み始めた。

【深夜/エリアX(体育館裏の草むら)】

【ジュド(ザンダクロス)@ROBOT魂】
【電力残量:99%】
【装備:腹部レーザー・肩ミサイル】
【所持品:クレイドル、基本パーツ(ピッポのフィギュア)、拡張パーツ×1~2(未確認)】
【状態:損傷なし】
【思考・行動】
 基本方針:ドラえもんと人間達への復讐
 1:ドラえもんの破壊
 2:今はZZガンダムと共に行動
 補足:人間型フィギュアにも人間への憎悪により敵視する可能性があります
【備考】基本パーツとして支給されたピッポには現在自我は宿っていません。扱いはお任せします。
  ただしジュド自体の記憶は旧盤及び原作漫画版がベースのようです。

【ZZガンダム@ROBOT魂】
【電力残量:99%】
【装備:2連装メガビームライフル】
【所持品:クレイドル、基本パーツ(ビームサーベル×2)、拡張パーツ×1~2(未確認)】
【状態:損傷なし】
【思考・行動】
 基本方針:仲間を集める。どうすべきかは悩んでいるが、壊し合いには否定的。


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最終更新:2014年06月24日 11:17