ふたば系ゆっくりいじめ 598 赤ありすと、まりさ一家 前編

赤ありすと、まりさ一家 前編 40KB


観察 差別・格差 誤解・妬み 野良ゆ 赤子・子供 現代 餡庫ンペ09参加作品です





餡庫ンペ09投稿作品です。
テーマは「差別」キー要素は「家出」です。
作者は以前に
ふたば系ゆっくりいじめ 303 まりさがんばる
ふたば系ゆっくりいじめ 388 まりさがんばった
を書きました。
ペンネームが必要ということで「マ・あき」を名乗ります。
注意として前・後編のうち前編になります。








赤ありすと、まりさ一家





「いじゃいよぉぉぉーーーー!!!」
「もっぢょ・・・、ゆっぐぢ・・・じだがっだ・・・。」
「やめてね!かわいいれいむをいじめないでね!」
「エレエレエレエレ・・・・。」
「わぎゃらないよーーー!!やめてねーーーー!!」
「ちーんぽっ!くらみじあっ!!かんじたっ!!」
「やめるのじぇ!まりしゃのいみょーとがいたがってりゅのじぇ!」

「ゆふふっ!ゲス野良くじょはやめられないよ!」

とある街の一角。
長く放置され、野良ゆたちの住処となった空き地。
街中にあっては、野良ゆの楽園と思われ、実際数多の野良ゆたちが繁殖・生息していた。
野生の群れとは違う、独特のコミュニティを形成し、それなりにゆっくりしていた野良ゆたち。
しかし、最近になって、たびたび天敵の襲来を受けることになった。
虐待お兄さんではない。
捕食種でもない。
天敵とは、飼いゆっくりのことだ。
とある一匹の飼いゆっくりが、人間さんの力を背景に、
遊び半分に野良ゆたちを次々に暴行、時には殺ゆしていったのである。
背後に控えるであろう人間さんを恐れ、一匹の飼いゆっくりの無法に耐え忍ぶ日々。
鬱積する怒りと悲しみ。
飼いゆっくりとその印であるバッジが、
人間さん以上の憎悪と恐怖の象徴となりつつあった。
これはそんな頃のゆっくり語りである。















「ゆんやー!ゆあああーん!みゃみゃーー!どこにいるにょーー!?」

暗い夜道。
人家もまばらな街はずれ。
一匹のありすが、泣き叫びながら跳びはねている。
まだ随分小さい。
赤ゆっくりと言っていいだろう。
赤ありすは先ほどから跳ね続けているが、体が小さいのでたいした距離は進んでいない。
そもそも、あてがあって進んでいる訳ですらない。
あっちへ跳ね、こっちへ跳ね、行ったりきたりしているだけだ。
無闇やたらと親を呼び、跳びはねていた赤ありす。
疲れたのだろう。
跳ねるのをやめ、その場でぐずついている。

一旦落ち着いてみると、辺りはすっかりと暗い。
気づけば、半日ほどこうしていたことになる。
赤ゆっくりとはいえ、こんな時間にお外で、それも道路のど真ん中で
ゆっくりとしているわけにはいかないことぐらいは理解できる。
一体どこへ行ってしまったのか。
いつも一緒のみゃみゃや、優しい飼い主さんが、傍にいない。
それに、みゃみゃや飼い主さんがすぐには迎えに来てくる様子もない。
仕方がない。
ひとまず一夜の宿を見つけなければ。
赤ありすが目を向けたのは、暖かな光がもれ出ている人家。
赤ありすにとって、お家といえば、人間さんのお家だ。
手近なお家へと、跳ねていく赤ありす。
今日はこのお家の軒下を借りることにしよう。
突き出た庇のおかげで、雨が降ってきても大丈夫だろう。
もれ出る明かりのおかげで、多少は暗い夜の不安もまぎれる。
空腹は耐えがたいが、どうしようもない。
こうして一匹でじっとしていると色んなことを考えてしまう。
昨日の今頃は、ゆっくりしたみゃみゃと、優しい飼い主さんと、とかいはーなお家で、
おいしいごはんをむーちゃむーちゃしていた。
今日だってそのはずだった。
何故こんなことになっているのだろう。

「ゆゆぅぅぅ・・・。ゆっ・・ゆっ・・ゆわぁぁぁぁーーん!!
 ゆんやーー!ゆんやーー!みゃぁみゃぁーーーー!!!」

何故こんなことになっているのか、全く分かりはしなかったが、
それだけに理不尽な思いと不安が再び大きくなってくる。
そうしてぐずりだしたかと思うと、呆れるほどの大声で泣き叫びだした。
すると、お家からすぐに何事かと人間さんが出てきた。

「おいおい、一体何事だ!?」

声のするほうを見れば、一匹の小さなゆっくり。

「おい、うるさいし、近所迷惑だからすぐにやめてくれ。」
家人は、それほどゆっくりが好きではないらしく、迷惑そうに赤ありすに声をかける。

「ぐすっ・・、ぐすっ・・・。ごめんにゃさい、にんげんしゃん。
 ありちゅもうなかにゃいわ。
 ねえ、にんげんしゃん。ありちゅ、みゃいごにゃの。
 みゃみゃはどこか、ちらにゃいかちら?」
赤ありすは、何とか泣き止むと、人間さんが自分の親や飼い主さんを知らないか、
聞いてみることにした。

「悪いが、お前の親のことなんか知らんよ。
 それよりここは俺の家だし、出て行ってくれるか。」

「にんげんしゃん、おねがいがあるにょ。ありちゅを一晩だけここにおいてにぇ。
 お外はくらくてこわいし、おにゃかもへったにょ。
 だかりゃ、せめてあかるいところにいたいにょ・・・。」
赤ありすは、せめてものお願い、一晩だけここにおいて欲しいと言う。

「うーん・・・。ちょっと待ってな。」
人間さんは、赤ありすにここで待つように言うと、お家の中へと戻ってしまった。

「ゆゆぅ・・・。」
まだ、冬さんではないが、風は冷たい。
すきっ腹では尚更だ。
せめて、ゆっくりとしたみゃみゃが一緒なら、どこでだって耐えられるだろう。
けど、そのみゃみゃもどこにいるか分からない。
これで、明るいところから追い出されたら、不安で死んでしまうかもしれない。

「おう、お待たせ。」
人間さんが戻ってきた。
手に何か持っている。

「ほら、これ食べていいぞ。」
人間さんが持ってきてくれたのは、お野菜とあまあまだ。
そんなに沢山ある訳ではないが、
赤ゆっくりのありすなら一、ニ食で食べきれる量ではない。

「ゆ、ゆわぁぁ!にんげんしゃん、これたべちぇいいにょ!?」
なんて優しい人間さんだろう。
まるで飼い主さんみたいだ。

「ああ、いいぞ。けどな・・・。」
ちょっと言いにくそうに、続ける。

「悪いけど、それはやるから、家からは出てってくれよな。
 やっぱり、庭にゆっくりとか置いとけないしさ。」

「ゆ、ゆぅぅ・・・。」
ごはんは、あげる。お家からは、でてけ。

「・・・わかっちゃわ。にんげんしゃん、ごはんさん、ありがちょう・・・。」
仕方がない。
ごはんをくれただけでも感謝しなければ。


赤ありすは、人間さんのお家を出て、再び暗い路上に戻ってきた。
どうしようか。
人間さんのお家が駄目では、いよいよ行く当てがない。
さすがに、何もない場所ですーやすーやすることはできない。
そんな季節ではないし、昨日まで暖かなお家で過ごしていた赤ありすには、
そんなの我慢できるはずがない。

びゅーん
「ゆゆぅっ・・・。かぜしゃん、ゆっくちしちぇね!
 ありちゅが、ちゃむいちゃむいだよ!」

せめて風だけでも凌げる場所はないかと見渡す。
道路の真ん中よりは、路地裏のほうがまだましなように見える。

「こんにゃの、とかいはじゃにゃいわ・・・。」

確かに路地裏は風が吹き込まない分、多少は過ごしやすい。
野良ゆっくり御用達のダンボールなどのゴミもあり、
なんとか赤ありすでも夜を過ごせるだろう。
しかし、その分汚い。
赤ありすにも、ダンボールなんかのゴミの隙間で過ごせば、過ごしやすいのは分かる。
だが、こんなゴミ溜めで一夜を明かすのは、本意ではない。

「ありちゅ、むーちゃむーちゃするよ・・・。」

とは言え、選択肢はない。
赤ありすは、手頃なダンボールの中に入ると、気を取り直して、
貰ったごはんを食べることにした。

「むーちゃむーちゃ、しあわちぇー・・・。」

もらったごはんは美味しい。
美味しいごはんを食べているのに、心からしあわせ―できない。
赤ありすにとっては初めての経験だった。
そんな風にして、赤ありすの一人ぼっちの夜は過ぎていった。




「ゆぅぅぅーん・・・。ありちゅ、ゆっくちおきりゅよ・・・。」

外はまだ、早朝といったところだろうか。
疲れていたが、寒さのせいか早くに目が覚めてしまった。
目が覚めても一匹。
みゃみゃが隣にいない。

「ぐすっ。ゆぅーん・・・。ありちゅ、なかにゃいよ!」

泣いてなどいる場合ではない。
早くお家に帰らなければ。
みゃみゃも、飼い主さんもどれだけ心配しているだろう。
と、赤ありすの仮設ダンボールハウスの外から声が聞こえる。

「ゆっへっへっ。にんげんさんたちが、起きてくる前にごちそうを手に入れるんだぜ!」

「にんげんさんは、馬鹿だね!ごちそうを捨てちゃうなんて!
 れいむがむーしゃむーしゃしてあげるよ!」

まりさとれいむだ。
この路地裏にゴミが多いのは、それもそのはず。
ゴミの集積場になっていたからだ。
二匹の狙いはその中でも、生ゴミの類だ。
マナーの悪い人間が、規則を破って前日あたりから捨てていった生ゴミを、
早朝のうちに漁るのが目的だ。

「ゆ!まりちゃ、れいみゅ、ゆっくちちていってにぇ!」
声を聞きつけて、ダンボールハウスの外に飛び出す赤ありす。
不安な一夜を明かした身には、同属の声が心底ゆっくりしたものに思えた。

「ゆっくりしていくんだぜ!」
「ゆっくりしていってね!」
ゆっくりしていってね、を返してくる二匹。
だが、
「ゆゆっ!ありすなのぜ!いまは狩りのさいちゅうなのぜ!
ありすにかまってるひまはないのぜ!」
「そうだよ!れいむたちは、いそがしいんだよ!じゃましないでね!」

一応ゆっくりしていってね、こそ交わしたが二匹はあまりゆっくりしていない。
赤ありすの相手をするつもりはなさそうだ。
心細い赤ありすは、何とか気を引こうと試みる。

「ゆん!まりちゃ、れいみゅ!ありちゅ、あまあまもっちぇるよ!
 あまあま分けてあげりゅから、ありちゅのおはなちきいてにぇ!」
貴重な食料を分け与えることを提案してしまう。

「ゆっくりしないであまあまさんよこすんだぜ!」
「かわいいれいむがあまあまさん、もらってあげるよ!」
間髪いれず、猛然と赤ありすの方へと方向転換する二匹。

「まっちぇね!ありちゅのおはなち、きいてからだよ!」
慌てて必死に押しとどめようとする赤ありす。

「なにいってるのぜ!どくのぜ」ばすん

「ゆぎゃぴぃぃぃ!いちゃいい!」ごろごろ

「ゆっふー!!ゲスちびが、れいむのあまあまとろうとするからだよ!」
「そうだぜ!腐れちびれいぱーが、なまいきなんだぜ!」
既に、二匹の頭の中では赤ありすのごはんは自分達の所有物になっている。

「ゆぅぅぅ!ぷんぷん!ありちゅ、ゲスでもれいぱーでもにゃいよ!
 ありちゅは、みゃみゃとおんなじ、とかいはにゃのよ!」
あまりに身勝手な上に、謂れのない罵倒をしてくる二匹に、怒り心頭の赤ありす。
しかし、ゲスゆっくりはそんなことに頓着しない。

「ちんこシューは、うるさいのぜ!
 れいむ!はやくかえって、あまあま、むーしゃむーしゃするんだぜ!」
「そうだね!汚ちびれいぱーなんか、かまってるひまないね。
 おうちですっきりーしようね!あたらしいおちびちゃんつくろうね!」
折角人間さんにもらったお野菜とあまあまを、全部持っていかれてしまった。

暫らくの間、あまりの事態に呆ける赤ありす。
我に返ると、
「ゆっ・・・。ゆんやーー!!どぼじでぇぇーーー!!
 ありぢゅのごはんさーーーーーんん!!かえしちぇ!かえしちぇよーー!!」
ぴょんぴょん
まりさとれいむが去っていった方へと一生懸命跳ねてゆく。
けれど、もう二匹の背中も見えない。
と、

ぶろろろろろろろぉぉぉぉぉ
「ゆんやーー!!ゆんやーーー!!みゃみゃ!みゃみゃぁぁーーー!!」

すぐ脇を自動車が走り抜けていったのに、驚きあんよを止めてしまった。
夢中で跳ね続けるうち、人も車も通りの激しい往来に出てしまっていたらしい。
ピンポン玉程度しかない赤ありすには危険すぎる場所だ。
しかし、戻ろうにも帰り道も分からない。
そもそも、元いた場所も赤ありすのお家ではない。
それに怖くて、何とか歩道の端に寄ったはいいが、そこから足が動かない。
車道の自動車はもとより、自転車も、行き交う人の足も、全てが赤ありすを襲う凶器だ。

ここはなんてゆっくりしていない場所だろう。
とかいはーな、お家とはまるで違う。
一晩経ったが、ゆっくりしたみゃみゃも、優しい飼い主さんも、
一向に迎えに来てくれない。
きっと、必死になってかわいいありちゅを探しているだろうけど、
このままではその前に永遠にゆっくりしてしまう。
ここは、ゆっくりの地獄だ。
そうに違いない。

がたがた、ぶるぶる、ゆんゆん

震えが止まらない。
恐怖と不安で押しつぶされてしまいそうだ。
生まれて初めての孤独と、過酷な街の環境が赤ありすの餡子脳を蝕む。

ちりんちりーん、しゃー
赤ありすの横10センチほどのところを、自転車が勢いよく走り抜ける。

「ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛」
恐怖のあまり、とうとう痙攣しだす赤ありす。


「ゆゆ!?おちびちゃんだいじょうぶ!?」
「ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛げげげぇぇぇ」

空吐きをはじめ、そのまま吐カスタードするかと思われたところで、
成体のまりさが、おちびちゃんに大急ぎで近づいてきた。

「しっかりしてね!ぺーろぺーろ!」
「ゆ・・・!ゆ・・・!ゆはー、ゆはー・・・。」
ぺーろぺーろ、すーりすーり

まりさは、赤ありすが落ち着くまで、ぺーろぺーろとすーりすーりを繰り返してやった。
長い時間をかけて、赤ありすも、やっと落ち着きを取り戻すことが出来た。

「おちびちゃん。
 なにがあったかわからないけど、ここはおちびちゃんひとりじゃあぶないよ!
 よければ、まりさのお家にくればいいよ!
 はなしはそこですればいいんだよ!」

このまりさは、おそらく野良なのだろう。
体のあちこちが汚れている。
一応ぺーろぺーろしたり、水浴びをしてはいるようだが、
赤ありすからすれば、やや汚れが目立つ。
お帽子にも傷が入っている。
しかし、自分を助けてくれた上、自分のお家に招いてくれている。
ゆっくりした、ゆっくりなのだろうか。
自分には行くあてもない。
それに、野良とは言っても先ほどのゲスゆっくりたちより、余程もましではないか。

「ゆーん・・・。ゆっ!まりちゃおねーしゃん。
 ありちゅ、おねーしゃんのおうちにおよばれすりゅわ!」

「ゆーん!よかったよ!それじゃ、おちびちゃんは、まりさのお帽子の上にのってね!」
「ゆゆっ!?いいにょ?」
「もちろんだよ!まりさのお帽子はとってもゆっくりできるんだよ!」
「ゆんしょ・・。ゆわわーー!ありちゅ、おそらをとんでるみちゃい!」
「ゆふふ!それじゃ、行くよ!おちないようにきをつけてね!」
ぴょーんぴょーん


まりさが、跳ねて辿り着いた場所は、広々とした空き地だった。
ぱっと見渡すだけでも、ゆっくりでは数え切れないゆっくりの姿が見える。
(具体的にここからは7匹見える。)

「ついたよ!ここは、まりさたちのゆっくりプレイスなんだよ!」
空き地の入口であんよを止め、赤ありすに語りかけるまりさ。

「ゆゆん?ゆっくちぷれいちゅ?」
ゆっくちぷれいちゅには、ちょっと見えない。
赤ありすの知るゆっくりプレイスといえば、飼い主さんのお家の一角に備え付けられた
みゃみゃと赤ありす、そして姉妹たちのゆっくりハウス。
安全にお外で遊べる上、他の飼いゆっくりとの交流を楽しめるゆっくりラン。
飼い主さんと一緒に、飼いゆっくりも同伴で
おいしいごはんをむーしゃむーしゃ、しあわちぇーできるゆっくりカフェ。
ここは、それらとはまったく趣が違う。
広々とした敷地に、むき出しの地面。
伸び放題の草。
無数のゆっくり。
無数のダンボールハウス。

赤ありすの感覚からはちょっと、とかいはとは言いがたい。
なのに、奇妙に赤ありすのゆっくり感を刺激する。

この空き地は、長い間、人が手入れをしていない。
広大な敷地に、背の高い草が茂っている。
元は何かの資材置き場にでもなっていたのか、土管や木箱などが放置され、
ダンボールハウスなどに混じってゆっくりのお家になっている。
背の高い草は、贅沢を言わなければ十分にゆっくりのごはんになる。
また、草むらには、多くの虫たちが生息している。
また、赤ありすは知らないが、近くには川があり、水場として、
餌場としてゆっくりの生活を支える一助となっている。
街の野良ゆっくりが生きていくにはこれ以上ない環境であり、
このプレイスのゆっくりたちは比較的ゆっくりできていたのである。

「ゆううーーん・・・。みんにゃゆっくちしてるのにぇ・・・。」
赤ありすは、そんな街ゆにしては恵まれた生活をしているゆっくりたちの、
自由闊達な姿にゆっくりを見出したのだろう。

「ゆふふ。おちびちゃんも、まりさたちのゆっくりプレイスがきにいったんだね!
 それじゃつぎは、まりさのお家にいこうね!」


何匹ものゆっくりとすれ違い、幾つかのお家を通り過ぎた先のダンボールハウスが、
まりさのお家だった。

「ここがまりさのお家だよ!ゆっくりしていってね!」

と、その時ダンボールハウスの中から一匹の子ゆっくりが飛び出してきた。
「ゆ!おとーしゃん、ゆっくりおかえりなのじぇ!」

子まりさだ。
まりさ種の例に漏れず、活発で明るい性格のようだ。

「むきゅ!おとーさま、おかえりなさい!」

もぞもぞと、ダンボールハウスから出てきたのは子ぱちゅりー。
ハウスから出てきた様子や、話し方からすると、
こちらもぱちゅりー種として一般的な特徴を持っているのだろう。

「ただいま、おちびちゃんたち!ゆっくりおるすばんできたかな?」
「ゆゆーん!まりさたち、ゆっくりおるすばんしてたんだじぇ!」
「むきゅ!おるすばんしてたわ!」

「ゆふふ!おちびちゃんたちは、ゆっくりいいこだね!
 そうだ!きょうは、おきゃくさんがいるよ!ゆっくりごあいさつしてね!」
そう言うと、お帽子の上の赤ありすを、優しく地面におろすと、そっと前に押しやった。

「ゆーん・・・。ゆぅぅぅ・・・。
 ゆん!ありちゅはありちゅよ!ゆっくりしていっちぇね!」
子ゆっくりたちの前に出てきた赤ありす。
ちょっと恥ずかしそうにもじもじとしていたが、意を決すると、
みゃみゃに教わったとおり、元気いっぱいにとかいはーなご挨拶をしてみた。

「ぱちぇはぱちぇよ!むっきゅりしていってね!」
「ゆ!まりさはまりさなのじぇ!ゆっくりしていってほしいのじぇ!」

よかった。みんなすっかり打ち解けてくれたようだ。
「ゆ!おそとはまだ、さむいさむいだよ!お家の中でみんなでゆっくりしようね!」
「「「ゆっくり(ち)りかいしたわ(のじぇ)」」」



「みんな、お家の中にはいったね!それじゃ、いりぐちさんをしめるよ!」
まりさは、おちびちゃんたちが全員おうちの中にいることをしっかり確認すると(3匹しかいないのが幸いだった)、
ダンボールハウスの一面を覆うブルーシートを下ろした。

「それじゃ、みんなでむーしゃむーしゃしようね!きょうはごちそうだよ!」
「ゆわーい!ごちそうなのじぇ!おとうしゃんは、狩りのめいじんなのじぇ!」
「むきゅきゅ!ごちそうがこんなに!おとーさま、ゆっくりありがとう!」
「ゆ!?ゆゆーん・・・。」

まりさが、赤ありすと出会ったのは、今日が生ゴミの収集日であり、
早朝から狩りに繰り出せば生ゴミにありつけることを知っていたからだった。
今日の収穫は上々だった。
おやさいや、夕飯の食べ残しと思われる比較的鮮度のよい残飯などが手に入った。
一家にとっては、何よりのごちそうだ。

それに対して、赤ありすは戸惑っていた。
ごちそうというが、赤ありすからしてみれば、やっぱりゴミのように見えていた。
食べられなくはなさそうだが、ごちそうではないし、口にするのもやや躊躇われる。
それに、一家のごはんであって、お招きされているとは言え、
赤ありすが勝手に口をつけていいものだろうか。
そんな、赤ありすの心中を察したのだろうか、まりさが声をかけてくる。

「ゆ!えんりょしなくてもいいんだよ。
 おちびちゃんもむーしゃむーしゃしてね!
  • ・・もしかすると、おちびちゃんのくちにはあわないかもしれないけど、
 いっぱいむーしゃむーしゃしないとゆっくりできなくなっちゃうよ!」

「ゆん!ありがちょう、まりちゃおねーしゃん!
 ありちゅ、むーちゃむーちゃすりゅわ!」
むーちゃむーちゃ

「むーちゃむーちゃ、ちちち、ちあわちぇーー!!」
どうしたことだろう。
まるでゴミのようで全然ごちそうには見えないのに。
昨日の夜、食べたごはんのほうがおいしかったはずなのに。
いつも食べているごはんのほうが、とかいはーなはずなのに。
なのに、このごはんはみゃみゃと一緒にむーちゃむーちゃするごはんみたいに、
しあわせーな味がする。

「ゆっへん!まりさのおとーしゃんは、狩りのめいじんなのじぇ!」
「むきゅん!ありすもお口にあったようね!よかったわ!」
「ゆんゆん!おちびちゃんが、しあわせーしてくれてよかったよ!」

「ゆーん!ごはんさん、とってもとかいはにぇ!」
何だか、ゆっくりした一家に囲まれていると、ますます、
むーちゃむーちゃがしあわちぇーになってくるようだ。
不思議だが、赤ありすは、久しぶりにゆっくりした気分でむーちゃむーちゃが出来た。




「・・・おちびちゃん。おちびちゃんは、どうしてあんなところでひとりでいたの?
 おちびちゃんのおかーさんはどうしたの?
 まりさにおしえてほしいよ。」
食事を終え、皆でゆっくりしていると、まりさが切り出した。

「ゆゆぅぅ・・・。ありちゅ、まいごになったみたいにゃの。
 みゃみゃと、いみょーちょたちと、ゆっくりハウスですーやすーやしてたら、
 ありちゅだけしらないばしょにいたにょ・・・。
 きっとみゃみゃも、飼い主さんもしんぱいしちぇるわ・・・。」
それから、人間さんのお家で宿を借りようとしたこと。
ごはんをもらい、代わりに、人間さんのお家からは追い出されたこと。
もらったごはんを、ゲスゆに奪われたこと。
いつのまにか、ゆっくり地獄にいたこと。
赤ありすは、みゃみゃと離れ離れになってから自分に何が起きたか、
非常に分かり辛く説明してくれた。

「ゆーん・・・。」
やっぱり、この子は飼いゆっくりだったんだね・・・。

まりさには、ある程度の予想がついていた。
赤ありすは、野良の子にしては、身奇麗過ぎる。
それと、ごちそうを前にして喜ぶどころか、戸惑ってさえいたようだ。
飼いゆっくりは、ごちそうばかり食べていて、
自分達の「ごちそう」はごちそうではないのだ。
そのせいで、赤ありすが生ゴミを食べられるか心配したが、そちらは杞憂だったようだ。
あとは、まりさが、赤ありすに出会った場所だ。
この辺りの野良ゆは、この空き地と周辺が豊富な餌場であるため、
あまり危険なゴミ漁りをしなくて済む。
自分のように特別なごちそうを求めて、安全な早朝に出かけるものもいるが、
それは少数派だ。
まして、赤ありすのような、幼いゆっくりを危険な場所に連れて行く必要がない。
なのに、赤ありすはそこにいた。
心当たりがある。
捨てられた飼いゆっくりだ。
最近はあまり聞かないが、このゆっくりプレイスの野良ゆたちにも、
数世代前の祖先が飼いゆっくりの捨てられゆっくりというものがいる。
そして、まりさと赤ありすが出会った所から少し離れた街はずれは、
飼いゆっくりの捨てられプレイスとして有名だったのだ。
運良く、このゆっくりプレイスに辿り着き、
そのまま野良ゆとして生きたものも多かったそうだ。
この赤ありすも、きっとそうなのだろう。


「むきゅん!すごいわ、ありすは飼いゆっくりなのね!」
「ゆああ!ありすのおはなし、ききたいのじぇ!あまあまいっぱいなのじぇ?」
「ゆふーん!ありちゅとみゃみゃと、いもーちょたちはにぇ・・・。」


おちびちゃんたちは、赤ありすの飼いゆっくり生活に興味津々のようだ。
おちびちゃんたちは、仲良くやっていけそうだね。
みんな、ゆっくりした子たちで良かった。
しかし、この子をどうすればいいだろう。
この子の言うように、飼い主さんたちが探しているということはないだろう。
きっと、その飼い主さんが赤ありすを捨てたのだろうから。
やはり、この子も野良として生きていくしかないだろう。
いくら、住みよいゆっくりプレイスとは言え、赤ゆ一匹で生活するのは無理が過ぎる。
正直に言えば、自分が引き取って育ててもいい。
自分で言うのもなんだが、まりさは狩りの名人だ。
草さん、虫さん。
それに、人間さんの畑の廃棄やさいさんや、
生ゴミさんも採ってこれる、特別優秀なゆっくりだ。
番であるぱちぇが永遠にゆっくりしてしまい、当分は新たな番を求める気もない。
赤ありす一匹分の食い扶持が増える程度、どうと言うことはない。
だが、今すぐ赤ありすに、自身が捨てられたであろうことを告げるのは
余計な混乱の元だろう。
今の赤ありすに必要なのは、お家とむーしゃむーしゃだ。


「ゆ!おちびちゃん!よくきいてね!」
赤ありすへと語りかける。

「おちびちゃんはまだちいさいから、ひとりだけじゃ狩りもできないよ!
 狩りができなければ、むーしゃむーしゃもできないし、
 お家がなければ、さむいさむいだよ!
 だから、もしよかったら、飼い主さんたちがおちびちゃんを迎えにくるまで、
 まりさたちのお家でゆっくりしていってね!」

「ゆゆーん・・・。でも、そんにゃのわるいわ・・。
 ありちゅ、ごめいわくじゃないかちら・・・?」

「しんぱいないのじぇ!ありすもゆっくりしていくのじぇ!」
「むきゅむきゅ!ぱちぇもありすのおはなし、もっとききたいわ!」
「ゆっ!?ゆゆ?」

「ゆふん!きまりだね!おちびちゃんも、まりさのお家にいるあいだは、
 まりさのおちびちゃんだよ!
 まりさのことは、おとーさんってよんでね!
 ぱちゅりーも、まりさもきょうからおねえちゃんだよ!
 いもーとのめんどうをきちんとみるんだよ!」
「むきゅきゅ!わかったわ。よろしくね、ありす!」
「きょうから、まりさがおねーちゃんなんだじぇ!ありすはいもーとなんだじぇ!」
「ゆゆ!?おねーちゃん・・・?」
「「おねーちゃんよ(だじぇ)!」」
「ぱちゅりーおねーちゃん・・・。まりしゃおねーちゃん・・・。」

「ゆふふ!そうだよ!ありすのおねーちゃんたちだよ!
 それじゃ、あらためてみんなでごあいさつしようね!せーのっ!」

「「「「ゆっくりしていってね!!!!」」」」



その日から4匹での生活がはじまった。
子ゆっくりたちは、ゆんゆん追いかけっこしたり、
のーびのーびしたり、こーろこーろしたり、すぐに家族として馴染んでしまった。
まりさも今まで以上に、狩りに、子育てにがんばった。
片親だというのに、そんなことは微塵も感じさせない、100点満点の父まりさ振りだ。
まりさの採ってきたごはんは、街野良にしては、質・量ともに素晴らしいものだった。
最初こそ、まりさの採ってくるごはんに戸惑いのあった赤ありすも、
しばらくするとすっかり抵抗がなくなり、
「おとーしゃんのとってくるごはんさんはとってもとかいはにぇ!」
と大喜びだ。
にぎやかなむーしゃむーしゃの後は、一家のゆっくりタイムだ。
特に、夜むーしゃむーしゃのあとは、みんなで一日の報告をしたり、
明日はどんな遊びをするか話したり、すーりすーりしたり、
ぺーろぺーろしたりしてはしゃぎっぱなしだ。
そんな子ゆっくりたちは、なかなかすーやすーやしようとせず、まりさを困らせる。
けれど、遊び疲れているせいだろう、元気に騒いでいたかと思うと、
いつしか一塊になってすーやすーやしているのが常だった。

まりさは、赤ありすが時どき一人で
「ゆーん・・・。おむかえ、まだかちら・・・。」
と寂しそうに呟いていることを知っていた。

だが、そんな時には、すぐに姉妹が寄ってきて、
「どうしたのじぇ!?げんきだすのじぇ!ぺーろぺーろ!」
「むきゅ!?ぽんぽんいたいのかしら?
 これがなによりのおくすりよ!すーりすーり!」
「ゆああ!?おねーちゃんたちったら、しんぱいしょうにぇ!
 ありちゅは、とかいはなにょよ!」
と、すぐに寂しさを吹き飛ばしてくれていた。
そんな様子を眺めながらまりさは思う。

まりさのおちびちゃんたちは、みんなゆっくりしてるね・・・。
まりさも、とってもゆっくりできるよ。
おちびちゃんたちのために、まりさ、あしたからもがんばるよ・・・。

一家の大黒柱として、明日からも狩りに子育てに一生懸命がんばろうと誓うまりさ。
一家は幸せだった。




日中、まりさが不在のときでも子ゆっくりたちは巣の外で遊びまわっている。
この空き地にいる限りは、人間さんはほとんどやってこないし、
何かあっても他の大人ゆっくりが助けてくれる。
確かにここには、野良なりのコミュニティが確立しているのだった。

「ゆ!まりさのところのおちびちゃんたちだね!」
「ゆゆ?見かけない子だね!ゆゆ!?まりさのあたらしいおちびちゃん!?
 そうだったんだ!ゆっくりよろしくね!」
「みょ!?そっちはあぶないんだみょん!あそぶなら、あっちであそぶみょん!」
「ゆゆ!どうしたの、おちびちゃんたち?ゆ・・・。そうなんだ・・・。
 よかったら、れいむたちのおうたをきいて元気だしてね!」
「おちびちゃんたち、どろだらけなんだねー。わかるよー!
 こっちにきれいな水たまりがあるから、いっしょにごーしごーししようねー!」
「ゆっへっへ!おちびちゃんたち、狩りのれんしゅうなんだぜ?
 だったらばったさんは、こうとるんだぜ!(ぱしっ)
 さあ、おちびちゃんたちもやってみるんだぜ!」
「ありすが、とかいはてくにっくを・・・。
 おちびちゃんたちには、まだはやいわね・・・。
 かわりに、とかいはこーでぃねーとをおしえてあげるわ!」

子ぱちゅりーと子まりさは既にコミュニティに馴染んでいたし、
赤ありすがそこに加わっても誰も不思議とは思わなかった。
賢い個体は、様々な理由から親なしゆっくりが出ることを理解しているし、
このゆっくりプレイスで生きる限りそんな子ゆっくりを他の家族が引き取り、
養ゆんにすることもままあることだからだ。
そして賢くない個体は、ぱちゅりー、まりさ、ありすという姉妹構成に疑問すら抱かない。
それどころか、一家に子ありすが加わったことに気づきもしないゆんもざらである。
こんな風にして、一家はコミュニティのゆっくりともうまくやっていた。


ある日、三匹が他の子ゆっくりたちと遊んでいるときのこと。
ふとした会話の流れから、赤ありすが飼いゆっくりであることが話題になった。
何匹かの子ゆっくりたちは、既にこのことを知っており、
まりさや姉妹も特にこのことを隠そうとはしていなかった。

「ゆ!?ゆゆゆゆゆ!!?」
「わわわ・・・!!?わがらにゃいよぉぉぉーーー!!!」
「まりさは、にげるんだじぇ!こーそこーそ!」

一緒に遊んでいたうちの数匹のゆっくりが急に震えだしたり、
叫びだしたかと思うと蜘蛛の子を散らすように逃げ出してしまった。

「むきゅ?」
「みんな、どうしたんだじぇ?」
「にゃんだかとかいはじゃにゃいわ・・・。」
姉妹達はもとより、

「わからないよー・・・。みんな、どうしちゃったのー・・・?」
「れいむ、みんなをおこらせちゃったの・・・?」
「みょみょ?みょんには、なにがおきたかわからないみょん・・・?」
姉妹と特に仲が良い子ちぇんや、一緒に遊んでいた子れいむや子みょんにも
何が起きたかまるで理解できず、ちぇんならずともわからないよ―と、なってしまった。

気を取り直して、残った皆でゆっくりしようとすると、
凄い勢いで大人ゆっくりたちが近づいてきた。

「ごくあくひどうの飼いゆっくりのありすはゆっくりしね!」ばすん
「ゆびゅ!?」ごろごろ

「みんなのかたきだみょん!」さくっ
「ゆぴぴ!?」たらー

「飼いゆっくりでも、にんげんさんと離れ離れならこわくないんだぜ!
 いままでのうらみをおかえしするんだぜ!」
「ちぇんたちは、おこってるんだよー!!わかってねー!!」

慌てて姉妹や、友達ゆっくりが間に割って入った。
「むきゅーー!ちょっとまって!」
「まりさのいもーとになにするんだじぇ!」
「わからないよー!ありすはわるいことなんかしてないよー!」

子ありすが乱暴される理由がないことを説明し、大人ゆっくりにぷくーしている。
騒ぎを聞きつけて、周辺のゆっくりも大勢集まってきた。

「どうしたの?ゆっくりしてないよ?」
「ぷくーなんかして、どうしたんだぜ?」
「むきゅ!なにがあったか説明してちょうだい。」
「おちびちゃんはケガをしてるんだね?わかるよー!」
「こんな小さい子にらんぼうはよくないみょん!」

殺気立っているゆっくりたちを非難し、傷ついた子ありすを介抱しはじめる。

「じゃましないでね!そのくされちびれいぱーは、飼いゆっくりなんだよ!」
「そうだぜ!でも、人間さんと離れ離れのまよい飼いゆっくりだから、いまがチャンスなのぜ!
 みんなで、せいっさいっするのぜ!」
「飼いゆっくりは、ゆっくりできないよー!わかってねー!!」

子ありすが、飼いゆっくりであることを説明する大人ゆっくりたち。
「ゆ!?ゆゆ?飼いゆっくり・・・?」
「わぎゃらないよーー!!?飼いゆっぐじはゆっぐりできないよーー!!」
「飼いゆっくりは、みんなをいじめるわるいやつだみょん!
 みょんがせいっばいっするみょん!」
集まってきたゆっくりたちにも、子ありすせいっさいっに流れるものが出てきた。
一方で、
「まちなさい!その子は飼いゆっくりかもしれないけれど、
 その子がみんなをきずつけたわけじゃないでしょう!むきゅん!」
「そうよ!なにもわるいことをしていないおちびちゃんをいじめるなんて、
 とかいはじゃないわ!」
「飼いゆっくりだからって、みんなひどいよー!わからないよー!」
「それにそのありすは、バッジをつけてないんだぜ!
 飼いゆっくりだなんてなにかのまちがいなんだぜ!」
子ありすを、庇うゆっくり達とに分かれて、言い争いを始めた。

「むきゅう・・・。」
「まりさがいもーとをまもるんだぜ・・・。」
「・・・・・。」
姉妹は、そんな殺気だった大勢のゆっくりたちに囲まれて生きた心地もしない。
そこへ、まりさが駆けつけた。
狩りから帰ったところで、騒ぎを聞きつけてきたのだ。

「まってね!おちびちゃんは、なにもわるくないよ!
 おちびちゃんをいじめるなら、まりさがあいてだよ!!」ぷくー

コミュニティでもまりさは狩りの名人にして、名うての猛者として知られている。
そのまりさのぷくーは、先ほどの子ゆっくりたちのぷくーはおろか、
並みの大人ゆっくりの及ぶところではなかった。

「ゆゆ!?きょうのところはこれでゆるしてやるんだぜ!」
「わからないよー!ちぇんたちは、げすをせいっさいっしようとしただけだよー!」
「れいむは、しんぐるまざーなんだよ!」
もともと、子ありすを庇うゆっくりのほうが優勢だったところに、これは決定的だった。
子ありすをせいっさいっしようとしていた大人ゆっくりたちは、
皆一目散に逃げ出してしまった。

「ゆ!?おちびちゃんたち、だいじょうぶ!?ゆゆゆ!!ありすがけがをしてるよ!?
 ぱちゅりー!おいしゃさまのぱちゅりーはいる!?」

呼びかけに応えて進み出てきたのは、一匹のぱちゅりーだ。
ゆっくりのおいしゃさまをしている。
「むきゅん!だいじょうぶよ!すぐにしんさつするわ!
 ぱちぇのお家までたんかではこんでちょうだい!」

そういって出されたのは大きな葉っぱだ。
これに赤ありすを乗せて運べというのだろう。

「ゆ!わかったよ!みんなもてつだってね!」
「みょんにまかせるみょん!」
「ちぇんもてつだうんだよー!」

まりさが、集まってきたゆっくりたちに助けを求めると
すぐに数匹のゆっくりが名乗り出た。
赤ありすを葉っぱの真ん中に乗せると、ゆっくりたちは四隅を咥え、
ゆんせと移動を始めた。

「ゆぐぅぅ・・。いちゃい・・・。いちゃいよぉぉぉ・・・。」
れいむから体当たりを受けた上、みょんに木の棒で顔を裂かれた赤ありすは、
その間も担架の上で呻き苦しんでいた。

「ついたよ!ゆっくりたんかをおろしてね!」
「「「ゆんしょ」」」

赤ありすは、ぱちゅりーのお家である木箱の中央に下ろされ、
ここまで担架を運んできたゆっくりたちも、家族を除いて帰された。

「むきゅぅぅぅ・・・。そうね、このくらいの傷ならすぐに治るわ。
 ぱちぇ特製のおくすりを塗っておけばあんしんよ!」ぬーりぬーり

「ゆぅぅぅ・・・。よかったよ・・・。」
「むきゅん!さすがおいしゃさまのぱちゅおねーさんね!」
「ありすが助かってよかったのじぇ!」

赤ありすの具合が、大事無いことを聞き一安心する。
当の赤ありすは余程疲れたのか、いつの間にかすーやすーやしている。
もしかすると、気絶したのかもしれない。
だが、出餡も止まり、おいしゃさまのぱちゅりーの言うとおり容態は悪くなさそうだ。
ぱちゅりーの許しを得て、子ありすをお家に連れて帰ることにした一家。
すーやすーやの邪魔にならぬよう、傷に障らぬよう、まるで宝物でも扱うかのように、
まりさは、そーっと赤ありすをお帽子に載せる

「ありがとう、ぱちゅりー!また、あらためておれいにくるよ!」
「むきゅ!あまり気にしないでね!
 ぱちぇは、おいしゃさまとして、とうぜんのことをしたまでよ!」

ぱちゅりーにお礼を言いお家を後にする。
しばらく、そーっとそーっと進みやっと自分達のお家に着く。

「きょうは、みんなつかれちゃったね・・・。
 ありすも、ケガをしてすーやすーやしてるし・・。
 ちょっとはやいけど、夜むーしゃむーしゃして、しずかにゆっくりしようね。」

赤ありすを寝かせつつ、むーしゃむーしゃの準備をするまりさ。

どかっ「ゆ!?」
まりさたちの素敵なダンボールハウスに何かがぶつかったようだ。
慌ててお家から出て、何かがぶつかったと思われる裏側に回りこむ。
お家の裏側には、小ぶりな石が落ちていた。
いしさんが勝手にぶつかってきたのだろうか?
いや、まりさの経験上、何者かがいしさんをぶつけてきたと考えるのが妥当だ。

「まりさのお家にいしさんをぶつけたのはだれなの!?
 ゆっくりしないででてきてね!」

まりさの声が辺りに響く。
が、誰かが出てくるどころか、物音一つしない。

「ゆゆぅ・・・?」

やはりいしさんが勝手にぶつかってきたのだろうか?
まあいい。赤ありすのことが心配だ。
とりあえず、ゆっくりできないいしさんを投げ捨てて、お家の中に戻ろう。

幸い今の騒ぎにも、赤ありすは目覚める素振りもない。

「おとーさま、なんのおとだったの?」
子ぱちゅりーが尋ねてくる。

「ゆーん・・・。いしさんがお家にぶつかってきたみたいだよ。」

「ゆゆ!?まりさたちのお家にぶつかってくるなんて、
 ゆっくりしってないいしさんだじぇ!」

「ほんとだね!でも、もうだいじょうぶだよ!
 まりさが、いしさんをやっつけてきたからね!」

「むきゅーん!」
「ゆゆーん!」
「「さすが、ぱちぇ(まりさ)のおとーさま(さん)だわ(だじぇ)」」

一家は気を取り直して、むーしゃむーしゃを済ませると、
いつももより早めにすーやすーやすることにした。

「ゆーん・・・。」
「ゆぴー。」
「むきゅー、むきゅー。」
「すーやすーや。」

しばらくして、一家が眠りについていると、
どかっ
「・・・ゆゆぅ・・!」

再びお家に何かが当たったようだ。
「ゆええーん!ゆーん、ゆーん!ゆぴぃぃぃーーーー!」
「なんなのじぇ・・・?なんのおとなのじぇ・・・?」
「むきゅー・・・。ありす、おちついてね・・・。」

おちびちゃんたちも今の物音で目を覚ましてしまった。
特に赤ありすは、傷の痛みのせいか、眠いところを起こされたせいか、
かなり激しくぐずついている。
「おちびちゃん、おちついてね・・・。ぺーろぺーろ。」
「おねーちゃんたちがついてるわ・・・。すーりすーり。」
「まりさたちがついてるのじぇ。あんしんしてすーやすーやするのじぇ。」

「ゆ・・・?ゆゆぅ・・・。・・・ゆぴー、ゆぴー・・。」

もともと眠かったことと、まりさたちが必死にあやしたおかげもあり、
赤ありすは泣き止むと、再び穏やかにすーやすーやし始めた。

「ゆゆぅ・・・!もうゆるせないよ!
 こんどもいしさんのしわざだったら、まりさほんきでおこるよ!」
赤ありすを寝かしつけ、まりさはお家の裏に回り込む。
そこには先ほどと同じように、石が落ちていた。

「ゆっくりできないいしさんに、せいっさいっするよ!」
びょーん、がすっ

まりさは高く跳びあがると、その勢いのまま石の上に落ちてくる。
「ゆぐっ!」
まりさのあんよにも、痛みが走るが構わず二度三度と繰り返す。
止めにいしさんを口にくわえたかと思うと、本気で吹き飛ばす。
いしさんは、哀れ、遠くの草むらに落ちていった。

「ゆっふー!いしさんは、これにこりたら二度とまりさのお家にこないでね!」

勝ち誇るまりさは、お家に戻ると子ぱちゅりーと、子まりさに高らかに勝利宣言をする。

しかし、一家はこの夜だけで、さらに三回もいしさんの訪問を受けることになる。




そして、迎えた翌朝。

「ゆー・・・。」

眠い。
少し眠ったと思ったら、いしさんがお家にぶつかってくる。
おかげで、一家全員寝不足だ。
それに、昨日の赤ありすの一件で話もしなければなるまい。

まったく、朝から気がおもいよ・・・。

まずは、朝むーしゃむーしゃを済ませる。
いつもなら、しあわせー、の声が絶えない賑やかな食卓(まりさ一家は葉っぱてーぶる)だが、
今日ばかりは元気がない。
もーそもーそと食事を終えると、本題に入る。

「ねえ、おちびちゃんたち。」
「むきゅう・・・。」
「なんだじぇ・・・?」
「なにかちら・・・?」

「きのう、おちびちゃんたちがわるいゆっくりにおそわれたよ・・・。
 そのことで、はなしがあるんだよ。」

寝不足で辛そうな姉妹の顔色がさらに悪くなった気がする。
当然だろう。
暴力を受け、怪我を負わされた赤ありすはもとより、
三匹とも殺気立つ大人ゆっくりに囲まれるという経験をしたのだ。
心楽しい話題であるはずがない。

「ぱちゅりーとまりさはしってるよね?
 さいきん、わるい飼いゆっくりが、このプレイスのゆっくりをいじめてるんだよ。
 ひどいケガをさせられたり、永遠にゆっくりしちゃった子もいるよ。」

子ぱちゅりーと子まりさは、真剣な顔で聞き入っているものの、
既知のことであり特に動揺は見られない。

「ゆっ・・・!?ゆゆぅ!?」

それに比べ赤ありすは動揺が激しい。
他の姉妹に比べ幼いこと、この件が初耳であることを差引いても、
赤ありす自身が飼いゆっくりなのだ。
少なくとも、赤ありすは自分を飼いゆっくりだと認知している。
動揺が激しいことも無理はない。
見ていて痛々しいほどだ。

「そんにゃ・・・。ほんとなにょ!?
 ほんとに、飼いゆっくりが、そんにゃひどいことをしたにょ!?」
「ゆ・・・。ほんとうだよ。銀いろのばっじをつけていたよ。
 それにあんな美ゆっくり見たことないよ・・・。
 まちがいなく飼いゆっくりだよ・・・。」

赤ありすが動揺するのには、幾つもの理由がある。
まず、どうやら自分が飼いゆっくりであることで
一家をゆっくりできないことに巻き込んでしまったということ。
そして、自分と同じ飼いゆっくりが、野良のゆっくりに無法を働いていること。
ここまでは、餡子脳のまりさでもある程度、察することができた。
ここからは、まりさも与り知らぬことだが、
赤ありすは、銀バッジゆっくりである母ありすから、
飼いゆっくりであるということは、良いゆっくりである証明だと教わっていた。
飼いゆっくりは特別なゆっくり。
ゆっくりだけでなく人間さんともゆっくりできるゆっくり。
大好きな母から聞いた飼いゆっくりは、赤ありすの理想そのものだった。

その飼いゆっくりが、そんな酷いことを!?そんな馬鹿な!

「おちついてね!ありすにはかんけいないんだよ。
 プレイスのみんなを酷い目にあわせたのはありすじゃないよ!
 なのにありすに酷いことをするなんてゆっくりしてないよ!」
「むきゅん!ありすはわるい飼いゆっくりじゃないわ!」
「まりさのいもーとは、とーってもゆっくりしてるんだじぇ!」

一家は誰も赤ありすを責めない。
けれど、それがまた赤ありすの負担にもなる。

「ゆーん・・・。」

落ち込む赤ありす。
「だいじょうぶだよ!きのうだって、みんなありすをたすけてくれたよ!」

ゆっくりプレイスに集まるゆっくりたちは、街中で生き残るだけあって
比較的賢く善良な個体が多い。
それが、不幸中の幸いだったのだろう。
赤ありすをに暴力を振るったゆっくりもいたが、多くのゆっくりは赤ありすを庇ってくれた。

「そうよ!みんなありすのみかたよ!げんきをだすのよ!むきゅ!」
「ちぇんたちも、ぱちゅりーおねーしゃんたちもありすのみかたなのじぇ!」

姉妹と仲の良い子ちぇんたちや、おいしゃさまのぱちゅりーおねーしゃん。
赤ありすを担架で運んでくれたゆっくりたち。
赤ありすを襲ったゆっくりたちから、姉妹を守ってくれた大人ゆっくりたち。
そしてまりさ一家。
赤ありすの周りには、ゆっくりしたゆっくりでいっぱいではないか!

「ゆ!ありちゅ、げんきになったわ!だって、とかいはだもにょ!」
「むきゅきゅ!そうよ、ありすはとかいはですものね!」
「そうだじぇ!はやくケガもなおして、みんなでこーろこーろするのじぇ!」

良かった!おちびちゃんが元気になってくれたよ!

「ゆ!おちびちゃんたち!きのうみたいなことが、またあるかもしれないよ。
 ありすが飼いゆっくりなのは、これからはないしょだよ。
 ゆっくりしてないかもしれないけど、ゆっくりりかいしてね。」

「「「ゆっくりりかいしたよ!!!」」」



聞き分けの良いおいびちゃんたちで良かった。
自分が飼いゆっくりであることを隠さなくてはならないということ。
それは自分を飼いゆっくりだと思っている赤ありすにしてみれば、
あまりゆっくりしているとは言えないだろう。
既に赤ありすが、飼いゆっくりであるということは知れ渡っているだろう。
けれど、こんな状況でこれ以上、いらぬ刺激を与える必要もない。
赤ありすは飼いゆっくりである。
このことは、口にしないほうがゆっくりできるだろう。

それにしても、自分の思っている以上に飼いゆっくりへの憎しみは強いようだ。
昨日、赤ありすを襲った面々を思い出しても、
取り立ててゲスや頭の悪い連中ではなかったはずだ。
きっと家族や友ゆっくり、親しいゆっくりを酷い目にあわされたのだろう。
それにしても・・・と、まりさは思う。
今問題になっているのは、プレイスのゆっくりたちを襲う飼いゆっくりへの憎しみや、
怒りが赤ありすにも向けられていることだ。

だが、まりさは知っている。
赤ありすは、飼いゆっくりではない。
おそらくは元飼いゆっくり、捨てられゆっくりと言うのが正解だろう。
要は自分達、『野良』と呼ばれる存在と同じ境遇なのだ。
にも関わらず、赤ありすにはその自覚がない。
未だに自分のことを飼いゆっくりだと信じて疑わない。
いつか、きっと近いうちに母ゆっくりや飼い主さんが迎えに来てくれる。
そう信じているのだ。
そう信じているからこそ、心の平衡を保っていられる。
まりさの考えでは、長い時を一家と共に過ごすことで信頼を育み、
その後に真実を打ち明ければいいと思っていた。
そして、それはうまくいっている筈だった。
いや、今でもうまくいっているだろう。
ただ、今回の問題を解決するにはまりさが一言、
赤ありすが飼いゆっくりではないことを宣言すればいいだけなのだ。
それをするのはいい。
だが、そうしたら最後、赤ありすはどれほどのショックを受けるだろう。
まだ、子ゆっくりにすらなっていない幼子なのだ。
ショックのあまり、大きく体調を崩す要因になりはしないだろうか。
それに、一家やゆっくりプレイスの面々ともうまくやっているとは言え、
今の時点で赤ありすの親ゆっくりや、飼い主さんの代わりの
精神的支えになりうるだろうか。
答えは否だ。
少なくとも、まりさはそう考えている。
それに、真実を告げたとき、赤ありすはそれを信じるだろうか。
無二の心の拠所を否定されたとき、
それを否定したまりさへの信頼が崩壊するだけではないだろうか。
そうなれば一家と共に暮らすことは不可能だろう。
それどころか、プレイスのゆっくりたちへの不信感へも
容易く転化されはしないだろうか。
その結果、プレイスを出て、最初に出会ったときのように
死の危険に直面するのではないか。
なんにしろ、赤ありすが辿る道が好ましいものになるとは思えない。
だから、まりさには真実を語ることが出来ない。

それに、折角できた新しい家族。
かわいいおちびちゃん。
その赤ありすに嫌われるかもしれないと考えること。
それは、まりさにとっても耐え難い苦痛だった。


まりさの、頭の中を人間さん風に整理すればこうなる。
勿論、まりさの思考はここまで整理されてはいない。

ゆゆぅ・・・。
ありすが、飼いゆっくりじゃないって教えてあげれば、
飼いゆっくりが嫌いなみんなももうおこらないね!
けど、それじゃ、ありすがショックを受けちゃうし、
まりさたち嫌われちゃうかもしれないよ・・・。
ゆー・・・。
困ったね・・・。
といった感じだ。


どうするにせよ今の時点では、自分にはこれ以上できることはなさそうだ。
あとは、みんなの反応を見て対処していくしかないだろう。


みんなゆっくりできるといいね・・・。
おちびちゃんたちと、自分と、家族みんなでゆっくりしていきたい。
まりさの、素朴で切実な願いは、ゆっくりの神様に届くだろうか?


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感想

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  • 赤ありすの境遇や、飼いゆからの襲撃、まだ謎だらけだ。気になる。
    それにこの野良グループにはリーダーがいないのか?
    発言力や決定権のあるリーダーが居ればイザコザが減ると思うが、
    お互いの親切心に頼る運営ではいつかグループ崩壊するぞ。

    知性ある生物なら「無罪の推定(=推定無罪)」を第一に考えなきゃいけないけど、
    こういう「推定有罪(本来は造語)」な考えを持つ人って多いよな。
    マスコミも多いけど、一般人も「推定有罪信者(笑)」が割といるから怖い。
    最近のいじめは「物的証拠を残さない」「推定有罪で周りを固める」「悪魔の証明で逃げ道を無くす」のトリプルプレーで攻めてくるから辛かった。 -- 2018-02-05 02:40:05
最終更新:2009年12月18日 21:29
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