ふたば系ゆっくりいじめ 790 ユクミン 前

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パロディ 希少種 自然界 ギャグ?パロディという名の・・・





私の名前はキャプテン・オリバー。
シャチホコ星出身の雇われ宇宙船パイロットだ!
背がちょっぴり低い(60cmくらい?)のが悩みのナイスガイさ!!
まあ私の星の人間は大体そんなものらしいがね!!


まあそれは置いといて。
早速だが私がかつて出会った、ある星に生きる不思議な生物との出会いを君達には見て貰おうと思う。

それなりに長いので時間は掛かるが、最後まで付き合ってくれるならばこれほど嬉しいことはない。

では、ゆっくりしていってくれたまえ!!!











○月×日、墜落した日。~脱出計画開始~


まいった。困ったことになってしまった。
まさか私としたことが、小隕石の接近に気が付かずに接触してしまうとは。
止むを得ず見知らぬ星に不時着したが、愛船のシャーク号もボロボロになってしまった。
久しぶりに取れた休暇。せっかくのバカンスだというのに、台無しだ。

まあこのまま腐っていても仕方がない。というか、それどころではない。
どうやらこの星中にシャーク号の部品が散らばってしまったみたいだ。
幸いこの周囲だけならシャーク号である程度移動できる。

どうやらここは地形的にも安定していて危険な生物もいないようだ。
ここを拠点にして部品を回収し、機能を増やして行動範囲を広げていこう。
まさか非常用の探知機が役に立つ日が来るとは思わなかった。

そして大きな問題が一つ。この星は私が生きていくには辛すぎる環境なのだ。
防護スーツの生命維持装置が働くのは一ヶ月ほど・・・それまでに船を直して脱出しなければ。




~脱出計画二日目~


早速近くに反応があった部品を回収に来た。
それにしても、無くなった部品には大型の物も多い。
一人では回収に手こずるかもしれない。誰か協力者でもいれば・・・

そんなことを考えていると、目の前にピコピコ動く、芽のような物を見つけた。

なんだこれは・・・?
普通に考えれば植物の目だが、明らかに意思を持ったようにピコピコ動いている。

―――怪しい。誰がどう考えたって、ロクな物じゃない。

ただでさえ警戒すべき未開の地。こんな得体の知れない物に気安く接触すべきではない。
至極当然の結論を出した私は、そのまま動く芽を無視してそばを通り過ぎようとした。
すると―――

「ゆっくりしていってね!!!」

勢い良く、芽があった場所から何かが飛び出してきた。
黒い髪に大きな赤いリボンをつけた、20センチ弱の・・・生首!?

「あっ!ゆっくりしていってよー!!」
生首の制止の声も振り切って、私は逃げた。

冗談ではない。職業柄、異星の生物との接触は慣れているが
流石に喋る生首などは専門外だ。どちらかというとオカルトに分類されるのではないのか?
そんな事を考えながら必死に逃げていると、前方にまた例の動く芽が!

当然「ゆっくりしていってね!!!」出てくる生首。

よく見れば、周囲に同じような芽が沢山生えている。逃げ場がない。
それにこのまま逃げても、同じ事の繰り返しになりそうな気がする。
どうやら(何故か)言葉は通じるみたいだし、敵意も無いみたいなので対話を図ってみるのも手だろう。

あまり交渉は得意な方ではないのだが・・・
私は意を決して、生首に話しかけた―――

 ・
 ・
 ・

意外とスムーズに意思の疎通ができた。
とりあえずこれまでにわかった事といえば
どうやら、この生首は“れいむ”という生物らしい。
いや、生物と言っていいものか・・・

なにせ彼らは中身が餡子の饅頭なのだから!
生きた動く饅頭・・・ますますオカルトチックになってきたではないか。

それはともかく、早速情報収集という事で色々と聞いてみた。
何故君たちがこのような姿形をしているのか?
人間というものを知っているという事は、この星にも人型の生命体は存在するのか?
様々な疑問をぶつけてみたが、殆どの質問を“れいむわかんないよ!”で返された。無常なものだ。

とりあえず何が目的なのだろうか?聞いてみよう。

「にんげんさんがゆっくりできてなかったから、ゆっくりしてっていいにきたんだよ!!」
意味がわからない。これは質問の答えになっていないのではないのか?
第一私にゆっくりしている時間など無いのだ。なにせ命が懸かっているのだから。

「にんげんさんはなにかゆっくりできないりゆうがあるの?
 なられいむがてつだって、にんげんさんをゆっくりさせてあげるよ!!」

―――何?それは手助けをしてくれると言うことだろうか?
「そうだよ!!」
うーむ。気持ちは嬉しいが、正直あまり役に立ちそうに・・・
「ゆっ!しつれいだね!じゃあ・・・ゆっくりしていってねっておおきなこえでいってみて!!」

何を急に・・・「いいから!」あぁ、わかったよ。・・・ゆっくりしていってね!!!

すると
「「「「「「「「「「ゆっくりしていってね!!!」」」」」」」」」」
すさまじい数のれいむが周りから飛び出てきた。

「ゆふふん、どう?これだけたくさんいれば、にんげんさんもゆっくりできるでしょ?」
これは驚いた。こんな習性があるのか。
「そうやっておおきなこえでゆっくりしていってねっていえばきっとみんなでてきてくれるよ!!」
これは中々役に立つかもしれない。
これだけの数がそろえばきっと重い物も引っ張ることができるだろう。
芽があるところで呼べばすぐに出てくるのもいい。簡単に補充が利く。

見た所、結構な数の芽がここには生えているようだ。
せっかくの厚意だ。どうやら悪い奴等でもなさそうだし、手伝って貰おう。


早速周囲のれいむを集めて、最初に見つけた部品を運んでもらうことにした。
この大きさなら大体・・・四匹ほどいれば大丈夫だろう。
頼んだぞ、れいむたち。

「ゆっくりまかせてね!!!ゆーしょ、ゆーしょ!・・・おもいぃ゛ぃ゛!!!」
「あ゛あ゛あ゛あ゛!!でいぶのなちゅらるぱーふぇくとなはがぁぁ゛ぁ゛!!」
「ぜひゅ~、ぜひゅ~。ぼ・・う・・・だ・・・め゛ぇ゛・・・・・・」
「でいぶぅぅぅ゛ぅ゛!!!ゆっぐりじでよぉぉ゛ぉ゛!!!」

全くもって駄目だった。
すぐ疲れて息を荒くする者や、歯を欠けさせて泣き喚く者ばかりだ。
なにも歯で咥えなくとも、押せばいいだろうに・・・それにしたって弱すぎる。

仕方ないので、考えていたよりも倍の数を使ってやっとシャーク号まで運ぶことができた。
最初数十匹いたれいむは今や半分ほど脱落している有様だ。
まあそれでもこの状況では心強い味方になってくれることは間違いない。
しばらくは彼らと共に部品回収を進めていくことにしよう。

ちなみにれいむから聞いた話では、れいむたちとは異なる種類も存在するらしい。
れいむたちはそれらを自分達もひっくるめて“ゆっくり”と名乗っていた。
私もそれに習って、れいむたちの種族をひっくるめて“ゆっくり”と呼ぶことにしよう。
他の種類のゆっくりも友好的であれば助かるのだがな。

さて、なんだかんだで今日は結構な進展があった。
無くなった部品30個の内3個が戻ってきて、
修理して取り付けた結果、少し行動範囲も広がったようだ。
この調子でどんどん進んでいくと良いのだが・・・

大きな不安とほんの少しの安心感を胸に、
私はシャーク号までついて来たれいむたちを貨物室に押し込んで(意外と広いのだ)
そのまま拠点に戻って眠りにつき、その日を終えた。




~脱出計画三日目~


行動範囲は広がったものの、まだ近辺には部品が残っている。
それを回収すべく、今度は違う方向にれいむたちとやってきた。

「ゆひゅ~、ゆひゅ~・・・れいむつかれたよぉ・・・」
「にんげんさん。ちょっとやすませてね・・・」

まだそんなに働いていないというのに、もう音を上げているれいむたち。
一匹あたりの運動量を考えると負担はかなり少ないはずなのだが、
すでについて来ている数は捜索開始時の三分の一ほどになっている。
しかも、やたらと休憩するせいで回収効率もガタ落ちだ。

おまけに夜になると
「こわいゆっくりがたくさんでるよ!」
ということでれいむ達は明るいうちにしか働きたがらない。
こちらとしても何があるかわからないので、日没までにはシャーク号に戻らなければならないのだ。

もう駄目だ、疲れた、休みたい、などとひたすらぼやくれいむたちからは、
根気や力強さ、その他諸々のプラス要素が少しも見当たらない。
長所といえば、掃いて捨てるほどそこら辺に生えているということぐらいか。
どれだけダメダメなんだ、こいつらは・・・

とは言ったが、これでも労働力として役に立ってくれていることは事実だ。
あれこれうるさいくらいで別れるというのは早計だろう。
ここは黙って我慢だ・・・

れいむの泣き言を適当に聞き流しているうちに、部品が落ちている場所にたどり着いた。
後はれいむたちに運ばせるだけなのだが・・・

「ゆん?れいむと・・・にんげん?がそろってなんなんだぜ?
 いままりささまはゆっくりしたぴかぴかさんみるのでいそがしいんだぜ!どっかいくんだぜ!!」

黒い帽子をかぶった、金髪の生首。おそらくゆっくりだろう―――がいた。
落ちている部品に寄り添っている。気に入ったのだろうか?

「ま、まりさ!そのぴかぴかさん・・・」
「もしかしてれいむたちもぴかぴかさんをみにきたのかぜ?
 でもこれはまりささまがひろったからまりささまのものなんだぜ!あきらめるんだぜ!!」
どうやられいむの台詞から推測するに、こいつはまりさというらしい。
ゆっくりまりさ、というわけか。

「そんなぁ!それがないとにんげんさんがゆっくりできないよ!!」
「そんなことしらないんだぜ!さっさとうせるんだぜ!
 それともまりささまのどれいになってみるかぜ?そしたらすこしくらいはみせてあげてもいいんだぜ!!」

ゲラゲラ笑うゆっくりまりさ。なんだかゲスい奴だな・・・
まりさってのは皆こうなのか?
「ううん。まりさのなかにも、たまにゆっくりできないまりさがいるんだよ・・・」

まあ普通に考えればそうだろうな。ならば便宜上、ゲスまりさと呼ぶことにする。
しかしゲスいと言っても一応対話が可能なのだから、交渉に移ろうとはしてみるべきだろう。

元はといえば私のものだ。いきなりで悪いが返してはくれないだろうか?
「なにいってるんだぜ?これはおちてたのをまりささまがみつけたんだからまりささまのものなんだぜ!
 わけのわからないこというにんげんはゆっくりできないからゆっくりしないできえるんだぜ!!」

が、やはりそうなるだろう。当たり前だ。
突然証拠も無しに返せといわれて、大人しく渡す者がいるはずがない。
まあそれにしては随分と物言いから知能の低さが滲み出ているが・・・そもそも交渉などできるのだろうか?

「ゆん?なんなんだぜ?・・・もしかしてまりささまのかっこよさにみとれてるのかぜ?
 ならしかたないからにんげんでもどれいにしてやってもいいんだぜ!!かっこよくてごめんね!!!」キリッ(笑)

うん、できなさそうだ。精々れいむとどっこいどっこいといったところだろう。

「 !!  まりささまが、そこのばかそうなれいむたちとおなじだっていったのかぜ!!?
 ゆ・・・ゆるさないんだぜ!てんさいまりささまをばかにするとどうなるかおもいしらせてやるんだぜ!!」

しまった、聞こえていたのか!
いきなり飛び掛ってきたゲスまりさに合わせて、私はとっさに足を振り上げた。

「げべっ!!げっ!ゆぶっ!べっ!!!」
どうなることかと思ったが、まりさは私の足に当たって、見事に飛んだ。
そしていくらか跳ねた後、顔面で無様に着地する。

おや?・・・そうか。身体能力なんかもれいむと同じ程度なのか。

「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っ・・・ゆ゛っぐり・・・ざぜ・・で・・・・・」
そのまま動かなくなってしまった。・・・もしかして、死んだのか?あれで!?

そんな、まさかたったあれだけで!
「にんげんさん。いくらまりさがげすだからってゆっくりごろしはよくないよ・・・」
「にんげんさんはもしかしてゆっくりできないひとなの?」
れいむたちも若干引いている。

ち、違う!ワザとじゃないんだ!私はただ足を・・・
「そっか。わざとじゃないならしかたないね!!」
「そうだね!!たまたまならしょうがないよ!!あのまりさげすだったし!!」

あ、それでいいのか。  軽いな・・・
まあいい。これは不幸な事故として片付けて置こう。
さあ、後はこの部品を運び込んでここ一帯は回収完了だ。次からはもっと足を伸ばせるぞ。
頑張ってくれ!!れいむたち!!!

「「「「「ゆっゆっおー!!!」」」」」


この日は拠点近辺の部品を回収し終えて、
ゲスでない普通のまりさが埋まっていたので、せっかくなので補充がてら引き抜いた。
現在のゆっくりの割合はれいむとまりさが半々だ。貨物室に入れられるだけの数を引き抜いておいた。
能力にあまり違いは見られないが、ものは試しだ。それほど変わらないなら痛手も少ないだろう。

残りの部品は、後24個。
まだまだ先は長いがそれほど悲観するような状況でもないのかもしれない。
私の不安はほんの少しだけ。だが昨日よりも確実に軽くなっていた。




~脱出計画四日目~


次は少し遠めの場所に来てみた。
ここにはセンサー類の一部が落ちているようだ。
これらを回収しておけばこの星の事がもう少し詳しくわかるようになるので、きっと探索も楽になるはず。
それにしても・・・

「ゆぜー・・・ゆぜー・・・あづいよぉ・・・」
「じめんさんがあつくてやけどしちゃいそうだよ・・・」
「まりざもうあるげない゛がも・・・」
やっぱりまりさも、れいむとそう変わりなかった。
身体能力はまりさのほうが上のようだが、私から見ればその差は微々たる物だ。
そのくせ音を上げるのは非常に早い。困った物だ・・・

しかし彼らの言うことも分からないでもない。
私は防護スーツのおかげでなんとか感じないが、確かにここら一帯は気温が非常に高いのだ。
心当たりといえば、近くに山がある。もしや、活動している火山なのだろうか・・・

「ゆっ!にんげんさん!ぴかぴかさんみつけたよ!!」
「ほんとだ!あれもってはやくかえろうよ。ここはゆっくりできないよ!」
そんなことを考えているうちに目的地に着いたようだ。
後は持って帰るだけなのだが・・・

―――部品があるところまでは一本道。何故ならその道以外は全て焼けた岩が地面になっているから。
   しかもその唯一の道も所々開いた小さな穴から煙が吹き出ている。

どう考えても危険だ。ここがもし活火山付近だとすればなおさら。
ここは無理に突っ込まずにゆっくりと対策を練るべきだろう。
下手に動くとロクなことにならない。
「なにいってるの!?こんなあついところにいたられいむしんじゃうよ!!」
「そうだよ!こんなところじゃゆっくりしたくてもできないよ!!」
「もういいよ!にんげんさんはほっといてれいむたちでぴかぴかさんもってこよう!!!」
「れいむたちをゆっくりさせれないにんげんさんはすっこんでてね!!」
「「「「「ゆっゆっおー!!」」」」」

あぁ・・・言ってるそばかられいむが半分ほど突撃して行った。・・・やめておけばいいのに。

「あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛!!あづい!あ゛づい゛ぃぃ゛ぃ゛!!!」
「じんじゃうよ!!でいぶあづぐでじんじゃうぅぅ゛!!!」
「ゆあぁぁぁ゛ぁ゛!まっがなひさんん゛ん゛!!でいぶがらはなれでねぇぇ゛ぇ゛ぇ゛!!!」
「「「「「ぼっど・・・ゆっぐり・・・じだ・・がっ・・だ・・・・・」」」」」

やっぱり全員焼け死んだか。だからやめておけと言ったのに。
よく周りを見れば、ごく少量ではあるが火の粉が舞っている。おまけにあの煙はおそらく高温のガスだ。
当たればそれだけで焼け爛れるし、火の粉が引火すれば火炎放射機も真っ青の威力になるだろう。

さて。多大な犠牲を払ってそれが証明されたが、ここからどうしようか。
この防護スーツも流石にこんな異常な状況にまで耐えられるようには設計されていない。
単純な一本道ということは、ここ以外には道は無いということである。まわれる所など無い。
それにれいむたちが言っていた通り、あまりゆっくりしすぎていては暑さで参ってしまう。

考え込む私を嘲笑うかのように、また地面から火が吹いた。そんなとき―――

「もこたん、INしたお!!!」
地面から真っ白な髪の生首が飛び出てきた。おそらくゆっくりだろう。
始めて見る種類のゆっくりは、吹き出る火を見てうっとりしていたが
やがて私達に気付いたのか、こちらに視線を寄越した。

「あ!にんげんさんだ!!はじめてみるお!!
 ゆっくりもたくさんいるお!!ゆっくりしていってね!!!」
どうやら敵愾心は無いみたいだ。これなら話しやすい。

ゆっくり・・・もこたんというのだろうか?何故いきなり出てきたのだろう。
「そうだお!もこたんはもこたんだお!!
 もこたんはひをたくさんみるとゆっくりできるからでてきたんだお!!!
 にんげんさんたちはここになにしにきたんだお?」

こういうゆっくりもいるのか。
私達は、この火やガスのせいで困っていると言うのに・・・羨ましいものだ。
「どういうことだお?ちゃんとせつめいしてくれないとわからないお?」

実は、かくかくしかじか・・・
「そういうことだったのかお・・・それはたいへんだお!
 それならもこたんがてつだってあげるお!!もこたんあついのへいきだからきっとやくにたつお!!」

なんともありがたい申し出ではあるが、流石に一匹では・・・まさか!

ゆっくりしていってね!!!

 ・・・何も起きない。ならやはり一匹で何とかするしかないのか。
「そうじゃないお!もこたんたちをよびたいならそれじゃだめだお!!
 ゆっくりINしていってね!!!っていってあげて!」

そこから違うのか。ゆっくりなりのオリジナリティだと思っておこう。
では・・・ゆっくりINしていってね!!!

「「「「「もこたん、ちょうINしたお!!!」」」」」

声と共に、出て来る出て来る大量のもこたん。これなら数も十分だ。
ではお願いしたい。

「にんげんさんのためにあのぴかぴかさんをみんなでとってくるお!!」
「もこたんにんげんさんをゆっくりさせてあげるお!!」
「せいいっぱいがんばるお!!」

それぞれ気合を入れながら部品の下へと駆けて行くもこたん達。
本人は平気だといっていたが、本当に大丈夫なのだろうか・・・

「ゆっくりほのおさんもえてるお!!」
「とってもあつくてきもちいいお!!」

驚いた。半信半疑だったが、まさか本当にあの高熱の中で平然としているとは。
もこたん達は吹き出る高熱ガスや炎も意に介さず、軽々と部品を持ってきた。
一匹一匹のパワーも申し分ない。れいむたちには悪いが、彼らとは雲泥の差だ。

このままついて来てはもらえないだろうか。
「にんげんさん、さそってくれてうれしいけどそれはできないお・・・
 もこたんはあついところじゃないといきていけないんだお。
 だからここからはなれられないんだお・・・ごめんねにんげんさん」

そうなのか・・・残念だが仕方ない。こちらこそ無理を言って申し訳ない気分だ。
「で、でもあついところにはきっとほかのもこたんがすんでるはずだお!!
 さっきみたいににんげんさんがよべばきっとたすけてくれるお!!」

なるほど、覚えておこう。では今日のところは帰ろうか、みんな。
「きょうはくうきだったよ!!」
「こんどはまりさたちもがんばるからね!!」


「「「「「ぼるけいのぉ!ぼるけいのぉ!!」」」」」
こうして派手に火を吹く大量のもこたん達に見送られながら、私達は拠点に帰った。

共について来れはしないものの心強い味方ができたものだ。
そう思うと同時に、後ろの方で有りもしない本日の武勇伝を得意げに語り合っているれいむとまりさに
(我ながら薄情だと思うが)一抹の不安を覚えながら、私は拠点に着くまでのほんの少しの間だけ浅い眠りについた。

本当に彼らで大丈夫なのだろうか・・・




~脱出計画五日目~


本日は昨日とは逆の方向に来た。
まさか反対の方角にまで同じような苛酷な環境は無いだろうと思ったからだ。
予想は見事的中。熱くもなく寒くもなく、険しい道もなく全体的になだらかだ。
普段文句が多いれいむやまりさたちも快適そうで何よりである。

ただし・・・
「・・・おっきなかわさんだね」
「こんなにいっぱいのおみずさんみたことないよ・・・」
この緩やかな流れの、大きく深い河がなければ、の話だが。

これまた困った。この河は私の胸くらいまでありそうだ。
今までも多少の浅瀬はあったが、どれも私の膝までが浸るかどうかといった程度のものばかりだった。
どうやられいむたち、と言うよりもゆっくりは(饅頭である以上当然といえば当然なのだが)水を嫌うらしく
多少濡れる程度ならともかく、こんなに深い河に長時間は入れない。溶けてしまう。

河の幅が十数メートルという規模なのも問題だ。
彼らの脆さでは、おそらく思いっきり向こう岸まで投げ飛ばした後の、着地の衝撃だけで死んでしまう。

当の部品はというと、向こう側の岸からすぐそこの所に落ちていた。
今までの部品に比べればかなり小さく、よって軽いのでそれなら私がさっさと取りに行けば済む話だろう。
が、しかし。またしても問題は私の防護スーツである。
一応簡単な耐水加工は施してあるが、もし壊れてしまったら・・・
言うまでも無く、その場でお陀仏である。考えたくもない。よって、私が入るという案も却下だ。

例に漏れず回り道は無いし、渡れそうな橋もない。どうしたものか。
ここに来てから私も頭を悩ませっぱなしだな・・・

「ゆっふっふっふ・・・こまってるね、にんげんさん」
うん? 声のしたほうに振り向くと、つれてきたまりさが全員笑っていた。異様な光景だ。
「ほっといてね!・・・それよりもにんげんさん、こまってるね。
 いわなくてもわかるよ!かわさんがわたれないんでしょ?
 れいむじゃおみずさんがたくさんあるとどうしようもないもんね!ゆぷぷっ!!」

あー、要らない挑発はいいから何ができるのか説明してくれないかね?
「わかったよ!! まりさたちはおぼうしさんにのっておみずさんにうけるんだよ!!
 おぼうしさんにのってむこうがわまでいってぴかぴかさんをみんなでもってかえればいいんだよ! 
 そんなにずっしりさんじゃないんでしょ?だったらまりさたちなららくしょうだよ!!」

なんと、この帽子にはそんな機能が隠されていたのか。
しかしいくら部品が軽いとはいえ彼らに任せていいものか・・・
「まりさたちにんげんさんといっしょにいて、まだゆっくりしたところなんにもみてもらってないよ!
 だからここでちょっとゆっくりしたところみせたいよ!!“おめーばんかい”のちゃんすをちょうだいね!!」
「まりさすごくむずかしいことばしってるんだね・・・」
「すごいよまりさ!!」
「ゆふふん!れいむももっとまりさをみなおしてもいいよ!!」
言葉の間違いはともかく、やる気に満ちているのはわかる。
どうせ他に方法も無いのだ。こう言ってくれてるのだし任せてみようか。

よし!では頼んだぞ、まりさたち!!
「「「「「ゆっゆっおー!!!」」」」」

現在居るだけのまりさが、全員河に向かって突撃していく。
昨日の火山でいつの間にか随分減っていた事を除いてもすごい数だ。
正直そんなに沢山は必要ないのだが、それだけやる気があるということなのだろうか?

まりさが一列に並んで、帽子を浮かべて飛び乗った。
おお、本当に浮いている。嘘や見栄じゃなかったのか・・・疑ってすまなかった。

心の中で謝る私を余所に、まりさたちは全て浮かび終えたようだ。
後は部品を取って、力を合わせて行きの様に戻ってくるだけ。難しいだろうがこれなら期待できそうだ。

しかし、まりさたちはいくら立っても行動を起こさない。どうしたというのだ・・・?

「「「「「こ、こ、こ、ここからうごけないよぉぉぉぉ!!!」」」」」


 ・・・なんだって!!?動けないとはどういうことだ!?

「まりさうきかたはしってたけどすすみかたはしらなかったよぉぉ!!」
「だれかぁ!!おーるさんもってきてねぇぇ!!」
「そんなのないよ!!ここからどうすればいいの!?」
「ゆ゛あぁ゛ぁ゛!!だれがだずげでぇぇ゛ぇ゛!!!」

なんという事だ。まさか言葉の通り“浮き方”しか知らなかったとは。
というか、普通そんな命に関わるような事を失念するものなのか!?

「あ・・あ・・あ・・・どうじで!?どうじでいきたくないほうにいっちゃうのぉ!!?」
「おぼーじざん!そっぢいがないでね!!ばでぃざのいうごどきいでね!!」
しかも、考えてみれば当たり前の事だが帽子が下流に向かってゆっくりと流され始めた。
とりあえず追いかけてみるが飛び込むわけにもいかず、近くに何かを引っ掛けるのに適した物もない。
う~む、だめだ。いい手が思い浮かばない。


「ゆっ!?なんのおと?」
「どどどどどどってきこえるよ・・・」
下流に向かっていくにつれ、何かを打ち付ける音が聞こえてくる・・・まさか

「「「「「たっ、たっ、たきさんだぁぁぁぁぁぁ!!!」」」」」
やっぱりそうか・・・ある種のお約束だな。
なにか御都合というか・・・第三者の悪意めいたものを感じそうだ。無論気のせいだろうが。

おっと、そんなことを言ってる場合じゃない。・・・とは言うが、どうしようもないのも事実だ。
「にんげんさん?どうしたの!?たすけてね!!たすけてね!!!」
「どぼじでぞんなゆっぐりじでるのぉ゛!?ばでぃざをだずげでよぉ゛ぉ゛!!」
「やだぁぁ゛ぁ゛!!ばでぃざじにだぐないよぉぉ゛ぉ゛!!」

すまない、まりさたち。どうする事もできない。
私にはもう打つ手が無いのだ。せめて安らかに成仏してくれ。
「ぞ、ぞんなぁぁぁ!!」
「あっちにもどってね!!もどってねぇぇ!!
 ・・・ばでぃざのずでぎなおぼーじざんもどっでよぉぉぉ!!」
「やだぁぁぁ゛ぁ゛!!!」
「もっとゆっぐりじだがっだぁぁぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!」
「あ゛あ゛あ゛あ゛!!おちるよぉぉぉ゛ぉ゛!!」

「「「「「おぞら゛をどんでるみだいぃぃ………『ドバァァァン!!!』……」」」」」


滝を覗き込んでみる。・・・分かっていた事だが、何も浮かび上がってこない。やはり全滅したようだ。
数十匹いたまりさが一気に全滅・・・こちらに責務は無いとは言え、流石に罪悪感の一つも出てくるというものだ。
まあやってしまったものは仕方がない。次からはもう少し熟慮しよう。反省は次に活かす為にあるのだ。

そういえばれいむ達がいない。大方、彼らの身体能力ではついてこれなかったのだろう。
仲間が沢山死んだと言えば、どんな反応をするだろうか・・・
少し沈んだ気分で、私は来た道を早足で戻った。


少しブルーになりながら部品があった河岸に戻る私を迎えたのは
「ゆ~ゆ~♪ゆゆゆのゆ~♪にんげんさんまだかな~」
「れいむたちをほうっていっちゃうなんてしつれいなにんげんさんだね!!」
「あんなばかなまりさなんかほっとけばいいのにね!!」
のんきに下手糞な歌を歌う、だらけきった様子のれいむたちだった。
 ・・・ついてこれなかったのではなく、ついてくる気が無かったのか。

「あ、かえってきたよ!!」
「どうしたの?まりさたちはどうしたの?」
「やっぱりあのままおみずさんにおちちゃってしんじゃったんだよ!!!」
「できないことするからああなるんだよ!おおぶざまぶざま!!」
「かわいいれいむたちをばかにしたばちがあたったんだね!!」

 ・・・なんだ、こいつら。
嘆くどころかれいむ達は一匹残らず笑っている。
善意の行動の結果散った彼らに、可哀想とかそういう気持ちは無いのか?
「なにいってるの?そんなのしらないよ!!」
「そうだよ!!にんげんさんをゆっくりさせるのはれいむたちだけでじゅうぶんなんだよ!!」
「めだとうとしてかってにしんじゃったまりさたちのことなんてしらないよ!!」

最初にあった頃に比べて、随分と性格が変わってないか?
第一、お前達なんかやる気があったのは最初の二日だけで、最近は文句しか言っていなかったと思うが・・・

そうは思ったものの、かく言う私もそう彼らを責める事はできない。
普段は後ろから指令を出すだけだし、彼らの運搬の邪魔をしてはいけないので下手に手も出せない。
今回も追いかけたはいいが何も出来ずにただ滝壺に落ちるのを見ていただけだ。
正直、何もしなかったという点では私もれいむたちと何も変わりない。
そう思うと、少し自分が嫌になる。まあそれでも、今のれいむ達よりはマシだと思うが。

しかしどうしたものか。
沢山の仲間を失い、残った者には正直良い感情が持てない。
おまけに現状を打破できるだけの妙案もない。
正に八方ふさがりだ。とうとう打つ手がなくなったか・・・

「どうしたの?にんげんさん。ゆっくりできてないね!」
「きっとあのばかなまりさのせいだね!!ぷんぷん!!」
「しんでもめいわくかけるなんてどうしようもないね!!おおおろかおろか!!」
「やっぱりれいむたちがいちばんゆっくりできるんだよ!!
 にんげんさんもきっとそれがわかったはずだよ!!!ゆっくり~していって~ね~♪」

聴いているだけで胸糞悪くなるようなれいむの声を聞き流し、途方に暮れていると・・・

「かっぱっぱ~♪なんだかゆっくりできてないふんいきだねえ。どうしたのかな~・・・あれ?」
緑色の帽子をかぶった生首・・・もといゆっくりが河からちゃぽんと姿を現した。

「・・・に」
 ・・・に?
「にんげんさんだぁ!!すごいよ!はじめてみたよ!!にとりだいこうふん!!」
河の中ではしゃぎ出した。

それはともかく、にとりというのだろうか?
「あ、ごめんなさい・・・にとりはにとりっていうんだよ。
 なんだかゆっくりしてないかんじがしたからきてみたんだけど、どうかしたの?」
「なんでもないよ!へんなゆっくりは」悪いがれいむは少し黙っててくれ。

実はかくかくしかじか・・・
「そうだったんだ・・・たいへんだったね、にんげんさん。
 まりさのことはざんねんだったけど・・・あのぴかぴかさんならとってこれるよ!!」
それは本当か!?  そういえば水に平然と入っている。平気なんだな。
「うん!あれならちいさいからにとりだけでもだいじょうぶだよ!!」

正に渡りに船と言ったところか。
せっかくの申し出だ。ありがたく受けよう。
「まかせてよ!にとりはにんげんさんの“めいゆう”なんだから。かっぱかっぱ、かっぱっぱ~♪」

そう言うと、にとりは至極あっさりと対岸にあった部品を咥えて、浮かんだままこちらにやってきた。
「はいどうぞ!!」
こんなに簡単に・・・まりさの犠牲はなんだったのだろうか。
「ごめんね。もっとはやくここにくればよかったよ・・・
 でもこれですこしはにんげんさんのやくにたてたよね?それならにとりはだいまんぞくだよ!!」

正直まだ気は晴れないが、こう言ってくれるにとりには心から感謝したい。
もう少しゆっくりしたい所だが、日没が近い。そろそろ帰らねば・・・
「うん。にとりはおみずのないところじゃゆっくりできないからついていけないけど
 きっとこんなふうにおみずがたくさんあるところならほかのにとりがたくさんいるはずだよ!
 ゆっくりしていってねってよんでくれればきっとよろこんでてつだってくれるとおもうよ!!」

やっぱりそうなのか。まあ、もこたんの件があったからなんとなく察してはいたが。
それでも心強い仲間ができた、ということなのだろう。
これから部品の探索もどんどん厳しくなるはずなので、この申し出は有り難い。
正直・・・れいむよりは数段。


「じゃーねー、にんげんさん!!げんきでねー!! かっぱか~っぱかっぱっぱ~♪かっ~ぱ……」
元気に挨拶した後、河に潜って行くにとりに背を向け、私達はシャーク号へと戻った。

「こんかいもくうきだったね・・・」
「あのにとりとかいうゆっくりがよけいなことするからだよ!」
「そうだね!あんなのれいむたちならゆっくりなんとかできたのに!!」
拠点へと帰る途中の船内。

又してもほとぼりが醒めた頃に大口を叩くれいむたち。
もう彼らを頼るのはやめた方がいいのではないかと思えてきた。
まあきっと何かの役には立つはずだ。多分。おそらく。役に立てばいいなあ。


もう少し頼りになるゆっくりはどこかにいないものか・・・
れいむたちの戯言にうんざりしながら、私はどことも知れない星に願いをかけた。
不安かって?今の状況を見て心から安心できる者がいたら、見てみたいものである・・・









                                                   続く






 ・なかがき
 実は元の作品、30分くらいしかやったこと無いです。
 不勉強による描写や設定の甘さがあっても華麗にスルーしてくださるとすごくありがたいです。
 まあ元々設定に色々と無茶があるのは承知の上なんですが。


では後半で!!



                                               小五ロリあき


 ・過去作品
ふたば系ゆっくりいじめ 412 僕と『あの子』とゴミ饅頭と
ふたば系ゆっくりいじめ 446 俺とゲスと自業自得な餡子脳
ふたば系ゆっくりいじめ 460 弱虫まりさとほんとの勇気
ふたば系ゆっくりいじめ 484 ドスと理想と長の資格 前
ふたば系ゆっくりいじめ 494 ドスと理想と長の資格 後
ふたば系ゆっくりいじめ 514 僕とさくやとおぜうさま
ふたば系ゆっくりいじめ 548 てんことれいむとフィーバーナイト 前編
ふたば系ゆっくりいじめ 559 てんことれいむとフィーバーナイト 後編
ふたば系ゆっくりいじめ 583 ゆっくりしたけりゃ余所へ行け
ふたば系ゆっくりいじめ 599 はじめてのくじょ~少女奮闘中~
ふたば系ゆっくりいじめ 615 お兄さんは静かに暮らしたい
ふたば系ゆっくりいじめ 659 よくあるお話
ふたば系ゆっくりいじめ 674 かわいいゆっくりが欲しいなら
ふたば系ゆっくりいじめ 701 おうちは誰の物?
ふたば系ゆっくりいじめ 789 ゆめみるれいむときゃっしゅさん



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感想

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  • コイツらより、やっぱり普通にピクミンが良い
    -- 2013-03-28 23:26:58
  • 「ゆっくりしていってね!」と「ゆっくりINしていってね!」で出てくるんだ・・・wwwwww -- 2011-10-23 20:14:49
  • にとり良い子だなあ…飼いたい… -- 2010-07-30 01:39:22
最終更新:2010年02月05日 20:07
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