ふたば系ゆっくりいじめ 436 苦悩に満ちたゆん生

「餡子ンペ09」苦悩に満ちたゆん生 36KB


・コンペ出展ということで、ちょっと長めにしてみたり。
・テーマは『差別(離反や家出)』・・・なんですが、あんまりこだわってません。
 一応テーマから外れてはいないはずです。








『苦悩に満ちたゆん生』

D.O





「さ、早く机の下に来なさい。」
「ゆぅ、ゆぅぅぅううう。」

むにゅん。ふにふにふにふに・・・

「ゆぁぅぅぅ・・・。」
「逃げるな。そこに居なさい。」

れいむは今日も、椅子に腰掛けたおねーさんの足で、ムニムニと全身を踏みにじられている。
これは別に、れいむが何か悪さをしたためではなく、毎日のように続けられてきた虐待であった。
しかし、れいむにはこの過酷な虐待に対して抵抗する権利など存在しない。
それどころか、れいむを守ってくれる両親も、支えあう姉妹も・・・・・・



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時間は1ヶ月と少し前にさかのぼる。
舞台は、あくまで赤ゆっくりであったれいむ視点ではあるが、果ても見えないほど広大で、危険な動物もほとんどいない草原。
まだれいむが産まれる前であったが、そこには6家族ほどで構成された、小規模なゆっくりの群れが住んでいた。

群れのゆっくり達のおうちは、元々人間さんが使っていたのであろう、横倒しにして並べられたコンクリート管。
雨風にもびくともせず、しっかり入口を閉ざせばあらゆる外敵、積雪に負けることのない、とてもゆっくりしたおうちだった。
数にはまだまだ余裕があるので、群れが大きくなってもおうち探しに困ることは当分ない。

群れを構成するのはれいむ種とまりさ種のみ、みんな親戚同士であり、仲よく暮らしていた。



「みゃみゃー。しゅーり、しゅーり。ちあわちぇー。」
「おはなしゃん、ゆっくちしちぇるにぇ。」
「ばったしゃん、まっちぇー。」

季節はまだ秋、赤ゆっくり達は実り豊かな自然に包まれながら、思う存分むーしゃむーしゃしていた。

「おちびちゃんたち、ゆっくりしてるね。」
「れいむとまりさのおちびちゃんなんだよ。あたりまえだよ。」
「ゆふふ。じゃあまりさたちは、かりをしようね。ふゆさんがきたらおうちでゆっくりしようね。」
「ゆっくりしたごはんさんがなくなったら、ゆっくりできないもんね。」

成体ゆっくり達は、来る冬に備えて、狩りに精を出していた。

「こーろこーろ、ゆっくちー。」
「のーび、のーび。ゆゆーん。」

「はるになったら、まりさとずっとゆっくりしてね。」
「れいむもまりさとずっとゆっくりしたいよ。」
「「すーり、すーり・・・すっきりー。」」



・・・そして、群れの平穏な日々はその夜、一匹のれみりゃの襲撃で脆くも崩壊したのであった。






「すーやすーやするよ!・・・ゆぅ・・・ゆぅ・・・」

・・・・・・。

「うー!うー!」
「ゆぅ・・・ゆ?れみりゃだぁぁぁああああ!!!」
「ゆゆっ?うるさいよぉ・・・れみりゃだぁぁぁあああ!!!」

「ゆぴぃぃぃいいいい!はなしちぇぇぇぇええ!」

群れのゆっくり達が寝静まった頃、横にずらりと並んだおうちの一つから、草原中に響き渡るほど大きな叫び声が上がった。
おうちの入り口を塞ぐ木の枝をあっさりと蹴散らした、その胴付きれみりゃの手には、
その日の昼間にバッタさんを元気いっぱい追いかけていた、一匹の赤まりさが握られている。

「おちびちゃぁぁあああん!!」
「れみりゃはゆっくり、まりさのおちびちゃんをはなしてね!」

だが、れみりゃはそんな両親になど見向きもせず、ポケットから見たこともない道具を取り出した。

カチッ!ボウッ・・・

それは、人間さんが使うバーベキュー用ライターだった。

「あちゅいっ!やめちぇ、ゆっくちさせちぇ『ボウッ』・・・ゆびぃぃいいいいいい!!!」
「「おちびちゃんのゆっくりしたおぼうしがぁぁぁああ!!!」」

そして、両親が見上げる前で、赤まりさのとんがり帽子のてっぺんに、赤く輝く炎が灯ったのであった。



「ゆぴぃっ!ゆびぇぇぇえあああああ!!!ぎゅぅぅぅぅうううぅ!!!」

赤まりさが全身を炎に包まれて、断末魔の声をあげながら草原を転げまわる姿は、
その後に続く惨劇の幕開けの合図となった。

「あじゅっ!おりぼん、れいみゅのおりぼんしゃ・・・ゆびびびびいいいぃぃいいいい!!」
「まりしゃのおぼうち、やべちぇぇぇぇぇえええ!!!」

赤まりさ、赤れいむ達はおうちの奥へと息をひそめて隠れていたが、
木の枝でおうちの中をかき回され、耐えられなくなり飛び出したところで飾りに炎を灯されていく。

「あじゅいぃぃいぃいいいい!!」
「おちびちゃん、おくちのなかにはいってね!」

ぺろり。

「『じゅぅぅぅぅ』ゆぎゅぅぅぃぃいいい!!あづいげど、ほのおさんはきえ『ズブリ』・・・」
「ゆぅぅ・・・おきゃあしゃん?」

お口の中の唾液でおリボンの炎は消えたものの、母れいむのお口が急に力なく開いたのを不審に感じて、母を呼ぶ赤れいむ。
だが脳天から、女性の腕ほどの太さの棒を突き刺された母れいむから、返事が返ってくることは永久にない。
その代わりに、お口の隙間かられみりゃの顔と、ライターの先端が赤れいむの方をのぞきこんでいた。

「うー。うー。」
「おきゃあしゃ『ボウッ』ゆっぐぢ・・・・・・」



「やべ・・おぼうじ・・・やべでぇ『ボウ・・・』ゆ、あ、ぁ・・・」

成体ゆっくりは全員が脳天から太い棒に貫かれ、身動きをできなくされた後で、
お飾りを目の前で燃やされながら力尽きた。



「だちてぇぇぇええ!おどおぢゃん、おがあじゃ『ボウッ』ぃやじゃぁぁあぁああああ!!!」

子ゆっくりまで育っていた子まりさ姉妹は、父まりさのお帽子の中で焼き殺された。



「ゆぴぃっ!あじゅ、あぴゅぅぅうう!がみのげじゃ・・・ゆぴぃぃいいい・・・」

赤ゆっくり達は一匹残らずおうちからほじくり出され、お帽子と髪の毛に火を付けられて、
跳ねまわり、転げまわりながら絶命した。



「やめてね!れいむはにんっしんしてるんだよ!ゆ・・・ゆぎひぃぃいいいい!!!『メリッ、メリッ・・・ボウッ』いびゃぁぁぁああああ!!」

にんっしん中だったぼて腹れいむは、まむまむにワラをねじ込まれ、
それに火をつけられて、新しい命を守ることも出来ずに内側から焼き尽くされた。



みんな、みんな、とってもゆっくりした笑顔のゆっくり達だったのに、
今は黒く焼け焦げた饅頭になり果ててしまった。
その凄惨な光景を作り出したれみりゃは、ゆっくり達を食べるでもなく、
ただその命をもてあそんだだけで満足したのか、その場を鼻歌を歌いながら去っていったのであった。






だが、群れは完全には滅びていなかった。
おうちから逃げ出し、必死で逃げだしたゆっくり達、大半はれみりゃにあっさりと追いつかれて炎に包まれていったが、
成体直前まで成長していたまりさ3匹、れいむ3匹だけがおうちの裏の茂みへと逃げ切り、生き延びたのである。

「おがあぢゃん・・・。おどおぢゃん・・。おちびちゃぁん・・・・。」

それからまもなく、この6匹はそれぞれが、れいむとまりさの夫婦となって、次世代の群れを営み始める。
しかし、群れを襲った惨劇と、それを引き起こしたれみりゃの記憶が薄れることはなかった。

人間さんから手に入れたであろう炎を操る道具、通常種を玩具としか見なしていない邪悪な笑み、
フリルのごちゃごちゃ付いたお洋服から、れみりゃが履いていたスリッパの色、お帽子のリボンについた大きな裂け跡まで・・・・・・



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それから1週間ほどが過ぎ、表面上は平穏な日々が帰ってきていた。
3つのつがいは群れの規模を回復させるためすっきりーに励み、その甲斐あって、群れでは間もなく新たな命が生まれようとしていた。
数を増やすのが目的なので、全員植物型のにんっしんであり
3匹の母れいむの頭上には、それぞれ最低でも5匹以上の実ゆっくりが実っていた。
そして、将来人間さんのおうちで虐待を受けることになる、あのれいむも、そんな中の一匹であった。

ぷるぷると震え、ツタから産まれおちようとするれいむ。

しばらくして、頭上から拘束していた力が消えた。

お空を飛んでいるような浮揚感。そして柔らかい草のクッションに着地した衝撃。

涙が出そうになるが、それ以上に餡子の奥底から湧き上がるのは歓喜。

れいむは、これから先両親から与えられるであろう、何不自由ない、限りないゆっくりを想像し、
この世界に産まれ落ちた喜びを爆発させるように、元気いっぱい初めての挨拶を発したのであった。



『ゆ、ゆっ!ゆっくちしちぇっちぇにぇ!!!』



「「・・・・・・。」」
『ゆぅ?ゆっくちしちぇっちぇにぇ!!』
「「・・・。」」
『ゆ・・・ゆっくちしちぇっちぇにぇ!ゆっくちしちぇっちぇにぇぇぇ!』

「「・・・・・・ゆっくりできないよ。」」

『???ゆ、ゆぅぅ?』



れいむが産まれ落ちて初めてあいさつした相手、父まりさと母れいむから向けられた視線は、
親ゆっくりがおちびちゃん達に向けるべき、愛情にあふれたものではなかった。
それはむしろ、忌まわしい、汚らわしい何かを見るような・・・
その原因はまもなく判明する。

ぺしょり。
「ゆ・・・ゆっくちしちぇっちぇにぇ!」
「ゆっくりしていってね!ゆ~ん、れいむのおちびちゃん、かわいいよ~。」
ぺしょり。
「ゆっ、ゆっくちしちぇっちぇにぇ!!!」
「ゆっくりしていってね!ゆゆ~ん。まりさににてげんきいっぱいだね!」

・・・・・・。

5匹産まれた赤ゆっくり、まりさ種2匹とれいむ種3匹。
その中で、れいむだけが「ゆっくりしていってね!」と挨拶を返してもらえなかった。

『ゆぅ?にゃんで?どうしちぇゆっくちしてくれないにょ?』
「「・・・・・・(両親)。」」

「ゆっ!あのれいみゅ、なんだかゆっくちしちぇにゃいにぇ!」
「ゆぅ、しょうだにぇ!おりぼんしゃんがゆっくちできにゃいよ!」
『ゆ、ゆぅぅぅぅうううう!!どぼぢでしょんなこというにょぉぉおおお!?』



れいむのおリボンは、生まれつき端っこに小さな切れ目が入っていた。
無論、ゆっくりが脆弱極まる饅頭である以上、生きていくうちにお飾りにも体にも傷はつく。
しかし、先天的なものと後天的なものではやはり違うのだ。
そして、ゆっくりの社会において生まれつき飾りに欠損がある者は、確実に差別の対象となる。

世の中にはこの程度のことは気にせず愛情を注げるゆっくりも多く存在するが、所詮少数派。
れいむにとって残念なことに、れいむの家族はごく一般的な知性・性格のゆっくり達であった。
だが、差別の理由はそれだけではなかった。



「・・・あのれみりゃと・・きず・・おかざり・・・・・・」
「・・ゆっくりできない・・・・おりぼん・・きず・・・・」

不運なことに、れいむのおリボンについていた切れ目の形は、
群れに惨劇をもたらした、あのれみりゃとそっくりだったのであった。
ただでさえゆっくりしていないおリボン。その上、群れのおとな達のトラウマを刺激し続ける容姿を持ってしまったれいむ。

全くの不運であったとしか言いようがなく、少なくともれいむが過ちを犯したわけではない。
しかしこのハンデは、ゆっくりの社会においては逆転のチャンスの少ない、余りにも過酷すぎるものであった。






雨の日、おうちの中で家族みんなでゆっくりしていても・・・

「ゆーん、ゆっくちしてないれいみゅは、ちかづかないでにぇ!」
『ゆぇぇぇん、おきゃーしゃん。ゆっくちさせちぇー。』
「・・・ゆっくりできないゆっくりは、おといれのほうにいっててね。」

ぼよよんっ!

『ゆぴぃっ!』

母れいむは、体当たりかと思うほどの力で、
れいむをおうちの隅のおトイレ(うんうん用の穴)へと突き飛ばした。

『どぼぢでぇぇぇ!!!』
「うんうんは、うんうんどうしでなかよくしててね。」
『れいみゅはうんうんじゃにゃいよー。』



父まりさが狩りに言っている間、姉妹達が母れいむとお歌を練習していても・・・

「それじゃ、おちびちゃんたち。おうたのれんしゅうしようね!」
「ゆ~、ゆゆぅ~ん!ゆっくり~。」×4
『ゆ~・・・』

「ゆー!!ゆっくりしてないゆっくりは、こえをださないでね!ゆっくりできないよ!」
「しょーだよ!ゆっくちできにゃいよ!このくぢゅ!へたくしょ!」
『ゆぁーん、れいみゅもうたいちゃいよー。』
「れいむたちのおうたをきけるだけでもありがたいとおもってね!あー、ゆっくりできないよー!」
「ゆっくちしにゃいで、どっかいっちぇにぇ!」×4
『ゆぁーん、ゆっくちさせちぇー。』



父まりさが狩ってきたご飯を皆がむーしゃむーしゃしていても・・・

「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー!」×6
「おやさいしゃん、ゆっくちしちぇるにぇ!」
「れいむのまりさは、かりのてんさいだよ!」
「ゆふーん。それほどでもあるよぉ。」

日中は狩りに忙しい父まりさに甘えることができる、貴重な機会でもある晩ご飯の時間。
赤ゆっくり姉妹はじゃがいもさんやにんじんさんの欠片を一口頬張るたびに、
父まりさにすーりすーりして甘える。

『むーちゃ、むーちゃ・・・』

だが、れいむだけは、家族の団欒から離れたおトイレの近くで、
どこにでも生えている不味い雑草を、それも食べざかりのれいむにとっては余りにも少ない量を与えられる。
それでも、少しでも長く味わえるように少しづつ口に運び、ゆっくりと咀嚼するれいむ。
少しずつ食事を口に運ぶこの癖は、人間感覚ではお行儀良さそうなのだが、れいむとしては惨めなだけである。

父まりさの顔を時々チラリと見上げてみるが、れいむに向けられる視線は冷淡そのもの。
それもそのはずで、父まりさとしては、れいむに食事を与えているのは、
育児拒否でおちびちゃんを永遠にゆっくりさせたりしたら、群れのみんなに嫌われるからである。
出来れば一切世話などしたくないほど、れいむ、いや、『あの時のれみりゃ』を疎ましく思っていたのだった。






・・・・・・そして、れいむ姉妹が産まれて2週間ほど経った夜、ついに決定的な時がやってきた。



『ゆぅ・・・しゅーりしゅーりしちゃいよぉ。』

れいむは家族が身を寄せ合って、あったかそうにすーやすーやしているのを見ながら、
おトイレの近くで一匹、孤独とうんうんの悪臭に包まれながら、秋の夜の寒さでなかなか眠りにつけないでいた。

「ゆぅ・・・うんうん・・。」

そのとき、夜中に目を覚ました赤まりさが、便意を感じてのそりのそりとおトイレにやってきて、

「うんうんしゅるよ。『もりんっ!』しゅっきりー!」
『ゆ゛・・・ゆぴゃぁぁぁああ!れいみゅにうんうんつけないでぇぇぇええ!』

おトイレとして掘った穴から大きくはずして、れいむに向かってうんうんをひり出した。

「ゆ?まちがっちゃったよ。ごめんにぇ、ゆぴっ!?」
『ゆっくちあやまっちぇにぇっ!』

ぽよんっ!

赤まりさは一応謝ろうとしていたところだったが、怒り心頭のれいむは体当たりを炸裂させた。
実際のところ、食事を毎日十分に与えられた赤まりさは、すでに野球ボール以上の大きさに成長しており、
栄養失調で未だにピンポン玉サイズのれいむの体当たりなど、痛くもかゆくもなかったのだが。

「ゆぅぅううう!うるさいよ!すーやすーやしてるのに、おおきなこえださないでね。」
「ゆぁーん、ねみゅいよー。」×3

ぽよんっ!ぽよんっ!ぽよんっ!

「ゆぅぅ・・・あやまってるのにぃ。やめてね。いたいよぉ。」

「ゆぅ・・・ゆゆっ!?おちびちゃん、どうしたの!?」
『だっちぇ、まりしゃおにぇーしゃんが・・・ゆびぃっ!』

自分の正当性を主張しようとしたれいむは、急に横から受けた衝撃で、勢いよくおうちの壁に叩きつけられた。
痛みに堪えながらその方向に視線を移すと、そこには両親がぷくーっとした姿がある。
ゆっくり以外が見たら苦笑いする他無いだろうが、それは、敵に対する威嚇行動であった。

「このくずっ!!!れいむのおちびちゃんになにやってるの!?」
「ゆっくりできないれみりゃはさっさとでていってね!!!」
『ゆぇ?おとおしゃ・・・?れみ?』
「「でていってね!れみりゃはでていってね!!」」
『??ゆ?・・れ?・・・れいみゅ・・おきゃあしゃん、・・ゆ?』

「おまえがれいむたちのおちびちゃんなわけないでしょぉぉおおお!!!!」
『ゆ?ゆぅぅ・・・?』

「?・・・??」×4

普段虐めてはいても、一応姉妹である自覚はある他の赤ゆっくり達は、さっぱり状況がつかめていないが、
両親がうっかり声もかけられないほどの剣幕であることは何となく感じ取っていた。
おそらく、もう一言れいむが口を聞いたら、容赦なく潰し殺す、そう正確に状況を把握した姉妹たちは、
もはや声も出せず、奥歯をガチガチ言わせながら、おうちの隅に身を寄せ合い、恐怖に震えていた。

しかし、そうはならなかった。
なぜなら、母れいむの最後の言葉は、れいむから言葉も理性も奪うのに十分な一撃だったからである。



『ゆ、ゆ、ゆびゃぁぁぁぁああああぁぅぅぅうううぅゃぁああああ!!!』

れいむは、体の向きをおうちの出入り口に向けると、奇声を発しながら、
成体ゆっくりでもあり得ないほどの速度で外へと駆け抜けていったのだった。



『ゆぴ、おがじゃ・・・ゆっぐ、れび・・・!』

れいむは、自分が産まれる前の事情など当然全く知らない。
だが、一つだけ、事実をはっきりと理解してしまった。
自分の居場所があのおうちの中にはないということを。
赤ゆっくりにとって『世界』とは、家族と、家族の暮らすおうちの中がすべてであるにも関わらず・・・






れいむはそれから、命を絞りつくすように全力で草原を駆け続けた。
夜が明けて朝を迎え、れいむには越えられなさそうな岩にぶつかると、また方向を変えて駆ける。
それから昼になり、また行く手を阻まれて方向を変え、夜となっても駆け続け、朝を迎えた。

そしてれいむは、傷つき疲れ果て、今にも永遠にゆっくりしてしまいそうになりながら、
ついに木と石でできた巨大な洞窟にたどり着いた。
れいむはヨロヨロとその洞窟内に入ると、そこに自分だけのゆっくりプレイスを作ることを決意しながら、
ついに精根尽きはて、ゆっくりと眠りに就いたのであった。



「あら?赤ゆっくり。」

ひょいっ。

「ゆぅ・・ゆ、れいみゅ・・・ゆっくち・・。」
「どっから来たのよ、あんた。ボロボロだけど。」

そして、その洞窟に先に住んでいた人間さんにあっさりと捕まり2週間が経って、現在に至る。



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「ああ~、やっぱ良い足温器だわ。」
「おねーさぁん。れいむ、おといれにいきたいよぉ。」
「あら。早く戻ってきてね。寒いから。」

おねーさんの机の足元に置かれた、タオルを敷き詰めたバスケットから、ぽてぽてと這い出るれいむ。
一見するとゆっくり用ベッドのようだが、ここはれいむの仕事場である。
この家にやってきて2週間ほどで、食料事情が激変したれいむは、
体積で1000倍近くにまで急成長し(直径30cm以上)、もはや成体サイズ。
もうそろそろいいだろうということで、おねーさんがれいむを足の下に敷くようになったのはつい最近である。



ちなみに、おねーさんの名前はむきゅんちゃん。
狩りの仕方を知らないれいむに、足の下で踏み続けられるという過酷な虐待に耐える代わりに、ご飯をくれている人間さんだ。
最近「こーこーじゅけん」とか言う狩りが大変とのことで、あまりゆっくり出来ていない。
れいむも狩りのお手伝いが出来たら、むきゅんちゃんも、もっとゆっくり出来るのだろうか?などとれいむは考えている。



れいむは、一応自分が幸運な部類であることは自覚していた。
おねーさんに捕まった当時、れいむは生後2週間にしては小さすぎるピンポン玉サイズ。
いくら頭の大きさで強さを測るゆっくりとはいえ、れいむとおねーさんの力の差は歴然であった。だが、

「あんた、親は?」
「ゆぎゅぎゅぅぅ・・・ゆびゅぅぅぅううー・・・。うっくち。」
「もー、とりあえず泣きやみなさいよ。」

その後、満身創痍のれいむにオレンジジュースをぶっかけて治療し、これまで見たこともない様なご飯を食べさせ、
お風呂に入れて泥を落とし、柔らかいタオルで包んでくれた。
その最中、その後まで合わせて5時間以上かけ、れいむの家庭事情について耳を傾け続けてくれた。

自分の産まれた広大な草原のこと、
両親はなぜか自分をゆっくりさせてくれなかったこと、
殺されそうにまでなり、おうちを飛び出して2日、
必死でこの洞窟までたどり着いたこと。

そして、全てを聞き終えたあと、

「んじゃ、ウチに来る?タダとはいかないけど。」

れいむを人間さんの群れに加えてくれたのだ。
ホントにタダとはいかなかったわけだけれども。



「ゆぅぅ、ゆっくりしたいよぉ。」

れいむも本当は、ゆっくりして、のーびのーびして、すーりすーりして、元気いっぱい遊びたかったが、
むきゅんちゃんは、れいむにそこまで自由を許してくれない。
そんなことを言ってみても、「これがあんたのお仕事なの。」と机の足元に放り込まれ、意見など一蹴される。

今日もろくに跳ねまわることも、のーびのーびすることもできず、
椅子に座ったおねーさんに踏まれ続けるか、
ちゃぶ台さんの前に座ったおねーさんに、クッション代わりにされるだけの一日が終わろうとしている。

「はやくしなさーい、寒いんだからー。」
「ゆゆっ!?ゆっくりしないでうんうんするよ!『もるんっ』すっきりー!」

部屋の隅に置かれたゆっくり用おトイレ(バニラ香料・おしり拭き付)で用を足しながら、窓の外へと耳を傾けると、
外に住んでいるのであろうゆっくりの、開放的にうんうんをする声が聞こえてきた。



「うんうんしゅるよ!しゅっきりー!」



れいむは今の生活を失いたいとは思っていないが、それでも思ってしまうのだ。
あんなに広い所で、誰にも急かされず、邪魔をされずにうんうんが出来たら、どんなに気持ちいいだろうか、と。






一方同時刻の居間。
むきゅんパパがテレビを見ながらお茶を飲んでいる所に、
庭から一仕事終えて帰ってきたむきゅんママが入ってきたところだった。

「おかえり、ママ。」
「ただいまー。ホント、あのコンポストには困ったもんよ。庭のど真ん中でうんうんするんだから。」
「それで、どうしたの?」
「お帽子とやらを燃やしてきてやったから、もう永くないでしょ。」
「・・・手加減ないね。」
「ウチのれいむくらい行儀良かったら加減するわよ。夜にギャーギャーうるっさいんだから。」



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「ゆぅ・・・ゆぅ・・・すーや、すーや。」
「れいむ、起きて。れいむー。」
「ゆっ!?ゆっくりおきるよ!」

過酷な虐待に耐える内、心労で疲れ果て、眠ってしまったようだ。
決して足の裏で揉まれるマッサージが気持よすぎて寝てしまったわけではない。
と、れいむは思っている。



「れいむー。今日の晩ご飯何がいいー?」

と聞いてくるのはむきゅんママ。
ちなみに、むきゅんちゃんやパパは「なんでもいい」「おいしいもの」のどちらかしか返事が返ってこないので、
最近ママから質問されることはない。

「ゆっ!れいむ、ゆっくりふーどさんがたべたいよ。」
「却下。金の無駄。」
「ゆぅぅぅぅ・・・、じゃあ、ぽとふさんがいいよ。」
「はいはーい。」

ちなみに、れいむに晩御飯のリクエストを聞くと、
大抵野菜を大雑把に切って、適当に寸胴なべで煮るタイプの料理が返ってくるので、
むきゅんママはとても機嫌が良くなる。

「ゆぅ~・・・。」

むきゅんママが鼻歌を歌いながら買い物に出かけていった後、れいむはため息をついた。
人間さんのご飯は無論、とてもゆっくり出来るが、れいむが食べたいものは別にあったのだ。

「ふーどさん・・・。」

ゆっくりフード。
それは、公園で仲良くなった、飼いゆっくりのお友達の誰もが食べていると言う、ゆっくり出来るご飯の頂点。
と、れいむが思っているご飯であった。
実態は、ゆっくり向けに栄養バランスを整えたペットフードである。
舌を肥えさせないように程よく不味く作ってあり、キャットフードなどよりは格段に低価格、
正直言って人間のご飯と比較するのは失礼な代物だ。



『きのうのふーどさんは、とってもとかいはだったわ。』
『わかるよー。しんはつばいのふーどさんなんだねー。』

― ゆぅぅぅ、れいむもゆっくりふーどさんたべたいよぉ・・・。 ―

『れいむも、ふーどさんにふさわしいゆっくりになってねー。がんばればなれるよー。』
『れいむはとってもとかいはだから、いつかおねーさんもふーどさん、かってくれるわ。』



れいむは、友だちゆっくりのように『飼いゆっくり』になって、ゆっくりしたフードさんを食べてみたいなぁ、
などと思いながら、今日も程よく冷ましてもらったポトフをお行儀よく口に運ぶのであった。

「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー!」
「さすがママ。野菜を適当に煮る料理に関しては天才的ね!」
「・・・嫌なら食べないでいいわよ。れいむが全部食べるから。ねー。」
「おかーさんのごはんはゆっくりできるよ!」
「ゴマすりが上手ね。れいむ。」

「ゆっくりむーしゃむーしゃしたよ!」
「ごちそーさまー。」
「デザート食べる?」
「ショートケーキかぁ。じゃあ、半分だけ。れいむ、半分食べなさい。」
「ゆぅぅ?」
「太っちゃうでしょ、いいから半分食べなさいよ。」
「ゆっ、ゆっ!・・・むーしゃむーしゃ、しあわせー。」

・・・そう、れいむの目標は、町のあらゆるゆっくりが望む至高の地位、
ゆっくりフードさんを食べさせてもらえる『飼いゆっくり』になることなのであった。





夕食後、むきゅん邸の庭。
この家の庭には、一面芝生が敷いてあるが、隅の一角だけ、黒い土がむき出しの場所がある。
一見花壇のようなこの場所に、むきゅんママはポトフの調理中に出た生ゴミを無造作にばらまいた。
ばらまいた後は、後ろも振り返らずにスタスタと家に戻る。

「ゆっ、いったのぜ。」
「ゆっくりしたおやさいさんだよぉ。」

実はこの場所、むきゅんママが『コンポスト』と呼んでいる場所には、これまた『コンポスト』と呼ばれる駄ゆっくりが大小十数匹住んでいる。

「ゆふーん、おぼうしいっぱいだよ!まりさはかりのてんさいだね。」
「ゆぅぅ、まりさははんぶんだけだよぉ。しょうがないから、くささんもとってかえるよ。」

お帽子いっぱいに生ゴミを集められなかった不足分として、ブチブチと雑草をむしっていく成体まりさ達。
この群れでは、要するに生ゴミを早くかき集めることができるゆっくりが、狩りの名人と称賛される仕組みになっている。
ゴミと入っても出来立てほやほやの生ゴミなのだから、腐ったり臭いを出しているわけでもなく、ゆっくりの食事としては上等な部類だからだ。
そして狩りの下手なゆっくり達は、雑草などを生ゴミ回収の後でかき集めることになる。

むきゅんママとしては、雑草の処理もやってもらえるので、一石二鳥というわけだ。



「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー!」×5
「おやさいしゃん、ゆっくちしちぇるにぇ!」
「れいむのまりさは、かりのてんさいだよ!」
「ゆふーん。それほどでもあるよぉ。」



「ママも、れいむと同じゆっくりとは思えない扱い方するわねぇ。本人達は幸せそうだけど。」
「れいむは行儀いいでしょ、おとなしいし。きっといい親に育てられたのねー。あのコンポスト共とはエライ違いだわ。」
「うーん。まあ、育ちは確かに違うみたいだけど・・・。あ、れいむ、ビスケット食べる?」
「むーしゃむーしゃ、しあわせー。」



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「むきゅーん。テレビ終わったら風呂入っちゃいなさーい。」
「はーいママ。れいむ、お風呂入るわよ。」
「ゆ!?おみずさんいやぁぁ!」
「逃げんな。一緒にベッド入るんだから、キレイになってもらうわよ!」
「ゆぎゅぅぅぅううう!」

夜が更けても、れいむの受ける虐待はまだまだ続く。
毎日むきゅんちゃんが行う強制水浴びも、れいむの精神をすり減らす狂気の拷問であった。



バシャバシャバシャ、ジャー!

「ゆぴぴぴぴいい!おぼれりゅぅぅううう!どげじゃうぅぅぅ!」
「たらいのお湯で溺れるわけないでしょー!逃がさないわよぉ!」

ちなみに本来ならば、きれい好きのゆっくりは、体が溶けるリスクを冒してでも水を浴びるほどの水浴び好きだ。
が、初めての水浴びのときは、やはり親の見守る中で、恐る恐る水辺に近づくもので、本能的には水の恐怖というものを十分に理解している。
水浴びが好きなのは、『きれいになるとゆっくり出来る』が親とのゆっくりした幼少期の記憶に結びつき、死の恐怖を覆い隠すためだ。
そんなわけで、赤ゆっくりの頃に両親が水浴びをさせてくれたことがなかったため、れいむは水浴びが大の苦手である。

プラスチックのたらいにためられたお湯を、浴室中にまき散らしながら抵抗するが、
自分の入浴のついでなので、むきゅんちゃんも衣服は脱衣済みであり、お湯を浴びるくらいではひるまない。

「ほーら、捕まえた!おリボンいただきー。」
「ゆぁぁぁあああん!ゆっぐぢでぎないぃぃぃ!」
「ほんじゃ、頭洗うわねー。ごーし、ごーし」
「ゆびゅびゅびゅびゅ・・・」
「こらぁ、しゃべらないで、あんっ、くすぐったいでしょぉ。んっ、ぁぅ。」

ふにふにふにふに、バシャーン。

むきゅんちゃんも慣れたもので、れいむの顔面を自分の股の付け根に押しつけるようにして、
太ももでれいむを挟み込んでしまうと、言葉とは裏腹に、ゆっくり用シャンプーで優しくれいむの頭を洗ってあげる。
髪の毛をきれいに流してあげたら、ゆっくりソープで全身を、手のひら全体を使って優しく流し、
仕上げにゆっくリンスを髪の毛とお飾りに馴染ませる。
この間中れいむを股に挟みっぱなしなので大変そうだが、むきゅんちゃんは結構楽しんでいるらしく、
毎晩、色っぽい声をあげながらじっくりとれいむを洗ってあげているようだ。

洗い終わってしまえば、後は大きめの桶にれいむを入れてやり、タオルを頭に乗せてやって湯船に浮かべる。
体を洗われるのは嫌だが、湯船に浮かんでいるのは、まりさになった様な気分でなかなか楽しいようである。

「ぷーか、ぷーか、しあわせー。」
「あんたも現金ねー。」



ブォオオオオオーッ、

「ゆぴょぉぉぉぉぉ、かぜさんはゆっくりでぎないぃぃぃぃぃ・・・」
「我慢しなさい。」

お風呂からあがったら、むきゅんちゃんは自分の髪の手入れもそこそこに、
れいむにドライヤーで冷風を浴びせてやりながら、丁寧にブラッシングをしてあげる。
最後にゆっくりスキンオイルをまんべんなく全身に塗りこんで、
ゆっくりパウダーをパタパタとまぶしてあげればお手入れ完了だ。

「すっきりー!」

だが、とれいむは思う。
水浴びはすっきりーだし、お湯の上にぷーかぷーかするのは確かに楽しいが、
こんなに念入りにお湯に漬けられるなんて、ゆっくりできない。
きっと『飼いゆっくり』のみんなは、飼い主さんにぺーろぺーろして、きれいきれいしてもらっているに違いない、と。

「おねーさん。」
「なーにー?」
「れいむ、おねーさんにぺーろぺーろしてほしいよぉ。」
「無理。」
「どぼじでぇ。」
「何で足の下に敷いた饅頭をなめなきゃいけないのよ。なにそのプレイ?」
「ゆっぐぢでぎないぃぃ。」






一方その日の昼、庭のコンポスト一家。

「ぺーろぺーろ、ぺーろぺーろ。」
「ゆぎゅぅぅ・・・」

母れいむは、懸命に子れいむをぺーろぺーろしているが、子れいむは元気がない。
その原因は、子れいむの後頭部にジワリと広がる、黒いシミ、カビであった、

今は暦的には間もなく冬という時期であり、さすがに寒風吹きすさぶ中で水浴びするゆっくりはいない。
それでも、ゆっくりの汗や体液には抗菌作用があるので、通常はカビが生えることはまずない。

だが、このれいむ、他のおちびちゃん達よりも食いしん坊で、
しばしば夜中に貯蔵食料を盗み食いし、そのまま貯蔵庫の中で眠ってしまうという悪癖があった。
これ自体は野生でも程度の低い赤ゆっくりなどの中では珍しい癖ではなく、
大抵は冬の間に食糧が足りなくなる原因となるだけなのだが、ここではほかにも問題があった。

父まりさが集めてくる食料が、むきゅんママがばら撒くゆっくりした生ゴミが中心である。
しっとりと濡れて、放っておくと数日で腐り始める生ゴミ、その中で一晩中眠っていれば、カビも生える。

「ゆふぃぅぅぅ・・・おきゃーしゃん、かゆいよぉ。」
「ゆぁーん。おにぇーしゃん、ゆっくちちちぇー。」

「・・・れいむ、もう・・・」
「まりさぁ、やめてね。おちびちゃんは、れいむたちのかわいいおちびちゃんなんだよぉ。」

父まりさとしては、なるべく早く決心しなければならない。
子れいむのカビは、死の病だ。そして、放置していると家族全員に伝染してもおかしくない。
かゆいと言っている背中を棒で掻いてあげると、皮膚がボロボロと崩れるので、
下手に悪化してからではおうちから出すのに苦労することだろう。



「おきゃーしゃん、おとーしゃん、・・・どうちて?ゆっくちさせちぇー!おうちにいれちぇー!」

結局この夜、カビ子れいむはおうちから追い出され、二度と入れてもらえることはなく、

「・・・夜騒ぐなっての。」
「ゆっく『ボウッ』・・・ゆびゃぁぁぁあああ!あじゅぃぃいいいい!!!」

むきゅんママの手でおリボンに火をつけられ、汚物として処分された。



−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−



「先におふとんあっためててね。」

ずぼりっ!もぞもぞ。

「ゆぴゅぅぅぅぅ。ふわふわー。」

お風呂からあがると、むきゅんちゃんは髪とお顔のお手入れをしてさっさと眠ってしまう。
ゆっくりばりの早寝早起きが習慣なのだ。

「もうあったまったかしら。『もそり』ああ~、あったか。いい湯たんぽね。」
「ゆっく、ゆっくぢ。」
「ベッドから出るな。足元に居なさい。『もにゅもにゅ』おやすみー。」
「ゆぅぅぅぅぅー。ゆっくりおやすみー。」

おやすみとは言っても、むきゅんちゃんが眠ってしまうまで、
つま先でむにゅむにゅと突っつかれたり、かかとを頭に乗っけられたり、
太ももでむぎゅむぎゅと挟まれたりと、なかなか落ち着けるわけではない。

結局れいむがゆっくりと眠ることができる、むきゅんちゃんの枕横に移動できるのは、
午後8時を回った深夜になってからであった。

「ゆぅ、おねーさん・・・。」
「すぅ・・・すぅ・・・」

れいむは今日も、むきゅんちゃんに言えなかったことがある。



『れいむをかいゆっくりにしてね!』



怖かったのだ。現在の生活を失ってしまうのが。
れいむは、現在の生活に完全に満足はしていないが、それでも両親の下での虐待の日々、
死を覚悟した程の逃避行の苦痛、恐怖を思い出せば、十分に恵まれていると思わざるを得ない。

だが、公園で会う飼いゆっくりのみんなは、もっともっとゆっくりして見える。

より多くのゆっくりを求めるのは、れいむだけでなく、全てのゆっくりの本能であった。

れいむは自分のおリボンの端っこをちらりと見る。
れいむは気づいていないが、生まれつきついていた小さな切れ目はむきゅんちゃんが、出会った初日に補修している。
その傷一つないれいむのおリボンに付けられているのは、金色に光る小さなバッジ。
最近、「ゆっくりしたゆっくりだって認められたらもらえるのよ。」と言われ、
むきゅんちゃんに連れられて行った建物で、色々やった後にもらえた、れいむの宝物であった。

「このぴかぴかさん・・・もっとたくさんもらえたら、かいゆっくりさんになれるかなぁ?」

でも、飼いゆっくりのみんなだって、ぴかぴかさんは一つしかつけてなかったと思う。
じゃあ、ちぇんの付けてた茶色いぴかぴかさんや、ありすの付けてた銀色のぴかぴかさんももらえるように頑張ろう。
ちぇんやありすみたいに、たくさん、たくさんゆっくりしたゆっくりなら、きっとおねーさんも飼いゆっくりにしてくれるよね。
そんなことを考えながら、れいむは今日も眠りにつく。



「すーり、すーり。すーり、すーり。」

むにゅん、むにゅむにゅ・・・

れいむは、自分がついに受けることができなかった、両親の愛情を取り戻そうとするかのように、
むきゅんちゃんの控え目な胸にすーりすーりを繰り返す。
代償行為でしかない、だが、れいむはわずかながら自分の心の傷が癒えていくのを実感していた。

「むぅんん・・・甘えんぼねぇ、ホント。」
「ゆぅーん。おこしちゃったよ、ごめんね、おねーさん。」
「まあ、いいわ。ゆっくりおやすみなさい、れいむ。」
「ゆーん、ゆっくりおやすみー。」






同時刻、庭のコンポスト達のおうち。

「おきゃーしゃん、しゃむいよー。」
「ゆっくちさせちぇー。」
「おちびちゃんたち、もっとあつまって、すーりすーりしようね。すーり、すーり。」
「ゆぅぅぅ、ごはんさんもたりないし、どうじよー。ふゆさんがきちゃうよぉ。」

コンポスト達のおうちは、雨風の心配こそないが、石造りの寒々としたもの。
草のじゅうたんだけでは十分に温かくならず、すーりすーりで暖をとる他無い。

「すーりすーり、すーりすーり、・・・すっきりー。」
「ゆぁぁぁ!すっきりしちゃったぁぁあああ!!!」
「おきゃーしゃん、おなかしゅいたー。」
「ゆっくちさせちぇー。」

すーりすーりが増えれば、それだけ事故も起きやすくなる。
最悪の状況で、また家族が増えてしまった。

それに、冬は十分なご飯が集まらず、ほとんどはむきゅんママの出す生ゴミに頼らざるを得ない。
一月以上前に生まれたおちびちゃん達も、未だに赤ちゃん言葉が抜けず、狩りも上手くできない。
食い扶持ばかりが増えていく悪循環であった。

「ゆぎぎぎ・・・これもぜんぶれみりゃのせいだよ!」
「そうだよ!おとーさんやおかーさんやむれのみんながげんきだったら、もっとゆっくりできたんだよ!」

父まりさも、母れいむも、群れが健在だったらごはんももっといっぱい手に入ったはず、と、
まったく的外れな怒りを、かつて群れを襲ったれみりゃに対してぶつける。
実際は生ゴミを分け合うゆっくりの数が増えて、ますますゆっくり出来なくなるだけにも関わらず。

「これじゃあ、ゆっくりえっとうっできないよぉぉぉおおお!」×4

だが、そんな心配は、間もなく必要なくなる。






むきゅん邸、居間。

「ほんじゃ、そろそろコンポスト間引いてくるわ。」
「ママー。火の始末には気をつけてねー。」
「水バケツ持って行くから大丈夫よ。それにしても、一か月でメンテが必要になるなんて、ホントアホばっかり。増えすぎよ。」
「新しいゆっくり拾ってきた方がいいんじゃない?」
「いいのよ。ストレス解消になるし。」

むきゅんママの手にはバーベキュー用ライター。
そして頭にはずいぶん前に入手した、ぼろぼろのれみりゃの帽子が乗っかっている。
間引きに行くのが人間だとばれると、警戒心が強くなって、生ゴミへの食い付きが悪くなるのを経験上知っているためだ。

「それならいいけど・・・。しかし、ホント、ウチのれいむとえらい違いだよねー。全然学ばないし、うるさいし。」
「むきゅんも、どこから拾ってきたか教えてくれないのよね。きっと親は飼いゆっくりだったんじゃないかしら。おとなしいし。」
「実はお小遣いためて、ショップから買ってきたとか?」
「うーん。そんなにゆっくり飼いたかったのかしらねぇ・・・」



その夜、れいむの産まれたゆっくりプレイス、むきゅん邸の庭の隅っこでは、ほぼ毎月恒例の惨劇が繰り広げられた。

「うー!うー!(何やってんだろ、私。・・・楽しいけど。)」
「ゆぅ・・・ゆ?れみりゃだぁぁぁああああ!!!」
「ゆゆっ?うるさいよぉ・・・れみりゃだぁぁぁあああ!!!」

「ゆぴぃぃぃいいいい!はなしちぇぇぇぇええ!」

火に包まれて間引かれていく群れのゆっくり達。
生き残るゆっくりは決まっている。
成体直前まで成長していたまりさ3匹、れいむ3匹。
いつもどおり、おうちの裏の茂みへと逃げ切り、生き延びる。
単に、生ゴミの処理に適正な数であるというだけの理由で。

そして、その中にれいむの両親と、れいむの姉妹の生き残りであった2匹は含まれていなかった。




















しばらくエロが書けてないんで、ムラムラがたまる一方。
今回も全然エロを絡ませる隙がなくってもうツライツライ。
それに中途半端に長くなっちゃって、今回のSSは少々内容がわかりにくくなっちゃったかもしれない。





おまけ:キャラ設定



おねーさん(本名:むきゅん)

れいむを拾ってくれた中学三年生。
元々はゆっくりを踏んだり指で突っついたりする感触が気持ちいい、というだけの理由でれいむを拾った。
最近は風呂場やベッドの中でも役に立つということを知り、本格的に愛着を持ってきているようだ。
下着は履かない派で、学校の男子や男性教師には大変人気がある。
母方の親戚にあきゅんちゃん、うにゅんちゃんという同級生がおり、仲良し。



むきゅんママ(本名:さっきゅん)

普段着がミニスカフリルのメイド服で、ゆっくりSMクラブ『不夜城』のオーナーという顔も持つお母さん。
家族の前では温厚だが、むきゅんちゃんと異なり、ゆっくりに対しても、男性に対してもドS。
ちなみに店では緊縛プレイの重鎮・すっきりヤマメと、ハード調教で期待のルーキー・すっきりフランが人気を二分しており、
経営は好調。一応まだ20代。



むきゅんパパ(本名:天太)

冬でもスパッツとタンクトップで過ごすヒゲマッチョ。
独特の髪型で、近所の小学生にはテンタクルおじさんと呼ばれている。
昼間は河川敷でエロSSを書き、夜はママの体を慰めるお仕事に従事している72歳。




挿絵 by儚いあき

挿絵 byべーじゅあき




餡小話掲載作品


プラス本作品


『町れいむ一家の四季』シリーズ(ストーリー展開順・おまけについては何とも言えないけど)

春-1-1. ふたば系ゆっくりいじめ 161 春の恵みさんでゆっくりするよ
春-2-1. ふたば系ゆっくりいじめ 154 竜巻さんでゆっくりしようね
春-2-2. ふたば系ゆっくりいじめ 165 お姉さんのまりさ飼育日記(おまけ)
春-2-3. ふたば系ゆっくりいじめ 178 お姉さんとまりさのはじめてのおつかい(おまけのおまけ)
春-2-4. ふたば系ゆっくりいじめ 167 ちぇんの素晴らしきゆん生(おまけ)
春-2-5. ふたば系ゆっくりいじめ 206 町の赤ゆの生きる道
夏-1-1. ふたば系ゆっくりいじめ 137 真夏はゆっくりできるね
夏-1-2. ふたば系ゆっくりいじめ 139 ゆっくりのみるゆめ(おまけ)
夏-1-3. ふたば系ゆっくりいじめ 174 ぱちぇと学ぼう!ゆっくりライフ(おまけのおまけ)
夏-1-4. ふたば系ゆっくりいじめ 235 てんこのインモラルスタディ(おまけのおまけのおまけ)
夏-1-5. ふたば系ゆっくりいじめ 142 ゆうかりんのご奉仕授業(おまけ)
夏-2-1. ふたば系ゆっくりいじめ 146 雨さんはゆっくりしてるね
夏-2-2. ふたば系ゆっくりいじめ 205 末っ子れいむの帰還-
秋-1.  ふたば系ゆっくりいじめ 186 台風さんでゆっくりしたいよ
秋-2.  ふたば系ゆっくりいじめ 271 都会の雨さんもゆっくりしてるね
翌年   ふたば系ゆっくりいじめ 224 レイパーズブレイド前篇(おまけ)



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感想

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  • れいむが羨ましいです・・・・だがゆっくりの分際でこんな事やってるなんてけしからんです。魂入れ替えたいです。 -- 2018-07-16 20:18:40
  • 風呂で挟まれたい!れいむ!変われッ! -- 2016-09-17 11:41:00
  • 舌は肥えまくってるだろうによく金バッチとれたな -- 2016-07-14 02:57:51
  • 意外なヲチ。流石D.Oさんは上手いわ -- 2013-08-20 01:16:52
  • あのれいむになーーーりーーーたーーーい!!!!! -- 2013-06-10 19:55:08
  • クソッ、人間の尊厳を無くした変態共が……!こんなうらやま……けしからん話に食いつきやがって! -- 2012-11-28 14:54:42
  • れいむのしあわせとゲス共へのざまぁwな仕打ちが合わさったゆっくりした作品でした -- 2012-10-13 14:41:52
  • 父ちゃんヒモじゃねえかw

    それにしても、れいむは他の飼いゆっくりに金バッジの価値を教えられてないんかね? -- 2012-08-15 13:12:13
  • ええ話や -- 2012-07-13 13:51:40
  • 虐待じゃねぇー -- 2012-07-11 19:31:48
  • れいむ~~~う~~ら~~~や~~~ま~~~け~~~し~~~か~~~ら~~~ん~~~ -- 2012-03-17 18:00:01
  • ぱんつはいてないことに誰かつっこめよ -- 2012-02-23 23:51:26
  • オチで笑った上に感心しましたww -- 2011-12-19 01:03:24
  • 絵がかわいいな。 -- 2011-10-13 19:51:35
  • オチwww
    -- 2011-09-20 19:23:13
  • 太ももはさまれたい -- 2011-08-04 20:39:20
  • れいむ、てめぇちょっと俺と魂入れ替えろ -- 2011-05-05 16:45:43
  • 20代が中3のむきゅんちゃんの母だと……!!
    でもこのママならなぜか納得できる……!! 不思議……!! -- 2011-04-30 21:50:39
  • 母親何やっているw
    しかしこのれいむ・・・すごく羨ましいです
    貧乳欲しいです -- 2011-02-14 22:11:27
  • キャラ設定の適当さに笑ったw -- 2011-02-06 07:42:23
最終更新:2010年02月20日 19:31
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