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*キャプテン翼VS 【きゃぷてんつばさ ばーさす】 |ジャンル|サッカーシミュレーション|&image(https://www.suruga-ya.jp/database/pics_light/game/165000288.jpg,height=200)| |対応機種|ゲームボーイ|~| |メディア|2MbitROMカートリッジ|~| |発売元|テクモ|~| |開発元|グラフィックリサーチ|~| |発売日|1992年3月27日|~| |定価|4,200円(税別)|~| |判定|なし|~| |ポイント|シリーズ初の対戦モードを搭載&br()携帯機でサッカーシミュレーションを再現&br()普段のテクモ版キャプテン翼とは違和感がある部分も&br()逆転要素が削られゲームバランスが悪化|~| |>|>|CENTER:''[[キャプテン翼シリーズリンク>キャプテン翼シリーズ]]''| #contents(fromhere) ---- **概要 ゲームボーイでは初となるテクモの[[キャプテン翼>キャプテン翼 (FC)]]シリーズ。本作では小学生編を舞台としており、前半の国内編は修哲小戦や全国サッカー大会を題材とした原作に近い展開、後半は原作漫画よりも早い段階でJr.ワールドカップに挑戦するというアニメ&映画版の展開を取り入れている。 本作はスーパーファミコンでの次作となる『[[キャプテン翼III 皇帝の挑戦]]』の約4ヶ月前に発売されており、IIIに先駆けて様々な新しい試みを取り入れた実験作的な側面も持っている。 ---- **特徴 -基本的なシステムはファミコン版『[[キャプテン翼II スーパーストライカー]]』を踏襲している。 --ポジションチェンジ、ワンツー、スルー、浮き球を巡っての競り合い、GKとの1対1の競り合い、GKが止められなかったシュートの選手によるカバーなども再現されている。ただし前作で強すぎたスルーは弱体化している。 --ロスタイム無し、試合途中の停止要素無し((ボールのライン越えや反則等))、フォーメーションが4-3-3固定、ディフェンスタイプの選択が不可能などカットされている要素もある。 -試合時間が前後半20分、延長戦は各5分に短縮された。 -シリーズで初めて、通信ケーブルを使っての対戦が可能になった。対戦にはソフトと本体が二つ必要。選手選択はPK勝負をして勝った方が1選手の優先獲得件を得て、これをイレブンが決まるまで繰り返す形式。 --なお1P対CPUでは好きなチームを選んでの対戦が可能だが、本編中で手に入るスコアメモがないと遊べない。 -主な登場人物は小学生編+ジュニアユース編に登場したキャラ。カルロスも登場する。 --本作オリジナルキャラとして、イングランド代表のリチャードという選手が登場する。強引にシュートへ持ち込むジェットシュート、殺人タックルなど物騒な必殺技を持っているラフプレイヤー。 ---一応アニメ映画版共にイングランド出身のリチャードという名前があるモブキャラがいるにはいたが、必殺技を打つ等の活躍はしておらず、当人かは不明。 --この他IIのオリジナルキャラの一部(バビントン、サトルステギ、カペロマン、メッツァなど)が登場する。 -従来作で「てきの ○ばん」と呼ばれていたモブ敵選手に全て固有の名前が付いた。これらはメーカーから一般公募されたものを採用している。 --「ぬのぶくろ(布袋/ほていの読み間違いか?)」「ミックヨシダ」など妙な名前の選手を探すのも楽しみの一つ。 --またこれに伴い、従来作では名前で呼ばれていなかった原作キャラ(ふらのFCの小田、ボッシ、アモロなど)もちゃんと名前で呼ばれるようになった。 -天候の概念が追加され、雨天での試合も行われるようになった。雨天時はコマンド選択時に、雨で滑って能力値に関係なく行動が失敗してしまうことがある。 --IIIでは採用されなかったが、IVで仕様変更して復活している。 -マークの概念が仕様変更して復活した。本作ではミーティングなどでマークする敵選手を指定することで、レーダー上でマークした敵選手の位置が分かるようになる。1試合につきマークできるのは3人まで。III以後の作品と違って特定の味方選手にマークさせることはできない。 -本作では必殺パスや、タックル以外の殆どの必殺ディフェンスが存在しない。 --その代わり、従来作では見られない新必殺技が採用された。また、前々作のIにあったダイビングヘッドも復活している。 --翼は原作中学生編に先駆けてドライブシュートを修得したり、原作花輪戦で披露したゴールポストを蹴った跳躍からのオーバーヘッドキックが『トライアードオーバーヘッド』として採用されたりしている。 --日向と沢田の必殺ワンツーは、時代に合わせて東邦コンビから明和コンビに名称変更されている。 -スコアメモ(パスワード)形式を採用したキャプテン翼シリーズは本作で最後となった。 ---- **評価点 -ゲームボーイの限られたスペックで、可能な限り据え置き機に近いサッカーシミュレーションを再現している。 --小さい液晶画面ながら画面情報の視認性は良好。キャラクターはやや小さめでアニメパターンも少なめながら、ファミコン版の雰囲気はしっかり再現している。主要選手にはカットインも存在。 --パスルートや接触時の駆け引きも据え置き機作品と同様に味わえる。 --1試合にかかる時間が15分程度(延長やPKがなかった場合)と前作まで同様に短く、展開がスピーディー。 -III以後の作品に繋がる実験的な試み。 --2PやCPUの対戦モードで、従来使えなかったチームや選手を使えるようになった。 --対戦モードはIII以後の作品で『オールスターモード』として更に昇華され、キャプテン翼シリーズの大きな目玉要素として確立した。その土台を作った功績は大きい。 --全ての選手に固有の名前を用意するのもIII以後の作品に引き継がれた。 -BGMの質の高さ。 --殆どのBGMは前作IIで使用されたものだが、ゲームボーイの音源で可能な限り原曲に近いクオリティを保っている。タイトル画面に使われているオリジナルのBGMも良質の出来映え。 --ライバルキャラではピエールやディアスに『華麗なドリブル』、ナポレオンには『殺人タックル』、パスカルには『ジャンピングボレー』等が追加され手強くなった。シュナイダーは『パワードリブル』や必殺ディフェンスの『カイザーアタック』を修得し、攻守で隙がなくなった。 --本作限りで撤廃されてしまった必殺技も多いが、修哲トリオのように以後の作品で復活したものもある。名称を変えて復活したものも。 -国内編でのゲームバランスは比較的取れている方で、程よい緊張感を味わえる。ジュニアワールド編以後に関するバランスは問題点を参照。 #region(最終戦について。ネタバレあり) -本作の最終戦では、シュナイダー、ディアス、ピエール、ナポレオン、ヘルナンデスなどこれまで登場した世界のトッププレイヤー達が一同に集結した『せかいせんばつ』が相手となる。このような展開は今までのテクモ版キャプテン翼シリーズではなかったことだった(IIでも全日本やブラジルのオールスターと戦ったが、これらはあくまでも同一国籍の選手達との戦いだった)。言うまでもなく強さは圧倒的。 --カルロスはこのチームの隠し球として登場。II同様にミラージュシュートや分身ドリブルなどを使いこなす。ただし能力はシュナイダーより低い。 #endregion ---- **賛否両論点 -従来キャラに必殺技が追加され、個性が広がった。 --例として翼は必殺ドリブルが無くなって突破力が減少するが岬が必殺ドリブルを使えるようになっていたり、井沢・来生・滝の修哲トリオは同名の必殺ワンツーが使用可能になり、来生はダイビングヘッドを井沢はオーバーヘッドキックも使えるようになった。松山は必殺技としてスライディングタックルが追加され、後の作品ではイーグルタックルとして定着し攻守の要に成長するきっかけを作った。 --だがキャラゲーとして原作との整合性を意識すると問題があるものが多い(後述)。 --立花兄弟は必殺技の種類が大幅に減り、''必殺ディフェンスが完全に消失''。((必殺ディフェンスの基本形であるスカイラブハリケーンは中学3年時に開発した技なので、まだ使えない。)) ---更に協力シュート系(ツインシュート、ダブルシュート、トライアングルシュート等)は''使用した両方がガッツを消費する''仕様となっている為に打てる回数も大幅に減少してしまっている。 --石崎の顔面ブロックは他作品だと敵がシュートを撃たないと発動しない特殊な必殺技だが、本作では普通のディフェンス技扱いされているため、相手が何を選択しようと無関係にボールをカットする。パスはまだしも、''敵のドリブルに顔面から突っ込む''のはどう考えても危険すぎる。 --前作から登場したオリジナルキャラのうち、キムとシャ、サトルステギ、メッツァのように必殺技が完全消失したキャラがいる。ただし本作の時代設定はそれより6年ほど前になるため「消失した」のではなく「後になって体得した」という考え方もできる。 ---ただしメッツァは代わりに攻撃ステータスが上がり、やたら積極的にシュートを狙ってくるようになった。 --ヘルナンデスは本作で初めて必殺技が実装されたが、''テレパシーキャッチ''と言う超能力じみた技である。さすがにこれは本作限りとなり、III以降は彼の代名詞とも言える『黄金の右腕』が必殺技になった。 -明らかに優遇されている日向と若島津。 --テクモ版の日向は「シュート・タックル・競り合いが強く、他の能力はいまいち」と言う尖ったパラメータであることが多いが、本作では前作からの長所をそのままに、ドリブル値が日本の選手で最も高く、他のステータスも翼や岬に匹敵する万能キャラになっている。今回はネオタイガーショットを持っていないが、その分タイガーショットや強引なドリブルが強い。 ---一応、小学生編の日向は全体的に高い能力を持っていたので妥当な評価とも取れる。 --本作の若島津は森崎や若林を遙かに凌ぐステータスを誇り、ジュニアワールド編の敵のシュート力は若島津で受けることを前提とした能力値にされている。 ---更に必殺技に『手刀パンチング』『後ろ回し蹴り』が追加された。これらはIII以後、前者は三角飛び失敗時に低確率で出る特殊ディフェンス、後者は空中での競り合い時に使える『浴びせ蹴り』として継承された。 --以後の作品では、日向は従来通りの能力傾向に落ち着いた。若島津はさすがに最強ではなくなったが、若林との能力差は縮まり、VSの必殺技も継承されて使いやすくなった。 -本編のテキストにメタ発言が混じっていることがある。 --例を挙げると、南葛FC対武蔵FCの試合では「つばさくん たい みすぎくん こくないでの たいけつは ゲームボーイがはじめてです!」とアナウンスされる。 #region(日向のメタ台詞) ---世界選抜戦前の日向の「このあと スーファミでのしごとも はいってるんだぜ!」と言う台詞も一部で有名。IIIの宣伝であることは明らかだが、IIIは(小学生編の彼らからすれば)ずっと先の時代の話である。 #endregion -本作でも実況はチャーリーが行っている。ゲームボーイの画面の都合上グラフィックは表示されず、ラジオ放送という扱い。 --だが「(前略)にほんびいきで おおくりします」「シュナイダーくん にほんをなめているのか(後略)」など、公平性を欠くような中継がされることがある。 #region(シュナイダーの扱い) --今回のシュナイダーは西ドイツJr.戦では、試合後半にならないと出場しない前作のコインブラのような扱いになっている。チャーリーの台詞を見る限り、それまでの試合でも温存されていたようである。 ---この展開はシュナイダー初登場となるアニメ映画での扱いを踏襲しているとも言える。映画ではGKのヘフナーともどもヨーロッパ選抜の切り札として扱われており、試合が不利になるまで出場してこなかった。 ---ひとたび出れば、全選手中最大を誇る圧倒的な能力値と強烈なファイヤーショットでこちらを苦しめる。今回は前述の必殺技の追加でより隙がなくなった。 ---世界選抜では前半からフル出場する。ステータスは何故か西ドイツの時より下がっているが、それでもなお世界選抜の選手では最大の能力を誇り、十分に手強い。 #endregion -前作を知っていると違和感のあるBGMの選曲が多い。 --南葛FCのBGMは前作のサンパウロFCの曲、日本Jr.のBGMは前作の南葛のBGM。アルゼンチンJr.戦はフラメンゴ、西ドイツJr.戦はジャパンカップ編の敵チーム曲となっている。また、東邦(明和)戦のBGMが世界選抜にも流用されている。 -本編のボリュームは小さく、ほぼIと同じくらいである。 --ストーリーも他のテクモ版キャプテン翼シリーズと比べて「新必殺技の体得」「登場人物達の思惑や葛藤」といったドラマチックな展開が少なく、起伏に乏しい。試合中のイベントも非常に少ない。 ---- **問題点 -小学生編が主要な舞台であるため、原作中学生編から登場する新田・早田・次籐・佐野と言った一部の選手が登場しない。佐野や新田は半分どうでもいいようなものだが、次藤、早田不在に加えて立花兄弟の必殺ディフェンスが全廃された影響で、日本チームのDF不足が深刻になってしまった。 --ただしこれは原作通りなので致し方ない。当時は本当にDFキャラが少なく小学生編の全国大会で優秀選手に選ばれたDFは南葛の高杉、明和の長野、&bold(){常陸の大里}の3人だけ((常陸FC:準々決勝で武蔵FC相手に一時は1点リードを奪い三杉を引っ張り出す健闘を見せるも、その後三杉の加わった武蔵にすぐ逆転され、そのまま大差をつけられ敗退した。大里のフルネームは「大里次郎」作中では名前すら呼ばれなかったので「誰なんだこいつ?」と思った人多数。))。 --本作で初めて日本Jr.代表に選ばれた小田が攻守の両方で必殺技を修得しているが、能力不足のため補い切れていない(とはいえ、これでもマシな方なので起用することが推奨される)。せめてパワータックルを使える花輪SSの大丸((原作では中学生編で登場したキャラ。))ぐらいは入れてほしかったと思った人多数。 ---その為か必殺技を一切持たない高杉もDFとしてスタメンで活躍でき、石崎や松山の重要度も増した。また後述の沢木も強力なタックル技を持っているためDFとして起用できる(小田同様本来はFWだが)。 -ゲームとして個性付けになった反面、原作との相違で違和感が否めないものも多い。 --上述の通り翼がドライブシュートを体得したのは中学生であり、ちゃんとした難しい原理があるシュートを小学生の翼が使うのは無理がある。日向のタイガーショットのように「とりあえず思いっきり蹴ったシュート(一応吉良監督の沖縄特訓の賜物ではあるが)」ならまだしも。 --中学編以降ゲームでは登場しない明和の沢木(初代では「てきの9ばん」にあたるが技はない)が使う「集団タックル」は本作だけの存在。あの明和特攻スライディング部隊を自分の手で繰り出せる唯一の作品である。さらに全日本で起用して繰り出せば、''翼・日向・岬・松山・三杉・立花兄弟たちが敵選手めがけて殺到する「全日本特攻スライディング部隊」''という事になる。ゲームボーイなのでそのように見える演出は無く、外見はただのスライディングタックルでしか無いのだが、そのような光景を思い浮かべるだけでも夢の必殺技と言える。 ---だが実際には、小学生時代にこの「明和特攻スライディング部隊」発進指示を出す司令塔は日向であり、&bold(){沢木がその司令塔となったのは日向不在となった明和東中に進んでから}。そのため小学生時代に沢木がこの司令塔になっているのには違和感がある。まあ前述の通りDFが駒不足なので強力なタックル役として機能してくれるのはプレイヤー目線ではありがたいかも知れないが。 --原作の岬はダイビングヘッドを得意としており、それによる劇的なゴールも何度も描かれている。FC版初作以来久しぶりにダイビングヘッドが実装されたにも関わらず、岬はそれを使えずIIに倣ってジャンピングボレーになってしまっている。またオーバーヘッドキックが使えなくなってしまった。 --ダイビングヘッドが使えるようになった来生は原作で「点取り屋FW」を異名を持っているものの浮き球は高ければトラップしてシュート、低ければボレーシュートが多く、ダイビングヘッドどころかヘディング系でのシュートはほぼゼロ(競り合いなどで使ったのみ)だったので、原作のイメージに合うものではない。 --井沢のオーバーヘッドキックに至って原作では&bold(){小学生編は勿論、中学編を含めてシュートどころかそれに該当するものを一度も繰り出していない}(むしろ長身を生かしたヘディングやダイビングヘッドが多く初代ではダイビングヘッドを使えていた)。また、これにより&bold(){オーバーヘッドキックを原作で何度も繰り出していた岬が使えず、一度も使ったことがない井沢が使える}という原作からすればありえないことになっている。 ---一応ボールの高低で能力配分ができない本作のシステムの都合上、長身でジャンプが得意なの井沢が「高いボールに強い」を際立たせるため高いボールの強シュートにあたるオーバーヘッド、相対して来生は「低いボールに強いキャラ」として強シュートにあたるダイビングヘッドというバランスを取るためだろうが、ステータスによりある程度差別化はできているので充分ではないか。また、滝は他の2人も使える修哲トリオのワンツーしかないなど本来同等のはずなのに扱いが悪い。 --ふらのの小田や松山のダイビングヘッドも同様で原作では描かれていない。スライディングタックルについては中学生編でフェイントダブルタックルを披露した松山はともかく、チームでCFだった小田には小中学ともにタックルにあたる描写はない。なぜこんなヤツに… --岬や三杉のヒールリフトも同様で原作では一度も使っていない。ヒールリフトは元々翼が日向相手に使ったものなので&bold(){本来翼の技なのに翼が使えず岬が使う}というのがそもそも不自然。むしろ翼のアシスト役が多かった岬には必殺パスでもあった方がキャラ的に合っている。ゲームバランス的に必殺ドリブルを付けるにしても三杉同様「華麗なドリブル」の方がまだ自然((因みに三杉は、「ヒールリフト」「華麗なドリブル」の両方を使える。))。 -原作や前作までエース級だった一部選手の能力がガタ落ちになっている。 --一応、小学生編ではまだ翼の能力は未熟であった((原作でも中学生編で翼の成長が著しくなったと言われている。))し他の選手も攻守で活躍する事が多く、能力において差が感じにくかった。 --筆頭に挙がるのは何と言っても若林。本作では''森崎にちょっと毛が生えた程度のステータス''しかない。若島津の加入後は、縛りプレイでもしない限りまず二軍落ちである。 ---おまけに彼が最も活躍できる全国大会決勝ではレベルが5で固定されてしまっている。その為に''通常のシュートすらポスト頼み''で満足に止める事すら不可能。また、何度も負け越して森崎のレベルが10になると能力面で敗北する為出番すらなくなる事も。 --松山や三杉も他作品と比べて、モブ選手よりちょっと強い程度の能力値しかない。特に三杉は本作でもガッツ消費が激しかったり、酷使すると次の試合に出られないハンデがあるのに、この扱いはあんまりではないだろうか。 ---この二人は必殺技がある分、ステータス不足はある程度ならカバーできる。ただし、必殺技でフォローできるくらいまでレベルが上がればという前提が付く。 -若島津の「手刀パンチング」(220消費)や「後ろ回し蹴り」(300消費)がただのパンチング技なのに消費ガッツが高すぎる(因みにキャッチング技の「三角飛び」は消費200)。 --特に「後ろ回し蹴り」の方は1.5倍も消費していながら成功率も絶対的なものではない上に「三角飛び」と比べても劇的に成功率が高いわけでもなく成功してもこぼれ玉にするだけというのは割に合わない((IIIでは「浴びせ蹴り」としてゴール前での飛び出し用の技となり「三角飛び」と住み分けができている。))。 -''ジュニアワールド編から敵のステータスが急激に上昇する''。 --試合が進むにつれて加速度的に敵が強くなっていき、こちらのレベルが低いと、翼・岬・日向などのエース格でもどうやっても攻撃が全く通らず、敵のシュートは若島津であろうとガンガン決められて全く試合にならない可能性さえある。このせいでどうしても、こちらの行動が通用するまでレベルアップを続ける必要が出てきてしまう。 --本作のGKはCPU戦ではこちらのシュートよりキャッチ値が明らかに高いとキャッチを選択することが多く、GKの能力が高めなこともあって中途半端な必殺シュートはあっさり止められてしまう。1対1に持ち込んでも同様。勝敗を不安定なPK戦に委ねなければならない事態になってしまうことも珍しくない。 --レベルアップ速度は従来作と余り変わらず、適正レベルに到達するまで何度も負け続ける羽目になる。 -''各大会決勝戦及び世界選抜で負け越すとそのまま再試合'' --以前までは決勝で負けた場合、準決勝戦を戦ってから再試合を行っていた。負けた戦いよりも勝った戦いの方が(1試合前でも)取得経験値が高かった為に比較的レベルアップがしやすく、違う相手と戦うので繰り返し感をある程度軽減できていた。 ---今作では負けると再び同じ試合を行うのでだれやすい。明和FC、西ドイツ共に準決勝までの相手とは段違いの強さを持っている為に、レベル上げなしだと何度も負け越す羽目になる。 ---特に西ドイツの強さは異常とも言えるレベルで、著名選手のステータスは世界選抜を上回っている。GKはミューラーではなく((設定上、ミューラーはこの時期は山中で修行中なので登場させるわけに行かない。))、ヘフナーと言うアニメ版オリジナル選手。本編登場の敵GKでは最強のステータスを誇り、生半可なレベルでは一点も取れないこともしばしば。 -IIで追加された試合中のハプニングが削除された。この結果''逆転要素が減り、格上のチームから点を取るのが難しくなった''。 --本作では''反則がない''。IIでは能力に大きな格差があっても、(本来なら褒められた形ではないが)接触時には反則の発生で止められる可能性があったが、それができなくなって上記の問題を一層深刻にしている。代替要素となる雨は一部試合を除いて発生がランダムであり、雨が降らなければ滑りようもない。 ---このせいで直接フリーキックや、敵陣ペナルティエリア内で反則を誘ってのペナルティキックを狙うことも不可能。 --またこぼれ球がラインを割ることがないため、コーナーキックやスローインなどもなくなった。 ---IIから追加された直接CKや直接FKは通常よりシュートの威力が上がる特徴があり、またCKからのパスは容易に浮き球シュートに繋げられることから攻防において重要だった。 --GKが飛び出しに失敗しても、ゴールが空っぽにならない。こちらのGKがゴール前を空けないという利点もあるが、総合的に見ると駆け引きの要素を減らしている。 ---IIでスルーが強すぎたことの反省かも知れないが、ならば単純にスルーの成功率を下げるだけで良かったはず。GKと1対1に持ち込むメリットも少なくなってしまった。 --なお、III以後の作品ではこれらの要素が全て復活している。 -ゲーム上での試合時間が短く、一度リードされると逆転が厳しい。 --接触時の時間経過が0~60秒とムラが大きい上、自動カットを受けずにパスを回すだけでも同様の時間経過が発生する。更にI同様ロスタイムは存在しない。このため実際の体感的な試合時間は更に短くなっている。 --延長戦に至っては前後半でそれぞれたった''5分''しかない。これでは逆転を狙うのは非常に困難。 ---引き分けると再試合になる。(実質負けと同じ) --ガッツ回復速度は従来と大差なく、早い段階でガッツを大量に使うと後半に回復しきらない。 -毎試合ごとに初期化されるスタメン --南葛の時はあまり気にならないがJr.ワールドカップ編でのスタメンはいただけない。なぜなら''正GKが森崎''だからである。 ---このために間違って若島津の代わりに前半スタメンで出場する可能性がある。選ばれもしない若林の立場はますます酷くなっている。この仕様は1PVSCPUモードでも変わらないため、CPUに日本を選ぶと守備が大変残念なことになる。 ---- **総評 「ゲームボーイでテクモ版キャプテン翼ができる」と言う一点だけでも本作は存在意義があるが、本作の試みで以後の作品に採用されたものが多いのも見過ごせない。後のシリーズの可能性を広げた作品と言える。 反面前作から削られた要素の殆どが逆転要素を作る上で重要なものであったことから、ゲームバランスはI時代へと逆行している面も見られ、単品での完成度は前作より優れているとは言えない。発売時期的にIIIまでの繋ぎという印象が強いことも否めない。とは言え『IIの要素を一部追加したI』と考えれば悪いものではなく、Iが楽しめるなら十分本作も堪能できるだろう。 据え置き機作品とは異なる独特の雰囲気があるため、普段とちょっと毛色の変わったキャプテン翼を遊びたいというプレイヤーにお勧め。中古価格は安く、現在でもGBを取り扱っている店では見かける頻度が高いため、比較的入手難易度は低めである。 ---- #region(1P対戦用のスコアメモ。ネタバレあり) -サッカー全国大会編と、ジュニアワールドカップ編のアルゼンチン戦をクリアするとそれぞれ1Pで好きなチームを選択してCPU対戦ができるスコアメモが表示される。 --そのスコアメモは「''もりさきも つかつてね''」「''すりいもで るのよ''」と洒落の効いたもの。 ---余談だが、「すりいもで るのよ」のパスワードで全日本を選んだ場合、本編と違い若林のステータスがかなり高い。 #endregion ----
*キャプテン翼VS 【きゃぷてんつばさ ばーさす】 |ジャンル|サッカーシミュレーション|&image(https://www.suruga-ya.jp/database/pics_light/game/165000288.jpg,height=200)| |対応機種|ゲームボーイ|~| |メディア|2MbitROMカートリッジ|~| |発売元|テクモ|~| |開発元|グラフィックリサーチ|~| |発売日|1992年3月27日|~| |定価|4,200円(税別)|~| |判定|なし|~| |ポイント|シリーズ初の対戦モードを搭載&br()携帯機でサッカーシミュレーションを再現&br()普段のテクモ版キャプテン翼とは違和感がある部分も&br()逆転要素が削られゲームバランスが悪化|~| |>|>|CENTER:''[[キャプテン翼シリーズリンク>キャプテン翼シリーズ]]''| #contents(fromhere) ---- **概要 ゲームボーイでは初となるテクモの[[キャプテン翼>キャプテン翼 (FC)]]シリーズ。本作では小学生編を舞台としており、前半の国内編は修哲小戦や全国サッカー大会を題材とした原作に近い展開、後半は原作漫画よりも早い段階でJr.ワールドカップに挑戦するというアニメ&映画版の展開を取り入れている。 本作はスーパーファミコンでの次作となる『[[キャプテン翼III 皇帝の挑戦]]』の約4ヶ月前に発売されており、IIIに先駆けて様々な新しい試みを取り入れた実験作的な側面も持っている。 ---- **特徴 -基本的なシステムはファミコン版『[[キャプテン翼II スーパーストライカー]]』を踏襲している。 --ポジションチェンジ、ワンツー、スルー、浮き球を巡っての競り合い、GKとの1対1の競り合い、GKが止められなかったシュートの選手によるカバーなども再現されている。ただし前作で強すぎたスルーは弱体化している。 --ロスタイム無し、試合途中の停止要素無し((ボールのライン越えや反則等))、フォーメーションが4-3-3固定、ディフェンスタイプの選択が不可能などカットされている要素もある。 -試合時間が前後半20分、延長戦は各5分に短縮された。 -シリーズで初めて、通信ケーブルを使っての対戦が可能になった。対戦にはソフトと本体が二つ必要。選手選択はPK勝負をして勝った方が1選手の優先獲得件を得て、これをイレブンが決まるまで繰り返す形式。 --なお1P対CPUでは好きなチームを選んでの対戦が可能だが、本編中で手に入るスコアメモがないと遊べない。 -主な登場人物は小学生編+ジュニアユース編に登場したキャラ。カルロスも登場する。 --本作オリジナルキャラとして、イングランド代表のリチャードという選手が登場する。強引にシュートへ持ち込むジェットシュート、殺人タックルなど物騒な必殺技を持っているラフプレイヤー。 ---一応アニメ映画版共にイングランド出身のリチャードという名前があるモブキャラがいるにはいたが、必殺技を打つ等の活躍はしておらず、当人かは不明。 --この他IIのオリジナルキャラの一部(バビントン、サトルステギ、カペロマン、メッツァなど)が登場する。 -従来作で「てきの ○ばん」と呼ばれていたモブ敵選手に全て固有の名前が付いた。これらはメーカーから一般公募されたものを採用している。 --「ぬのぶくろ(布袋/ほていの読み間違いか?)」「ミック&s(){吉田}ヨシダ」など妙な名前の選手を探すのも楽しみの一つ。 --またこれに伴い、従来作では名前で呼ばれていなかった原作キャラ(ふらのFCの小田、ボッシ、アモロなど)もちゃんと名前で呼ばれるようになった。 -天候の概念が追加され、雨天での試合も行われるようになった。雨天時はコマンド選択時に、雨で滑って能力値に関係なく行動が失敗してしまうことがある。 --IIIでは採用されなかったが、IVで仕様変更して復活している。 -マークの概念が仕様変更して復活した。本作ではミーティングなどでマークする敵選手を指定することで、レーダー上でマークした敵選手の位置が分かるようになる。1試合につきマークできるのは3人まで。III以後の作品と違って特定の味方選手にマークさせることはできない。 -本作では必殺パスや、タックル以外の殆どの必殺ディフェンスが存在しない。 --その代わり、従来作では見られない新必殺技が採用された。また、前々作のIにあったダイビングヘッドも復活している。 --翼は原作中学生編に先駆けてドライブシュートを修得したり、原作花輪戦で披露したゴールポストを蹴った跳躍からのオーバーヘッドキックが『トライアードオーバーヘッド』として採用されたりしている。 --日向と沢田の必殺ワンツーは、時代に合わせて東邦コンビから明和コンビに名称変更されている。 -スコアメモ(パスワード)形式を採用したキャプテン翼シリーズは本作で最後となった。 ---- **評価点 -ゲームボーイの限られたスペックで、可能な限り据え置き機に近いサッカーシミュレーションを再現している。 --小さい液晶画面ながら画面情報の視認性は良好。キャラクターはやや小さめでアニメパターンも少なめながら、ファミコン版の雰囲気はしっかり再現している。主要選手にはカットインも存在。 --パスルートや接触時の駆け引きも据え置き機作品と同様に味わえる。 --1試合にかかる時間が15分程度(延長やPKがなかった場合)と前作まで同様に短く、展開がスピーディー。 -III以後の作品に繋がる実験的な試み。 --2PやCPUの対戦モードで、従来使えなかったチームや選手を使えるようになった。 --対戦モードはIII以後の作品で『オールスターモード』として更に昇華され、キャプテン翼シリーズの大きな目玉要素として確立した。その土台を作った功績は大きい。 --全ての選手に固有の名前を用意するのもIII以後の作品に引き継がれた。 -BGMの質の高さ。 --殆どのBGMは前作IIで使用されたものだが、ゲームボーイの音源で可能な限り原曲に近いクオリティを保っている。タイトル画面に使われているオリジナルのBGMも良質の出来映え。 --ライバルキャラではピエールやディアスに『華麗なドリブル』、ナポレオンには『殺人タックル』、パスカルには『ジャンピングボレー』等が追加され手強くなった。シュナイダーは『パワードリブル』や必殺ディフェンスの『カイザーアタック』を修得し、攻守で隙がなくなった。 --本作限りで撤廃されてしまった必殺技も多いが、修哲トリオのように以後の作品で復活したものもある。名称を変えて復活したものも。 -国内編でのゲームバランスは比較的取れている方で、程よい緊張感を味わえる。ジュニアワールド編以後に関するバランスは問題点を参照。 #region(最終戦について。ネタバレあり) -本作の最終戦では、シュナイダー、ディアス、ピエール、ナポレオン、ヘルナンデスなどこれまで登場した世界のトッププレイヤー達が一同に集結した『せかいせんばつ』が相手となる。このような展開は今までのテクモ版キャプテン翼シリーズではなかったことだった(IIでも全日本やブラジルのオールスターと戦ったが、これらはあくまでも同一国籍の選手達との戦いだった)。言うまでもなく強さは圧倒的。 --カルロスはこのチームの隠し球として登場。II同様にミラージュシュートや分身ドリブルなどを使いこなす。ただし能力はシュナイダーより低い。 #endregion ---- **賛否両論点 -従来キャラに必殺技が追加され、個性が広がった。 --例として翼は必殺ドリブルが無くなって突破力が減少するが岬が必殺ドリブルを使えるようになっていたり、井沢・来生・滝の修哲トリオは同名の必殺ワンツーが使用可能になり、来生はダイビングヘッドを井沢はオーバーヘッドキックも使えるようになった。松山は必殺技としてスライディングタックルが追加され、後の作品ではイーグルタックルとして定着し攻守の要に成長するきっかけを作った。 --だがキャラゲーとして原作との整合性を意識すると問題があるものが多い(後述)。 --立花兄弟は必殺技の種類が大幅に減り、''必殺ディフェンスが完全に消失''。((必殺ディフェンスの基本形であるスカイラブハリケーンは中学3年時に開発した技なので、まだ使えない。)) ---更に協力シュート系(ツインシュート、ダブルシュート、トライアングルシュート等)は''使用した両方がガッツを消費する''仕様となっている為に打てる回数も大幅に減少してしまっている。 --石崎の顔面ブロックは他作品だと敵がシュートを撃たないと発動しない特殊な必殺技だが、本作では普通のディフェンス技扱いされているため、相手が何を選択しようと無関係にボールをカットする。パスはまだしも、''敵のドリブルに顔面から突っ込む''のはどう考えても危険すぎる。 --前作から登場したオリジナルキャラのうち、キムとシャ、サトルステギ、メッツァのように必殺技が完全消失したキャラがいる。ただし本作の時代設定はそれより6年ほど前になるため「消失した」のではなく「後になって体得した」という考え方もできる。 ---ただしメッツァは代わりに攻撃ステータスが上がり、やたら積極的にシュートを狙ってくるようになった。 --ヘルナンデスは本作で初めて必殺技が実装されたが、''テレパシーキャッチ''と言う超能力じみた技である。さすがにこれは本作限りとなり、III以降は彼の代名詞とも言える『黄金の右腕』が必殺技になった。 -明らかに優遇されている日向と若島津。 --テクモ版の日向は「シュート・タックル・競り合いが強く、他の能力はいまいち」と言う尖ったパラメータであることが多いが、本作では前作からの長所をそのままに、ドリブル値が日本の選手で最も高く、他のステータスも翼や岬に匹敵する万能キャラになっている。今回はネオタイガーショットを持っていないが、その分タイガーショットや強引なドリブルが強い。 ---一応、小学生編の日向は全体的に高い能力を持っていたので妥当な評価とも取れる。 --本作の若島津は森崎や若林を遙かに凌ぐステータスを誇り、ジュニアワールド編の敵のシュート力は若島津で受けることを前提とした能力値にされている。 ---更に必殺技に『手刀パンチング』『後ろ回し蹴り』が追加された。これらはIII以後、前者は三角飛び失敗時に低確率で出る特殊ディフェンス、後者は空中での競り合い時に使える『浴びせ蹴り』として継承された。 --以後の作品では、日向は従来通りの能力傾向に落ち着いた。若島津はさすがに最強ではなくなったが、若林との能力差は縮まり、VSの必殺技も継承されて使いやすくなった。 -本編のテキストにメタ発言が混じっていることがある。 --例を挙げると、南葛FC対武蔵FCの試合では「つばさくん たい みすぎくん こくないでの たいけつは ゲームボーイがはじめてです!」とアナウンスされる。 #region(日向のメタ台詞) ---世界選抜戦前の日向の「このあと スーファミでのしごとも はいってるんだぜ!」と言う台詞も一部で有名。IIIの宣伝であることは明らかだが、IIIは(小学生編の彼らからすれば)ずっと先の時代の話である。 #endregion -本作でも実況はチャーリーが行っている。ゲームボーイの画面の都合上グラフィックは表示されず、ラジオ放送という扱い。 --だが「(前略)にほんびいきで おおくりします」「シュナイダーくん にほんをなめているのか(後略)」など、公平性を欠くような中継がされることがある。 #region(シュナイダーの扱い) --今回のシュナイダーは西ドイツJr.戦では、試合後半にならないと出場しない前作のコインブラのような扱いになっている。チャーリーの台詞を見る限り、それまでの試合でも温存されていたようである。 ---この展開はシュナイダー初登場となるアニメ映画での扱いを踏襲しているとも言える。映画ではGKのヘフナーともどもヨーロッパ選抜の切り札として扱われており、試合が不利になるまで出場してこなかった。 ---ひとたび出れば、全選手中最大を誇る圧倒的な能力値と強烈なファイヤーショットでこちらを苦しめる。今回は前述の必殺技の追加でより隙がなくなった。 ---世界選抜では前半からフル出場する。ステータスは何故か西ドイツの時より下がっているが、それでもなお世界選抜の選手では最大の能力を誇り、十分に手強い。 #endregion -前作を知っていると違和感のあるBGMの選曲が多い。 --南葛FCのBGMは前作のサンパウロFCの曲、日本Jr.のBGMは前作の南葛のBGM。アルゼンチンJr.戦はフラメンゴ、西ドイツJr.戦はジャパンカップ編の敵チーム曲となっている。また、東邦(明和)戦のBGMが世界選抜にも流用されている。 -本編のボリュームは小さく、ほぼIと同じくらいである。 --ストーリーも他のテクモ版キャプテン翼シリーズと比べて「新必殺技の体得」「登場人物達の思惑や葛藤」といったドラマチックな展開が少なく、起伏に乏しい。試合中のイベントも非常に少ない。 ---- **問題点 -小学生編が主要な舞台であるため、原作中学生編から登場する新田・早田・次籐・佐野と言った一部の選手が登場しない。佐野や新田は半分どうでもいいようなものだが、次藤、早田不在に加えて立花兄弟の必殺ディフェンスが全廃された影響で、日本チームのDF不足が深刻になってしまった。 --ただしこれは原作通りなので致し方ない。当時は本当にDFキャラが少なく小学生編の全国大会で優秀選手に選ばれたDFは南葛の高杉真吾、明和の長野元春、&bold(){常陸の大里次郎}((常陸FCとは準々決勝で武蔵FC相手に一時は1点リードを奪い三杉を引っ張り出す健闘を見せるも、その後三杉の加わった武蔵にすぐ逆転され、そのまま大差をつけられ敗退した。大里次郎は作中で名前すら呼ばれなかったので「誰なんだこいつ?」と思った人多数。現在もちょっとしたネタにされる人物。))の3人だけ。 --本作で初めて日本Jr.代表に選ばれた小田が攻守の両方で必殺技を修得しているが、能力不足のため補い切れていない(とはいえ、これでもマシな方なので起用することが推奨される)。せめてパワータックルを使える花輪SSの大丸((原作では中学生編で登場したキャラ。))ぐらいは入れてほしかったと思った人多数。 ---その為か必殺技を一切持たない高杉もDFとしてスタメンで活躍でき、石崎や松山の重要度も増した。また後述の沢木も強力なタックル技を持っているためDFとして起用できる(小田同様本来はFWだが)。 -ゲームとして個性付けになった反面、原作との相違で違和感が否めないものも多い。 --上述の通り翼がドライブシュートを体得したのは中学生であり、ちゃんとした難しい原理があるシュートを小学生の翼が使うのは無理がある。日向のタイガーショットのように「とりあえず思いっきり蹴ったシュート(一応吉良監督の沖縄特訓の賜物ではあるが)」ならまだしも。 --中学編以降ゲームでは登場しない明和の沢木(初代では「てきの9ばん」にあたるが技はない)が使う「集団タックル」は本作だけの存在。あの明和特攻スライディング部隊を自分の手で繰り出せる唯一の作品である。さらに全日本で起用して繰り出せば、''翼・日向・岬・松山・三杉・立花兄弟たちが敵選手めがけて殺到する「全日本特攻スライディング部隊」''という事になる。ゲームボーイなのでそのように見える演出は無く、外見はただのスライディングタックルでしか無いのだが、そのような光景を思い浮かべるだけでも夢の必殺技と言える。 ---だが実際には、小学生時代にこの「明和特攻スライディング部隊」発進指示を出す司令塔は日向であり、&bold(){沢木がその司令塔となったのは日向不在となった明和東中に進んでから}。そのため小学生時代に沢木がこの司令塔になっているのには違和感がある。まあ前述の通りDFが駒不足なので強力なタックル役として機能してくれるのはプレイヤー目線ではありがたいかも知れないが。 --原作の岬はダイビングヘッドを得意としており、それによる劇的なゴールも何度も描かれている。FC版初作以来久しぶりにダイビングヘッドが実装されたにも関わらず、岬はそれを使えずIIに倣ってジャンピングボレーになってしまっている。またオーバーヘッドキックが使えなくなってしまった。 --ダイビングヘッドが使えるようになった来生は原作で「点取り屋FW」を異名を持っているものの浮き球は高ければトラップしてシュート、低ければボレーシュートが多く、ダイビングヘッドどころかヘディング系でのシュートはほぼゼロ(競り合いなどで使ったのみ)だったので、原作のイメージに合うものではない。 --井沢のオーバーヘッドキックに至って原作では&bold(){小学生編は勿論、中学編を含めてシュートどころかそれに該当するものを一度も繰り出していない}(むしろ長身を生かしたヘディングやダイビングヘッドが多く初代ではダイビングヘッドを使えていた)。また、これにより&bold(){オーバーヘッドキックを原作で何度も繰り出していた岬が使えず、一度も使ったことがない井沢が使える}という原作からすればありえないことになっている。 ---一応ボールの高低で能力配分ができない本作のシステムの都合上、長身でジャンプが得意なの井沢が「高いボールに強い」を際立たせるため高いボールの強シュートにあたるオーバーヘッド、相対して来生は「低いボールに強いキャラ」として強シュートにあたるダイビングヘッドというバランスを取るためだろうが、ステータスによりある程度差別化はできているので充分ではないか。また、滝は他の2人も使える修哲トリオのワンツーしかないなど本来同等のはずなのに扱いが悪い。 --ふらのの小田や松山のダイビングヘッドも同様で原作では描かれていない。スライディングタックルについては中学生編でフェイントダブルタックルを披露した松山はともかく、チームでCFだった小田には小中学ともにタックルにあたる描写はない。なぜこんなヤツに… --岬や三杉のヒールリフトも同様で原作では一度も使っていない。ヒールリフトは元々翼が日向相手に使ったものなので&bold(){本来翼の技なのに翼が使えず岬が使う}というのがそもそも不自然。むしろ翼のアシスト役が多かった岬には必殺パスでもあった方がキャラ的に合っている。ゲームバランス的に必殺ドリブルを付けるにしても三杉同様「華麗なドリブル」の方がまだ自然((因みに三杉は、「ヒールリフト」「華麗なドリブル」の両方を使える。))。 -原作や前作までエース級だった一部選手の能力がガタ落ちになっている。 --一応、小学生編ではまだ翼の能力は未熟であった((原作でも中学生編で翼の成長が著しくなったと言われている。))し他の選手も攻守で活躍する事が多く、能力において差が感じにくかった。 --筆頭に挙がるのは何と言っても若林。本作では''森崎にちょっと毛が生えた程度のステータス''しかない。若島津の加入後は、縛りプレイでもしない限りまず二軍落ちである。 ---おまけに彼が最も活躍できる全国大会決勝ではレベルが5で固定されてしまっている。その為に''通常のシュートすらポスト頼み''で満足に止める事すら不可能。また、何度も負け越して森崎のレベルが10になると能力面で敗北する為出番すらなくなる事も。 --松山や三杉も他作品と比べて、モブ選手よりちょっと強い程度の能力値しかない。特に三杉は本作でもガッツ消費が激しかったり、酷使すると次の試合に出られないハンデがあるのに、この扱いはあんまりではないだろうか。 ---この二人は必殺技がある分、ステータス不足はある程度ならカバーできる。ただし、必殺技でフォローできるくらいまでレベルが上がればという前提が付く。 -若島津の「手刀パンチング」(220消費)や「後ろ回し蹴り」(300消費)がただのパンチング技なのに消費ガッツが高すぎる(因みにキャッチング技の「三角飛び」は消費200)。 --特に「後ろ回し蹴り」の方は1.5倍も消費していながら成功率も絶対的なものではない上に「三角飛び」と比べても劇的に成功率が高いわけでもなく成功してもこぼれ玉にするだけというのは割に合わない((IIIでは「浴びせ蹴り」としてゴール前での飛び出し用の技となり「三角飛び」と住み分けができている。))。 -『ブーメランシュート』を使うイタリアのコンテイ((原作ではJrユース編で登場し日本戦で先制ゴールを決めた。ただ7人がかりのパス回しで若島津をおびき出しガラ空きになった至近距離からゴールへのシュートだったのでブーメランどころか普通の直球シュートのようだったが))が何故か丸刈りタイプ(石崎顔)。原作では後のワールドユース編に登場した葵のような髪型。 -シュナイダーの『ファイヤーショット』が『ファイ&bold(){ア}ーショット』表記。 -''ジュニアワールド編から敵のステータスが急激に上昇する''。 --試合が進むにつれて加速度的に敵が強くなっていき、こちらのレベルが低いと、翼・岬・日向などのエース格でもどうやっても攻撃が全く通らず、敵のシュートは若島津であろうとガンガン決められて全く試合にならない可能性さえある。このせいでどうしても、こちらの行動が通用するまでレベルアップを続ける必要が出てきてしまう。 --本作のGKはCPU戦ではこちらのシュートよりキャッチ値が明らかに高いとキャッチを選択することが多く、GKの能力が高めなこともあって中途半端な必殺シュートはあっさり止められてしまう。1対1に持ち込んでも同様。勝敗を不安定なPK戦に委ねなければならない事態になってしまうことも珍しくない。 --レベルアップ速度は従来作と余り変わらず、適正レベルに到達するまで何度も負け続ける羽目になる。 -''各大会決勝戦及び世界選抜で負け越すとそのまま再試合'' --以前までは決勝で負けた場合、準決勝戦を戦ってから再試合を行っていた。負けた戦いよりも勝った戦いの方が(1試合前でも)取得経験値が高かった為に比較的レベルアップがしやすく、違う相手と戦うので繰り返し感をある程度軽減できていた。 ---今作では負けると再び同じ試合を行うのでだれやすい。明和FC、西ドイツ共に準決勝までの相手とは段違いの強さを持っている為に、レベル上げなしだと何度も負け越す羽目になる。 ---特に西ドイツの強さは異常とも言えるレベルで、著名選手のステータスは世界選抜を上回っている。GKはミューラーではなく((設定上、ミューラーはこの時期は山中で修行中なので登場させるわけに行かない。))、ヘフナーと言うアニメ版オリジナル選手。本編登場の敵GKでは最強のステータスを誇り、生半可なレベルでは一点も取れないこともしばしば。 -IIで追加された試合中のハプニングが削除された。この結果''逆転要素が減り、格上のチームから点を取るのが難しくなった''。 --本作では''反則がない''。IIでは能力に大きな格差があっても、(本来なら褒められた形ではないが)接触時には反則の発生で止められる可能性があったが、それができなくなって上記の問題を一層深刻にしている。代替要素となる雨は一部試合を除いて発生がランダムであり、雨が降らなければ滑りようもない。 ---このせいで直接フリーキックや、敵陣ペナルティエリア内で反則を誘ってのペナルティキックを狙うことも不可能。 --またこぼれ球がラインを割ることがないため、コーナーキックやスローインなどもなくなった。 ---IIから追加された直接CKや直接FKは通常よりシュートの威力が上がる特徴があり、またCKからのパスは容易に浮き球シュートに繋げられることから攻防において重要だった。 --GKが飛び出しに失敗しても、ゴールが空っぽにならない。こちらのGKがゴール前を空けないという利点もあるが、総合的に見ると駆け引きの要素を減らしている。 ---IIでスルーが強すぎたことの反省かも知れないが、ならば単純にスルーの成功率を下げるだけで良かったはず。GKと1対1に持ち込むメリットも少なくなってしまった。 --なお、III以後の作品ではこれらの要素が全て復活している。 -ゲーム上での試合時間が短く、一度リードされると逆転が厳しい。 --接触時の時間経過が0~60秒とムラが大きい上、自動カットを受けずにパスを回すだけでも同様の時間経過が発生する。更にI同様ロスタイムは存在しない。このため実際の体感的な試合時間は更に短くなっている。 --延長戦に至っては前後半でそれぞれたった''5分''しかない。これでは逆転を狙うのは非常に困難。 ---引き分けると再試合になる。(実質負けと同じ) --ガッツ回復速度は従来と大差なく、早い段階でガッツを大量に使うと後半に回復しきらない。 -毎試合ごとに初期化されるスタメン --南葛の時はあまり気にならないがJr.ワールドカップ編でのスタメンはいただけない。なぜなら''正GKが森崎''だからである。 ---このために間違って若島津の代わりに前半スタメンで出場する可能性がある。選ばれもしない若林の立場はますます酷くなっている。この仕様は1PVSCPUモードでも変わらないため、CPUに日本を選ぶと守備が大変残念なことになる。 ---- **総評 「ゲームボーイでテクモ版キャプテン翼ができる」と言う一点だけでも本作は存在意義があるが、本作の試みで以後の作品に採用されたものが多いのも見過ごせない。後のシリーズの可能性を広げた作品と言える。 反面前作から削られた要素の殆どが逆転要素を作る上で重要なものであったことから、ゲームバランスはI時代へと逆行している面も見られ、単品での完成度は前作より優れているとは言えない。発売時期的にIIIまでの繋ぎという印象が強いことも否めない。とは言え『IIの要素を一部追加したI』と考えれば悪いものではなく、Iが楽しめるなら十分本作も堪能できるだろう。 据え置き機作品とは異なる独特の雰囲気があるため、普段とちょっと毛色の変わったキャプテン翼を遊びたいというプレイヤーにお勧め。中古価格は安く、現在でもGBを取り扱っている店では見かける頻度が高いため、比較的入手難易度は低めである。 ---- #region(1P対戦用のスコアメモ。ネタバレあり) -サッカー全国大会編と、ジュニアワールドカップ編のアルゼンチン戦をクリアするとそれぞれ1Pで好きなチームを選択してCPU対戦ができるスコアメモが表示される。 --そのスコアメモは「''もりさきも つかつてね''」「''すりいもで るのよ''」と洒落の効いたもの。 ---余談だが、「すりいもで るのよ」のパスワードで全日本を選んだ場合、本編と違い若林のステータスがかなり高い。 #endregion ----

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