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知名度の高い参加者が多数いることを確かめると、それまで慎重だった各メディアも、一斉にKOFを取り上げはじめた。 >今大会から導入される新ルール「''マルチシフト''」。つまり自由交代制の発表を境に、それは社会現象にまで発展し、世界中の話題を独占してゆく。~ スピーディーな試合展開とチーム単位の戦術が同時に要求されるこのルールを巡り、新聞・雑誌は毎週のように特集記事を組みTVではにわか評論家たちが机を叩いて熱弁をふるう日々が続いた。 > >「まだまだ世界には、とてつもなく強い連中がいる」~ 牙刀、グリフォンマスク、デュオロン、シェン・ウー。……そして、''アッシュ・クリムゾン''。~ 彼らの名前がネットを通じて次第に知られるようになったのは、まさにこのKOF騒ぎが契機であったのだ。~ 彼らはKOFに波乱を巻き起こす新星になれるのか?それとも……… >熱狂の日々の中、着々と準備は進む。地方大会のステージが決定され、日程が整い、初戦の地に続々と移動する観客たち。~ ストリートファイトの雰囲気を演出すべく会場は市中に設定されたが、試合の模様は巨大スクリーンで中継放送されることとなり、期間中、数万人収容規模のスタジアムが、あちこちの都市で確保されてゆく。 ''2003年12月、時は訪れた。&br()今年も舞台の幕が上がる。'' ---- **概要 SNKの対戦格闘ゲーム『KOF』シリーズ第10作品目であり、ネオジオ基板で作られた最後のKOFである。~ 本作よりメインストーリーの主人公が「アッシュ・クリムゾン」に変わり、後に「アッシュ編」と呼ばれる新たな局面を迎えた。~ 他、従来の3on3によるラウンド制から、カプコンのVS.シリーズのような任意交代制を取り入れ、全体的に試合展開のスピードが速くなった。 **システム -従来はラウンドごとにメンバーを割り振る最大5ラウンド制の試合だったが、今回は3人全員が倒れるまでの1ラウンドだけで決着をつける形式へと変更。チームメンバーがKOされた場合は即座に次のキャラが登場し、ノンストップで試合は続く。 --プレイヤーはBCまたはCD同時押しを任意でキャラクターを途中交代させることが可能。一度交代すると、一定時間後に「CHANGE OK!」が点灯するまで再交代は出来ない。 ---『236+BCまたはCD』では、1ゲージを消費して打撃を繰り出しつつほかのキャラと交代する「交代攻撃」になる。~ 最初に交代前のキャラが打撃を繰り出し、その後交代キャラがジャンプ攻撃のモーションで突進してくる。最初の打撃がヒットした場合、次キャラの飛び込み攻撃も連続ヒットし、更に追い討ちが可能。~ これにより、複数のキャラが関与する派手な連続技を決められる。これ自体は他の技にキャンセルをかけて出すことはできないが、出が速いものが多いため、本作は交代攻撃を利用した即死連続技も多数存在する。 --ちなみに同様のシステムを採用した他社作品と違い、控えキャラの体力は一切回復しない。 -交代攻撃に引き換え、クイックMAXを含めてMAXモードは廃止された。そのため前作のような難易度の高いテクニック技は減ったように見えるが、交代攻撃によって初心者には優しくない様な連続技が出来る。 -MAX超必殺技に代わり「リーダー超必殺技」という新しい上位超必殺技が登場。キャラ選択時に一番最初に選択したメンバーがチームリーダーとなり(キャラ決定後にその中からリーダーを担当するメンバーを決める方式ではないので注意)、そのリーダーだけが2ゲージを消費して使用できる。 --性能の傾向は前作『2002』のMAX2に近く、実戦で使わなきゃ損なものから、「どうやって当てるんだこんなの?」なものまで様々。~ 同様のシステムを持つ次回作の『XI』でも概念は引き継がれているが、性能の傾向は総じて実戦向きのものに変化している。 --また、リーダーシステムは、時間切れによる判定で勝敗を決める際にもわずかながら関わっている。双方とも総体力が同等の場合、次にリーダーが残っているか否かで判定を決めることになり、どちらか一方だけがリーダーが倒されていなかった場合、そのチームが勝利となる。双方とも総体力が同等かつ、リーダーが倒されている、もしくは残っている場合で初めて引き分け。 -容量の都合から投げなどキャラごとの技数が減少。最大の変更点は、これまで通常技の一つであった''ふっ飛ばし攻撃が地上・空中共に廃止されたこと''。 --通常投げは一種類に統一されたがコマンド自体はCとDの二種類あり、投げ抜け時は同じコマンドを押さないと抜けられない。また投げる方向がCとDとで変わるのは極一部を除いて従来通りだが、前述の通り投げ技自体が一種類に統一された為、技によっては違和感を感じる図になってしまったものも。 **キャラクター -新キャラには&font(#ff0000){*}マーク(本作初出は太字)、『2001』以前より復活したキャラには&font(#0000ff){*}マークを付けている。 --主人公チーム:''アッシュ・クリムゾン''&font(#ff0000){*} ''デュオロン''&font(#ff0000){*} ''シェン・ウー''&font(#ff0000){*} --餓狼チーム:テリー・ボガード ジョー東 グリフォンマスク&font(#ff0000){*} --極限流チーム:リョウ・サカザキ ロバート・ガルシア ユリ・サカザキ --韓国チーム:キム・カッファン チャン・コーハン ジョン・フーン&font(#0000ff){*} --怒チーム:レオナ・ハイデルン ラルフ・ジョーンズ クラーク・スティル --アウトローチーム:牙刀&font(#ff0000){*} ビリー・カーン&font(#0000ff){*} 山崎竜二&font(#0000ff){*} --女性格闘家チーム:キング&font(#0000ff){*} 不知火舞 ブルー・マリー --紅丸チーム:二階堂紅丸 矢吹真吾 大門五郎 --女子高生チーム:麻宮アテナ 四条雛子&font(#0000ff){*} ''まりん''&font(#ff0000){*} --K'チーム:K' マキシマ ウィップ --三種の神器チーム:草薙京 八神庵 神楽ちづる&font(#0000ff){*}(ちづるのみ中ボス、AC版では隠しキャラだったが家庭用でデフォルト化)((キャラクター選択画面では京と庵がランダムセレクトを挟んで並んでいてエディット専用枠のような扱いで、ちづるはボス枠で別に配置されているのだが、公式サイトではこの3人が公式チーム扱いになっている。)) --中ボス:KUSANAGI(AC版では隠しキャラだったが家庭用でデフォルト化) 神楽マキ(AC版はCPU専用、家庭用で中ボス他2人と共にデフォルト化) --ラスボス:アーデルハイド 無界(家庭用のみ隠しキャラとして使用可能) -見ての通り、キャラクター及びチーム編成は大きく一新されている。 --『[[餓狼 MARK OF THE WOLVES]]』からグリフォンマスクと牙刀が参戦したことで、『'99』を最後に停滞していた既存シリーズキャラのラインナップに動きが見られた。 --他にもビリーや山崎、そしてMOW準拠になったテリーというようにデザインが変更されたキャラもおり、ロバートはニュートラルモーションが完全新規に、山崎はニュートラルのまま放置した際のモーションが追加されるなど、グラフィックも大きく描き変わったキャラが居る。 -中ボスのKUSANAGIの倒し方によってラスボスが変更される。 --超必殺技(リーダー超必殺技でも可)で倒すと神楽マキ→無界。それ以外の技で倒すとアーデルハイドと戦う事になる。チーム別のエンディングを見る為には無界を倒さねばならない((デフォルトチームでアーデルハイドを倒しても専用の共通エンディングが流れるのみ。))。 ---- **問題点 ***システム上の問題点 -''試合開始直後からプレイヤーがゲージを3本も持っており''、いきなりゲージを消費して出せる強力な技を使用できる。~ おかげでちょっとミスしただけで10秒も経たないうちに体力の半分以上が吹っ飛んだりすることが日常茶飯事。 --「初心者への配慮」「最初から互いに派手なプレイを可能にした大盤振る舞い」「本作の目玉である交代攻撃を堪能してもらうためのサービス」という肯定的な意見もあったが、今作は後述にもあるように交代攻撃による即死も多数発見されたりなどがあったこともあり、むしろ初心者の敷居を高くしてしまい、純粋な評価要素にはなり得なかった。 --ちなみに試合の一戦目開始時からすでにゲージ((ネスツ編のストライカーボムは例外。))を持っている仕様はKOFでは初。 --一応フォローしておくと、本作は中ボスの一人目であるKUSANAGIを(リーダー)超必殺技で倒すか否かでラスボスのルート分岐もあるため、それに配慮してゲージを最初から完備させた、と言う考えもできなくはない(ただしそれならCPU戦に限定すべきだ、と言う結論に行き着くが)。 -''ふっ飛ばし攻撃や空振りキャンセル、先行入力が廃止''され、操作感が大幅に変化。 --重複を避ける方法があったにも関わらず((従来の(ジャンプ)ふっ飛ばし攻撃は(空中で)CDだったが、今作はCDが交代コマンドの一つにあてられている。なお、ACとBDには通常技と特殊動作どちらも割り当てられていないので、そちらに交代コマンドを割り当てれば、ネオジオが使える4ボタンのままでもふっ飛ばし攻撃との重複は避けられた。))そうしなかった辺り、容量の都合だろうか。ふっ飛ばし攻撃に関しては、レオナやチャンのジャンプふっ飛ばしやアテナの地上ふっ飛ばしなど一部のキャラの特殊技として残されてはいるが、~ 後述するように立ち回りの基本を担う通常技の一つだったので悪影響が著しい。~ キャラによっては、立ち回りにおける生命線でもあったせいでそれを潰され苦しくなった例も。 --他にも今まで簡単な部分が難しくなった部分が多くシビアになったばかり。評判も芳しくなく、賛否両論とは到底呼べる仕様ではなかった。 -本作ではジャンプの着地硬直が長いうえにガード硬直時間を最も稼げるジャンプふっ飛ばし攻撃もないため、相手のジャンプ攻撃をガードしてすぐに交代攻撃を出す事がお手軽な割り込み手段となる。 --ほとんどのキャラの交代攻撃は出が早く、さらに出掛かりに無敵時間までついているのが大きい。 --本来は「投げ抜けは同じコマンドを入力しないと抜けられない」という設定であるのだが、実は通常投げに対し特殊な入力をすると、相手がどちらのボタンで投げても投げ抜けができてしまう。もっと欲張ると、小技を出しながら両方の通常投げを抜けられるように仕込む事もできる。 --ガード耐久値に至っては「交代するだけで初期値に戻る」という仕様になっているため、上記の件を踏まえ最大限にシステムを利用すると、実戦でガードクラッシュを狙うことは極めて難しくなっている。 ---これらにより、コマンド投げを持たないキャラが待ちに徹する相手を崩す事が非常に難しくなった。 -コマンドが受け付け辛く、『[[餓狼3>餓狼伝説3 遥かなる闘い]]』並に技が出難い。 --アーケード版とネオジオ版は隠しキャラのKUSANAGIと神楽ちづるを出す方法もキャラクター選択画面でコマンド入力なので同様に影響を受けている。 -起き上がりなどのリバーサル時にボタン入力の受付時間が非常に短く、相手の起き攻めを回避することが難しい。 -連続技のヒット補正も極端に簡略化され、「2HIT目以降に当てた技はダメージ50%」というとんでもない仕様に。 --このせいで、補正を無視できる一部技を組み込めないと、折角連続技を決めても非常に火力が低くなる。~ 結果、使い勝手の良い補正無視技を持っているかで強キャラがほぼ決まってしまい、そうでないキャラとの格差が非常に大きい。 -コマンド投げの超優遇。 --リバーサルがシビアになったにも関らず、ダウンからの起き上がりに投げ無敵がほとんど存在しないため、''打撃とコマンド投げの単純な二択''が、極めて回避しにくい完全二択になってしまう。 ---立ち回りでの崩しにくさに対して起き攻めはこのように容易なため、これだけを狙う戦法が最も有効になってしまっている。 --そして、このコマンド投げ優遇が''恐怖のDDコンビ''を生み出してしまった。 ***ゲームバランス上の問題点 -本作のゲームバランスを悪化させた要因としてよく語られるのが「DDコンビ」の存在である。 --命名の由来は大門(Daimon)五郎とデュオロン(Duolon)それぞれの頭文字を取ったもの。 -以下、この両者の特徴を記す。 ''デュオロン'' -交代攻撃を利用した即死連続技を持ち、かつ距離調整能力が非常に高い。 --高速の移動技を持ちながら遠距離戦もこなせ、バックステップが速く、距離も長い。 --近距離戦では小技の発生が早い上リーチも長く、当たればキャンセル必殺技が入り、さらに追い討ちをかけた上で攻めを継続、とあまりにも強力なラッシュをかけることができる。追撃可能なコマンド投げも持ち、そこからも攻めがループしてしまう。 --そして画面端限定だが永久連続技まで完備。簡単な択一攻撃で即死を狙う事も可能。 --唯一の欠点は超必殺技があまり使えない事だが、ゲージを使わずとも充分な戦闘力があるし、超必殺技を使わずとも本作の目玉でもある交代攻撃との相性も抜群でそれを絡めた即死連続技にももっていけるし、空になったゲージを稼ぐ役目を果たせると考えれば、他のチームメイトにそれだけゲージを回せるためむしろメリットとも言える。 --一部ではKOFでも屈指のぶっ壊れキャラと言われており、『'95』の京や『2001』のフォクシーに並ぶ程。この二人の強さはバグが支えている為、最も壊れてるのはデュオロンと言えるかもしれない。 ---''闘劇での使用率96%''、という数字がその強さ(と異常さ)を裏付けている。 ''大門'' -これまでに比べて小技の威力が弱体化したものの、他は何故か全て強化された。 --ジャンプ攻撃の後すぐにコマンド投げが連続技として成立という、恐ろしいシステムの恩恵((ちなみにこのシステムは『'94』~『'97』まではあったのだが、対戦バランスを崩すと判断されたようで、『'98』以降の作品では廃止されていた。))+コマンド投げ後に距離が離れないという壊れた性能のため起き攻めが極めて凶悪で、一度ダウンしてしまうとそのまま一人K.O.までもっていかれることもある。 --さらに下段こそ取れない((実は属性基準で当身の成立を判定していないため、下段判定のものであろうと地面から判定が浮いているものは取れたりする。例えば、草薙京やユリ・サカザキのしゃがみBとDはどちらも下段判定だが、Dボタンのほうは当身を成立させられてしまう。これは『'97』の山崎やマリーの当身にも該当している。))ものの、コマンドが簡単で発生が異常に早く隙も少ない当身系超必殺技「冥土落とし」を実装しており、他作品に比べて防御面も充実している。 --リーダー超必殺技「極大地獄極楽落とし」もコマンド投げの強化版で非常に高性能。当然の如く1フレーム発生である上、単体で6割のダメージを取れ、そして連続技に組み込んでもダメージ補正がかからない属性持ち。 ---なお、大門の闘劇使用率は50%。 -もはやDDコンビ無しでは勝つ事は不可能とされており、キャラによっては完全に詰むためゲームの幅も狭まってしまった。 --結果、多くのプレイヤーがデュオロン+大門+もう一人という組み合わせを選んでいた。主にビリー、K'、紅丸辺りが入る。 ---ビリーに至っては、総合的には弱キャラにも拘らず「DDコンビに対して有利に戦える」点を買われて選ばれていた程である。~ K'や二階堂 紅丸はそのビリーに対して有利であるため、「DD対策にビリーを入れる」か「ビリー対策にK'or紅丸を入れる」かでメンバーがほぼ決まってしまう。 -そもそも、大門やデュオロン抜きにしても、本作はアテナやマキシマなどの''弱いキャラが本当にとことん弱い''ため、かなりゲームバランスは悪い。 -ボスの片方が異常に高性能。 --交代制へ移行した事をボスにも反映させたのか、本作でボスとして登場する神楽ちづる&マキ姉妹も試合中に交代してくる。 ---しかしちづるに比べてマキが反則的に強い。CPUの反応を差し引いても基本性能がやけに優遇されている。本作の真のラスボスである無界はもちろん、考えようによってはかのゲーニッツ以上である。 ---その強さは「ちづる&マキ戦では、いかにマキに交代させないかが勝負の分かれ目」と言われるほど。 --マキの強さと引き換えということなのか、ちづるの方は分身を使用した超必殺技「三籟の布陣」が「発動中、ちづる本体は行動不能になる」「分身にも食らい判定が付いている」と言う理不尽な弱体化を食らってしまった。 ---過去作では分身の攻撃中にちづる本体が自由に行動可能だったため追い打ちを掛けたり、ガードされても分身に隠れて小ジャンプ攻撃と下段の2択でガードを崩し途中からヒットさせることができたが、今作のこの性能では使いようがない。 ***その他の問題点 -癖の強すぎるFALCOON(ファルコン)のキャラクターデザイン。 --前作までのノナ氏の妖気的なキャラクターグラフィックに批判が集まった事による変更なのだろうが、これまた絵の癖が強すぎる上に、歴代シリーズのキャラクターのデザインも彼の好みで好き勝手に弄くったと取れる旨の発言もあるために、旧来ファンなどからは反発を受けた。 ---『KOF MI』シリーズでの新キャラにも癖が強いのが多く、人気が出たキャラもいるのだが、それ以上に滑ったキャラを作って批判されてしまっていた。 --ただし、氏のHPを見てもらえば分かるが、絵のレベルはさすがに高く、プロとして力量に問題があるわけではない。氏の絵柄がKOFファンのイメージに大きく合わなかった事と、上記の発言で旧来のファンの反感を強く買い、叩かれてしまった事が最大の原因である。 ---KOFは熱狂的なファンが多く、かつノナ氏以前は森気楼氏が安定したデザインを続けていたのもあって、絵師に関する反響がとても大きいことも留意しておく必要があるだろう。~ 写実的だった森気楼氏の絵柄に比べると、ノナ氏は「躍動感を出すためのパース強調等が強め」、FALCOON氏は「等身や塗り方が全体的にアニメ寄り」であり、どちらもデフォルメが強めの絵柄である。 -ハードの性能と容量の限界~ すでに旧世代のハードとなっていたネオジオで無理に開発を続けたことによる性能面での限界を感じる箇所が目立ってしまっている。特に容量はもう限界ギリギリまで達していたと思われる。 --中でも特に限界に達していた影響を受けたと思われるのが打撃がヒットした時のSEで、これがよりによって『[[SNK VS. CAPCOM SVC CHAOS]]』の使い回しだった。 ---表現するなら発泡スチロールを叩くような音''しかない''。爽快感を著しく減退させる事となり、つまらなさを加速させる一因になった。前作『2002』までの様々なSEを収録できないほど、もう容量が残ってなかったのだと思われる。 --それ以外にも、過去のシリーズにあった掛け合いやセリフなどの各種演出のカットが目立ち、特に往年のファンには寂しさを感じた人も多い。 -一部シリーズ継続の伏線の放棄 --ネスツ編から展開された「龍の気」のストーリーは関係者が悉く不参加の為本作では全く進展がなかった。 ---「龍の気」に関しては担当者がこの件について引継ぎを行わないまま会社を出てしまったとのことで、以降の作品においてはサイコソルジャーチーム、またはデュオロンの個別ストーリーで軽く触れられる程度で、本筋として話が進む気配は残念ながらほとんど見られなくなった。 **賛否両論点 -キモい[[主人公>http://game.snkplaymore.co.jp/official/kof2003/character/hero_ash.html]]、''アッシュ・クリムゾン'' --本作からスタートした「アッシュ編」における新主人公であるアッシュ・クリムゾンだが、そのキャラクター造形や設定、台詞などの演出は結論から言うと''賛否両論が大きく分かれた''。~ 好物はザッハトルテ、趣味はネイルアート、そばかすに歯の矯正、泡の様な緑色の炎を使う、ひねくれた性格、そしてまごうことなき溜めキャラ……と、主人公と言うにはあまりに変則的すぎてカッコいいとは言いがたい造形である。 --前の章、ネスツ編の主人公であるK'も、主に台詞や各キャラとの会話やりとりの演出において「どこのチンピラだ」等と問題視されたが、それでも格好良さの面ではそれなりに高評価だった。 ---これまでの主人公である草薙京やK'との差別化を図ったのかもしれないが、あまりにも変化球をかけすぎた試み(と言うよりももはや暴投)は旧来のファンほど受け入れられず、痛烈な批判を生んだ。 ---京もK'も性格はひねくれているが、二人とも義理堅い面や仲間想いの面があったためプレイヤーからの評価は高い。しかし、アッシュは終始他人の神経を逆撫でするような態度をとる性格であることも嫌われる要因になった。 --「魅力ある悪役」というコンセプトでデザインされた所謂アンチヒーロー的な側面があり、とあるチームのエンディングでは完全に悪役にしか見えず、ますます印象が悪く映ってしまっている。 --ただし''気持ち悪いと言われることも狙って作られたキャラ''であり、一部の層からはむしろ''「キモかわいい」''なる一見不可解な評価を持ってそれなりに愛されキャラの位置を確立。アーケードゲームを取り上げている『月刊アルカディア』では第五回ベストキャラクター賞にも選ばれるキャラに。 ---アッシュ編完結作となった『XIII』でついにしっかりと主人公らしい活躍を見せ、嫌っていた層からもその活躍は認められている。 --また主人公なのに必殺技は殆ど溜めコマンド、というあたりからもスタンスが読み取れるが、技の構成は旧主人公とは逆に王道的。リーダー超必殺技は一定時間溜め無しで必殺技を出せるようになるというもの((シリーズではかなり珍しい、所謂パワーアップ技。ちなみにチームメイトの残り二人もリーダー超必殺技はパワーアップ技となっている。))。 ---とはいえ、続編に登場する度に相手の必殺技を封印する技(XI、前述のリーダー超必殺技を出した時限定で使用可能)、旧シリーズで荒れ狂う稲光のシェルミー((通称:裏シェルミー))がかつて使っていたものを彷彿とさせる設置技(XⅡ、XIII)とマニアックな技が追加されていき、性能面でもキャラクター造形に合わせてなのか、マニアックな方向性になっていったあたり、やはりと言うべきかとことんなまでに独特さを追求した主人公であったのかもしれない((もっとも性能に限って言えば、『'96』以降の京やネスツ編のK'がそうであったように、あえて奇をてらったマニアックな性能の主人公は今に始まったことではないが。))。 -シリーズの常連だったキャラのリストラ。 --アンディ、椎拳崇、鎮元斎、チョイといったこれまでシリーズ皆勤だったキャラがことごとくリストラされている。 --しかしKOFシリーズは歴史の長さ故に半ばメンバーが固定気味だったというマンネリも背負っており、メンバーの入れ替えによる一新も必要といえば必要。そのおかげで今作で初めて出場できた『餓狼MOW』のキャラ、特にグリフォンマスク等は後のKOFでも出場しており、きっかけとなった本作の評価点とも言える。 ---とはいえ、『MOW』版のテリー、グリフォンマスクに『MOW』には未登場のジョー東を混ぜる等、チームとしては少々歪な形になってしまった。 **評価点 -ドット絵力の向上。背景のレベルが『2001』や『2002』に比べると格段に上がっている。 --過去歴代の作品と異なり、背景は単色グラデーションがメインの作風となっている。イオリス資本時代の2作品よりは背景の描き込みはかなり向上しているものの、やはり『KOF99~2000』の旧SNK末期の作風と比べると賛否が分かれる。 --ただし、極限流チームのロバートや主人公チームのシェンはグラフィックの枚数が少なく、明らかに動きがガクガクだったりする等、微妙な格差も目に付く。逆に前述のデュオロンはぬるぬると動く。 -BGMのメインコンポーザーとして、旧SNK時代のサウンドチーム「新世界楽曲雑技団」のメンバーだったTATE-NORIOこと山手安生氏が復帰した((復帰自体は前作『2002』からだが、そちらは旧作からのアレンジBGMが中心だった。))。音源は相変わらず低品質だが、曲自体は中々の出来である。~ 中でも主人公チームのBGMである「Splendid Evil」はチームコンセプトやステージと非常に良くマッチしており、ダークな曲調ながら格好良い曲に仕上がっている。 --なお、KOFシリーズポータルサイトでは、「アーデルハイドのテーマ曲のイントロで使用されている『革命のエチュード』をきちんとピアノで演奏されている音に聞こえるようにするにはかなりの容量が必要だったため、ボイスなどそのほかの音源に割り当てる容量をギリギリまで削る必要があった」という裏話が披露されている。 -各チームのプレストーリーがしっかりと書かれるように。 --チームの結成やキャラの欠場理由、水面下の争いなどがしっかりと書かれており、短めながらも読みごたえがあるものに。 -新キャラのキャラクター造形。 --基本的に本作から登場した新キャラの魅力は本物。~ 上述のアッシュも、主人公=美男美女が基本であるこのご時世に「むしろ美形かと言えばそうではない」と公式に明言されたデザインのキャラを主人公として受け入れさせたという点を考えると、実はかなりの偉業といえるのではないだろうか。 ---ただ、前述した通りFALCON氏の公式イラスト、一部キャラのドット絵など、そのワンフックが効いたキャラ造形を上手く表現しきれていないのが惜しい所。 ---- **総評 BGMやグラフィックなど前作・前々作と比較して改善された面はあるものの、シリーズの常連だったキャラのリストラや対戦バランスの悪化などで評価を大きく下げる結果となった。~ シリーズ過去作でも対戦バランスの悪さが目立っていたとはいえ、もう少し調整に力を注いでいれば評価は変わっていたかもしれない。 ---- **余談 -この時期、SNKプレイモアはSVCカオスや[[メタルスラッグ5]]、そして本作など失敗作を連投し、全てがコケてしまった。 --上述した3作のアーケード版は、基板構造が従来のMVS(業務用ネオジオ)と違うカスタム基板(MV-0)であったことも不評の遠因と思われる。 ---カートリッジ式ソフトが比較的安価、かつ交換も容易なためにMVSはオペレーター側の評判が良かったが、MV-0基板はソフトウェアROMとマザーボードが一体化して交換不可能なタイプだったせいで、オペレーターに過去作以上の負担を強いるハメになった。 ---こうした理由はセキュリティ対策のため((基板上にもセキュリティチップが追加されている))だったが、既にネオジオは隅々まで分析しつくされており、単なる「(ハッキング対策の)時間稼ぎ」にしかならず速攻でセキュリティを突破されてしまった((それどころか、当の三作品のMVS版が発売されるより先に海賊版ROMカードリッジが流通してしまっている。))。 ---ちなみに本作を含むMV-0を採用した3作品だが、海外版の後期出荷版は通常のMVSカートリッジで少数リリースされてる((勿論、海外でもメインで出荷されたのはMV-0基板バージョンである))。日本でも基板屋や輸入業者によってこの海外のMVSカードリッジ版の新品が大量に売られていたが、国内版のMV-0基板の中古相場よりも圧倒的に安価だった為か、中小オペレーターや基板マニアにかなり需要があった。 ---当時のプレイモアも流石にこの事情を把握していたのか、最後発だった海外向けMVSカートリッジ版『KOF2003』には国内のMVS基板で起動させても日本語表記にならず、海外版のままで立ち上がるプロテクトを掛けている((『メタルスラッグ5』と『SVCカオス』は普通に日本語で立ち上がる。))。もっともROM内のデータには普通に国内版のデータも入っているので、UNI-BIOS等で切り替えて国内版として起動させる事も出来なくはないが、UNI-BIOSはMVS基板の設定保存には対応しておらず、基板を毎回起動させる度に設定し直さなければならないという手間を要する。従って、国内版としてゲームセンターで稼働させるのは現実的ではない。 --また、会社の経営に関するゴタゴタが収まっていない時期だった事も影響したと考えられる。 ---この年は分散していた旧SNK関連会社の整理((版権管理担当のプレイモアがSNKプレイモアへ社名変更した他、開発担当のブレッツァソフトがハード担当のサン・アミューズメントへの吸収合併を経てSNKネオジオとなった。))や、資金援助を行うスポンサー的立場で開発にも関わっていたイオリスとの提携解消等、会社が本格的な再始動を果たす前の過渡期であった。開発のSNKネオジオを吸収合併し、SNKプレイモア一社の体制に落ち着いたのは本作発売から約一年後の2004年11月の事である。 --いずれにせよ、2003年は同社にとって''悪夢の年''だったに違いない。 -本作の翌年はKOF本編が一旦休止し、基板をATOMISWAVEに変更した『2002』ベースの番外編『[[KOF NEOWAVE>THE KING OF FIGHTERS NEOWAVE]]』がリリースされた。 --その後、ようやく2005年に登場したナンバリング続編の『[[KOF XI>THE KING OF FIGHTERS XI]]』では、本作における問題点が相当改善されており、マルチシフトシステムを見事に完成させた作品となった。 -今作でのビリー・カーンを演じたのが、かの『[[デスクリムゾン]]』のコンバット越前で有名なせいじろう氏という事で一部で話題を呼んだ。((後に「KOF XIII」の家庭用移植の際にビリー役として再度起用されている)) --『KOF MI2』のプロモーション用に制作されたOVA、「KOF Another Day」でも引き続きビリー役を担当したものの、実際のゲーム中では『[[リアルバウト餓狼伝説]]』以降の担当声優であった山西惇氏に戻っている。 -起き攻めやコマンド投げが異常に優遇されていることは上でも述べられているが、それらが本作の有効な手段とされた攻略の動画も公式で作られている。 -闘劇の種目に選ばれているが、前述の受け付けの悪さからかコマンド入力ミスを連発など、全国大会の大舞台らしからぬミスも多々見られた。 ---- **移植(ネオジオROM以外) |対応機種|プレイステーション2、Xbox|&Amazon(B0002TY17W)|&Amazon(B000E3YSC4)| |発売・開発元|SNKプレイモア|~|~| |発売日|【PS2】2004年10月28日&br()【Xb】2005年8月25日|~|~| |定価|【PS2】7,140円&br()【Xb】5,040円|~|~| |廉価版|【PS2】SNK BEST COLLECTION:2006年3月9日発売/2,940円|~|~| |配信|【PS2】ゲームアーカイブス:2015年4月15日発売/1,000円|~|~| |判定|なし|~|~| |ポイント|バランス調整されたアレンジモード&br;過去作同様の3on3システムも選択可能&br;アレンジBGMも好評|~|~| **概要(移植) -「投げに対する無敵時間が延長」「DDコンビが弱体化」などの''バランス調整が施されたアレンジモード''が搭載され、DDコンビの悪夢が払拭されてそれなりに遊べるゲームとなっている。 -中ボスのKUSANAGIと神楽ちづるがデフォルトで使えるようになっており、同じく中ボスでアーケードではCPU専用だった神楽マキも最初から使用可能。さらに、ボスのアーデルハイドと無界もそれぞれCPUとして出現させて倒すと隠しキャラとして使用可能になる。 -操作性も改善している。 -独自仕様として従来の3on3システム(自由交代無し)でのプレイも可能。このモードではチームメンバー全員がリーダー超必殺技を使える。 -背景も3D化され綺麗に見え、またアレンジBGMも搭載してある(しょっぱいSEはそのまんまだが)。 --アレンジBGMは音質が桁違いに上がった事に加え、PS2版『[[怒首領蜂大往生]]』や『[[beatmaniaシリーズ]]』などに携わっているスタッフが参加した事もあり評価が高い。 -特に目立ったバグもなく、全体的に見れば良移植である。 --ただし、PS2の初期版にはフリーズする致命的なバグが存在していた(ベスト版では修正済)。 -Xbox版ではカラーエディットを実装している他、ネット対戦に対応していたが、現在はマイクロソフトの旧Xboxオンラインサーバー停止によりネットワークサービスを終了している。 //追記編集 ---- //ザ・キング・オブ・ファイターズ ザキングオブファイターズ キングオブファイターズ(検索用、消さないこと)
//移植版は「[[要強化記事>要強化記事一覧]]」に修正依頼が出ています。加筆できる方は修正をお願いします。~ //依頼内容は判定の確定です。~ //↑3wiki統合時の判定欄修正漏れと思われ、反対もなかったため「判定なし」とし要強化解除。18/3/24 //---- #contents() ---- *THE KING OF FIGHTERS 2003 【ざ きんぐ おぶ ふぁいたーず つーさうざんどすりー】 |ジャンル|対戦格闘|&amazon(B001BO4O8S)| |対応機種|アーケード(MVS)&br()ネオジオ|~| |販売元|SNKプレイモア|~| |開発元|SNKネオジオ|~| |稼動開始日|2003年12月12日|~| |配信|アケアカNEOGEO&br()【PS4/One/Switch】2019年2月21日&br()【PS4/Switch】823円(税込)&br()【One】840円(税込)|~| |レーティング|CERO:B(12才以上対象)|~| |判定|BGCOLOR(khaki):''ゲームバランスが不安定''|~| |ポイント|恐怖のDDコンビ&br()しょっぱいSE&br()限界ギリギリの容量で作れたのが奇跡&br()オペレーターへのダメージ&br()''キモかわいい主人公''&br()ネオジオ&年号タイトル最後の『KOF』|~| |>|>|CENTER:''[[THE KING OF FIGHTERSシリーズ]]''| ---- キング・オブ・ファイターズ2003を開催いたします 例年通り3人1組の対戦形式ですが、 今大会には新ルールを設けておりますので ご期待ください 皆様の参加をお待ちしております >世界最大規模にして最高水準の格闘大会。その舞台の裏で繰り広げられた数々の陰謀とドラマは、~ 如何なる時も何らかの厚い幕で覆い隠され、大衆の目に触れることはなかった。 > >そんな因縁を含みつつ、今年もキング・オブ・ファイターズ開催が決定した。~ 大会の主催者はまたしても謎の存在であり、その不透明さを受け、さまざまな場所で、さまざまな憶測が乱れ飛ぶ。~ しかしそれにもかかわらず、続々と参加を表明する歴戦の格闘家たち。~ 知名度の高い参加者が多数いることを確かめると、それまで慎重だった各メディアも、一斉にKOFを取り上げはじめた。 >今大会から導入される新ルール「''マルチシフト''」。つまり自由交代制の発表を境に、それは社会現象にまで発展し、世界中の話題を独占してゆく。~ スピーディーな試合展開とチーム単位の戦術が同時に要求されるこのルールを巡り、新聞・雑誌は毎週のように特集記事を組みTVではにわか評論家たちが机を叩いて熱弁をふるう日々が続いた。 > >「まだまだ世界には、とてつもなく強い連中がいる」~ 牙刀、グリフォンマスク、デュオロン、シェン・ウー。……そして、''アッシュ・クリムゾン''。~ 彼らの名前がネットを通じて次第に知られるようになったのは、まさにこのKOF騒ぎが契機であったのだ。~ 彼らはKOFに波乱を巻き起こす新星になれるのか?それとも……… >熱狂の日々の中、着々と準備は進む。地方大会のステージが決定され、日程が整い、初戦の地に続々と移動する観客たち。~ ストリートファイトの雰囲気を演出すべく会場は市中に設定されたが、試合の模様は巨大スクリーンで中継放送されることとなり、期間中、数万人収容規模のスタジアムが、あちこちの都市で確保されてゆく。 ''2003年12月、時は訪れた。&br()今年も舞台の幕が上がる。'' ---- **概要 SNKの対戦格闘ゲーム『KOF』シリーズ第10作品目であり、ネオジオ基板で作られた最後のKOFである((ネオジオ最終作は翌年2004年発売の『サムライスピリッツ零スペシャル』。))。~ 本作よりメインストーリーの主人公が「アッシュ・クリムゾン」に変わり、後に「アッシュ編」と呼ばれる新たな局面を迎えた。~ 他、従来の3on3によるラウンド制から、カプコンのVS.シリーズのような任意交代制を取り入れ、全体的に試合展開のスピードが速くなった。 **システム -従来はラウンドごとにメンバーを割り振る最大5ラウンド制の試合だったが、今回は3人全員が倒れるまでの1ラウンドだけで決着をつける形式へと変更。チームメンバーがKOされた場合は即座に次のキャラが登場し、ノンストップで試合は続く。 --プレイヤーはBCまたはCD同時押しを任意でキャラクターを途中交代させることが可能。一度交代すると、一定時間後に「CHANGE OK!」が点灯するまで再交代は出来ない。 ---『236+BCまたはCD』では、1ゲージを消費して打撃を繰り出しつつほかのキャラと交代する「交代攻撃」になる。~ 最初に交代前のキャラが打撃を繰り出し、その後交代キャラがジャンプ攻撃のモーションで突進してくる。最初の打撃がヒットした場合、次キャラの飛び込み攻撃も連続ヒットし、更に追い討ちが可能。~ これにより、複数のキャラが関与する派手な連続技を決められる。これ自体は他の技にキャンセルをかけて出すことはできないが、出が速いものが多いため、本作は交代攻撃を利用した即死連続技も多数存在する。 --ちなみに同様のシステムを採用した他社作品と違い、控えキャラの体力は一切回復しない。~ このため、KOFシリーズで初めて試合中の体力回復が一切行われないタイトルとなった。 -交代攻撃に引き換え、クイックMAXを含めてMAXモードは廃止された。そのため前作のような難易度の高いテクニック技は減ったように見えるが、交代攻撃によって初心者には優しくない様な連続技が出来る。 -MAX超必殺技に代わり「リーダー超必殺技」という新しい上位超必殺技が登場。キャラ選択時に最初に選択したメンバーがチームリーダーとなり(キャラ決定後にその中からリーダーを担当するメンバーを決める方式ではないので注意)、そのリーダーだけが2ゲージを消費して使用できる。 --性能の傾向は前作『2002』のMAX2に近く、実戦で使わなきゃ損なものから、「どうやって当てるんだこんなの?」なものまで様々。~ 同様のシステムを持つ次回作の『XI』でも概念は引き継がれているが、性能の傾向は総じて実戦向きのものに変化している。 --また、リーダーシステムは、時間切れによる判定で勝敗を決める際にもわずかながら関わっている。双方とも総体力が同等の場合、次にリーダーが残っているか否かで判定を決めることになり、どちらか一方だけがリーダーが倒されていなかった場合、そのチームが勝利となる。双方とも総体力が同等かつ、リーダーが倒されている、もしくは残っている場合で初めて引き分け。 -容量の都合から投げなどキャラごとの技数が減少。最大の変更点は、これまで通常技の一つであった''ふっ飛ばし攻撃が地上・空中共に廃止されたこと''。 --通常投げは一種類に統一されたがコマンド自体はCとDの二種類あり、投げ抜け時は同じコマンドを押さないと抜けられない。また投げる方向がCとDとで変わるのは極一部を除いて従来通りだが、前述の通り投げ技自体が一種類に統一された為、技によっては違和感を感じる図になってしまったものも。 --一応、地上ガード中にゲージを一本消費して発動できる「ガードキャンセルふっ飛ばし攻撃」は残っている。 **キャラクター -新キャラには&font(#ff0000){*}マーク(本作初出は太字)、『2001』以前より復活したキャラには&font(#0000ff){*}マークを付けている。 --主人公チーム:''アッシュ・クリムゾン''&font(#ff0000){*} ''デュオロン''&font(#ff0000){*} ''シェン・ウー''&font(#ff0000){*} --餓狼チーム:テリー・ボガード ジョー東 グリフォンマスク&font(#ff0000){*} --極限流チーム:リョウ・サカザキ ロバート・ガルシア ユリ・サカザキ --韓国チーム:キム・カッファン チャン・コーハン ジョン・フーン&font(#0000ff){*} --怒チーム:レオナ・ハイデルン ラルフ・ジョーンズ クラーク・スティル --アウトローチーム:牙刀&font(#ff0000){*} ビリー・カーン&font(#0000ff){*} 山崎竜二&font(#0000ff){*} --女性格闘家チーム:キング&font(#0000ff){*} 不知火舞 ブルー・マリー --紅丸チーム:二階堂紅丸 矢吹真吾 大門五郎 --女子高生チーム:麻宮アテナ 四条雛子&font(#0000ff){*} ''まりん''&font(#ff0000){*} --K'チーム:K' マキシマ ウィップ --三種の神器チーム:草薙京 八神庵 神楽ちづる&font(#0000ff){*}(ちづるのみ中ボス、AC版では隠しキャラだったが家庭用でデフォルト化)((キャラクター選択画面では京と庵がランダムセレクトを挟んで並んでいてエディット専用枠のような扱いで、ちづるはボス枠で別に配置されているのだが、公式サイトではこの3人が公式チーム扱いになっている。)) --中ボス:KUSANAGI(AC版では隠しキャラだったが家庭用でデフォルト化) 神楽マキ(AC版はCPU専用、家庭用で中ボス他2人と共にデフォルト化) --ラスボス:アーデルハイド 無界(双方とも家庭用のみ隠しキャラとして使用可能) -見ての通り、キャラクター及びチーム編成は大きく一新されている。 --『[[餓狼 MARK OF THE WOLVES]]』(餓狼MOW)独自のキャラ達が初参戦を果たしたことで(本作はグリフォンマスクと牙刀が参戦)、『'99』を最後に停滞していた既存シリーズからの客演キャラのラインナップに動きが見られた。 --他にも再び衣装が一新され革ジャンにジーンズ姿になった京を始め、ビリーや山崎、そして餓狼MOW準拠になったテリーというようにデザインが変更されたキャラもおり、ロバートはニュートラルモーションが完全新規に、山崎はニュートラルのまま放置した際のモーションが追加されるなど、グラフィックも大きく描き変わったキャラが居る。 -中ボスのKUSANAGIの倒し方によってラスボスが変更される。 --超必殺技(リーダー超必殺技でも可)で倒すと神楽マキ→無界。それ以外の技で倒すとアーデルハイドと戦う事になる。チーム別のエンディングを見る為には無界を倒さねばならない((デフォルトチームでアーデルハイドを倒しても専用の共通エンディングが流れるのみ。))。 ---- **問題点 ***システム上の問題点 -''試合開始直後からプレイヤーがゲージを3本も持っており''、いきなりゲージを消費して出せる強力な技を使用できる。~ おかげでちょっとミスしただけで10秒も経たないうちに体力の半分以上が吹っ飛んだりすることが日常茶飯事。 --「初心者への配慮」「最初から互いに派手なプレイを可能にした大盤振る舞い」「本作の目玉である交代攻撃を堪能してもらうためのサービス」「コンピュータ戦のための配慮((本作は中ボスの一人目であるKUSANAGIを(リーダー)超必殺技で倒すか否かでラスボスのルート分岐もあるため、それに配慮してゲージを最初から完備させた、と言う考えもできなくはない。ただしそれならCPU戦に限定すべきだ、と言う結論に行き着くが。))」という肯定的な意見もあったが、今作は後述にもあるように交代攻撃による即死も多数発見されたりなどがあったこともあり、むしろ初心者のハードルを高くしてしまい、純粋な評価要素にはなり得なかった。 --ちなみに試合の一戦目開始時からすでにゲージ((ネスツ編のストライカーボムは例外。))を持っている仕様はKOFでは初。 -''ふっ飛ばし攻撃や空振りキャンセル、先行入力が廃止''され、操作感が大幅に変化。 --重複を避ける方法があったにもかかわらず((従来の(ジャンプ)ふっ飛ばし攻撃は(空中で)CDだったが、今作はCDが交代コマンドの一つにあてられている。なお、ACとBDには通常技と特殊動作どちらも割り当てられていないので、そちらに交代コマンドを割り当てれば、ネオジオが使える4ボタンのままでもふっ飛ばし攻撃との重複は避けられた。))そうしなかった辺り、やはり容量の都合だろうか(一応、地上で出すガードキャンセルふっ飛ばし攻撃はそのまま残ってはいるが、空中ふっ飛ばしは後述する特殊技にされた一部のキャラ以外は全員削除)。 //意図的に廃止された可能性がある。 //パワーゲージを1本消費するガードキャンセルふっ飛ばし攻撃はそのまま残っているので、どうやら容量の都合ではなさそうである。 //↑ジャンプふっ飛ばしは特殊技として実装されたキャラを除けば本作では全員削除されていましたよ?? --一部のキャラのみ固有の「特殊技」としてレオナやチャンのジャンプふっ飛ばしやアテナの地上ふっ飛ばしなどが残されてはいる。しかしキャラによっては、それまでのシリーズで『立ち回りにおける生命線』と言えるほどの依存度だったケースもあり、無くなって非常に苦しくなった例も。 --他にも今まで簡単な部分が難しくなった部分が多くシビアになったばかり。評判も芳しくなく、賛否両論とは到底呼べる仕様ではなかった。 -本作ではジャンプの着地硬直が長いうえにガード硬直時間を最も稼げるジャンプふっ飛ばし攻撃もないため、相手のジャンプ攻撃をガードしてすぐに交代攻撃を出す事がお手軽な割り込み手段となる。 --ほとんどのキャラの交代攻撃は出が早く、さらに出掛かりに無敵時間までついているのが大きい。 --本来は「投げ抜けは同じコマンドを入力しないと抜けられない」という設定であるのだが、実は通常投げに対し特殊な入力をすると、相手がどちらのボタンで投げても投げ抜けができてしまう。もっと欲張ると、小技を出しながら両方の通常投げを抜けられるように仕込む事もできる。 --ガード耐久値に至っては「交代するだけで初期値に戻る」という仕様になっているため、上記の件を踏まえ最大限にシステムを利用すると、実戦でガードクラッシュを狙うことは極めて難しくなっている。 -これらにより、コマンド投げを持たないキャラが待ちに徹する相手を崩す事が非常に難しくなった。 -起き上がりなどのリバーサル時にボタン入力の受付時間が非常に短く、相手の起き攻めを回避することが難しい。 -連続技のヒット補正も極端に簡略化され、「2HIT目以降に当てた技はダメージ50%」というとんでもない仕様に。 --このせいで、補正を無視できる一部技を組み込めないと、折角連続技を決めても非常に火力が低くなる。~ 結果、使い勝手の良い補正無視技を持っているかで強キャラがほぼ決まってしまい、そうでないキャラとの格差が非常に大きい。 -コマンド投げの超優遇。 --リバーサルがシビアになったにも関らず、ダウンからの起き上がりに投げ無敵がほとんど存在しないため、''打撃とコマンド投げの単純な二択''が、極めて回避しにくい完全二択になってしまう。 ---立ち回りでの崩しにくさに対して起き攻めはこのように容易なため、これだけを狙う戦法が最も有効になってしまっている。 --そして、このコマンド投げ優遇が''恐怖のDDコンビ''を生み出してしまった。 ***ゲームバランス上の問題点 -本作のゲームバランスを悪化させた要因としてよく語られるのが「DDコンビ」の存在である。 --命名の由来は大門(Daimon)五郎とデュオロン(Duolon)それぞれの頭文字を取ったもの。 -以下、この両者の特徴を記す。 ''デュオロン'' -交代攻撃を利用した即死連続技を持ち、かつ距離調整能力が非常に高い。 --高速の移動技を持ちながら遠距離戦もこなせ、バックステップが速く、距離も長い。 --近距離戦では小技の発生が早い上リーチも長く、当たればキャンセル必殺技が入り、さらに追い討ちをかけた上で攻めを継続、とあまりにも強力なラッシュをかけることができる。追撃可能なコマンド投げも持ち、そこからも攻めがループしてしまう。 --そして画面端限定だが永久連続技まで完備。簡単な択一攻撃で即死を狙う事も可能。 --唯一の欠点は超必殺技があまり使えない事だが、ゲージを使わずとも充分な戦闘力があるし、超必殺技を使わずとも本作の目玉でもある交代攻撃との相性も抜群でそれを絡めた即死連続技にももっていけるし、空になったゲージを稼ぐ役目を果たせると考えれば、他のチームメイトにそれだけゲージを回せるためむしろメリットとも言える。 --一部ではKOFシリーズ屈指のぶっ壊れキャラと言われており、『'94』のハイデルン、『'95』の京、『2001』のフォクシーに並ぶ程。この三人の強さはバグが支えている為、最も壊れてるのはデュオロンと言えるかもしれない。 ---''闘劇での使用率96%''、という数字がその強さ(と異常さ)を裏付けている。雑誌『アルカディア』でも「ワンチャンスからリーダー超必殺技などを絡めて先に相手のデュオロンを倒した側が圧倒的に有利になる」と言われたほど。 ''大門'' -これまでに比べて小技の威力が低下したものの、他は何故か全て強化された。 --ジャンプ攻撃の後すぐにコマンド投げが連続技として成立という、恐ろしいシステムの恩恵((ちなみにこのシステムは『'94』~『'97』まではあったのだが、対戦バランスを崩すと判断されたようで、『'98』以降の作品ではジャンプ攻撃から直接コマンド投げをしようとすると、たとえ「相手がのけぞり中、かつ間合い内でも」空振りポーズを取るようになり、廃止されていた。『ジャンプ攻撃→地上で何か通常技を挟んで→キャンセルコマンド投げ』なら『'98』以降でも連続技になる。))+コマンド投げ後に距離が離れないという壊れた性能のため起き攻めが極めて凶悪で、一度ダウンしてしまうとそのまま一人K.O.までもっていかれることもある。 --さらに足元への攻撃こそ取れない((属性基準で当身の成立を判定していないため、下段判定のものであろうと地面から判定が浮いているものには当身が成立する。例えば、草薙京やユリ・サカザキのしゃがみBとDはどちらも下段判定だが、Dボタンのほうは当身を成立させられてしまう。これは『'97』の山崎、マリー、ビリーの当身にも該当している。))ものの、コマンドが簡単で発生が異常に早く隙も少ない当身系超必殺技「冥土落とし」を実装しており、他作品に比べて防御面も充実している。 ---何よりこの冥土落とし、「相手の交代攻撃(交代する側、交代して入ってくる側両方)を見てからでも間に合う」ため、安易な交代攻撃割り込みに対して物凄いプレッシャーになるのが強い。 --リーダー超必殺技「極大地獄極楽落とし」もコマンド投げの強化版で非常に高性能。当然の如く1フレーム発生である上、単体で6割のダメージを取れ、そして連続技に組み込んでもダメージ補正がかからない属性持ち。 ---なお、大門の闘劇使用率は50%。 -もはやDDコンビ無しでは勝つ事は不可能とされており、キャラによっては完全に詰むためゲームの幅も狭まってしまった。 --結果、多くのプレイヤーがデュオロン+大門+もう一人という組み合わせを選んでいた。主にビリー、K'、紅丸辺りが入る。 ---ビリーに至っては、総合的には弱キャラにも拘らず「DDコンビに対して有利に戦える」点を買われて選ばれていた程である。~ K'や二階堂 紅丸はそのビリーに対して有利であるため、「DD対策にビリーを入れる」か「ビリー対策にK'or紅丸を入れる」かでメンバーがほぼ決まってしまう。 -そもそも、大門やデュオロン抜きにしても、本作はアテナやマキシマなどの''弱いキャラが本当にとことん弱い''ため、かなりゲームバランスは悪い。 -ボスの片方が異常に高性能。 --交代制へ移行した事をボスにも反映させたのか、本作でボスとして登場する神楽ちづる&マキ姉妹も試合中に交代してくる。 ---しかしちづるに比べてマキが反則的に強い。CPUの反応を差し引いても基本性能がやけに優遇されている。本作の真のラスボスである無界はもちろん、考えようによってはかのゲーニッツ以上である。 ---その強さは「ちづる&マキ戦では、いかにマキに交代させないかが勝負の分かれ目」と言われるほど。 --マキの強さと引き換えということなのか、ちづるの方は分身を使用した超必殺技「三籟の布陣」が「発動中、ちづる本体は行動不能になる」「分身にも食らい判定が付いている」と言う理不尽な弱体化を食らってしまった。 ---過去作では分身の攻撃中にちづる本体が自由に行動可能だったため追い打ちを掛けたり、ガードされても分身に隠れて小ジャンプ攻撃と下段の2択でガードを崩し途中からヒットさせることができたが、今作のこの性能では使いようがない。 --ちなみにそのマキとちづるを退けた末に待つ真のラスボスの無界はというと、知識なしに挑んだ場合はやはり簡単に勝てる相手ではないが((主に遠距離では設置技の「地衝」、そして近距離では間合いが広く成立時に石化させて追い討ちまでしてくるコマンド投げ「死戒」を使ってくるという、あの『'96』で多くのプレイヤーにトラウマを植え付けたゲーニッツを彷彿とさせる戦法と技を使ってくる。))、実は起き上がり直後にガードしないという弱点があり((無界に限らず本作のCPUは全体的に起き上がり直後が甘い。))そこに持続が長い突進技やジャンプ攻撃からの連続技を主に重ねてダウンを奪ってまた前述の技を重ねることを繰り返せば、先述のマキよりも簡単に勝てたりする。 ---実は性能としては、コマンド投げの「死戒」成立時に石化させて相手の動きを封じた直後、「近距離C→死戒」×nといったお手軽な永久コンボができてしまうのだが、2001のイグニスとは異なり、本作のCPUアルゴリズムがこのような永久を使うことはないのでご安心を。~ また、家庭用では隠しで使えるようになるのだが、実際に使ってみると、前述の永久やリーダー超必の全画面攻撃「死界」が強力であるものの、歩行速度が鈍重で各技の振りも重く隙が大きいなどのデメリットも目立ち、決してお手軽というわけではなかったりする。 ***その他の問題点 -癖の強すぎるFALCOON(ファルコン)のキャラクターデザイン。 --前作までのノナ氏の、画力そのものは非常に高いものの、癖が強すぎて妖気的になってしまったキャラクターグラフィックに批判が集まった事による変更なのだろうが、これまた絵の癖が強すぎる上に、歴代シリーズのキャラクターのデザインも彼の好みで好き勝手に弄くったと取れる旨の発言もあるために、旧来ファンなどからは反発を受けた。 ---『KOF MI』シリーズでの新キャラにも癖が強いのが多く、リアン、ニノンなど人気が出たキャラもいるのだが、それ以上に滑ったキャラ(代表例:ミニョン、ナガセ)を作って批判されてしまっていた。 --ただし、氏のHPやTwitterなどを見てもらえば分かるが、絵のレベルはさすがに高く、プロとして力量に問題があるわけではない。氏の絵柄がKOFファンのイメージに大きく合わなかった事と、上記の発言で旧来のファンの反感を強く買い、叩かれてしまった事が最大の原因である。 ---KOFは熱狂的なファンが多く、かつノナ氏以前は森気楼氏が安定したデザインを続けておりファンからの支持も非常に高く、「KOFといえば森気楼氏の絵柄だ」というイメージが確立されていたのもあって、絵師に関する反響がとても大きいことも留意しておく必要があるだろう。~ 写実的だった森気楼氏の絵柄に比べると、ノナ氏は「躍動感を出すためのパース強調等が強め」、FALCOON氏は「頭身や塗り方が全体的にアニメ寄り」であり、どちらもデフォルメが強めの絵柄である。~ 絵師に関する批判が収まるのは『XI』『2002UM』/『XⅡ』『XⅢ』などでメインイラスト等を担当する、森気楼氏の弟子でもあるヒロアキ氏や『ネオジオバトルコロシアム』『XIV』のおぐらえいすけ氏((おぐら氏は旧SNK時代から餓狼チームのメンバーとしても途中から関わっていた。彼もまた森気楼氏の弟子である。))を待つことになる。 -ハードの性能と容量の限界~ すでに旧世代のハードとなっていたネオジオで無理に開発を続けたことによる性能面及び容量((ちなみに本作がネオジオで発売されたゲームにおいて最大容量となった(716Mビット)。))における限界を感じる箇所が目立ってしまっている。 --SEは前年度リリースされた『[[SNK VS. CAPCOM SVC CHAOS]]』からの使い回しであり、同作から全く改善されておらず酷評された。 ---表現するなら発泡スチロールを叩くような音''しかない''。爽快感を著しく減退させる事となり、つまらなさを加速させる一因になった。そして好評だったそれ以外の旧作のSEは一切収録されていない。 --それ以外にも、過去のシリーズにあった掛け合いやセリフなどの各種演出のカットが目立ち、特に往年のファンには寂しさを感じた人も多い。 -一部シリーズ継続の伏線の放棄 --ネスツ編から展開された「龍の気」のストーリーは関係者が悉く不参加の為本作では全く進展がなかった。 ---「龍の気」に関しては担当者がこの件について引継ぎを行わないまま会社を辞めてしまったとのことで、以降の作品においてはサイコソルジャーチーム、またはデュオロンの個別ストーリーで軽く触れられる程度で、本筋として話が進む気配は残念ながらほとんど見られなくなった。 **賛否両論点 -キモい[[主人公>http://game.snkplaymore.co.jp/official/kof2003/character/hero_ash.html]]、''アッシュ・クリムゾン'' --本作からスタートした「アッシュ編」における新主人公であるアッシュ・クリムゾンだが、そのキャラクター造形や設定、台詞などの演出は結論から言うと''賛否両論が大きく分かれた''。~ 好物はザッハトルテ、趣味はネイルアート、そばかすに歯の矯正、泡の様な緑色の炎を使う、ひねくれた性格、人を小馬鹿にしたような歪んだ表情、そしてまごうことなき溜めキャラ……と、主人公と言うにはあまりに変則的すぎてカッコいいとは言いがたい造形である。 --前の章、ネスツ編の主人公であるK'も、登場初期は台詞や各キャラとの会話やりとりの演出などで「どこのチンピラだ」等と問題視されたが、それでも格好良さの面ではそれなりに高評価で、以後もストーリーが進んでキャラが掘り下げられていくたびにファンに受け入れられていった。 ---アッシュはこれまでの主人公である草薙京やK'との差別化を図ったのかもしれないが、あまりにも変化球をかけすぎた試み(と言うよりも、もはや暴投の領域)は旧来のファンほど受け入れられず、痛烈な批判を生んだ。 ---京もK'も性格はひねくれている面こそあれど、二人とも義理堅い面や仲間想いの面も併せ持っている為にプレイヤーからの評価は高い。しかし、アッシュは終始他人の神経を逆撫でするような態度をとる性格であることも嫌われる要因になった。 --「魅力ある悪役」というコンセプトでデザインされた所謂アンチヒーロー的な側面があり、とあるチームのエンディングでは完全に悪役にしか見えず、ますます印象が悪く映ってしまっている。 ---今作の主人公チームのテーマBGMのタイトルも「Splendid Evil(''華麗なる悪'')」であり、悪役としての面が明確に打ち出されている。 --ただし''気持ち悪いと言われることも狙って作られたキャラ''であり、一部の層からはむしろ''「キモかわいい」''なる一見不可解な評価を持ってそれなりに愛されキャラの位置を確立。アーケードゲームを取り上げている『月刊アルカディア』では第五回ベストキャラクター賞にも選ばれるキャラに。 ---アッシュ編完結作となった『XIII』でついにしっかりと主人公らしい活躍を見せ、嫌っていた層からもその活躍は認められている。 --また主人公なのに必殺技は殆ど溜めコマンド、というあたりからもスタンスが読み取れるが、技の構成は旧主人公とは逆に王道的。リーダー超必殺技は一定時間溜め無しで必殺技を出せるようになるというもの((シリーズではかなり珍しい、所謂パワーアップ技。ちなみにチームメイトの残り二人(デュオロン、シェン・ウー)もリーダー超必殺技はパワーアップ技となっている。))。 ---とはいえ、続編に登場する度に相手の必殺技を封印する技(XI、前述のリーダー超必殺技を出した時限定で使用可能)、旧シリーズで荒れ狂う稲光のシェルミー((通称:裏シェルミー))がかつて使っていたものを彷彿とさせる設置技(XⅡ、XIII)とマニアックな技が追加されていき、性能面でもキャラクター造形に合わせてなのか、マニアックな方向性になっていったあたり、やはりと言うべきかとことんなまでに独特さを追求した主人公であったのかもしれない((もっとも性能に限って言えば、『'96』以降の京やネスツ編のK'がそうであったように、あえて奇をてらったマニアックな性能の主人公は今に始まったことではないが。))。 -シリーズの常連だったキャラのリストラ。 --アンディ・ボガード、椎拳崇、鎮元斎、チョイ・ボンゲといったこれまでシリーズ皆勤だったキャラがことごとくリストラされている。 --しかしKOFシリーズは歴史の長さ故に半ばメンバーが固定気味だったというマンネリも背負っており、メンバーの入れ替えによる一新も必要といえば必要。そのおかげで今作で初めて出場できた『餓狼MOW』のキャラ、特にグリフォンマスク等は後のKOFでも出場しており、きっかけとなった本作の評価点とも言える。 ---とはいえ、『MOW』版のテリー、グリフォンマスクに『MOW』には未登場のジョー東を混ぜる等、チームとしては少々歪な形になってしまった。%%やはり『[[CAPCOM VS. SNK 2 MILLIONAIRE FIGHTING 2001]]』のアンディ未参戦が影響しているのだろうか。%% **評価点 -ドット絵の画力の向上(復活)。背景のレベルが『2001』や『2002』に比べると格段に上がっている。 --過去歴代の作品と異なり、背景は単色グラデーションがメインの作風となっている。イオリス資本時代の2作品よりは背景の描き込みはかなり向上しているものの、やはり『KOF99~2000』の旧SNK末期の作風と比べると賛否が分かれる。 --ただし、極限流チームのロバートや主人公チームのシェンはグラフィックの枚数が少なく、明らかに動きがガクガクだったりする等、微妙な格差も目に付く。逆に前述のデュオロンはぬるぬると動く。 -BGMのメインコンポーザーとして、旧SNK時代のサウンドチーム「新世界楽曲雑技団」のメンバーだったTATE-NORIOこと山手安生氏が復帰した((復帰自体は前作『2002』からだが、そちらは旧作からのアレンジBGMが中心だった。))。音源は相変わらず低品質だが、曲自体は中々の出来である。また、『2001』からのメインコンポーザーであった幡谷政彦氏も引続き参加している。~ 中でも主人公チームのBGMである「Splendid Evil」はチームコンセプトやステージと非常に良くマッチしており、ダークな曲調ながら格好良い曲に仕上がっている。 --なお、これは「問題点」のハード性能及び容量の限界の項目にも通じる話になるが、KOFシリーズポータルサイトでは、「アーデルハイドのテーマ曲のイントロで使用されている『革命のエチュード』をきちんとピアノで演奏されている音に聞こえるようにするにはかなりの容量が必要だったため、ボイスなどそのほかの音源に割り当てる容量をギリギリまで削る必要があった」という裏話が披露されている。 -各チームのプレストーリーがしっかりと書かれるように。 --チームの結成やキャラの欠場理由、水面下の争いなどがしっかりと書かれており、短めながらも読みごたえがあるものに。 -新キャラのキャラクター造形。 --基本的に本作から登場した新キャラの魅力は本物。~ 上述のアッシュも、主人公=美男美女が基本であるこのご時世に「むしろ美形かと言えばそうではない」と公式に明言されたデザインのキャラを主人公として受け入れさせたという点を考えると、実はかなりの偉業といえるのではないだろうか。 ---ただ、前述した通りFALCON氏の公式イラスト、一部キャラのドット絵など、そのワンフックが効いたキャラ造形を上手く表現しきれていないのが惜しい所。 ---- **総評 BGMやグラフィックなど前作・前々作と比較して改善された面はあるものの、シリーズの常連だったキャラのリストラや対戦バランスの悪化などで評価を大きく下げる結果となった。~ シリーズ過去作でも対戦バランスの悪さが目立っていたとはいえ、もう少し調整に力を注いでいれば評価は変わっていたかもしれない。 ---- **余談 -この時期、SNKプレイモアは『SVC CHAOS』や『[[メタルスラッグ5]]』、そして本作など失敗作を連投し、全てがコケてしまった。 --上述した3作のアーケード版は、基板構造が従来のMVS(業務用ネオジオ)と違うカスタム基板(MV-0)であったことも不評の遠因と思われる。 ---カートリッジ式ソフトが比較的安価、かつ交換も容易なためにMVSはオペレーター側の評判が良かったが、MV-0基板はソフトウェアROMとマザーボードが一体化して交換不可能なタイプだったせいで、オペレーターに過去作以上の負担を強いるハメになった。 ---こうした理由はMVSカートリッジの違法コピーがアジア地域を中心に蔓延していた((いつ頃からなのか具体的な時期は諸説あるが『KOF'97』の海賊版が正規版リリースの同年に確認されたのが概ね起点と見られている。))ことによるセキュリティ対策のため((基板上にもセキュリティチップが追加されている))だったが、既に登場から13年経っていたネオジオは隅々まで解析しつくされており、単なる「(ハッキング対策の)時間稼ぎ」にしかならず速攻でセキュリティを突破されてしまった((それどころか、当の三作品のMVS版が発売されるより先に海賊版ROMカートリッジが流通してしまっている。))。 ---ちなみに本作を含むMV-0を採用した3作品だが、海外版の後期出荷版は通常のMVSカートリッジで少数リリースされてる((勿論、海外でもリリース初期からメインで出荷されたのはMV-0基板バージョンである))。日本でも基板屋や輸入業者によってこの海外のMVSカートリッジ版の新品が大量に売られていたが、国内版のMV-0基板の中古相場よりも圧倒的に安価だった為か、中小オペレーターや基板マニアにかなり需要があった。 ---当時のプレイモアも流石にこの事情を把握していたのか、最後発だった海外向けMVSカートリッジ版『KOF2003』には国内のMVS基板で起動させても日本語表記にならず、海外版のままで立ち上がるプロテクトを掛けている((『メタルスラッグ5』と『SVC CHAOS』は普通に日本語で立ち上がる。))。もっともROM内のデータには普通に国内版のデータも入っているので、UNI-BIOS等で切り替えて国内版として起動させる事も出来なくはないが、UNI-BIOSはMVS基板の設定保存には対応しておらず、基板を毎回起動させる度に設定し直さなければならないという手間を要する。従って、国内版としてゲームセンターで稼働させるのは現実的ではない。 --また、会社の経営に関するゴタゴタが収まっていない時期だった事も影響したと考えられる。 ---この年は分散していた旧SNK関連会社の整理((版権管理担当のプレイモアがSNKプレイモアへ社名変更した他、開発担当のブレッツァソフトがハード担当のサン・アミューズメントへの吸収合併を経てSNKネオジオとなった。))や、資金援助を行うスポンサー的立場で開発にも関わっていたイオリスとの提携解消等、会社が本格的な再始動を果たす前の過渡期であった。開発のSNKネオジオを吸収合併し、SNKプレイモア一社の体制に落ち着いたのは本作発売から約一年後の2004年11月の事である。 --いずれにせよ、2003年は同社にとって''悪夢の年''だったに違いない。 -本作の翌年はKOF本編が一旦休止し、基板をATOMISWAVEに変更した『2002』ベースの番外編『[[KOF NEOWAVE>THE KING OF FIGHTERS NEOWAVE]]』がリリースされた…が、肝心の出来は正直なところ微妙である。ATOMISWAVEの性能を試すためには必要な作品だったともいえるが。 --その後、ようやく2005年に年号を廃しナンバリングとなった本編続編の『[[KOF XI>THE KING OF FIGHTERS XI]]』が同じくATOMISWAVEで登場。そちらは本作における問題点が相当改善されており、マルチシフトシステムを見事に完成させた作品となった。 -今作にも前作『2002』で初めて登場した草薙京の亜種の1人であるKUSANAGIが続投しているが、「ネスツが草薙京を複製する形で大量生産したクローン京の一種」であった前作とは異なり、今作のは「神楽ちづるが八咫の鏡の力で生み出した幻影」となっており、性能や名前こそ前作と同じものの、存在自体は全く別のキャラクターとなっている。一方で、''声優が京本人とは異なり岩田光央氏''であるのは前作と同じ。 --なお、本作でオリジナルの京の衣装が一新されたにもかかわらずKUSANAGIはやはり学ランのままだが、これについて「ちづるの中ではいつまで経っても京は高校生」扱いされているというあんまりな公式設定がある。 -今作でのビリー・カーンを演じたのが、かの『[[デスクリムゾン]]』のコンバット越前で有名なせいじろう氏という事で一部で話題を呼んだ。((後に「KOF XIII」の家庭用移植の際にビリー役として再度起用されている)) --『KOF MI2』のプロモーション用に制作されたOVA、「KOF Another Day」でも引き続きビリー役を担当したものの、実際のゲーム中では『[[リアルバウト餓狼伝説]]』以降の担当声優であった山西惇氏に戻っている。 -起き攻めやコマンド投げが異常に優遇されていることは上でも述べられているが、それらが本作の有効な手段とされた攻略の動画も公式で作られている。 -闘劇の種目に選ばれているが、前述の受け付けの悪さからかコマンド入力ミスを連発など、全国大会の大舞台らしからぬミスも多々見られた。 ---- **移植(ネオジオROM以外) |対応機種|プレイステーション2&br()Xbox|&Amazon(B0002TY17W)&Amazon(B000E3YSC4)|&amazon(B0009W1Q6Q)| |発売・開発元|SNKプレイモア|~|~| |発売日|【PS2】2004年10月28日&br()【Xb】2005年8月25日|~|~| |定価|【PS2】7,140円&br()【Xb】5,040円|~|~| |廉価版|【PS2】SNK BEST COLLECTION&br() 2006年3月9日発売/2,940円|~|~| |配信|【PS2】ゲームアーカイブス&br() 2015年4月15日発売/1,000円|~|~| |判定|なし|~|~| |ポイント|バランス調整されたアレンジモード&br;過去作同様3on3システムも選択可能&br;アレンジBGMも好評|~|~| **概要(移植) -「投げに対する無敵時間が延長」「DDコンビが弱体化」などの''バランス調整が施されたアレンジモード''が搭載され、DDコンビの悪夢が払拭されてそれなりに遊べるゲームとなっている。 -中ボスのKUSANAGIと神楽ちづるがデフォルトで使えるようになっており、同じく中ボスでアーケードではCPU専用だった神楽マキも最初から使用可能。さらに、ボスのアーデルハイドと無界もそれぞれCPUとして出現させて倒すと隠しキャラとして使用可能になる。 -操作性も改善している。 -独自仕様として従来の3on3システム(自由交代無し)でのプレイも可能。このモードではチームメンバー全員がリーダー超必殺技を使える。 -背景も3D化され綺麗に見え、またアレンジBGMも搭載してある(しょっぱいSEはそのまんまだが)。 --アレンジBGMは音質が桁違いに上がった事に加え、PS2版『[[怒首領蜂大往生]]』や『[[beatmaniaシリーズ]]』などに携わっているスタッフが参加した事もあり評価が高い。 -特に目立ったバグもなく、全体的に見れば良移植である。 --ただし、PS2の初期版にはフリーズする致命的なバグが存在していた(ベスト版では修正済)。 -Xb版ではカラーエディットを実装している他、ネット対戦に対応していたが、現在はマイクロソフトの旧Xboxオンラインサーバー停止によりネットワークサービスを終了している。 //追記編集 //ザ・キング・オブ・ファイターズ ザキングオブファイターズ キングオブファイターズ(検索用、消さないこと)

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