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*SIREN 【さいれん】 |ジャンル|ホラーアドベンチャー|&amazon(B0000D0Y6L)| |対応機種|プレイステーション2|~| |発売・開発元|ソニー・コンピュータエンタテインメント|~| |発売日|2003年11月6日|~| |定価|6,090円|~| |配信|PS2アーカイブス:2012年8月7日/1,200円|~| |判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~| |>|>|CENTER:''SIRENシリーズ'':''SIREN'' - ''[[SIREN2]]'' - ''[[SIREN:NT>SIREN: New Translation]]''| ---- #contents(fromhere) ---- ~ #center(){{ &big(){''どうあがいても絶望''} }} ~ ---- **ストーリー >三方を山に囲まれ、外界との接触を拒むかのように存在する内陸の寒村、羽生蛇(はにゅうだ)村。~ 独特の土着信仰や伝承を持つこの村が物語の舞台・・・。 > >1976年8月2日深夜。大規模な土砂災害が発生し、村に甚大な被害をもたらした。 > >災害から27年後、2003年。夏休みを利用し、村に関する都市伝説を確かめるべく東京からやってきた高校生「須田恭也」や、~ 自らの学説を裏付ける為に村の秘祭の調査をしにきた民俗学者「竹内多聞」らが村を訪れる。 > >8月3日午前0時、村の四方を囲うように出現した赤い海からサイレンの音が鳴り響き、羽生蛇村は外界から隔離された異界と化す。~ 異界化に伴って現れる異形、赤い水の影響によって人が変貌した存在「屍人」。~ 人々は状況的に、そして精神的に追い詰められながらも、人として生きるために絶望的な戦いに身を投じていく。 > >''これは人でありたいと願い、人として生きたいと祈る人々の群像劇である''。 ---- **概要 SIRENは昭和78年((作中では「昭和」の年号が続いている設定))の日本を舞台に、土着的・民俗的なモチーフを題材として描かれる3Dアクションホラーゲーム。~ 一種のテレパシーのように敵が見ている映像を盗み見る、「視界ジャック」というシステムを特徴としている。~ 難解なストーリー構成や謎をあえて残したまま終わるエンディング、また近年の和製ゲームの中でも群を抜いた難易度などは賛否両論あるものの、ホラーゲームには珍しい日本的テーマや独特のストーリー、挑戦的なシステムなどから一部で熱狂的な人気を集めた。~ 「''怖すぎて放送中止になったCM''((ただし、この件については、宣伝のために行った自作自演という説がある。))」でご存知の方も多いであろう。~ #region(「怖すぎて放送中止になったCM」) &youtube(http://www.youtube.com/watch?v=ldZsN-KWzeI) #endregion ---- **特徴 -敵に見つからないように進めていくシステム --異形と化した屍人がうろつく日本の集落を舞台に、戦闘に不慣れな生存者達が、後述の「視界ジャック」などを駆使して敵から隠れながらシナリオを進めていく。「ステルス」の要素が強い。 ---ただし一貫してステルスに徹するというわけでもなく、敵との接触を避けることが困難な場面では、敵に見つかりつつもその敵から逃げ切ったり、武器を利用して敵を倒して進むといった臨機応変な対処が要求されることもある。~ また、キーアイテム入手といったフラグ立てによる攻略手順が要求されるため、ステルスアクションだけでなくアドベンチャーゲームとしての側面も強い。 --戦闘はアクションの腕に任せた力業が通用しにくい。敵を強引に倒しながら進んだり、敵に見つかっても振り切ってガンガン進むといった攻略法は困難で、ほぼ不可能な場面も多い。~ 主人公たちが使用できる武器は基本的に、鉄パイプやバールなどの鈍器に限られる。銃器は警察官が携行するような小型拳銃か、狩猟で使われている狙撃銃に限られ、弾数も少ない。さらに武器すら入手できないキャラクターも多い。 --隠れたりするよりも敵と戦うことの方が多いシナリオもいくつか存在する。 -本作の敵「屍人」 --村に流れる「赤い水」を摂取した人が変容した存在。「半屍人」「犬屍人」「蜘蛛屍人」「羽根屍人」「頭脳屍人」の5種類が存在する。すべてに共通して、倒しても一時的に行動不能にできるだけであり、時間経過で復活する。 --「半屍人」:いわば普通の人間の姿をした屍人。名前通り屍人としては不完全な存在であり、屍人化が進むことによって他4種の屍人へと変化する。狙撃銃で遠方からプレイヤーを狙撃してくる「狙撃手タイプ」の半屍人は高所に居るため、こちらの攻撃が届かないケースも多く初見殺しと言われる。~ 「犬屍人」:犬のように這う形態をとり、高い攻撃力と機動力の高さが特徴である一方、扉を開閉するなどの知能が失われている。ちなみに犬屍人に変化するのは女性のみ。~ 「蜘蛛屍人」:四肢を伸ばし頭部がねじれた姿をしており、小さな足音をも敏感に察知し襲ってくるが、犬屍人同様扉の開閉ができない。こちらは男性のみが変化する。~ 「羽根屍人」:背中に虫を思わせる羽が生え飛行できるようになった屍人。銃で上空から襲ってくるため、こちらも銃がなければほぼ撃退不可能。~ 「頭脳屍人」は犬・蜘蛛・羽根の屍人を統率する存在で、倒せばこれら3種の屍人を同時に行動不能にできる。 --これら屍人には銃持ちもわんさかいて、所持弾数も無限。銃器が使えないプレイヤーにとっては脅威の存在である。 -敵の視界と聴覚を盗む「視界ジャック」システム --自分の周辺にいる屍人や同行者の視点と音がわかるシステムである。 --プレイヤー側からは名前の通り視界を「ジャック」するだけであり、ジャックした対象の操作等は一切できない。屍人は「ジャック」されていることには気付かず徘徊し、キャラクターを見つければもちろん攻撃してくる。ジャック中はプレイヤーが無防備になるため注意が必要。 --左スティックの傾け具合によって、その方角・その距離の辺りにいるキャラクターの視界をジャックできる。~ 左スティックを強く傾けるほど、遠距離のキャラクターをサーチする。サーチ位置と対象キャラクターの位置が近いほど視界や音声が鮮明になる。対象が遠距離なほど視界の外周が暗くなる。距離が遠すぎる相手にはジャックそのものができない。 --敵である屍人は夜目がとても利くので、主人公達が見ている光景より、より明るく見ることが出来る点も嬉しい。 ---ジャックした視界からは、プレイヤーやプレイヤーの同伴者のいる位置が十字マークで表示される。距離が近いほど十字マークが鮮明になる。 --ジャックした視界は最大4つまでホールドでき、○×△□ボタンを押すことでそれぞれ任意で割り当てられる。該当ボタンを押せばすぐに呼び出せるので、いちいち対象をサーチする手間が省ける。 --このシステムにより、今敵がどの方角にいるか、自分からどれくらい離れているか、敵がどこを向いているかを把握できる。視界ジャックを活用して、今敵がこっちを向いているからこっちは安全に通れる、といった敵の目をかいくぐって進むスタイルが基本となる。 -シナリオ進行の手順 --本作のストーリーは、ある限定された「時刻・場所・登場人物(プレイアブルキャラ)の視点」で展開される物語「シナリオ」がいくつも集まって構成されている。 --シナリオごとに、プレイヤーキャラや現在の日時、場所が異なる。 --"次のステージへのアイテムやステータスの持ち越し"という概念がなく、どんなに前のステージでアイテムを節約したり使っても、次のステージでは所定の値になる。そのため、アイテム不足による「詰み」も起こらない。 --一つのシナリオをクリアすると、別のシナリオへと進む。シナリオの順序は時間の流れ通りではなく、現在のシナリオより過去の時間で起こったシナリオに進むこともある。 --各シナリオには二通りの「終了条件(クリア方法)」があり、終了条件によって次に進むシナリオのルートが分岐する。ルートによっては、過去にプレイしたことのあるシナリオに戻る(ループする)場合もある。 ---「終了条件1」は比較的簡単に達成できるが、「終了条件2」はノーヒントのものが多く「終了条件1」より基本的に難易度が高い。真のエンディングを見るには、終了条件2をクリアしていく必要がある。 --各シナリオの終了条件2は、初期段階ではロックされた状態となっており、挑戦できない。ロックを解除するためには、別のシナリオのクリアが必要だが、ほかに別のシナリオあるいは別のキャラクターで「終了条件2」クリアの条件(キーアイテムの持ち込みなど)を満たす必要があるものが多い。クリアの条件を満たすために、さらに別のシナリオでまた別のキャラクターが何か行動を起こす…というように、全てのキャラクター、シナリオが深くつながっている。 --リンクナビゲーター:ゲーム全体のシナリオ構成を確認できる機能。ゲーム中にいつでも利用できる。一度プレイしたシナリオはリンクナビゲーター上に一覧表示される。シナリオ間のルートの繋がりや、どのシナリオの終了条件2がロックされているのか、どのシナリオでロック解除できるかの確認やステージセレクトを行うこともできる。 --シナリオセレクト:ある程度ゲームを進めると、既にプレイしたシナリオならいつでも任意でプレイできるようになる。これにより、同じシナリオを延々ループすることがなくなり、終了条件2のロック解除および、未知のシナリオへの進行も楽になる。 -他のホラーゲームに比べて圧倒的に高い難易度 --最初のステージはいきなり警官の半屍人が襲ってくるという状況から始まる。操作に慣れていないのに何をすべきかわからず、逃げ方を間違えると撃たれて即死するので、このステージでつまづいたプレイヤーも居た。 --マップに自分の位置が表示されないのは当たり前、シナリオのクリアのために表示される終了条件もかなりあいまいなものがあり、ごり押しが通用しないことも相まって、その難易度は「攻略サイトか攻略本が必須」とも。''シナリオ開始5秒で超遠距離からの狙撃で何も出来ず死ぬ''ことすらある。 //いきなり狙撃されて死ぬのはせいぜい竹内の初シナリオくらいと思ったので「よくある話」の表現を修正 --これには賛否両論あり「久々に歯ごたえのあるゲームが出た!」といった意見から「初心者に不親切すぎる!」という意見までさまざまである。 ---- **評価点 -深く練り込まれたストーリー --本作では、夏休みを利用して都市伝説を興味本位で見に来た高校生(主人公の須田恭也)が、偶然村で行われていた儀式を目にしてしまうことから始まる。 --須田恭也と、儀式の生贄にされかけていた盲目の少女「神代美耶子」を中心に進むストーリーもさることながら、村の求導師「牧野慶」と村医者「宮田司郎」の二人が織り成すストーリーは人気が高い。 --終了条件2の存在は、間接的ながらも各キャラクターがつながっていることを深く感じさせてくれる。 --舞台となる羽生蛇村も、近隣の村との関わり合いを持たない閉鎖的な村であり、村民のほとんどが信仰する眞魚教(まなきょう)という土着信仰があり、生贄を伴なう秘祭が行われているなど、不気味な世界観を出すのにも一役買っている。 --また、ステージ中に隠された100個の「アーカイブ」もストーリーをより面白く理解できるだろう。アーカイブの種類も新聞記事やキャラの手記など徹底したリアリティを追及している。 --視界ジャックを通じて別行動を取っている同行者の様子を窺う事で、彼らの台詞から更なる物語の広がりを感じ取る事も可能。屍人も稀に意味深な呟きを発する事がある。 -現実感あふれる舞台と設定 --舞台となる「羽生蛇村」は実際に存在しそうなリアリティで表現されている。 ---木造校舎の分校、廃鉱になった鉱山、プレハブ小屋や巨大なフェンスのある工事現場。日本中の廃墟を取材して集められた資料によって作られた羽生蛇村は「どこか懐かしいモダン」な雰囲気をかもし出す。~ 屍人達はそういう場所で生前の記憶から「庭で草刈」「塀の補修」「台所で料理」「風呂場で洗髪」といった行動を取る。 ---時間の経過と共に村の様相も変わっていき終盤の「屍人ノ巣」は屍人たちの「違法建築」によって巨大な迷宮と化す。 --本作の設定の根幹には様々な日本の神話やホラー作品の影響が色濃く出ている。中にはネットの都市伝説「杉沢村伝説」を元にした都市伝説がストーリーに深く関わる設定として登場する。 -実際の俳優を取り込んだフル3Dポリゴンやリアルな光の質感 --登場する全てのキャラクターは実際の俳優/女優をモデルにしており、体格から顔つきまで全て本人を再現している(キャラクターの声も、モデルになった俳優があてている)。 --このため、従来のゲームとは一味違う、生々しく写実的な雰囲気が出ており、本作の世界観と非常にマッチしている。 --そして山奥の寒村という設定上、主人公達は懐中電灯を頼りに進んでいくこととなる。このときの懐中電灯の光の質感が非常にリアルであり「懐中電灯に照らされていない」部分の闇がより際立つ。懐中電灯を消したときの「少し青みがかった暗闇」も評価が高い。 -今までにはない「絶望感」 --本作は『バイオハザード』のような「火器の扱いに慣れた主人公が、ゾンビをなぎ倒して進む」ゲームではない。主人公たちは戦いの素人であり、敵に発見され戦闘状態に入ることは文字通り生死に関わる。この主人公たちの「弱さ」はよりリアルな恐怖の演出に一役買っている。 --また、操作キャラクターは長く走っているとバテて移動速度が落ちてしまうため、襲い掛かる敵から全速力で逃げ続けることもできない。 --身体能力も低く、''敵に触れられただけでゲームオーバー''になってしまう女子小学生「四方田春海(よもだ はるみ)」を操作し、屍人が徘徊する民家から脱出するシナリオは、襖一枚を隔てて屍人たちの息遣いまで聞こえてきて、圧倒的な恐怖感を演出している。 --また、ストーリー上で死亡したキャラクターが通常の屍人より数段グロテスクな姿に変異した特別な姿の屍人でかつての大切な人の前に現れるシーンは、キャッチコピーの通り「''どうあがいても、絶望''。」である。 #region(ネタバレ注意) -ちなみに、各キャラクターの結末も「絶望」で埋め尽くされている。 -高校生「須田恭也」 --「赤い水(一定量体内に入ると屍人化するが、少量であれば異常な再生能力を持つ)」の力と「神代家の呪い(神代家に代々伝わる''死ねない''呪い)」が合わさり不死となり、延々異界をさまよう「異界ジェノサイダー」となる(『SIREN2』に須田を操作して敵を「ジェノサイド」するおまけシナリオがある)。 -大学教授「竹内多聞」とその教え子「安野依子」 --安野は須田から輸血を受け、須田と同様の不死となる。 --竹内は須田と傷と赤い水溜りを介して神代の呪いをわずかに受け不死となるが、赤い水も体内に入ったため屍人とも人間も言えないあいまいな状態となり、2人で延々羽生蛇村をさまよい続ける。 -求導師「牧野慶」 --牧野も神代の呪いを受けつつ赤い水が入り、宮田に殺害された((ゲーム上はそれ以後も牧野のシナリオが存在しているが、これは宮田が牧野の服を奪い牧野となっている状態である))。その後不完全な不死の呪いにより、意識を持ったまま肉塊となる。 -「恩田美奈・理沙姉妹」 --怪異前にナースであった美奈は、あるトラブルで交際していた宮田に殺され怪異後すぐ屍人化する。たまたま里帰りしていた理沙は怪異に巻き込まれ、屍人化した美奈に追い詰められた際双子であったためか意識が同調し、姉の格好をして宮田に迫るが絞殺されその際に屍人化してしまう。その後、美奈とともに宮田を追い続けるが、最期は宮田に廃坑道で理沙は生きたまま杭で串刺し、美奈は坑道を爆破され生き埋めにされる。 -村に住む老猟師「志村晃」 --かつて村を襲った災害で家族を失いつつも、家族が眠る土地から離れられずにいた。呪われた村に終わりを感じ、所持していた猟銃で自殺するも屍人化して目覚める。村の呪いから逃れられないことに絶望しつつも屍人化が進み、最終的に「羽根屍人」と化し人としての記憶を完全に失う。 -元アイドルのTVレポーター「美浜奈保子」 --一時期は雑誌で特集が組まれるほどの売れっ子だったが落ちぶれたため、村に都市伝説ロケでやってきた。永遠の若さ、美しさを求めるあまり自ら赤い水の中に沈んだが、最終盤でとても醜い「犬屍人」となって立ちはだかる。 -など、登場するほぼすべてのキャラクターが死亡、もしくは報われないエンディングを迎える。 --元の世界に帰還できたのは「四方田春海」のたった一名。ただし、救出に来た自衛隊員の一人が救助の際に異界を垣間見て半狂乱になってしまうというオチつき。 #endregion -攻略法を模索する楽しさ --基本的にはホラーゲームであるが謎解き要素の出来も良い。 --複雑なマップからキーアイテムを探し出し、その用途、使う場所をマップ探索の過程で予測、さらに使うタイミングも定められている場合があり、ゲーム内で得られる情報を整理してフル活用することが求められる。また、獲得したアイテムをすぐには使わず次回以降のシナリオで使うケースもあり、そのキャラが今何を所持しているか、逐一確認しておくことも重要。 --『[[BIOHAZARDシリーズ]]』の仰々しい仕掛けではなく、身近にあるものにちょっとした工夫を加えて活用するというのがポイント。 --ゲームに慣れてくると、更に攻略の幅が広がる。最初は何度も死んで苦労しながら攻略していたシナリオでも、短時間で一発クリアできるようになり、上達を実感しやすい。 ---ほとんどのシナリオはいくつかの同じマップを使い回しているので、マップさえ覚えてしまえば、他のシナリオでも道に迷うことはまずなくなる。 ---屍人の位置や視界や耳の良さや行動パターンなどを把握すれば、屍人の隙を突いて強引に進みやすくなる。例えば屍人を避けるために遠回りするようなルートを進むところでも、屍人のいる場所を突っ切って早く先に進むといった攻略法が可能になる(運が絡む場合もあるが)。 --戦闘のコツを掴めば、近接武器だけでも大半の屍人は余裕で倒せるので、邪魔な屍人を倒しながら進むこともできる。 --また、条件を満たすことで各シナリオのタイムアタックができる。 ---- **賛否両論点 -複雑すぎるストーリー --本作のウリとなっているストーリーも、人によってはついていけなくなってしまう恐れがある。 ---良く言えば考察の余地がある、悪く言えば説明不足と言える。また、公式ホームページに掲載されている『SIREN』の外伝「羽生蛇村異聞」で、少しずつ謎を明かしてはいるが、逆に新たな謎が派生することの方が多い。 ---- **問題点 -異常なまでの難易度 --本作の特徴の一つでもあるが、ここでは問題点としてとりあげる。 --''狙撃手''の存在 ---生前狩猟を生業としていたであろう彼等は、超遠距離から、超高精度で、超高威力の狙撃をしてくる。どんなキャラクターでも2発食らえば死亡であり、キャラクターによっては1発で即死してしまう。中盤以降どのステージにもほぼ一人は配置されているため、どのキャラクターでも脅威である。 ---こういった要素は「体力に物を言わせて強引に突破する」といったごり押しを阻止するための措置だと思われるが、前述のマップ表示の不親切さとあわせ、''何度も死んでいるうちに恐怖より理不尽なゲームオーバーに対する怒りの方が上回ってしまう''という事態になりがち。 --一応、こちらも特定キャラで猟銃を使えるが… ---操作性に非常にクセがあり使いにくすぎる。具体的に言うと、構えると自動的に主観視点になって自分で照準を合わせるのだが、照準が常に最初に構えた位置に戻ろうとする上、スティックの感度も高いため狙いをつけるのが非常に難しい。おまけに敵はこちらから視認できないような距離からも正確に狙ってくるので撃ち負けやすい。 --一応、特定の条件を満たすことで、ゲームオーバー後にそのシナリオの途中から再開できるようになる箇所はあるので、死んだとしても、必ずしもシナリオの最初からやり直しになるわけではない。 ---ただし、シナリオの途中から再開した場合、それまでに獲得したアーカイブなどは全て失われる。そのため、後述の同じシナリオを何度もやるという問題が発生しやすい。 -同じシナリオを何度もやらなければならない --終了条件2のロック解除の必要行動を満たすために、ひたすら試行錯誤することになる。また、終了条件1と終了条件2を両方クリアするために、同じシナリオを最低でも2、3回はクリアしなければならないシナリオもある。 --また、プレイヤーキャラの起こす行動に不審な点が多く見られる。 ---終了条件1を達成するだけなら割と常識的な行動なのだが、終了条件2を達成したり、終了条件2のクリアのための必要行動を起こす上では、かなり不審な行動を取ることになる。 --自らが命の危機にさらされている状況に関わらず、なぜか''面倒な仕組みの倉庫の鍵を開け、武器になりそうなものには目もくれず手ぬぐいを取り、水道で手ぬぐいを濡らし、わざわざ冷凍庫のプラグを刺し、濡れた手ぬぐいを凍らせる''など端から見れば異常としか言えない行動を取ることになる(あくまで攻略補助であり、完遂する必要はないが)。 --これらは、「永遠に繰り返すループの世界」の中でほんの少しの行動の差異が、ループ脱出への鍵となっているということではあるが。 -終盤の展開 --ラスボス戦やエンディングはホラーぶち壊し。爽快感はあるが、雰囲気がガラリと変わるので冷めてしまうことも。 --ラスボス戦、エンディングでは「神器」を使って戦うが、そこに屍人への対抗手段が限られ隠れるのが最適解だった主人公の人間らしさやホラーとしての面影はない。 --エンディングもハッピーエンドではなくバッドエンドに近いものであり、主人公たちの生存/死亡も変わらないので、2周目以降やこのことを知ってプレイするのは精神的にきついという人も僅かに居る。 -全体的に動きがもっさりしている --長く走っているとバテるシステムに加え、モーションが全体的に遅く、敵の攻撃を潰せないこともしばしばである。走っている時に壁にぶつかると、1~2秒ほどその場で動けなくなってしまう。 -顔の裏(裏顔) --このゲームではカメラの位置とキャラクターの位置が丁度重なると、キャラクターの内部(内部といっても中身は3Dモデルらしく当然スカスカで、表面と同じテクスチャが裏側からも見えるだけだが)がカメラに映ってしまう仕様になっている。 --プレイヤーの後方から付いてくるような同伴者と共に行動している場合は、この現象が起きる可能性が高い。プレイヤーを後方から捉えているカメラと、プレイヤーの後方から付いてくる同伴者の顔が重なってしまう。 ---慎重に行動している時に、いきなりカメラ全体に顔のアップが表示されるのはかなり怖い。ある意味、屍人を差し置いてこのゲーム最大の恐怖要素。 ---- **総評 高すぎる難易度とシナリオ展開は人を選び、初心者にお勧めするには厳しい一作かもしれない。~ しかし、コアなホラーゲーマーにはシナリオにマッチした絶望的な難易度と斬新なシステムの数々、高い質のグラフィック・演出がとても魅力的な作品である。~ 何よりもキャッチコピー通りの「どうあがいても、絶望」な展開と和製ホラーの恐怖演出をしっかりと押しだしているのが大いに評価できる所である。~ やりこんでいくたびに得られる情報がどんどん増えていき、シナリオの緻密さにぐいぐいと引き込まれていくホラーゲーム史上に残る傑作と言えよう。 ---- **余談 -後に残された謎を解明する「サイレンマニアックス」が発売された。全キャラが作中どのような行動をしていたかをまとめたタイムテーブルに「羽生蛇村異聞」の最終回が収録されている。 --他にはスタッフのインタビュー、本作のモチーフとなった小説や映画を紹介している。その中で『閉鎖的な村での群像劇』は小野不由美の「屍鬼」の影響を受けていると語られている。 --初版はそれほど多くなくプレミア化していて2012年に復刊した際にはすぐに完売してしまった。~ 2021年6月26日に再び復刊が決定。さらに同日フジテレビ系列で放送された「夜にも奇妙な物語`21夏の特別篇」の「三途の川アウトレットパーク」にて本作のBGMが劇中で使用された。 -2014年に『SIREN-赤イ海ノ呼ビ声-』のタイトルでコミカライズされた。 --原作ゲームでは語られなかった空白の時間、怪異の前日の登場人物たちの動き、羽生蛇村へ行くきっかけなどが描かれている。怪異に巻き込まれる前の村の様子や名越校長、石田巡査の生前の姿も描かれており、原作をさらに楽しめる内容になっている。-- --当初は集英社のホラー漫画雑誌で連載されていたが、同誌が休刊したためWeb漫画サイトに掲載場を移し連載していたが、作者の健康状態の関係で打ち切られてしまった。 --その後の2018年、Web漫画サイトZにてコミカライズ第二作『SIREN ReBIRTH』が連載され、2020年まで続いた。前作との繋がりは無く、作画・脚本家も別の人物が務めているが、原作ゲームスタッフが監修している点は同じ。 ---こちらは原作をリブートした内容であり、大まかな展開や登場人物は忠実ながら舞台を平成31年((舞台は7月だが同年5月に元号が令和に変わった現実と違って平成のままであり、原作の「前の元号が続いている」点を踏襲している。連載開始時点で既に改元の日程が公表されていたため、恐らく意図的であろう。))に変更して様々な要素を再構築している。 -本作のディレクター外山圭一郎氏とシナリオライター佐藤直子女史は、本作を手がける以前はKONAMIに在籍しており『[[SILENT HILL]]』の開発に携わっていた。 --そのためか、「辺境の土着信仰」「街そのものの異界化」「鳴り響くサイレン」などのコンセプトに加え、細かなレベルでも様々な共通項が存在する。と言うかタイトルが既に・・・・・・''訴えられなくて良かったね''。 --また『SILENT HILL』制作中、海外メディアのインタビューを受けた際「なぜあなたは日本人なのに海外を舞台にしたゲームを作るのか?」と言われた。これが『SIREN』制作のきっかけの一つと言われている。 -先述のお蔵入りになったとされるサイレンのCMで使われてもいる不気味な歌?のBGMは「最恐映像ノンストップ」(テレビ東京)等の心霊番組で定番となっている。 --テレビではあまり放送されないが、怪談のライブ等でも演出でよく使われている。((松原タニシ、中山市朗…他)) -主人公の須田恭也を演じる篠田光亮氏は自身のYouTubeチャンネルで本作の実況プレイ動画を生配信した。 //-人気Youtuber「ゾゾゾ」にてサイレンの舞台・羽生蛇村の元ネタとされる岳集落へ行く回があるが、意図としないトラブルで不気味な内容となっている。 //--短いながらも羽生蛇村の元となった集落だという事にうなづいてしまう内容で雰囲気満点。 //↑インタビューや取材でもない一個人の行動動画に関する記載など不要では?
*SIREN 【さいれん】 |ジャンル|ホラーアドベンチャー|&amazon(B0000D0Y6L,image=https://eccdn.geo-online.co.jp/ec_media_images/0015067-01.jpg,width=115,height=160)| |対応機種|プレイステーション2|~| |発売・開発元|ソニー・コンピュータエンタテインメント|~| |発売日|2003年11月6日|~| |定価|6,090円|~| |廉価版|PlayStation 2 the Best&br;2005年11月2日/1,714円|~| |配信|PS2アーカイブス:2012年8月7日/1,200円|~| |判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~| |>|>|CENTER:''SIRENシリーズ'':''SIREN'' - ''[[SIREN2]]'' - ''[[SIREN:NT>SIREN: New Translation]]''| |>|>|CENTER:''[[SIEワールドワイド・スタジオ作品]]''| ---- #contents(fromhere) ---- ~ #center(){{ &big(){''どうあがいても絶望''} }} ~ ---- **ストーリー >三方を山に囲まれ、外界との接触を拒むかのように存在する内陸の寒村、羽生蛇(はにゅうだ)村。~ 独特の土着信仰や伝承を持つこの村が物語の舞台…。 > >1976年8月2日深夜。大規模な土砂災害が発生し、村に甚大な被害をもたらした。 > >災害から27年後、2003年。夏休みを利用し、村に関する都市伝説を確かめるべく東京からやってきた高校生「須田恭也」や、~ 自らの学説を裏付ける為に村の秘祭の調査をしにきた民俗学者「竹内多聞」らが村を訪れる。 > >8月3日午前0時、村の四方を囲うように出現した赤い海からサイレンの音が鳴り響き、羽生蛇村は外界から隔離された異界と化す。~ 異界化に伴って現れる異形、赤い水の影響によって人が変貌した存在「屍人」~ 人々は状況的に、そして精神的に追い詰められながらも、人として生きるために絶望的な戦いに身を投じていく。 > >''これは人でありたいと願い、人として生きたいと祈る人々の群像劇である。'' ---- **概要 SIRENは昭和78年((作中では「昭和」の年号が続いている設定。))の日本を舞台に、土着的・民俗的なモチーフを題材として描かれる3Dアクションホラーゲーム。~ 一種のテレパシーのように敵が見ている映像を盗み見る、「視界ジャック」というシステムを特徴としている。~ 難解なストーリー構成や謎をあえて残したまま終わるエンディング、また近年の和製ゲームの中でも群を抜いた難易度などは賛否両論あるものの、ホラーゲームには珍しい日本的テーマや独特のストーリー、挑戦的なシステムなどから一部で熱狂的な人気を集めた。~ 「''怖すぎて放送中止になったCM''((ただし、この件については、宣伝のために行った自作自演という説がある。))」でご存知の方も多いであろう。 #region(「怖すぎて放送中止になったCM」) #video(http://www.youtube.com/watch?v=ldZsN-KWzeI) #endregion ---- **特徴 -敵に見つからないように進めていくシステム --異形と化した屍人がうろつく日本の集落を舞台に、戦闘に不慣れな生存者達が、後述の「視界ジャック」などを駆使して敵から隠れながらシナリオを進めていく。「ステルス」の要素が強い。 ---ただし一貫してステルスに徹するというわけでもなく、敵との接触を避けることが困難な場面では、敵に見つかりつつもその敵から逃げ切ったり、武器を利用して敵を倒して進むといった臨機応変な対処が要求されることもある。 ---また、キーアイテム入手といったフラグ立てによる攻略手順が要求されるため、ステルスアクションだけでなくアドベンチャーゲームとしての側面も強い。 --戦闘はアクションの腕に任せた力業が通用しにくい。敵を強引に倒しながら進んだり、敵に見つかっても振り切ってガンガン進むといった攻略法は困難で、ほぼ不可能な場面も多い。 --主人公たちが使用できる武器は基本的に、鉄パイプやバールなどの鈍器に限られる。銃器は警察官が携行するような小型拳銃か、狩猟で使われている狙撃銃に限られ、弾数も少ない。さらに武器すら入手できないキャラクターも多い。 --隠れたりするよりも敵と戦うことの方が多いシナリオもいくつか存在する。 -本作の敵「屍人」 --村に流れる「赤い水」を摂取した人が変容した存在。「半屍人」「犬屍人」「蜘蛛屍人」「羽根屍人」「頭脳屍人」の5種類が存在する。すべてに共通して、倒しても一時的に行動不能にできるだけであり、時間経過で復活する。 --「半屍人」:いわば普通の人間の姿をした屍人。名前通り屍人としては不完全な存在であり、屍人化が進むことによって他4種の屍人へと変化する。狙撃銃で遠方からプレイヤーを狙撃してくる「狙撃手タイプ」の半屍人は高所に居るため、こちらの攻撃が届かないケースも多く初見殺しと言われる。~ 「犬屍人」:犬のように這う形態をとり、高い攻撃力と機動力の高さが特徴である一方、扉を開閉するなどの知能が失われている。ちなみに犬屍人に変化するのは女性のみ。~ 「蜘蛛屍人」:四肢を伸ばし頭部がねじれた姿をしており、小さな足音をも敏感に察知し襲ってくるが、犬屍人同様扉の開閉ができない。こちらは男性のみが変化する。~ 「羽根屍人」:背中に虫を思わせる羽が生え飛行できるようになった屍人。銃で上空から襲ってくるため、こちらも銃がなければほぼ撃退不可能。~ 「頭脳屍人」は犬・蜘蛛・羽根の屍人を統率する存在で、倒せばこれら3種の屍人を同時に行動不能にできる。 --これら屍人には銃持ちもわんさかいて、所持弾数も無限。銃器が使えないプレイヤーにとっては脅威の存在である。 -敵の視界と聴覚を盗む「視界ジャック」システム --自分の周辺にいる屍人や同行者の視点と音がわかるシステムである。 --プレイヤー側からは名前の通り視界を「ジャック」するだけであり、ジャックした対象の操作等は一切できない。屍人は「ジャック」されていることには気付かず徘徊し、キャラクターを見つければもちろん攻撃してくる。ジャック中はプレイヤーが無防備になるため注意が必要。 --左スティックの傾け具合によって、その方角・その距離の辺りにいるキャラクターの視界をジャックできる、左スティックを強く傾けるほど、遠距離のキャラクターをサーチする。 ---サーチ位置と対象キャラクターの位置が近いほど視界や音声が鮮明になる。対象が遠距離なほど視界の外周が暗くなる。距離が遠すぎる相手にはジャックそのものができない。 --敵である屍人は夜目がとても利くので、主人公達が見ている光景より、より明るく見ることが出来る点も嬉しい。 ---ジャックした視界からは、プレイヤーやプレイヤーの同伴者のいる位置が十字マークで表示される。距離が近いほど十字マークが鮮明になる。 --ジャックした視界は最大4つまでホールドでき、○×△□ボタンを押すことでそれぞれ任意で割り当てられる。該当ボタンを押せばすぐに呼び出せるので、いちいち対象をサーチする手間が省ける。 --このシステムにより、今敵がどの方角にいるか、自分からどれくらい離れているか、敵がどこを向いているかを把握できる。 ---視界ジャックを活用して、今敵がこっちを向いているからこっちは安全に通れる、といった敵の目をかいくぐって進むスタイルが基本となる。 -シナリオ進行の手順 --本作のストーリーは、ある限定された「時刻・場所・登場人物(プレイアブルキャラ)の視点」で展開される物語「シナリオ」がいくつも集まって構成されている。 --シナリオごとに、プレイヤーキャラや現在の日時、場所が異なる。 --「次のステージへのアイテムやステータスの持ち越し」という概念がなく、どんなに前のステージでアイテムを節約したり使っても、次のステージでは所定の値になる。そのため、アイテム不足による「詰み」も起こらない。 --1つのシナリオをクリアすると、別のシナリオへと進む。シナリオの順序は時間の流れ通りではなく、現在のシナリオより過去の時間で起こったシナリオに進むこともある。 --各シナリオには二通りの「終了条件(クリア方法)」があり、終了条件によって次に進むシナリオのルートが分岐する。ルートによっては、過去にプレイしたことのあるシナリオに戻る(ループする)場合もある。 ---「終了条件1」は比較的簡単に達成できるが、「終了条件2」はノーヒントのものが多く「終了条件1」より基本的に難易度が高い。真のエンディングを見るには、終了条件2をクリアしていく必要がある。 --各シナリオの終了条件2は、初期段階ではロックされた状態となっており、挑戦できない。 ---ロックを解除するためには、別のシナリオのクリアが必要だが、ほかに別のシナリオあるいは別のキャラクターで「終了条件2」クリアの条件(キーアイテムの持ち込みなど)を満たす必要があるものが多い。 ---クリアの条件を満たすために、さらに別のシナリオでまた別のキャラクターが何か行動を起こす…というように、全てのキャラクター、シナリオが深くつながっている。 --リンクナビゲーター:ゲーム全体のシナリオ構成を確認できる機能。ゲーム中にいつでも利用できる。一度プレイしたシナリオはリンクナビゲーター上に一覧表示される。 ---シナリオ間のルートの繋がりや、どのシナリオの終了条件2がロックされているのか、どのシナリオでロック解除できるかの確認やステージセレクトを行うこともできる。 --シナリオセレクト:ある程度ゲームを進めると、既にプレイしたシナリオならいつでも任意でプレイできるようになる。 ---これにより、同じシナリオを延々ループすることがなくなり、終了条件2のロック解除および、未知のシナリオへの進行も楽になる。 -他のホラーゲームに比べて圧倒的に高い難易度 --最初のステージはいきなり警官の半屍人が襲ってくるという状況から始まる。操作に慣れていないのに何をすべきかわからず、逃げ方を間違えると撃たれて即死するので、このステージでつまづいたプレイヤーも居た。 --マップに自分の位置が表示されないのは当たり前、シナリオのクリアのために表示される終了条件もかなりあいまいなものがあり、ごり押しが通用しないことも相まって、その難易度は「攻略サイトか攻略本が必須」とも。 --''シナリオ開始5秒で超遠距離からの狙撃で何もできず死ぬ''ことすらある。これには賛否両論あり「久々に歯ごたえのあるゲームが出た!」といった意見から「初心者に不親切すぎる!」という意見までさまざまである。 //いきなり狙撃されて死ぬのはせいぜい竹内の初シナリオくらいと思ったので「よくある話」の表現を修正 ---- **評価点 -深く練り込まれたストーリー --本作では、夏休みを利用して都市伝説を興味本位で見に来た高校生(主人公の須田恭也)が、偶然村で行われていた儀式を目にしてしまうことから始まる。 --須田恭也と、儀式の生贄にされかけていた盲目の少女「神代美耶子」を中心に進むストーリーもさることながら、村の求導師「牧野慶」と村医者「宮田司郎」の2人が織り成すストーリーは人気が高い。 --終了条件2の存在は、間接的ながらも各キャラクターがつながっていることを深く感じさせてくれる。 --舞台となる羽生蛇村も、近隣の村との関わり合いを持たない閉鎖的な村であり、村民のほとんどが信仰する眞魚教(まなきょう)という土着信仰があり、生贄を伴なう秘祭が行われているなど、不気味な世界観を出すのにも一役買っている。 --また、ステージ中に隠された100個の「アーカイブ」もストーリーをより面白く理解できるだろう。アーカイブの種類も新聞記事やキャラの手記などリアリティを追及している。 --視界ジャックを通じて別行動を取っている同行者の様子を窺うことで、彼らの台詞からさらなる物語の広がりを感じ取る事も可能。屍人も稀に意味深な呟きを発することがある。 -現実感あふれる舞台と設定 --舞台となる「羽生蛇村」は実際に存在しそうなリアリティで表現されている。 ---木造校舎の分校、廃鉱になった鉱山、プレハブ小屋や巨大なフェンスのある工事現場。日本中の廃墟を取材して集められた資料によって作られた羽生蛇村は「どこか懐かしいモダン」な雰囲気をかもし出す。 ---屍人達はそういう場所で生前の記憶から「庭で草刈」「塀の補修」「台所で料理」「風呂場で洗髪」といった行動を取る。 ---時間の経過と共に村の様相も変わっていき終盤の「屍人ノ巣」は屍人たちの「違法建築」によって巨大な迷宮と化す。 --本作の設定の根幹には様々な日本の神話やホラー作品の影響が色濃く出ている。中にはネットの都市伝説「杉沢村伝説」を元にした都市伝説がストーリーに深く関わる設定として登場する。 -実際の俳優を取り込んだフル3Dポリゴンやリアルな光の質感 --登場する全てのキャラクターは実際の俳優/女優をモデルにしており、体格から顔つきまで全て本人を再現している((キャラクターの声も、モデルになった俳優があてている。))。 --このため、従来のゲームとは一味違う、生々しく写実的な雰囲気が出ており、本作の世界観と非常にマッチしている。 --そして山奥の寒村という設定上、主人公達は懐中電灯を頼りに進んでいくこととなる。このときの懐中電灯の光の質感が非常にリアルであり「懐中電灯に照らされていない」部分の闇がより際立つ。懐中電灯を消したときの「少し青みがかった暗闇」も評価が高い。 -今までにはない「絶望感」 --本作は『バイオハザード』のような「火器の扱いに慣れた主人公が、ゾンビをなぎ倒して進む」ゲームではない。主人公たちは戦いの素人であり、敵に発見され戦闘状態に入ることは文字通り生死に関わる。この主人公たちの「弱さ」はよりリアルな恐怖の演出に一役買っている。 --また、操作キャラクターは長く走っているとバテて移動速度が落ちてしまうため、襲い掛かる敵から全速力で逃げ続けることもできない。 --身体能力も低く、''敵に触れられただけでゲームオーバー''になってしまう女子小学生「四方田春海(よもだ はるみ)」を操作し、屍人が徘徊する民家から脱出するシナリオは、襖一枚を隔てて屍人たちの息遣いまで聞こえてきて、圧倒的な恐怖感を演出している。 --また、ストーリー上で死亡したキャラクターが通常の屍人より数段グロテスクな姿に変異した特別な姿の屍人でかつての大切な人の前に現れるシーンは、キャッチコピーの通り「''どうあがいても、絶望。''」である。 //#region(ネタバレ注意) //-ちなみに、各キャラクターの結末も「絶望」で埋め尽くされている。 //-高校生「須田恭也」 //--「赤い水(一定量体内に入ると屍人化するが、少量であれば異常な再生能力を持つ)」の力と「神代家の呪い(神代家に代々伝わる''死ねない''呪い)」が合わさり不死となり、延々異界をさまよう「異界ジェノサイダー」となる(『SIREN2』に須田を操作して敵を「ジェノサイド」するおまけシナリオがある)。 //-大学教授「竹内多聞」とその教え子「安野依子」 //--安野は須田から輸血を受け、須田と同様の不死となる。 //--竹内は須田と傷と赤い水溜りを介して神代の呪いをわずかに受け不死となるが、赤い水も体内に入ったため屍人とも人間も言えないあいまいな状態となり、2人で延々羽生蛇村をさまよい続ける。 //-求導師「牧野慶」 //--牧野も神代の呪いを受けつつ赤い水が入り、宮田に殺害された((ゲーム上はそれ以後も牧野のシナリオが存在しているが、これは宮田が牧野の服を奪い牧野となっている状態である。))。その後不完全な不死の呪いにより、意識を持ったまま肉塊となる。 //-「恩田美奈・理沙姉妹」 //--怪異前にナースであった美奈は、あるトラブルで交際していた宮田に殺され怪異後すぐ屍人化する。たまたま里帰りしていた理沙は怪異に巻き込まれ、屍人化した美奈に追い詰められた際双子であったためか意識が同調し、姉の格好をして宮田に迫るが絞殺されその際に屍人化してしまう。その後、美奈とともに宮田を追い続けるが、最期は宮田に廃坑道で理沙は生きたまま杭で串刺し、美奈は坑道を爆破され生き埋めにされる。 //-村に住む老猟師「志村晃」 //--かつて村を襲った災害で家族を失いつつも、家族が眠る土地から離れられずにいた。呪われた村に終わりを感じ、所持していた猟銃で自殺するも屍人化して目覚める。村の呪いから逃れられないことに絶望しつつも屍人化が進み、最終的に「羽根屍人」と化し人としての記憶を完全に失う。 //-元アイドルのTVレポーター「美浜奈保子」 //--一時期は雑誌で特集が組まれるほどの売れっ子だったが落ちぶれたため、村に都市伝説ロケでやってきた。永遠の若さ、美しさを求めるあまり自ら赤い水の中に沈んだが、最終盤でとても醜い「犬屍人」となって立ちはだかる。 //-など、登場するほぼすべてのキャラクターが死亡、もしくは報われないエンディングを迎える。 //--元の世界に帰還できたのは「四方田春海」のたった一名。ただし、救出に来た自衛隊員の一人が救助の際に異界を垣間見て半狂乱になってしまうというオチつき。 //#endregion //↑発売から十数年経っているとはいえ、ホラーゲームのオチを網羅するのはやりすぎと判断しCO -攻略法を模索する楽しさ --基本的にはホラーゲームであるが謎解き要素の出来も良い。 --複雑なマップからキーアイテムを探し出し、その用途、使う場所をマップ探索の過程で予測、さらに使うタイミングも定められている場合があり、ゲーム内で得られる情報を整理してフル活用することが求められる。 --また、獲得したアイテムをすぐには使わず次回以降のシナリオで使うケースもあり、そのキャラが今何を所持しているか、逐一確認しておくことも重要。 --『[[バイオハザード>バイオハザードシリーズ]]』シリーズの仰々しい仕掛けではなく、身近にあるものにちょっとした工夫を加えて活用するというのがポイント。 --ゲームに慣れてくると、さらに攻略の幅が広がる。最初は何度も死んで苦労しながら攻略していたシナリオでも、短時間で一発クリアできるようになり、上達を実感しやすい。 ---ほとんどのシナリオはいくつかの同じマップを使い回しているので、マップさえ覚えてしまえば、他のシナリオでも道に迷うことはまずなくなる。 ---屍人の位置や視界や耳の良さや行動パターンなどを把握すれば、屍人の隙を突いて強引に進みやすくなる。 ---例えば屍人を避けるために遠回りするようなルートを進むところでも、屍人のいる場所を突っ切って早く先に進むといった攻略法が可能になる(運が絡む場合もあるが)。 --戦闘のコツを掴めば、近接武器だけでも大半の屍人は余裕で倒せるので、邪魔な屍人を倒しながら進むこともできる。 --また、条件を満たすことで各シナリオのタイムアタックができる。 ---- **賛否両論点 -複雑すぎるストーリー --本作のウリとなっているストーリーも、人によってはついていけなくなってしまう恐れがある。 ---良く言えば考察の余地がある、悪く言えば説明不足と言える。 --また、公式ホームページに掲載されている『SIREN』の外伝「羽生蛇村異聞」で、少しずつ謎を明かしてはいるが、逆に新たな謎が派生することの方が多い。 ---- **問題点 -異常なまでの難易度 --本作の特徴の1つでもあるが、ここでは問題点としてとりあげる。 --''狙撃手''の存在 ---生前狩猟を生業としていたであろう彼等は、超遠距離から、超高精度で、超高威力の狙撃をしてくる。どんなキャラクターでも2発食らえば死亡であり、キャラクターによっては1発で即死してしまう。中盤以降どのステージにもほぼ1人は配置されているため、どのキャラクターでも脅威である。 ---こういった要素は「体力に物を言わせて強引に突破する」といったごり押しを阻止するための措置だと思われるが、前述のマップ表示の不親切さとあわせ、''何度も死んでいるうちに恐怖より理不尽なゲームオーバーに対する怒りの方が上回ってしまう''という事態になりがち。 --一応、こちらも特定キャラで猟銃を使えるが…。 ---操作性に非常にクセがあり使いにくすぎる。具体的に言うと、構えると自動的に主観視点になって自分で照準を合わせるのだが、照準が常に最初に構えた位置に戻ろうとする上、スティックの感度も高いため狙いをつけるのが非常に難しい。おまけに敵はこちらから視認できないような距離からも正確に狙ってくるので撃ち負けやすい。 --一応、特定の条件を満たすことで、ゲームオーバー後にそのシナリオの途中から再開できるようになる箇所はあるので、死んだとしても、必ずしもシナリオの最初からやり直しになるわけではない。 ---ただし、シナリオの途中から再開した場合、それまでに獲得したアーカイブなどは全て失われる。そのため、後述の同じシナリオを何度もやるという問題が発生しやすい。 -同じシナリオを何度もやらなければならない --終了条件2のロック解除の必要行動を満たすために、ひたすら試行錯誤することになる。また、終了条件1と終了条件2を両方クリアするために、同じシナリオを最低でも2、3回はクリアしなければならないシナリオもある。 --また、プレイヤーキャラの起こす行動に不審な点が多く見られる。 ---終了条件1を達成するだけなら割と常識的な行動なのだが、終了条件2を達成したり、終了条件2のクリアのための必要行動を起こす上では、かなり不審な行動を取ることになる。 --自らが命の危機にさらされている状況に関わらず、なぜか''面倒な仕組みの倉庫の鍵を開け、武器になりそうなものには目もくれず手ぬぐいを取り、水道で手ぬぐいを濡らし、わざわざ冷凍庫のプラグを刺し、濡れた手ぬぐいを凍らせる''など端から見れば異常としか言えない行動を取ることになる((あくまで攻略補助であり、完遂する必要はないが。))。 --これらは、「永遠に繰り返すループの世界」の中でほんの少しの行動の差異が、ループ脱出への鍵となっているということではあるが。 -終盤の展開 --ラスボス戦やエンディングはホラーぶち壊し。爽快感はあるが、雰囲気がガラリと変わるので冷めてしまうことも。 --ラスボス戦、エンディングでは「神器」を使って戦うが、そこに屍人への対抗手段が限られ隠れるのが最適解だった主人公の人間らしさやホラーとしての面影はない。 --エンディングもハッピーエンドではなくバッドエンドに近いものであり、主人公たちの生存/死亡も変わらないので、2周目以降やこのことを知ってプレイするのは精神的にきついという人も僅かに居る。 -全体的に動きがもっさりしている --長く走っているとバテるシステムに加え、モーションが全体的に遅く、敵の攻撃を潰せないこともしばしばである。走っている時に壁にぶつかると、1~2秒ほどその場で動けなくなってしまう。 -顔の裏(裏顔) --このゲームではカメラの位置とキャラクターの位置が丁度重なると、キャラクターの内部((内部といっても中身は3Dモデルらしく当然スカスカで、表面と同じテクスチャが裏側からも見えるだけだが。))がカメラに映ってしまう仕様になっている。 --プレイヤーの後方から付いてくるような同伴者と共に行動している場合は、この現象が起きる可能性が高い。プレイヤーを後方から捉えているカメラと、プレイヤーの後方から付いてくる同伴者の顔が重なってしまう。 ---慎重に行動している時に、いきなりカメラ全体に顔のアップが表示されるのはかなり怖い。ある意味、''屍人を差し置いてこのゲーム最大の恐怖要素。'' -説明書の誤植 --終了条件2をクリアするためのヒント集である「31のヒント」の内容の一部が入れ替わって他のステージのヒントを載せてしまっている。 ---ベスト版では修正済み。 ---- **総評 高すぎる難易度とシナリオ展開は人を選び、初心者にお勧めするには厳しい一作かもしれない。~ しかし、コアなホラーゲーマーにはシナリオにマッチした絶望的な難易度と斬新なシステムの数々、高い質のグラフィック・演出がとても魅力的な作品である。~ 何よりもキャッチコピー通りの「どうあがいても、絶望」な展開と和製ホラーの恐怖演出をしっかりと押しだしているのが大いに評価できる所である。~ やりこんでいくたびに得られる情報がどんどん増えていき、シナリオの緻密さにぐいぐいと引き込まれていくホラーゲーム史上に残る傑作と言えよう。 ---- **余談 -後に残された謎を解明する「サイレンマニアックス」が発売された。全キャラが作中どのような行動をしていたかをまとめたタイムテーブルに「羽生蛇村異聞」の最終回が収録されている。 --スタッフのインタビュー、本作のモチーフとなった小説や映画を紹介している。その中で『閉鎖的な村での群像劇』は小野不由美の「屍鬼」の影響を受けていると語られている。 --初版はそれほど多くなくプレミア化していて2012年に復刊した際にはすぐに完売してしまった。 --2021年6月26日に再び復刊が決定。さらに同日フジテレビ系列で放送された「夜にも奇妙な物語`21夏の特別篇」の「三途の川アウトレットパーク」にて本作のBGMが劇中で使用された。 -2014年に『SIREN-赤イ海ノ呼ビ声-』のタイトルでコミカライズされた。 --原作ゲームでは語られなかった空白の時間、怪異の前日の登場人物たちの動き、羽生蛇村へ行くきっかけが描かれている。 --怪異に巻き込まれる前の村の様子や名越校長、石田巡査の生前の姿も描かれており、原作をさらに楽しめる内容になっている。 --当初は集英社のホラー漫画雑誌で連載されていたが、同誌が休刊したためWeb漫画サイトに掲載場を移し連載していたが、作者の健康状態の関係で打ち切られてしまった。 --その後の2018年、Web漫画サイトZにてコミカライズ第2作『SIREN ReBIRTH』が連載され、2020年まで続いた。前作との繋がりは無く、作画・脚本家も別の人物が務めているが、原作ゲームスタッフが監修している点は同じ。 ---こちらは原作をリブートした内容であり、大まかな展開や登場人物は忠実ながら舞台を平成31年((舞台は7月だが同年5月に元号が令和に変わった現実と違って平成のままであり、原作の「前の元号が続いている」点を踏襲している。連載開始時点で既に改元の日程が公表されていたため、恐らく意図的であろう。))に変更して様々な要素を再構築している。 -本作のディレクター外山圭一郎氏とシナリオライター佐藤直子氏は、本作を手がける以前はKONAMIに在籍しており『[[SILENT HILL]]』の開発に携わっていた。 --そのためか、「辺境の土着信仰」「街そのものの異界化」「鳴り響くサイレン」などのコンセプトに加え、細かなレベルでも様々な共通項が存在する。と言うかタイトルが既に…''訴えられなくて良かったね。'' --また『SILENT HILL』制作中、海外メディアのインタビューを受けた際「なぜあなたは日本人なのに海外を舞台にしたゲームを作るのか?」と言われた。これが『SIREN』制作のきっかけの1つと言われている。 -先述のお蔵入りになったとされるサイレンのCMで使われてもいる不気味な歌?のBGMは「最恐映像ノンストップ」(テレビ東京)などの心霊番組で定番となっている。 --テレビではあまり放送されないが、怪談のライブ等でも演出でよく使われている((松原タニシ、中山市朗…他。))。 -主人公の須田恭也を演じる篠田光亮氏は[[自身のYouTubeチャンネル>https://www.youtube.com/channel/UCfgEwyEFQzkWerjJACYcGZg]]で本作の実況プレイ動画を生配信した。 //-人気Youtuber「ゾゾゾ」にてサイレンの舞台・羽生蛇村の元ネタとされる岳集落へ行く回があるが、意図としないトラブルで不気味な内容となっている。 //--短いながらも羽生蛇村の元となった集落だという事にうなづいてしまう内容で雰囲気満点。 //↑インタビューや取材でもない一個人の行動動画に関する記載など不要では?

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