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エヌアイン完全世界」を以下のとおり復元します。
*エヌアイン完全世界
【えぬあいんかんぜんせかい】
|ジャンル|対戦格闘アクション|
|対応機種|アーケード|
|メディア|SYSTEMBOARD Y2&br()Taito Type X2(NECICAxLive)|
|販売元|SUBTLE STYLE|
|開発元|SUBTLE STYLE、るつぼゲームワークス|
|稼働開始日|SYSTEMBOARD Y2:2010年6月25日&br()NECICAxLive:2012年2月22日|
//|プレイ人数|人|
|判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|
//|ポイント||
|>|CENTER:''アカツキ電光戦記シリーズ''&br()[[アカツキ電光戦記>アカツキ電光戦記 Ausf.Achse]] / ''エヌアイン完全世界''|
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#contents(fromhere)
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**概要
-同人サークル「SUBTLE STYLE」によって製作された2D対戦格闘ゲーム『[[アカツキ電光戦記>アカツキ電光戦記 Ausf.Achse]]』の続編。
--本作はSUBTLE STYLE単独ではなく、ACゲームのX68000への移植や『[[ティンクルスタースプライツ]]』のDC移植など高クオリティの移植で知られる「ゲームのるつぼ」ことるつぼゲームワークスが開発に参加している。
--また、本作はSUBTLE STYLEが販売元となっている。これは開発中に前作の販売元であるピーアイシーが倒産してしまったため((後に『電光大戦6』パンフレットにてSUBTLE氏自身がこの事に触れており「本作が出せたのは奇蹟」と語っている。))。


**特徴
-基本操作
--1レバー+4ボタン。使用するボタンはそれぞれA(弱攻撃)・B(中攻撃)・C(強攻撃)・D(攻性防禦)。A+Bで投げ。攻性防禦が新たに追加されたDボタンに振られているものの、従来通りB+Cでも使用可能で、特別攻撃のB+Cも(完全者の特攻シュテルンブレッヒャーを除き)Dボタンで代用することが可能である。最終特別攻撃(3ゲージ技)も前作と同じA+B+C。
--「完全煉鎖」という新システムが搭載。チェーンコンボに近い。A>A>A>AやB>B>B、C>Cというようにボタンを続けて押すことで違う技に派生する。次の強さに派生することも可能(たとえばA>AからB煉鎖の二番目に派生する)で、一部の煉鎖は必殺技や特殊技でキャンセルできる。一部キャラの煉鎖を除き、基本的には少しずつ前進しながら技を出すためヒットさせやすい。
--A+B+Dの同時押しで「完全世界」が発動可能。1ラウンドにつき一度だけ使用可能で、使用したラウンド中は特攻ゲージが残り時間を示すものに変化。終了すると完全に消滅、ゲージを使う行動は取れなくなる。
---基本的には投げられている最中と、特別攻撃ヒット中、最終特別攻撃発動時以外のあらゆる状況から出すことが可能(一部の最終特別攻撃発動時には、見てから完全世界を発動されてしまう)。相手のコンボから回避する手段としても使える。
---世界発動時にはキャラが飛び上がるモーションを取り、相手の位置をサーチしてノーダメージで吹き飛ばし効果のある雷を出す。但しその後は着地まで完全無防備に成る為、読まれて雷をガード・あるいは攻勢されると大ピンチとなる。時にはあえて「出さない」という駆け引きも必要になる。
---使用中はカウントダウンが停止し、あらゆる技の攻撃力が1.2倍増加。さらに発動時に少量だけ体力が回復、その後も攻撃を受けなければ、ヴァイタルソースとして赤線で記されているところまで徐々に回復していく。
---完全世界の継続時間は発動時のゲージ保有量と発動状況で決まり、ガード中やのけぞり中に出した場合はペナルティとして時間がかなり短くなる。「赤線まで体力を回復させるためには、3ゲージ+ペナルティなしの発動が必要である」と覚えればだいたい間違いはない。
--完全世界使用中にA+B+Dの同時押しで「完全神殺」が使用可能。最終特別攻撃に匹敵する威力の攻撃を出し、完全世界を強制終了する。性能はキャラによって違うが、出かかりに無敵を持ち出の早い突進技がほとんどであり、世界中は常にこの技の脅威にさらされる。
--2段ジャンプが全キャラで可能。2段ジャンプ後も普通に攻撃できるが、ガードは着地するまでできなくなる(攻性防禦は可能)。
--ニュートラルガードが搭載され、レバーニュートラルで上中段を、レバー2方向への入力で上下段をオートガードできるようになった((左右のガード方向を揺さぶられるのはジャンプ攻撃が圧倒的に多いので、正直しゃがみオートガードの出番は少ない。))。ただし、防禦ゲージの減少量が増加するリスクが存在する。
--ダッシュ攻撃の搭載。ヒットした相手は大きく飛ぶ。
---上記のダッシュ攻撃を含め、特定の技を当てた際に相手が画面端へ到達すると壁やられを誘発。貼り付けられた相手が地面に落ちるまでのけぞりが無くなるので、独自のコンボを決められる。
--ゲージを保持していると攻撃力が増加する。ゲージレベル1(ゲージ一本)につき5%増加。本作は3ゲージまで保有できるため、最大15%の増加となる。
--トレーニングモードは削除された。後述のストーリー簡略化と合わせ対戦ツールであることを意識した内容になっている。
--タイムリリースでタッグモードが解禁される。二人で一つの体力とゲージを共有しながらキャラクターを操作しCPU(こちらは一体)に立ち向かうモード。

-使用可能なキャラクターは全14人''+1台''。
--ミュカレがリストラされ((ネタバレになるが、ミュカレは完全者と同一人物という設定であり、その完全者が別の肉体(前作のアノニム)に憑依したためにカティに戻った、というのが正しい表現か。))、新キャラとして主人公のエヌアイン、ミュカレが憑依していた少女カティ、完全教団の女性戦士テンペルリッターの3名が追加。また、前作から引き続き登場するキャラでも名称が一部変更になっていたりする。
---設定面は基本的に前作の(エンディングを含めた)キャラストーリーを踏襲したものになっている。但し、ムラクモ・完全者については若干異なる。
---アノニム・ガード、エレクトロ・ゾルダート、電光戦車の3キャラは「別人(別個体)」となっている。
--旧キャラクターのデフォルトカラー(衣装の色)が変更されている。前作では薄汚れたような色や迷彩色・カーキ色のようなカラーのキャラが多かったが、本作は全体的に青・赤・白・緑といった原色系の明るい色が使われ派手に。
--本作ではキャラごとのステージは存在せず、CPU戦では特定の順番でステージが変化。BGMは対決キャラのものとなり、対戦時にはランダムでステージとBGMが選ばれる。
--CPU戦のキャラの順番はある程度決まっている((カティ(カティと塞のみエヌアイン)→2キャラランダム→エヌアイン(カティは塞、塞はカティ、エヌアインはアカツキ)→アカツキ及び前作のゲゼルシャフト関連の5キャラのうち2キャラがランダム→完全者(塞・鼎・大魏・完全者はムラクモ)→ヴァルキュリア、となる))。同キャラ戦は発生しない。

-その他
--神武天皇即位紀元(皇紀)を用いていた前作と違い本作では西暦を用いている。第二次大戦を思わせるような表現はほぼ排除された。
--ヒットエフェクトはカラフルになり、地味な色合いが多かった前作に比べ派手なビジュアルとなっている。ガード時のエフェクトなども変更。
--ゲージなどは計器類を思わせるデザインだった前作と違い、グラデーションのきいたものや単色の四角形などのシンプルなデザインになり、攻性防禦や相対攻撃(カウンター)の際にはそのテロップと同じ文字が書かれたテープが流れるようになっている。全体的にモダンに。
--イラストも影がはっきりしていた前作に比べハイライトや影が薄まり、明るくスタイリッシュな雰囲気になっている。
--ズーム演出が追加され、ステージを広く利用できるようになった。また特別攻撃の際もアップとなり、カットインが入る。さらに特別攻撃中は背景の色が反転し、一番奥にある建物や雲などが猛スピードで動く。
--攻性防禦を取った場合、「技の攻撃力に応じてガードゲージを回復できる」仕様が追加された。
--両者とも0ゲージから戦闘開始された前作とは違い、お互いが1.5ゲージずつ持った状態で戦闘開始されるようになった。
--完全者の「シュテルンブレッヒャー」を溜め始めた際、溜め具合が色分けされたゲージで示されるようになった。
---技が出し易くなり使い分けが容易になった反面、相手に「シュテルンを溜めている」のが丸わかりになるという欠点も。
---ゲージは「一番最初に溜め始めたボタンの状況だけを示す」ため、遅れて別のボタンで溜め始めた場合の溜まり具合は自分で覚えていなければならない。


**長所
-前作同様、シンプルかつ分かりやすいゲームデザイン。初心者から上級者まで幅広く遊べる。
--システムは多く追加されているが、ゲージ管理は前作同様でコマンド入力も簡易。覚えなければならないことはそれほど増えているわけではない。
--完全煉鎖の追加によりコンボゲー化が進行していると思われがちだが、一部除き複雑なものは必要としない。
--また、完全煉鎖の搭載によりヒット・ガードの確認がやりやすくなっており、コンボ自体の難易度も下がっている傾向がある。

-非常に個性的なキャラクター達
--前作のキャラが引き続いて参加している他、新キャラもそれらに負けず劣らずの個性があふれている。

#region(新キャラクターたちについて簡易に解説)
-エヌアイン
--主人公。格闘術の常識からどこか外れているモーションの打撃技と、謎の超能力を駆使して戦う。勝利台詞で思いっきり相手を見下すが、その実態は…。
--少年と言うが、外見的には青年と言っても違和感がない。その為か、ドットの手足が長い。モーションは腕を自分に巻きつけてたり反り返ったりと中二病っぽい。しかし声はかわいい((女性声優が担当しているため。))。
--前作の主人公アカツキと同じく飛び道具・無敵技・突進技が揃ったスタンダードな性能だが、接近した時の爆発力が売りのアカツキとは異なり、長いリーチと優秀な必殺技を生かして丁寧に立ち回る戦法が得意。移動やジャンプも速め。
--ワープ技など若干トリッキーな部分も持つ。ゲージに頼っていかないと火力が低いのが難点か。
-カティ
--ミュカレが離れて独立キャラ化。面妖な杖を持った少女。前作のどぎつい眼鏡っ子が''八重歯がきらめくかわいい魔女っ子に。''一人アルカナハートとも。
--台詞回しといいモーションといい一人だけギャグっぽい。「カティちゃんの登場なのです!」あまりに狙いすぎて本作の中ではさらに浮いているイロモノ。
---実は色々と裏設定のあるキャラであり、塞とは関係が深い。2012年3月中旬に行われた本作の公認大会「第六次電光大戦」のパンフレットで製作者自身より明かされた話によると、「ぴかーん」と言いながら取る勝利ポーズは''杖に呪われないためのおまじない''らしい。
--杖を振り回しとにかく寄って叩くキャラ。ゲージを使った時の火力はなかなか。必殺技も準スタンダードな構成で性能的に最強クラスの無敵対空まで持ち、守りも強い。が、防御力そのものは最低クラスで、動きも若干遅い。
--接近戦を挑む関係上常に事故のリスクを抱え、万能系だがやや癖がある。
-テンペルリッター
--完全教団の宮殿兵士。彼女達もまたエレクトロ・ゾルダートと同じくクローン体。その身一つで空を飛ぶ能力を持ち、蛇腹剣を武器に戦う。
--一人称が「拙者」、二人称は「お主」と話し方が侍っぽい。太もも丸出しな見た目に驚かされるが中身はわりとまとも。しかしストーリーでは…。
--地上技の性能は悪いが、空中では高い機動力と豊富な技を持つ。また、空中攻撃をジャンプキャンセル可能な唯一のキャラである。しかし無敵対空こそ持っているが彼女も防御力そのものが最低クラス。高速・超リーチの奇襲技を中・下段両方で持ち、ヒットさせればコンボに発展できるものの、どちらもガードされると隙が大きい。
--リードを取ることに注力し、追って来た相手につけこんでいくように技を通していかなくてはいけない、かなり癖のある性能。
#endregion

-対戦バランスはやはり整っている。
--旧キャラでの新システムの恩恵の差がやや出ているものの「詰んだ組合せ」というほど酷いものは前作同様ない。やりこめばどのキャラクターでも十分に戦える。
---とはいえ、後述するが上位キャラには相当尖っている部分が多く、上位と下位の差は前作に比べると離れている。
--前作同様、「永久コンボ」及び「条件が緩く実戦で狙える即死コンボ」の類は発見されていない(2017年5月現在においても)。

-ストーリー的には前作より明るい結末が多い。
--特に前作では死亡してしまう結末だったキャラのEDは、いずれも明るく希望が見える展開を見せている。

-BGMは前作からの使い回しがほとんどだが、傾向としては硬派なものから明るいメロディアスなものへ刷新・追加されており、新規曲も良質。
--ただ、じっくりと聞ける機会が無いのが残念。サントラも未発売。
--カティのテーマBGM(かなりほんわかとしている)が流れる中、軍人の男たちが殴りあうのは中々にシュール。


**賛否両論点
-前作の硬派な雰囲気が大きく変わってしまったこと。
--世界大戦を思わせる演出は削除されてしまい、エフェクトのカラフル化やキャラクターのカラー変更など明るい雰囲気になったが、悪く言えば「ありがちなデザイン」になってしまい、前作の雰囲気が好みだったファンからは否定的な意見も出た。
--一方、明るい作風になったことで前作の短所であった地味さを改善し目につきやすくなったと、肯定的な意見も出ている。
---ただし世界観は「同時多発テロル((「テロル」は「テロ」のドイツ語読み。前作もそうだが作中の外来用語はほとんどドイツ語で、公式サイトでもこの表記。誤植ではない。))のせいで数多くの人間が虐殺されている新世界」となっており、むしろ前作よりも悲惨。背景を見ても、命あるもの(人間や動物など)が存在している描写はほぼない。
--女性キャラのセックスアピールが無駄に強いのも相変わらず。新キャラのカティとテンペルリッターはいずれもパンチラどころか''パンモロ''をかましている。他にも鼎は、ニュートラルモーションで明らかに乳が揺れるようになっている。
---とはいえ、プレイヤーの間でアイドルとして認知されているのが''戦車''&''語彙の少ない男のクローン''&''コッチジャおじいちゃん''である点は前作から変わっていない。…なんなんだ、一体。

-システムもより一般的になったこと。
--「完全煉鎖」等の新システムの導入により、比較的近年の他の格闘ゲームに近づいた。前述のように完全コンボゲーと化した訳ではないが、覚える事とやらなければならない事はやや増えた。

-雰囲気もシステムも、全体的にアクの強さが減っている。より一般向けとなり間口が広がったとも取れるし、わざわざ他の格闘ゲームではなくこの作品を選ぶ魅力が薄れたとも取れる。
--その一方、設定(特にキャラクター)は相も変わらずイロモノ。

-ストーリーがかなり簡略化された。
--1ステージごとに背景を説明するデモが入っていた前作に比べ、本作のデモはOP時・完全者又はムラクモ戦時・ヴァルキュリア戦直前時に3回、ごくごく簡素なやりとりが入るだけ。キャラクターにもよるが、「このステージはどういう場所なのか」「なぜそこでそのキャラと戦っているのか」がよくわからない。勝利セリフでの掛け合いも非常に少ないため、余計にわからなくなってしまった。
---公式HPでは一応、各キャラごとの設定と行動し始めた原因・目的が非常に簡素ではあるが載っているし、OPデモで少しは説明される。が、本作の最終目的地へと向かう理由などはほぼ説明されず、よくわからないままストーリーが進む。
---エンディングもキャラごとに専用の一枚絵があった前作と違い、全キャラ共通の背景絵・選択画面と同じキャラアップが映って、その後どういう行動をとったか・今まで何のために動いていたか解説が入ってスタッフロール……と、非常にそっけない。
---またスタッフロールやデモシーンの曲も変わっており、そこまで悪くはないのだが、演出とあいまって強い印象を残した前作の曲と比較すると物足りなく感じてしまう。
--格ゲーにストーリーが必須というわけではないが、CPU戦を一人でやる際にはストーリー目的でプレイする人も少なからずいる為、やはり寂しくなってしまった感は否めない。前作記事も参照して貰うと分かるが、近年の格闘ゲームとしてはかなりストーリーモードの演出に拘られている作品であった故、それを期待していた層からの違和感と反発は大きかった。
---いちいち対戦前にプレイヤーキャラの動きやデモシーンが入るとテンポが悪くなる、という意見もあるが、スタートボタン等でスキップできるようにすれば解決することである((実際、前作のアカツキAC版ではスキップ機能がちゃんと搭載されていた。))。
--のちに開発スタッフが語ったところによれば、『納期がかなり厳しく、開発期間が短かったためそうせざるを得なかった』。「作品の出来に致命的な影響を及ぼしてしまっている」とまではいかずとも、惜しまれる点ではある。


**短所
-エフェクトはカラフルになったが、演出がそれほど大胆なわけではなく、まだ地味な印象はぬぐえない。
--また、一部の演出が削除・変更されている。
---不律とムラクモの最終特別攻撃は、前作AC版ではそれぞれ『紅葉』『桜の花びら』が舞う演出があったのだがカット。代わりに不律は背景文字が赤背景と白と黒の文字となり、納刀時にヒット数が加算される演出となったが、ムラクモはそれ以外の演出変更が何もなく、効果音に台詞の一部がかき消されやすくなってしまっている。エレクトロ・ゾルダートに至っては背景文字の演出がカットされている。
---背景に文字が出てくる演出は、その技の途中でKOしてしまうと見られない。締めに格好いい背景文字が表示されないのはちょっと寂しい。
---アナウンスも削除されたものがあり、名物であった電光戦車での対戦時ラウンドコール「対戦車戦用意!」、「削り殺シ」や「接敵!」(乱入時)などがなくなっている。
---キャラクター選択時や、対決キャラの表示画面も削除されている。
--ドット絵の枚数が少なく動きが硬いのは前作同様で、やはり大胆な動きもしない。
---また、新しいシステムが追加されたにもかかわらず前作キャラの絵は使い回しが多い。ニュートラルモーションが若干変化した程度のキャラや全く追加がないキャラもいる一方、エレクトロ・ゾルダートは煉鎖のモーション全てに新規ドットを用いられているなど、改修の仕方も妙にちぐはぐしている。
---もっとも、枚数が少ない分キビキビ動くため、動きに重たさを感じることはないという利点(?)もないではない。
--ボイスもほぼ前作からの使い回し。新録されたボイスは非常に少なく、アカツキ・大魏・ムラクモの松本忍氏が演じたキャラのみ。アノニム・ガードは別人なのに同じボイスを使用していたり、勝利台詞では本性を現し強気になっているマリリン大姐の台詞が猫を被っているままなど、設定との間に齟齬があるものもある。
---反面、新キャラは三人とも女性声優を起用しており、このゲームにしては豪華。
--結果的にちぐはぐした演出面から「派手なのか地味なのかよくわからない」と言われるように((但し、ロケテストではエフェクトが巨大すぎて画面が見えなくなったり、攻性防禦で時間が停止して明るいエフェクトが出る際に画面が暗くなる演出が入るなど「目に悪い」「派手すぎて邪魔」と言われていた。現状はそれを改善した結果だということも考慮に入れるべきである。))。

-バランスは致命的なまでに壊れているわけではないが、一部に性能が非常に尖っていて対策を知らないと(知っていても)厳しいキャラがいる一方、やりすぎのレベルで弱体化を受けたキャラもいる。

#region(キャラ性能について)
-以下、厳しい相手の例。
--&b(){アドラー}
---Cブリッツボンベを用いたゲージ回収能力が非常に高く、二回ヒットさせればほぼ一本ゲージを溜めてしまえる上、ダウン追い討ちのコンボに安定して組み込むことができる。ゲージ依存度の高さをある程度補えたばかりか、煉鎖によって中央でもコンボを狙いやすくなり、前作と比較するとかなり安定した立ち回り能力と火力を手に入れた。さらに最終特別攻撃のブリッツガイストが強化。相手を拘束する能力・威力がとても高く、これを絡めた爆発力も最強クラス。キャラによっては立ち回りで圧倒することは可能だが、刺さってしまうとごっそり体力を持っていかれてしまうので常に気が抜けない。
--&b(){塞}
---C攻撃の煉鎖で何故か壁貼り付けを誘発する上に、中央でもそこから拾えてコンボに行ける。ダッシュ攻撃も含めて運び能力はさらに向上したばかりか、壁貼り付けコンボの締めに邪視(状態異常にするコマンド投げ)が入るので、相手をかなり不自由な状態で10カウントも拘束できる。ゲージ回収率も高いためまずゲージ不足にはならず、一度画面端へ押しこんでしまえばそのまま同じパターンが繰り返される。要するに相手をハメ殺してしまうキャラクターなので、ペースを握られてしまうと何もできずそのまま負けてしまうということも。
--&b(){鼎}
---本作ではジャンプへ完全に移行するまでに最速のキャラでも3F、最遅のキャラだと5Fかかる。それは良いのだが、コマンド投げでのみこの移行モーション中を投げてしまえるため、当て投げが前作に比べ(少し理不尽なぐらいに)回避しにくい((本作の全体的な傾向として、投げられ判定のなくなる通常技・必殺技が極めて少なく、判定の消えている時間もとても短め。発生が早くカウンター補正で威力が高くなる仕様もあいまって、投げがかなり強い。))((「ガード硬直が解けた後、最速で通常技を出そうとしても1フレ出るのが遅れる」という仕様もあるため、一部キャラは鼎の『密着時しゃがみA→キャンセルB四方投げ』の連携が非常に返しにくくなってしまっている。))((鼎のコマンド投げは他キャラの通常投げよりも発生が早く、投げ抜けもできない。さらにシリーズの方向性として複雑なコマンドを排除しているため、いわゆる波動拳コマンドで出せ、相手の入力ミスもほぼ期待できない。))。新技である空中投げの「地獄車」も投げ抜け不可で間合いも狭くなく、決めた高さによってはさらに追撃可能、空振りした時は真下に軌道を変えつつ隙の少ない着地ができると高性能で、ダッシュ攻撃や煉鎖が追加されたために打撃戦もかなり戦い易くなった。おまけに前転の性能まで強化され、接近することもそれほど難しくない。
---元からゲージ技に頼るタイプでなかったために完全世界と非常に相性が良く、完全神殺技も全キャラ中で屈指の高性能を誇る上、「投げの最中には完全世界を発動できない」仕様のため、相手の逃げを許さずに勝つことが容易。アドラーや塞とは違った意味で『コマンド投げと打撃の2択で相手を封殺する』『最後の最後まで逆転を狙える』キャラとなっている。

--これらのキャラクターはいずれも中堅程度であった((ただし、アカツキ稼働当初はアドラーは下から数えたほうが早い、鼎と塞は上のランクにいる、という見方が多かった。))が、&b(){明らかに強化の仕方が極端すぎる}。相当やりこんでいるプレイヤーの間ですら「調整ミス」だと言われることも。
---尤も彼らだけが強化されたわけではなく、弱キャラだった電光戦車や完全者も強化されている。結果、完全者は最上位クラスほどではないものの、はるかにマシな強キャラと評価されているが…電光戦車はこちらでも最弱扱いである。
--上記三キャラに並ぶランクに主人公・エヌアインがいるが、こちらは比較すると尖った部分が少なく((本作の新システムとの相性が悪いというのも原因。主人公なのに。))、バランス良く強いとされている。

-以下、弱体化の例。
--&b(){アノニム・ガード}
---前作のアノニムから通常射撃の種類が減り、弾速自体も遅く見切られやすくなった。さらに通常射撃では体力を削れなくなっているため遠距離でのアドバンテージは減少、接近戦での火力も立ち回りも特に強くされておらず、機動力に関しても空中制御ができる特殊技が削除され、ダッシュ性能が低下。逃げ切りの切り札「テトラグラマトン」(リザレクション技)は完全世界がシステム化されたせいか別技へと差し替えられたが、これの性能が微妙。一応強化された部分もあるものの全体的に大きな弱体化を受けたため、俯瞰すると電光戦車と並ぶか、或いは少しだけマシ程度との意見が多い。
--&b(){不律}
---本作の新システムと噛み合わせが非常に悪く、誰でも2段ジャンプが可能になったことで対空の威圧感は減少。しかも前作であった『B攻撃以上の斬撃でガードの上から体力を削れる』仕様も削除、当てることそのもののプレッシャーも削がれた。近距離で出せる煉鎖には使いやすいものが一つもなく、斬撃技は相変わらず隙が大きい。ゲージ効率が全体的に向上しているため、斬撃技ガード後に特攻技で反撃確定できるキャラ・状況が増え、立ち回りが非常にリスキーかつ厳しいものに。実戦値こそ高めなものの理論上ではかなりのキャラに不利をつけられてしまうと言われ、アノニム・ガードと電光戦車よりはマシ程度、下位クラスの評価を受けることが多い。

--大なり小なり弱体化した部分を持つキャラはいるが、アノニムはあまりにも露骨。不律もここまでシステムの恩恵をなくす必要があったのかは疑問。この二人は前作では上位ランクに属するキャラだった((と言っても稼働後に研究が進んだ結果で、稼働当時はどちらも中堅程度の強さと言われていた。))とはいえ、先述のキャラ達の強化と見比べると明らかにバランスが取れていない。
--なお前作で強いと言われていたアカツキは、せいぜい「3ゲージ技の威力が下がり」「中段が若干見切られやすく、ガード後の有利が失われた」程度の弱体化に留まっており、強化された点と新システムとの相性が非常に良いため、未だ上位に迫るレベルを保っている。

-以上、上位と下位の強烈な差を述べてはきたが、あくまで「プレイヤーによる使い勝手」「理論上の性能」といった部分もあり、操作しているのが人間である以上はひっくり返せないということもない。
--しかし、いくら対抗できるといっても上級者同士での対戦になるとミスの回数の減少や各種キャラクター性能の把握が進んでいることから、必然的に強みの少ない下位キャラが厳しくなることに変わりはない。
#endregion

-ミュカレが削除されたこと。
--カティの性能・キャラ設定等はミュカレとは全く異なっており、代替的な性能を持つキャラもいないため、ミュカレ使いにとっては痛手であった。
--スタッフが後年語ったことによると、完全にリストラした理由は「設置技を主体とするキャラコンセプトが、2段ジャンプなどが追加された本作に合わなかったため」。

-前作のハードモードに比べるとCPUがはっきり言って弱く、ある程度慣れてしまうと練習相手としても心もとない。
--基板の難易度設定を最高ランクのベリーハードにしていなければ行動パターンが単調な上、ラスボス間際になっても1ゲージ技すらほとんど使ってこない。
--防御に関しても中下段の連携をすれば簡単に崩れる。受身(ダウン回避)もしない。
--ステージが進むにつれ体力が一定以下になると完全世界を発動するようになってくるが、CPUは基本的に攻撃中・食らい中・ガード中・ダウン中には発動してこない((高難易度設定の場合、食らい時とガード時に発動してくることはある。))。そのためタイミングがバレバレ。
--ただし攻性防禦に対しての反応はやたら良く、先読みの攻性防禦はなかなか成功しない。
--しかし、CPU戦でのラスボス・ヴァルキュリア(テンペルリッターの色違いボス仕様)の行動パターンは異常。ここだけ別のゲームになる。
---特攻技がノーゲージ、最終特攻が1ゲージで出せる仕様のため、多段ヒットでダメージが大きく無敵も長いラスボス専用仕様の「特攻滅心斬」「特攻真空斬」をかなりの頻度でぶっぱなしてくる。テンペルが持つ通常版とは違い攻撃判定が非常に大きいため、移動やジャンプのみでかわすのは困難。
---かといって普通にガードすると防禦崩壊(ガードクラッシュ)して残った部分だけでも3割ぐらい持っていかれるため、攻性防禦が重要となる。ぶっぱを待って、いざ出してきたらひたすら攻性をとって、隙に最終特攻や高い火力のコンボをたたきこむというパターンを繰り返すことになる。
---難易度設定を上げても特攻技・最終特攻を積極的に使用してくる以外行動パターンは変わらないので、むしろ(普通のCPUに対して)弱くなるとの情報も。

-&b(){タッグモードが誰得仕様すぎる。}
--タッグにしたからと言ってストーリーは変わらない。筺体の都合上タッグ同士の戦いは不可能。同人版アカツキのようにアイテムが出るわけでもない。隠し要素としてはお粗末すぎる。
--二人でCPUを挟みこんで簡単な永久コンボを繰り返す他、勝利画面が1Pの台詞で画像はどちらかランダムになるため、これを使って他のキャラの台詞を言わせるというネタがある(たとえばエヌアインと電光戦車だと&b(){戦車が「僕が人間で君たちがそれ以下になった」と見下すというシュールな絵が見られる})が、本当にただそれだけ。

-評判の良かったトレーニングモードが削除されていること。今回は対CPU・対人戦と実戦の中で腕を磨いていかなければならない。
--敷居は低い方で、格闘ゲームをすでにやっている人や前作のファンならすんなり受け入れられるだろうが、本作が始めての人が練習を重ねていくには少し厳しい環境になったと言わざるを得ない。
--とは言え、(筺体の難易度設定にもよるが)上述の通りCPU戦はそこまで高難易度ではなく、序盤はほとんど動かず勝ち進むごとに行動パターンが増えていくといった形のためコンボなどの練習台としては十分。


**総評
一部にやや難が見られるが、それでも対戦格闘ゲームとしての完成度は高い。~
また、刺し合い重視だった前作からコンボの難易度がやや下がったことでコンボゲーの爽快感も程よく取り入れている。~
前作同様に初心者の格闘ゲーム入門としてはお勧めの作品である一方、新システムが多く追加されたことで上級者同士での戦略も幅が広がっている。~
前作の硬派な雰囲気から大きく変化しようとしながらもどこか微妙に派手に成り切れていない、そんな感覚を受け入れられたらとても楽しめる作品であろう。


**余談
-''マイナーすぎる''。
--前作もそうだったが、本作はさらに厳しい。稼働店舗はNECICAxLiveでの配信が決定するまで非常に少なく、前作よりも少ないと言われるほどだった。前述通り、前作の販売元が倒産してしまったため販売ルートが上手く確保できなかった可能性が高い。
---東京などの大都市なら探せばそれなりに有名なゲーセンに設置されていたが、地方で見かけることはごくごく稀であった。
---現在ではNECICAxLiveのオンライン配信により全国でプレイ可能である。しかし、筺体の都合や新作の稼働などによって埋もれてしまうことも…。
---一応全国大会も公式に((SUBTLE STYLEが自ら企画・開催しているのではなく、協賛したゲーセンに認可を与えている形なので正確には「公認」。))開催されている。
--2018年1月には『EVO JAPAN 2018』のサイドトーナメントの一種目として本作が選出され「エヌアイン完全世界世界大会」というタイトルで開催。サイドとは言え、一応は''本作初の全世界大会規模の大会''となった。
---ゲームの知名度の問題から参加者はほぼ日本人だが、ゲームメディア『ゴジライン』のサイトで特集記事が組まれるなど、ファンを沸かせた。

復元してよろしいですか?