「ZONE OF THE ENDERS HD EDITION」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る

ZONE OF THE ENDERS HD EDITION - (2016/04/03 (日) 06:03:59) の編集履歴(バックアップ)


移植元の『ZONE OF THE ENDERS』と『ANUBIS ZONE OF THE ENDERS』に起因する評価点・問題点は当該記事を参照。


ZONE OF THE ENDERS HD EDITION

【ぞーん おぶ えんだーず えいちでぃー えでぃしょん】※THEは発音しない

ジャンル ハイスピードロボットアクション



対応機種 プレイステーション3
Xbox360
発売元 コナミデジタルエンタテインメント
開発元 コナミデジタルエンタテインメント(小島プロダクション)
High Voltage Software
【PS3 Best】ヘキサドライブ
発売日 2012年10月25日
PS3 the Best版 / DL版価格改定:2013年7月25日
定価 【PS3/360共通】通常版:3,980円、限定版:8,980円、コナミスタイル特別版:9,980円
【PS3 the Best】2,480円
配信 【PS3】3,480円→1,980円、【360】3,600円(2,440マイクロソフトポイント)
【PS3単品版】1,000円×2本
レーティング 【PS3初版のみ】CERO:D(17歳以上対象)(後述)
【PS3 Best/360】CERO:C(15歳以上対象)
判定 劣化ゲー
判定(パッチ2.00) 改善
良作
ポイント 「最悪のHD移植」と「最高のパッチ」という両極端な作品
ZONE OF THE ENDERSシリーズ
ZONE OF THE ENDERS / ANUBIS ZONE OF THE ENDERS / ZONE OF THE ENDERS HD EDITION

概要

メタルギアシリーズを手がける「小島プロダクション」スタッフのPS2初進出作『ZONE OF THE ENDERS』と、その続編として隠れながらも名作の評価を得た『ANUBIS ZONE OF THE ENDERS』のカップリング・HD移植版。
720p・60fps対応を謳っていたが、その出来は酷いものであった。PS3版は"the Best"発売と共に、『ANUBIS』をパッチにより大幅に改善し、ほぼ文句なしの良作に仕立て直された。


問題点

改善前

  • 『ANUBIS』における処理落ち
    • ほとんどの場面で処理落ちが発生しており、PS3版は平均20~30fps、Xbox360版でさえ平均40fpsという有様。
      そもそもPS2版の時点で60fps対応であった。
      • ダッシュ、ブレードコンボなどの基本操作でさえ処理落ちする。
      • オブジェクト数を減らすようにカメラを動かしたり、ロックオンを無力化・自機を透明化させるサブウェポン「デコイ」の使用などで、ようやく30fps超過となる。
      • つまり自機テクスチャさえもが処理落ちの一因であり、技術力・テストプレイの不足が否めない。
    • 名実共に「ハイスピードロボットアクション」として評価されていたZOEシリーズの移植には、致命的な問題点である。
      • 単なるフレームレート低下ではなく処理落ちのため、ボタン入力がズレる、タイムアタックで時間が歪むなどの弊害も起こる。
    • 『ZOE』でも大型ボス戦などで処理落ちが見られるものの、ANUBISほどではない。後述する改善評価点から省みると、グラフィック描写エンジンの違いに起因するものと考えるのが妥当か。
  • 『ANUBIS』の一部テクスチャ・エフェクトの劣化
    • PS2と比べ色鮮やかでなくなっている、発色が変わってしまっている箇所がある。
    • ベタ塗り的な建造物に縞模様が出ているだけでもマズいが、画面を赤く染めるアヌビスのバーストショット、空間を歪めて出現するベクターキャノンなど、見せ場にも影響が出ている。
  • 『ANUBIS』が劣化移植であることは明白であり、発売からわずか2~3日で以下のPS2版との比較動画が投稿されるなど、批判・落胆の声が数多く挙がった。
+ 上記2点の参考動画

改善後も変化なし

  • 非HD化ムービー
    • 『ZOE』のムービーはリアルタイムでなくプリレンダリングが多く、人間も含め全編3Dとなっているのだが、このムービーがHD化されていない。
      メタルギアシリーズの小島プロダクションらしく、リアルタイムを間に挟んでいるのが仇になってしまっている。
      • ムービーにはロボットや建物などリアルタイムレンダリングでもできるムービーパートもあるため、ゲーム本編よりムービーのほうが汚いという逆転現象が起こっている。
        HD化のありがたみを、こんな形で実感させられても困る。
      • ロボット出撃はリアルタイム、コクピット内会話~ロボットまでのカメラが引いていく演出はプリレンダ、のようにシーンの途中で画質が変わってしまうことも。
      • いかにも作り物っぽくテカテカした表現を採用しており、今見るには厳しい。
      • しかし、プリレンダムービーのHD化には、1からの作り直しに等しい作業量が必要なので、致し方ない点もある。
        デビルメイクライ HDコレクション』など、他社HD化タイトルでも同様の問題点を抱えているものは少なくない。
    • 『ANUBIS』のムービーは2Dのアニメだが、同じくHD化なし。
      • また本編の会話シーンでのイラストと色合いが異なる。とくに、ケン・マリネリスについて顕著。
      • とは言っても、アニメを作り直すのは、ZOEの人体3Dを作り直す以上に無茶な話である。『ZOE』ほど違和感があるわけでもない。
    • 新たに作られた『ZOE』『ANUBIS』選択前のOPムービーには、ゲーム本編のプレイ映像と、ゲーム本編でリアルタイムレンダリングになるムービーが挟まれているが、それらはHDで作り直されている。
  • 電子説明書をプレイ中に読むことができない
    • PS3準拠であれば、プレイ中に読むことができるが、今作は『ZOE』『ANUBIS』タイトル選択画面からしかマニュアルを開けない。プレイを中断して読む場合に不便。
    • 同様の仕様は同社の『メタルギアソリッド HD エディション』でも存在している。
  • メニューの扱いづらさ
    • 『ZOE』においてメニューをSTARTボタンで開いた後、項目を選択しているとSTARTボタンでメニューから抜けられない。
      • 一度、×ボタンでメニュートップに戻ってからSTARTボタンを押さなければならない。
    • セーブデータをロードしなおしたい時は、いったんソフトを終了しないとならない*1
      • 「違法な配信やダウンロードはやめましょう」の警告画面からのコナミのロゴからのやり直しとなり飛ばせないため時間がかかる。
    • ゲームセレクト画面はそれぞれのゲームタイトルトップにしかない。
      また、ゲームセレクトに戻ると、同様に「違法な配信やダウンロードはやめましょう」の警告画面からのやり直しとなり飛ばせないため時間がかかる。

評価点

改善前

  • グラフィック
    • ロボットやエフェクトの3Dは、元々がPS2タイトルの中でも高水準であったため、720pに対応しても、引き伸ばしは感じさせない。ただし、問題点で先述した変色などは除く。
    • ロボットの各所にはコーションマークが施されており、PS2では潰れて模様や落書きのようなものにしか見えなかったが、本作では描き直されている。
    • サブウェポンのアイコンなどのUIグラフィック、『ANUBIS』のコクピット内通信グラフィックの表情やコンソールも、HD準拠で描き直されている。

改善後(PS3パッチ適用後)

  • PS3版の『ANUBIS』パートについては"the Best"に際して改善された。初代については変更されていない。
  • 発売から半年以上経った2013年5月2日、小島プロダクションのネットラジオ(27分ごろから)で突如本作が話題に挙がる。
    本作に下された低評価を踏まえ、製作の過程を交えて、PS3版の修正パッチ・修正ROM発売、ダウンロード版配信による2作の分売化の予定が明らかになった。
  • そして7月25日、the Best発売と共に、ついにパッチを配信*2
  • 「HD EDITIONがPS2版と並ぶためには一つ欠けている物がある。スペックを最大限に引き出すためのプログラムだ。」
  • 本作のパッチを製作したのは株式会社ヘキサドライブである。
    当時作品のファンを公言するプログラマーによるパッチ解説記事は、専門用語の多用でやや難解ではあるが、ビジュアル的にも技術的にも興味深い。
  • 描画エンジン入れ替えの英断、スタッフロールにパッチ製作スタッフのクレジットを入れる時間すら惜しむ執念によって、
    容量588MB、バージョン2.00というパッチとは思えないレベルの大規模なクオリティアップがなされている。
    • 自然数(小数点より上)の繰り上がったバージョン表記は、大幅な機能の追加を表す。オンラインゲーム以外で見られることは極めて稀。
    • パッチ適用後、『ANUBIS』の起動直後にヘキサドライブのロゴが表示されるようになる。
    • 非常に大きな改善が見られたためファンからは ”ジェフティVer_2.0” ”HD(ヘキサドライブ)エディション” 等の賞賛が送られている

主な特徴

  • 1080p対応
    • 720pから更に高画質化。黒っぽい背景に白っぽいロゴが並ぶ(=文字がぼやけやすい)メニュー画面の時点でも影響を受ける。
  • 60fps対応
    • 本来想定されていた60fps仕様を実現。PS2版でも処理落ちを起こしがちだった「荒野乱戦」「圧縮空間」でも善戦している。
  • ジャギー/ギザギザの軽減(アンチエイリアス適用)
    • ホーミングレーザーをはじめ、ロックオンカーソルやリングレーダーといった、本作で特徴的な「線」の表現が更に鮮明になっている。
  • グラフィック向上、エフェクト追加
    • 縞模様の削除、PS2版に近い色彩・エフェクトを再現した。
  • 被写界深度(ピンボケ)の追加
    • 奥行きのあるイベントムービーが迫力・臨場感を増した。
  • 2Dマップ書き直し
    • 単純にワイドに引き伸ばされていたマップをレイアウトごと変更、ワイド表示に対応させ、PS2版マップと同様の表現を可能にした。

総評

「再起動(REBOOT)」というキャッチコピーを引っさげてきたものの、その再起動を待っていた旧来のファンには不安を与え、
「名作」「ハイスピードロボットアクション」というフレーズに惹かれた新規のファンにも期待外れであった、と言わざるを得ない出来。
しかし、PS3版はパッチ適用により、スピードの復活だけでなく、グラフィックも今まで以上のHD化が実現され、完成度を取り戻した。
思わず投げ出してしまった人も、悪評を聞いて触れられなかった人も、今一度手に取ってもらいたい。
ただし、Xbox360版は「PS3版ほど処理落ちが酷くない」ということでパッチ制作は見送られている上、価格改定もされていない。本作に興味があっても、360版は残念ながらオススメできない。


その他

  • 『ANUBIS』は増補版「SPECIAL EDITION」の移植。ただし、こちらで追加された別バージョンのオープニングムービーだけは未収録。
  • PS3初版には『METAL GEAR RISING REVENGEANCE』体験版の先行ダウンロードコードが付属。同年12月13日から一般配信を開始。
    • このため、レーティングが高く設定されている。『ZOE HD』本編の表現に差異は無く、ベスト版には『MGRR』体験版が同梱されないため、緩和されている。
    • 「メタルギアシリーズの体験版セット」というのは、かつての『ZOE』とも同じである。

開発・製作などについて

  • 本作の開発を担当したHigh Voltage Softwareにとって、PS3での開発は本作がほぼ初めて、なおかつ通算で5本目の開発タイトルである。
    こんな開発力の貧弱なデベロッパーに依頼したコナミ(または小島プロ)の見積もりが甘かった、と言わざるを得ない。
    • High Voltage Softwareは、「DANGER HIGH VOLTAGE(高電圧注意)」の標識をロゴに使用しているが、
      本作の完成度と起動直後に流れるそのロゴは、まるで"DANGER"が「これはクソゲーです」という警告のようである。
  • 同時期に『メタルギアソリッド HD エディション』が発表され、本作に先行して発売されている。
    こちらはHD化に定評のあるBluepoint Gamesによるもので、発売後も好評を博しており、パッチ適用前の本作とは対照的である。
  • ヘキサドライブは、本作とほぼ同時に発売された『大神 絶景版』(2012年11月1日)の開発(移植)を担当しており、仮に本作のオファーがあっても小規模開発会社での並行作業は難しかったと思われる。
    あちらも名高い名作であり、本作はパッチ配信という後手を取ったものの、かつての名作が2本とも次世代機に遜色なく移植された、と考えれば怪我の功名と言えよう。
  • 小島プロダクションは『HD EDITION』シリーズの発表と共に、据置機と携帯機でセーブデータを共有する「トランスファリング」というコンセプトを掲げており、本作もPSVitaでの発売が2012年発売予定(ページ下方参照)とされていたが、公式サイトからはいつの間にか「発売予定」の表記すら無くなっていた。
    • ネットラジオでもVita版の予定については触れられる事はなかった上、本作の低評価により続編制作チームを解散させたということが明らかにされ、多くのファンを落胆させた。過去作の劣化移植によって新作の「再起動(REBOOT)」が無くなるというのは本末転倒であろう。
    • 移植担当が責任を取らず、続編開発チームが解散させられるという対応は疑問である。また、小島プロデューサー自身は一切責任を取っていない。
  • コナミ公式サイトの「REBOOT GUIDE」「フレームレートは秒間30コマから60コマに増加し、より滑らかなスピード感を醸成することにも成功した。」と、HD化の際に60fpsになったように書かれているがPS2版は元々60fpsであり、コナミの紹介文が間違っている。
    • これだけなら広報担当者の手違いと思えるのだが、ネットラジオ内で本作プロデューサー・是角有二氏が「PS2の時は30フレームだったんですけども~」と発言しており、小島秀夫氏も発言を訂正することなく会話を続けている。
      製作スタジオ(小島プロダクション)のプロデューサーという内外共に重要な役割の人間が仕様を理解できていない、というのはいかがなものか。
      ちなみにヘキサドライブはきちんと「PS2と同じ60fps」と記述している。