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キャプテン翼VS - (2013/10/09 (水) 21:21:22) の編集履歴(バックアップ)


キャプテン翼VS

【きゃぷてんつばさ ばーさす】

ジャンル サッカーシミュレーション
対応機種 ゲームボーイ
発売元 テクモ
発売日 1992年3月27日
分類 なし
ポイント シリーズ初の対戦モードを搭載
携帯機でサッカーシミュレーションを再現
普段のテクモ版キャプテン翼とは違和感がある部分も
逆転要素が削られゲームバランスが悪化
キャプテン翼ゲームリンク

概要

ゲームボーイでは初となるテクモのキャプテン翼?シリーズ。本作では小学生編から始まり、前半の国内編は修哲小戦や全国サッカー大会を題材とした原作に近い展開、後半は原作漫画よりも早い段階でJr.ワールドカップに挑戦するというアニメ&映画版の展開を取り入れている。

本作はスーパーファミコンでの次作となる『キャプテン翼III 皇帝の挑戦』の約4ヶ月前に発売されており、IIIに先駆けて様々な新しい試みを取り入れた実験作的な側面も持っている。


特徴

  • 基本的なシステムはファミコン版『キャプテン翼II スーパーストライカー』を踏襲している。
    • ポジションチェンジ、ワンツー、スルー、浮き球を巡っての競り合い、GKとの1対1の競り合い、GKが止められなかったシュートの選手によるカバーなども再現されている。ただし前作で強すぎたスルーは弱体化している。
    • フォーメーションが4-3-3固定、ディフェンスタイプの選択が不可能など一部カットされている要素もある。
  • 試合時間が前後半20分ずつに短縮された。
  • シリーズで初めて、通信ケーブルを使っての対戦が可能になった。対戦にはソフトと本体が二つ必要。選手選択はPK勝負をして勝った方が1選手の優先獲得件を得て、これをイレブンが決まるまで繰り返す形式。
    • なお1P対CPUでは好きなチームを選んでの対戦が可能だが、本編中で手に入るスコアメモがないと遊べない。
  • 主な登場人物は小学生編+ジュニアユース編に登場したキャラ。カルロスも登場する。
    • 本作オリジナルキャラとして、イングランド代表のリチャードという選手が登場する。強引にシュートへ持ち込むジェットシュート、殺人タックルなど物騒な必殺技を持っているラフプレイヤー。
    • この他IIのオリジナルキャラの一部(バビントン、サトルステギ、カペロマン、メッツァなど)が登場する。
  • 従来作で「てきの ○ばん」と呼ばれていたモブ敵選手に全て固有の名前が付いた。これらはメーカーから一般公募されたものを採用している。
    • 「ぬのふくろ(布袋/ほていの読み間違いか?)」「ミックヨシダ」など妙な名前の選手を探すのも楽しみの一つ。
    • またこれに伴い、従来作では名前で呼ばれていなかった原作キャラ(ふらのFCの小田、ボッシ、アモロなど)もちゃんと名前で呼ばれるようになった。
  • 天候の概念が追加され、雨天での試合も行われるようになった。雨天時はコマンド選択時に、雨で滑って能力値に関係なく行動が失敗してしまうことがある。
    • IIIでは採用されなかったが、IVで仕様変更して復活している。
  • マークの概念が仕様変更して復活した。本作ではミーティングなどでマークする敵選手を指定することで、レーダー上でマークした敵選手の位置が分かるようになる。1試合につきマークできるのは3人まで。III以後の作品と違って特定の味方選手にマークさせることはできない。
  • 本作では必殺パスや、タックル以外の殆どの必殺ディフェンスが存在しない。
    • その代わり、従来作では見られない新必殺技が採用された。また、前々作のIにあったダイビングヘッドも復活している。
    • 翼は原作中学生編に先駆けてドライブシュートを修得したり、原作花輪戦で披露したゴールポストを蹴った跳躍からのオーバーヘッドキックが『トライアードオーバーヘッド』として採用されたりしている。
    • 日向と沢田の必殺ワンツーは、時代に合わせて東邦コンビから明和コンビに名称変更されている。
  • スコアメモ(パスワード)形式を採用したキャプテン翼シリーズは本作で最後となった。

評価点

  • ゲームボーイの限られたスペックで、可能な限り据え置き機に近いサッカーシミュレーションを再現している。
    • 小さい液晶画面ながら画面情報の視認性は良好。キャラクターはやや小さめでアニメパターンも少なめながら、ファミコン版の雰囲気はしっかり再現している。主要選手にはカットインも存在。
    • パスルートや接触時の駆け引きも据え置き機作品と同様に味わえる。
    • 1試合にかかる時間が15分程度(延長やPKがなかった場合)と前作まで同様に短く、展開がスピーディー。
  • III以後の作品に繋がる実験的な試み。
    • 2PやCPUの対戦モードで、従来使えなかったチームや選手を使えるようになった。
    • 対戦モードはIII以後の作品で『オールスターモード』として更に昇華され、キャプテン翼シリーズの大きな目玉要素として確立した。その土台を作った功績は大きい。
    • 全ての選手に固有の名前を用意するのもIII以後の作品に引き継がれた。
  • BGMの質の高さ。
    • 殆どのBGMは前作IIで使用されたものだが、ゲームボーイの音源で可能な限り原曲に近いクオリティを保っている。タイトル画面に使われているオリジナルのBGMも良質の出来映え。
  • 従来キャラに必殺技が追加され、個性が広がった。
    • 例として岬は必殺ドリブルの追加で突破力が向上し、井沢・来生・滝の修哲トリオは同名の必殺ワンツーが使用可能になり、井沢は更にオーバーヘッドキックも使えるようになった。松山は必殺技としてスライディングタックルが追加され、後の作品ではイーグルタックルとして定着し攻守の要に成長するきっかけを作った。
    • ライバルキャラではピエールやディアスに『華麗なドリブル』、ナポレオンには『殺人タックル』、パスカルには『ジャンピングボレー』等が追加され手強くなった。シュナイダーは『パワードリブル』や必殺ディフェンスの『カイザーアタック』を修得し、攻守で隙がなくなった。
    • 本作限りで撤廃されてしまった必殺技も多いが、修哲トリオのように以後の作品で復活したものもある。名称を変えて復活したものも。
  • 国内編でのゲームバランスは比較的取れている方で、程よい緊張感を味わえる。ワールドジュニア編以後に関するバランスは問題点を参照。
+ 最終戦について。ネタバレあり
  • 本作の最終戦では、シュナイダー、ディアス、ピエール、ナポレオン、ヘルナンデスなどこれまで登場した世界のトッププレイヤー達が一同に集結した『せかいせんばつ』が相手となる。このような展開は今までのテクモ版キャプテン翼シリーズではなかったことだった(IIでも全日本やブラジルのオールスターと戦ったが、これらはあくまでも同一国籍の選手達との戦いだった)。言うまでもなく強さは圧倒的。
    • カルロスはこのチームの隠し球として登場。II同様にミラージュシュートや分身ドリブルなどを使いこなす。ただし能力はシュナイダーより低い。

賛否両論点

  • 一部必殺技の配分や性質が他作品と異なる。
    • 例を挙げるとヒールリフトはII以後のテクモ版では翼の必殺技だが、本作では岬・三杉・ピエールの必殺技になっている。このために本作では翼より岬の方がドリブル突破力が高い。
    • 立花兄弟は必殺技の種類が大幅に減り、必殺ディフェンスが完全に消失
    • 石崎の顔面ブロックは他作品だと敵がシュートを撃たないと発動しない特殊な必殺技だが、本作では普通のディフェンス技扱いされているため、相手が何を選択しようと無関係にボールをカットする。パスはまだしも、敵のドリブルに顔面から突っ込むのはどう考えても危険すぎる。
    • 前作から登場したオリジナルキャラのうち、キムとシャ、サトルステギ、メッツァのように必殺技が完全消失したキャラがいる。
      • ただしメッツァは代わりに攻撃ステータスが上がり、やたら積極的にシュートを狙ってくるようになった。
    • ヘルナンデスは本作で初めて必殺技が実装されたが、テレパシーキャッチと言う超能力じみた技である。さすがにこれは本作限りとなり、III以降は彼の代名詞とも言える『黄金の右腕』が必殺技になった。
  • 明らかに優遇されている日向と若島津。
    • テクモ版の日向は「シュート・タックル・競り合いが強く、他の能力はいまいち」と言う尖ったパラメータであることが多いが、本作では前作からの長所をそのままに、ドリブル値が日本の選手で最も高く、他のステータスも翼や岬に匹敵する万能キャラになっている。今回はネオタイガーショットを持っていないが、その分タイガーショットや強引なドリブルが強い。
    • 本作の若島津は森崎や若林を遙かに凌ぐステータスを誇り、ジュニアワールド編の敵のシュート力は若島津で受けることを前提とした能力値にされている。
      • 更に必殺技に『手刀パンチング』『後ろ回し蹴り』が追加された。これらはIII以後、前者は三角飛び失敗時に低確率で出る特殊ディフェンス、後者は空中での競り合い時に使える『浴びせ蹴り』として継承された。
    • 以後の作品では、日向は従来通りの能力傾向に落ち着いた。若島津は本作ほどではないが使いやすくなったため、シリーズ全体で見れば本作の調整がプラスに働いたという見方もできる。
  • テキストにメタ発言が混じっていることがある。
    • 例を挙げると、南葛FC対武蔵FCの試合では「つばさくん たい みすぎくん こくないでの たいけつは ゲームボーイがはじめてです!」とアナウンスされる。
      + 日向のメタ台詞
      • 世界選抜戦前の日向の「このあと スーファミでのしごとも はいってるんだぜ!」と言う台詞も一部で有名。IIIの宣伝であることは明らかだが、IIIは(小学生編の彼らからすれば)ずっと先の時代の話である。
  • 本作でも実況はチャーリーが行っているが、「(前略)にほんびいきで おおくりします」「シュナイダーくん にほんをなめているのか(後略)」など、公平性を欠くような中継がされることがある。
    + シュナイダーの扱い
    • 今回のシュナイダーは西ドイツJr.戦では、試合後半にならないと出場しない前作のコインブラのような扱いになっている。チャーリーの台詞を見る限り、それまでの試合でも温存されていたようである。
      • ひとたび出れば、全選手中最大を誇る圧倒的な能力値と強烈なファイヤーショットでこちらを苦しめる。今回は前述の必殺技の追加でより隙がなくなった。
      • 世界選抜では前半からフル出場する。ステータスは何故か西ドイツの時より下がっているが、それでもなお世界選抜の選手では最大の能力を誇り、十分に手強い。
  • 前作を知っていると違和感のあるBGMの選曲が多い。
    • 南葛FCのBGMは前作のサンパウロFCの曲、日本Jr.のBGMは前作の南葛のBGM。アルゼンチンJr.戦はフラメンゴ、西ドイツJr.戦はジャパンカップ編の敵チーム曲となっている。また、東邦(明和)戦のBGMが世界選抜にも流用されている。
  • 本編のボリュームは小さく、ほぼIと同じくらいである。
    • ストーリーも他のテクモ版キャプテン翼シリーズと比べて「新必殺技の体得」「登場人物達の思惑や葛藤」といったドラマチックな展開が少なく、起伏に乏しい。

問題点

  • 小学生編が主要な舞台であるため、原作中学生編から登場する新田・早田・次籐・佐野と言った一部の選手が登場しない。
    • これと立花兄弟の必殺ディフェンスが全廃された影響で、日本チームのDF不足が深刻になってしまった。本作で初めて日本Jr.代表に選ばれた小田が攻守の両方で必殺技を修得しているが、能力不足のため補い切れていない。
  • 原作や前作までエース級だった一部選手の能力がガタ落ちになっている。
    • 筆頭に挙がるのは何と言っても若林。本作では森崎にちょっと毛が生えた程度のステータスしかない。若島津の加入後は、縛りプレイでもしない限りまず二軍落ちである。
    • 松山や三杉も他作品と比べて、モブ選手よりちょっと強い程度の能力値しかない。特に三杉は本作でもガッツ消費が激しかったり、酷使すると次の試合に出られないハンデがあるのに、この扱いはあんまりではないだろうか。
      • ただしこの二人は必殺技がある分、ステータス不足はある程度ならカバーできる。
  • ジュニアワールド編から敵のステータスが急激に上昇する
    • 試合が進むにつれて加速度的に敵が強くなっていき、こちらのレベルが低いと、翼・岬・日向などのエース格でもどうやっても攻撃が全く通らず、敵のシュートはガンガン決められて全く試合にならない可能性さえある。このせいでどうしても、こちらの行動が通用するまでレベルアップを続ける必要が出てきてしまう。
    • 特に西ドイツの強さは異常とも言えるレベルで、著名選手のステータスは世界選抜を上回っている。GKはミューラーではなく、ヘフナーと言うアニメ版オリジナル選手。本編登場の敵GKでは最強のステータスを誇り、生半可なレベルでは一点も取れないこともしばしば。
    • 本作のGKはCPU戦ではこちらのシュートよりキャッチ値が明らかに高いとキャッチを選択することが多く、GKの能力が高めなこともあって中途半端な必殺シュートはあっさり止められてしまう。1対1に持ち込んでも同様。勝敗を不安定なPK戦に委ねなければならない事態になってしまうことも珍しくない。
    • レベルアップ速度は従来作と余り変わらず、何度も負け続ける羽目になる。
  • 逆転要素が減り、格上のチームから点を取るのが難しくなった
    • 本作では反則がない。IIでは能力に大きな格差があっても、(本来なら褒められた形ではないが)接触時には反則の発生で止められる可能性があったが、それができなくなって上記の問題を一層深刻にしている。代替要素となる雨は一部試合を除いて発生がランダムであり、雨が降らなければ滑りようもない。
      • このせいで直接フリーキックや、敵陣ペナルティエリア内で反則を誘ってのペナルティキックを狙うことも不可能。
    • またこぼれ球がラインを割ることがないため、コーナーキックやスローインなどもなくなった。
      • テクモ版キャプテン翼シリーズの直接CKや直接FKは通常よりシュートの威力が上がる特徴があり、またコーナーキックからのパスは容易に浮き球シュートに繋げられることから攻防において重要だった。
    • キーパーが飛び出しに失敗しても、ゴールが空っぽにならない。こちらのGKがゴール前を空けないという利点もあるが、総合的に見ると駆け引きの要素を減らしている。
      • IIでスルーが強すぎたことの反省かも知れないが、ならば単純にスルーの成功率を下げるだけで良かったはず。キーパーと1対1に持ち込むメリットも少なくなってしまった。
    • なお、III以後の作品ではこれらの要素が全て復活している。
  • ゲーム上での試合時間が短く、一度リードされると逆転が厳しい。
    • 接触時の時間経過が0~60秒とムラが大きい上、自動カットを受けずにパスを回すだけでも同様の時間経過が発生する。更にI同様ロスタイムは存在しない。このため実際の体感的な試合時間は更に短くなっている。
    • 延長戦に至っては前後半でそれぞれたった5分しかない。これでは逆転を狙うのは非常に困難。
    • ガッツ回復速度は従来と大差なく、早い段階でガッツを大量に使うと後半に回復しきらない。

総評

「ゲームボーイでテクモ版キャプテン翼ができる」と言う一点だけでも本作は存在意義があるが、本作の試みで以後の作品に採用されたものが多いのも見過ごせない。後のシリーズの可能性を広げた作品と言える。

反面前作から削られた要素の殆どが逆転要素を作る上で重要なものであったことから、ゲームバランスはI時代へと逆行している面も見られ、単品での完成度は前作より優れているとは言えない。発売時期的にIIIまでの繋ぎという印象が強いことも否めない。とは言え『IIの要素を一部追加したI』と考えれば悪いものではなく、Iが楽しめるなら十分本作も堪能できるだろう。

据え置き機作品とは異なる独特の雰囲気があるため、普段とちょっと毛色の変わったキャプテン翼を遊びたいというプレイヤーにお勧め。中古価格は安く、現在でもGBを取り扱っている店では見かける頻度が高いため、比較的入手難易度は低めである。


余談

  • 本作では日本Jr.の正GKが森崎である。これは1PVSCPUモードでも変わらないため、CPUに日本を選ぶと守備が大変残念なことになる。
+ 1P対戦用のスコアメモ。ネタバレあり
  • サッカー全国大会編と、ジュニアワールド編をクリアするとそれぞれ1Pで好きなチームを選択してCPU対戦ができるスコアメモが表示される。
    • そのスコアメモは「もりさきも つかつてね」「すりいもで るのよ」と洒落の効いたもの。